(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】燃料タンクシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
(21)【出願番号】P 2021535410
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029169
(87)【国際公開番号】W WO2021020485
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019139521
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】植松 亨介
(72)【発明者】
【氏名】大島 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松永 英雄
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-294052(JP,A)
【文献】特開2014-125944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する車両の燃料タンクシステムであって、
密閉弁を有し、燃料を貯蔵する燃料タンクを密閉する燃料貯蔵部と、
前記燃料タンクの燃料蒸発ガスを処理する処理部と、
前記燃料貯蔵部および前記処理部の故障を診断する制御部と、
を備え、
前記処理部は、
前記密閉弁と前記内燃機関の吸気通路とを連通する連通路と、
前記吸気通路と前記連通路の間を開閉する第1開閉弁と、
前記密閉弁と前記第1開閉弁との間で前記連通路に接続され、前記燃料タンクの燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、
前記キャニスタと前記連通路の間を開閉する第2開閉弁と、
前記キャニスタに接続されて、圧力を発生させる圧力発生部と、
を有し、
前記制御部は、
前記密閉弁を閉じた状態で、前記燃料貯蔵部の故障を診断する第1故障診断と、
前記第1故障診断によって前記燃料貯蔵部が正常と診断した場合に、前記密閉弁を閉じた状態で、前記圧力発生部によって圧力を発生させて、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の故障を診断する第2故障診断と、
前記第2故障診断によって前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくとも一方に閉固着の可能性があると診断した場合に、前記密閉弁を開いて、前記第1開閉弁の閉固着および前記第2開閉弁の閉固着のいずれか一方に故障を特定する第3故障診断と、を行う、燃料タンクシステム。
【請求項2】
前記処理部は、前記キャニスタの圧力を検知するキャニスタ圧力検知部を有し、
前記制御部は、
前記第2故障診断において、前記圧力発生部によって前記キャニスタの圧力を変化させ、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を開制御し、前記キャニスタ圧力検知部によって検知されたキャニスタ圧力値と大気圧との差が所定値より大きい場合に、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくとも一方に閉固着の可能性があると診断する、請求項1に記載の燃料タンクシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第
2故障診断において、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくとも一方に閉固着の可能性があると診断した
場合に、前記第3故障診断において、前記密閉弁を開いて、前記第1開閉弁の閉固着および前記第2開閉弁の閉固着のいずれか一方に故障を特定しているとき、前記密閉弁を閉じて前記燃料タンクを密閉したのち、前記第1開閉弁と、前記第2開閉弁を開制御し、その後、前記圧力発生部によって前記キャニスタの圧力を変化させた際の前記キャニスタ圧力値の変化に基づいて、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の故障を前記第1開閉弁の閉固着および前記第2開閉弁の閉固着のいずれか一方に特定する第4故障診断を行う、請求項2に記載の燃料タンクシステム。
【請求項4】
前記燃料貯蔵部は、
前記燃料タンクの圧力を検知する第1圧力検知部と、
前記第1圧力検知部と異なる位置に配置され、前記燃料タンクの圧力を検知する第2圧力検知部と、を有し、
前記制御部は、
前記第3故障診断において、前記密閉弁を開いた状態で前記圧力発生部によって前記燃料タンクの圧力を変化させた際の、前記第1圧力検知部で検知した第1圧力値、および、第2圧力検知部で検知した第2圧力値の少なくとも一方が変化し、かつ、前記第4故障診断において、前記キャニスタ圧力値が変化した場合に、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の故障が前記第1開閉弁の閉固着であると特定する、請求項3に記載の燃料タンクシステム。
【請求項5】
前記燃料貯蔵部は、
前記燃料タンクの圧力を検知する第1圧力検知部と、
前記第1圧力検知部と異なる位置に配置され、前記燃料タンクの圧力を検知する第2圧力検知部と、を有し、
前記制御部は、
前記第3故障診断において、前記密閉弁を開いた状態で前記圧力発生部によって前記燃料タンクの圧力を変化させた際の、前記第1圧力検知部で検知した第1圧力値、および、第2圧力検知部で検知した第2圧力値の両方が変化せず、かつ、前記第4故障診断において前記キャニスタ圧力値が変化した場合に、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の故障が前記第2開閉弁の閉固着であると特定する、請求項3に記載の燃料タンクシステム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記燃料タンクの圧力を下げる圧力制御を行い、
前記第1開閉弁の閉固着の場合に、前記圧力制御を禁止する、
請求項4に記載の燃料タンクシステム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記燃料蒸発ガスを前記キャニスタから前記内燃機関に吸わせる放出制御を行い、
前記第2開閉弁の閉固着の場合に、前記放出制御を禁止する、
請求項5に記載の燃料タンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を有する車両の燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガスの大気への放出を防止するために、燃料タンクを密閉する燃料タンクシステムが知られている(例えば、日本国特許4110931号公報および日本国特許6015936号公報)。日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムは、燃料タンクとキャニスタとの連通状態を制御する密閉弁を備える。日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムでは、内燃機関が停止中は密閉弁を閉じて燃料タンクを密閉し、燃料タンクに給油する際は、密閉弁を開く。日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムは、密閉弁と、連通路と内燃機関の吸気通路の間を開閉する第1開閉弁と、キャニスタと連通路の間を開閉する第2開閉弁を備える。日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムでは、燃料タンクの圧力を下げる際に、密閉弁および第1開閉弁を開き、第2開閉弁を閉じる。
【0003】
また、日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムおよび日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムは、密閉弁の故障を診断するために、密閉弁を閉じた状態から開いて、燃料タンク内の圧力の変化を検知している。
【0004】
日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムおよび日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムでは、燃料タンクシステム内の装置の故障診断を行うために密閉弁を開くため、キャニスタに燃料蒸発ガスが流入する。流入した燃料蒸発ガスは、キャニスタに吸着される。キャニスタに吸着された燃料蒸発ガスは、内燃機関の始動中に吸気中に放出され、内燃機関で燃焼されて処理される。しかし、例えば、プラグインハイブリッド車などに用いられる内燃機関は、内燃機関の稼動頻度が少ない。内燃機関の稼働頻度が少ないと、キャニスタに吸着された燃料蒸発ガスを処理できる量が制限される。このため、故障診断中に密閉弁を開ける頻度は少ないほうがよい。
【0005】
また、日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムおよび日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムは、燃料タンクシステムに含まれる装置のうち、密閉弁以外の装置(例えば、第1開閉弁および第2開閉弁)の故障について診断してない。燃料タンクシステムに含まれる密閉弁以外の装置が故障した場合であっても、燃料タンクシステムから燃料蒸散ガスが漏れるおそれがある。このため、燃料タンクシステムに含まれる密閉弁以外の装置が故障すると、燃料蒸発ガスが大気に放出されるおそれがある。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、密閉弁を開ける頻度を少なくしながらも、第1開閉弁と第2開閉弁の故障を特定できる燃料タンクシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る燃料タンクシステムは、内燃機関を有する車両の燃料タンクシステムである。本開示に係る燃料タンクシステムは、燃料貯蔵部と、処理部と、制御部と、を備える。燃料貯蔵部は、密閉弁を有し、燃料を貯蔵する燃料タンクを密閉する。処理部は、燃料タンクの燃料蒸発ガスを処理する。制御部は、燃料貯蔵部および処理部の故障を診断する。処理部は、連通路と、第1開閉弁と、キャニスタと、第2開閉弁と、圧力発生部と、を有する。連通路は、密閉弁と内燃機関の吸気通路とを連通する。第1開閉弁は、吸気通路と連通路の間を開閉する。キャニスタは、密閉弁と第1開閉弁との間で連通路に接続され、燃料タンクの燃料蒸発ガスを吸着する。第2開閉弁は、キャニスタと連通路の間を開閉する。圧力発生部は、キャニスタに接続されて、圧力を発生させる。制御部は、密閉弁を閉じた状態で、燃料貯蔵部の故障を診断する第1故障診断を行う。制御部は、第1故障診断によって燃料貯蔵部が正常と診断した場合に、密閉弁を閉じた状態で、圧力発生部によって圧力を発生させて、第1開閉弁、および、第2開閉弁の故障を診断する第2故障診断を行う。制御部は、第2故障診断によって第1開閉弁および第2開閉弁の少なくとも一方に閉固着の可能性があると診断した場合、密閉弁を開いて、第1開閉弁およびだい2開閉弁の故障を第1開閉弁の閉固着および第2開閉弁の閉固着のいずれか一方に特定する第3故障診断を行う。
【0008】
この燃料タンクシステムによれば、制御部は、第2故障診断において、第1開閉弁および第2開閉弁の故障を、密閉弁を閉じた状態で診断できる。すなわち、第1開閉弁および第2開閉弁が正常であれば、密閉弁を一度もあけることなく、故障の診断ができる。また、制御部は、第1開閉弁および第2開閉弁の少なくとも一方に閉固着の可能性がある場合、第3故障診断を行い、第1開閉弁の閉固着および第2開閉弁の閉固着のいずれか一方に故障を特定する。これによって、密閉弁を開ける頻度を少なくしながらも、第1開閉弁と第2開閉弁の故障を特定できる燃料タンクシステムを提供できる。
【0009】
処理部は、キャニスタの圧力を検知するキャニスタ圧力検知部を有してもよい。制御部は、第2故障診断において、圧力発生部によってキャニスタの圧力を変化させ、第1開閉弁および第2開閉弁を開制御してもよい。制御部は、キャニスタ圧力検知部によって検知されたキャニスタ圧力値と大気圧との差が所定値より大きい場合に、第1開閉弁および第2開閉弁の少なくとも一方に閉固着の可能性があると診断してもよい。
【0010】
制御部は、第3故障診断において、密閉弁を閉じて燃料タンクを密閉したのち、第1開閉弁および第2開閉弁を開制御し、その後、圧力発生部によってキャニスタの圧力を変化させた際のキャニスタ圧力値の変化に基づいて、第1開閉弁および第2開閉弁の故障を第1開閉弁の閉固着および第2開閉弁の閉固着のいずれか一方に特定する第4故障診断を行ってもよい。
【0011】
燃料貯蔵部は、第1圧力検知部と、第2圧力検知部と、を有してもよい。第1圧力検知部は、燃料タンクの圧力を検知する。第2圧力検知部は、第1圧力検知部と異なる位置に配置され、燃料タンクの圧力を検知する。制御部は、第3故障診断において、密閉弁を開いた状態で圧力発生部によって燃料タンクの圧力を変化させた際の、第1圧力検知部で検知した第1圧力値および第2圧力検知部で検知した第2圧力値の少なくとも一方が変化し、かつ、第4故障診断において、キャニスタ圧力値が変化した場合に、第1開閉弁および第2開閉弁の故障が第1開閉弁の閉固着であると特定してもよい。
【0012】
制御部は、第3故障診断において、第1圧力値および第2圧力値の両方が変化せず、かつ、第4故障診断においてキャニスタ圧力値が変化した場合に、第1開閉弁および第2開閉弁の故障が第2開閉弁の閉固着であると特定してもよい。
【0013】
制御部は、燃料タンクの圧力を下げる圧力制御を行ってもよい。制御部は、第1開閉弁の故障の場合に、圧力制御を禁止してもよい。
【0014】
制御部は、燃料蒸発ガスをキャニスタから内燃機関に吸わせる放出制御を行ってもよい。制御部は、第1開閉弁の閉固着の場合に、圧力制御を禁止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係る燃料タンクシステムの構成を示す図。
【
図4】
図1の制御部が行う第1故障診断のフローチャート。
【
図5】
図1の制御部が行う第2故障診断のフローチャート。
【
図6】
図1の制御部が行う第3故障診断のフローチャート。
【
図7】
図6の第3故障診断におけるタイミングチャート。
【
図8】
図1の制御部が行う第4故障診断のフローチャート。
【
図9】
図8の第4故障診断におけるタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、燃料タンクシステム1は、燃料貯蔵部20と、処理部30と、制御部40と、を備える。燃料タンクシステム1は、車両Cに搭載される。本実施形態では、車両Cは、モータ(図示せず)と内燃機関10を有し、モータおよび内燃機関10どちらか一方、または、両方を用いて走行するハイブリット車やプラグインハイブリッド車である。また、車両Cはイグニッションスイッチ40aを有する。イグニッションスイッチ40aは、後述するECU(Electrоnic Control Unit)42と電気的に接続される。制御部40は、車両Cのユーザによってイグニッションスイッチ40aがオンされることで、起動する。また、制御部40は、ユーザによってイグニッションスイッチ40aがオフされることで、スリープ状態になる。内燃機関10は、吸気通路10aと、燃料噴射弁10bと、燃料配管10cを有し、吸気通路10aから吸入した空気と、燃料噴射弁10bから噴射した燃料を混合して燃焼させる。
【0018】
燃料貯蔵部20は、燃料タンク21と、密閉弁22と、第1タンク圧センサ(第1圧力検知部の一例)23と、第2タンク圧センサ(第2圧力検知部の一例)24と、ベーパ通路25と、を有する。燃料貯蔵部20は、燃料タンク21を密閉する。
【0019】
燃料タンク21は、燃料給油口21aと、燃料ポンプ21bと、燃料カットオフバルブ21cと、レベリングバルブ21dと、を含む。燃料給油口21aは、燃料タンク21への燃料注入口である。燃料ポンプ21bは、燃料を燃料タンク21から燃料配管10cを経由して燃料噴射弁10bに供給する。燃料カットオフバルブ21cは、燃料タンク21から処理部30への燃料の流出を防止する。レベリングバルブ21dは、給油時に燃料タンク21内の液面を制御する。また、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガスは、燃料カットオフバルブ21cおよびレベリングバルブ21dを経由して、処理部30に排出される。
【0020】
密閉弁22は、ベーパ通路25を開閉することで、燃料タンク21を密閉する。本実施形態では、密閉弁22は、電磁ソレノイドバルブであり、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると開弁状態となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。ベーパ通路25は、燃料タンク21と密閉弁22とを連通する。
【0021】
第1タンク圧センサ23は、ベーパ通路25上に配置され、ベーパ通路25において燃料タンク21内の圧力を検知する。第1タンク圧センサ23は、絶対圧センサであり、燃料タンク21内の圧力を絶対圧として検知する。
【0022】
第2タンク圧センサ24は、第1タンク圧センサ23と異なる位置に配置される。本実施形態では、第2タンク圧センサ24は、燃料タンク21の上部に配置される。第2タンク圧センサ24は、大気圧との差によって圧力を検知する差圧式のセンサであり、燃料タンク21内の圧力をゲージ圧として検知する。
【0023】
第1タンク圧センサ23は、主として燃料タンク21内の圧力が上昇した場合であっても圧力が検知できるように設けられる。一方、第2タンク圧センサ24は、主として給油する際に燃料タンク21内の圧力が大気圧近傍にあるか否かを検知できるように設けられる。このため、第1タンク圧センサ23は、第2タンク圧センサ24よりも検知できる圧力の幅が広い。一方、第2タンク圧センサ24は、第1タンク圧センサ23よりも圧力を精度よく検知できる。
【0024】
図1および
図2に示すように、処理部30は、キャニスタ31と、パージ通路(連通路)32と、パージ弁(第1開閉弁の一例)33と、バイパス弁(第2開閉弁の一例)34と、負圧ポンプ(圧力発生部の一例)35と、切替弁36と、および、キャニスタ圧センサ(キャニスタ圧力検知部の一例)37と、を備える。処理部30は、燃料タンク21の燃料蒸発ガスを内燃機関10で燃焼させる、または、燃料蒸発ガスをキャニスタ31に吸着させることで処理する。
【0025】
キャニスタ31は、燃料タンク21の燃料蒸発ガスを吸着する。パージ通路32は、密閉弁22と内燃機関10の吸気通路10aとを連通する。キャニスタ31は、内部に活性炭を具備し、燃料タンク21で発生した燃料蒸発ガスを活性炭によって吸着する。キャニスタ31は、パージ通路32から分岐した通路に接続される。キャニスタ31は、キャニスタ31が吸着した燃料蒸発ガスを、パージ通路32を介して吸気通路10aに供給するために設けられる。
【0026】
パージ弁33は、吸気通路10aとパージ通路32の間を開閉する。本実施形態では、パージ弁33は、電磁ソレノイドバルブであり、後述する圧力制御、パージ制御(放出制御)の際に、制御部40からの指示によって開いて燃料蒸発ガスを吸気通路10aに供給する。パージ弁33は、例えば電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると開弁状態となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。
【0027】
バイパス弁34は、キャニスタ31とパージ通路32の間を開閉する。本実施形態では、バイパス弁34は、電磁ソレノイドバルブであり、後述する圧力制御の場合に、制御部40からの指示によって閉じてキャニスタ31への燃料蒸発ガスの供給を遮断する。一方、バイパス弁34は、パージ制御(放出制御)の場合に、制御部40からの指示によって開いてキャニスタ31に吸着された燃料蒸発ガスをパージ通路32に供給する。バイパス弁34は、例えば電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で開弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると閉弁状態となるノーマルオープンタイプの電磁弁である。
【0028】
負圧ポンプ35、切替弁36、および、キャニスタ圧センサ37は、キャニスタ31に接続されるモジュール38内に設けられる。
図2に示すように、モジュール38には、キャニスタ側通路38aと、大気側通路38bと、ポンプ通路38cと、バイパス通路38dが設けられる。負圧ポンプ35は、ポンプ通路38cと大気側通路38bの間に設けられる。バイパス通路38dには、リーク診断時の基準となる圧力を発生させる基準オリフィス38eが設けられる。キャニスタ圧センサ37は、ポンプ通路38cに設けられ、負圧ポンプ35でキャニスタ31内に負圧を発生させた際の圧力を検知する。
【0029】
切替弁36は、開状態ではキャニスタ側通路38aと大気側通路38bとを連通し、キャニスタ31を大気開放状態にする。この状態で、負圧ポンプ35が稼働すると、基準オリフィス38eの径に応じた負圧がポンプ通路38cに発生する。制御部40は、このときのキャニスタ圧センサ37で検知する負圧の値を基準圧Prefとして記憶する。一方、
図3に示すように、切替弁36は、閉状態ではキャニスタ側通路38aとポンプ通路38cとを連通し、キャニスタ31に負圧を発生可能な状態にする。このような状態で、負圧ポンプ35がキャニスタ31に負圧を発生させると、燃料貯蔵部20または処理部30に基準オリフィス38eよりも大きな穴が存在する場合に、キャニスタ圧センサ37で検知する負圧が基準圧Prefよりも小さくなる。制御部40は、このようにして燃料貯蔵部20または処理部30の燃料蒸発ガスのリークを診断する。切替弁36は、例えば電磁ソレノイドで駆動される。切替弁36は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)であるときには開状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)のときには閉状態となる。
【0030】
制御部40は、燃料貯蔵部20および処理部30の各検知部からの情報を取得し、各弁を制御するための信号を各弁に送信する。なお、本実施形態において、「開制御」と記す場合は、制御部40が各弁を開いた状態にするための制御信号を送信し、各弁に実際に開くように指示をすることを示す。各弁は、開制御の制御信号をうけて、故障がなければ実際に開く。また、「閉制御」と記す場合も同様に、制御部40が各弁を閉じた状態にするための制御信号を送信し、各弁に実際に開くように指示をすることを示す。各弁は、閉制御の制御信号をうけて、故障がなければ実際に閉じる。
【0031】
制御部40は、少なくとも、第1故障診断と、第2故障診断と、第3故障診断と、第4故障診断と、フェールセーフ制御と、を行う。また、制御部40は、燃料タンク21の圧力が一定以上に上昇した場合に、密閉弁22およびパージ弁33を開制御し、バイパス弁34を閉制御して、燃料タンク21内の圧力を下げる制御を行う。また、制御部40は、給油する際に、密閉弁22およびバイパス弁34を開制御して、燃料タンク21の圧力を大気圧にする制御を行う。このように、制御部40は、燃料タンク21内の圧力を下げる圧力制御(圧抜き制御)を行い、圧力が低下しない場合は異常があるとして記録する。また、制御部40は、パージ弁33およびバイパス弁34を開制御して、キャニスタ31に吸着した燃料蒸発ガスを運転中の内燃機関10に吸わせるパージ制御(放出制御)を行う。さらに、制御部40は、給油する際の圧力制御が完了すると、燃料給油口21aを開放可能なように、フューエルリッド(図示せず)のロックを解除し、車両Cのユーザに報知する給油制御を行う。一方、制御部40は、例えば、フェールセーフ制御として、給油制御が禁止(給油禁止)された場合は、フューエルリッドのロックを解除せず、給油が禁止されている旨をユーザに報知する。
【0032】
また、本実施形態では、制御部40は、ECU42に記憶されるソフトウェアによって実現される機能構成である。ECU42は、実際には、タイマーを含む演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成される。ECU42は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関10が、所望の運転状態となるように各種装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、各センサと、各バルブは、ECU42と電気的に接続される。
【0033】
次に
図4、
図5、
図6、および、
図8のフローチャート、
図7、および、
図9のタイミングチャートを用いて、制御部40の制御手順について説明する。なお、各タイミングチャートの各種装置に対応するON-OFFは、各種装置に通電(ON)、無通電(OFF)を指示する制御信号を、制御部40が各種装置に送信した状態を示す。すなわち、各タイミングチャートのON-OFF状態は、実際の各種装置の作動状態を示すものではなない。また、各タイミングチャートのセンサの値は、各センサから取得した値であり、実際の各種装置の圧力を示す値ではない。すなわち、各タイミングチャートは、制御部40の制御手順に対応したタイミングチャートである。
【0034】
図4は、制御部40が行う第1故障診断における制御手順を示す。制御部40は、イグニッションスイッチ40aがオフされたのち、所定期間TmIG経過後に密閉弁22を閉じた状態で燃料貯蔵部20の故障を診断する第1故障診断を開始する(S1)。ここで、密閉弁22を閉じた状態とは、密閉弁22を閉制御した状態ということであり、制御部40が密閉弁22に通電(ON)を指示する制御信号を送信していない状態である。制御部40は、第1タンク圧センサ23で検知した第1圧力値P1を取得する。制御部40は、第1圧力値P1の絶対値が第1所定値D1以上であれば(S2 Yes)、S3へ処理を進める。
【0035】
制御部40は、圧力制御中の異常の記録を取得し、異常の記録がなければ(S3 Yes)S4に処理を進める。ここで、圧力制御中の異常とは、燃料タンク21の圧力が一定以上に上昇した際の圧力制御が所定時間内に終了しない場合、給油する際の圧力制御が所定時間内に終了しない場合、および、これら制御中に燃料貯蔵部20および処理部30に何らかの故障が診断されてない場合、である。
【0036】
制御部40は、第2タンク圧センサ24で検知した第2圧力値P2を取得する。制御部40は、第1圧力値P1と第2圧力値P2との差を算出する。制御部40は、差が所定範囲ΔQ以内である場合は(S4 Yes)、S5に処理を進める。上記のとおり、第1タンク圧センサ23と、第2タンク圧センサ24は、配置される場所、および、圧力の検知特性が異なる。このため、燃料タンク21内の実際の圧力値は同一であるにもかかわらず、第1圧力値P1および第2圧力値P2は、所定範囲ΔQ以内の差をもつ。この所定範囲ΔQは、第1タンク圧センサ23および第2タンク圧センサ24の配置される場所、および、圧力の検知特性に応じて予め設定された値である。
【0037】
制御部40は、燃料貯蔵部20が正常であると診断する(S5)。そして、制御部40は、密閉弁22を閉じた状態で処理部30の故障を診断する第2故障診断に進む(S6)。
【0038】
なお、第1圧力値P1の絶対値が第1所定値D1より小さい場合(S2 No)、圧力制御異常がある場合(S3 No)、第1圧力値P1と第2圧力値P2の差が所定範囲ΔQより大きい場合(S4 No)は、燃料貯蔵部20に故障があるとして、制御部40は正常診断不成立とする(S8)。すなわち、制御部40は、燃料貯蔵部20が有する、第1タンク圧センサ23、第2タンク圧センサ24、およびベーパ通路25のいずれか一つ、または、複数に故障があると診断する。制御部40は、燃料貯蔵部20が正常でないと診断した場合は、密閉弁22を開制御して、後述する第3故障診断を行い、故障部位を特定する(S9)。
【0039】
また、制御部40は、後述する第2故障診断において、パージ弁33の閉固着およびバイパス弁34のいずれいか一方の閉固着があると診断した場合は(S7 Yes)、密閉弁22を開制御して第3故障診断を行い、故障部位を特定する(S9)。
【0040】
次に
図5のフローチャートを用いて、制御部40が行う第2故障診断における制御手順を説明する。なお、第2故障診断は、バイパス弁34を開制御した状態で開始される。
【0041】
制御部40は、負圧ポンプ35を起動する(S21)。このとき、キャニスタ圧センサ37で検知した第3圧力値(キャニスタ圧力値)P3が基準圧Prefまで下がる。その後、制御部40は、切替弁36を閉制御してキャニスタ31の減圧を開始する(S22)。この状態では、制御部40からの指示によって実際にバイパス弁34が開いた状態であれば、パージ通路32とキャニスタ31が減圧される。制御部40は、減圧開始後(切替弁36を閉制御してから)第1所定期間Tm1経過した場合に(S23 Yes)、1回目の第3圧力値P3を取得値P31として取得する(S24)。制御部40は、その後バイパス弁34を閉制御する(S25)。制御部40は、減圧後第2所定期間Tm2経過した場合に(S26 Yes)、2回目の第3圧力値P3を取得値P32として取得する。そして2回目の第3圧力値P3の取得値P32が第1所定圧力PT1以下の場合は(S28 Yes)、1回目の第3圧力値P3の取得値P31と、2回目の第3圧力値P3の取得値P32の比(P32/P31)を算出し、比が第2所定値D2以下の場合に、パージ通路32にリークが無いと診断する(S30)。
【0042】
すなわち、1回目の第3圧力値P3の取得値P31はバイパス弁34を開制御している際の値であり、実際にバイパス弁34が開いている場合は、キャニスタ31とパージ通路32を含む空間の圧力値である。一方、2回目の第3圧力値P3の取得値P32は、バイパス弁34を閉制御している際の値であり、実際にバイパス弁34が閉じている場合は、キャニスタ31のみを含み、パージ通路32は含まない空間の圧力値である。よって、キャニスタ31およびパージ通路32のいずれにもリークがなければ、取得値P31と、取得値P32の比は第2所定値D2以下になる。また、キャニスタ31のみにリークの可能性がある場合も、取得値P31、および取得値P32のいずれも、減圧量が小さい状態で維持される。この結果、取得値P31と、取得値P32の比は第2所定値D2以下になる。一方、パージ通路32にリークがあれば、取得値P31は、減圧量が小さい状態で維持され、取得値P32は、減圧量が大きい状態で維持される。この結果、取得値P31と、取得値P32の比は第2所定値D2よりも大きくなる。このように、制御部40は、取得値P31と、取得値P32の比が、第2所定値D2よりも大きい場合は(S29 No)、パージ通路32にリークがあると診断する(S38)。また、取得値P32が第1所定圧力PT1よりも大きい場合は(S28 No)、なんらかの故障(例えば、キャニスタ31がリークしている可能性)があると診断し、S37に処理を進める。
【0043】
次に、制御部40は、パージ弁33を開制御し(S31)、大気圧P0と第3圧力値P3の差を算出し、この差が第2所定圧力PT2以上か診断する(S32)。つまり、制御部40は、処理部30(キャニスタ31)が負圧に維持されているかを診断する。制御部40は、差が第2所定圧力PT2以上の場合は(S32 Yes)、バイパス弁34の開固着なしと診断する(S33)。すなわち、バイパス弁34が開固着ありの場合に、パージ弁33が実際に開くと、キャニスタ31から吸気通路10aまでが連通状態となり、処理部30が大気開放された状態となる。この状態となると、処理部30の負圧は維持できなくなる。これによって、制御部40は、バイパス弁34の開固着の有無を診断できる。したがって、制御部40は、差が第2所定圧力PT2より小さい場合は(S32 No)、バイパス弁34の開固着ありと診断する(S39)。制御部40は、バイパス弁34の開固着ありと診断すると、フェールセーフ制御として給油制御を禁止(給油禁止)し(S41)、処理を第1故障診断に戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0044】
一方、制御部40がバイパス弁34の開固着なしと診断した場合に、制御部40は、バイパス弁34を開制御して(S34)、大気圧P0と第3圧力値P3の差を算出し、この差が第3所定圧力PT3以下か診断する(S35)。すなわち、バイパス弁34およびパージ弁33が実際に開いた状態では、キャニスタ31から吸気通路10aまでが連通状態となり、処理部30が大気開放された状態となる。この状態となると、第3圧力値P3は大気圧P0に近い値まで戻る。もし、第3圧力値P3が大気圧P0近傍まで戻らない場合は、パージ弁33およびバイパス弁34のいずれか一方、または両方が閉固着の状態である。そこで、制御部40は、大気圧P0と第3圧力値P3の差が大気圧近傍の値である第3所定圧力PT3以下の場合は(S35 Yes)、パージ弁33およびバイパス弁34の両方の閉固着なしと診断する(S36)。一方、制御部40は、大気圧P0と第3圧力値P3の差が大気圧近傍の値である第3所定圧力PT3よりも大きい場合は(S35 No)、パージ弁33およびバイパス弁34のいずれか一方、または両方が閉固着の状態にある可能性があると診断する(S40)。制御部40は、以上の診断を終えると、切替弁36を開状態にして(S37)、第2故障診断の処理を終了し、第1故障診断のフローに戻る。制御部40は、診断が完了した場合は、診断完了フラグを記録する。
【0045】
次に
図6のフローチャートおよび、
図7のタイミングチャートを用いて、制御部40が行う第3故障診断における制御手順を説明する。第3故障診断は、
図7のタイミングチャートに示す状態V4以降である。
【0046】
第3故障診断において、制御部40は、負圧ポンプ35が稼働中か否か診断し(S50)、稼働していない場合は(S50 No)、負圧ポンプ35を起動させる(S51)。制御部40は、密閉弁22を開制御し(S52)、パージ弁33を閉制御し、開制御し、また閉制御する(S53)。これによって、もしパージ弁33が閉固着していなければ、燃料タンク21は、吸気通路10aと連通し、大気圧P0となる(
図7 時刻t8から時刻t9参照)。
【0047】
制御部40は、第2タンク圧センサ24の第2圧力値P2を取得値P21として取得し、第1条件として取得値P21が所定圧力範囲ΔPx(-Pxから+Pxの範囲)以内にあるか否かを診断する(S54)。制御部40は、第1条件が成立している場合は(S54 Yes)、第2タンク圧センサ24が故障していないと診断する(S69)。ここで、第2タンク圧センサ24が、正常に作動している場合、燃料タンク21の実際の圧力は大気圧P0となる。従って、取得値P21も大気圧P0近傍の所定圧力範囲ΔPx以内の値となるはずである(
図7 時刻t7から時刻t10の第2圧力値P2の実線参照)。一方、第2タンク圧センサ24がシフト故障していると、この範囲からシフトしてずれる(
図7 時刻t7から時刻t10の第2圧力値P2の破線E1参照)。
【0048】
制御部40は、切替弁36を閉制御して、燃料タンク21の減圧を開始する(S55)。制御部40は、第2条件として第1タンク圧センサ23から取得した第1圧力値P1の、切替弁36を閉制御してからの変化値ΔP1が、第5所定圧力PT5(例えば1kPa)か否かを診断する(S56)。すなわち、制御部40が密閉弁22を開制御して、燃料タンク21を減圧するように制御しているにもかかわらず、第1圧力値P1が一定の値を示す場合は(
図7 第1圧力値Pの時刻t10から時刻t11 2点鎖線E2参照 S56 No)、第1タンク圧センサ23の固着、密閉弁22の閉固着、バイパス弁34の閉固着が疑われる。一方、制御部40は、第1圧力値P1が変化すれば(S56 Yes)、第1タンク圧センサ23の固着、密閉弁22の閉固着、および、バイパス弁34の閉固着、の各故障がないと診断できる(S70)。
【0049】
制御部40は、第3条件として第2タンク圧センサ24から取得した第2圧力値P2の、切替弁36を閉制御してからの変化値ΔP2が、第4所定圧力PT4(例えば1kPa)か否かを診断する(S57)。すなわち、制御部40が密閉弁22を開制御して、燃料タンク21を減圧するように制御しているにもかかわらず、第2圧力値P2が一定の値を示す場合は(
図7 第1圧力値Pの時刻t10から時刻t11 2点鎖線E3参照 S57 No)、密閉弁22の閉固着、バイパス弁34の閉固着が疑われる。また、第1タンク圧センサ23は、ベーパ通路25に設けられる一方、第2タンク圧センサ24は燃料タンク21の上部に設けられる。このため、ベーパ通路25の閉塞も疑われる。一方、制御部40は、第2圧力値P2が変化すれば(S57 Yes)、密閉弁22の閉固着、バイパス弁34の閉固着、およびベーパ通路25の閉塞、の各故障がないと診断できる(S71)。
【0050】
制御部40は、上述の第2条件かつ第3条件が成立したか否か判定する(S58)。しかし、制御部40は、第2条件かつ第3条件が成立したか否かにかかわらず(S58 Yes S58 No)、切替弁36を閉制御して燃料タンク21の減圧を開始してから第3所定期間Tm3経過するまで、減圧を続ける(S59 No)。一方、制御部40は、第3所定期間Tm3経過した場合は(S59 Yes)、S60へ処理を進める。
【0051】
制御部40は、キャニスタ圧センサ37によって検知した第3圧力値P3の、切替弁36を閉制御してからの変化値ΔP3を取得し、第3圧力値P3の変化値ΔP3が基準圧Prefよりも低い第6所定圧力PT6まで下がったか否かを診断する(S60)。制御部40は、第3圧力値P3が第6所定圧力PT6とならない場合は(S60 No)、減圧後第4所定期間Tm4経過まで続ける(S74 No)。これによって、制御部40は、第1圧力値P1および第2圧力値P2のいずれか一方、または、両方の値が変化しない原因について、負圧ポンプ35を含むモジュール38の作動不良や、キャニスタ31のリークや閉塞、の故障ではないことが診断できる。そこで、制御部40は、第1圧力値P1および第2圧力値P2のいずれか一方、または、両方の値が変化しない原因となる故障部位について、第1条件から第3条件の組み合わせ行うことによって特定する。一方、第3圧力値P3が第6所定圧力PT6とならず(S60 No)、減圧後第4所定期間Tm4経過した場合は、処理を第1故障診断に戻す(S74 Yes)。
【0052】
制御部40は、第2条件のみが成立しない場合は、第1タンク圧センサ23の固着ありと特定する(S72)。すなわち、第2圧力値P2が正常に変化し、第1圧力値P1のみが変化しなければ、燃料タンク21の減圧は実際に行われており、第1タンク圧センサ23の固着ありと特定できる。制御部40は、第1タンク圧センサ23の固着と特定すると、フェールセーフ制御として圧力制御を禁止し(S73)、処理を第1故障診断に戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0053】
制御部40は、第2条件は成立し(S61 Yes)、第3条件のみ成立しない場合は(S62 Yes)、ベーパ通路25の閉塞と特定する(S65)。すなわち、第1圧力値P1が正常に変化し、第2圧力値P2のみが変化しなければ、第2タンク圧センサ24の固着、もしくは、第2タンク圧センサ24と、第1タンク圧センサ23の間にあるベーパ通路25の閉塞が疑われる。
【0054】
ここで、制御部40は、イグニッションスイッチ40aがオンの間に、第2タンク圧センサ24によって燃料タンク21内の圧力を検知することで、第2タンク圧センサ24の固着が無いことを記録している。このため、制御部40は、ベーパ通路25の閉塞と特定できる。制御部40は、ベーパ通路25の閉塞と特定すると、フェールセーフ制御として給油制御および圧力制御を禁止し(S66)、処理を第1故障診断に戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0055】
制御部40は、第2条件かつ第3条件が成立した場合は(S62 Nо、S58 Yes)、第1条件が成立したか否か診断する(S63)。制御部40は、第1条件が成立しない場合は(S63 No)、第2タンク圧センサ24のシフト故障と特定する(S67)。すなわち、制御部40は、第1タンク圧センサ23の固着、および、ベーパ通路25の閉塞もなく、条件1のみが成立しない場合は、第2圧力値P2が異常値であるため、第2タンク圧センサ24のシフト故障が原因であると特定できる。制御部40は、第2タンク圧センサ24のシフト故障と特定すると、フェールセーフ制御として給油制御を禁止する(S68)。一方、制御部40は、第1条件が成立した場合は(S63 Yes)、第1タンク圧センサ23の固着、第2タンク圧センサ24のシフト故障、および、ベーパ通路25の閉塞のいずれも発生していないと診断できる。すなわち、燃料貯蔵部20のうち密閉弁22を除く装置の故障診断が完了し、処理部30のパージ弁33およびバイパス弁34の閉固着、燃料貯蔵部20の密閉弁22の開固着、または、閉固着の故障があると診断し、第4故障診断へ処理を進める(S64)。
【0056】
次に
図8のフローチャートおよび、
図9のタイミングチャートを用いて、制御部40が行う第4故障診断における制御手順を説明する。第4故障診断は、
図9のタイミングチャートに示す状態V6以降である。
【0057】
第4故障診断において、制御部40は、バイパス弁34を閉制御し(S81)、キャニスタ31をパージ通路32から分離する。この状態で、制御部40は、切替弁36を開状態にし、キャニスタ31を大気開放状態にし(S82)、キャニスタ31内の圧力を基準圧Prefにする(
図9 時刻t13 第3圧力値P3参照)。その後、制御部40は、密閉弁22を閉制御して燃料タンク21を密閉する(S83)。これによって、制御部40は、燃料貯蔵部20と、処理部30を分離し、処理部30のパージ弁33、バイパス弁34、および、燃料貯蔵部20の密閉弁22の故障診断を進める。
【0058】
制御部40は、パージ弁33およびバイパス弁34を開制御する(S84)。これによって、処理部30は、吸気通路10aと連通し大気開放状態になる(
図9 時刻t14から時刻t15 第3圧力値P3参照)。制御部40は、この状態で第1圧力値P1および第2圧力値P2が大気圧P0になった場合(S85 Yes)、密閉弁22は開固着していると特定する(S97)。すなわち、制御部40は、密閉弁22を閉制御しているにもかかわらず、第1圧力値Pおよび第2圧力値P2が大気圧P0になる場合は(
図9 第1圧力値P1の時刻t14から時刻t15 1点鎖線E4参照)、制御部40の指示にもかかわらず、実際は密閉弁22が開いた状態である。これによって、制御部40は、密閉弁22は開固着していると特定できる。制御部40は、密閉弁22が開固着していると特定すると、フェールセーフ制御として給油制御を禁止し(S98)、第3故障判定に処理を戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0059】
制御部40は、第1圧力値P1および第2圧力値P2に変化が無い場合は(S85 Nо)、切替弁36を閉じて処理部30の減圧を開始する(S86)。制御部40は、第3圧力値P3を取得し、キャニスタ31が減圧したか否か診断する(S87)。
【0060】
制御部40は、処理部30が大気開放状態にもかかわらず、キャニスタ31が減圧し第3圧力値P3が変化した場合は(S87 Yes)、第3故障診断における第2条件および第3条件の結果を取得する(S88)。制御部40は、第3故障診断において、第1圧力値P1および第2圧力値P2のいずれか一方、または、両方が変化した場合は(S88 Yes)、パージ弁33が閉固着していると特定する(S89)。すなわち、第3故障診断において、第1圧力値P1および第2圧力値P2のいずれか一方、または、両方が変化した場合は、バイパス弁34および密閉弁22は、制御部40からの制御信号によって開いたということである(
図6 S70およびS71参照)。これによって、制御部40は、バイパス弁34は閉固着してないと診断できる。また、制御部40は、密閉弁22は閉固着していないと診断できる。この結果、制御部40は、キャニスタ31が減圧した(
図9 時刻t15から時刻t16 第3圧力値P3 破線E5参照)原因が、パージ弁33の閉固着であると特定できる。制御部40は、パージ弁33が閉固着していると特定すると、フェールセーフ制御として圧力制御および放出制御を禁止し(S90)、処理を第3故障診断に戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0061】
制御部40は、第3故障判定において、第1圧力値P1および第2圧力値P2の両方が変化しなかった場合は(S88 No)、バイパス弁34が閉固着していると特定する(S91)。すなわち、第3故障診断において、第1圧力値P1および第2圧力値P2の両方が変化しなかった場合は、燃料タンク21から負圧ポンプ35の通路上に故障がある。つまり、バイパス弁34の閉固着、または、密閉弁22の閉固着が疑われる。しかし、第4故障判定において、処理部30が大気開放状態であるにかかわらず、キャニスタ31が減圧できる(
図9 時刻t15から時刻t16 第3圧力値P3 破線E6参照)ということは、バイパス弁34が実際には開いておらず閉固着しているということである。これによって、制御部40は、バイパス弁34が閉固着していると特定できる。制御部40は、バイパス弁34が閉固着している特定すると、フェールセーフ制御として給油制御および放出制御を禁止し(S92)、処理を第3故障診断に戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0062】
制御部40は、キャニスタ31が減圧せず第3圧力値P3が変化しなかった場合は(S87 No)、第3故障診断における第2条件および第3条件の結果を取得する(S93)。制御部40は、第1圧力値P1および第2圧力値P2のいずれか一方、または、両方が変化した場合は(S93 Yes)、パージ弁33は閉固着しておらず正常であると診断する(S94)。すなわち、第3故障診断において、第1圧力値P1および第2圧力値P2のいずれか一方、または、両方が変化した場合は、バイパス弁34および密閉弁22は、制御部40の制御信号をうけて実際に開いたということである(
図6 S70およびS71参照)。これに加えて、第4故障診断において、キャニスタ31が減圧できないということは、パージ弁33は閉固着しておらず、制御部40の制御信号をうけて実際に開いたとうことである。この結果、制御部40は、パージ弁33が正常であることを特定できる。
【0063】
制御部40は、第1圧力値P1および第2圧力値P2の両方が変化しなかった場合は(S93 No)、密閉弁22が閉固着していると診断する(S95)。すなわち、第3故障診断において、第1圧力値P1および第2圧力値P2の両方が変化しなかった場合は、燃料タンク21から負圧ポンプ35の通路上に故障がある。つまり、バイパス弁34の閉固着、または、密閉弁22の閉固着が疑われる。しかし、第4故障判定において、処理部30が大気開放状態であり、キャニスタ31が減圧できないということは、バイパス弁34は、実際に開いており閉固着していないということである。これによって、制御部40は、密閉弁22が閉固着していると特定できる。制御部40は、密閉弁22が閉固着していると特定すると、フェールセーフ制御として圧力制御および給油制御を禁止し(S96)、処理を第3故障診断に戻し、故障診断終了のフラグを記録する。
【0064】
以上説明した通り、燃料タンクシステム1によれば、第1故障診断、および、第2故障診断を行うことによって、パージ弁33およびバイパス弁34の故障診断を、密閉弁22を実際に開くことなくできる。すなわち、燃料タンクシステム1に含まれるこれら装置が、全て正常であれば、密閉弁を一度も開けることなく、故障の診断ができる。これによって、密閉弁を開ける頻度を少なくできる燃料タンクシステムを提供できる。
【0065】
また、第2故障診断において、パージ弁33およびバイパス弁34のいずれか一方の故障の可能性がある場合に、第3故障診断および第4故障診断を行うことによって、パージ弁33およびバイパス弁34のいずれか一方の故障部位を特定できる。さらに、第3故障診断において密閉弁22を開き、第4故障診断において密閉弁22を閉じるから、制御部40は、密閉弁22を1回開くだけで故障部位を特定できる。これによって、キャニスタ31に吸着する燃料蒸発ガスの量を抑制できる。
【0066】
さらに、密閉弁22が実際に開く回数が多いほど、密閉弁22が消耗する。また、燃料タンクシステム1の起動時間が長いほど、消費電力が多くなる。燃料タンクシステム1によれば、制御部40は、密閉弁22を1回開くだけで故障部位を特定できるので、短時間で第1故障診断から第4故障診断を処理できる。これによって、耐久性が向上し、消費電力も抑えることができる。
【0067】
さらに燃料タンクシステム1によれば、制御部40は、バイパス弁34が閉固着していることを特定する。バイパス弁34の閉固着は、制御部40がバイパス弁34を閉制御して行う圧力制御に影響がない。これによって、バイパス弁34が閉固着していると特定された場合は、圧力制御を禁止する必要がない。このため、バイパス弁34が閉固着していると特定された場合であっても、燃料タンク21の圧力を下げることができる。この結果、燃料タンク21の圧力が上昇することによる車両の機能が制限されることを防止できる。
【0068】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0069】
上記実施形態では、第1タンク圧センサ23および第2タンク圧センサ24は、異なる配置かつ、異なる検知特性を有するが、本開示はこれに限定されない。第1タンク圧センサおよび第2タンク圧センサは、配置、および、検知特性のいずれか一方が異なればよい。
【0070】
上記実施形態では、処理部30は、圧力発生部として負圧ポンプ35を用いるが、本開示はこれに限定されない。圧力発生部は、加圧ポンプであってもよい。
【0071】
本出願は、2019年7月30日出願の日本特許出願特願2019-139521に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0072】
1:燃料タンクシステム
10:内燃機関
10a:吸気通路
20:燃料貯蔵部
21:燃料タンク
22:密閉弁
23:第1タンク圧センサ(第1圧力検知部)
24:第2タンク圧センサ(第2圧力検知部)
25:ベーパ通路
30:処理部
31:キャニスタ
32:パージ通路(連通路)
33:パージ弁(第1開閉弁)
34:バイパス弁(第2開閉弁)
35:負圧ポンプ
36:切替弁
37:キャニスタ圧センサ(キャニスタ圧力検知部)
40:制御部
40a:イグニッションスイッチ
C:車両
P0:大気圧
P1:第1圧力値
P2:第2圧力値
P3:第3圧力値(キャニスタ圧力値)