(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】天井搬送車及び天井搬送車システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20221101BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B65G1/00 551A
B65G1/04 551A
B65G1/00 511J
(21)【出願番号】P 2021542050
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024862
(87)【国際公開番号】W WO2021039077
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019155943
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】青本 和也
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/136967(WO,A1)
【文献】特開2006-331110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有すると共に前記本体部に対して吊持部材によって昇降される昇降部と、を備えた天井搬送車であって、
前記本体部に設けられ、前記天井搬送車における各部を制御する本体制御部と、
前記昇降部に設けられ、前記昇降部に生じる振動を検出する振動検出部と、
前記昇降部に設けられ、前記振動検出部による前記振動の検出結果が、予め設定された許容範囲内であるか否かを判定すると共に、前記判定の結果を前記本体制御部へ出力する振動監視部と、を備える、天井搬送車。
【請求項2】
前記本体制御部は、前記振動監視部に対して前記許容範囲を設定する、請求項1記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記振動監視部は、前記振動検出部によって検出される振動が前記許容範囲を超えたときに、その旨を前記本体制御部に出力する、請求項1又は2記載の天井搬送車。
【請求項4】
前記振動監視部は、走行時における前記振動の判定の結果及び前記物品の昇降時における前記振動の判定の結果の少なくとも一方を前記本体制御部に出力する、請求項1記載の天井搬送車。
【請求項5】
前記振動監視部は、複数の前記許容範囲を設定可能に設けられており、前記天井搬送車の動作状況に応じて前記許容範囲が切り替わるように設定されている、請求項1~3の何れか一項記載の天井搬送車。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項記載の複数の天井搬送車と、
複数の前記天井搬送車における前記本体制御部と通信可能に設けられた状態監視部と、を備え、
前記状態監視部は、前記振動監視部による判定の結果と前記軌道上の位置とを関連付けて記憶すると共に、前記判定の結果を前記軌道の配置を示すマップデータに重ね合わせた情報を出力する、天井搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、天井搬送車及び天井搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有し、前記本体部に対し複数の吊持部材が巻き取り及び繰り出しされることにより昇降する昇降部と、を備えた天井搬送車が知られている。このような天井搬送車では、昇降部に把持される物品に生じる振動を簡易な構成で監視したいというニーズがある。例えば特許文献1には、天井搬送車に振動センサを設け、振動センサによって取得される振動を、走行モータ及び昇降モータの出力トルクと回転数等と共に、天井搬送車の外部に設けられた診断装置に送信し、診断装置が天井搬送車の診断を自動的に行えるようにした診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の診断システムは、天井搬送車から送信される様々な情報に基づいて高度な分析・診断をする診断装置を設ける必要があるため、昇降部に把持される物品に生じる振動を簡易な構成で把握したいというニーズにはそぐわない。また、上記従来の診断システムは、振動センサによって取得される振動情報をそのまま送信すると共に、出力トルク及び回転数も送信する構成のため、天井搬送車に搭載されている本体制御部における通信を含めた処理の負荷も大きくなる。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、天井搬送車に搭載されている本体制御部における処理の負荷を増大させることなくかつ簡易な構成で、昇降部に把持される物品に生じる振動を監視することができる天井搬送車及び天井搬送車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る天井搬送車は、軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有すると共に本体部に対して吊持部材によって昇降される昇降部と、を備えた天井搬送車であって、本体部に設けられ、天井搬送車における各部を制御する本体制御部と、昇降部に設けられ、昇降部に生じる振動を検出する振動検出部と、昇降部に設けられ、振動検出部による振動の検出結果が、予め設定された許容範囲内であるか否かを判定すると共に、判定の結果を本体制御部へ出力する振動監視部と、を備える。
【0007】
この構成では、振動の検出結果が予め設定された許容範囲を超えたか否かの判定結果のみが、振動監視部から本体制御部に出力されるので、振動検出部によって検出される検出結果の全てが本体制御部に出力される構成に比べて、本体制御部における処理の負荷を軽減することができる。また、この構成では、検出される振動が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定するだけなので、高度な分析等を実施することなく簡易な構成で物品に生じる振動を監視することができる。これらの結果、天井搬送車に搭載されている本体制御部における処理の負荷を増大させることなくかつ簡易な構成で、昇降部に把持される物品に生じる振動を監視することができる。
【0008】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、本体制御部は、振動監視部に対して許容範囲を設定してもよい。これにより、異常な振動を判定するための許容範囲を容易に設定することが可能となる。
【0009】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、振動監視部は、振動検出部によって検出される振動が許容範囲を超えたときに、その旨を本体制御部に出力してもよい。この構成では、振動検出部によって検出される振動が許容範囲を超えたと判定されたときだけ、すなわち振動監視部が異常な振動を検知したと判定されたときだけ、本体制御部にその旨を出力するので、本体制御部における処理の負荷を更に軽減することが可能となる。
【0010】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、振動監視部は、走行時における振動の判定の結果及び物品の昇降時における振動の判定の結果の少なくとも一方を本体制御部に出力してもよい。この構成では、天井搬送車の走行中における異常な振動、及び天井搬送車が停止した状態での昇降部の昇降中における異常な振動の少なくとも一方を監視することが可能となる。
【0011】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、振動監視部は、複数の許容範囲を設定可能に設けられており、天井搬送車の動作状況に応じて許容範囲が切り替わるように設定されていてもよい。ここでいう動作状況には、例えば直線軌道走行時、曲線軌道走行時、及び物品昇降時等が含まれる。この構成では、天井搬送車の動作状況に応じた異常な振動を適切に取得することが可能となる。
【0012】
本発明の一側面に係る天井搬送車システムは、上述した複数の天井搬送車と、複数の天井搬送車における本体制御部と通信可能に設けられた状態監視部と、を備え、状態監視部は、振動監視部による判定の結果と軌道上の位置とを関連付けて記憶すると共に、判定の結果を軌道の配置を示すマップデータに重ね合わせた情報を出力してもよい。この構成では、異常な振動(振動が許容範囲を超えたこと)と、その異常な振動が発生した位置とが関連付けられた状態で記憶されるので、異常な振動が発生している箇所の把握が容易となる。また、異常な振動が発生している位置は、マップデータに重ねて表示されるので、異常な振動が発生している位置の視覚的な認識が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、天井搬送車に搭載されている本体制御部における処理の負荷を増大させることなくかつ簡易な構成で、昇降部に把持される物品に生じる振動を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る移載装置を備える天井搬送車を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の天井搬送車の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、振動検出部が検出する振動の検出結果の一例である。
【
図4】
図4は、
図1の天井搬送車における振動の監視の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は、搬送コントローラが出力する振動監視画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
一実施形態の天井搬送車システム1は、複数の天井搬送車6(
図1参照)と、軌道4と、搬送コントローラ70(
図2参照)と、を備えている。
【0017】
図1に示されるように、一実施形態の天井搬送車6は、軌道4に沿って移動可能な天井搬送車であって、FOUP(Front Opening Unified Pod)(物品)10を載置部(図示せず)間で搬送するためのシステムに用いられる。天井搬送車6は、FOUP10に代えて、例えば、複数のガラス基板を格納するレチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等を搬送してもよい。ここでは、例えば、工場の天井等に敷設された一方通行の軌道4に沿って天井搬送車6が走行する天井搬送車システム1に用いられる天井搬送車6を例に挙げて説明する。
【0018】
軌道4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。軌道4は、例えば天井から吊り下げられている。軌道4は、天井搬送車6を走行させるための予め定められた走行路である。載置部は、軌道4に沿って配置され、天井搬送車6がFOUP10を受け渡し可能な位置に設けられている。載置部には、バッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、FOUP10が一時的に載置される載置部である。バッファは、例えば、目的とする受渡ポートに他のFOUP10が載置されている等の理由により、天井搬送車6が搬送しているFOUP10をその受渡ポートに移載できない場合に、FOUP10が仮置きされる載置部である。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置(図示せず)に対してFOUP10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0019】
天井搬送車6は、軌道4に沿って走行し、FOUP10を搬送する。天井搬送車6は、天井走行式無人搬送車である。天井搬送車システム1が備える天井搬送車6の台数は、特に限定されず、複数である。
図1及び
図2に示されるように、天井搬送車6は、走行部18と、移載装置7と、本体コントローラ(本体制御部)50と、を有する。
【0020】
走行部18は、モータ等を含んで構成され、天井搬送車6を軌道4に沿って走行させる。移載装置7は、本体部22と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降部30と、前後フレーム33,33と、を有する。
【0021】
本体部22は、横送り部24、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降部30を支持する。横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降部30を一括して、軌道4の走行方向と直角な方向に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降部30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、ワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持部材28Aを巻き取る又は繰り出すことによって昇降部30を昇降させる。
【0022】
昇降部30には、チャック(把持部)30Aと、センサユニット55とが設けられている。チャック30Aは、FOUP10のフランジ部を下方から支持した状態で保持する。チャック30Aは、FOUP10の保持又は解放が自在とされている。前後フレーム33,33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中にFOUP10が落下することを防止する。前後フレーム33,33は、天井搬送車6の走行方向の前後に設けられている。
【0023】
センサユニット55は、昇降部30に生じる振動(すなわち、チャック30Aに把持されるFOUP10に生じる振動)を検出して、検出結果を後段にて詳述する本体コントローラ50へ出力する。センサユニット55は、振動を検出する振動検出部55Aと振動監視部55Bとを有している。振動検出部55Aは、例えば、三軸加速度センサであり、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の振動を検出する。振動検出部55Aは、昇降部30をZ軸方向から平面視したときに、昇降部30の重心位置に設けられている。本実施形態では、チャック30Aに隣接する位置に設けられている。振動検出部55Aは、所定間隔で連続的に、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の振動を検出している(
図3参照)。
【0024】
振動監視部55Bは、振動検出部55Aによる振動の検出結果が、予め設定された許容範囲R内であるか否かを判定すると共に、上記の判定の結果を本体コントローラ50へ出力する。振動監視部55Bは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。振動監視部55Bは、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。振動監視部55Bは、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。
【0025】
振動監視部55Bにおいて設定されている許容範囲Rは、本体コントローラ50によって設定される。本実施形態の振動監視部55Bは、振動検出部55Aによる振動の検出結果(
図3参照)を監視しており、上記の許容範囲Rを超えたときにだけ、上記許容範囲を超えた旨の信号を本体コントローラ50に出力する。すなわち、振動監視部55Bは、
図3に示されるポイントDにおいて、許容範囲Rを超えた旨の信号を本体コントローラ50に出力する。
【0026】
振動監視部55Bは、走行時における振動の判定の結果と、FOUP10の昇降時における振動の判定の結果とを本体コントローラ50に出力する。すなわち、本実施形態の天井搬送車6では、走行時及び昇降時の両方で昇降部30に生じる振動を監視することができる。
【0027】
振動監視部55Bは、複数の許容範囲Rを設定可能に設けられている。例えば、振動監視部55Bは、直線軌道走行時における許容範囲R1、曲線軌道走行時における許容範囲R2、及びFOUP昇降時における許容範囲R3が含まれる。また、振動監視部55Bは、天井搬送車6の動作状況に応じて許容範囲R1,R2,R3が切り替わるように設定されている。
【0028】
本体コントローラ50は、CPU、ROM及びRAM等からなる電子制御ユニットである。本体コントローラ50は、天井搬送車6(すなわち、走行部18及び移載装置7)における各部の各種動作を制御する。具体的には、
図2に示されるように、本体コントローラ50は、走行部18と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降部30と、を制御する。本体コントローラ50は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。本体コントローラ50は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。本体コントローラ50とセンサユニット55とは、有線又は無線によって、互いに通信可能に設けられている。有線の場合には、吊持部材28Aに、通信線が内蔵される。
【0029】
本体コントローラ50は、振動監視部55Bに対して許容範囲Rを設定する。本実施形態の振動監視部55Bは、直線軌道走行時における許容範囲R1、曲線軌道走行時における許容範囲R2、及び物品昇降時における許容範囲R3のそれぞれを振動監視部55Bに設定する。
【0030】
本体コントローラ50は、適宜の手段によって、天井搬送車6の位置を把握可能となっている。例えば、本体コントローラ50は、軌道4に貼付されているバーコード等から取得される位置情報、及び走行部18に備わるモータ等のカウンタ等によって、自天井搬送車6の位置が把握可能となっている。本体コントローラ50は、センサユニット55から送信される許容範囲Rを超えた旨の信号を受信すると、当該信号と自天井搬送車6の位置とを関連付けて図示しないメモリ等に記憶する。すなわち、本体コントローラ50は、許容範囲Rを超えた振動(異常振動)が計測された位置を示す情報を記憶する。そして、本体コントローラ50は、搬送コントローラ70からの要求に応じて、許容範囲Rを超えた振動が計測された位置を示す情報を搬送コントローラ70へ送信する。
【0031】
図2に示される搬送コントローラ70は、複数の天井搬送車6を制御する。搬送コントローラ70は、CPU、ROM及びRAM等からなる電子制御ユニットである。搬送コントローラ70は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。搬送コントローラ70は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。搬送コントローラ70は、CPU、RAM及びROM等のハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとが協働することによって構成される搬送制御部71及び状態監視部72と、記憶部73と、を有している。
【0032】
搬送制御部71は、図示しない上位コントローラからの搬送要求に基づいて、複数の天井搬送車6に搬送命令を割り付ける。状態監視部72は、天井搬送車6の本体コントローラ50に許容範囲Rを超えた振動が計測された位置を示す情報を本体コントローラ50に送信させる。記憶部73は、振動監視部55Bによる判定の結果と、軌道4上の位置とを関連付けて記憶する。すなわち、記憶部73は、本体コントローラ50から送信されてくる、許容範囲Rを超えた振動(異常振動)が計測された位置を示す情報を記憶する。
【0033】
本実施形態の状態監視部72は、記憶部73に記憶された情報を端末装置80に出力する。例えば、状態監視部72は、
図5に示されるような、振動監視画面SC1を端末装置80に表示させる。振動監視画面SC1は、軌道4の配置平面図上に、異常振動が発生した位置Aを重ね合わせた画面である。軌道4の軌道平面図には、軌道4の他にストッカ等(軌道4に沿って表示されている矩形状の図形)が表示されている。
【0034】
次に、主に
図4を参照しながら、本実施形態における天井搬送車システム1の動作について説明する。はじめに、本体コントローラ50は、振動監視部55Bに振動の許容範囲Rを設定するための閾値を振動監視部55Bに送信する。(ステップS1)。本体コントローラ50から閾値を受信した振動監視部55Bは、許容範囲R(閾値)を設定する(ステップS2)。振動監視部55Bは、許容範囲Rを設定した旨を本体コントローラ50に送信する(ステップS3)。これにより、センサユニット55における振動監視の準備、すなわち、振動検出部55Aによって検出された振動が許容範囲Rを超えた場合(異常振動が検出された場合)に、その旨の信号を出力するための準備が完了する(ステップS10)。
【0035】
センサユニット55における振動監視の準備が完了すると、振動検出部55Aは、所定の間隔で昇降部30に生じる振動を検出する。振動監視部55Bと振動検出部55Aとは逐次データ通信を行っており、振動監視部55Bは、振動検出部55Aによって検出される振動を監視している(ステップS11)。また、本体コントローラ50は、振動が許容範囲Rを超えていないかを逐次チェックしている(ステップS12)。ここで、振動検出部55Aが、振動検出部55Aによって検出される振動値が許容範囲Rを超えたことを検知すると(ステップS13)、その旨の情報を本体コントローラ50に送信する(ステップS14)。
【0036】
本体コントローラ50は、振動監視部55Bから送信される許容範囲Rを超えた旨の信号を受信すると(ステップS15)、その旨の信号と軌道4上の位置とを関連付けた異常振動情報を、図示しないメモリ等に記憶させる。搬送コントローラ70は、本体コントローラ50に対して、天井搬送車6の状況を定期的に問い合わせる(ステップS16)。本体コントローラ50は、搬送コントローラ70から定期的な問い合わせを受け付けたときに、メモリに異常振動情報(振動検出ログ)が記憶(蓄積)されていると、当該異常振動情報を搬送コントローラ70に出力する(ステップS20)。
【0037】
搬送コントローラ70は、本体コントローラ50から出力されてくる異常振動情報を受信すると、当該異常振動情報を記憶部73に記憶させる(ステップS21)。そして、搬送コントローラ70は、記憶部73に記憶されている異常振動情報を端末装置80に出力する(ステップS22)。端末装置80の例には、表示ディスプレイ、携帯端末、スマートフォン、タブレット等が含まれる。端末装置80は、搬送コントローラ70から送信されてくる異常振動情報を、
図5に示されるような振動監視画面SC1として表示する。
【0038】
上記実施形態の天井搬送車6では、振動検出部55Aによる振動の検出結果が予め設定された許容範囲Rを超えたか否かの判定結果のみが、振動監視部55Bから本体コントローラ50に出力される。これにより、センサユニット55によって検出される検出結果の全てが本体コントローラ50に出力される構成に比べて、本体コントローラ50における処理の負荷を軽減することができる。また、上記実施形態の天井搬送車6では、振動検出部55Aによって検出される振動が予め設定された許容範囲R内であるか否かを判定するだけなので、高度な分析等を実施することなく簡易な構成でFOUP10に生じる振動を監視することができる。これらの結果、天井搬送車6に搭載されている本体コントローラ50における処理の負荷を増大させることなくかつ簡易な構成で、昇降部30に把持されるFOUP10に生じる振動を監視することができる。
【0039】
上記実施形態の天井搬送車6では、本体コントローラ50は、振動監視部55Bに対して許容範囲Rを設定することができる。この構成では、異常な振動を判定するための許容範囲Rを容易に設定することが可能となる。
【0040】
上記実施形態の天井搬送車6では、振動監視部55Bは、振動検出部55Aによって検出される振動が許容範囲Rを超えたと判定したときに、その旨の信号を本体コントローラ50に出力している。この構成では、振動検出部55Aによって検出される振動が許容範囲Rを超えたと判定されたときだけ、すなわち振動監視部55Bが異常な振動を検知したと判定されたときだけ、本体コントローラ50にその旨の信号を出力するので、本体コントローラ50における処理の負荷を更に軽減することが可能となる。
【0041】
上記実施形態の天井搬送車6では、振動監視部55Bは、走行時における振動の判定の結果及びFOUP10の昇降時における振動の判定の結果の両方を本体コントローラ50に出力している。この構成では、天井搬送車6の走行中における異常な振動、及び天井搬送車6が停止した状態での昇降部30の昇降中における異常な振動の両方を監視することが可能となる。
【0042】
上記実施形態の天井搬送車6では、振動監視部55Bは、複数の許容範囲を設定可能に設けられており、天井搬送車6の動作状況に応じて許容範囲が切り替わるように設定されている。この構成では、天井搬送車6の動作状況に応じた異常な振動を適切に取得することが可能となる。
【0043】
上記実施形態の天井搬送車システム1では、異常な振動(振動が許容範囲を超えたこと)と、その異常な振動が発生した位置とが関連付けられた状態で記憶されるので、軌道4の異常箇所の把握が容易となる。また、上記実施形態では、記憶部73に記憶された振動情報が、
図5に示されるような振動監視画面SC1として表示されるので、視覚的な把握が可能な情報を提供することができる。
【0044】
以上、本発明の一側面の一実施形態について説明したが、本発明の一側面は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
上記実施形態では、本体コントローラ50によって複数の許容範囲R1,R2,R3が設定される例を挙げて説明したがこれに限定されず、1つであっても、2つであっても、4つ以上であってもよい。
【0046】
上記実施形態及び変形例では、振動監視部55Bは、振動検出部55Aによって検出される振動が許容範囲Rを超えたときにだけ、その旨の信号を本体コントローラ50に出力する例を挙げて説明したが、許容範囲Rを超えているか超えていないかという情報(信号)を、定期的に本体コントローラ50に出力してもよい。
【0047】
上記実施形態及び変形例では、本体コントローラ50から振動監視部55Bにおける上記許容範囲Rを設定できる例を挙げて説明したが、設定不能に構成されてもよい。この場合、振動監視部55Bにおいて予め許容範囲Rが設定されていてもよいし、振動監視部55Bに設けられたスイッチ等によって切り替え可能に構成されてもよい。
【0048】
上記実施形態及び変形例では、判定の結果を軌道4の配置を示すマップデータに重ね合わせた情報を出力する状態監視部72が搬送コントローラ70に構成された例を挙げて説明したが、別途独立したコントローラを設けてもよいし、複数の天井搬送車6のうち一の天井搬送車6に上記機能を有するコントローラが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…天井搬送車システム、4…軌道、6…天井搬送車、18…走行部、22…本体部、28A…吊持部材、30…昇降部、30A…チャック(把持部)、50…本体コントローラ(本体制御部)、55…センサユニット、55A…振動検出部、55B…振動監視部、70…搬送コントローラ、71…搬送制御部、72…状態監視部、73…記憶部、R,R1,R2,R3…許容範囲、SC1…振動監視画面。