(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】粉粒体散布装置
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20221101BHJP
A01C 15/00 20060101ALI20221101BHJP
A01C 11/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A01M7/00 D
A01C15/00 B
A01C15/00 F
A01C11/00 302
(21)【出願番号】P 2019004699
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000142643
【氏名又は名称】株式会社啓文社製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】園田 義昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 達二
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-304792(JP,A)
【文献】特開2004-201560(JP,A)
【文献】実開平04-005261(JP,U)
【文献】実開昭64-044060(JP,U)
【文献】特開2012-100606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00-11/00
A01C 15/00
A01C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機に装備される粉粒体散布装置であって、
圃場に散布する粉粒体が貯留される粉粒体タンクと、
前記粉粒体タンクの下部に接続されて、前記粉粒体タンクから粉粒体を繰り出し、繰り出した粉粒体を前記作業機の後方で左右向きに拡散させて圃場に供給する繰出し供給部と、が備えられ、
前記繰出し供給部は、粉粒体を左向きに飛散させる駆動可能な左飛散部材と、粉粒体を右向きに飛散させる駆動可能な右飛散部材と、前記粉粒体タンクの内部の粉粒体を前記左飛散部材及び前記右飛散部材に供給する繰出し供給部材と、前記繰出し供給部材、前記左飛散部材及び前記右飛散部材に向けて動力を出力する電気原動機構と、前記繰出し供給部材、前記左飛散部材、前記右飛散部材及び前記電気原動機構を収容するとともに前記粉粒体タンクに接続される繰出し供給ケースと、を有し、
前記繰出し供給ケースは、前記繰出し供給部材を収容するとともに前記粉粒体タンクに接続される繰出し供給ケース部と、前記電気原動機構を収容するとともに前記繰出し供給ケース部の下部に接続される原動機構ケース部と、前記左飛散部材を収容するとともに左散布口が下向きに開口された状態で前記原動機構ケース部に接続される左散布ケース部と、前記右飛散部材を収容するとともに右散布口が下向きに開口された状態で前記原動機構ケース部に接続される右散布ケース部と、に分割可能に構成されている粉粒体散布装置。
【請求項2】
前記左散布ケース部の内面に沿わせて設けられ、前記左飛散部材によって飛散された粉粒体が当たり、当った粉粒体を左方向に拡散するように案内する左ガイド板が備えられ、
前記右散布ケース部の内面に沿わせて設けられ、前記右飛散部材によって飛散された粉粒体が当たり、当った粉粒体を右方向に拡散するように案内する右ガイド板が備えられている請求項1記載の粉粒体散布装置。
【請求項3】
前記左ガイド板の案内面に突設され、前記左飛散部材によって飛散された粉粒体を左方向に拡散するように案内する左拡散ガイドが備えられ、
前記右ガイド板の案内面に突設され、前記右飛散部材によって飛散された粉粒体を右方向に拡散するように案内する右拡散ガイドが備えられている請求項2に記載の粉粒体散布装置。
【請求項4】
前記左ガイド板は、左上りの傾斜状態で備えられ、
前記左拡散ガイドは、前記左ガイド板の傾斜角よりも急傾斜の傾斜角の左上り状態で備えられ、
前記右ガイド板は、右上りの傾斜状態で備えられ、
前記右拡散ガイドは、前記右ガイド板の傾斜角よりも急傾斜の傾斜角の右上り状態で備えられている請求項3に記載の粉粒体散布装置。
【請求項5】
前記左散布ケース部のうちの前記左散布口に沿う左ケース部縁部と、前記左ガイド板のうちの前記左散布口に臨む左ガイド板縁部との間に隙間が形成されており、
前記右散布ケース部のうちの前記右散布口に沿う右ケース部縁部と、前記右ガイド板のうちの前記右散布口に臨む右ガイド板縁部との間に隙間が形成されている請求項2から
4のいずれか一項に記載の粉粒体散布装置。
【請求項6】
前記原動機構ケース部が樹脂製であり、
前記電気原動機構は、前記繰出し供給部材に向けて動力を出力する繰出し電動モータを備え、
前記原動機構ケース部の内部に設けられ、前記繰出し電動モータを支持する金属支持部材が備えられている請求項1から5のいずれか一項に記載の粉粒体散布装置。
【請求項7】
前記繰出し供給部材は、前記金属支持部材に支持されている請求項6に記載の粉粒体散布装置。
【請求項8】
前記電気原動機構は、前記左飛散部材が相対回転不能に支持された左出力軸を備え、かつ、前記右飛散部材が相対回転不能に支持された右出力軸を備える一つの飛散電動モータを有している請求項1から7のいずれか一項に記載の粉粒体散布装置。
【請求項9】
前記飛散電動モータのモータ本体と前記左飛散部材との間に向けて前記原動機構ケース部の底壁部から立設されるとともに前記左出力軸が挿通する開口が形成され、前記左散布ケース部の内部と、前記原動機構ケース部の内部とを区画する左区画壁が備えられ、
前記飛散電動モータのモータ本体と前記右飛散部材との間に向けて前記原動機構ケース部の底壁部から立設されるとともに前記右出力軸が挿通する開口が形成され、前記右散布ケース部の内部と、前記原動機構ケース部の内部とを区画する右区画壁が備えられている請求項8に記載の粉粒体散布装置。
【請求項10】
前記原動機構ケース部の底壁部に設けられた排水穴、及び、前記排水穴に装着される栓部材が備えられ、
前記栓部材は、前記排水穴の穴径よりも大きい外径を備える栓頭部と、前記栓頭部から延ばされて前記排水穴に挿入される栓軸部と、を有し、
前記栓軸部の外周部に、前記栓軸部の全長にわたる軸凹入部が形成されており、
前記栓頭部の下部に、前記栓部材の半径方向に沿う状態で、かつ、前記軸凹入部に連通する状態で頭凹入部が形成されている請求項1から9のいずれか一項に記載の粉粒体散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機に装備される粉粒体散布装置であって、圃場に散布する粉粒体が貯留される粉粒体タンクと、粉粒体タンクの下部に接続されて、粉粒体タンクから粉粒体を繰り出し、繰り出した粉粒体を作業機の後方で左右向きに拡散させて圃場に供給する繰出し供給部、とが備えられたものがある。
この種の粉粒体散布装置として、たとえば、特許文献1に示されるものがある。特許文献1に示されるものでは、粉粒体タンクとしてのホッパーと、ホッパーの下部に接続された一つの散布ケースと、が備えられている。ホッパーに貯留された薬剤を目皿によって繰り出すように構成した繰出し部、繰出し部が繰り出した薬剤を拡散羽根によって機体横幅方向に拡散散布する拡散機構、目皿を駆動する動力を出力するステッピングモータ、拡散羽根を駆動する電動モータのそれぞれが散布ケースに収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉粒体散布装置において、粉粒体を左向きに飛散させる駆動可能な左飛散部材と、粉粒体を右向きに飛散させる駆動可能な右飛散部材と、粉粒体タンクから粉粒体を繰出し、繰り出した粉粒体を左飛散部材及び右飛散部材に供給する繰出し供給部材と、繰出し供給部材、左飛散部材及び右飛散部材に向けて動力を出力する電気原動機構と、を備えることにより、粉粒体タンクに貯留された粉粒体が電気原動機構の動力によって駆動される繰出し供給部材によって粉粒体タンクからスムーズに繰り出されるとともに左飛散部材及び右飛散部材に的確に供給され、電気原動機構の動力によって駆動される左飛散部材及び右飛散部材によって粉粒体が圃場の所定の散布範囲に的確に供給される。
【0005】
しかし、従来の技術を採用した場合、粉粒体タンクに接続する一つの繰出し供給ケースを設け、この繰出し供給ケースに繰出し供給部材、左飛散部材、右飛散部材及び電気原動機構を収納するので、複雑な形状かつ大型の成形型によって繰出し供給ケースを製作せねばならなくてコスト高になる。
【0006】
本発明は、駆動可能な繰出し供給部材と、駆動可能な左飛散部材と、駆動可能な右飛散部材と、繰出し供給部材、左飛散部材及び右飛散部材に動力を出力する電気原動機構を繰出し供給ケースに収納するものでありながら、安価に得ることができる粉粒体散布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による粉粒体散布装置は、
作業機に装備される粉粒体散布装置であって、圃場に散布する粉粒体が貯留される粉粒体タンクと、前記粉粒体タンクの下部に接続されて、前記粉粒体タンクから粉粒体を繰り出し、繰り出した粉粒体を前記作業機の後方で左右向きに拡散させて圃場に供給する繰出し供給部、と、が備えられ、前記繰出し供給部は、粉粒体を左向きに飛散させる駆動可能な左飛散部材と、粉粒体を右向きに飛散させる駆動可能な右飛散部材と、前記粉粒体タンクの内部の粉粒体を前記左飛散部材及び前記右飛散部材に供給する繰出し供給部材と、前記繰出し供給部材、前記左飛散部材及び前記右飛散部材に向けて動力を出力する電気原動機構と、前記繰出し供給部材、前記左飛散部材、前記右飛散部材及び前記電気原動機構を収容するとともに前記粉粒体タンクに接続される繰出し供給ケースと、を有し、前記繰出し供給ケースは、前記繰出し供給部材を収容するとともに前記粉粒体タンクに接続される繰出し供給ケース部と、前記電気原動機構を収容するとともに前記繰出し供給ケース部の下部に接続される原動機構ケース部と、前記左飛散部材を収容するとともに左散布口が下向きに開口された状態で前記原動機構ケース部に接続される左散布ケース部と、前記右飛散部材を収容するとともに右散布口が下向きに開口された状態で前記原動機構ケース部に接続される右散布ケース部と、に分割可能に構成されている。
【0008】
本構成によると、繰出し供給ケースを繰出し供給ケース部と、原動機構ケース部と、左散布ケース部と、右散布ケース部とに分割して製作できるので、繰出し供給ケースの全体を一つの成形型によって製作するのに比べ、簡素な構造かつ小型の成形型を採用して繰出し供給ケースを製作して、粉粒体散布装置を安価に得ることができる。
【0009】
本発明においては、前記左散布ケース部の内面に沿わせて設けられ、前記左飛散部材によって飛散された粉粒体が当たり、当った粉粒体を左方向に拡散するように案内する左ガイド板が備えられ、前記右散布ケース部の内面に沿わせて設けられ、前記右飛散部材によって飛散された粉粒体が当たり、当った粉粒体を右方向に拡散するように案内する右ガイド板が備えられていると好適である。
【0010】
本構成によると、左飛散部材によって飛散された粉粒体が左ガイド板によって案内されて拡散し、右飛散部材によって飛散された粉粒体が右ガイド板によって案内されて拡散するので、粉粒体を広い供給範囲に的確に散布できる。また、粉粒体が左散布ケース部や右散布ケース部に当ることを左ガイド板や右ガイド板によって抑制できるので、左散布ケース部や右散布ケース部が摩滅し難くなる。
【0011】
本発明においては、前記左ガイド板の案内面に突設され、前記左飛散部材によって飛散された粉粒体を左方向に拡散するように案内する左拡散ガイドが備えられ、前記右ガイド板の案内面に突設され、前記右飛散部材によって飛散された粉粒体を右方向に拡散するように案内する右拡散ガイドが備えられていると好適である。
【0012】
本構成によると、左飛散部材によって飛散された粉粒体が左拡散ガイドによって案内されて拡散し、右飛散部材によって飛散された粉粒体が右拡散ガイドによって案内されて拡散するので、粉粒体をより広い供給範囲に的確に散布できる。
【0013】
本発明においては、前記左ガイド板は、左上りの傾斜状態で備えられ、前記左拡散ガイドは、前記左ガイド板の傾斜角よりも急傾斜の傾斜角の左上り状態で備えられ、前記右ガイド板は、右上りの傾斜状態で備えられ、前記右拡散ガイドは、前記右ガイド板の傾斜角よりも急傾斜の傾斜角の右上り状態で備えられていると好適である。
【0014】
本構成によると、左飛散部材によって飛散された粉粒体が左拡散ガイドによって案内されて左ガイド板よって左方向に拡散される以上に左方向に拡散されるので、右飛散部材によって飛散された粉粒体が右拡散ガイドによって案内されて右ガイド板よって右方向に拡散される以上に右方向に拡散されるので、粉粒体をより広い供給範囲に的確に散布できる。
【0015】
本発明においては、前記左散布ケース部のうちの前記左散布口に沿う左ケース部縁部と、前記左ガイド板のうちの前記左散布口に臨む左ガイド板縁部との間に隙間が形成されており、前記右散布ケース部のうちの前記右散布口に沿う右ケース部縁部と、前記右ガイド板のうちの前記右散布口に臨む右ガイド板縁部との間に隙間が形成されていると好適である。
【0016】
本構成によると、左散布ケース部及び右散布ケース部において、散布ケース部の外側面に付着した洗車水や雨水が外側面をつたってケース部縁部まで下降しても、ケース部縁部とガイド板縁部との間の隙間のためにガイド板に入り込まないので、左散布ケース部及び右散布ケース部の内部が湿気ることを防止できる。
【0017】
本発明においては、前記原動機構ケース部が樹脂製であり、前記電気原動機構は、前記繰出し供給部材に向けて動力を出力する繰出し電動モータを備え、前記原動機構ケース部の内部に設けられ、前記繰出し電動モータを支持する金属支持部材が備えられていると好適である。
【0018】
本構成によると、繰出し電動モータが金属支持部材によってしっかり支持されるので、繰出し電動モータの駆動に起因する振動が発生し難い。
【0019】
本発明においては、前記繰出し供給部材は、前記金属支持部材に支持されていると好適である。
【0020】
本構成によると、繰出し供給部材が金属支持部材にしっかり支持されるので、繰出し供給部材が振動し難くて、粉粒体が精度良い繰り出し量で繰り出される。
【0021】
本発明においては、前記電気原動機構は、前記左飛散部材が相対回転不能に支持された左出力軸を備え、かつ、前記右飛散部材が相対回転不能に支持された右出力軸を備える一つの飛散電動モータを有していると好適である。
【0022】
本構成によると、左飛散部材が左出力軸に直接に支持され、右飛散部材が右出力軸に直接に支持される簡素な駆動構造によって左飛散部材及び右飛散部材を駆動できる。
【0023】
本発明においては、前記飛散電動モータのモータ本体と前記左飛散部材との間に向けて前記原動機構ケース部の底壁部から立設されるとともに前記左出力軸が挿通する開口が形成され、前記左散布ケース部の内部と、前記原動機構ケース部の内部とを区画する左区画壁が備えられ、前記飛散電動モータのモータ本体と前記右飛散部材との間に向けて前記原動機構ケース部の底壁部から立設されるとともに前記右出力軸が挿通する開口が形成され、前記右散布ケース部の内部と、前記原動機構ケース部の内部とを区画する右区画壁が備えられていると好適である。
【0024】
本構成によると、左散布ケース部の内部で発生した塵埃が左区画壁に当って飛散電動モータに付着し難く、右散布ケース部の内部で発生した塵埃が右区画壁に当って飛散電動モータに付着し難いので、飛散電動モータの塵埃付着による故障が生じ難い。
【0025】
本発明においては、前記原動機構ケース部の底壁部に設けられた排水穴、及び、前記排水穴に装着される栓部材が備えられ、前記栓部材は、前記排水穴の穴径よりも大きい外径を備える栓頭部と、前記栓頭部から延ばされて前記排水穴に挿入される栓軸部と、を有し、前記栓軸部の外周部に、前記栓軸部の全長にわたる軸凹入部が形成されており、前記栓頭部の下部に、前記栓部材の半径方向に沿う状態で、かつ、前記軸凹入部に連通する状態で頭凹入部が形成されていると好適である。
【0026】
本構成によると、原動機構ケース部の内部に入り込んだ水が頭凹入部に流入して頭凹入部から軸凹入部に流入し、軸凹入部から底壁部の下方に流出する。粉粒体散布装置の下方で跳ね上がった水が排水穴に向かっても、排水穴に入り込んでいる栓軸部が障害物になって水が排水穴に入り込み難い。水が軸凹入部に入り込んだとしても、軸凹入部の上方に位置する栓頭部が障害物になり、かつ、軸凹入部に連通している頭凹入部が軸凹入部に対して交差する方向に延びているので、軸凹入部に入り込んだ水は、原動機構ケース部の内部に入り込み難い。すなわち、原動機構ケース部の内部に入り込んだ水を排水穴によって排出できながら、排水穴から原動機構ケース部の内部に水が入り込むことを回避しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図8】
図7のVIII-VIII断面矢視図である。
【
図12】繰出し供給ケースの分解状態における繰出し供給ケース部、左散布ケース部、右散布ケース部及び原動機構ケース部を示す斜視図である。
【
図13】繰出し供給ケースの分解状態における繰出し供給ケース部、連結部材、左散布ケース部、右散布ケース部及び原動機構ケース部を示す斜視図である。
【
図14】左散布ケース部、左ガイド板、左拡散ガイドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、乗用型田植機の走行機体に関し、
図1,2に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0029】
図1,2に示されるように、乗用型田植機は、左右一対の前車輪1が操向可能かつ駆動可能に装備され、左右一対の後車輪2が駆動可能に装備された走行機体を備えている。走行機体の前部に、エンジン3を有する原動部4が形成されている。走行機体の後部に、運転座席5、及び、前車輪1を操向操作するステアリングホィール6を有する乗用型の運転部7が形成されている。走行機体の機体フレーム8の後部にリンク機構9を介して苗植付装置10が連結されている。苗植付装置10は、機体フレーム8に対するリンク機構9の上下揺動作動によって接地フロート11が圃場面に接地した下降作業状態と、接地フロート11が圃場面に対して上方に離れた上昇非作業状態とにわたって昇降操作される。走行機体の後部に、苗植付装置10による植付苗に粉粒状の肥料を供給する施肥装置20が設けられている。苗植付装置10の後部に、除草用の粉粒状の薬剤を苗植付装置10の後方で走行機体の横幅方向に散布する粉粒体散布装置30が設けられている。
【0030】
〔苗植付装置の構成について〕
苗植付装置10は、
図1,2に示されるように、走行機体の横幅方向に間隔を空けて並ぶ4つの植付伝動ケース12などによって構成された植付機体13を備えている。4つの植付伝動ケース12それぞれの後部の両横側部分に、苗植付機構14が駆動可能に支持されている。植付機体13の上方に、走行機体の横幅方向に並ぶ八つの苗載置部を有する一つの苗載台15が設けられている。苗載台15は、苗植付機構14の苗植え運動に連動する状態で横方向に往復移送され、各苗載置部に載置されたマット状苗を苗載置部に対応する苗植付機構14に対して左右方向に往復移送する。これにより、各苗植付機構14の一対の植付アーム14aが交互に、苗載置部に載置されたマット状苗から植付け用苗を取り出し、取り出した植付け用苗を保持して圃場に下降して圃場に植え付ける。植付機体13の下部に、走行機体の横幅方向に並べられ、下降作業状態の苗植付装置10を支持し、かつ、圃場のうちの苗植付機構14による苗植付け箇所を苗植付機構14の苗植付けに先立って整地する五つの接地フロート11が支持されている。苗植付装置10は、走行機体の横幅方向に並ぶ八つの苗植付機構14による苗植え付け、すなわち、八条植えの苗植え付けが可能になっている。
【0031】
〔施肥装置の構成について〕
施肥装置20は、走行機体の横幅方向に並べられた二つの肥料タンク21と、各肥料タンク21の下部に接続された肥料繰出し供給部22と、肥料繰出し供給部22に接続された送風ブロワ23と、を備えている。二つの肥料タンク21の一方の肥料タンク21に接続された肥料繰出し供給部22から四本の施肥ホース24が苗植付装置10に向けて延ばされ、二つの肥料タンク21の他方の肥料タンク21に接続された肥料繰出し供給部22から四本の施肥ホース24が苗植付装置10に向けて延ばされている。八本の施肥ホース24は、八つの苗植付機構14それぞれの横側方に一つずつ設けられた計八つの施肥器25に各別に接続されている。
【0032】
施肥装置20においては、二つの肥料タンク21のそれぞれに接続された肥料繰出し供給部22が肥料タンク21から粉粒状の肥料を繰り出し、繰り出した肥料を送風ブロワ23からの風によって四本の施肥ホース24に供給する。各施肥器25が苗植付機構14による苗付け箇所の横側方で圃場に溝を形成し、形成した溝に施肥ホース24によって供給された肥料を供給する。
【0033】
〔粉粒体散布装置の構成について〕
粉粒体散布装置30は、
図1,2に示されるように、平面視で苗植付装置10の左右方向での中央部に配置された状態で支持フレーム16に支持されている。支持フレーム16による粉粒体散布装置30の支持は、粉粒体タンク30Aが上端側ほど前方に位置する前傾の傾斜姿勢になる状態で行われている。支持フレーム16は、四つの植付伝動ケース12のうち、苗植付装置10の左右方向での中心を挟んで隣り合う植付伝動ケース12から上向きに延ばされている。
【0034】
粉粒体散布装置30は、
図1,3,4に示されるように、粉粒状の薬剤が貯留される粉粒体タンク30Aと、粉粒体タンク30Aの下部に接続された繰出し供給部30Bと、を備えている。繰出し供給部30Bは、粉粒体タンク30Aから薬剤を取り出し、取り出した薬剤を苗植付装置10の後方で走行機体の左右方向に飛散させ、圃場のうちの苗植付装置10の横方向での植付範囲に相当する部分に散布することにより、薬剤を圃場に供給する。
【0035】
図6,8に示されるように、粉粒体タンク30Aにおけるタンク本体31に、粉粒状の薬剤が貯留される貯留部31bと、貯留部31bの下部から下向きに延ばされた筒状部32とが備えられている。筒状部32は、タンク本体31を成形するとき、貯留部31bに一体成形されている。タンク本体31及び筒状部32は、樹脂製である。
図8に示されるように、筒状部32の内面側に補強リブ33が一体成形されている。補強リブ33は、筒状部32の周方向での複数箇所に設けられている。繰出し供給部30Bにおける繰出し供給ケース40の上部に環状の接続部41が形成されている。接続部41が筒状部32に内嵌する状態で筒状部32と接続部41とを接続することにより、粉粒体タンク30Aと繰出し供給部30Bとが接続されている。粉粒体タンク30Aは、繰出し供給ケース40に対して上方に取り外し可能である。筒状部32と接続部41とが接続された状態において、各補強リブ33の下部に形成されている当り部33aが接続部41に対して上方から当接している。粉粒体タンク30Aの荷重が繰出し供給ケース40によって補強リブ33を介して下方から受け止め支持される。筒状部32の両横側において、粉粒体タンク30Aを繰出し供給ケース40に固定するパチン錠34(
図4参照)が筒状部32と繰出し供給ケース40とにわたって設けられている。
【0036】
〔繰出し供給部の構成について〕
繰出し供給部30Bは、
図3,4,5,6に示されるように、繰出し供給ケース40を備えている。繰出し供給ケース40は、
図3,6に示されるように、繰出し供給ケース40の前部に取付けられた連結部材42を介して支持フレーム16に支持されている。
【0037】
繰出し供給ケース40は、
図3,4,5,6,7,8に示されるように、接続部41を有する繰出し供給ケース部43と、繰出し供給ケース部43の下部に接続された原動機構ケース部44と、原動機構ケース部44の左側部に接続された左散布ケース部46と、原動機構ケース部44の右側部に接続された右散布ケース部47と、を備えている。繰出し供給ケース部43、原動機構ケース部44、左散布ケース部46及び右散布ケース部47のそれぞれは、樹脂製である。
【0038】
図6,7,8に示されるように、繰出し供給ケース部43に、繰出し供給部材48が収容されている。繰出し供給部材48の上下向きの回転支軸49が繰出し供給ケース部43のボス部43a、及び、金属支持部材50としての板金部材が有するボス部50bに回転可能に支持されている。繰出し供給部材48は、回転支軸49を揺動支点にして揺動可能な状態で金属支持部材50に支持されている。金属支持部材50は、原動機構ケース部44の内部に設けられている。金属支持部材50の前部の左右側部に下向きの折曲げ連結部50aが備えられている。左右の折曲げ連結部50aが原動機構ケース部44の左右の横壁部51dに連結されており、金属支持部材50は、原動機構ケース部44に支持されている。繰出し供給部材48の遊端側部分に、一対の繰出し供給穴48aが開口されている。繰出し供給部材48は、回転支軸49に設けられた駆動ギヤ52によって回転支軸49を揺動支点して左右方向に往復揺動する状態で駆動され、一対の繰出し供給穴48aによってタンク本体31の漏斗部31aから薬剤を繰り出す。一方の繰出し供給穴48aは、繰り出した薬剤を左散布ケース部46の内部に連通する左供給穴53に落下させて左散布ケース部46の内部に供給する。他方の繰出し供給穴48aは、繰り出した薬剤を右散布ケース部47の内部に連通する右供給穴54に落下させて右散布ケース部47の内部に供給する。
図5,6に示される38は、漏斗部31aの薬剤排出口を開閉するシャッターである。シャッター38は、操作レバー38aの揺動作動によってスライド操作されて開閉する。
【0039】
図5,8に示されるように、右散布ケース部47の内部のうちの右供給穴54の下方の箇所に右飛散部材56が回転可能に収容されている。
図5,9に示されるように、右散布ケース部47の下部に右散布口47aが下向きに開口されている。右散布ケース部47においては、繰出し供給部材48によって右散布ケース部47の内部に供給された薬剤が右飛散部材56に供給されて右飛散部材56によって右散布ケース部47の内部に飛散される。飛散された薬剤が右散布ケース部47の内部に形成された右案内部60に当って右案内部60によって案内され、右散布口47aから圃場のうち、苗植付装置10の植付範囲の右側半部に対応する部分に散布される。
【0040】
右案内部60は、
図5,8,9に示されるように、右散布ケース部47の内面に沿わせて右散布ケース部47に支持された右ガイド板61と、右ガイド板61の案内面から右散布ケース部47の内部空間に向けて突設された右拡散ガイド62と、を備えている。右ガイド板61及び右拡散ガイド62は、板金部材によって構成されている。右案内部60においては、右飛散部材56によって飛散された薬剤が右ガイド板61の案内面、及び、右拡散ガイド62の案内面62aに当る。右ガイド板61の案内面に当った薬剤は、右方向にかつ後方向に飛散しつつ右散布口47aから圃場に向かって飛ぶように右ガイド板61の案内面によって案内される。右拡散ガイド62の案内面62aに当った薬剤は、右ガイド板61によって案内される薬剤よりもより右方向に遠くまで飛散しつつ右散布口47aから圃場に向かって飛ぶように案内面62aによって案内される。薬剤が右ガイド板61に当ることにより、薬剤との摩擦による右散布ケース部47の摩滅を発生し難くできる。右拡散ガイド62は、二つの取付けねじ63によって右ガイド板61に支持されている。二つの取付けねじ63のうちの一方の取付けねじ63aを装着する右拡散ガイド62のネジ穴が複数箇所に形成されている。右拡散ガイド62は、他方の取付けねじ63bを揺動支点にして角度変更されて案内面62aの角度変更を行うように支持されている。
【0041】
右ガイド板61は、右上がり傾斜の状態で備えられ、右拡散ガイド62は、右ガイド板61の傾斜角よりも急傾斜の傾斜角で右上がり状態で備えられると好適である。右飛散部材56によって飛散された薬剤が右ガイド板61及び右拡散ガイド62によって案内されてより右方向に広く拡散される。
【0042】
図10に示されるように、右散布ケース部47のうちの右散布口47aに沿う右ケース部縁部47tと、右ガイド板61のうちの右散布口47aに臨む右ガイド板縁部61tとの間に隙間Zが形成されている。右散布ケース部47の外側面をつたって右ケース部縁部47tに達した水が右散布ケース部47の内側に回り込むことが隙間Zによって防止される。
【0043】
図5,8に示されるように、左散布ケース部46の内部のうちの左供給穴53の下方の箇所に左飛散部材55が回転可能に収容されている。右散布ケース部47と同様に、左散布ケース部46の下部に左散布口46aが下向きに開口されている。左散布ケース部46においては、繰出し供給部材48によって左散布ケース部46の内部に供給された薬剤が左飛散部材55に供給されて左飛散部材55によって左散布ケース部46の内部に飛散される。飛散された薬剤が左散布ケース部46の内部に形成された左案内部70に当って左案内部70によって案内され、左散布口46aから圃場のうち、苗植付装置10の植付範囲の左側半部に対応する部分に散布される。
【0044】
左案内部70は、
図5,8に示されるように、左散布ケース部46の内面に沿わせて左散布ケース部46に支持された左ガイド板71と、左ガイド板71の案内面から左散布ケース部46の内部空間に向けて突設された左拡散ガイド72と、を備えている。左ガイド板71及び左拡散ガイド72は、板金部材によって構成されている。左案内部70においては、左飛散部材55によって飛散された薬剤が左ガイド板71の案内面、及び、左拡散ガイド72の案内面72aに当る。左ガイド板71の案内面に当った薬剤は、左方向にかつ後方向に飛散しつつ左散布口46aから圃場に向かって飛ぶように左ガイド板71の案内面によって案内される。左拡散ガイド72の案内面72aに当った薬剤は、左ガイド板71によって案内される薬剤よりもより左方向に遠くまで飛散しつつ左散布口46aから圃場に向かって飛ぶように案内面72aによって案内される。薬剤が左ガイド板71に当ることにより、左散布ケース部46の薬剤との摩擦による摩滅を発生し難くできる。左拡散ガイド72は、二つの取付けねじ73によって左ガイド板71に支持されている。二つ取付けねじ73のうちの一方の取付けねじ73aを装着する左拡散ガイド72のネジ穴が複数箇所に形成されている。左拡散ガイド72は、他方の取付けねじ73bを揺動支点にして角度変更されて案内面62aの角度変更を行うように支持されている。
【0045】
左ガイド板71は、左上がり傾斜の状態で備えられ、左拡散ガイド72は、左ガイド板71の傾斜角よりも急傾斜の傾斜角で左上がり状態で備えられると好適である。左飛散部材55によって飛散された薬剤が左ガイド板71及び左拡散ガイド72によって案内されてより左方向に広く拡散される。
【0046】
右散布ケース部47と同様に、左散布ケース部46のうちの左散布口46aに沿う左ケース部縁部46tと、左ガイド板71のうちの左散布口46aに臨む左ガイド板縁部71tとの間に隙間Zが形成されている。左散布ケース部46の外側面をつたって左ケース部縁部46tに達した水が左散布ケース部46の内側に回り込むことが隙間Zによって防止される。
【0047】
左飛散部材55及び右飛散部材56は、
図8,9に示されるように、複数枚の飛散羽根を備えている。各飛散羽根における飛散羽根の回転中心から先端までの長さは、同じ長さに設定されている。各飛散羽根の先端部は、回転方向に対して傾斜する状態で、かつ、基端部に対して傾斜する状態で基端部に対して折り曲げられている。各飛散羽根における先端部の回転方向に対する傾斜角度、及び、各飛散羽根における先端部の基端部に対する傾斜角度は、同じ傾斜角度に設定されている。
【0048】
図12,13に示されるように、左散布ケース部46における横壁部分46sのうちの左散布口46aに沿う横壁縁部に、
図16に示される如き防水溝74が横壁部分46sの前後方向に沿って延びる状態で形成されている。右散布ケース部47における横壁部分47sのうちの右散布口47aに沿う横壁縁部に、
図16に示される如き防水溝74が横壁部分47sの前後方向に沿って延びる状態で形成されている。雨水や洗車水が横壁部分46s,47sの外側面をつたって横壁縁部に達しても横壁部分46s,47sの内面にまわり込むことが防水溝74によって防止される。
【0049】
原動機構ケース部44は、
図5,6,8に示されるように、底壁部44aと、底壁部44aの後部における左端部分から上向きに突設された左区画壁51aと、底壁部44aの後部における右端部分から上向きに突設された右区画壁51bと、底壁部44aのうちの左区画壁51a及び右区画壁51bよりも前側の部分における左右端部分から上向きに突設された横壁部51dと、底壁部44aの前端部分から上向きに突設された前縦壁部51cと、を備えている。底壁部44a、左区画壁51a、右区画壁51b、横壁部51d及び前縦壁部51cによって囲われた空間Sに、繰出し供給部材48、左飛散部材55及び右飛散部材56に向けて動力を出力する電気原動機構45が収容されている。
【0050】
電気原動機構45は、空間Sのうちの前側部分に収容され、繰出し供給部材48に向けて動力を出力する繰出し電動モータ57と、空間Sのうちの後側部分に収容され、左飛散部材55及び右飛散部材56に向けて動力を出力する一つの飛散電動モータ59と、を備えている。
図4,5に示されるように、繰出し電動モータ57は、金属支持部材50の下面側に支持されている。繰出し電動モータ57の出力軸57aの先端側部分が金属支持部材50の開口から金属支持部材50の上方に突出されている。出力軸57aの先端側部分に相対回転可能に設けられた出力ギヤ58と、駆動ギヤ52とが噛み合わされている。
図4,5,6に示されるように、飛散電動モータ59は、左区画壁51a及び右区画壁51bに支持されている。飛散電動モータ59の左出力軸59aの先端側部分が左区画壁51aの開口を通して左散布ケース部46の内部に挿入され、左出力軸59aの先端側部分に左飛散部材55が相対回転不能に支持されている。飛散電動モータ59の右出力軸59bの先端側部分が右区画壁51bの開口を通して右散布ケース部47の内部に挿入され、右出力軸59bの先端側部分に右飛散部材56が相対回転不能に支持されている。
【0051】
図8に示されるように、左区画壁51aは、底壁部44aから飛散電動モータ59のモータ本体と左飛散部材55との間に向けて立設されている。左散布ケース部46の内部と、原動機構ケース部44の内部とが左区画壁51aによって区画されている。右区画壁51bは、底壁部44aから飛散電動モータ59のモータ本体と右飛散部材56との間に向けて立設されている。右散布ケース部47の内部と、原動機構ケース部44の内部とが右区画壁51bによって区画されている。左散布ケース部46や右散布ケース部47の内部で塵埃が発生しても、塵埃が左区画壁51aや右区画壁51bに当って飛散電動モータ59に付着しにくい。
【0052】
図5に示されるように、底壁部44aの前後方向での二箇所に排水穴80が開口されている。二箇所の排水穴80には、
図11に示されるように、栓部材81が装着されている。栓部材81は、
図11に示されるように、排水穴80の穴径よりも大きい外径を有する状態で底壁部44aの内面側に配置される栓頭部81aと、栓頭部81aから下向きに延ばされて排水穴80に挿入される栓軸部81bと、を有している。
図11,15に示されるように、栓軸部81bの外周部に、栓軸部81bの全長にわたる軸凹入部82が形成されている。排水穴80の内部において、栓軸部81bと底壁部44aとの間に隙間が軸凹入部82によって形成される。栓頭部81aの下部に、栓部材81の半径方向に沿わせた、かつ、軸凹入部82に連通させた頭凹入部83が形成されている。底壁部44aの上面側において、栓頭部81aと底壁部44aとの間に隙間が頭凹入部83によって形成される。本実施形態では、
図15に示されるように、軸凹入部82は、栓軸部81bの周方向での四箇所に形成され、頭凹入部83は、四箇所の軸凹入部82のそれぞれに対応させて栓頭部81aの四箇所に形成されているが、これに限らない。たとえば、三つ以下あるいは五つ以上の軸凹入部82を採用してもよい。また、軸凹入部82よりも少ない数の頭凹入部83、すなわち、複数の軸凹入部82のうちの一部のみの軸凹入部82に連通する頭凹入部83を採用してもよい。栓軸部81bの長さによっては、軸凹入部82を螺旋状に形成してもよい。
【0053】
原動機構ケース部44の内部に入り込んだ水が頭凹入部83に流入して頭凹入部83から軸凹入部82に流入し、軸凹入部82から底壁部44aの下方に流出する。粉粒体散布装置30の下方で跳ね上がった水が排水穴80に向かっても、排水穴80に入り込んでいる栓軸部81bが障害物になって、水が排水穴80に入り込み難い。水が軸凹入部82に入り込んだとしても、軸凹入部82の上方に位置する栓頭部81aが障害物になり、かつ、頭凹入部83が軸凹入部82に対して交差する方向に延びているので、軸凹入部82に入り込んだ水は、原動機構ケース部44の内部に入り込み難い。
【0054】
図12,13は、繰出し供給ケース40の分解状態における繰出し供給ケース部43、原動機構ケース部44、左散布ケース部46及び右散布ケース部47の全体を示す斜視図である。
図12,13に示されるように、繰出し供給ケース40は、繰出し供給ケース部43、原動機構ケース部44、左散布ケース部46及び右散布ケース部47に分割可能に構成されている。
【0055】
図12,13に示されるように、繰出し供給ケース部43は、前部の両横端側部分に設けられた前連結部91と、後部の横幅方向での中央部分に設けられた後第1連結部92と、後第1連結部92の両横側方に設けられた後第2連結部93と、を備えている。
【0056】
図12,13に示されるように、原動機構ケース部44は、左右の横壁部51dの上端部分に設けられた前横連結部94と、底壁部44aの後端部に備えられた後連結部95と、左区画壁51aの前部から左横向きに延びる左散布補助板部96と、右区画壁51bの前部から右横向きに延びる右散布補助板部97と、を備えている。左散布補助板部96の先端部に左支持部98が形成されている。右散布補助板部97の先端部に右支持部99が形成されている。
【0057】
図12,13に示されるように、左散布ケース部46は、左端部に形成された第1連結部100と、後部に形成された第2連結部101と、を備えている。右散布ケース部47は、右端部に形成された第1連結部102と、後部に形成された第2連結部103と、を備えている。
【0058】
繰出し供給ケース部43の左右の前連結部91と、原動機構ケース部44の左右の前横連結部94とが連結ねじによって連結され、繰出し供給ケース部43の後第1連結部92と、原動機構ケース部44の後連結部95とが連結ねじによって連結されることにより、原動機構ケース部44が繰出し供給ケース部43の下部に接続される。
【0059】
左散布ケース部46の第1連結部100が原動機構ケース部44の左支持部98に連結ねじによって連結され、左散布ケース部46の第2連結部101が繰出し供給ケース部43の左の後第2連結部93に連結ねじによって連結され、左散布ケース部46は、原動機構ケース部44に接続され、かつ、繰出し供給ケース部43に支持される。
【0060】
右散布ケース部47の第1連結部102が原動機構ケース部44の右支持部99に連結ねじによって連結され、右散布ケース部47の第2連結部103が繰出し供給ケース部43の右の後第2連結部93に連結ねじによって連結され、右散布ケース部47は、原動機構ケース部44に接続され、かつ、繰出し供給ケース部43に支持される。
【0061】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、左ガイド板71、左拡散ガイド72、右ガイド板61、右拡散ガイド62が設けられた例を示したが、左ガイド板71及び右ガイド板61を設け、左拡散ガイド72及び右拡散ガイド62を設けないものであってもよい。また、左ガイド板71、左拡散ガイド72、右ガイド板61及び右拡散ガイド62を設けないものであってもよい。
【0062】
(2)上記した実施形態では、金属支持部材50を設けた例を示したが、金属支持部材50を設けず、繰出し電動モータ57を原動機構ケース部44に直接に支持させるものであってもよい。
【0063】
(3)上記した実施形態では、排水穴80を設けた例を示したが、排水穴80を設けないものであってもよい。
【0064】
(4)上記した実施形態では、粉粒体散布装置30が8条植え可能な乗用型田植機に装備された例を示したが、7条以下や9条以上の苗植えが可能な乗用型田植機に装備されるものであってもよい。
【0065】
(5)上記実施形態では、粉粒体散布装置30が薬剤を供給するよう構成された例を示したが、これに限らない。たとえば、肥料など、各種の粉粒体を供給するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、薬剤に限らず、肥料など各種の粉粒体を供給する粉粒体散布装置に適用できる。乗用型田植機に限らず、直播機、施肥機などの各種の作業機に装着される粉粒体散布装置に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
30A 粉粒体タンク
30B 繰出し供給部
40 繰出し供給ケース
43 繰出し供給ケース部
44 原動機構ケース部
45 電気原動機構
46 左散布ケース部
46a 左散布口
46t 左ケース部縁部
47 右散布ケース部
47a 右散布口
47t 右ケース部縁部
48 繰出し供給部材
50 金属支持部材
51a 左区画壁
51b 右区画壁
55 左飛散部材
56 右飛散部材
57 繰出し電動モータ
59 飛散電動モータ
59a 左出力軸
59b 右出力軸
61 右ガイド板
61t 右ガイド板縁部
62 右拡散ガイド
71 左ガイド板
71t 左ガイド板縁部
72 左拡散ガイド
80 排水穴
81 栓部材
81a 栓頭部
81b 栓軸部
82 軸凹入部
83 頭凹入部
Z 隙間