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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】物体検知装置および制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/524 20060101AFI20221101BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20221101BHJP
【FI】
G01S7/524 R
G01S15/931
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021527546
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021775
(87)【国際公開番号】W WO2020261894
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2019118736
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔也
(72)【発明者】
【氏名】野村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】野呂 覚
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298266(JP,A)
【文献】特開2006-084428(JP,A)
【文献】特開2014-025914(JP,A)
【文献】特開昭61-271485(JP,A)
【文献】特開2013-088279(JP,A)
【文献】特開平10-039016(JP,A)
【文献】特開2019-082436(JP,A)
【文献】米国特許第05515339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検知装置(1)であって、
各々が超音波である探査波を送信するとともに周囲の物体(B)による前記探査波の反射波を受信することで前記物体を検知する、複数の超音波センサ(2)と、
複数の前記超音波センサの各々における動作を制御する、制御部(3)と、
を備え、
複数の前記超音波センサは、各々の前記探査波が互いに識別可能な異なる特徴を有するように設けられ、
前記制御部は、
複数の前記超音波センサの各々における前記探査波の送信タイミングを設定する、送信タイミング設定部(31)と、
前記送信タイミング設定部によって設定された前記送信タイミングに基づいて、複数の前記超音波センサの各々に対して前記探査波の送信動作開始を指示する、送信指示部(32)と、
を備え、
前記送信タイミング設定部は、
複数の前記超音波センサのうちの1つを第一超音波センサとし他の1つを第二超音波センサとした場合に、前記第一超音波センサにおける前記送信タイミングである第一送信タイミング(Tt1)と前記第二超音波センサにおける前記送信タイミングである第二送信タイミング(Tt2)との間に、遅延時間を設定し、
前記遅延時間を、前記第一超音波センサによる検知範囲である第一検知範囲(DR1)と前記第二超音波センサによる検知範囲である第二検知範囲(DR2)とが重複する重複範囲(DRM)における、前記第一超音波センサからの前記探査波の伝搬経路(P1)と前記第二超音波センサからの前記伝搬経路(P2)との差である伝搬経路差の最大値(|P1X-P2X|)を音速で除した値以上とする、
物体検知装置。
【請求項2】
前記送信タイミング設定部は、前記第一超音波センサと前記第二超音波センサとの間隔であるセンサ間隔(DS)を音速で除した値以下に、前記遅延時間を設定する、
請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記送信タイミング設定部は、前回の前記第一送信タイミングからその直後の前記第二送信タイミングまでの前記遅延時間と、今回の前記第一送信タイミングからその直後の前記第二送信タイミングまでの前記遅延時間とが異なるように、前記第一送信タイミングの到来毎に前記遅延時間を変更する、
請求項1または2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記送信タイミング設定部は、前記第二超音波センサにて、受信した前記反射波と残響との重複、または、受信した前記反射波同士の重複が発生した場合に、前記遅延時間を変更する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記送信タイミング設定部は、前記遅延時間の変更量を、前記反射波の受信信号の時間幅(BW)以上とする、
請求項3または4に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記送信タイミング設定部は、前記遅延時間の変更量を、残響時間以上とする、
請求項3または4に記載の物体検知装置。
【請求項7】
互いに識別可能な異なる特徴を有する超音波である探査波を送信するとともに周囲の物体(B)による前記探査波の反射波を受信することで前記物体を検知する超音波センサ(2)を複数備えた物体検知装置(1)における複数の前記超音波センサの各々の動作を制御する、制御装置(3)であって、
複数の前記超音波センサの各々における前記探査波の送信タイミングを設定する、送信タイミング設定部(31)と、
前記送信タイミング設定部によって設定された前記送信タイミングに基づいて、複数の前記超音波センサの各々に対して前記探査波の送信動作開始を指示する、送信指示部(32)と、
を備え、
前記送信タイミング設定部は、
複数の前記超音波センサのうちの1つを第一超音波センサとし他の1つを第二超音波センサとした場合に、前記第一超音波センサにおける前記送信タイミングである第一送信タイミング(Tt1)と前記第二超音波センサにおける前記送信タイミングである第二送信タイミング(Tt2)との間に、遅延時間を設定し、
前記遅延時間を、前記第一超音波センサによる検知範囲である第一検知範囲(DR1)と前記第二超音波センサによる検知範囲である第二検知範囲(DR2)とが重複する重複範囲(DRM)における、前記第一超音波センサからの前記探査波の伝搬経路(P1)と前記第二超音波センサからの前記伝搬経路(P2)との差である伝搬経路差の最大値(|P1X-P2X|)を音速で除した値以上とする、
制御装置。
【請求項8】
前記送信タイミング設定部は、前記第一超音波センサと前記第二超音波センサとの間隔であるセンサ間隔(DS)を音速で除した値以下に、前記遅延時間を設定する、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記送信タイミング設定部は、前回の前記第一送信タイミングからその直後の前記第二送信タイミングまでの前記遅延時間と、今回の前記第一送信タイミングからその直後の前記第二送信タイミングまでの前記遅延時間とが異なるように、前記第一送信タイミングの到来毎に前記遅延時間を変更する、
請求項7または8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記送信タイミング設定部は、前記第二超音波センサにて、受信した前記反射波と残響との重複、または、受信した前記反射波同士の重複が発生した場合に、前記遅延時間を変更する、
請求項7~9のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項11】
前記送信タイミング設定部は、前記遅延時間の変更量を、前記反射波の受信信号の時間幅(BW)以上とする、
請求項9または10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記送信タイミング設定部は、前記遅延時間の変更量を、残響時間以上とする、
請求項9または10に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2019年6月26日に出願された日本特許出願番号2019-118736号に基づくもので、ここにその記載内容が参照により組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、物体検知装置、および、複数の超音波センサの各々の動作を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に開示された障害物検知装置は、制御装置と、複数の超音波センサとを備えている。制御装置は、複数の超音波センサで同時に超音波の送受信を行って、障害物の位置を検知する。具体的には、制御装置は、障害物を検知した2以上の特定の超音波センサを順次切り替えて送信を行うとともに、全ての超音波センサで受信を行う。そして、制御装置は、障害物を検知した特定の超音波センサの検知エリアで障害物の検知が不能になるまで、障害物の検知を継続する。これにより、高速に接近する障害物に対する応答性が高められ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/146619号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に開示された障害物検知装置のように、複数の超音波センサで同時に超音波の送受信を行うことで、装置全体における検知周期を短縮して検知を高速化することが可能となる。しかしながら、特許文献1に開示された障害物検知装置においては、障害物を検知した2以上の超音波センサを特定するまでに時間を要してしまう。また、送信を行う超音波センサを、複数の超音波センサのうちの特定のものに限定した状態では、検知可能範囲が限定されてしまう。
本開示は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示は、例えば、複数の超音波センサを用いた物体検知において、検知周期の短縮による検知の高速化を良好に実現することが可能な、構成および方法を提供する。
【0006】
請求項1に記載の物体検知装置は、
各々が超音波である探査波を送信するとともに周囲の物体による前記探査波の反射波を受信することで前記物体を検知する、複数の超音波センサと、
複数の前記超音波センサの各々における動作を制御する、制御部と、
を備え、
複数の前記超音波センサは、各々の前記探査波が互いに識別可能な異なる特徴を有するように設けられ、
前記制御部は、
複数の前記超音波センサの各々における前記探査波の送信タイミングを設定する、送信タイミング設定部と、
前記送信タイミング設定部によって設定された前記送信タイミングに基づいて、複数の前記超音波センサの各々に対して前記探査波の送信動作開始を指示する、送信指示部と、
を備え、
前記送信タイミング設定部は、
複数の前記超音波センサのうちの1つを第一超音波センサとし他の1つを第二超音波センサとした場合に、前記第一超音波センサにおける前記送信タイミングである第一送信タイミングと前記第二超音波センサにおける前記送信タイミングである第二送信タイミングとの間に、遅延時間を設定し、
前記遅延時間を、前記第一超音波センサによる検知範囲である第一検知範囲と前記第二超音波センサによる検知範囲である第二検知範囲とが重複する重複範囲における、前記第一超音波センサからの前記探査波の伝搬経路と前記第二超音波センサからの前記伝搬経路との差である伝搬経路差の最大値を音速で除した値以上とする。
請求項7に記載の制御装置は、複数の超音波センサを備えた物体検知装置における前記超音波センサの各々の動作を制御するように構成されている。複数の前記超音波センサの各々は、互いに識別可能な異なる特徴を有する超音波である探査波を送信するとともに、周囲の物体による前記探査波の反射波を受信することで前記物体を検知するように構成されている。
この制御装置は、
複数の前記超音波センサの各々における前記探査波の送信タイミングを設定する、送信タイミング設定部と、
前記送信タイミング設定部によって設定された前記送信タイミングに基づいて、複数の前記超音波センサの各々に対して前記探査波の送信動作開始を指示する、送信指示部と、
を備え、
前記送信タイミング設定部は、
複数の前記超音波センサのうちの1つを第一超音波センサとし他の1つを第二超音波センサとした場合に、前記第一超音波センサにおける前記送信タイミングである第一送信タイミングと前記第二超音波センサにおける前記送信タイミングである第二送信タイミングとの間に、遅延時間を設定し、
前記遅延時間を、前記第一超音波センサによる検知範囲である第一検知範囲と前記第二超音波センサによる検知範囲である第二検知範囲とが重複する重複範囲における、前記第一超音波センサからの前記探査波の伝搬経路と前記第二超音波センサからの前記伝搬経路との差である伝搬経路差の最大値を音速で除した値以上とする。
【0007】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本開示は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る物体検知装置および制御部の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示された物体検知装置および制御部による送信タイミングの設定方法の概要を示す概念図である。
図3図1に示された物体検知装置における送受信動作の一例を示すタイムチャートである。
図4図1に示された物体検知装置における送受信動作の他の一例を示すタイムチャートである。
図5図1に示された物体検知装置における送受信動作のさらに他の一例を示すタイムチャートである。
図6図1に示された物体検知装置における送受信動作のさらに他の一例を示すタイムチャートである。
図7図1に示された物体検知装置の一動作例を示すフローチャートである。
図8図7に示された送信条件設定動作の一例を示すフローチャートである。
図9図7に示された送信条件設定動作の他の一例を示すフローチャートである。
図10図7に示された送信条件設定動作のさらに他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0010】
(全体構成)
図1を参照すると、物体検知装置1は、不図示の車両に搭載されていて、当該車両の周囲の物体Bを検知するように構成されている。物体検知装置1を搭載する車両を、以下「自車両」と称する。不図示の車両は、例えば、自動車である。
【0011】
物体検知装置1は、複数の超音波センサ2と、これら複数の超音波センサ2の各々における動作を制御する制御部3とを備えている。複数の超音波センサ2の各々は、超音波である探査波を送信するとともに探査波の物体Bによる反射波を受信することで、物体Bを検知するように構成されている。
【0012】
超音波センサ2は、トランスデューサ21と、送信回路22と、受信回路23と、駆動信号生成部24と、受信信号処理部25とを備えている。トランスデューサ21は、探査波を外部に向けて送信する送信器としての機能と、反射波を受信する受信器としての機能とを有していて、送信回路22および受信回路23と電気接続されている。すなわち、超音波センサ2は、いわゆる送受信一体型の構成を有している。
【0013】
具体的には、トランスデューサ21は、圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子を内蔵した、超音波マイクロフォンとして構成されている。トランスデューサ21は、探査波を自車両の外部に送信可能および反射波を自車両の外部から受信可能なように、自車両の外表面に面する位置に配置されている。
【0014】
送信回路22は、入力された駆動信号に基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて探査波を発信させるように設けられている。具体的には、送信回路22は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路22は、駆動信号生成部24から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の信号処理を施すことで、素子入力信号を生成するように構成されている。素子入力信号は、トランスデューサ21を駆動するための交流電圧信号である。そして、送信回路22は、生成した素子入力信号をトランスデューサ21に印加してトランスデューサ21における電気-機械エネルギー変換素子を励振することで、探査波を発生させるように構成されている。
【0015】
受信回路23は、トランスデューサ21による受信波の受信結果に対応する受信信号を生成して受信信号処理部25に出力するように設けられている。具体的には、受信回路23は、増幅回路およびアナログ/デジタル変換回路等を有している。すなわち、受信回路23は、トランスデューサ21が出力した素子出力信号に対して、増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を施すことで、受信波の振幅および周波数に関する情報を含む受信信号を生成するように構成されている。素子出力信号は、受信波の受信により、トランスデューサ21に設けられた電気-機械エネルギー変換素子が発生する交流電圧信号である。
【0016】
駆動信号生成部24は、駆動信号を生成して送信回路22に出力するように設けられている。駆動信号は、トランスデューサ21を駆動してトランスデューサ21から探査波を発信させるための信号である。
【0017】
複数の超音波センサ2は、各々の探査波が互いに識別可能な異なる特徴を有するように設けられている。すなわち、駆動信号生成部24は、送信元を識別可能な特徴を探査波に付与するような駆動信号を生成するように構成されている。具体的には、本実施形態においては、駆動信号生成部24は、所定の周波数変調状態を有する探査波における周波数変調状態に対応する駆動信号を生成するようになっている。
【0018】
所定の周波数変調状態は、例えば、アップチャープまたはダウンチャープを含む。アップチャープは、時間経過とともに周波数が単調増加するような周波数変調状態である。ダウンチャープは、時間経過とともに周波数が単調減少するような周波数変調状態である。具体的には、例えば、駆動信号生成部24は、符号「01」に対応するアップチャープ信号と、符号「10」に対応するダウンチャープ信号と、符号「11」に対応するCW信号とを組み合わせた複数ビットの符号を、探査波に付与可能に構成されている。CW信号は、時間経過とともに周波数が変化しない、周波数一定の信号である。CWはcontinuous waveformの略である。CW信号に対応する「周波数一定」状態も、「周波数変調状態」に含まれる。CW信号はCF信号とも称される。CFはcontinuous frequencyの略である。
【0019】
複数の超音波センサ2の各々における駆動信号生成部24は、それぞれ異なる符号化状態に対応する駆動信号を生成および出力するように設けられている。具体的には、例えば、或る1つの超音波センサ2における駆動信号生成部24は、「01,10,11」という3ビット符号に対応する駆動信号を生成するようになっている。また、他の1つの超音波センサ2における駆動信号生成部24は、「10,01,11」という3ビット符号に対応する駆動信号を生成するようになっている。
【0020】
受信信号処理部25は、受信信号に対してFFT等の処理を施すことで、振幅信号と受信周波数信号とを生成するように構成されている。FFTはFast Fourier Transformの略である。振幅信号は、受信波の振幅に対応する信号である。受信周波数信号は、受信波における周波数信号、すなわち、受信周波数に対応する信号である。換言すれば、受信周波数信号は、受信信号における、符号化状態に対応する信号である。また、受信信号処理部25は、生成した振幅信号および受信周波数信号を、制御部3に出力するように設けられている。
【0021】
(制御装置)
制御部3は、車載通信回線を介して、複数の超音波センサ2と情報通信可能に接続されている。本開示における制御装置に相当する制御部3は、複数の超音波センサ2の各々における送受信動作を制御するように構成されている。
【0022】
制御部3は、いわゆるソナーECUとして設けられていて、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ、等を有する車載マイクロコンピュータを備えている。ECUはElectronic Control Unitの略である。不揮発性リライタブルメモリは、例えば、EEPROM、フラッシュROM、等である。EEPROMはElectronically Erasable and Program-mable Read Only Memoryの略である。制御部3のCPU、ROM、RAMおよび不揮発性リライタブルメモリを、以下単に「CPU」、「ROM」、「RAM」および「不揮発性RAM」と略称する。制御部3は、車載マイクロコンピュータにて実現された機能構成として、送信タイミング設定部31と、送信指示部32と、検知結果取得部33とを有している。
【0023】
送信タイミング設定部31は、複数の超音波センサ2の各々における探査波の送信タイミングを設定するように設けられている。本実施形態においては、複数の超音波センサ2の各々が互いに異なる送信タイミングにて探査波を送信するように、送信タイミング設定部31は、複数の超音波センサ2の各々における相互の位置関係に基づいて遅延時間を設定するように構成されている。具体的には、送信タイミング設定部31は、基本タイミング設定部311と、遅延時間設定部312とを有している。
【0024】
基本タイミング設定部311は、複数の超音波センサ2の各々に対して、基本タイミングを設定するように設けられている。基本タイミングは、複数の超音波センサ2の各々にて、互いに同一周期で到来するように設定された送信タイミングである。すなわち、基本タイミングは、遅延時間設定部312により補正される前の送信タイミングである。
【0025】
遅延時間設定部312は、所定周期で到来する送信タイミングを基本タイミングからタイムシフトさせる遅延時間を、複数の超音波センサ2の各々に対して設定するように設けられている。すなわち、遅延時間設定部312は、複数の超音波センサ2の各々における相互の位置関係に基づいて、基本タイミングに対する遅延時間を設定するように構成されている。具体的には、遅延時間設定部312は、基本タイミングにて探査波を一定周期で発信する超音波センサ2とは異なる他の超音波センサ2における、探査波の送信タイミングを、基本タイミングから遅延時間分遅延させるようになっている。遅延時間の設定の具体例については後述する。
【0026】
送信指示部32は、送信タイミング設定部31によって設定された送信タイミングに基づいて、複数の超音波センサ2の各々に対して探査波の送信動作開始を指示するように設けられている。具体的には、送信指示部32は、送信タイミングが到来した超音波センサ2に制御信号を送信することで、当該超音波センサ2にて探査波の送信動作を開始させるようになっている。
【0027】
検知結果取得部33は、受信信号処理部25から振幅信号および受信周波数信号を取得するとともに、取得した振幅信号および受信周波数信号に基づいて物体Bを検知するように設けられている。具体的には、検知結果取得部33は、取得した受信周波数信号とROMまたは不揮発性RAMにあらかじめ記憶された所定の参照信号とを照合して受信周波数信号を復号することで、対応する受信波に含まれる符号を判定するようになっている。また、検知結果取得部33は、符号判定が成功した場合に、対応するトランスデューサ21を特定するとともに、振幅信号に基づいてトランスデューサ21から物体Bまでの距離を特定するようになっている。
【0028】
(動作概要)
以下、本実施形態の構成の動作概要について、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0029】
複数の超音波センサ2を備えた物体検知装置1、および、かかる物体検知装置1により実行される物体検知方法において、検知周期を可及的に短縮して検知を高速化することが求められている。この点、複数の超音波センサ2にて、探査波の送信タイミングに時間差を設けずに同時に送信できれば、物体検知装置1の全体としての検知周期を最短とすることが可能となる。
【0030】
しかしながら、複数の超音波センサで同時に超音波の送受信を行うと、送信元が異なる複数の探査波の物体Bによる反射波同士が重複することにより、検知不能な不感帯が発生する。具体的には、例えば、複数の反射波の重複により、送信元を特定するための符号判定が失敗する。
【0031】
一方、特許文献1に開示された装置および方法のように、複数の超音波センサ2で同時に送受信して、障害物すなわち物体Bを検知した2以上の特定の超音波センサを順次切り替え送信を行う構成および方法の採用が考慮され得る。しかしながら、かかる構成および方法においては、物体Bを検知した2以上の超音波センサ2を特定するまでに時間を要してしまう。また、送信を行う超音波センサ2を、複数の超音波センサ2のうちの特定のものに限定した状態では、検知可能範囲が限定されてしまう。
【0032】
そこで、本実施形態においては、制御部3は、複数の超音波センサ2の各々が互いに異なる送信タイミングにて探査波を送信するように、複数の超音波センサ2の各々における送信タイミングを制御する。すなわち、送信タイミング設定部31は、複数の超音波センサ2の各々における相互の位置関係に基づいて、複数の超音波センサ2の各々に遅延時間を設定する。
【0033】
図1図4を参照しつつ、遅延時間の設定の概要について説明する。図1において、複数の超音波センサ2のうちの1つを第一超音波センサSS1とし、他の1つを第二超音波センサSS2とする。第一超音波センサSS1におけるトランスデューサ21と物体Bとの間の伝搬経路を第一伝搬経路P1と称し、第二超音波センサSS2におけるトランスデューサ21と物体Bとの間の伝搬経路を第二伝搬経路P2と称する。
【0034】
図2は、自車両を真上から見た平面視における、第一超音波センサSS1、第二超音波センサSS2、第一検知範囲DR1、および第二検知範囲DR2の位置関係の概略を示す。第一検知範囲DR1は、第一超音波センサSS1による検知範囲である。第二検知範囲DR2は、第二超音波センサSS2による検知範囲である。センサ間隔DSは、第一超音波センサSS1と第二超音波センサSS2との間隔である。正確には、センサ間隔DSは、第一超音波センサSS1に設けられたトランスデューサ21と、第二超音波センサSS2に設けられたトランスデューサ21との間隔である。
【0035】
図3および図4は、第一超音波センサSS1および第二超音波センサSS2における送受信動作の概要を示す。図3等において、横軸は時間Tを示し、探査波の送信波形を矩形で示し、受信波の受信波形を三角形で示す。第一探査波W1は第一超音波センサSS1により送信される探査波であり、第二探査波W2は第二超音波センサSS2により送信される探査波である。第一送信タイミングTt1は、第一超音波センサSS1における第一探査波W1の送信タイミングすなわち送信開始タイミングである。第二送信タイミングTt2は、第二超音波センサSS2における第二探査波W2の送信タイミングすなわち送信開始タイミングである。
【0036】
また、図3等において、第一直接波R11は、物体Bによる第一探査波W1の反射波を第一超音波センサSS1が受信波として受信する場合の当該受信波である。第一間接波R12は、物体Bによる第一探査波W1の反射波を第二超音波センサSS2が受信波として受信する場合の当該受信波である。第二間接波R21は、物体Bによる第二探査波W2の反射波を第一超音波センサSS1が受信波として受信する場合の当該受信波である。第二直接波R22は、物体Bによる第二探査波W2の反射波を第二超音波センサSS2が受信波として受信する場合の当該受信波である。
【0037】
送信タイミング設定部31すなわち遅延時間設定部312は、第一送信タイミングTt1と第二送信タイミングTt2との間に、第一超音波センサSS1と第二超音波センサSS2との位置関係に基づいて決定される遅延時間ΔTを設定する。なお、遅延時間ΔTは、値が正の場合、第一探査波W1の送信タイミングと、その直後に到来する第二探査波W2の送信タイミングとの間の時間間隔である。一方、遅延時間ΔTは、値が負の場合、第一探査波W1の送信タイミングと、その直前に到来する第二探査波W2の送信タイミングとの間の時間間隔である。
【0038】
具体的には、遅延時間設定部312は、重複範囲DRMにおける最大伝搬経路差を音速で除した値以上に、遅延時間ΔTを設定する。重複範囲DRMは、第一検知範囲DR1と第二検知範囲DR2とが重複する範囲である。第一検知範囲DR1は、近似的に、第一超音波センサSS1におけるトランスデューサ21を頂点する楕円錐の底面と、当該底面と同一形状の底面を有する半回転楕円体とを、互いの底面で接合した、略ティアドロップ形状で表すことができる。上記の底面は、水平方向と平行な長径と、高さ方向と平行な短径とを有する楕円である。第二検知範囲DR2も同様に、近似的に、第二超音波センサSS2におけるトランスデューサ21を頂点する楕円錐の底面と、当該底面と同一形状の底面を有する半回転楕円体とを、互いの底面で接合した、略ティアドロップ形状で表すことができる。重複範囲DRMは、これら2つの略ティアドロップ形状が互いに重複する三次元的な範囲で表すことができる。
【0039】
最大伝搬経路差は、図2に示された第一基準伝搬経路P1Xと第二基準伝搬経路P2Xとの差、すなわち、|P1X-P2X|である。第一基準伝搬経路P1Xは、第一超音波センサSS1におけるトランスデューサ21と基準点BXとの間の伝搬経路である。第二基準伝搬経路P2Xは、第二超音波センサSS2におけるトランスデューサ21と基準点BXとの間の伝搬経路である。基準点BXは、重複範囲DRMに含まれる座標点であって、第一伝搬経路P1と第二伝搬経路P2との差である伝搬経路差が最大となる点である。図3は、最大伝搬経路差を音速で除した値に遅延時間ΔTを設定した場合を示す。すなわち、図3は、第一超音波センサSS1と第二超音波センサSS2との位置関係に基づいて決定される遅延時間ΔTの下限値を示す。
【0040】
また、遅延時間設定部312は、センサ間隔DSを音速で除した値以下に、遅延時間ΔTを設定する。図4は、センサ間隔DSを音速で除した値に遅延時間ΔTを設定した場合を示す。すなわち、図4は、第一超音波センサSS1と第二超音波センサSS2との位置関係に基づいて決定される遅延時間ΔTの上限値を示す。
【0041】
上記のように遅延時間ΔTを設定することで、第一超音波センサSS1における第一直接波R11と第二間接波R21との重複の発生を、可及的に回避することが可能となる。同様に、第二超音波センサSS2における第二直接波R22と第一間接波R12との重複の発生を、可及的に回避することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、物体検知周期の短縮による検知の高速化を良好に実現することが可能な、装置構成および物体検知方法が提供される。
【0042】
但し、単に遅延時間ΔTを上記のように設定しても、受信波同士の重複による混信、あるいは、受信波と残響との重複が発生することがあり得る。そこで、本実施形態に係る構成および方法においては、遅延時間設定部312は、複数の超音波センサ2による送信処理の実行中に、遅延時間ΔTを変更する。
【0043】
具体的には、例えば、遅延時間設定部312は、第一送信タイミングTt1の到来毎に遅延時間ΔTを変更する。これにより、前回の第一送信タイミングTt1からその直後の第二送信タイミングTt2までの遅延時間ΔTと、今回の第一送信タイミングTt1からその直後の第二送信タイミングTt2までの遅延時間とが異なるようにすることができる。
【0044】
図5および図6は、第一送信タイミングTt1の到来毎に、遅延時間ΔTを第一遅延時間ΔT1と第二遅延時間ΔT2とで切り替える例を示す。図5に示された例においては、第一遅延時間ΔT1=ΔTであり、第二遅延時間ΔT2=-ΔTである。すなわち、図5に示された例においては、遅延時間ΔTの絶対値は一定で、正負が交互に切り替えられる。
【0045】
一方、図6に示された例においては、第一遅延時間ΔT1と第二遅延時間ΔT2とは、ともに正値であり、絶対値が互いに異なる。遅延時間ΔTの変更量ΔT1-ΔT2は、例えば、反射波の受信信号の時間幅である受信波時間幅BW以上とされる。受信波時間幅BWは、例えば、受信波を三角波に近似した場合の、底辺の長さに対応する時間幅である。
【0046】
あるいは、遅延時間ΔTの変更量ΔT1-ΔT2は、例えば、残響時間以上とされる。「残響時間」は、周知の通り、駆動時間の終了時点から残響が収束するまで(すなわち残響に対応する振幅波形にて低下中の振幅が所定閾値に達するまで)の間の時間である。本実施形態においては、残響時間を規定する所定閾値としては、受信波の受信の有無を判定するための閾値、すなわち、路面反射波およびノイズと受信波とを弁別するための閾値と同一のものが用いられ得る。図6においては、第一探査波W1および第二探査波W2における探査波の送信波形を示す矩形が、超音波センサ2の駆動時間、すなわち、トランスデューサ21の駆動時間を示す。駆動時間は、駆動信号の出力期間に対応する。また、かかる駆動時間を示す矩形の直後に、残響を示す波形が、単純化された形で示されている。より好適には、遅延時間ΔTの変更量ΔT1-ΔT2は、例えば、探査波を送信するための超音波センサ2の駆動時間と残響時間とを含む不感帯時間以上とされる。
【0047】
図7および図8を用いて、送信タイミングの到来毎に、遅延時間ΔTを第一遅延時間ΔT1と第二遅延時間ΔT2とで切り替える動作例について説明する。図中、「S」は「ステップ」を略記したものである。制御部3におけるCPUは、物体検知条件が成立すると、図7に示された物体検知ルーチンをROMまたは不揮発性RAMから読み出して実行する。
【0048】
図7に示されたルーチンが起動されると、まず、ステップ701にて、CPUは、遅延時間ΔTを含む送信条件を設定する。送信条件設定の詳細については後述する。次に、ステップ702にて、CPUは、ステップ701にて設定した送信条件に基づいて送受信処理を実行する。
【0049】
続いて、ステップ703にて、CPUは、受信信号の復号化による符号判定を実行する。最後に、ステップ704にて、CPUは、符号判定結果に基づいて、物体検知結果を判定する。具体的には、CPUは、符号判定が成功した場合に、対応する振幅信号に基づいて、トランスデューサ21から物体Bまでの距離を算出する。また、CPUは、距離の算出結果に基づいて、物体Bの自車両に対する相対位置を算出する。なお、物体検知結果を判定する際の、閾値、STC、および検知結果出力のTOFに対して、遅延時間ΔTの設定が考慮されることは、いうまでもない。STCはSensitivity Time Controlの略である。TOFはTime of Flightの略である。
【0050】
図8は、ステップ701の送信条件設定処理の内容を示す。図8を参照すると、ステップ801にて、CPUは、カウンタNの値が0であるか否かを判定する。
【0051】
カウンタNの値が0である場合(すなわちステップ801=YES)、CPUは、ステップ802およびステップ803の処理を順に実行した後、処理をステップ702に進行させる。なお、物体検知条件の成立直後であってステップ801が初回実行される場合、カウンタNは0に初期化されているものとする。
【0052】
ステップ802にて、CPUは、遅延時間ΔTを第一遅延時間ΔT1に設定する。ステップ803にて、CPUは、カウンタNの値を1に設定する。これにより、次回のステップ701の実行時には、カウンタNの値が1となるため、ステップ801の判定がNOとなり、処理がステップ804の方に進行する。
【0053】
一方、カウンタNの値が0ではない場合(すなわちステップ801=NO)、CPUは、ステップ804およびステップ805の処理を順に実行した後、処理をステップ702に進行させる。ステップ804にて、CPUは、遅延時間ΔTを第二遅延時間ΔT2に設定する。ステップ805にて、CPUは、カウンタNの値を0に設定する。これにより、次回のステップ701の実行時には、カウンタNの値が0となるため、ステップ801の判定がYESとなり、処理がステップ802の方に進行する。
【0054】
(変形例)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0055】
物体検知装置1は、車載すなわち車両に搭載されるものに限定されない。すなわち、例えば、物体検知装置1は、船舶あるいは飛行体にも搭載され得る。
【0056】
物体検知装置1は、単一のトランスデューサ21によって超音波を送受信可能な構成に限定されない。すなわち、例えば、送信回路22に電気接続された送信用のトランスデューサ21と、受信回路23に電気接続された受信用のトランスデューサ21とが、並列に設けられていてもよい。
【0057】
超音波センサ2および制御部3の構成も、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、デジタル/アナログ変換回路は、送信回路22に代えて、駆動信号生成部24に設けられていてもよい。
【0058】
駆動信号生成部24は、制御部3に設けられていてもよい。同様に、受信信号処理部25は、制御部3に設けられていてもよい。
【0059】
符号化方式は、チャープ符号化に限定されない。すなわち、例えば、符号化は、位相変調あるいはオンオフ変調を用いたものであってもよい。
【0060】
遅延時間ΔTの変更態様も、上記の具体例に限定されない。すなわち、例えば、3種類以上の固定の遅延時間ΔTが、順番あるいはランダムに適用され得る。また、遅延時間ΔTの変更量ΔT1-ΔT2が残響時間以上とされる場合の「残響時間」を規定する所定閾値は、路面反射波およびノイズと受信波とを弁別するための閾値と同一のものではなくてもよい。具体的には、例えば、かかる所定閾値は、受信波との弁別が可能な程度の残響の残存を許容する程度のものであってもよい。
【0061】
遅延時間ΔTの変更量ΔT1-ΔT2は、一定でもよいし、サイクリックあるいはランダムに変更されてもよい。
【0062】
遅延時間ΔTは、受信した反射波と残響との重複、または、受信した反射波同士の重複が発生しない限り、変更されなくてもよい。換言すれば、送信タイミング設定部31すなわち遅延時間設定部312は、第二超音波センサSS2にて、受信した反射波と残響との重複、または、受信した反射波同士の重複が発生した場合に、遅延時間ΔTを変更するようになっていてもよい。
【0063】
図9は、受信した反射波と残響との重複が発生した場合に、遅延時間ΔTを変更する例を示す。すなわち、図9に示されたサブルーチンは、図8に示されたサブルーチンに代替されるものである。
【0064】
図9を参照すると、ステップ901にて、CPUは、受信した反射波と残響との重複が発生しているか否かを判定する。図6は、第二探査波W2における残響と第一間接波R12とが重複する例を示す。
【0065】
受信波と残響との重複が生じている場合(すなわちステップ901=YES)、CPUは、ステップ902およびステップ903の処理を順に実行した後、処理をステップ702に進行させる。一方、受信波と残響との重複が生じていない場合(すなわちステップ901=NO)、CPUは、ステップ902およびステップ903の処理をスキップして、処理をステップ702に進行させる。
【0066】
ステップ902にて、CPUは、受信波と残響との重複状態に応じて、補正値αを決定する。具体的には、例えば、CPUは、残響時間に応じて補正値αを決定する。ステップ903にて、CPUは、補正値αにより遅延時間ΔTを補正することで、遅延時間ΔTを変更する。
【0067】
図10は、受信した反射波同士の重複が発生して符号判定が失敗した場合に、遅延時間ΔTを変更する例を示す。図10を参照すると、ステップ1001にて、CPUは、受信した反射波同士の重複が発生しているか否かを判定する。
【0068】
受信した反射波同士の重複が発生している場合(すなわちステップ1001=YES)、CPUは、ステップ1002およびステップ1003の処理を順に実行した後、処理をステップ702に進行させる。一方、受信した反射波同士の重複が発生していない場合(すなわちステップ1001=NO)、CPUは、ステップ1002およびステップ1003の処理をスキップして、処理をステップ702に進行させる。
【0069】
ステップ1002にて、CPUは、受信波同士の重複状態に応じて、補正値αを決定する。ステップ1003にて、CPUは、補正値αにより遅延時間ΔTを補正することで、遅延時間ΔTを変更する。
【0070】
図9の例と図10の例とは統合され得る。すなわち、例えば、ステップ1001~ステップ1003の処理は、ステップ901の判定が「NO」である場合に実行され得る。
【0071】
上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。具体的には、制御部3は、CPU等を備えた周知のマイクロコンピュータに限定されない。すなわち、制御部3の全部または一部は、上記のような機能を実現可能に構成されたデジタル回路、例えばASICあるいはFPGAであってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、本開示に係る装置あるいは方法は、上記の各機能あるいは方法を実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0072】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本開示が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本開示が限定されることはない。
【0073】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【0074】
本明細書には、最広義には、以下の装置が開示されている。
物体検知装置(1)は、
各々が超音波である探査波を送信するとともに周囲の物体(B)による前記探査波の反射波を受信することで前記物体を検知する、複数の超音波センサ(2)と、
複数の前記超音波センサの各々における動作を制御する、制御部(3)と、
を備え、
複数の前記超音波センサは、各々の前記探査波が互いに識別可能な異なる特徴を有するように設けられ、
前記制御部は、
複数の前記超音波センサの各々における前記探査波の送信タイミングを設定する、送信タイミング設定部(31)を備え、
前記送信タイミング設定部は、
複数の前記超音波センサの各々が互いに異なる前記送信タイミングにて前記探査波を送信するように、
複数の前記超音波センサのうちの1つを第一超音波センサとし他の1つを第二超音波センサとした場合に、前記第一超音波センサにおける前記送信タイミングである第一送信タイミング(Tt1)と前記第二超音波センサにおける前記送信タイミングである第二送信タイミング(Tt2)との間に、前記第一超音波センサと前記第二超音波センサとの位置関係に基づいて決定される遅延時間を設定する。
制御装置(3)は、複数の超音波センサ(2)を備えた物体検知装置(1)における前記超音波センサの各々の動作を制御するように構成されている。複数の前記超音波センサの各々は、互いに識別可能な異なる特徴を有する超音波である探査波を送信するとともに、周囲の物体(B)による前記探査波の反射波を受信することで前記物体を検知するように構成されている。
この制御装置は、
複数の前記超音波センサの各々における前記探査波の送信タイミングを設定する、送信タイミング設定部(31)を備え、
前記送信タイミング設定部は、
複数の前記超音波センサの各々が互いに異なる前記送信タイミングにて前記探査波を送信するように、
複数の前記超音波センサのうちの1つを第一超音波センサとし他の1つを第二超音波センサとした場合に、前記第一超音波センサにおける前記送信タイミングである第一送信タイミング(Tt1)と前記第二超音波センサにおける前記送信タイミングである第二送信タイミング(Tt2)との間に、前記第一超音波センサと前記第二超音波センサとの位置関係に基づいて決定される遅延時間を設定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10