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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】圧電体膜および圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/43 20130101AFI20221101BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20221101BHJP
   H01L 41/317 20130101ALI20221101BHJP
   C04B 35/493 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L41/43
H01L41/187
H01L41/317
C04B35/493
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021522852
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021091
(87)【国際公開番号】W WO2020241743
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2019102452
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019102536
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020059572
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】土井 利浩
(72)【発明者】
【氏名】曽山 信幸
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-154741(JP,A)
【文献】特開平10-081016(JP,A)
【文献】米国特許第06097133(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00764992(EP,A1)
【文献】特許第6498821(JP,B1)
【文献】特開2001-048645(JP,A)
【文献】特開2015-164182(JP,A)
【文献】特開2015-065430(JP,A)
【文献】特開2016-134404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/43
H01L 41/187
H01L 41/317
C04B 35/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンを含む正方晶系ペロブスカイト結晶を有し、前記正方晶系ペロブスカイト結晶はa軸の長さに対するc軸の長さの比が1.0071以上1.0204以下の範囲内にあり、かつ厚み方向のジルコニアとチタンの濃度を線分析したときに、ジルコニアの濃度に対するチタンの濃度のモル比の最低値と最高値の差が0.1よりも大きく、0.45以下である圧電体膜。
【請求項2】
Cu-Kα線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、前記正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークの半値幅が、回折角2θで1.40度以下である請求項1に記載の圧電体膜。
【請求項3】
膜厚が0.5μm以上5μm以下の範囲内にある請求項1または2に記載の圧電体膜。
【請求項4】
圧電体層と、前記圧電体層の表面に形成されている電極層とを備え、
前記圧電体層は、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電体膜を含む圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体膜および圧電素子に関する。
本願は、2019年5月31日に日本に出願された特願2019-102452号、2019年5月31日に日本に出願された特願2019-102536号、及び2020年3月30日に日本に出願された特願2020-059572号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
圧電体膜と、圧電体膜の上下の面に形成された電極とを有する圧電素子は、振動発電素子、センサ、アクチュエータ、インクジェットヘッド、オートフォーカスなどの様々な圧電デバイスに利用されている。圧電体膜の材料としては、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)を含むペロブスカイト結晶相を有するPZT系圧電体が広く利用されている。このPZT系圧電体膜の製造方法としては、CSD法(chemical solution deposition:化学溶液体積法あるいはゾルゲル法ともいう)、スパッタリング法が知られている。
【0003】
CSD法では、目的組成の金属元素を含む前駆体溶液(あるいはゾルゲル液)を、基板の表面に塗布し、得られた塗布膜を焼成することよって圧電体膜を製造する。スパッタリング法では、高真空中で酸化物ターゲットに対し、例えばイオン化されたアルゴンなどを衝突させ、それによってはじき出された元素を基板に蒸着させることよって圧電体膜を製造する。CSD法は、スパッタリング法と比較して、高真空を必要とせず、比較的小型の装置を用いて、圧電体膜を製造することができる点において有利である。
【0004】
スパッタリング法により得られる圧電体膜は、一般に、柱状に成長した正方晶系ペロブスカイト結晶構造からなる単一相であり、組成の均一性が高い傾向がある(非特許文献1)。一方、CSD法によって得られた圧電体膜は、一般に、柱状に成長しにくく、正方晶系ペロブスカイト結晶構造、立方晶系ペロブスカイト結晶構造、斜方晶系ペロブスカイト結晶構造などの複数の相が混在し、厚み方向に濃度勾配を備える傾向がある(非特許文献2)。
非特許文献2には、膜厚方向のZr/Tiの組成傾斜の緩いPZT系圧電体膜を製造する方法として、以下の方法が記載されている。Zr/Tiの組成が異なる複数の塗布液を塗布し、得られた複数の塗布膜の積層体を焼成して圧電体膜を製造する。積層体の上方ではTiの含有量が相対的に多い塗布液を塗布して塗布膜を形成し、積層体の下方ではZrの含有量が相対的に多い塗布液を塗布して塗布膜を形成する。
【0005】
また、特許文献1には、膜厚方向のZr/Tiの組成傾斜の緩いPZT系圧電体膜を、一種類の塗布液を用いて製造する方法として、以下の方法が記載されている。塗布膜の形成と、275~325℃のホットプレート等による仮焼きと、525~550℃の温度での中間熱処理を複数回繰り返す。次いで650~750℃の温度で焼成する。上記の塗布膜の形成、仮焼き、中間熱処理、及び焼成を複数回繰り返す。
【0006】
非特許文献2に記載されている方法では、組成が異なる複数の塗布液を塗布し、得られた塗布膜の積層体を焼成して圧電体膜を製造する。この方法では、組成が異なる塗布液をそれぞれ貯留するタンクと、それらの塗布液を順番に塗布するための装置が必要となるため、設備コストが高く、さらにその管理コストも高くなるおそれがある。
一方、特許文献1に記載されている方法では、塗布膜の形成と、ホットプレート等による仮焼きと、中間熱処理を繰り返し、次いで焼成する。これら塗布膜の形成、仮焼き、中間熱処理、及び焼成の工程を複数回繰り返す。この方法は、塗布液の組成を変える必要がない点で有利な方法である。しかしながら、この方法は、本発明の発明者の検討によると、中間熱処理の処理温度と焼成温度の条件によっては、得られる圧電体膜に剥離やクラックが発生することがあり、歩留まりが低くなることが判明した。
【0007】
また、センサ用の圧電素子で用いられる圧電体膜は、感度向上のために圧電特性が高く、かつ信頼性を高めるために耐電特性が高いことが好ましい。
スパッタリング法により得られる圧電体膜は、正方晶系ペロブスカイト結晶構造からなる単一相であるため圧電特性は高いが、組成の均一性が高いことから耐電特性が低いという問題があった。一方、CSD法によって得られた圧電体膜は、厚み方向に濃度勾配を有するため耐電特性が高いが、ペロブスカイト結晶が柱状に成長しにくいことから圧電特性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-148113号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 116, 194102 (2014)
【文献】APPLIED PHYSICS LETTERS Vol. 90, 2007, 062907 to 062907-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、厚み方向における組成の均一性が高く、圧電特性と耐電特性が高い圧電体膜および圧電素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係る圧電体膜は、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンを含む正方晶系ペロブスカイト結晶を有し、前記正方晶系ペロブスカイト結晶はa軸の長さに対するc軸の長さの比が1.0071以上1.0204以下の範囲内にあり、かつ厚み方向のジルコニアとチタンの濃度を線分析したときに、ジルコニアの濃度に対するチタンの濃度のモル比の最低値と最高値の差が0.1よりも大きく、0.45以下である。
【0017】
この構成の圧電体膜によれば、正方晶系ペロブスカイト結晶はa軸の長さに対するc軸の長さの比が1.0071以上1.0204以下の範囲内にあるので、圧電特性が向上する。また、厚み方向のジルコニアとチタンの濃度を線分析したときに、ジルコニアの濃度に対するチタンの濃度の比の最低値と最高値の差が0.1よりも大きく、0.45以下であり、厚み方向にわずかな濃度勾配を備えるので耐電特性が向上する。
【0018】
ここで、本発明の一態様に係る圧電体膜においては、Cu-Kα線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、前記正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークの半値幅が、回折角2θで1.40度以下であることが好ましい。
この場合、正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークの半値幅が、回折角2θで1.40度以下であるので、正方晶系ペロブスカイト結晶の配向方向のばらつきが小さくなり、圧電体膜の圧電特性がより向上する。
【0019】
また、本発明の一態様に係る圧電体膜においては、膜厚が0.5μm以上5μm以下の範囲内にあることが好ましい。
この場合、圧電体膜の厚み方向に、ジルコニアの濃度とチタンの濃度の勾配を確実に形成させることができる。
【0020】
本発明の一態様に係る圧電素子は、圧電体層と、前記圧電体層の表面に形成されている電極層とを備え、前記圧電体層は、上述の本発明の圧電体膜を含む。
この構成の圧電素子によれば、圧電体層が上記の本発明の一態様に係る圧電体膜を含むので、圧電特性と耐電特性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、厚み方向における組成の均一性が高く、圧電特性と耐電特性が高い圧電体膜および圧電素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る圧電体膜の製造方法のフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係る圧電体膜を用いた圧電素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係る圧電体膜の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、圧電体膜として、PZT系圧電体膜を製造する場合を例にとって説明する。PZT系圧電体膜の例としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)圧電体膜、PNbZT(ニオブドープチタン酸ジルコン酸鉛)圧電体膜、PLZT(ランタンドープチタン酸ジルコン酸鉛)圧電体膜等が挙げられる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電体膜の製造方法のフロー図である。
図1に示す圧電体膜の製造方法は、塗布工程S01、乾燥工程S02、有機物除去工程S03、第1仮焼成工程S04、第1仮焼成膜の膜厚判定工程S05、第2仮焼成工程S06、本焼成工程S07を含む。
【0025】
(塗布工程S01)
塗布工程S01は、基板の上に塗布液を塗布して塗布膜を得る工程である。
【0026】
基板としては、耐熱性基板の表面に下部電極を形成したものを用いることができる。
耐熱性基板としては、シリコン基板、ステンレス鋼基板、アルミナ基板等を用いることができる。シリコン基板を用いる場合は、PZT系圧電体膜の構成元素(特に、鉛)の拡散を抑制するために、シリコン基板の表面を熱酸化させることにより、シリコン基板の表面に熱酸化膜(SiO膜)を形成することが望ましい。耐熱性基板は、さらに、下部電極との密着性を向上させるために、密着層を有していてもよい。密着層としては、チタン膜あるいはチタン酸化膜(TiO膜)を用いることができる。チタン膜は、例えば、スパッタリング法によって成膜することができる。一方、チタン酸化膜は、チタン膜を大気雰囲気中で700~800℃に1~3分間保持して焼成することにより成膜することができる。
【0027】
下部電極の材料としては、Ptを用いることができる。Pt下部電極は、(111)配向していることが好ましい。(111)配向したPt下部電極は、スパッタリング法によって形成することができる。また、下部電極とPZT系圧電体膜との密着性を向上させるために、下部電極の表面に下地層を設けてもよい。下地層としては、ニッケル酸ランタン膜を用いることができる。ニッケル酸ランタン膜は、例えば、加熱によってニッケル酸ランタン膜を生成するゾルゲル液を、下部電極の表面に塗布して、加熱する方法(ゾルゲル法)によって成膜することができる。また後述するが、下地層の表面に密着層を設けてもよい。密着層としては、チタン酸鉛を用いることができる。
従って、耐熱性基板の表面(上面)上には、下から上方に、熱酸化膜(耐熱性基板がシリコン基板の場合)、密着層、下部電極(Pt下部電極)、下地層、及び密着層が、この順に形成されてもよい。
【0028】
塗布液は、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンを含む。塗布液は、鉛、ジルコニウム、チタンと共にPZT系圧電体を生成する元素が添加されていてもよい。添加元素の例としては、ランタン、ニオブを挙げることができる。
【0029】
塗布液は、鉛、ジルコニウム、チタン及び添加元素を、結晶化開始温度以上の温度で加熱することによってペロブスカイト結晶相を生成する割合で含む。なお、結晶化開始温度は、塗布液を加熱することによって結晶性を有する酸化物が生成する温度である。
結晶化開始温度は、以下の方法で測定される。上記基板の表面に、塗布液を塗布して塗布膜を得る。後述する乾燥工程S02に従って塗布膜を乾燥して、乾燥膜を得る。次に、後述する有機物除去工程S03に従って乾燥膜を加熱して乾燥膜に含まれている有機物を除去する。次に、大気雰囲気中で450℃にて乾燥膜を焼成して焼成膜を作製する。同様の操作により450℃から600℃まで5℃刻みのそれぞれの温度で乾燥膜を焼成し、焼成膜を作製する。作製した焼成膜について、CuKα線を用いた集中法によりX線回折パターンを測定する。得られたX線回折パターンにおいて、回折角2θで22度前後にPZT膜の(100)面に由来するピーク(正方晶系ペロブスカイト結晶の(100)面に由来する回折ピーク)があるか確認する。このピークが確認された焼成膜において、焼成膜が作製された最低焼成温度を結晶化開始温度とする。上記の塗布膜を得る工程、乾燥膜を得る工程、有機物を除去する工程、及び焼成時間の条件は、圧電体膜を製造する条件と同じにすることが好ましい。具体的な結晶化開始温度の測定方法は、後述の実施例で説明する。
【0030】
塗布液は、ジルコニウムとチタンの含有量比がモル比でジルコニウム:チタン=54:46~40:60の範囲内とされている。ジルコニウムとチタンの含有量比がこの範囲内にあることによって圧電特性と耐電特性が向上した圧電体膜を得ることができる。ジルコニウムとチタンの含有量比は、モル比でジルコニウム:チタン=50:50~40:60の範囲内にあることが好ましい。ジルコニウムとチタンの含有量比がこの範囲内にあることによって、a軸の長さに対するc軸の長さの比が1.0071以上1.0204以下の範囲内にある正方晶系ペロブスカイト結晶を有し、圧電特性がより向上した圧電体膜を得ることができる。
【0031】
塗布液は、上記の金属を含むゾルゲル液であることが好ましい。ゾルゲル液は、例えば、次のようにして調製することができる。先ず反応容器にZrテトラ-n-ブトキシド(Zr源)と、Tiイソプロポキシド(Ti源)と、アセチルアセトン(安定化剤)とを入れて、窒素雰囲気中で還流する。次いで、反応容器に酢酸鉛3水和物(Pb源)を添加すると共に、プロピレングリコール(溶剤)を添加し、窒素雰囲気中で還流してチタン酸ジルコン酸鉛のゾルゲル液を得る。次いで、得られたゾルゲル液を減圧蒸留して副生成物を除去し、次いでプロピレングリコールやアルコールをさらに添加して濃度を調整する。また、PZT系圧電体膜成形用塗布液(PZT系圧電体膜を成形(作製)するための塗布液)として、三菱マテリアル株式会社より販売されているPZT-N液を用いることができる。
【0032】
塗布液は、基板の電極あるいは電極の表面に形成された下地膜(下地層)又は密着層の上に塗布する。これにより、塗布膜を得る。塗布液の塗布方法は特に制限はなく、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法などを用いることができる。
【0033】
(乾燥工程S02)
乾燥工程S02は、塗布工程S01で得られた塗布膜を乾燥して、乾燥膜を得る工程である。塗布膜を乾燥させる方法としては特に制限はなく、加熱乾燥法、減圧乾燥法、通風乾燥法などを用いることができる。加熱乾燥法を用いる場合、加熱温度は、塗布液の溶媒が揮発する温度以上であり、かつ塗布液に含まれている金属源の有機物成分が分解蒸発しない温度であることが好ましい。加熱時間は、塗布膜の膜厚や溶媒の含有量などによっても異なるが、30秒間以上5分間以下の範囲内にあることが好ましい。加熱雰囲気は特に制限はないが、大気雰囲気が好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、赤外線急速加熱処理装置(RTA)を用いることができる。加熱装置は、ホットプレートが好ましい。
【0034】
(有機物除去工程S03)
有機物除去工程S03は、乾燥膜に含まれている有機物を加熱により除去する工程である。すなわち、有機物除去工程S03では、乾燥膜に含まれている金属源の有機物成分を除去する。これによって、次の第1仮焼成工程S04での加熱による有機物の急激な分解蒸発が抑制される。加熱温度は、有機物成分が分解揮発する温度以上で、かつ金属酸化物(例えば、チタン酸鉛)が生成しない温度であることが好ましい。加熱時間は、乾燥膜の膜厚や有機物成分の含有量などによっても異なるが、30秒間以上5分間以下の範囲内にあることが好ましい。加熱雰囲気は特に制限はないが、大気雰囲気が好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、赤外線急速加熱処理装置(RTA)を用いることができる。加熱装置として、ホットプレートを用いて、乾燥工程S02と有機物除去工程S03を連続的に行うことが好ましい。
【0035】
(第1仮焼成工程S04)
第1仮焼成工程S04は、有機物除去工程S03により有機物が除去された乾燥膜を、結晶化開始温度以上、(結晶化開始温度+40℃)以下の範囲内にある第1仮焼成温度で加熱して第1仮焼成膜を得る工程である。例えば、結晶化開始温度が550℃である場合、第1仮焼成温度は、550℃以上590℃以下の温度である。第1仮焼成工程S04では、第1仮焼成温度が上記の範囲内にあり、乾燥膜の一部は結晶化するが大部分は結晶化しないため、膜厚方向のZr/Tiの組成傾斜が起こりにくい。また、得られた第1仮焼成膜は部分的にペロブスカイト結晶相が生成しているので、残留応力が大幅に低減しており厚く積層することができる。以上の二点より、最終的な生成物中のZr/Tiの組成傾斜を大幅に小さくすることができる。
【0036】
第1仮焼成工程S04において、加熱時間は、乾燥膜の厚さやサイズなどによっても異なるが、30秒間以上5分間以下の範囲内にあることが好ましい。加熱雰囲気は特に制限はないが、大気雰囲気が好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、急速加熱処理装置(RTA)を用いることができる。加熱装置としてホットプレートを用いて、有機物除去工程S03と第1仮焼成工程S04を連続的に行うことが好ましい。
【0037】
(第1仮焼成膜の膜厚判定工程S05)
第1仮焼成膜の膜厚判定工程S05は、第1仮焼成工程S04にて得られた第1仮焼成膜の膜厚を測定し、第1仮焼成膜の膜厚が所望の膜厚であるか否かを判定する工程である。第1仮焼成膜の膜厚が所望の膜厚よりも薄い場合(図1において、NOの場合)は、塗布工程S01、乾燥工程S02、有機物除去工程S03、第1仮焼成工程S04を繰り返し行う。また、第1仮焼成膜の膜厚が所望の膜厚よりも厚い場合は、塗布工程S01での塗布液の塗布量を調整する。第1仮焼成膜の膜厚が所望の膜厚である場合(図1において、YESの場合)は、次の第2仮焼成工程S06を行う。第1仮焼成膜の膜厚は、例えば、分光干渉式膜厚測定装置を用いて測定することができる。
【0038】
(第2仮焼成工程S06)
第2仮焼成工程S06は、所望の膜厚を有する第1仮焼成膜を、(結晶化開始温度+25℃)以上、(結晶化開始温度+100℃)以下の範囲内にあって、(第1仮焼成温度+25℃)以上である第2仮焼成温度で加熱して第2仮焼成膜を得る工程である。例えば、結晶化開始温度が550℃である場合、第2仮焼成温度は、575℃以上650℃以下の温度で、(第1仮焼成温度+25℃)以上である。第2仮焼成工程S06では、第2仮焼成温度が上記の範囲内にあるので、第1仮焼成膜よりも結晶化が進んだ第2仮焼成膜が生成する。第2仮焼成膜は、CuKα線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、回折角2θで22度前後に確認されるPZT系圧電体の(100)面に由来するピーク(正方晶系ペロブスカイト結晶の(100)面に由来する回折ピーク)の強度が、第1仮焼成膜と比較して10倍以上高いことが好ましい。すなわち、第2仮焼成膜のX線回折パターンにおけるPZT系圧電体の(100)面に由来するピークの強度は、第1仮焼成膜のX線回折パターンにおけるPZT系圧電体の(100)面に由来するピークの強度の10倍以上高いことが好ましい。
【0039】
第2仮焼成工程S06において、膜の結晶性を向上させる観点から、第2仮焼成温度は(結晶化開始温度+50℃)以上であることが好ましく、(結晶化開始温度+75℃)以上であることがより好ましい。加熱時間は、第1仮焼成膜の厚さやサイズなどによっても異なるが、30秒間以上5分間以下の範囲内にあることが好ましい。加熱雰囲気は特に制限はないが、大気雰囲気が好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、急速加熱処理装置(RTA)を用いることができる。加熱装置としてホットプレートを用いて、第1仮焼成工程S04と第2仮焼成工程S06を連続的に行うことが好ましい。
【0040】
(本焼成工程S07)
本焼成工程S07は、第2仮焼成工程S06で得られた第2仮焼成膜を、(結晶化開始温度+100℃)以上、(結晶化開始温度+200℃)以下の範囲内にあって、(第2仮焼成温度+25℃)以上である本焼成温度で加熱してPZT系圧電体膜を得る工程である。例えば、結晶化開始温度が550℃である場合、本焼成温度は、650℃以上750℃以下の温度で、(第2仮焼成温度+25℃)以上である。本焼成工程S07では、本焼成温度が上記の範囲内にあるので、第2仮焼成膜の結晶化が進み、膜全体が十分に結晶化される。本焼成工程S07を行う前の第2仮焼成膜はペロブスカイト結晶相を、第1仮焼成膜と比較して多く含有しており、膜自体が十分に収縮している。このため、第2仮焼成膜を本焼成温度で加熱したときの結晶化による体積収縮が小さくなり、この結晶化によって発生する膜内の応力は、第1仮焼成膜を本焼成温度で加熱した場合に発生する膜内の応力と比較して低くなる。このため、本焼成工程S07で得られるPZT系圧電体膜は、剥離やクラックの発生が抑制される。
【0041】
本焼成工程S07において、膜全体を確実に結晶化させる観点から、本焼成温度は(結晶化開始温度+125℃)以上であることが好ましい。加熱時間は、第2仮焼成膜の厚さやサイズなどによっても異なるが、30秒間以上5分間以下の範囲内にあることが好ましい。加熱雰囲気は特に制限はないが、大気雰囲気が好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、急速加熱処理装置(RTA)を用いることができる。加熱装置としてホットプレートを用いて、第2仮焼成工程S06と本焼成工程S07を連続的に行うことが好ましい。
【0042】
以上のようにして得られたPZT系圧電体膜は、圧電素子用の材料として有利に用いることができる。上記のPZT系圧電体膜を用いた圧電素子は、例えば、先ずPZT系圧電体膜の表面に上部電極を形成し、次いで、上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加して、PZT系圧電体膜を膜厚方向に分極することによって作製することができる。
本実施形態の製造方法によって得られたPZT系圧電体膜は、膜厚方向のZr/Tiの組成傾斜が緩く、組成の均一性が高い。このため本実施形態の製造方法によって得られた圧電体膜を用いて作製した圧電素子は、膜厚方向の圧電定数d33が高くなる。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係る圧電体膜および圧電素子について、添付した図面を参照して説明する。
【0044】
図2は、本発明の一実施形態に係る圧電体膜を用いた圧電素子の概略断面図である。
図2に示すように、圧電素子1は、圧電体膜10からなる圧電体層11と、圧電体層11の表面に形成されている電極層20とを備える。
【0045】
圧電体膜10は、少なくとも鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)を含む正方晶系ペロブスカイト結晶を有する。
圧電体膜10中のジルコニウムとチタンの含有量比は、モル比でジルコニウム:チタン=54:46~40:60の範囲内にあることが好ましく、ジルコニウム:チタン=50:50~40:60の範囲内にあることがより好ましい。
正方晶系ペロブスカイト結晶は、a軸の長さに対するc軸の長さの比(c軸/a軸比)が1.0071以上1.0204以下の範囲内にある。
c軸/a軸比が1.0204よりも大きくなると、異方性が大きすぎるため電界によるドメインの回転が起こりにくくなり、高い圧電特性が得られなくなるおそれがある。一方、c軸/a軸比が1.0071よりも小さくなると、ドメインの回転による圧電特性への寄与が小さくなり高い圧電特性が得られなくなるおそれがある。このため、本実施形態の圧電体膜10は、c軸/a軸比を1.0071以上1.0204以下の範囲内とされている。圧電特性をより向上させるために、c軸/a軸比は1.0150以下であることがより好ましく、1.0100以下であることが特に好ましい。c軸/a軸比は1.0080以上であることがより好ましく、1.0085以上であることが特に好ましい。
【0046】
圧電体膜10に含まれる正方晶系ペロブスカイト結晶のa軸の長さは、4.04Å以上4.08Å以下の範囲内にあることが好ましい。c軸の長さは、4.10Å以上4.15Å以下の範囲内にあることが好ましい。
なお、本実施形態において、正方晶系ペロブスカイト結晶のa軸の長さとc軸の長さは、Cu-Kα線を用いたインプレーン法によって測定された圧電体膜のX線回折パターンを、全回折パターンフィッティング(WPPD)を用いて解析することによって算出した値である。
【0047】
圧電体膜10は、厚み方向に濃度勾配を有する。圧電体膜10は、ジルコニアの濃度とチタンの濃度が厚み方向に勾配を有することが好ましい。チタンとジルコニアの濃度勾配としては、チタン濃度とジルコニア濃度のモル比(Ti/Zr比)の最低値と最高値の差が、0.1よりも大きく、0.45以下の範囲内にあることが好ましく、0.14以上0.45以下の範囲内にあることがさらに好ましい。Ti/Zr比の最低値と最高値の差が小さくなりすぎると、圧電体膜10の耐電特性を向上させるのが難しくなるおそれがある。一方、Ti/Zr比の最低値と最高値の差が大きくなりすぎると、圧電体膜10の圧電特性が低下するおそれがある。Ti/Zr比の最低値は0.50以上0.80以下の範囲内にあることが好ましい。また、Ti/Zr比が最高値は1.00以上1.25以下の範囲内にあることが好ましい。
なお、本実施形態において、圧電体膜10の厚み方向のTiとZrの濃度は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いた圧電体膜10の断面観察と、EDS(エネルギー分散型X線分光分析装置)を用いた元素マッピングにより測定した値である。詳細には、圧電体膜10の厚さ方向に沿った断面において、所定の厚さ位置におけるTiとZrの濃度(原子%)を測定する。この測定を圧電体膜10の厚み方向に沿って行う(厚み方向の線分析)。そして各厚さ位置におけるTi/Zr比を求める。
【0048】
圧電体膜10は、Cu-Kα線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークの半値幅が、回折角2θで1.40度以下であることが好ましい。半値幅は、正方晶系ペロブスカイト結晶の配向方向のばらつきを指標する。半値幅が小さいことは、正方晶系ペロブスカイト結晶の配向方向のばらつきが小さいことを表す。半値幅が1.40度よりも大きくなると、正方晶系ペロブスカイト結晶の配向方向のばらつきが大きくなりすぎて、圧電特性が低下するおそれがある。圧電特性をより向上させるために、半値幅は0.80度以上1.40度以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0049】
半値幅は、Cu-Kα線を用いて測定された圧電体膜のX線回折パターンより求める。X線回折パターンの測定方法は、インプレーン法であってもよいし、アウトオブプレーン法であってもよい。PZT系圧電体膜の場合、正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークは、回折角2θで、一般に94度以上103度以下の範囲内に見られる。
【0050】
本実施形態の圧電素子1において、圧電体膜10(圧電体層11)の厚さは特に制限はなく、使用用途に応じて適宜調整することができる。圧電体膜10の厚さは、一般に0.5μm以上5μm以下の範囲内、好ましくは0.5μm以上3μm以下の範囲内にある。圧電体膜10の厚さが1μm以上である場合は、下部電極22と圧電体膜10との間に密着層を介在させることが好ましい。すなわち、厚さが1μm以上の圧電体膜10を下部電極22上に形成する場合は、予め下部電極22の表面に密着層を形成することが好ましい。密着層の材料としては、例えば、チタン酸鉛を用いることができる。
【0051】
圧電体膜10の表面に形成されている電極層20は、圧電体膜10の上側表面に形成されている上部電極21と、圧電体膜10の下側表面に形成されている下部電極22とを含む。上部電極21と下部電極22の材料としては、白金(Pt)、イリジウムなどの金属を用いることができる。上部電極21と下部電極22は同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0052】
以上のような構成とされた本実施形態の圧電体膜の製造方法によれば、塗布液のジルコニウムとチタンの含有量比がモル比で54:46~40:60の範囲内にあるので、圧電特性と耐電特性が高い圧電体膜を得ることができる。また、第1仮焼成工程S04の第1仮焼成温度は、結晶化開始温度以上、(結晶化開始温度+40℃)以下の範囲内と比較的低温であるため、膜厚方向の温度にばらつきが生じにくく、結晶化が均一に進むので、膜厚方向のZr/Tiの組成傾斜が緩くなる。また、第1仮焼成工程S04で得られた第1仮焼成膜は部分的にペロブスカイト結晶相が生成しているので、その後の加熱によって膜厚方向のZr/Tiの組成傾斜が大きくなりにくい。また、第1仮焼成工程S04の後、本焼成工程S07の前に、第2仮焼成工程S06を行うことによって、本焼成工程S07での加熱による膜の結晶化による膜構造の変化量が小さくなり、膜内に発生する応力が小さくなる。このため、得られるPZT系圧電体膜に剥離やクラックが生じにくくなる。よって、本実施形態の圧電体膜の製造方法を利用することにより、厚み方向における組成の均一性が高いPZT系圧電体膜を、組成の異なる塗布液を用いずに、かつ高い歩留まりで製造することができる。
【0053】
また、本実施形態の圧電体膜の製造方法においては、第2仮焼成工程S06の前に、塗布工程S01と、乾燥工程S02と、有機物除去工程S03と、第1仮焼成工程S04とを繰り返し行うことによって、得られるPZT系圧電体膜の膜厚を容易に調整することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の圧電体膜の製造方法においては、第1仮焼成工程S04の前に有機物除去工程S03を行うので、有機物の急激な蒸発による第1仮焼成膜の剥離やクラックの発生が抑制されるので、PZT系圧電体膜をより確実に高い歩留まりで製造することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の圧電体膜10によれば、正方晶系ペロブスカイト結晶はa軸の長さに対するc軸の長さの比が1.0071以上1.0204以下の範囲内にあるので、圧電特性が向上する。また、厚み方向のジルコニアとチタンの濃度を線分析したときに、ジルコニアの濃度に対するチタンの濃度の比の最低値と最高値の差が0.1よりも大きく、0.45以下であり、厚み方向にわずかな濃度勾配を備えるので耐電特性が向上する。
【0056】
本実施形態の圧電体膜10においては、Cu-Kα線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークの半値幅が、回折角2θで1.40度以下とすることによって、正方晶系ペロブスカイト結晶の配向方向のばらつきが小さくなり、圧電体膜の圧電特性がより向上する。
【0057】
また、本実施形態の圧電体膜10においては、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンを含み、ジルコニアの濃度とチタンの濃度が厚み方向に勾配を有することによって、耐電特性がより向上する。
【0058】
本実施形態の圧電素子1は、圧電体層11が上記の圧電体膜10を含むので、圧電特性と耐電特性が向上する。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的要件を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、有機物除去工程S03を行っているが、塗布工程S01で用いる塗布液が有機物を含まない場合、有機物除去工程S03は省略してもよい。
また、本実施形態では、第2仮焼成工程S06の前に、第1仮焼成膜の膜厚判定工程S05を行っているが、塗布工程S01での塗布液の塗布量から第1仮焼成膜の膜厚が正確に予測できる場合は、第1仮焼成膜の膜厚判定工程S05を省略してもよい。
塗布工程S01の前に、塗布液の結晶化開始温度の測定を行ってもよい。
【0060】
なお、本実施形態の圧電体膜の製造方法によって得られる圧電体膜は、a軸の長さに対するc軸の長さの比が1.0071以上1.0204以下の範囲内にある正方晶系ペロブスカイト結晶を有するものに限定されるものではない。
【実施例
【0061】
次に、本発明の作用効果を実施例により説明する。
【0062】
<本発明例1>
[基板の作製]
耐熱性基板として、4インチのシリコン基板を用意した。用意したシリコン基板の表面に熱酸化により厚さ500nmの熱酸化膜を形成した。次いで、この熱酸化膜上にスパッタリング法により厚さ20nmのチタン膜を形成した。次いで急速加熱処理(RTA)にて酸素雰囲気中で700℃に1分間保持して焼成することにより、チタン膜を酸化させてチタン酸化膜を形成した。次に、このチタン酸化膜の表面にスパッタリング法により(111)配向した厚さ100nmのPt下部電極を形成した。さらに、Pt下部電極の表面に、ゾルゲル法により厚さ15nmのニッケル酸ランタン膜を形成した。こうして、シリコン基板の表面に、下から上方へ、シリコン酸化膜、チタン酸化膜、Pt下部電極、ニッケル酸ランタン膜がこの順で積層された基板を作製した。
【0063】
[PZT系圧電体膜成形用塗布液]
PZT系圧電体膜成形用塗布液として、三菱マテリアル株式会社製のPZT-N液(PZT換算濃度:25質量%、Pb:Zr:Tiのモル比=112:52:48)を用意した。このPZT系圧電体膜成形用塗布液の結晶化開始温度を、下記の方法により測定したところ、550℃であった。
【0064】
(結晶化開始温度の測定)
上記基板のニッケル酸ランタン膜の表面に、PZT系圧電体膜成形用塗布液を滴下しながら、3000rpmで20秒間スピンコートすることにより、塗布膜を得て、塗布膜付き基板を作製した。得られた塗布膜付き基板を、ホットプレートの上に配置した。次いで、ホットプレートの温度を65℃に設定し、大気雰囲気中で塗布膜を1分間加熱して乾燥膜を得た。次に、ホットプレートの温度を285℃に設定し、大気雰囲気中で乾燥膜を3分間加熱して乾燥膜に含まれている有機物を除去した。次に、ホットプレートの温度を450℃に設定し、大気雰囲気中で乾燥膜を1分間焼成して焼成膜を作製した。同様の操作により450℃から600℃まで5℃刻みのそれぞれの温度で焼成した焼成膜を作製した。作製した焼成膜について、CuKα線を用いた集中法によりX線回折パターンを測定し、得られたX線回折パターンにおいて、回折角2θで22度前後にPZT膜の(100)面に由来するピーク(正方晶系ペロブスカイト結晶の(100)面に由来する回折ピーク)があるか確認した。このピークが確認された焼成膜において、焼成膜が作製された最低焼成温度を結晶化開始温度とした。
【0065】
[PZT系圧電体膜付き基板の作製]
基板のニッケル酸ランタン膜の表面に、PZT系圧電体膜成形用塗布液を滴下しながら、3000rpmで20秒間スピンコートすることにより、塗布膜を得て、塗布膜付き基板を作製した(塗布工程)。
得られた塗布膜付き基板を、ホットプレートの上に配置した。次いで、ホットプレートの温度を65℃に設定し、大気雰囲気中で塗布膜を1分間加熱して乾燥膜を得た(乾燥工程)。
次に、ホットプレートの温度を285℃に設定し、大気雰囲気中で乾燥膜を3分間加熱して乾燥膜に含まれている有機物を除去した(有機物除去工程)。
次に、ホットプレートの温度を550℃に設定し、大気雰囲気中で乾燥膜を1分間加熱して、第1仮焼成膜を得た(第1仮焼成工程)。
次いで、塗布工程と、乾燥工程と、有機物除去工程と、第1仮焼成工程とを4回繰り返して、厚さ0.8μmの第1仮焼成膜を得て、第1仮焼成膜付き基板を作製した。
【0066】
次に、第1仮焼成膜付き基板を配置したホットプレートの温度を575℃に設定し、大気雰囲気中で第1仮焼成膜を1分間加熱して、第2仮焼成膜を得た(第2仮焼成工程)。
次に、ホットプレートの温度を700℃に設定し、大気雰囲気中で第2仮焼成膜を1分間加熱して、PZT系圧電体膜を得た(本焼成工程)。こうして、本発明例1のPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0067】
<本発明例2~7>
下記の表1に示すように、第1仮焼成温度または第2仮焼成温度を変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0068】
<本発明例8>
[PZT系圧電体膜成形用塗布液]
PZT系圧電体膜成形用塗布液として、三菱マテリアル社製のPZT-N液(PZT換算濃度:25質量%、Pb:Zr:Tiのモル比=112:40:60)を用意した。このPZT系圧電体膜成形用塗布液の結晶化開始温度は、525℃であった。
【0069】
[PZT系圧電体膜付き基板の作製]
上記のPZT系圧電体膜成形用塗布液を用いたこと、下記の表1に示すように、第2仮焼成温度を変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜を作製した。
【0070】
<比較例1>
第1仮焼成工程を行わずに、塗布工程と、乾燥工程と、有機物除去工程とを4回繰り返して、0.8μmの乾燥膜を得た。また得られた乾燥膜を、第2仮焼成工程を行わずに、ホットプレートの温度を700℃に設定し、大気雰囲気中で1分間加熱した。これら以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0071】
<比較例2>
下記の表1に示すように、第1仮焼成温度と第2仮焼成温度を変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0072】
<比較例3>
第2仮焼成工程を行わずに、ホットプレートの温度を700℃に設定し、大気雰囲気中で第1仮焼成膜を1分間加熱したこと以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0073】
<比較例4~5>
下記の表1に示すように、第2仮焼成温度を変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0074】
<比較例6>
下記の表1に示すように、第2仮焼成温度と本焼成温度を変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0075】
【表1】
【0076】
<評価>
本発明例1~8及び比較例1~6で得られたPZT系圧電体膜付き基板について、PZT系圧電体膜の膜厚、クラック及び剥離の有無、PZT系圧電体膜の結晶サイズ、PZT系圧電体膜の結晶性(正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面の半値幅)、濃度勾配を下記の方法により測定した。また、PZT系圧電体膜付き基板を用いて下記の方法により、評価試料(圧電素子)を作製し、PZT系圧電体膜の圧電特性(圧電定数d33)と耐電特性(絶縁破壊電圧)を測定した。なお、評価試料の作製とPZT系圧電体膜の圧電定数d33と絶縁破壊電圧の測定は、PZT系圧電体膜にクラックあるいは剥離が発生していないPZT系圧電体膜付き基板を用いて行った。この結果を、下記の表2に示す。
【0077】
(1)PZT系圧電体膜の膜厚
PZT系圧電体膜の全体の膜厚はSEM観察により計測した。
【0078】
(2)PZT系圧電体膜の剥離・クラックの発生数
PZT系圧電体膜の剥離・クラックの発生数は目視により評価した。評価は、10個の圧電体膜に対して行った。表2には、剥離・クラックが発生していたPZT系圧電体膜の個数を記載した。
【0079】
(3)PZT系圧電体膜の結晶サイズ
Cu-Kα線を用いたインプレーン法により、圧電体膜のX線回折パターンを測定した。X線回折装置は、株式会社リガク社製、型式:SmartLabを用いた。得られたX線回折パターンを、全回折パターンフィッティング(WPPD)を用いて解析して、正方晶系ペロブスカイト結晶のサイズ(a軸の長さ、c軸の長さ)を求めた。
【0080】
(4)PZT系圧電体膜の結晶性(配向方向のばらつき)
Cu-Kα線を用いたアウトオブプレーン法により、圧電体膜のX線回折パターンを測定した。X線回折装置は、スペクトリス社製、型式:EMPYREAN(光学系:集中法)を用いた。得られたX線回折パターンを用いて、正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面に由来する回折ピークの半値幅を求めた。
【0081】
(5)濃度勾配
PZT系圧電体膜をFIB(集束イオンビーム)により薄片化し、TEM-EDSにより、厚み方向のジルコニアとチタンの濃度を線分析した。得られたチタンの濃度とジルコニアの濃度からTi/Zr比(モル比)を算出し、Ti/Zr比の最低値と最高値の差(Ti/Zr比の差)を求めた。なお、Ti/Zr比の最低値と最高値の差が0.1以下の場合は、濃度勾配なしとした。
【0082】
(6)評価試料(圧電素子)の作製
本発明例1~8及び比較例1~6のPZT系圧電体膜付き基板の表面にスパッタリング法によりPt上部電極(厚さ:150nm)を形成した。次いで、ウエットエッチングによりPZT系圧電体膜とニッケル酸ランタン膜とを除去することによってPt下部電極を露出させた。次いで、急速加熱処理装置(RTA)を用いて、酸素雰囲気中で1分間熱処理することにより、本発明例1~8及び比較例1~6の評価試料をそれぞれ作製した。
【0083】
(7)圧電特性:圧電定数d33
得られた評価試料を、面積1mmの角形に形成した。これらの評価試料(PZT系圧電体膜)の圧電定数d33は、DBLI system(aix ACCT社製)を用いて測定した。DBLI systemにより、評価試料のPt下部電極とPt上部電極との間に、±25V(-25V~+25V、周波数:1kHz)の交流電圧を印加したときの33方向の電界当たりの機械的変位割合を圧電定数d33として測定した。
【0084】
(8)耐電特性
得られた評価試料に電圧を印加し、リーク電流密度が1.0×10-4A/cmに到達したときの電圧を絶縁破壊電圧とした。
【0085】
【表2】
【0086】
第1仮焼成温度、第2仮焼成温度及び本焼成温度が本実施形態の範囲にある本発明例1~8で作製したPZT系圧電体膜は、(400)面の半値幅が小さく、圧電定数d33が高くなった。これは、PZT系圧電体膜の厚さ方向の組成の均一性が向上したためであると考えられる。
【0087】
これに対して、第1仮焼成工程と第2仮焼成工程を行わなかった比較例1で作製したPZT系圧電体膜は、(400)面の半値幅が大きくなった。これは、乾燥膜を高温で焼成したことによって、ペロブスカイト結晶が一時に生成して、厚み方向における組成が不均一となったためであると考えられる。第1仮焼成温度が600℃(結晶化開始温度+50℃)と高い比較例2で作製したPZT系圧電体膜は、(400)面の半値幅が大きくなった。これは、第1仮焼成工程において、結晶化温度が低いチタン酸鉛が多く生成し、厚み方向における組成が不均一となったためであると考えられる。第2仮焼成工程を行わなかった比較例3で作製したPZT系圧電体膜は、剥離やクラックが多く発生し、歩留まりが低下した。これは、本焼成工程において、膜の結晶化による膜構造の変化量が大きくなり、膜内に発生する応力が大きくなったためであると考えられる。第2仮焼成温度が570℃(結晶化開始温度+20℃)と低い比較例4で作製したPZT系圧電体膜は、剥離やクラックが多く発生し、歩留まりが低下した。これは、第2仮焼成温度と本焼成温度(700℃)との差が大きいため、本焼成工程において、膜の結晶化による膜構造の変化量が大きくなり、膜内に発生する応力が大きくなったためであると考えられる。一方、第2仮焼成温度が660℃(結晶化開始温度+110℃)と高い比較例5で作製したPZT系圧電体膜は、(400)面の半値幅が大きくなった。これは、第2仮焼成工程において、結晶化温度が低いチタン酸鉛が多く生成し、厚み方向における組成が不均一となったためであると考えられる。本焼成温度が640℃(結晶化開始温度+90℃)と低い比較例6で作製したPZT系圧電体膜は(400)面の半値幅が小さいが、このPZT系圧電体膜を用いて作製した圧電素子は、圧電定数d33が低くなった。これは、本焼成温度が低いため、PZT系圧電体膜の結晶化が進まず、膜全体の結晶化が不十分であったためであると考えられる。
【0088】
<本発明例9>
[基板の作製]
本発明例1と同様にして、シリコン基板の表面に、下から上方へ、熱酸化膜、チタン酸化膜、Pt下部電極、ニッケル酸ランタン膜がこの順で積層された基板を作製した。
【0089】
[PZT系圧電体膜成形用塗布液]
本発明例8で使用した三菱マテリアル株式会社製のPZT-N液(PZT換算濃度:25質量%、Pb:Zr:Tiのモル比=112:40:60、結晶化開始温度:525℃)を用意した。
【0090】
[PZT系圧電体膜付き基板の作製]
基板のニッケル酸ランタン膜の表面に、PZT系圧電体膜成形用塗布液を滴下しながら、3000rpmで20秒間スピンコートすることにより、塗布膜を得て、塗布膜付き基板を作製した(塗布工程)。
塗布膜付き基板を、ホットプレートの上に配置した。次いで、ホットプレートの温度を65℃に設定し、大気雰囲気中で塗布膜を1分間加熱して乾燥膜を得た(乾燥工程)。
次に、ホットプレートの温度を285℃に設定し、大気雰囲気中で乾燥膜を3分間加熱して乾燥膜に含まれている有機物を除去した(有機物除去工程)。
次に、ホットプレートの温度を550℃(結晶開示温度+25℃)に設定し、大気雰囲気中で乾燥膜を1分間加熱して、第1仮焼成膜を得た(第1仮焼成工程)。
次いで、塗布工程と、乾燥工程と、有機物除去工程と、第1仮焼成工程とを4回繰り返して、厚さ0.7μmの第1仮焼成膜を得て、第1仮焼成膜付き基板を作製した。
【0091】
次に、第1仮焼成膜付き基板を配置したホットプレートの温度を575℃(結晶開示温度+50℃)に設定し、大気雰囲気中で第1仮焼成膜を1分間加熱して、第2仮焼成膜を得た(第2仮焼成工程)。
次に、ホットプレートの温度を700℃(結晶開示温度+175℃)に設定し、大気雰囲気中で第2仮焼成膜を1分間加熱して、PZT系圧電体膜を得た(本焼成工程)。こうして、本発明例9のPZT系圧電体膜付き基板を作製した。
【0092】
<本発明例10~14、比較例7>
[PZT系圧電体膜成形用塗布液の調製]
PZT系圧電体膜成形用塗布液として、下記の表3に示す組成及び結晶化開始温度のPZT-N液(PZT換算濃度:25質量%、三菱マテリアル株式会社製)を用意した。各PZT系圧電体膜成形用塗布液の結晶化開始温度を、下記の表3に示す。
【0093】
[PZT系圧電体膜付き基板の作製]
上記のPZT系圧電体膜成形用塗布液を用いたこと、乾燥温度、有機物除去温度、第1仮焼成温度、第2仮焼成温度および本焼成温度を下記の表3に示す温度としたこと以外は、本発明例9と同様にしてPZT系圧電体膜を作製した。
【0094】
<比較例8>
基板のニッケル酸ランタン膜の表面に、RFスパッタリング法より、PZT系圧電体膜を作製した。ターゲットとして、PbZrTiOターゲット(Pb:Zr:Tiのモル比=112:45:55)を用いて基板温度550℃、RF300W、Arガス流量40sccmの条件で2.0μm厚のPZT膜を形成した。
【0095】
<評価>
本発明例9~14および比較例7~8で得られたPZT系圧電体膜付き基板について、PZT系圧電体膜の膜厚、クラック及び剥離の有無、PZT系圧電体膜の結晶サイズ、PZT系圧電体膜の結晶性(正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面の半値幅)、濃度勾配、圧電特性(圧電定数d33)、耐電特性(絶縁破壊電圧)を測定した。この結果を、下記の表4に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
ZrとTiの含有量比がモル比で54:46~40:60の範囲内にあるPZT系圧電体膜成形用塗布液を用いた本発明例9~14で得られたPZT系圧電体膜は、ZrとTiの含有量比がモル比で58:42であるPZT系圧電体膜成形用塗布液を用いた比較例7で得られたPZT系圧電体膜と比較して、圧電定数d33が大きくなり、圧電特性が向上した。特に、ZrとTiの含有量比がモル比で50:50~40:60の範囲内にあるPZT系圧電体膜成形用塗布液を用いた本発明例9~12で得られたPZT系圧電体膜は、正方晶系ペロブスカイト結晶のa軸の長さに対するc軸の長さの比(c軸/a軸比)が1.0071以上1.0204以下の範囲内にあり、圧電定数d33が大きく、圧電特性が大きく向上することが確認された。また、スパッタリング法により作製された比較例8のPZT系圧電体膜は、絶縁破壊電圧が小さく、耐電特性が低いことが確認された。これは、厚み方向に濃度勾配を備えないためであると考えられる。
【0099】
<本発明例15>
[基板の作製]
本発明例1と同様にして、シリコン基板の表面に、下から上方へ、熱酸化膜、チタン酸化膜、Pt下部電極、ニッケル酸ランタン膜がこの順で積層された基板を作製した。
【0100】
[PZT系圧電体膜成形用塗布液]
本発明例1で使用した三菱マテリアル株式会社製のPZT-N液(PZT換算濃度:25質量%、Pb:Zr:Tiのモル比=112:52:48、結晶化開始温度:550℃)を用意した。
【0101】
[PZT系圧電体膜付き基板の作製]
塗布工程と、乾燥工程と、有機物除去工程と、第1仮焼成工程とを8回繰り返して、厚さ1.6μmの第1仮焼成膜を得て、第1仮焼成膜付き基板を作製したこと以外は、本発明例1と同様にして、PZT系圧電体膜を作製した。
【0102】
<本発明例16>
基板のニッケル酸ランタン膜の上に、RFスパッタリング法より、厚さが4nmのチタン酸鉛膜を形成したこと以外は、本発明例15と同様にして、PZT系圧電体膜を作製した。
【0103】
<本発明例17>
PZT系圧電体膜付き基板の作製において、塗布工程と、乾燥工程と、有機物除去工程と、第1仮焼成工程とを12回繰り返して、厚さ2.4μmの第1仮焼成膜を得て、第1仮焼成膜付き基板を作製したこと以外は、本発明例15と同様にして、PZT系圧電体膜を作製した。
【0104】
<評価>
本発明例15~17で得られたPZT系圧電体膜付き基板について、PZT系圧電体膜の膜厚、クラック及び剥離の有無、PZT系圧電体膜の結晶サイズ、PZT系圧電体膜の結晶性(正方晶系ペロブスカイト結晶の(400)面の半値幅)、濃度勾配、圧電特性(圧電定数d33)、耐電特性(絶縁破壊電圧)を測定した。本発明例15~17のPZT系圧電体膜付き基板の製造条件を、下記の表5に示す。また、評価結果を、下記の表6に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
本発明例15~17で得られたPZT系圧電体膜は、本発明例1で得られたPZT系圧電体膜と比較して、圧電定数d33と絶縁破壊電圧が大きく、圧電特性と耐電特性が向上することが確認された。また、基板のニッケル酸ランタン膜の表面にチタン酸鉛膜を形成した本発明例16では、剥離・クラックの発生数が0個になった。これは、チタン酸鉛膜が介在することによって、基板とPZT系圧電体膜との密着性が向上したためである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本実施形態によると、厚み方向における組成の均一性が高い圧電体膜を、組成の異なる塗布液を用いずに、かつ高い歩留まりで製造できる。また、圧電特性と耐電特性が高い圧電体膜および圧電素子を提供できる。このため、本実施形態は、振動発電素子、センサ、アクチュエータ、インクジェットヘッド、オートフォーカスなどに用いられる圧電素子中の圧電体膜及びその製造工程に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0109】
1 圧電素子
10 圧電体膜
11 圧電体層
20 電極層
21 上部電極
22 下部電極
図1
図2