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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/06 20060101AFI20221101BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08L61/06
C08L29/04 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022505567
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037858
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020192188
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕司
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/072201(WO,A1)
【文献】特開2014-024881(JP,A)
【文献】国際公開第97/001604(WO,A1)
【文献】特表平07-503272(JP,A)
【文献】特開昭53-102359(JP,A)
【文献】特表2004-515631(JP,A)
【文献】特開2020-172582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性レゾール型フェノール樹脂と、
ポリビニルアルコールと、
塩基性触媒と、
水と、を含む樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂および前記ポリビニルアルコールが前記水に溶解した水溶液の形態であり、
前記ポリビニルアルコールは、当該樹脂組成物の固形分全体に対して、0質量%を超え、30質量%以下の量であ
前記水溶性レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、250以上3000以下であり、
当該樹脂組成物は、前記塩基性触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを、前記フェノール類に対する前記アルデヒド類の配合モル比が0.8以上3.0以下で、反応させて得られる前記水溶性レゾール型フェノール樹脂を含む反応混合物に、前記水および前記ポリビニルアルコールを混合して得られる、樹脂組成物。
【請求項2】
前記水溶性レゾール型フェノール樹脂のメチロールフェノール含有率が、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂に対し、20質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記水溶性レゾール型フェノール樹脂のメチロールフェノール含有率が、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂に対し、3.0質量%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールのけん化度が、85%以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
固形分量が、10質量%以上80質量%以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムコア含浸用または湿式摩擦材の接着剤用等として用いられるフェノール樹脂は、その含浸性及び塗付表面の性状の良さからアルコールなどを使用した溶剤系フェノール樹脂として用いられてきた(たとえば、特許文献1)。昨今、安全上の観点から引火性溶剤を減らし、また、環境汚染防止上の観点から揮発性溶剤を減すことが要求されているため、これら溶剤型の組成は次第に分散型または水性エマルション型の製品に代わりつつあり、また水溶性フェノール樹脂の検討が活発になされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-24881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水溶性フェノール樹脂は、耐熱性や取扱い性に劣るなど、その使用において問題となる場合があった。また、エマルジョン化フェノール樹脂の検討及び実用化が一部行われているが、エマルジョン化フェノール樹脂を使用した場合、表面性状が悪く、エマルジョン安定剤及び懸濁剤などが、フェノール樹脂の性能を低下させるという欠点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、水溶液として提供可能であり、よって有機溶媒の揮発の問題が生じず、さらに耐熱性が改善されたフェノール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明によれば、
水溶性レゾール型フェノール樹脂と、
ポリビニルアルコールと、
塩基性触媒と、
水と、を含む樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂および前記ポリビニルアルコールが前記水に溶解した水溶液の形態であり、
前記ポリビニルアルコールは、当該樹脂組成物の固形分全体に対して、0質量%を超え、30質量%以下の量であ
前記水溶性レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、250以上3000以下であり、
当該樹脂組成物は、前記塩基性触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを、前記フェノール類に対する前記アルデヒド類の配合モル比が0.8以上3.0以下で、反応させて得られる前記水溶性レゾール型フェノール樹脂を含む反応混合物に、前記水および前記ポリビニルアルコールを混合して得られる、樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機溶媒を含まないため環境負荷および人体への負荷が低減されるとともに、高い耐熱性を有するフェノール樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」を意味する。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0009】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、水溶性レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルアルコールと、水とを含む。本実施形態の樹脂組成物は、これらの水溶性レゾール型フェノール樹脂とポリビニルアルコールとが水に溶解した、水溶液の形態で提供される。本実施形態の樹脂組成物において、ポリビニルアルコールの含有量は、樹脂組成物の固形分全体に対して、0質量%を超え、30質量%以下の量である。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、水溶性レゾール型フェノール樹脂とポリビニルアルコールとが水に溶解した水溶液の形態をとる。本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤を含まないため、有機溶剤の揮発が生じず、よって作業時や使用時において環境に対する負荷および人体への負荷がほとんどまたはまったくない。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物は、水溶性レゾール型フェノール樹脂とポリビニルアルコールとを含み、ポリビニルアルコールの量は、樹脂組成物の固形分全体に対して0質量%を超え30質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは、2質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは、4質量%以上15質量%以下である。本実施形態の樹脂組成物は、上記範囲の量のポリビニルアルコールを含むことにより、水溶性レゾール型フェノール樹脂が有する耐熱性を維持しつつ、使用に適切な柔軟性を有する。よって、摩擦材用の接着剤または基材含浸用のバインダー樹脂材として使用する場合の取り扱い性に優れる。さらにポリビニルアルコールを含むことにより、樹脂組成物は高い接着強度を有し、よって例えば摩擦材用の接着剤として好適に使用することができる。またポリビニルアルコールを含むことにより、樹脂組成物は可撓性を備え、よって例えば基材含浸用のバインダー樹脂材として使用した場合には、柔軟性を有しかつ機械的強度に優れた成形品を得ることができる。
【0012】
以下に本実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
(水溶性レゾール型フェノール樹脂)
本実施形態の接着剤組成物に用いられる水溶性レゾール型フェノール樹脂は、塩基性触媒下、フェノール類と、アルデヒド類とを、反応溶媒中で、以下で説明する所定の条件で反応させて得られる樹脂である。
【0014】
本実施形態で用いられる水溶性レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用されるフェノール類としては、フェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のブチルフェノール類;p-tert-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール類;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類;p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体:及び、1-ナフトール、2-ナフトール等の1価のフェノール類;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0015】
本実施形態で用いられる水溶性レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。また、これらアルデヒド類の前駆体あるいはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することも可能である。中でも、製造コストの観点から、ホルムアルデヒド水溶液を使用することが好ましい。
【0016】
本実施形態で用いられる水溶性レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用される塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;石灰等の酸化物;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;リン酸ナトリウム等のリン酸塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアミン類等が挙げられる。
【0017】
本実施形態で用いられる水溶性レゾール型フェノール樹脂の合成のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としてはとしては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0018】
レゾール型フェノール樹脂の形態としては、固形、水溶液、溶剤溶液、および水分散液が挙げられる。水溶性レゾール型フェノール樹脂の合成のための反応溶媒として有機溶媒が使用された場合、反応生成物を含む反応溶液から、抽出、乾燥等の公知の手段により有機溶媒を除去して使用される。
【0019】
本実施形態で用いられるレゾール型フェノール樹脂は、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とを、配合モル比(F/P)が0.8以上、好ましくは、0.8以上3.0以下、より好ましくは、1.0以上2.8以下、さらにより好ましくは、1.2以上2.5以下となるような比率で、反応釜に仕込み、さらに重合化触媒としての上述の塩基性触媒を添加して、適当な時間(例えば、3~6時間)還流を行うことにより得られる。フェノール類(P)とアルデヒド類(F)との配合モル比(F/P)が、0.8未満である場合には、生成する水溶性レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が小さく、所望の耐熱性を有さない場合がある。またフェノール類(P)とアルデヒド類(F)との配合モル比(F/P)が、3.0を超える場合は、反応中に樹脂のゲル化が進行し易くなるため、反応効率が低下し、また水不溶性の高分子量のレゾール型フェノール樹脂が生成するため好ましくない。反応温度は、例えば、40℃~120℃であり、好ましくは60℃~100℃である。これにより、ゲル化を抑制して、目的の分子量の水溶性レゾール型フェノール樹脂を得ることができる。水溶性レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは、250~3000であり、より好ましくは、300~2000である。上記範囲の分子量を有するレゾール型フェノール樹脂は、水溶解性を有するとともに、高い耐熱性を有する。
【0020】
レゾール型フェノール樹脂は、この中に含まれるメチロールフェノールの含有量が、例えば、0質量%を超え、20質量%以下である。本実施形態の接着剤組成物は、メチロールフェノールの含有量が上記範囲であるレゾール型フェノール樹脂を含むことにより、適度な粘着性を維持しつつ、耐熱性がさらに改善される。
【0021】
ここでレゾール型フェノール樹脂に含まれるメチロールフェノールは、フェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒下で反応させるレゾール型フェノール樹脂の合成において副生成物として生成する、フェノール類のメチロール化1核体を指す。このフェノール類のメチロール化1核体は、モノメチロールフェノール類;ジメチロールフェノール類;トリメチロールフェノール類、およびこれらの混合物を含む。
【0022】
レゾール型フェノール樹脂中に存在するメチロールフェノールは、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で反応させてノボラック型フェノール樹脂を合成した後、このノボラック型フェノール樹脂とアルデヒド類とを塩基性触媒下で反応させることにより、低減または除去することができる。
【0023】
(ポリビニルアルコール)
本実施形態の接着剤組成物に用いられるポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニルアルコール(カチオン変性PVA)、アニオン変性ポリビニルアルコール(アニオン変性PVA)等が挙げられる。ポリビニルアルコール(PVA)は変性していないホモポリマータイプである。PVAの市販品としては、日本合成化学株式会社製のゴーセノールシリーズ(GL-03、EG-05、EG-30、EG-40等)、株式会社クラレ製のポバール(PVA)シリーズ(403、405、420、420H、424H、203、205、210、217、220、224、235、217E、220E、224E等)等が挙げられる。
【0024】
ポリビニルアルコール(PVA)のけん化度は、好ましくは、85%以上であり、より好ましくは、90%以上であり、さらにより好ましくは、95%以上である。けん化度が上記下限値以上であれば、得られる樹脂組成物の取り扱い性を向上することができる。
【0025】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、カップリング剤、酸化防止剤、着色剤等の他の添加剤を含んでもよい。
【0026】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、上記成分を、公知の手段で水と混合し、水に溶解させて水溶液とすることにより製造することができる。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物は、固形分が10質量%以上80質量%以下の水溶液として提供される。本実施形態の樹脂組成物の固形分量は、溶媒である水の量を調整することにより、樹脂組成物の用途に応じて調整することができる。たとえば本実施形態の樹脂組成物を、摩擦材用の接着剤として使用する場合、固形分は50~80質量%とすることが好ましい。これにより、得られる樹脂組成物の粘度が、摩擦基材に塗布するのに適切となり、摩擦材として使用するのに十分な接合強度を得ることができる。本実施形態の樹脂組成物を、基材含浸用として使用する場合、固形分は10~70質量%とすることが好ましい。これにより、取扱い性に優れ、優れた含浸性を有する樹脂組成物となり、よって高強度/高品質の成形品を優れた製造効率で作製することができる。
【0028】
[樹脂組成物の用途]
本実施形態の樹脂組成物は、水溶液またはワニスの形態で、摩擦材用の接着剤として使用することができる。または、本実施形態の樹脂組成物は、ハニカムコアのような無機繊維基材に含浸して、無機繊維複合体を製造するために使用される。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物は、水溶媒を乾燥除去した固形物の形態で提供または保存されてもよい。固形物の形態としては、例えば、ブロック状、平板状、シート状、フィルム状等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物が、固形物の形態で提供される場合、レゾール型フェノール樹脂中のメチロールフェノールの含有量は、例えば、3.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは、1.0質量%以下である。レゾール型フェノール樹脂の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上である。レゾール型フェノール樹脂中のメチロールフェノールの含有量が上記範囲であることにより、レゾール型フェノール樹脂の粘着性が低減され、よってこれを含む樹脂組成物からなる固形物の表面タックが抑制される。結果として、出荷前または使用前に複数の固形物状の樹脂組成物を重ねて保管した場合であっても、樹脂固形物同士が貼り付いて離しにくくなるといった不都合が防止される。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物を固形物の形態で提供する場合、液状の樹脂組成物を、所望の形状に成形することができる。例えば、本実施形態の樹脂組成物は、5μm以上200μm以下の厚み、幅10mm以上200cm以下の寸法を有するシート状物に成形することができる。本実施形態の樹脂組成物は、シート状物等の固形物の形態に成形されることにより、保存や搬送が容易となる。
【0032】
樹脂組成物を固形物の形態に成形する工程は、シート状の基材に、液状の樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥して水を除去して、樹脂層を形成することにより行われる。加熱乾燥の条件は、溶媒である水が揮発する条件であればよく、例えば、180℃~150℃の温度で、1分~90分間の時間で行われる。
【0033】
上述のようにして得られた樹脂層は、さらに加熱処理を行うことにより、半硬化(Bステージ)状態としてもよい。半硬化状態とするための加熱処理としては、100~200℃の温度で、1分~60分の時間の条件を用いることができる。
【0034】
シート状基材としては、上述の加熱乾燥条件に耐え得るものであれば特に制限されず、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリーエーテルケトン系フィルム等が使用される。これらのシート状基材は、その表面が離型剤で処理されていてもよい。基材シートは、樹脂層が形成された後に除去してもよい。また、このようにして得られた樹脂シートは、基材シートと対向した面とは反対の面に、保護シートが設けられてもよい。保護シートとしては、基材シートと同様のものを用いることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 水溶性レゾール型フェノール樹脂と、
ポリビニルアルコールと、
水と、を含む樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂および前記ポリビニルアルコールが前記水に溶解した水溶液の形態であり、
前記ポリビニルアルコールは、当該樹脂組成物の固形分全体に対して、0質量%を超え、30質量%以下の量である、樹脂組成物。
2. 前記水溶性レゾール型フェノール樹脂のメチロールフェノール含有率が、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂に対し、20質量%以下である、1.に記載の樹脂組成物。
3. 前記水溶性レゾール型フェノール樹脂のメチロールフェノール含有率が、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂に対し、3.0質量%以下である、1.または2.に記載の樹脂組成物。
4. 前記ポリビニルアルコールのけん化度が、85%以上である、1.乃至3.のいずれかに記載の樹脂組成物。
5. 固形分量が、10質量%以上80質量%以下である、1.乃至4.のいずれかに記載の樹脂組成物。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000重量部、37%ホルマリン水溶液1638重量部(F/Pモル比=1.9)、水酸化ナトリウム30重量部を添加し、90℃で70分間反応させた。GPC測定により算出した、得られた反応混合物中のメチロール化フェノールの含有量は、15.2質量%であった。この反応混合物に水780重量部を加えた後、80℃で、けん化度99%のポリビニルアルコール180重量部を加えて溶解させ、不揮発分45%、固形分中のポリビニルアルコール量12%の樹脂組成物を得た。
【0038】
(実施例2)
ポリビニルアルコールの添加量を85部、水の添加量を680部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、不揮発分45%、固形分中のポリビニルアルコール量6%の樹脂組成物を得た。反応混合物中のメチロール化フェノールの含有量は、13.9質量%であった。
【0039】
(実施例3)
実施例1におけるフェノール1000部を、遊離フェノール1%未満を含むノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製PR-53195)に、37%ホルマリン水溶液を300部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、メチロール化フェノールの含有量が0.3%のレゾール型フェノール樹脂を得た。この反応混合物を用いて実施例1と同様にポリビニルアルコールを溶解させることで、不揮発分40%、固形分中のポリビニルアルコール量12%の樹脂組成物を得た。
【0040】
(比較例1)
ポリビニルブチラールを添加せずに、水の添加量を500部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、不揮発分45%、固形分中のポリビニルアルコール量0%の樹脂組成物を得た。
【0041】
<樹脂組成物の評価>
上記で得られた樹脂組成物について、以下の項目の物性について評価した。
(接着強度)
硬化条件は180℃で30分間として、JIS K 6850に従い、被着材を鉄板として接着せん断強度の測定を行った。結果を以下の表1に示す。
(耐熱強度)
接着せん断試験のテストピースを作製後、250℃で30分間熱処理を行った後、JISK 6850に従い、被着材を鉄板として接着せん断強度の測定を行った。結果を以下の表1に示す。
【0042】
(タック性)
基材としての鉄板の表面に、乾燥時の膜厚が約10μmとなるように樹脂組成物を塗布し、80℃で30分間加熱することによって、基材の表面に樹脂層を形成した。この樹脂層のタック性を、以下の基準で評価した。
あり:樹脂層の上に鉄板を重ねて1時間静置後、上の鉄板を持ち上げると下の鉄板も付着して持ち上がる。
なし:樹脂層の上に鉄板を重ねて1時間静置後、上の鉄板を持ち上げると下の鉄板が付着せずに、上の鉄板のみ持ち上がる。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例の樹脂組成物は、耐熱性に優れ、高い耐熱強度を有していた。実施例3の樹脂組成物からなるシートは、表面タック性がなく、保管時の取扱い性に優れていた。
【0045】
この出願は、2020年11月19日に出願された日本出願特願2020-192188号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【要約】
水溶性レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルアルコールと、水と、を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物は、前記水溶性レゾール型フェノール樹脂および前記ポリビニルアルコールが前記水に溶解した水溶液の形態であり、前記ポリビニルアルコールは、当該樹脂組成物の固形分全体に対して、0質量%を超え、30質量%以下の量である、樹脂組成物。