(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】両面研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20221101BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20221101BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20221101BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20221101BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20221101BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20221101BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/08
B24B37/12 D
B24B37/26
B24B37/12 A
B24B49/12
B24B49/04 Z
H01L21/304 621A
H01L21/304 622S
(21)【出願番号】P 2022008483
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】天海 史郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩昌
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223908(JP,A)
【文献】特開2021-146475(JP,A)
【文献】特表2018-506182(JP,A)
【文献】特開2019-181632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上定盤及び下定盤を有するウェーハの両面研磨装置であって、
前記上定盤には回転中心と周縁との間に複数の定盤貫通孔が設けられており、前記上定盤の前記下定盤に対向する研磨面には研磨布が設けられており、
前記研磨布には、前記複数の定盤貫通孔に対応する位置に、前記定盤貫通孔の径以上の大きさの径を有する穴が設けられており、
前記上定盤の前記定盤貫通孔の各々には、上面に窓材が設けられ
ると共に前記研磨面側である下面には窓材がなく且つプラグ貫通孔を有する樹脂製の中空プラグが挿入されており、
前記プラグ貫通孔を通して、前記ウェーハの厚さを研磨中にリアルタイムで光学的に測定可能なウェーハ厚さ測定機構を、前記上定盤の上部に更に備えたものであることを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
前記ウェーハ厚さ測定機構は、前記ウェーハに対して光学的に透過する波長のレーザー光を出射することが可能な波長可変赤外レーザー装置を具備するものであることを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項3】
前記窓材は、前記レーザー光を透過させるものであることを特徴とする請求項2に記載の両面研磨装置。
【請求項4】
前記中空プラグの前記プラグ貫通孔は、前記レーザー光の径よりも1.5mm以上大きい径を有するものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の両面研磨装置。
【請求項5】
前記中空プラグは、前記窓材が貼付けられるフランジ部を有し、前記フランジ部の外径は、前記上定盤の前記定盤貫通孔の径よりも大きい径のものであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の両面研磨装置。
【請求項6】
前記中空プラグは、合成ゴム製のO-リングによって前記上定盤の前記定盤貫通孔に固定されたものであることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の両面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工中のウェーハの厚さ測定機構を有する両面研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの両面研磨工程では、狙いのウェーハ厚さからの加工後厚さのズレ量を可能な限り小さくするために、リアルタイムでのウェーハ厚さの測定が求められている。
【0003】
図8に、従来の一例の両面研磨装置の概略側面図を示す。また、
図9に、
図8に示す両面研磨装置のIX部の概略拡大断面図を示す。
【0004】
図8及び
図9に示す両面研磨装置10は、上定盤2、下定盤3、サンギア8及びインターナルギア9の各駆動部を有する、4way式両面研磨装置である。また、上定盤2の下定盤3に対向する研磨面2Aには、研磨布4Aが設けられている。下定盤3の上定盤2に対向する面には、研磨布4Bが設けられている。そして、両面研磨装置10は、上定盤2の上部に、ウェーハ厚さ測定機構7を更に備えている。
【0005】
図8及び
図9に示す両面研磨装置10を用いる従来の一例の両面研磨工程では、
図8及び
図9に示すように、ウェーハ厚さ測定機構7から上定盤2の定盤貫通孔21を通して赤外レーザーLを研磨中のウェーハWに照射し、光反射干渉法にて厚さをモニタリングしながら、ウェーハWが任意の厚さになったところで研磨を終了している。
【0006】
図8及び
図9に示す従来例の両面研磨装置10では、定盤貫通孔21について、スラリーと定盤金属部との接液防止や高圧洗浄時の水飛散防止のために、定盤貫通孔21の下端(研磨面2A側)に、接着層61を介して、プラスチック製の窓材(フィルム)6を貼り付けている。
【0007】
その他、研磨中のウェーハWの厚さをモニタリングする方法及び/又は装置については、様々な提案がなされている。
【0008】
例えば、特許文献1には、片面研磨装置の被研磨面の状態を光学的に測定する方法において、測定孔に測定光を透過させるほぼ透明材料から形成された、栓部材を通して被研磨物の表面状態を測定する光学測定方法が記載されている。
【0009】
特許文献2には、両面研磨装置において、研磨布側にプラスチック製の窓材が付けられた上定盤のスラリー供給孔から赤外レーザーを透過させ、研磨中のウェーハの厚さを測定する方法が記載されている。
【0010】
特許文献3には、両面研磨装置において、上定盤のスラリー供給孔のセンサーホルダーに石英材を使用することで、研磨時の上定盤の加熱による厚さの誤差を低減できる測定方法が記載されている。
【0011】
特許文献4には、両面研磨装置において、上定盤のスラリー供給孔からレーザーを照射させて、反射光を検出し、ウェーハの抵抗率と厚さの相関関係によってこれらのデータを補正することにより、研磨中のウェーハの厚さを高精度に測定する方法が記載されている。
【0012】
特許文献5には、両面研磨装置において、上定盤に形成された測定孔から形状測定器によりワークの形状を測定し、これらの形状をメモリに記憶し、研磨中のワークの形状を時系列で表示することを特徴とする研磨機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2002-170800号公報
【文献】特開2010-030019号公報
【文献】特開2011-134823号公報
【文献】特開2017-011099号公報
【文献】特開2019-181657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図8及び
図9に示す両面研磨装置10では、上定盤2の研磨面2A側に窓材6が存在するため、ワークであるウェーハWと窓材6とが接触することで窓材6が破損し、キズ及び/又はパーティクルの発生要因となることがある。厚さ測定精度においても、窓材6にキズ及び/又は汚れが蓄積したり、窓材6が研磨スラリーに押されて変形したりといった影響を受けて、精度が不十分となってしまう。
【0015】
非研磨面である上面2B側のみに窓材6を貼り付けることで上述の問題は解消されるが、定盤貫通孔21内において定盤金属部とスラリーとが接液するため、金属不純物が不安視される。また、定盤貫通孔21内で固着したスラリーがキズ及び/又はパーティクル発生要因となるため定期的に洗浄が必要となるが、定盤貫通孔21内の洗浄は手間かつ時間がかかるため、装置停止による生産性の悪化が生じる。
【0016】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、優れた厚さ測定精度を示し、かつ金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消できる両面研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明では、上定盤及び下定盤を有するウェーハの両面研磨装置であって、
前記上定盤には回転中心と周縁との間に複数の定盤貫通孔が設けられており、前記上定盤の前記下定盤に対向する研磨面には研磨布が設けられており、
前記研磨布には、前記複数の定盤貫通孔に対応する位置に、前記定盤貫通孔の径以上の大きさの径を有する穴が設けられており、
前記上定盤の前記定盤貫通孔の各々には、上面に窓材が設けられ且つプラグ貫通孔を有する樹脂製の中空プラグが挿入されており、
前記プラグ貫通孔を通して、前記ウェーハの厚さを研磨中にリアルタイムで光学的に測定可能なウェーハ厚さ測定機構を、前記上定盤の上部に更に備えたものであることを特徴とする両面研磨装置を提供する。
【0018】
本発明の両面研磨装置では、樹脂製の中空プラグを定盤貫通孔に挿入することで、定盤材料が金属であっても、金属汚染の心配がないため、上定盤下端の研磨加工時にスラリーと接触する部分に窓材を貼る必要が無い。また、本発明の両面研磨装置では、中空プラグの上面、すなわち研磨面とは反対側の面に窓材が設けられているため、窓材破損のリスクを解消でき、且つ厚さ測定精度を改善することができる。
【0019】
また、中空プラグは容易に取り外し可能なため、洗浄時でも、予備プラグと交換することで、両面研磨装置は稼働を継続でき、生産性の低下を最低限に止めることができる。
【0020】
すなわち、本発明の両面研磨装置であれば、優れた厚さ測定精度を示し、かつ金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消することができる。
【0021】
例えば、前記ウェーハ厚さ測定機構は、前記ウェーハに対して光学的に透過する波長のレーザー光を出射することが可能な波長可変赤外レーザー装置を具備するものとすることができる。
【0022】
ウェーハ厚さ測定機構としては、例えば波長可変赤外レーザー装置を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0023】
この場合、前記窓材は、前記レーザー光を透過させるものであることが好ましい。
【0024】
窓材が波長可変赤外レーザー装置からのレーザー光を透過させる素材のものであれば、窓材による厚さ測定への干渉を小さくすることができるため、ウェーハの厚さ測定の精度をより向上させることができる。
【0025】
また、この場合、前記中空プラグの前記プラグ貫通孔は、前記レーザー光の径よりも1.5mm以上大きい径を有するものであることが好ましい。
【0026】
中空プラグのプラグ貫通孔の径がウェーハ厚さ測定用のレーザー光の径よりも1.5mm以上大きければ、プラグ貫通孔内に付着するスラリーや水滴などの影響を抑えて、ウェーハ厚さ測定を高い精度で行うことができる。
【0027】
前記中空プラグは、前記窓材が貼付けられるフランジ部を有し、前記フランジ部の外径は、前記上定盤の前記定盤貫通孔の径よりも大きい径のものであることが好ましい。
【0028】
このようなフランジ部を有する中空プラグを有する両面研磨装置であれば、中空プラグが上定盤の定盤貫通孔に挿入された状態を安定に保持でき、中空プラグが研磨面に落下するリスクを解消できる。
【0029】
前記中空プラグは、合成ゴム製のO-リングによって前記上定盤の前記定盤貫通孔に固定されたものであることが好ましい。
【0030】
このように中空プラグがO-リングによって定盤貫通孔に固定されていることにより、中空プラグが上定盤の定盤貫通孔に挿入された状態を安定に保持できるだけでなく、上定盤とスラリーとの接液を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明の両面研磨装置であれば、優れた厚さ測定精度を示し、かつ金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の両面研磨装置の一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図1に示す両面研磨装置のII部の拡大概略断面図である。
【
図3】
図1に示す両面研磨装置における中空プラグのプラグ貫通孔とレーザー光との関係を示す概略平面図である。
【
図4】実施例におけるウェーハ加工中のウェーハ厚さの推移を示すグラフである。
【
図5】比較例におけるウェーハ加工中のウェーハ厚さの推移を示すグラフである。
【
図6】実施例における150バッチ連続加工時の厚さの推移を示すグラフである。
【
図7】比較例における150バッチ連続加工時の厚さの推移を示すグラフである。
【
図8】従来の両面研磨装置の一例を示す概略側面図である。
【
図9】
図8に示す両面研磨装置のIX部の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述のように、優れた厚さ測定精度を示し、かつ金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消できる両面研磨装置の開発が求められていた。
【0034】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、光学的なウェーハ厚さ測定機構を備えた両面研磨装置であって、上面に窓材貼り付け面を有し、且つ、プラグ貫通孔を有する樹脂製の中空プラグを上定盤の定盤貫通孔の各々に挿入し、中空プラグの上面に窓材を設けた両面研磨装置であれば、優れた厚さ測定精度を示し、かつ、金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消できることを見出し、本発明を完成させた。
【0035】
即ち、本発明は、上定盤及び下定盤を有するウェーハの両面研磨装置であって、
前記上定盤には回転中心と周縁との間に複数の定盤貫通孔が設けられており、前記上定盤の前記下定盤に対向する研磨面には研磨布が設けられており、
前記研磨布には、前記複数の定盤貫通孔に対応する位置に、前記定盤貫通孔の径以上の大きさの径を有する穴が設けられており、
前記上定盤の前記定盤貫通孔の各々には、上面に窓材が設けられ且つプラグ貫通孔を有する樹脂製の中空プラグが挿入されており、
前記プラグ貫通孔を通して、前記ウェーハの厚さを研磨中にリアルタイムで光学的に測定可能なウェーハ厚さ測定機構を、前記上定盤の上部に更に備えたものであることを特徴とする両面研磨装置である。
【0036】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
図1に、本発明の両面研磨装置の一例の概略側面図を示す。また、
図2に、
図1に示す両面研磨装置のII部の概略拡大断面図を示す。
【0038】
図1及び
図2に示す両面研磨装置1は、上定盤2及び下定盤3を有するウェーハWの両面研磨装置である。
【0039】
上定盤2には回転中心22と周縁23との間に複数の定盤貫通孔21が設けられている。定盤貫通孔21は、上定盤2を研磨面2Aから上面2Bまで貫いている。
図1では、2つの定盤貫通孔21を代表として示しているが、定盤貫通孔21の数は2つに限られるものではない。また、定盤貫通孔21の位置は、
図1に示す位置に限定されるものではない。
【0040】
上定盤2の下定盤3に対向する研磨面2Aには、研磨布4Aが設けられている。この研磨布4Aには、上定盤の複数の定盤貫通孔21に対応する位置に、定盤貫通孔21の径以上の大きさの径を有する穴41が設けられている。
【0041】
両面研磨装置1では、上定盤2の定盤貫通孔21の各々に、樹脂製の中空プラグ5が挿入されている。中空プラグ5は、
図2に示すように、上面52に窓材6が設けられるものである。また、中空プラグ5は、プラグ貫通孔51を有している。
【0042】
両面研磨装置1は、上定盤2の上部に、ウェーハ厚さ測定機構7を更に備えている。ウェーハ厚さ測定機構7は、プラグ貫通孔51を通して、ウェーハWの厚さを研磨中にリアルタイムで光学的に測定可能なものである。
【0043】
このような両面研磨装置1では、樹脂製の中空プラグ5を定盤貫通孔21に挿入することで、定盤材料が金属であっても、金属汚染の心配がないため、上定盤2の下端の研磨加工時にスラリーと接触する部分に窓材6を貼る必要が無い。また、両面研磨装置1では、中空プラグ5の上面52、すなわち研磨面2Aとは反対側の非研磨面に窓材6が設けられているため、窓材6の破損のリスクを解消でき、且つ厚さ測定精度を改善することができる。
【0044】
また、中空プラグ5は容易に取り外し可能なため、洗浄時でも、予備プラグと交換することで、両面研磨装置1は稼働を継続でき、生産性の低下を最低限に止めることができる。
【0045】
すなわち、本発明の両面研磨装置1であれば、優れた厚さ測定精度を示し、かつ金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消することができる。
【0046】
本発明の両面研磨装置1の研磨対象であるウェーハWは、典型的には、シリコンウェーハ、特には半導体シリコンウェーハである。しかしながら、本発明の両面研磨装置1の研磨対象であるウェーハWは、シリコンウェーハに限定されるものではない。
【0047】
以下、
図1及び
図2に示す例の両面研磨装置1をより詳細に説明する。
【0048】
図1及び
図2に示す例の両面研磨装置1は、より詳細には、上定盤2、下定盤3、サンギア8及びインターナルギア9の各駆動部を有する、4way式両面研磨装置である。
【0049】
下定盤3の上定盤2に対向する面には、研磨布4Bが設けられている。
【0050】
上定盤2及び下定盤3にそれぞれ設けられる研磨布(研磨パッド)4A及び4Bとしては、例えば市販の発泡ポリウレタンパッドまたは硬質不織布パッドを用いることができるが、これに限定されない。
【0051】
中空プラグ5は、
図2に示すように、フランジ部53と、フランジ部53から延びた軸部54を含む。窓材6が設けられる中空プラグ5の上面52は、フランジ部53の上面である。軸部54は、定盤貫通孔21内に保持されている。
【0052】
フランジ部53の外径は、
図2に示すように、上定盤2の定盤貫通孔21の径よりも大きい径のものであることが望ましい。これにより、中空プラグ5のフランジ部53がストッパーとしての働きをするため、中空プラグ5が上定盤2の定盤貫通孔21に挿入された状態を安定に保持でき、中空プラグ5が研磨面に落下するリスクを解消できる。
【0053】
図1及び
図2に示す例では、中空プラグ5は、合成ゴム製のO-リング55及び56によって上定盤2の定盤貫通孔21に固定されている。一方のO-リング55は、中空プラグ5の軸部54のうちフランジ部53に近い部分につけられている。他方のO-リング56は、中空プラグ5の軸部54のうち先端部54Aに近い部分につけられている。
【0054】
このように中空プラグ5が合成ゴム製のO-リング55及び56によって定盤貫通孔21に固定されていることにより、中空プラグ5が上定盤2の定盤貫通孔21に挿入された状態を安定に保持できるだけでなく、上定盤2とスラリーとの接液を効果的に防止することができる。
【0055】
プラグ貫通孔51は、
図2に示すように、中空プラグ5を上面52から軸部54の先端54Aにかけて貫いている。
【0056】
ウェーハ厚さ測定機構7は、プラグ貫通孔51を通して、ウェーハWの厚さを研磨中にリアルタイムで光学的に測定可能なように構成されている。
図1の例では、ウェーハ厚さ測定機構7は、研磨中のウェーハWにレーザー光Lを照射する光源と、ウェーハWからの反射光を受光する受光部と、反射光からウェーハ厚さを算出する算出部とを具備している。
【0057】
光源としては、光学的にウェーハを透過する波長のレーザー光Lを出射することが可能な波長可変赤外レーザー装置を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
窓材6は、中空プラグ5の上面52上に、接着層61を介して貼り付けられる。
【0059】
窓材6は、波長可変赤外レーザー装置からのレーザー光Lを透過させるものであることが好ましい。
【0060】
窓材6が波長可変赤外レーザー装置からのレーザー光Lを透過させる素材のものであれば、窓材6による厚さ測定への干渉を小さくすることができるため、ウェーハWの厚さ測定の精度をより向上させることができる。
【0061】
窓材6は、例えばレーザー光L透過性のフィルムであり得る。
【0062】
図1に示すように、ウェーハWへの入射光及びウェーハWからの反射光(合わせてレーザー光Lとして点線で示している)は、上定盤2に設けられた定盤貫通孔21に挿入された中空プラグ5のプラグ貫通孔51を通過する。
【0063】
図3は、この例の両面研磨装置1における中空プラグ5を上面52から見た、プラグ貫通孔51とレーザー光Lとの関係を示す概略平面図である。
【0064】
図3に示すように、中空プラグ5のプラグ貫通孔51は、レーザー光Lの径よりも大きい径を有する。
【0065】
例えば、中空プラグ5のプラグ貫通孔51の径がウェーハ厚さ測定用のレーザー光Lの径よりも1.5mm以上大きければ、プラグ貫通孔51内に付着するスラリーや水滴などの影響を抑えて、ウェーハ厚さ測定を高い精度で行うことができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
(実施例)
実施例では、以下の条件で構成した
図1及び
図2に示す両面研磨装置1を用いて、以下の条件でウェーハWの両面研磨を行った。
【0068】
(比較例)
比較例では、以下の条件で構成した
図8及び
図9に示す両面研磨装置10を用いて、以下の条件でウェーハWの両面研磨を行った。
【0069】
◇実施例及び比較例 共通点
・ウェーハWとしては、直径300mmの通常抵抗10ΩのP型シリコン単結晶ウェーハを用いた。
・両面研磨装置の上定盤2としては、回転中心22を支点とする円周上に、直径15mmの定盤貫通孔21を10個有するものを用いた。
・上定盤2及び下定盤3にそれぞれ設ける研磨布4A及び4Bとしては、ともにウレタン発泡体のものを用いた。研磨スラリーとしては、コロイダルシリカ砥粒を含み、pHを10.0~11.0の範囲内で調整したものを用いた。
・厚さ測定機構7としては、レーザー径3mm、波長1300nm、出力10mW以上の波長可変型赤外レーザーを備えたものを用いた。
・窓材6としては、上定盤2の定盤貫通孔21の径より15mm大きい径となるように、東レ製PETフィルム(厚さ200μm)を直径30mmの円盤状に切り取ったものを用いた。接着層61としての両面テープ(住友スリーエム442JS3、厚さ110μm)をPETフィルムの窓材6の外周に沿って貼り付けたものを、中空プラグ5の上面52(
図2;実施例)又は上定盤2の研磨面2A(
図9;比較例)に貼り付けた。
【0070】
◇実施例
・ポリオキシメチレン(POM)樹脂製の中空プラグ5(プラグ貫通孔51の径5mm、窓材6の貼付面である上面52の径30mm、定盤挿入部である軸部54の外径14.8mm)を上定盤2の定盤貫通孔21に挿入し、合成ゴム製のO-リング55及び56を用いて固定した。
・中空プラグ5の上面52の貼り付け部の外周に沿って上記窓材6を貼り付けた。
・上定盤2に貼り付ける研磨布4Aには上定盤2の定盤貫通孔21と同じ位置に、同じ大きさの径15mmで穴41を開けた。
【0071】
◇比較例
・上定盤2に貼り付ける研磨布4Aには、上定盤2の定盤貫通孔21と同じ位置に、定盤貫通孔21より15mm大きい直径30mmの穴41を開けた。
・
図9に示すように、研磨布4Aの上記穴41の位置に、上記窓材6を貼り付けた。
【0072】
◇加工中ウェーハ厚さ測定結果
・1バッチ当たり5枚加工中のウェーハWの研磨開始から終了までの厚さ測定推移を比較した。結果を
図4及び
図5にそれぞれ示す。
・モニタリングしているウェーハ厚さから研磨レートを算出し、指定した仕上がり厚さになったとしたところで研磨を終了した。この研磨レートはウェーハ厚さが測定される度に更新した。すなわち厚さ測定回数が多いほどより真に近い研磨レートとなるため、測定回数の多い方が加工後ウェーハ厚さの精度向上が見込まれる。
・
図4及び
図5に示すように、1バッチ中の厚さ測定数を比較すると、比較例では169点に対し、実施例では535点であった。これは、比較例では、上定盤2の研磨面2A側の窓材6に、ワークであるウェーハWとの接触による傷や破損変形やスラリー及び水滴の付着、汚れの堆積の影響があったのに対し、実施例では、上定盤2の研磨面2A側の窓材6が無いため、ワークであるウェーハWとの接触による傷や破損変形が無くなり、上定盤2の研磨面2Aと反対側の窓材6にはスラリー及び水滴の付着、汚れの堆積の影響が無いからである。すなわち、実施例では、比較例に対して測定点数の向上が確認された。
【0073】
◇加工後ウェーハ厚さ測定結果
・
図4及び
図5に示した結果は、1バッチ中のウェーハ厚さ推移であったが、別の評価として、連続加工150バッチでの加工後ウェーハ厚さ(1バッチ5枚平均値)、狙い厚さ、狙い厚さに対する加工後ウェーハ厚さの差分の推移を比較した。その結果を、
図6及び
図7に示す。
・加工後ウェーハ厚さ測定には、KLA社製平坦度測定器WaferSight2を用いた。
・狙い厚さに対する加工後ウェーハ厚さの差分が小さいほど、厚さ測定精度が良好と言える。目安として差分が0.2μm以下となったバッチ数の割合を比較すると、比較例では76.0%に対し、実施例では98.0%と改善が見られた。
【0074】
また、実施例の両面研磨装置1では、洗浄時及び交換時の中空プラグ5の取り外しが容易であったため、中空プラグ5の洗浄時及び交換時での稼働停止を最低限にすることができた。その結果、生産性を維持しながら、キズやパーティクルの発生源を取り除くことができた。
【0075】
そして、実施例では、連続加工150バッチでの加工後も、窓材6の破損は確認できなかった。
【0076】
これらの結果から、本発明の両面研磨装置であれば、優れた厚さ測定精度を示し、かつ、金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消することができることが実証された。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1及び10…両面研磨装置、 2…上定盤、 2A…研磨面、 2B…上面、 3…下定盤、 4A及び4B…研磨布、 5…中空プラグ、 6…窓材、 7…ウェーハ厚さ測定機構、 8…サンギア、 9…インターナルギア、 21…定盤貫通孔、 22…回転中心、 23…周縁、 41…穴、 51…プラグ貫通孔、 52…上面、 53…フランジ部、 54…軸部、 54A…先端、 55及び56…O-リング、 61…接着層、 W…ウェーハ、 L…レーザー光。
【要約】
【課題】優れた厚さ測定精度を示し、かつ金属不純物、キズ及びパーティクルの不安を解消できる両面研磨装置を提供すること。
【解決手段】上定盤及び下定盤を有するウェーハの両面研磨装置であって、前記上定盤には回転中心と周縁との間に複数の定盤貫通孔が設けられており、前記上定盤の前記下定盤に対向する研磨面には研磨布が設けられており、前記研磨布には、前記複数の定盤貫通孔に対応する位置に、前記定盤貫通孔の径以上の大きさの径を有する穴が設けられており、前記上定盤の前記定盤貫通孔の各々には、上面に窓材が設けられ且つプラグ貫通孔を有する樹脂製の中空プラグが挿入されており、前記プラグ貫通孔を通して、前記ウェーハの厚さを研磨中にリアルタイムで光学的に測定可能なウェーハ厚さ測定機構を、前記上定盤の上部に更に備えたものであることを特徴とする両面研磨装置。
【選択図】
図1