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特許7168151ナチュラルキラー細胞の大量生産方法及びその方法により得られたナチュラルキラー細胞の抗癌剤としての用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞の大量生産方法及びその方法により得られたナチュラルキラー細胞の抗癌剤としての用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20221101BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221101BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17 A
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/08
A61K9/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019178623
(22)【出願日】2019-09-30
(62)【分割の表示】P 2017536867の分割
【原出願日】2016-01-15
(65)【公開番号】P2020022467
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-30
(31)【優先権主張番号】PCT/KR2015/000854
(32)【優先日】2015-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505448855
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 イン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、 ソク ラン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 スーヨン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532469(JP,A)
【文献】Choi, I., et al.,Donor-Derived Natural Killer Cells Infused after Human Leukocyte, Antigen-Haploidentical Hematopoiet,Biology of blood and marrow transplantation,2014年,Vol.20, No.5,pp.696-704
【文献】Journal of Immunological Methods,2003年,vol.280,p.135-138
【文献】許 南浩 編,細胞培養なるほどQ&A,第9刷,2013年05月15日,p.68-69
【文献】医学のあゆみ,1985年04月13日,第133巻第2号,p.112-113
【文献】黒木登志夫 監修,改訂 培養細胞実験ハンドブック,第2版第4刷,株式会社羊土社,2014年02月20日,p.84-85
【文献】BioLife Solutions.com.,CryoStor(R) CS2、CS5 and CS10 FREEZE MEDIA,2021年03月17日,インターネット、 <URL:https://www.biolifesolutions.com/wp-content/uploads/2014/11/6012_06-CryoStor-Product-Information-Sheet.pdf>
【文献】Rham, C., et al.,The proinflammatory cytokines IL-2, IL-15 and IL-21 modulate the repertoire of mature human natural,Arthritis Research & Therapy,2007年,Vol.9, No.6,R125, pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)CD3陽性のT細胞と赤血球とを交差結合させた後、遠心分離に際して、密度勾配を用いてCD3陰性細胞を分離することにより、単核球から前記CD3陽性のT細胞を除去して前記CD3陰性細胞を収得するステップ;
2)ステップ1)で収得した前記CD3陰性細胞を、IL-15及びIL-21からなるサイトカインと混合処理した後、10乃至24日間培養してNK細胞へ分化させるステップ;並びに
3)ステップ2)で培養された前記NK細胞を、無血清(Serum-Free)、無タンパク質(Protein-Free)、及び無動物性要素(Animal Component-Free)の条件下で、10%のジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)及びさらに凍結保護剤を含む冷凍保存培地において冷凍して、2ヶ月以内の期間凍結保存するステップであって、前記冷凍保存培地はCryostor(登録商標)CS10であり、前記冷凍は-70℃を経て-200℃へと段階的に温度を下げることにより行われるステップ
を含む、冷凍保存NK細胞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナチュラルキラー細胞(Natural Killer Cell、以下、「NK細胞」という)の大量生産方法及びその方法により得られたNK細胞の抗癌剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療のために手術、放射線治療、化学療法などの様々な治療法が発展してきたが、腫瘍の種類によっては頻繁な再発が深刻な問題となっている。これにより、患者の免疫機能を用いた細胞治療の可能性が提起された。
【0003】
腫瘍を除去する免疫反応は、様々な機能を持つ免疫細胞の複雑な相互作用を介して起こる。腫瘍細胞を直接削除する免疫細胞としては、NK細胞や細胞毒性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte、CTL)が挙げられ、これらのエフェクター細胞(effector cell)に抗原を提示する抗原提示細胞としては、樹状細胞(dendritic cell、DC)やB細胞が挙げられ、その他に、各種サイトカイン(cytokine)を分泌するヘルパーT細胞(helper T cell)、調節性T細胞(regulatory T cell)などがともに作用する。
【0004】
前記免疫システムを構成する細胞のうち、NK細胞は、リンパ球の一種であり、人体内骨髄、脾臓、末梢リンパ節及び末梢血に分布し、末梢血の場合、リンパ球の約10%がNK細胞であることが知られている(Ann Rev Immunol.,24:257-286,2006)。NK細胞は、CD56及びCD16に対して陽性であるが、CD3に対して陰性である。NK細胞は、T細胞とは異なり、前に露出した刺激や主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に制限なく腫瘍細胞またはウイルスに感染した細胞を殺害し、細胞クローンによる受容体の再配列も示されていない(Trends Immunol.,22:633-640,2001)。NK細胞が細胞を殺害する過程は、パーフォリン(Perforin)及びグランザイム(Granzyme)を有する細胞質性顆粒の排出とFasリガンド(FasL)及びトレイル(TRAIL)を含む過程と関連している。NK細胞は、様々なサイトカイン、特にIFN-γ、INF-α、GM-CSF及びIL-10を分泌し、細胞表面に複数の受容体を発現し、これらの受容体は、細胞吸着、細胞殺害能力の活性化、または細胞殺害能力の抑制に関与する。また、NK細胞は、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR:Killer immunoglobulin-like receptor )によりMHCクラスI分子を認識するが、この場合、大多数のKIRは細胞殺害抑制受容体であり、このような抑制受容体によりMHCクラスI分子が認識されなければ、細胞の殺害が行われる。
【0005】
このようなNK細胞の殺害能力は、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK:lymphokine activated killer cell)及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL:tumor infiltration lymphocytes)と共に、固形癌治療に用いられるか、あるいは供与者リンパ球注入(donor lymphocyte infusion)を介した免疫治療法(Tilden.AB et al, J. Immunol.,136:3910-3915,1986;Bordignon C.et al.,Hematologia,84:1110-1149,1999)を行うことにより、骨髄移植時や臓器移植時に発生する拒絶反応を防止するための新たな細胞治療法に応用されている。また、NK細胞の分化及び活性における欠陥は、乳癌(Konjevic G.et al.,Breast Cancer Res.Treat.,66:255-263,2001)、黒色腫癌(Ryuke Y.et al.,Melanoma Res.,13:349-356,2003)、肺癌(Villegas FR.,et al., Lung Cancer,35:23-28,2002)など多様な癌疾患と関連していると報告されていて、そのような疾患を治療するためにNK細胞治療法が注目されている。
【0006】
しかし、正常な状態で体内に存在する大部分のNK細胞は、不活性化状態(Inactivated state)で存在する。しかしながら、実際にNK細胞を治療用途に用いるためには、活性化したNK細胞が必要であるため、正常血液からまたは不活性化した患者血液からNK細胞を活性化させる研究が活発に行われている。
【0007】
体外でNK細胞を活性化させることで達成される、NK細胞の高い細胞毒性(Cytotoxicity)によるNK細胞の免疫細胞治療の可能性が確認されている。体外で活性化されたNK細胞を、様々な種類の癌、特に白血病などの血液癌を対象として、同種骨髄移植後に投与することで、その治療効果が確認されたという報告(Blood Cells Molecules&Disease,33:261-266,2004)はあるが、血液癌でなく固形癌に対しては、NK細胞に対して臨床的に確実な治療効果が未だに立証されていない。具体的に、NK細胞を腫瘍が生じる前から投与することで、腫瘍の生着を抑えることができるという報告があるが(Cancer Immunol.Immunother.,56(11):1733-1742,2007)、適した治療モデルとはいえず、腹腔内にNK細胞を投与することで乳癌細胞の成長を阻害した動物実験結果もあるが、NK細胞による効果であるかが不明である(Breast Cancer Res.Treat.,104(3):267-275,2007)。
【0008】
また、NK細胞を抗癌免疫細胞治療法に効果的に利用するためには、多数のNK細胞の確保が必要である。しかし、NK細胞は、血液中のリンパ球の10~15%を占めており、癌患者においては、多くの場合、NK細胞の数、分化、及び機能が低下しているため、事実上、十分な細胞数の確保が難しいのが現状である。したがって、NK細胞の増殖または分化を通じて多量のNK細胞を確保することが切実に求められている。
【0009】
NK細胞は、骨髄の造血幹細胞(Hematopoietic Stem Cell、HSC)から由来されると知られている。試験管内 (in vitro)では、臍帯血から造血幹細胞を分離し、その分離された細胞を適切なサイトカインを処理して培養することにより、NK細胞に分化させる方法が報告されている(Galy et al.,Immunity 3:459-473,1995;Mrozek E,et al.,Blood87:2632-2640,1996; Sivori, S.et al.,Eur J Immunol.33:3439-3447,2003;B.Grzywacz,et al.,Blood108:3824-3833,2006) 。すなわち、CD34HSCにFlt-3L、IL-7、SCF及びIL-15を添加して5週間培養後、CD3CD56のNK細胞に分化させることができる。しかし、このような分化方法は、治療に十分な量の細胞を得ることが難しく、分化させるのに多くの時間及びコストがかかるなど、実際臨床に適用するには困難が伴う。サイトカイン(Cytokine)受容体のγの発現を欠くマウスからB細胞とT細胞は発見できるが、NK細胞は発見できないという点で、γを有する受容体がNK分化に重要な役割を果たすと知られている(Singer,B et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA92,377-381,1995)。受容体のγ形状は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21の受容体であり、このうちIL-2は、成熟したNK細胞の増殖と活性化を増進させる機能を有していることが報告されている(Shibuya,A.et al.,Blood85,3538-3546,1995)。IL-2が欠乏した人間とマウスでは、NK細胞の数が大幅に減少するという報告があるが(DiSanto,J.P.et al., J. Exp.Med.171,1697-1704,1990)、一方では、IL-2及びIL-2Ra欠乏は、間接的にNK細胞の数と活性化に影響を与えるという研究結果もある。さらに、IL-2R(IL-2 receptor)鎖はIL-15の受容体を形成するのに関与すると知られている。
【0010】
IL-15は、NK細胞の分化に関与する。これは、IL-15の生成に必要とされる転写因子であるインターフェロン-調節因子1(interferon-regulating factor-1,IRF-1)が欠乏したマウスでは、NK細胞が欠乏しており(Kouetsu et al.,Nature391,700-703,1998)、IL-15またはIL-15Raが欠乏したマウスでは、NK細胞が発見されていないということから知られていた。したがって、IL-15は、NK細胞から発現されるIL-15受容体を介してNK細胞の成長と分化を直接増進させるということが報告されている(MrozekE et al.,Blood87、2632-2640,1996)。
【0011】
IL-21は、活性化されたCD4T細胞によって分泌されるサイトカインであり(Nature,5:688-697,2005)、IL-21の受容体(IL-21R)は、樹状細胞、NK細胞、T細胞及びB細胞などのリンパ球で発現されている(Rayna TAKAKI,et al.,J.Immunol 175:2167- 2173,2005)。IL-21は、構造的にIL-2及びIL-15と非常に類似しており、IL-21Rは、IL-2R、IL-15、IL-7RとIL-4Rなどの鎖を共有している(Asao et al., J.Immunol,167:1-5,2001)。IL-21は、骨髄からのNK細胞前駆体の成熟を誘導するものと報告され(Parrish-Novak,et al., Nature, 408:57-63,2000)、特にNK細胞のサイトカイン生成能及び細胞死滅能などのエフェクター機能(effector functions)を増加させるものと報告されており(M.Strengell,et al., J.Immunol, 170:5464-5469,2003; J.Brady,et al., J.Immunol,172:2048-2058,2004)、CD8T細胞のエフェクター機能も増加させることにより、自然、獲得免疫系の抗癌反応を促進させるものと報告されている(Rayna Takaki,et al.,J.Immunol 175:2167-2173,2005; A.Moroz,et al. ,J.Immunol,173:900-909,2004)。また、IL-21は、人間の末梢血から分離したNK細胞を活性化し(Parrish-Novak,et al.,Nature,408:57,2000)、臍帯血から分離した造血幹細胞から成熟したNK細胞を誘導するのに重要な役割を果たすものと報告されている(J.Brady,et al.,J.Immunol,172:2048,2004)。
【0012】
一方、上記のようなNK細胞の癌治療剤としての可能性にもかかわらず、体内に存在するNK細胞の数が少ないため、それを癌治療薬として使用するためには、体内で十分な効果を維持することができるほどにそれを大量に生産する技術が不可欠である。しかし、NK細胞は試験管内での大量増殖及び培養が正常に行われないという問題があり、このため、実際有用なレベルまでNK細胞を増幅及び培養する技術の開発が求められており、そのために多くの研究が進められているが、まだ臨床に適用可能なレベルには達していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明者らは、より効率的かつ経済的にNK細胞を大量生産する方法を開発している間、単核球からCD3陽性のT細胞を除去し、CD3陰性細胞を収得した後、前記CD3陰性細胞にIL-15及びIL-21などのサイトカインを混合処理した後に培養したとき、従来のNK細胞の製造方法よりも短時間で高純度のNK細胞を大量生産することができ、前記方法により製造された新鮮NK細胞が、大腸癌、肺癌、肝臓癌及び膵臓癌細胞株を異種移植したマウスモデルで、癌細胞の成長を抑制し、癌細胞の重量を減らし、白血病などの血液癌内においてもその治療効果を示すことを確認することにより、本発明の大量生産方法により生産されたNK細胞が、癌の予防及び治療用薬学的組成物として使用することができるということを確認した。また、前記方法により生産されたNK細胞を用いて実際の癌患者を治療するためのNK細胞の投与量及び投与方法を明らかにした。
【0014】
また、本発明者らは、新鮮NK細胞を冷蔵保存または冷凍保存する条件によって、冷蔵保存NK細胞及び冷凍保存NK細胞が、新鮮NK細胞と同等のレベルの抗癌効果を示すことを明らかにし、冷蔵保存NK細胞を単独で使用する場合、冷凍保存NK細胞を単独で使用する場合、新鮮NK細胞と混合して使用する場合におけるそれぞれの投与量及び投与方法を明らかにした。
【0015】
また、本発明者らは、CD3陰性細胞を冷凍保存する条件下によって、冷凍保存されたCD3陰性細胞を解凍させることで新鮮NK細胞を製造することができるということを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
1)単核球からCD3陽性のT細胞を除去してCD3陰性細胞を収得するステップと;
2)ステップ1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養するステップと;を含む、新鮮(fresh)NK細胞の製造方法であって、
前記ステップ1)は、CD3陽性のT細胞と赤血球を交差結合させた後、遠心分離に際して、密度勾配を用いてCD3陰性細胞を分離することにより行われる方法を提供する。
【0017】
本発明において、前記ステップ1)のCD3陽性のT細胞と赤血球を交差結合させた後、遠心分離に際して、密度勾配を用いて行われるCD3陰性細胞の分離は、CD3陰性細胞を用いる抗体を使用して行うことができ、たとえば、STEMCELL Technologies社が製造、販売しているRosetteSepTM Human NK Cell Enrichment Cocktailという製品を用いて行うことができる。前記製品は、CD3、CD4、CD19、CD36、CD66b、CD123、及びグリコフォリンA(glycophorin A)を認識する四量体抗体(tetrameric antibody)のカクテル(cocktail)である。CD3陽性細胞、CD4陽性細胞、CD19陽性細胞、CD36陽性細胞、CD66b陽性細胞、CD123陽性細胞は、グリコフォリンAを発現する赤血球と共に四量体抗体に結合して交差結合を形成する。その後、遠心分離を行うと、前記細胞は、密度勾配によってペレット状になり、上層部においてCD3陰性のNK細胞が高濃度で密集した培地を収得することができる。
【0018】
本発明の一具現例において、前記ステップ2)の培養は、細胞数を1×10個/mlの濃度を維持して培養してもよいが、細胞の形状及び活性に異常を示さない限り、通常の当業者が任意に調節することができる。
【0019】
本発明の一具現例において、前記ステップ2)の培養は、10乃至24日間培養してもよいが、培養された細胞がCD3CD56の特徴を示すことを確認することにより培養期間を決定することができる。
【0020】
本発明の一具現例において、前記ステップ2)の培養は、細胞数を1×10個/mlの濃度を維持して培養してもよい。
【0021】
本発明の一具現例において、前記ステップ2)の培養は、10乃至24日間の培養であってもよい。
【0022】
前記方法において、前記ステップ2)の培養は、静置培養(stationary culture)または浮遊培養(suspension culture)の方法を用いてもよい。ここで、静置培養とは、培養器に攪拌(agitating)または振盪(shaking)せずに放置した状態で培養することをいい、浮遊培養とは、通気(aeration)や攪拌などにより細胞が反応器の下部または側面に付着されずに懸濁された状態で培養することをいう。また、静置培養用の反応器と浮遊培養用の反応器として、同一のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。例えば、静置培養用の反応器及び浮遊培養用の反応器として同一のものを用いた場合では、同一の反応器で静置培養が完了した後、サイトカインなどの必要な栄養成分を含む培地をさらに供給して浮遊培養方法で培養することが可能であり、それとも異なるものを用いた場合では、静置培養が完了した後、培養物を浮遊培養用の反応器に移して浮遊培養してもよい。
【0023】
本発明において、前記新鮮NK細胞はCD3CD56であってもよい。
【0024】
本発明において、前記NK細胞としては、臍帯血、骨髄または末梢血単核球から由来したものが望ましいが、CD3陰性細胞であれば、いずれの種類の細胞も前駆体として使用することができる。
【0025】
本発明では、前記方法により製造された新鮮NK細胞を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物を製造する。
【0026】
本発明において、前記薬学的組成物は、「細胞治療剤(cellular therapeutic agent)」を意味する。本発明の用語「細胞治療剤(cellular therapeutic agent)」とは、個体から分離、培養及び特殊な操作により製造された細胞及び組織であって、治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品(米国FDA規定)として、細胞や組織の機能を復元させるために生きている自家、同種、又は異種細胞を体外で増殖・選別、或いは他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を行い、治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品のことをいう。
【0027】
本発明において、前記癌は、NK細胞によって治療可能な癌であれば制限はなく、例えば、肝臓癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、大腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、喉頭癌、白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌、リンパ腫からなる群から選択されたいずれか一つの癌であってもよく、好ましくは、大腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌及び白血病からなる群から選択されたいずれか一つの癌であってもよい。
【0028】
本発明の一具現例において、前記組成物は、新鮮NK細胞を1×10個以上、3×10個以上、3×10個以上、1×10個以上、3×10個以上、 6×10個以上、または1×10個以上含むことができる。
【0029】
本発明の一具現例において、前記組成物は、IL-2をさらに含むことができる。
【0030】
本発明において、前記組成物は、14乃至42日の間隔、好ましくは14日乃至35日の間隔、より好ましくは14日乃至30日の間隔で投与されてもよい。しかし、投与間隔は、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の一具現例において、前記組成物は、週1回で4週間投与されるか、週2回で2週間投与されてもよい。
【0032】
本発明の一具現例において、前記組成物は、新鮮NK細胞を3×10個含み、週1回で4週間投与されてもよい。
【0033】
本発明の他の具現例において、前記組成物は、新鮮NK細胞を3×10個含み、週2回で2週間投与されてもよい。
【0034】
本発明のまた他の具現例において、前記組成物は、新鮮NK細胞を6×10個含み、週1回で2週間投与されてもよい。
【0035】
本発明は、
1)単核球からCD3陽性のT細胞を除去してCD3陰性細胞を収得するステップと;
2)ステップ1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養するステップと;
3)前記CD3陰性細胞を15時間以下の間、4℃で保存するステップと;を含む、冷蔵保存NK細胞の製造方法であって、
前記ステップ1)は、CD3陽性のT細胞と赤血球を交差結合させた後、遠心分離に際して、密度勾配を用いてCD3陰性細胞を分離することにより行われる方法を提供する。
【0036】
本発明において、前記ステップ3)の保存時間は15時間以下、例えば12時間以下、例えば10時間以下であってもよい。しかし、保存時間は、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明において、前記冷蔵保存NK細胞はCD3CD56であってもよい。
【0038】
本発明は、前記方法により製造された冷蔵保存NK細胞を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物を製造する。
【0039】
本発明において、前記癌は、大腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、及び白血病からなる群から選択されたいずれか1つの癌であってもよい。しかし、癌の種類は、これらに限定されるものではなく、NK細胞によって予防、改善または治療できる癌であればいずれも含まれる。
【0040】
本発明の一具現例において、前記組成物は、冷蔵保存NK細胞を1×10個以上、3×10個以上、3×10個以上、1×10個以上、3×10個以上、6×10個以上、または1×10個以上含むことができる。
【0041】
本発明の一具現例において、前記組成物は、IL-2をさらに含むことができる。
【0042】
本発明において、前記組成物は、14乃至42日の間隔、好ましくは14日乃至35日の間隔、より好ましくは14日乃至30日の間隔で投与されてもよい。しかし、投与間隔は、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の一具現例において、前記組成物は、週1回で4週間投与されるか、週2回で2週間投与されてもよい。
【0044】
本発明の一具現例において、前記組成物は、冷蔵保存NK細胞を3×10個含み、週1回で4週間投与されてもよい。
【0045】
本発明の他の具現例において、前記組成物は、冷蔵保存NK細胞を3×10個含み、週2回で2週間投与されてもよい。
【0046】
本発明のまた他の具現例において、前記組成物は、冷蔵保存NK細胞を6×10個含み、週1回で2週間投与されてもよい。
【0047】
本発明は、
1)単核球からCD3陽性のT細胞を除去してCD3陰性細胞を収得するステップと;
2)ステップ1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養するステップと;
3)ステップ2)の培養されたCD3陰性細胞を、無血清(Serum-Free)、無タンパク質(Protein-Free)、無動物性要素(Animal Component-Free)の条件下で10%のジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)が含まれている冷凍保存培地において2ヶ月以内に冷凍するステップであって、前記冷凍は-70℃から-200℃に段階的に温度を下げることにより行われるステップと;を含む、冷凍保存NK細胞の製造方法を提供する。
【0048】
本発明の用語「冷凍」とは、本発明のNK細胞を冷凍させる行為を意味する。冷凍に用いられる冷凍媒体としては様々なものがある。例えば、イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)が含まれている冷凍保存ボックスを用いて行うことができる。しかし、その他の手段を用いて冷凍することも可能である。また、冷凍に際して細胞の損傷を防止するために、凍結保護剤を含む溶液を用いることができる。「凍結保護剤」とは、生物細胞を凍結状態で生きたままで保存する場合、凍害を軽減する目的で媒液に添加させる物質のことであり、前記凍結保護剤は、特に限定されるものではないが、グリセロール、砂糖、グルコースなどを使用することができる。
【0049】
本発明の一具現例において、前記冷凍期間は、2カ月以内、好ましくは6週間以内、より好ましくは1ヶ月以内であってもよい。しかし、冷凍期間はこれらに限定されるものではなく、冷凍保存NK細胞の効果を維持する範囲内で適切に調整することができる。
【0050】
本発明の一具現例において、前記ステップ3)の冷凍に際して、CD3陰性細胞の濃度は、1.5×10個/mlであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明は、
1)単核球からCD3陽性のT細胞を除去してCD3陰性細胞を収得するステップと;
2)ステップ1)のCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養するステップと;
3)ステップ2)の培養されたCD3陰性細胞を、無血清(Serum-Free)、無タンパク質(Protein-Free)、及び無動物性要素(Animal Component-Free)の条件下で10%のジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)が含まれている冷凍保存培地において2ヶ月以内に冷凍するステップであって、前記冷凍は-70℃から-200℃に段階的に温度を下げることにより行われるステップと;
4)前記冷凍保存NK細胞を37℃で急速解凍し、冷凍保存培地を洗浄して除去するステップと;を含む、解凍された冷凍保存NK細胞の製造方法を提供する。
【0052】
本発明の用語「解凍」とは、前記冷凍保存されたNK細胞を活用するために、常温に温度を上げて細胞が正常な生理活性を示すようにする行為を意味する。
【0053】
本発明において、解凍された冷凍保存NK細胞はCD3CD56であってもよい。
【0054】
本発明は、前記方法により製造された、解凍された冷凍保存NK細胞を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物を製造する。
【0055】
本発明において、前記癌は、大腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、及び白血病からなる群から選択されたいずれか一つの癌であってもよい。しかし、癌の種類は、これらに限定されるものではない。NK細胞によって予防、改善または治療することができる癌であればいずれも含まれる。
【0056】
本発明の一具現例において、前記組成物は、解凍された冷凍保存細胞を1×10個以上、3×10個以上、3×10個以上、1×10個以上、3×10個以上、6×10個以上、または1×10個以上含むことができる。
【0057】
本発明の一具現例において、前記組成物は、蒸留水または無血清培地をさらに含むことができる。
【0058】
本発明の一具現例において、前記組成物は、IL-2をさらに含むことができる。
【0059】
本発明において、前記組成物は、14乃至42日の間隔、好ましくは14日から35日の間隔、より好ましくは14日乃至30日の間隔で投与されてもよい。しかし、投与間隔は、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明の一具現例において、前記組成物は、週1回で4週間投与されるか、週2回で2週間投与されるか、週2回で4週間投与されてもよい。
【0061】
本発明の一具現例において、前記組成物は、解凍された冷凍保存NK細胞を3×10個含み、週1回で4週間投与されてもよい。
【0062】
本発明の他の具現例において、前記組成物は、解凍された冷凍保存NK細胞を3×10個含み、週2回で2週間投与されてもよい。
【0063】
本発明のまた他の実施例において、前記組成物は、解凍された冷凍保存NK細胞を6×10個含み、週1回で2週間投与されてもよい。
【0064】
また、本発明は、
1)単核球からCD3陽性のT細胞を除去してCD3陰性細胞を収得するステップと;
2)ステップ1)で得られたCD3陰性細胞を、無血清(Serum-Free)、無タンパク質(Protein-Free)、無動物性要素(Animal Component-Free)の条件下で10%のジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)が含まれている冷凍保存培地において2ヶ月以内に冷凍するステップであって、前記冷凍は-70℃から-200℃に段階的に温度を下げることにより行われるステップと;
3)ステップ2で冷凍されたCD3陰性細胞を解凍するステップと;
4)ステップ3)の解凍されたCD3陰性細胞にIL-15及びIL-21を混合処理した後、培養するステップと;を含む、冷凍されたCD3陰性細胞からNK細胞を製造する方法を提供する。
【0065】
本発明において、前記方法によって冷凍されたCD3陰性細胞から製造されたNK細胞は、新鮮NK細胞と同等の性質及び効果を有する。したがって、新鮮NK細胞と同様に、癌の予防及び治療用組成物の有効成分として使用することができる。
【0066】
本発明は、前記説明した本発明の方法により製造された新鮮NK細胞及び解凍されたNK細胞を有効成分として含む癌の予防及び治療用組成物を提供する。
【0067】
本発明の一具現例において、前記新鮮NK細胞及び前記解凍されたNK細胞は、1回の投与量にそれぞれ1×10個以上、3×10個以上、3×10個以上、1×10以上、3×10個以上、6×10個以上、または1×10個含まれることができる。
【0068】
本発明の一具現例において、前記新鮮NK細胞及び前記解凍された冷凍保存NK細胞は、それぞれ週1回で4週間投与されるか、週2回で2週間投与されるか、週2回で4週間投与されてもよい。好ましくは、前記新鮮NK細胞は、週1回で1週間投与され、前記解凍された冷凍保存NK細胞は、週2回で3週間投与されてもよい。しかし、投与方法は、適切に調整することができる。
【0069】
本発明の薬学的組成物は、有効成分に加えて、薬剤学的に適合して生理学的に許容される補助剤を使用して製造することができ、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被複剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などを使用することができる。
【0070】
本発明による組成物は、投与のために、前記記載した有効成分に加えて、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含む薬学的組成物として製剤化することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソーム及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、靜菌劑などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑油を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができ、標的器官に特異的に作用するできるように標的器官特異的抗体またはその他のリガンドを前記担体と結合させて使用することができる。さらに、当該技術分野の適正な方法、またはレミントンの文献(Remington’s Pharmaceutical Science(最近版)、Mack Publishing Company、Easton PA)に開示されている方法を用いて、各疾患に応じてまたは成分によって好適に製剤化することができている。
【0071】
本発明の薬学的組成物は、液剤、懸濁剤、分散液、乳剤、ゲル剤、注射可能な液剤及び活性化合物の徐放出型製剤などであってもよく、好ましくは、注射剤であってもよい。
【0072】
本発明の薬学的組成物を注射剤として製剤化する場合、注射剤の処方の流通による製品の安定性を確保するために注射剤として使用可能な酸水溶液またはリン酸塩などの緩衝溶液を用いてpHを調節することにより、物理的にも化学的にも非常に安定した注射剤として製造することができる。
【0073】
より具体的には、前記注射剤は、安定化剤または溶解補助剤とともに注射用水に溶解させた後、滅菌処理、特に高温減圧滅菌法または無菌ろ過法によって滅菌処理して製造することができる。前記注射用水としては、注射用蒸留水または注射用緩衝溶液、例えば、pH3.5乃至7.5の範囲のリン酸塩緩衝溶液またはリン酸水素ナトリウム(NaHPO)-クエン酸緩衝溶液を使用することができる。使用されるリン酸塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩の形態であるか、無水物または水和物の形態であってもよく、クエン酸または無水物または水和物の形態であってもよい。
【0074】
また、本発明に用いられる安定化剤は、ピロ亜硫酸ナトリウム (sodium pyrosulfite)、 重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)またはエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid)を含み、溶解補助剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)または水酸化カリウム(KOH)などの塩基、または塩酸(HCL)または酢酸(CHCOOH)などの酸を含む。
【0075】
本発明に係る注射剤は、生体吸収性、生体分解性、生体適合性によって剤形化することができる。生体吸収性とは、注射剤が体内で、分散された注射剤の分解または分解せずに、初期の適用から消えることを意味する。生体分解性とは、加水分解または酵素分解により注射剤が体内で破砕または分解され得ることを意味する。生体適合性とは、成分のすべてが体内で無毒性であることを意味する。
【0076】
本発明に係る注射剤は、通常の充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、界面活性剤などの希釈剤、または賦形剤などを使用して製造することができる。
【0077】
本発明の組成物または有効成分は、目的に応じて静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻腔内、皮下、子宮内硬膜、吸入、局所、直腸、経口、眼球内または皮内経路などを通して通常の方法で投与することができ、好ましくは、静脈内に投与することができる。本発明の組成物または有効成分は、注射またはカテーテルを用いて投与することができる。
【0078】
本発明の組成物において、有効成分の投与量は、体重60kg成人基準で1×10- 1×1050個/kg、好ましくは1×10-1×1030個/kg、より好ましくは1×10-1×1020個/kg、最も好ましくは1×10-1×10個/kgの範囲内で調節することができる。ただし、投与される最適の投与量は、当業者によって容易に決定されることができ、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他成分の含有量、剤形の種類、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時に使用される薬物を含む多様な因子によって調節されることができる。
【0079】
本発明の組成物において、有効成分は、組成物の総重量に対して0.001乃至50重量%で含有されることができる。しかし、含有量は、これらに限定されるものではない。
【0080】
本発明の組成物は、1以上の抗癌剤をさらに含むことができる。
【0081】
本発明は、新鮮NK細胞を、癌治療が必要な対象体に対して治療学的に有効な量で投与して癌を予防または治療する方法を提供する。
【0082】
本発明において、癌治療が必要な対象体としては、人間を含む哺乳類であり得る。例えば、人間、犬、猫、馬などであり得る。
【0083】
本発明は、冷蔵保存NK細胞を、癌治療が必要な対象体に対して治療学的に有効な量で投与して癌を予防または治療する方法を提供する。
【0084】
本発明は、解凍された冷凍保存NK細胞を、癌治療が必要な対象体に対して治療学的に有効な量で投与して癌を予防または治療する方法を提供する。
【0085】
本発明の用語「治療学的に有効な量」とは、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって考えられる動物またはヒトからの生物学的または医学的反応を誘導する活性成分または薬学的組成物の量を意味するものであり、これは治療される疾患または障害の症状の緩和を誘導する量を含む。本発明の有効成分に対する治療上の有効な投与量及び投与回数は、所望の効果に応じて変化するものであることは、当業者にとって自明である。
【0086】
本発明は、癌治療のための医薬を製造するための新鮮NK細胞の用途を提供する。
【0087】
本発明は、癌治療のための医薬を製造するための冷蔵保存NK細胞の用途を提供する。
【0088】
本発明は、癌治療のための医薬を製造するための解凍された冷凍保存NK細胞の用途を提供する。
【発明の効果】
【0089】
本発明の方法を用いれば、新鮮NK細胞を、従来の方法よりも短時間で高純度で得ることができ、また、新鮮NK細胞と同等の効能を有する冷蔵保存NK細胞、冷凍保存NK細胞を製造することができる。さらに、冷凍保存されたCD3陰性細胞から新鮮NK細胞と同等の効能を持つNK細胞を製造することができる。
【0090】
本発明の方法により製造された新鮮NK細胞、冷蔵保存NK細胞、及び冷凍保存NK細胞は、大腸癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌及び白血病を含む様々な癌に対して治療効果を示し、細胞治療剤として有用に使用されることができる。
【0091】
また、本発明では、本発明の新鮮NK細胞、冷蔵保存NK細胞、及び冷凍保存NK細胞を細胞治療剤の薬学的組成物として使用する場合、優れた効果を示す用法及び用量を確立した。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】培養後11日乃至21日の間に臍帯血(図1の上部)もしくは末梢血(図1の下部)から分離されたCD3陰性細胞からNK細胞への分化が誘導されたことをFACSで確認した図である。
図2a】培養10日目に新鮮NK細胞(Fresh NK細胞、10日目)を冷凍保存した後、再度解凍させた、解凍された冷凍保存NK細胞の解凍直後の生存率を示した図である。
図2b】分化度を示した図である。
図2c】NK細胞受容体を示した図である。
図2d】殺傷能を確認した図である。
図2e】冷凍後に解凍させたCD3陰性細胞を分化させて製造したNK細胞の解凍直後の細胞回収率を確認した図である。
図2f】解凍後、培養時の細胞数の増加率を確認した図である。
図2g】生存率を確認した図である。
図2h】分化度及びNK細胞受容体を確認した図である。
図3a】NK細胞(natural killer cell:ナチュラルキラー細胞)の濃度別の検出限界を測定するために、マウス体内でのNK細胞の検出を確認した図である。V.C(5%ヒト血清アルブミン(HSA)):溶媒対照群。
図3b】NK細胞の濃度別の検出限界を測定するために、マウスの腹部内の主要な臓器を摘出して、NK細胞の検出を確認した図である。V.C(5%HSA):溶媒対照群。
図3c】NK細胞の組織内分布を確認するために、マウスの腹部内の主要な臓器を摘出して、NK細胞の分布を確認した図である。V.C:溶媒対照群。
図3d】時間に応じたNK細胞のマウス体内分布を確認した図である。
図4a】NK細胞の投与による大腸癌に対する抗癌効果を確認するための投与スケジュールを示す図である。
図4b】NK細胞単独またはIL-2との併用処理時に、NK細胞数に応じた大腸癌に対する腫瘍サイズの抑制効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、及びADR:アドリアマイシン(adriamycin)処理群。
図4c】NK細胞単独またはIL-2との併用処理時に、NK細胞の数に応じた大腸癌に対する腫瘍重量の減少効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、及びADR:アドリアマイシン処理群。
図5a】NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる抗癌効果を確認するための投与スケジュールを示した図である。
図5b】NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる大腸癌に対する腫瘍サイズの抑制効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、NK-F:新鮮(fresh)NK細胞処理群、NK-W/oR-F:新鮮NK細胞(Rosettesep無し、すなわちw/o Rosettesep)処理群、NK-4℃:4℃冷蔵保存されたNK細胞処理群、NK-W/oR-4℃:4℃冷蔵保存されたNK細胞(Rosettesep無し)処理群、及びADR:アドリアマイシン処理群。
図5c】NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる大腸癌に対する腫瘍重量の減少効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、NK-F:新鮮(Fresh)NK細胞処理群、NK-W/oR、F:新鮮NK細胞(Rosettesep無し)処理群、NK-4℃に保存:4℃冷蔵保存されたNK細胞処理群、NK-W/oR、4℃保存:4℃冷蔵保存されたNK細胞(Rosettesep無し)処理群、及びADR:アドリアマイシン処理群。
図6a】NK細胞の冷凍有無による抗癌効果を確認するための投与スケジュールを示した図である。
図6b】NK細胞の冷凍有無による大腸癌に対する腫瘍サイズの抑制効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、NK細胞-生(Live)(4):新鮮NK細胞株を4回投与した投与群、NK細胞-生(Live)(1)+(3)凍結:新鮮NK細胞株を1回及び解凍された冷凍保存細胞株を3回混合投与した投与群、V.C(無血清培地):無血清培地対照群、NK細胞-凍結(4):解凍された冷凍保存NK細胞株を4回投与した投与群、NK細胞-凍結(8):解凍された冷凍保存NK細胞株を8回投与した投与群、及びADR:アドリアマイシン処理群。
図6c】NK細胞の冷凍有無による大腸癌に対する腫瘍重量の減少効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、NK生(Live)(4):新鮮NK細胞株を4回投与した投与群、NK生(Live)(1)+(3)凍結:新鮮NK細胞株を1回及び解凍された冷凍保存細胞株を3回混合投与した投与群、V.C(無血清培地):無血清培地対照群、NK凍結(4)細胞:解凍された冷凍保存NK細胞株を4回投与した投与群、NK凍結(8)細胞:解凍された冷凍保存NK細胞株を8回投与した投与群、及びADR 2mpk:アドリアマイシン処理群。
図7a】NK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた抗癌効果を確認するための投与スケジュールを示した図である。
図7b】NK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた大腸癌に対する腫瘍サイズの抑制効果を確認した図である。V.C(5%HSA):溶媒対照群、NK新鮮(4)細胞:新鮮NK細胞株を4週間に4回投与した投与群、NK新鮮(2)細胞:新鮮NK細胞株を4週間に2回投与した投与群、NK新鮮(1)+(6)凍結細胞:新鮮NK細胞株を1回投与した後、解凍された冷凍保存細胞株を6回混合投与した投与群、ドキソルビシン.HCL、V.C(無血清培地):無血清培地対照群、NK凍結(8)細胞(無血清培地):無血清培地に解凍された冷凍保存NK細胞株を8回投与した投与群、V.C(蒸留水):滅菌蒸留水対照群、NK凍結(8)細胞(蒸留水):滅菌蒸留水に解凍された冷凍保存NK細胞株を8回投与した投与群。
図7c】NK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた大腸癌に対する腫瘍重量の減少効果を確認した図である。V.C(5%HSA):溶媒対照群、NK新鮮(4)細胞:新鮮NK細胞株を4週間に4回投与した投与群、NK新鮮(2)細胞:新鮮NK細胞株を4週間に2回投与した投与群、NK新鮮(1)+(6)凍結細胞:新鮮NK細胞株を1回投与した後、解凍された冷凍保存細胞株を6回混合投与した投与群、ドキソルビシン.HCL、V.C(無血清培地):無血清培地対照群、NK凍結(8)細胞:無血清培地に解凍された冷凍保存NK細胞株を8回投与した投与群、V.C(蒸留水):滅菌蒸留水対照群、NK凍結(8)細胞:滅菌蒸留水に解凍された冷凍保存NK細胞株を8回投与した投与群。
図8a】NK細胞の細胞数に応じた肺癌に対する抗癌効果を確認するための投与スケジュールを示した図である。
図8b】NK細胞の細胞数に応じた肺癌に対する腫瘍サイズの抑制効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、及びDox.hcl:ドキソルビシン.HCL。
図8c】NK細胞の細胞数に応じた肺癌に対する腫瘍重量の減少効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、及びDox.hcl:ドキソルビシン.HCL。
図8d】NK細胞が腫瘍部位に浸潤することを確認するために、H-E染色を行った図である。V.O:無血清培地対照群、矢印:死んだ癌細胞、及びCA:癌細胞。
図8e】NK細胞が腫瘍部位に浸潤することを確認するために、CD56を確認した図である。V.O:無血清培地対照群、矢印:CD56陽性細胞、及びCA:癌細胞。
図9a】NK細胞の肺癌、肝臓癌、及び膵臓癌に対する抗癌効果を確認するための投与スケジュールを示した図である。CB NK細胞:臍帯血由来NK細胞、及びPBL NK細胞:末梢血由来NK細胞。
図9b】NK細胞の肺癌(A549)、肝臓癌(SNU-709)及び膵臓癌(MIA-PaCa-2)に対する腫瘍サイズの抑制効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、CB NK細胞:臍帯血由来NK細胞、及びPBL NK細胞:末梢血由来NK細胞。
図9c】NK細胞の肺癌(A549)、肝臓癌(SNU-709)及び膵臓癌(MIA-PaCa-2)に対する腫瘍重量の減少効果を確認した図である。V.C:溶媒対照群、CB NK細胞:臍帯血由来NK細胞、及びPBL NK細胞:末梢血由来NK細胞。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0093】
以下、本発明を実施例及び実験例により詳細に説明する。
但し、下記の実施例及び実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容は実施例により限定されるものではない。
【0094】
<実施例1>NK細胞の製造
病院から研究用として提供された臍帯血、末梢血液(韓国の建陽大学病院産婦人科及び忠南大学病院産婦人科から提供された。各病院IRB審査通過)を、RPMI 1640を用いて2:1に希釈して準備した後、フィコール・パック(Ficoll-Paque)上層部で前記用意された血液を慎重に置いた後、2,000rpmで30分間遠心分離して単核球細胞層(mononuclear cell layer、MNC layer)を得た。前記単核球細胞層から慎重に取った細胞から赤血球を除去し、単核球を収得した。前記収得した単核球にCD3マイクロビーズ(microbeads)(Miltenyi Biotech)を添加して標識した後、それをCSカラム(column)及びバリオマックス(Vario MACS)を用いてCD3陽性細胞を除去し、CD3陰性細胞を得た。これは、具体的にCD3マイクロビーズ(microbeads)(Miltenyi Biotech)がCD3ε鎖(chain)を認識し、単核球からCD3陽性細胞を捕捉して磁性を持たせた後、単核球のうち前記マイクロビーズが取り付けられたCD3陽性細胞をして、磁石と反応するMACSカラムを通過させることにより、CD3陽性細胞はカラムに残存し、CD3陰性細胞のみがカラムを抜け出して分離された。
【0095】
生理食塩水で希釈し、細胞数を測定して、数に応じてCD3陽性細胞に交差結合が可能なRosetteseTMを適正量処理し、室温で20分間混合した。反応が終わった血液を再び2倍に希釈した後、フィコール・パック(Ficoll-Paque)溶液に層が混ざらないように重畳し、その後、2,000rpmで室温にてブレークオフ(break off)で20分乃至30分間遠心分離した。
【0096】
上層液を除去した後、分離された単核球層を採取して洗浄することでCD3陰性細胞を得た。RosetteSep成分は、マウスとラットから由来されたモノクローナル抗体とグリコフォリン(glycoporin)A抗体と支持体の役割をするP9抗体またはP9F(ab’)抗体が四量体(tetramer)を形成した複合体である。CD3陰性細胞が分離される過程では、血液に投入されたRosetteSepの四量複合体は、血液内のCD3陽性細胞と交差結合しながらイムノロゼット(immunorosette)を形成し、フィコール(Ficoll)よりも密度が大きくなったイムノロゼットは、フィコールを用いた密度勾配遠心分離に際してフィコールの下部に配置され、上部には四量複合体と結合していないCD3陰性細胞が集積して分離される。
【0097】
前記分離されたCD3陰性細胞をT75フラスコに1×10細胞/mlの濃度で接種し、α-MEM完全培地にIL-15及びIL-21を共に処理し、37℃、5%COの条件下で10日乃至21日間培養した。培養中の細胞の濃度が2×10細胞/mlを超えないようにし、初期使用した条件の培地を使用して、細胞を1×10細胞/mlの濃度に調節した。4、8、14、18及び21日にそれぞれの細胞数を確認し、4、8、14、及び21日順にCD3及びCD56抗体で染色し、CD3CD56であるNK細胞群の割合を公知の方法でFACS分析した。
【0098】
その結果、図1に示すように、培養後11日乃至21日の間で臍帯血(図1上部)及び末梢血(図1下部)から分離されたCD3陰性細胞からNK細胞への分化が誘導されたことが確認された。
【0099】
<実施例2>冷凍保存NK細胞の製造
<2-1>分化したNK細胞からの冷凍保存NK細胞の製造
<実施例1>の方法で誘導されたNK細胞(培養後10日)を冷凍保存して冷凍保存NK細胞を製造した。冷凍保存に際しては、無血清(Serum-Free)、無タンパク質(Protein-Free)、無動物性要素(Animal Component-Free)の条件下で10%のジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)が含まれている冷凍保存培地(Cryostor(登録商標)CS10)を使用し、分化されたNK細胞を2.25×10細胞/1.5ml(1.5×10細胞/ml)の濃度で冷凍した。イソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol)が含まれている冷凍保存ボックスを用いて冷凍を行い、段階的に-70℃(Deep freezer)を経て最終的に-200℃(LN2)で保存された。
【0100】
冷凍保存は平均1ヶ月行われ、使用する直前に、冷凍保存されているNK細胞を37℃で急速に解凍し、生理食塩水を用いて洗浄して冷凍保存培地を除去する方法により解凍を行った。解凍された冷凍保存NK細胞は、FACS分析により、CD3CD56のNK細胞群の割合とNK受容体の割合及び細胞生存率を確認し、慢性骨髄性白血病(CML:Chronic Myelogenous Leukemia)細胞株に対する殺傷能を確認し、同じ起源を有する新鮮NK細胞(冷凍保存されていない新鮮NK細胞)とその特徴を比較した。
【0101】
その結果を、図2a(1.生存率)、図2b(2.分化度)、図2c(3.受容体)、図2d(4.殺傷能)に示した。図2a乃至図2dから、解凍された冷凍保存NK細胞は、新鮮NK細胞と類似の特徴を有することが確認された。
【0102】
<2-2>冷凍保存されたCD3陰性細胞からのNK細胞の製造
<実施例1>が提示したCD3陰性細胞を収得する方法と同様の方法でCD3陰性細胞を臍帯血から収得し、<実施例2-1>が提示した同じ冷凍保存培地を用いて、CD3陰性細胞を冷凍保存した。CD3陰性細胞の冷凍保存濃度は2.25×10細胞/1.5ml(1.5×10細胞/ml)であり、凍結期間は約1ヶ月間であった。
【0103】
冷凍保存されたCD3陰性細胞から分化されたNK細胞を得るために凍結細胞を解凍し、<実施例1>が提示した方法と同様の方法で細胞を培養した。解凍後0、2、4、7、9、12日順で細胞数と生存率を確認し、0日、7日、9日順でCD3CD56のNK細胞群の割合をFACSにより分析した。
【0104】
その結果、冷凍保存されたCD3陰性細胞から得られたNK細胞は、解凍後に得られた細胞の回収率(図2e)、細胞数(図2f)、細胞生存率(図2g)、及び分化度(図2h)の全部分で新鮮NK細胞と類似の特徴を示すことが確認された。
【0105】
<実施例3> マウスからNK細胞の体内分布度を確認
前記<実施例1>で製造された新鮮NK細胞の組織内分布度を確認するために、次のような実験を行った。
【0106】
先ず、NK細胞の分布度を確認するために、NK細胞をDiRで標識した。具体的には、3.5μg/mlのDiR(1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’、3’-テトラメチルインドトリカルボシアニン、シグマ、米国:1,1’-dioctadecyl-3,3,3’、3’-tetramethylindotricarbocyanine、Sigma、U.S.A)染料と0.5%エタノールが含まれている1×リン酸緩衝生理食塩水 (PBS:phosphate buffered saline)10mlに、細胞1×10個を浮遊し、37℃で1時間反応させた。反応が終わった後、その細胞を1×PBSで2回洗浄し、トリパンブルー (tryphan blue)で染色してNK細胞の体内分布度を確認した。
【0107】
前記DiRで標識したNK細胞の時間別、日付別の組織内分布度を確認するために、BALB/c雌ヌードマウスの静脈に、5%HSAまたはDiRで標識されたNK細胞を、それぞれ1×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10及び5×10細胞の濃度に至るまで注射し、所定時間後、製造社のプロトコルに基づいてライブ動物イメージングシステム (Live animal imaging system、PHOTONE IMAGER、Biospace)を用いて、マウスの全部または剖検により摘出した主要な臓器(肝臓、脾臓、肺、心臓、腎臓)からNK細胞の分布度を確認した。
【0108】
DiR標識のNK細胞に対する濃度別検出限界を測定するために、DiR標識のNK細胞を注入してから24時間後にマウス体内での分布度を確認した結果、図3aに示すように、5×10細胞以下の濃度群では、DiR標識のNK細胞の分布形態が明らかに示されてなかった。1×10細胞以上の濃度群では、マウスの腹部を中心に映像信号が濃度依存的に強く検出された(図3a)。また、腹部内の主要な臓器(肝臓、脾臓、腎臓、心臓、肺)を摘出して映像を測定した結果、5×10細胞以下の濃度群では、肺でのみDiR標識のNK細胞の弱い分布が確認されたが、1×10細胞以上の濃度群では、肝臓、脾臓、肺で映像信号が濃度依存的に強く検出された(図3b)。
【0109】
次に、DiR標識のNK細胞の組織内分布度を確認するために、1×10細胞を静脈内に投与してから30分及び2時間後にそれを測定した結果、図3cに示すように、測定開始から腹部を中心にDiR標識のNK細胞の分布が強く検出され、30分及び2時間後には溶媒対照群と比較して、それぞれ4倍及び3.8倍高い映像信号が測定された。また、腹部を中心とする主要な臓器である肝臓、脾臓、腎臓、心臓及び肺を摘出して映像を測定した結果、肝臓、脾臓及び肺からDiR標識のNK細胞の分布が強く検出された(図3c)。特に肝臓では、30分及び2時間目に溶媒対照群と比較して、それぞれ約9.5倍及び5.1倍高い映像信号が測定された。
【0110】
その後、DiR標識のNK細胞を静脈内に投与した1日後からDiR標識のNK細胞が検出されなくなるまで、1週間に3回測定した結果、図3dに示すように、投与後14日まではDiR標識のNK細胞が強く検出され、その後は映像信号が弱くなりはじめ、投与後42日目に測定した映像では、DiR標識のNK細胞が検出されなかった(図3d)。前記結果は、本発明の体内に投与されたNK細胞が、生体内で少なくとも30日まで生存し、肺、肝臓、脾臓などに多く分布することを示す。
【0111】
<実験例1>新鮮NK細胞の投与による大腸癌に対する抗癌効果の確認
<1-1>NK細胞の投与数、IL-2との併用による腫瘍サイズの抑制の確認
前記<実施例1>の方法により製造されたNK細胞の抗癌効果を確認するために、ヒト由来大腸癌細胞株であるSW620(韓国生命工学研究院、大韓民国)を異種移植したマウスモデルを用いた。
【0112】
具体的には、SW620細胞株を2×10細胞/mlの濃度でPBSに懸濁した後、 マウス1匹当たり0.3mlずつを右肩甲部と胸壁との間の腋窩部の皮下に注入した。癌細胞株を移植し、2時間後にNK細胞株を3×10、1×10、3×10及び1×10細胞/マウスの濃度で注射し始め、この時、IL-2は、PBSで希釈して10,000μ/マウスの濃度で処理した。実験期間中、週1回の投与スケジュールで合計4回(0日、7日、14日及び21日)にわたってマウス当たり0.2mlずつを尾静脈に注射した。その後、腫瘍サイズの変化を測定するために、腫瘍の3方向を、副尺付きノギス(vernier caliper)を用いて薬物投与開始日から剖検日まで合計7回にわたって測定した後、下記の数式1で計算して確認した。
【0113】
【数1】
【0114】
その結果、図4bに示すように、溶媒対照群と比較して、NK細胞を3×10、1×10、3×10及び1×10細胞/マウスの濃度で注射した群では、それぞれ23.8%、53.4%(p<0.001)、59.4%(p<0.001)及び76.8%(p<0.001)の腫瘍の成長抑制効果が確認され、陽性対照群であるアドリアマイシン(adriamycin)を投与した投与群では、58.3%(p<0.001)の腫瘍の成長抑制効果が確認された。また、IL-2を併用処理したときは、NK細胞を3×10、1×10、3×10及び1×10細胞/マウスの濃度で注射した群では、それぞれ17.0%、33.8%(p<0.01)、49.8%(p<0.01)及び73.5%(p<0.001)の腫瘍の成長抑制効果が確認された(図4b)。
【0115】
<1-2>NK細胞の投与数、IL-2との併用による腫瘍重量減少の確認
NK細胞の投与数、IL-2との併用による抗癌効果を確認するために薬物を処理したマウスにおける腫瘍の重量を測定した。
【0116】
前記実験例<1-1>と同様の方法でNK細胞単独、またはNK細胞及びIL-2を併用処理した後、23日目にCOガスを用いてマウスを犠牲にして腫瘍を分離し、その重量を化学はかり(chemical balance)を用いて測定し、写真撮影した後、液体窒素で固定した。溶媒対照群と投与群とを比較してその間の統計的有意性を検査するために、全ての測定項目値をt-TEST統計法によって分析した。
【0117】
その結果、図4cに示すように、溶媒対照群と比較して、NK細胞を3×10、1×10、3×10及び1×10細胞/マウスの濃度で注射した群では、それぞれ23.4%、54.0%、59.1%(p<0.05)及び78.8%(p<0.01)の腫瘍重量の減少効果が確認された(図4c)。また、IL-2を併用処理したとき、NK細胞を3×10、1×10、3×10及び1×10細胞/マウスの濃度で注射した群では、それぞれ17.0%、34.3%、47.0%及び75.6%(p<0.01)の腫瘍重量の減少が確認され、陽性対照群であるアドリアマイシンを投与した投与群では、58.2%(p<0.05)の腫瘍重量が減少することが確認された(図4c)。
【0118】
<1-3>NK細胞の投与数、IL-2との併用による毒性の確認
前記<実験例1-1>のマウスからNK細胞単独またはIL-2との併用投与による毒性を確認するために、マウスの体重変化及び一般的な症状を観察した。
【0119】
その結果、溶媒対照群と比較して、NK細胞単独またはIL-2との併用投与群では、実験期間中に一般症状なしで通常の体重増加が観察されたが、陽性対照群であるアドリアマイシンを投与した投与群では、21.8%(p<0.01)の統計的に有意な体重減少が示された。
【0120】
結論として、本発明のNK細胞は、単独またはIL-2との併用投与に際して、一般的な症状及び体重減少などの毒性を示しておらず、抗癌効果に関しては、NK細胞単独投与群では、最高70%以上の優れた腫瘍成長抑制効果を示し、IL-2との併用投与群では、NK細胞単独投与群と比較して添加または上昇の効果を示さないことが確認された。
【0121】
<実験例2>NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる抗癌効果の確認
<2-1>NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる腫瘍サイズの抑制を確認
本発明のNK細胞の培養方法(CD3陽性のT細胞をRosettesepにより除去するか、または除去過程を省略する。)、保存条件(新鮮細胞または冷蔵保存細胞)及び投与スケジュール(週1回×4週間、週2回×2週間)による抗癌効果を確認するために、腫瘍サイズの減少を確認した。
【0122】
具体的には、NK細胞を培養条件に応じて新鮮(fresh)NK、新鮮NK(w/o Rosettesep)、4℃冷蔵保存したNK及び4℃冷蔵保存したNK(w/o Rosettesep)に分け、新鮮NK細胞を前記<実施例1>と同様の方法により製造した。新鮮NK(w/o Rosettesep)細胞は、<実施例1>と同様の方法により製造されたが、その過程中にCD3陽性細胞を除去するステップが省略された。また、4℃冷蔵保存したNK細胞は、新鮮NK細胞を4℃で12時間保存することにより得られた。また、4℃冷蔵保存したNK(w/o Rosettesep)細胞は、CD3陽性細胞を除去するステップを省略した上、NK細胞を製造し、その製造された細胞を4℃で12時間保存することにより得られた。前記製造されたNK細胞をマウスモデルに投与するにあたっては、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、平均腫瘍サイズが約50.0mmに到達したとき、NK細胞を3×10細胞/マウスの濃度で投与し、マウス当たり0.2mlずつ尾静脈に注射した。この時、投与スケジュールは、週1回×4週間、週2回×2週間にした(図5a)。
【0123】
実験期間中に毒性を確認するためにマウスの体重変化及び一般的な症状を観察した結果、溶媒対照群と比較して、NK細胞を週1回×4週間[新鮮NK、新鮮NK(w/o Rosettesep)]及び週2回×2週間[新鮮NK、新鮮NK(w/o Rosettesep)、4℃冷蔵保存したNK、4℃冷蔵保存したNK(w/o Rosettesep)]群では、実験期間中に一般症状なしで通常の体重増加が観察されたが、陽性対照群であるアドリアマイシンを投与した投与群では、2頭の死亡動物及び31.5%(p<0.001)の統計的に有意な体重減少が示された。
【0124】
また、NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる抗癌効果を確認するために、腫瘍サイズの変化を確認した結果、図5bに示すように、週1回×4週間のスケジュールで新鮮NK及び新鮮NK(w/o Rosettesep)を3×10細胞/マウスの濃度で投与したとき、溶媒対照群と比較して、それぞれ50.8%(p<0.001)及び32.7%(p<0.05)の腫瘍成長抑制効果が示され、週2回×2週間のスケジュールで新鮮NK、新鮮NK(w/o Rosettesep)及び4℃冷蔵保存したNK細胞を投与したとき、それぞれ35.4%、10.8%及び33.0%の腫瘍成長抑制効果が示された。陽性対照群であるアドリアマイシンを投与した投与群では、71.7%(p<0.01)の腫瘍成長抑制効果が示された。しかし、4℃冷蔵保存したNK(w/o Rosettesep)細胞を投与した投与群では、腫瘍成長抑制効果が示されてなかった。このことから、CD3陽性のT細胞の除去過程を行わない場合、NK細胞の割合が低いため、抗癌効果が低下することが分かり、したがって、抗癌効果を高めるためにはCD3陽性のT細胞の除去過程が必要となることが分かる。
【0125】
<2-2>NK細胞の培養、保存条件、投与スケジュールによる腫瘍重量の減少を確認
本発明のNK細胞の培養方法、保存条件及び投与スケジュールによる抗癌効果を確認するために、腫瘍重量の減少を確認した。
【0126】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、前記実験例<2-1>と同様の条件下でNK細胞を投与した後、薬物投与後27日目に腫瘍を切除して重量を測定した。
【0127】
その結果、図5cに示すように、週1回×4週間のスケジュールで新鮮NK及び新鮮NK(w/o Rosettesep)を3×10個/マウスの濃度で投与したとき、溶媒対照群と比較して、それぞれ49.0%(p<0.001)及び33.1%(p<0.05)の腫瘍重量の減少効果が示された。また、週2回×2週間のスケジュールで新鮮NK、新鮮NK(w/o Rosettesep)及び4℃冷蔵保存したNK細胞を投与したとき、それぞれ30.3%、7.2%及び29.0%の腫瘍重量の減少効果が示され、陽性対照群であるアドリアマイシンを投与した投与群では、70.2%(p<0.05)の腫瘍成長抑制効果が示された(図5c)。
【0128】
結論として、前記結果から、新鮮NK培養条件下で培養したNK細胞を3×10個/マウスの濃度で週1回×4週間のスケジュールで投与したときは、優れた抗癌効果を示し、さらに、前記NK細胞を週2回×2週間のスケジュールで投与したときは、新鮮NK及び4℃冷蔵保存したNK細胞株は、新鮮NK(w/o Rosettesep)及び4℃冷蔵保存したNK(w/o Rosettesep)細胞株よりも高い抗癌活性を示すことが確認された。
【0129】
<実験例3>NK細胞の冷凍有無による抗癌効果の確認
<3-1>NK細胞の冷凍有無による腫瘍サイズの抑制を確認
本発明のNK細胞の冷凍有無による抗癌効果を確認するために、腫瘍サイズの減少を確認した。
【0130】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、2時間後にNK細胞を3×10細胞/マウスの濃度で投与し、マウス当たり0.2mlずつ尾静脈に注射し、この時、新鮮NK細胞(週1回×4週間;計4回)、解凍された冷凍保存NK細胞(週1回×4週間;計4回)、解凍された冷凍保存NK細胞(週2回×4週;計8回)、及び新鮮NK細胞(週1回×1週間)+解凍された冷凍保存NK細胞(週1回×3週間;計3回)の条件下で投与した。溶媒対照群としては5%HSAと無血清培地(serum free media)を投与し、陽性対照群としてはアドリアマイシンを2mg/kgの容量で一日おきに腹腔内に投与した(図6a)。
【0131】
実験期間中に毒性を確認するためにマウスの体重変化及び一般的な症状を観察した結果、溶媒対照群と比較して、すべてのNK細胞投与群では、実験期間中に一般症状なしで通常の体重増加が観察されたが、陽性対照群であるアドリアマイシンを投与した投与群では、2頭の死亡動物及び32.1%(p<0.001)の統計的に有意な体重減少が示された。
【0132】
また、NK細胞の冷凍有無による抗癌効果を確認するために、27日目の腫瘍のサイズ変化を確認した結果、図6bに示すように、新鮮NK細胞(合計4回)、解凍された冷凍保存細胞(合計8回)、及び新鮮NK細胞(合計1回)+解凍された冷凍保存NK細胞(合計3回)を投与した投与群では、それぞれ58.8%(p<0.001)、45.2%(p<0.001)及び19.2%の腫瘍成長抑制効果が確認され、陽性対照群では、60.1%(p<0.01)の腫瘍の成長抑制効果が示された(図6b)。
【0133】
<3-2>NK細胞の冷凍有無による腫瘍重量の減少の確認
本発明のNK細胞の冷凍有無による抗癌効果を確認するために、腫瘍重量の減少を確認した。
【0134】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、前記実験例<4-1>と同様の条件下でNK細胞を投与した後、薬物投与後27日目の腫瘍を切除して重量を測定した。
【0135】
その結果、図6cに示すように、新鮮NK細胞(計4回)、解凍された冷凍保存NK細胞(計8回)、及び新鮮NK細胞(計1回)+解凍された冷凍保存NK細胞(計3回)を投与した投与群では、それぞれ58.5%(p<0.001)、46.2%(p<0.01)及び19.5%の腫瘍重量の減少効果が確認され、陽性対照群では、60.5%(p<0.05)の腫瘍重量の減少効果が示された(図6c)。
【0136】
結論として、前記結果から、新鮮NK細胞(週1回×4週間;計4回)、解凍された冷凍保存NK細胞(週2回×4週間;計8回)を3×10個/マウスの濃度で投与した場合、一般症状及び体重減少などの毒性症状なしで顕著な抗癌効果を示すことが確認された。
【0137】
<実験例4>NK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた抗癌効果の確認
<4-1>細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた腫瘍サイズの抑制を確認
本発明のNK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた抗癌効果を確認するために、腫瘍サイズの減少を確認した。
【0138】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、2時間後に新鮮NK細胞と解凍された冷凍保存NK細胞を3×10個/マウス及び6×10個/マウスの濃度で投与し、マウス当たり0.2mlずつ尾静脈に注射した。この時、3×10個/マウスの濃度の新鮮NK細胞(1回/週×4週間;計4回)、6×10個/マウスの濃度の新鮮NK細胞(1回/2週×4週間;計2回)、及び新鮮NK細胞(3×10個/マウス、1回/週×1週間)+解凍された冷凍保存細胞(3×10個/マウス、2回/週×3週間;計6回)、解凍された冷凍保存NK細胞(serum free media、2回/週×4週間;計8回)、解凍された冷凍保存NK細胞(distilled water、2回/週×4週間;計8回)の条件下で投与した。溶媒対照群として5%HSAと無血清培地(serum free media)及び滅菌蒸留水(distilled water)を前記と同じ量で尾静脈に注射し、陽性対照群としてドキソルビシン.HCL(doxorubicin.HCL)を2mg/kgの容量で一日おきに腹腔内に投与した(図7a)。
【0139】
実験期間中に毒性の程度を調べるために、動物の体重変化及び一般的な症状を観察した結果、溶媒対照群と比較して、すべてのNK細胞の注射群では、一般症状なしで通常の体重増加が観察されたが、陽性対照物質であるドキソルビシン.HCLを投与した投与群では、投与期間中に2頭の死亡動物及び最終日25.0%(p<0.01)の統計的に有意な体重減少が示された。
【0140】
また、NK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた抗癌効果を確認するために、26日目の腫瘍のサイズの変化を確認した結果、図7bに示すように、3×10個/マウスの濃度の新鮮NK細胞(計4回)、6×10個/マウスの濃度の生細胞(計2回)、新鮮NK細胞(3×10個/マウス;計1回)+解凍された冷凍保存NK細胞(3×10個/マウス;計6回)、解凍された凍結保存NK細胞(serum free media;計8回)、解凍された凍結保存NK細胞(distilled water;計8回)を投与した投与群では、それぞれ68.3%(p<0.001)、61.5%(p<0.001)、63.7%(p<0.001)、55.1%(p<0.01)及び38.8%の腫瘍の成長抑制効果が観察された。陽性対照物質(doxorubicin.HCL)の投与群では、最終日72.9%(p<0.01)の腫瘍成長抑制効果が示された(図7b)。
【0141】
<4-2>細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた腫瘍重量の減少の確認
本発明のNK細胞の冷凍有無及び細胞数と投与回数に応じた抗癌効果を確認するために、腫瘍重量の減少を確認した。
【0142】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、前記実験例<4-1>と同様の条件でNK細胞を投与した後、薬物投与後26日目の腫瘍を切除してその重量を測定した。その結果、図7cに示すように、3×10個/マウスの濃度の新鮮NK細胞(計4回)、6×10個/マウスの濃度の新鮮NK細胞(計2回)、新鮮NK細胞(3×10個/マウス;計1回)+解凍された冷凍保存NK細胞(3×10個/マウス;計6回)、解凍された冷凍保存NK細胞(serum free media;計8回)、解凍された冷凍保存NK細胞(distilled water;計8回)を投与した投与群では、それぞれ68.6%(p<0.001)、61.8%(p<0.01)、59.1%(p<0.01)、50.2%(p<0.05)及び40.8%(p<0.05)の腫瘍重量減少が観察された。陽性対照物質(doxorubicin.HCL)の投与群では、70.4%(p<0.01)の腫瘍重量の減少が示された(図7c)。
【0143】
結論として、前記結果から、新鮮NK細胞(週1回×4週間;計4回、1回/2週×4週間;計2回)、解凍された冷凍保存NK細胞(serum free media、週2回×4週間;計8回)及び新鮮NK細胞(週1回×1週間)+解凍された冷凍保存NK細胞(週2回×3週間;計6回)を、前記濃度でマウス尾静脈に注射した場合、一般症状及び体重減少などの毒性症状なしで統計的に有意な優れた腫瘍成長抑制効果を示すことが確認された。
【0144】
<実験例5>NK細胞数に応じた肺癌に対する抗癌効果の確認
<5-1>NK細胞数に応じた腫瘍成長抑制及び腫瘍重量減少効果を確認
本発明のNK細胞数に応じてヒト由来の肺癌細胞株であるNCI-H460(韓国生命工学研究院、大韓民国)を異種移植したマウスモデルを用いて、NK細胞株の容量別の繰り返し静脈注射を介して抗癌効果を確認した。
【0145】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、平均腫瘍サイズが約50.0mmに到達したとき、NK細胞を3×10、1×10、3×10及び1×10個/マウスの濃度で注射し始め、実験期間中に週1回の投与スケジュールで合計4回(週1回)にわたってマウス当たり0.2mlずつ尾静脈に注射した。溶媒対照群としては5%HSAを投与し、陽性対照群としてはドキソルビシン.HCL(doxorubicin.HCL)を2mg/kgの容量で一日おきに腹腔内に投与した(図8a)。
【0146】
実験期間中に毒性を確認するために、マウスの体重変化及び一般的な症状を観察した結果、溶媒対照群と比較して、すべての容量のNK細胞群では、実験期間中に一般症状なしで通常の体重増加が観察されたが、陽性対照群であるドキソルビシン.HCLを投与した投与群では、43.3%(p<0.001)の統計的に有意な体重減少が認められた。
【0147】
抗癌効果を確認するために、前記<実験例1>の方法で開始日から剖検日まで合計11回にわたって腫瘍サイズを確認し、最終日(26日)にマウスを犠牲にして腫瘍を分離した後、それを測定して腫瘍成長抑制効果を確認した結果、図8bに示すように、NK細胞を1×10個/マウスの濃度で投与した投与群では、溶媒対照群と比較して、47.9%(p<0.001)の有意な腫瘍成長抑制効果が確認され、3×10、1×10及び3×10個/マウスの濃度で投与した投与群では、投与後10日まで腫瘍の成長を抑制することが確認されたが、それ以降は抑制率が減少するにつれて腫瘍の成長が増加する傾向を示し、陽性対照群では、53.8%(p<0.001)の腫瘍成長抑制効果が示された(図8b)。
【0148】
また、腫瘍重量減少効果を確認した結果、図8cに示すように、NK細胞を1×10個/マウスの濃度で投与した投与群では、溶媒対照群と比較して、46.5%(p<0.001)の有意な腫瘍重量減少効果を確認し、陽性対照群では、52.4%(p<0.001)の腫瘍重量減少効果が示された(図8c)。
【0149】
<5-2>腫瘍部位へのNK細胞の浸潤効果を確認
前記実験例<5-1>の条件下でNK細胞を投与したとき、どれくらいのNK細胞が浸潤するかを確認するために下記のような実験を行った。
【0150】
具体的には、マウスの癌組織を10%ホルマリン溶液に入れ、4℃で12時間固定した。前記固定された組織をもって薄い切片を作成してPBS溶液に浸した後、NK細胞の免疫組織化学染色のために、前記組織切片を30分間3%過酸化水素溶液に浸した。その後、前記切片を、再度0.1M PBS(pH7.4)、0.1%トリトンX-100(triton X-100)、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)及びCD56抗体(1:500、PharMigen、米国)が含まれている溶液に入れ、4℃で12時間培養した。そして、前記切片を、常温(room temperature)で1時間、蛍光標識抗マウスIgG(1:200、PharMigen、米国)が含まれている溶液に入れて培養した後、顕微鏡で観察した。または、前記固定された組織に直接ヘマトキシリン-エオジン(HE:Hematoxylin and Eosin)染色を行い、それを顕微鏡で観察した。
【0151】
その結果、図8d及び図8eに示すように、NK細胞株を3×10、1×10と3×10個/マウスの濃度で1次投与したとき、死んだ癌細胞の数(矢印)は、注入されたNK細胞の数に依存して増加し(図8d)、NK細胞マーカーであるCD56陽性細胞の数(矢印)は、溶媒を1次投与した正常対照群と比較して著しく増加し、CD56陽性細胞は、主に癌組織周辺に浸潤することが確認された(図8e)。
【0152】
結論として、NK細胞を1×10個/マウスの濃度で週1回ずつ4週間マウスの尾静脈に注射するとき、一般症状及び体重減少などの毒性症状なしでヒト由来の肺癌に対して顕著な腫瘍抑制効果を示すことが確認された。
【0153】
<実験例6>肺癌、肝臓癌及び膵臓癌に対するNK細胞の抗癌効果の確認
様々な癌種に対する本発明のNK細胞の抗癌効果を確認するために、ヒト由来の肺癌細胞であるA549(韓国生命工学研究院、大韓民国)、肝臓癌細胞であるSNU-709(韓国生命工学研究院、大韓民国)及び膵臓癌細胞であるMIA-Paca-2(韓国生命工学研究院、大韓民国)細胞株を異種移植したマウスモデルを用いて、NK細胞株の繰り返し静脈注射を介して抗癌効果を確認した。
【0154】
具体的には、前記実験例<1-1>と同様の方法で癌細胞を移植した後、平均腫瘍サイズが約50.0mmに到達したとき、NK細胞を6×10個/マウスの濃度で注射し始め、実験期間中に週1回の投与スケジュールで合計4回(週1回)にわたってマウス当たり0.2mlずつ尾静脈に注射し、溶媒対照群としては5%HSAを投与した(図9a)。
【0155】
実験期間中に毒性を確認するために、マウスの体重変化及び一般的な症状を観察した結果、溶媒対照群と比較して、すべての容量のNK細胞群では、実験期間中に一般症状なしで通常の体重増加が観察された。
【0156】
抗癌効果を確認するために、前記<実験例1>の方法により開始日から剖検日まで合計11回にわたって腫瘍サイズを確認し、最終日(25日)にマウスを犠牲にして腫瘍を分離した後、それを測定して腫瘍成長抑制効果を確認した結果、図9bに示すように、溶媒対照群と比較して、肺癌マウスモデルでは、臍帯血由来NK細胞株及び末梢血由来NK細胞株を投与した場合、それぞれ24.7%(p<0.05)及び9.0%の腫瘍成長抑制効果を示し、肝臓癌マウスモデルでは、臍帯血由来のNK細胞株を投与した場合、37.7%(p<0.01)の腫瘍成長抑制効果を示し、さらに膵臓癌マウスモデルでは、臍帯血由来NK細胞株を投与した場合、28.2%(p<0.01)の有意な腫瘍成長抑制効果が示された(図9b)。
【0157】
また、NK細胞投与後25日目の腫瘍重量減少効果を確認した結果、図9cに示すように、溶媒対照群と比較して、肺癌マウスモデルでは、臍帯血由来NK細胞株及び末梢血由来NK細胞株を投与した場合、それぞれ20.4%(p<0.01)及び10.8%の腫瘍重量減少効果を示し、肝臓癌マウスモデルでは、臍帯血由来のNK細胞株を投与した場合、37.6%(p<0.01)の腫瘍重量減少効果を示し、さらに膵臓癌マウスモデルでは、臍帯血由来NK細胞株を投与した場合、23.9%(p<0.01)の有意な腫瘍重量減少効果が示された(図9c)。
【0158】
結論として、本発明のNK細胞は、6×10個/マウスの濃度で週1回ずつ4週間マウスの尾静脈に注射したとき、一般症状及び体重減少などの毒性症状なしでヒト由来の肺癌、肝臓癌及び膵臓癌に対して顕著な腫瘍抑制効果を示すことが確認された。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b
図9c