(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】変位センサ及び変位センサシステム
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20221101BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G01B7/00 101E
G01D5/20 J
(21)【出願番号】P 2019204835
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595145887
【氏名又は名称】日本システム開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 与志一
(72)【発明者】
【氏名】富野 宏紀
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086200(WO,A1)
【文献】特開平09-046205(JP,A)
【文献】特開2009-192385(JP,A)
【文献】特開平05-027045(JP,A)
【文献】特開2002-022402(JP,A)
【文献】特開昭61-159101(JP,A)
【文献】特開2018-141722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00
G01D 5/20
G01V 3/10
H01H 36/00
H03K 17/945 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装され、1ターン未満で形成されたコイルと、
前記コイルと電気的に接続され、発振信号を生成するインバータと、
前記インバータと電気的に接続された周波数検出部であって、導電体である測定対象物と前記コイルとの間の距離に応じて、前記コイル及び前記インバータを含みかつ発振周波数が500MHz~2GHzである発振回路の発振周波数を検出する周波数検出部と、
を備え、
前記コイルの面に対向する前記測定対象物との間の距離、及び、前記コイルの側面に対向する前記測定対象物との間の距離の両方を測定可能である、
変位センサ。
【請求項2】
前記コイルにリード線が接続されており、
前記コイルと前記リード線が1ターン未満で形成されている、
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記コイルは、前記コイルが実装されるコイル実装部の端部に沿って配置される、
請求項1または2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記コイルは、前記コイルが実装されるコイル実装部の基板側面に配置される、
請求項1または2に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記コイルは、前記コイル実装部の端部の両面にそれぞれ配置された水平部と、前記水平部同士を接続し、前記基板側面に沿って配置される鉛直部と、を備える、
請求項4に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記基板は、前記インバータ及び前記周波数検出部が設けられる部品配置部と、
前記部品配置部の一部から突出し、前記コイルが実装されるコイル実装部と、を備える、
請求項3~5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項7】
前記コイル実装部は、前記部品配置部から突出する第1方向の長さと、前記第1方向に直交する第2方向の長さとを備えた形状をなしており、
前記コイル実装部における前記第1方向の長さは、前記第2方向の長さよりも長い、
請求項6に記載の変位センサ。
【請求項8】
前記基板に、前記測定対象物を測定時に通過させる通過穴が形成されており、
前記コイルは、前記通過穴の内側面に配置される、
請求項3~5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項9】
前記基板の一辺に切欠き部が形成されており、
前記コイルは、前記切欠き部の内側面に配置される、
請求項3~5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項10】
前記基板に、前記測定対象物を測定時に通過させる通過穴と、
前記通過穴と前記基板の一辺との間が切り欠かれた切欠き部と、が形成され、
前記コイルは、前記通過穴の内側面に配置される、
請求項3~5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項11】
前記基板は、第1基板と、前記第1基板と組み合わされる第2基板を備え、
前記第1基板の一辺に第1切欠き部が形成され、前記第2基板の一辺に第2切欠き部が形成され、
前記第1切欠き部と前記第2切欠き部が向き合う位置で前記第1基板と前記第2基板を並べた際に、前記第1切欠きと前記第2切欠き部により、前記測定対象物を測定時に通過させる通過穴が形成され、
前記コイルは、前記第1切欠き部の内側面と第2切欠きの内側面の少なくとも一方に沿って配置される、
請求項3~5のいずれか1項に記載の変位センサ。
【請求項12】
第1基板に実装され、1ターン未満で形成された第1コイルと、
第2基板に実装され、1ターン未満で形成された第2コイルと、
前記第1コイルと電気的に接続され、発振信号を生成する第1インバータと、
前記第2コイルと電気的に接続され、発振信号を生成する第2インバータと、
前記第1インバータと電気的に接続された周波数検出部であって、互いに向き合わされた前記第1コイル及び前記第2コイルの間に配置された導電体である測定対象物と前記第1コイルとの間の距離に応じて、前記第1コイル及び前記第1インバータを含みかつ発振周波数が500MHz~2GHzである発振回路の発振周波数を検出する第1周波数検出部と、
前記第2インバータと電気的に接続された周波数検出部であって、前記測定対象物と前記第2コイルとの間の距離に応じて、前記第2コイル及び前記第2インバータを含みかつ発振周波数が500MHz~2GHzである発振回路の発振周波数を検出する第2周波数検出部と、
前記第1周波数検出部により検出された発振周波数及び前記第2周波数検出部により検出された発振周波数に基づいて、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの面に対向する前記測定対象物の変位、及び、前記第1コイルおよび前記第2コイルの側面に対向する前記測定対象物の変位の両方を測定する測定部と、を備える、
変位センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物との間の距離を測定する変位センサ及び変位センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の測定対象物との間の距離を測定する変位センサとして、発振回路を用いた変位センサが知られている。この変位センサでは、発振回路と、積算回路とが、コイルを有する基板上に実装されている。この変位センサにおいては、コイルと測定対象物との間の距離変化に応じて発振回路の発振周波数が変化するため、この発振周波数を検出することにより測定対象物との間の距離を測定する。
【0003】
このような従来の変位センサにおいて、基板に設けられたコイルは、例えば、基板上に平面状に形成された丸形のスパイラルコイルである。従来の変位センサでは、コイルの巻き数を確保するため、小型化を図るのが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型化を図ることが可能な変位センサ及び変位センサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板に実装され、1ターン未満で形成されたコイルと、前記コイルと電気的に接続され、発振信号を生成するインバータと、前記インバータと電気的に接続された周波数検出部であって、測定対象物と前記コイルとの間の距離に応じて、前記コイル及び前記インバータを含む発振回路の発振周波数を検出する周波数検出部と、備える、変位センサである。
【0007】
本発明の一態様において、前記コイルにリード線が接続されており、前記コイルと前記リード線が1ターン未満で形成されてよい。
【0008】
本発明の一態様において、前記基板は、前記インバータ及び前記周波数検出部が設けられる部品配置部と、前記部品配置部の一部から突出し、前記コイルが実装されるコイル実装部と、を備えてよい。
【0009】
本発明の一態様において、前記コイルは、前記コイルが実装されるコイル実装部の端部に沿って配置されてよい。
【0010】
本発明の一態様において、前記コイルは、前記コイルが実装されるコイル実装部の基板側面に配置されてよい。
【0011】
本発明の一態様において、前記コイルは、前記コイル実装部の端部の両面にそれぞれ配置された水平部と、前記水平部同士を接続し、前記基板側面に沿って配置される鉛直部と、を備えてよい。
【0012】
本発明の一態様において、前記コイル実装部は、前記部品配置部から突出する第1方向の長さと、前記第1方向に直交する第2方向の長さとを備えた形状をなしており、前記コイル実装部における前記第1方向の長さは、前記第2方向の長さよりも長くてよい。
【0013】
本発明の一態様において、前記基板に、前記測定対象物を測定時に通過させる通過穴が形成されており、前記コイルは、前記通過穴の内側面に配置されてよい。
【0014】
本発明の一態様において、前記基板の一辺に切欠き部が形成されており、前記コイルは、前記切欠き部の内側面に配置されてよい。
【0015】
本発明の一態様において、前記基板に、前記測定対象物を測定時に通過させる通過穴と、前記通過穴と前記基板の一辺との間が切り欠かれた切欠き部と、が形成され、前記コイルは、前記通過穴の内側面に配置されてよい。
【0016】
本発明の一態様において、前記基板は、第1基板と、前記第1基板と組み合わされる第2基板を備え、前記第1基板の一辺に第1切欠き部が形成され、前記第2基板の一辺に第2切欠き部が形成され、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部が向き合う位置で前記第1基板と前記第2基板を並べた際に、前記第1切欠きと前記第2切欠き部により、前記測定対象物を測定時に通過させる通過穴が形成され、前記コイルは、前記第1切欠き部の内側面と第2切欠きの内側面の少なくとも一方に沿って配置されてよい。
【0017】
本発明の一態様は、第1基板に実装され、1ターン未満で形成された第1コイルと、第2基板に実装され、1ターン未満で形成された第2コイルと、前記第1コイルと電気的に接続され、発振信号を生成する第1インバータと、前記第2コイルと電気的に接続され、発振信号を生成する第2インバータと、前記第1インバータと電気的に接続された周波数検出部であって、互いに向き合わされた前記第1コイル及び前記第2コイルの間に配置された測定対象物と前記第1コイルとの間の距離に応じて、前記第1コイル及び前記第1インバータを含む発振回路の発振周波数を検出する第1周波数検出部と、前記第2インバータと電気的に接続された周波数検出部であって、前記測定対象物と前記第2コイルとの間の距離に応じて、前記第2コイル及び前記第2インバータを含む発振回路の発振周波数を検出する第2周波数検出部と、前記第1周波数検出部により検出された発振周波数及び前記第2周波数検出部により検出された発振周波数に基づいて、前記測定対象物の変位を測定する測定部と、を備える、変位センサシステムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、小型化を図ることが可能な変位センサ及び変位センサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の変位センサ1の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2A】第1実施形態の変位センサ1を第1面側から見た図である。
【
図2B】第1実施形態の変位センサ1を第2面側から見た図である。
【
図2C】第1実施形態の変位センサ1を側面から見た図である。
【
図3】第1実施形態の変位センサ1の検出感度を説明するためのグラフである。
【
図4A】第2実施形態~第7実施形態の共通事項を説明するための基板10の概要を示す図である。
【
図4B】基板10に実装されるコイル22を説明するための断面図である。
【
図4C】基板10に実装されるコイル22を説明するための断面図である。
【
図4D】基板10に実装されるコイル22を説明するための断面図である。
【
図4E】基板10に実装されるコイル22を説明するための断面図である。
【
図5】第2実施形態の変位センサ2を第1面側から見た図である。
【
図6A】第2実施形態の変位センサ2の検出感度を説明するためのグラフである。
【
図7】第2実施形態の変位センサ2の検出感度を説明するためのグラフである。
【
図8A】第3実施形態の変位センサ3を第2面側から見た図である。
【
図8B】第3実施形態の変位センサ3を側方から見た図である。
【
図9】第4実施形態の変位センサ4を第2面側から見た図である。
【
図10】第4実施形態の変位センサ4の検出結果の一例を示すグラフである。
【
図11A】第5実施形態の変位センサ5を第2面側から見た図である。
【
図11B】第5実施形態の変位センサ5を側方から見た図である。
【
図12】第5実施形態の変位センサ5の検出結果の一例を示すグラフである。
【
図13】第6実施形態の変位センサ6を第2面側から見た図である。
【
図14】第7実施形態の変位センサ7を第2面側から見た図である。
【
図15A】第8実施形態の変位センサシステム100の分解斜視図である。
【
図15B】第8実施形態の変位センサシステム100を側方から見た図である。
【
図16A】第8実施形態の変位センサシステム100における第1IC73及び第2IC83によるセンサ出力と、第1コイル72と測定対象物T5の距離の関係を示すグラフである。
【
図16B】第8実施形態の変位センサシステム100における第1IC73及び第2IC83によるセンサ出力の差と、第1コイル72と測定対象物T5の距離の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のいくつかの実施形態の変位センサ及び変位センサシステムを、図面を参照して説明する。
【0021】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の変位センサ1について説明する。
図1は、第1実施形態の変位センサ1の構成の一例を示すブロック図である。変位センサ1は、例えば、基板10と、コイル22と、インバータ26と、周波数検出部30とを含む。コイル22、インバータ26、周波数検出部30といった電子部品は、基板10に設けられる。基板10には、さらに、図示しないコンデンサ、コネクタ、バッファなどの電子部品が設けられる。変位センサ1は、金属などの導電体である測定対象物Tと変位センサ1との間の距離Dを測定し、測定結果を外部の制御装置40などに出力する。コイル22と、インバータ26とがループ回路を形成し、発振回路として機能する。
【0022】
基板10は、例えば、ガラス基板、エポキシ系基板(ガラスエポキシ基板、紙エポキシ基板など)、ポリイミド基板、セラミック基板などで形成される。
【0023】
コイル22は、基板10上に配置される。変位センサ1は、コイル22と測定対象物Tとの間の距離Dを測定する。発振回路の発振周波数は、例えば、30MHz以上である。発振回路の発振周波数は、例えば、100から500MHz程度である。発振回路の周波数は、さらに大きな周波数、例えば800MHz~2GHz等であってもよい。コイル22の材料は、例えば、Ag、Cu、金などである。また、コイル22の表面は、外部からの汚れや酸化防止などのために保護膜で被覆されてよい。
【0024】
インバータ26は、コイル22を高周波で発振させるための発振信号を生成する。インバータ26は、例えば、CMOSインバータである。インバータ26の入力端は、コイル22と電気的に接続されている。インバータ26は、Lo信号が入力されるとHi信号を出力し、Hi信号が入力されるとLo信号を出力する動作を行うことで、コイル22を発振させる。
【0025】
周波数検出部30は、測定対象物Tとコイル22との間の距離に応じて変化する発振回路の発振周波数を検出する。周波数検出部30は、インバータ26と電気的に接続される。周波数検出部30は、検出した発振周波数を示す値(カウント値)を外部装置である制御装置40に出力する。また、周波数検出部30は、検出した発振周波数を示す値を測定対象物Tとコイル22との間の距離Dに換算した値を制御装置40に出力するようにしてもよい。制御装置40は、変位センサ1内に組み込まれていてもよい。
【0026】
周波数検出部30は、例えば、周波数カウンタと、出力部とを備える。周波数カウンタは、測定対象物Tとコイル22との間の距離に応じた発振回路の発振周波数を検出する。周波数カウンタが周波数を計数する測定時間は、用途に応じて予め設定することが可能である。測定時間を長くすることで変位センサ1の分解能を高めることが出来る。測定時間は、例えば、100μs、200μs、300μs、400μsなどである。出力部は、周波数カウンタが検出した発振周波数を示す値を、デジタル信号として制御装置40に出力する。
【0027】
第1実施形態において、インバータ26および周波数検出部30は、IC(Integrated Circuit)20などのハードウェアとして基板10上に実装される。コイル22は、IC20の外部に配置される。インバータ26および周波数検出部30は、IC20などのハードウェア以外の態様で基板10に設けられてもよい。
【0028】
制御装置40は、周波数検出部30から入力された発振周波数を示す値を、測定対象物Tとコイル22との間の距離Dに換算して表示する。制御装置40は、例えば、パーソナルコンピュータや携帯電話などの端末装置である。また、周波数検出部30が測定対象物Tとコイル22との間の距離Dに換算した値を制御装置40に出力する場合などには、制御装置40は、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)表示装置などであってもよい。
【0029】
次に、基板10における電子部品の実装について説明する。
図2Aは、第1実施形態の変位センサ1を第1面側から見た図であり、
図2Bは、第1実施形態の変位センサ1を第2面側から見た図である。なお、以下の説明において、コイル22の軸に沿った方向をZ方向といい、X方向に交差、例えば直交する面上における直交する2方向をそれぞれX方向、Y方向として説明を行う。なお、Y方向は「第1方向」の一例であり、X方向は「第2方向」の一例である。
【0030】
図2Aに示すように、基板10は、長方形をなしている。基板10は、長方形以外の形状でもよく、例えば、正方形、円形、楕円形、などの形状でもよい。コイル22は、基板10の一側の面である第1面に配置されて実装される。コイル22は、1ターン未満で形成されている。具体的に、コイル22は、円形の一部が切り取られた形状で基板10に1ターン未満で形成される。
【0031】
コイル22は、基板10の第1面または第2面に形成されていてもよい。コイル22は、基板10の表面に傾斜を設けた傾斜面に沿って設けられていてもよい。コイル22は、1ターン未満で形成されるので、重なり合う部分がない形となっている。コイル22は、1ターン未満で形成されるが、弧を描く形状以外の形状でもよく、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、正多角形、楕円形、長円形の一部が切り取られたり、波状やパルス状に形成されたりして1ターンで形成されていてもよい。コイル22は、弧と直線とが混合する形状であってもよい。
【0032】
コイル22の一端及び他端には、基板10の第1面に配置された第1面側第1リード線41及び第1面側第2リード線42がそれぞれ接続される。コイル22の下側には、第1スルーホール51及び第2スルーホール52が並んで設けられる。第1スルーホール51及び第2スルーホール52は、それぞれ基板10を貫通し、基板10の第1面と、第1面に対向する第2面に渡って設けられる。コイル22の両端は、それぞれ第1面側第1リード線41及び第1面側第2リード線42を介して、第1スルーホール51及び第2スルーホール52に設けられたビアに接続される。コイル22の両端は、リード線を介することなく、第1スルーホール51及び第2スルーホール52に設けられたビアに直接接続されてもよい。
【0033】
図2Bに示すように、基板10の第2面には、IC20が実装される。IC20には、第2面側第1リード線61と、第2面側第2リード線62が接続される。第2面側第1リード線61は、第1スルーホール51に設けられたビアを介して第1面側第1リード線41と接続される。第2面側第2リード線62は、第2スルーホール52に設けられたビアを介して第1面側第2リード線42と接続される。コンデンサ、コネクタ、バッファ等は、例えば、基板10の第2面に実装される。
【0034】
第1実施形態の変位センサ1においては、コイル22が1ターン未満で形成されている。このため、コイル22の巻き数が少なくて済むので、小型化を図ることが可能となる。
【0035】
また、第1実施形態の変位センサ1では、コイル22が1ターン未満で形成されているため、コイル22を複数ターンで形成する場合よりも短くすることができる。したがって、コイル22の製造を容易に行うことができ、断線やショートなどの製造ミスが生じる余地を低減することができる。また、第1実施形態の変位センサ1は、コイル22が基板10の表面に形成されているので、基板10に対して、Z方向に離間する位置において、測定対象物のZ方向の変位を高い感度で検出することができる。また、コイル22は、1ターン未満で形成されているため、基板の種々の場所に設けることが容易となる。
【0036】
図3は、第1実施形態の変位センサ1の検出感度を説明するためのグラフである。
図3の横軸は、コイル22と測定対象物の距離を示し、縦軸は検出可能最小変位距離(分解能)を示す。検出可能最小変位距離は、100μsあたりに検出可能となる変位の最小距離を示し、検出可能最小距離が短いほど検出感度が高くなる。
図3において、第1従来グラフK11は、従来の変位センサにおける検出可能最小変位距離とコイルと測定対象物の距離の関係を示し、第1実施形態グラフP11は、変位センサ1における検出可能最小変位距離とコイル22と測定対象物の距離の関係を示す。また、
図3に示すグラフでは、Z方向の距離についての関係を示す。なお、従来の変位センサは、複数ターン巻かれたコイルを備える変位センサである。
【0037】
第1従来グラフK11の変化から分かるように、従来の変位センサでは、コイルと測定対象物の距離が長くなると、検出可能最小変位距離が長くなる割合が変位センサ1よりも大きくなる。特に、コイルと測定対象物の距離が1500μmを超えるあたりから、検出可能最小変位距離が長くなる割合が急激に大きくなる。一方、第1実施形態グラフP11から分かるように、変位センサ1では、コイル22と測定対象物の距離が長くなると、検出可能最小変位距離も徐々に大きくなるが、検出可能最小変位距離が大きくなる割合はほとんど変わらない。その結果、コイル22と測定対象物の距離が長いときには、従来の変位センサと変位センサ1との間で検出可能最小変位距離の差が大きくなる。この結果から、変位センサ1は、従来の変位センサと比較して、検出感度が高いことが分かる。
【0038】
(第2~第7実施形態の共通事項)
以下に、第1実施形態以外の第2実施形態~第8実施形態について順次説明する。各実施形態を順次説明する前に、第2実施形態~第7実施形態の共通事項について説明する。
図4Aは、第2実施形態~第7実施形態の共通事項を説明するための基板10の概要を示す図である。
図4Aに示すように、共通事項の説明に関する基板10は、平面視した形状が正方形をなしており、第1面10Uと、第2面10Lと、基板側面10Sと、を備える。さらに、基板10の端部10Eにおける端辺10Vを備える。端辺10Vは、基板10の第1面10Uまたは第2面10Lと基板側面10Sの変わり目となる線(辺)である。例えば基板10の内側において、第1面10Uと第2面10Lを貫通する貫通穴を形成する場合には、基板側面は、基板内側における貫通穴の側面としてもよい。
【0039】
基板10の端部10Eには、コイル22が実装される。基板10の端部10Eに設けられるコイル22は、端辺10Vと接触していてもよいし端辺10Vとは離間していてもよい。コイル22は、基板10の端部10Eにおいて、1ターンで形成されるが、以下の各実施形態では、基板10の端部10Eに相当する部分がそれぞれ異なり、基板10のコイル実装部12(
図5参照)が取り付けられたり、通過穴14(
図9参照)が形成されたり、切欠き部15(
図11A参照)が形成されたりして、これらの端部が基板10の端部10Eに相当する。このため、コイル22の具体的な形成態様の説明は、各実施形態に委ねる。
【0040】
基板10は、正方形以外の形状でもよく、長方形などの四角形、五角形や六角形などの多角形、さらには円形、楕円形、長円形、これらの形状を組み合わせた形状でもよい。基板10には、基板10を貫通し、基板10の第1面10Uと第2面10Lに渡る第1スルーホール51及び第2スルーホール52が設けられる。基板10の第2面10Lには、第1実施形態と同様のIC20(
図2B参照)が設けられる。
【0041】
図4B~
図4Eは、基板10に実装されるコイル22を説明するための断面図である。基板10に実装されるコイル22は、
図4Bに示すように、基板10の第1面10Uに設けられてもよいし、
図4Cに示すように、基板10の基板側面10Sに設けられてもよい。また、コイル22は、図示はしないが、基板10の第2面10Lに設けられてもよい。
【0042】
また、コイル22は、基板10の両面の端部にそれぞれ配置された水平部と、水平部同士を接続し、基板側面に沿って配置される鉛直部と、を備えるものでもよい。具体的には、
図4Dに示すように、コイル22は、基板10の端部10Eの第1面10U及び第2面10Lにそれぞれ設けられた水平部22Aと、水平部22A同士を接続し、基板側面10Sに沿って配置される鉛直部22Bと、を備え、断面コ字形状をなしてもよい。鉛直部22Bは、基板10の基板側面10Sに配置される。このように、コイル22は、基板10の端部10Eを挟んで設けられてもよい。鉛直部22Bは、基板側面10Sの幅(基板10の厚さ)と同一でもよいし、基板側面10Sの幅よりも短くてもよい。水平部22Aの幅は、鉛直部22Bの幅より狭い(短い)が、鉛直部22Bの幅より広く(長く)てもよい。
【0043】
また、コイル22は、
図4Eに示すように、基板10の第1面10U及び基板側面10Sに断面略L字形状に設けられてもよい。また、コイル22は、図示はしないが、基板10の第2面及び基板側面に断面略L字形状に設けられてもよい。
【0044】
コイル22が基板10の第1面10Uに設けられることにより、基板10に対して、Z方向に離間する位置おいて測定対象物のZ方向の変位を高い感度で検出することができる。コイル22が基板10の基板側面10Sに設けられることにより、基板10に対して、X方向またはY方向に離間する位置においても、測定対象物のそれぞれX方向、Y方向の変位を高い感度で検出することができる。
【0045】
この点についてさらに説明すると、複数のターンで形成されたコイルにおいて、XY方向において、外側のターンの部分は測定対象物に近接しやすいが、内側のターンの部分は測定対象物に近接しにくくなる。したがって、コイル全体でみると、XY方向において、測定対象物に近接しやすい部分と近接しにくい部分が存在する。
【0046】
これに対して、コイル22が1ターン未満で形成されているため、XY方向において、コイル22の全体が測定対象物に近接しにくい部分が存在しない。したがって、基板10に対して、X方向またはY方向に離間する位置においても、測定対象物のそれぞれX方向、Y方向の変位を高い感度で検出することができる。
【0047】
また、コイル22が1ターン未満で形成されている。このため、コイル22の巻き数が少なくて済むので、小型化を図ることが可能となるとともに、断線やショートなどの製造ミスを防止することができる。なお、コイル22とリード線61、62を合わせて1ターン未満で設けてもよい。これにより、リード線がスルーホールを通らなくてもコイル22とIC20を接続することができるため、さらなる小型化を図ることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の変位センサ2について説明する。
図5は、第2実施形態の変位センサ2を第1面側から見た図である。
図5に示すように、基板10は、部品配置部11と、コイル実装部12と、を備える。部品配置部11は、正方形をなしている。部品配置部11は、正方形以外の形状でもよく、長方形などの四角形、五角形や六角形などの多角形、さらには円形、楕円形、長円形、これらの形状を組み合わせた形状でもよい。
【0049】
コイル実装部12は、部品配置部11の一辺からY方向に突出して設けられた突出部である。コイル実装部12は、部品配置部11よりも小さい正方形をなす。コイル実装部12は、部品配置部11と同様に、正方形以外の形状でもよい。コイル実装部12には、コイル22が1ターン未満で配置される。コイル22は、上記の共通事項において説明したものである。
【0050】
コイル22は、
図4Aに示す基板10の端部10Eに相当するコイル実装部12の端部に設けられる。コイル22は、コイル実装部12の端部の全周に渡って設けられてもよいし、全周に渡ることなく、コイル実装部12の端部の一部に設けられ、コイル実装部12の他の一部にはコイル22が設けられないようにしてもよい。
【0051】
部品配置部11とコイル実装部12の形状は同じでもよいし異なってもよい。部品配置部11は、コイル実装部12よりも大きくてもよいし小さくてもよい。コイル実装部12に電子部品等が配置されてもよいし、部品配置部11に渡ってコイル22が実装されてもよい。
【0052】
第2実施形態の変位センサ2は、上記第1実施形態及び第2~第7実施形態の共通事項で説明した作用効果を奏する。また、第2実施形態の変位センサ2では、コイル22がコイル実装部12の端辺に沿って配置されるので、基板10に対して、X方向またはY方向に離間する位置においても、それぞれX方向、Y方向の測定対象物Tの変位を高い感度で検出することができる。
【0053】
図6Aは、第2実施形態の変位センサ2の検出感度を説明するためのグラフ、
図6Bは、
図6Aの一部拡大図である。
図6Aに示すグラフは、コイル実装部12に、
図4Bのようにコイル22が形成された例についての検出感度を説明するグラフである。
図6A、
図6Bの横軸は、コイル22と測定対象物Tの距離を示し、縦軸は検出可能最小変位距離を示す。
図6A、
図6Bにおいて、第2従来グラフK21は、従来の変位センサにおける検出可能最小変位距離とコイルと測定対象物の距離の関係を示し、第2実施形態グラフP21は、変位センサ2における検出可能最小変位距離とコイル22と測定対象物Tの距離の関係を示す。また、
図6A、
図6Bに示すグラフでは、Y方向の距離についての関係を示す。
【0054】
図6Aに示す第2従来グラフK21の変化から分かるように、従来の変位センサでは、コイルと測定対象物の距離が長くなると、検出可能最小変位距離が長くなる割合が変位センサ2よりも大きくなる。一方、第2実施形態グラフP21から分かるように、変位センサ2では、コイル22と測定対象物Tの距離が長くなると、検出可能最小変位距離も徐々に大きくなるが、検出可能最小変位距離が大きくなる割合はほとんど変わらない。その結果、コイル22と測定対象物Tの距離が長いときには、従来の変位センサと変位センサ2との間で検出可能最小変位距離の差が大きくなる。この傾向は、
図6Bに示すように、コイル22と測定対象物Tの距離が近い場合から顕著に表れる。この結果から、変位センサ2は、従来の変位センサと比較して、検出感度が高いことが分かる。
【0055】
また、
図7は、第2実施形態の変位センサ2の検出感度を説明するためのグラフである。
図7に示すグラフは、コイル実装部12の側面の一部に、
図4Dのようにコイル22が形成された例についての検出感度を説明するグラフである。
図7の横軸は、コイル22と測定対象物の距離を示し、縦軸は検出可能最小変位距離を示す。
図7において、第2-1実施形態グラフP31及び第2-2実施形態グラフP32は、300μmの厚さの基板10を用いた変位センサ2によって測定対象物を2回測定した場合における1回目と2回目における検出可能最小変位距離とコイル22と測定対象物の距離の関係をそれぞれ示す。なお、基板10の厚さは、コイル22の配線幅に相当する。第2-3実施形態グラフP33及び第2-4実施形態グラフP34は、600μmの厚さの基板10を用いた変位センサ2によって測定対象物を2回測定した場合における1回目と2回目における検出可能最小変位距離とコイル22と測定対象物の距離の関係をそれぞれ示す。
【0056】
第2-1実施形態グラフP31及び第2-2実施形態グラフP32、第2-3実施形態グラフP33及び第2-4実施形態グラフP34から分かるように、300μmの厚さの基板10を用いた場合と600μmの厚さの基板10を用いた場合の双方において、1回目及び2回目の測定における検出可能最小変位距離とコイル22と測定対象物の距離の関係はほぼ同様である。この結果から、基板10の厚さに関わらず、Y方向についての距離については同等の検出精度での検出が可能となることが分かる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の変位センサ3について説明する。
図8Aは、第3実施形態の変位センサ3を第2面側から見た図、
図8Bは、第3実施形態の変位センサ3を側方から見た図である。
図8Aに示すように、基板10は、部品配置部11と、コイル実装部12と、を備える。部品配置部11の第2面には、IC20が設けられる。
【0058】
コイル実装部12は、部品配置部11の一辺からY方向に突出して設けられる。コイル実装部12には、コイル22が実装される。コイル22は、上記の共通事項において説明したものである。コイル22は、
図8Bにも示すように、コイル実装部12における部品配置部11と離間した位置であるコイル実装部12の先端に1ターン未満で配置される。このため、コイル22は、コイル実装部12の基板側面の一部に設けられ、コイル実装部12の一部は、コイル22が設けられず、露出した状態となる。
【0059】
第3実施形態の変位センサ3は、例えばセンサを測定対象物に近づけるのを妨げる構造物(障害物)W1内に設けられた測定対象物Tの測定を目的としており、障害物W1に設けられた挿通穴を通して障害物W1の内部にコイル実装部12を挿入し、コイル22を測定対象物Tに近接させて、測定対象物Tの変位を測定する。第3の実施形態の変位センサ3において、コイル22と部品配置部11との間の長さは、障害物W1の外枠の長さ(厚さ)以上の長さである。
【0060】
第3実施形態の変位センサ3は、上記第1実施形態及び第2~第7実施形態の共通事項で説明した作用効果を奏する。また、第3実施形態の変位センサ3では、コイル実装部12は、細長い長方形状をなし、コイル実装部12にコイル22が設けられる。このため、コイル実装部12を挿入することにより、狭い領域に設けられた測定対象物T、例えば箱などの障害物W1の中に設けられた測定対象物Tの変位を測定するにあたり、障害物W1に設けられた挿通穴からコイル実装部12を挿入して測定対象物Tの変位を測定できる。したがって、狭いスペースなどに設けられた測定対象物Tについての変位を検出することができる。
【0061】
また、第3実施形態の変位センサ3では、部品配置部11よりも長いコイル実装部12の先端に設けられる。このため、部品配置部11から離れた位置であっても、測定対象物Tについての変位を検出することができる。また、コイル22と部品配置部11との間の長さが、障害物W1の厚さ以上の長さであるため、障害物W1を避けて測定対象物Tの変位を測定することができる。また、コイル実装部12は、Y方向の長さが、X方向の長さよりも長い細長い長方形状をなす。このため、部品配置部11から離れた位置に設けられた測定対象物Tの変位を容易に検出することができる。なお、コイル22と部品配置部11との間の長さは、障害物W1の厚さに応じて定めることができ、例えば、障害物W1が厚い場合には、コイル22と部品配置部11との間の長さを長くし、障害物W1が薄い場合等には、コイル22と部品配置部11との間の長さを長くしてもよい。
【0062】
また、部品配置部11に設けられたIC20と、コイル実装部12に設けられたコイル22を、第2面側第1リード線61及び第2面側第2リード線62により接続する。このため、IC20とコイル22の離間距離が大きくなった場合でも、IC20とコイル22を容易に接続できる。また、リード線を配置する余裕を多くとることができるので、設計の自由度を高めることができるとともに、既存の構造に後付できる可能性を高めることができる。また、コイル22自体のインダクタンスが低いことから、リード線のインダクタンスが増加しても、コイル22における検出精度に与える影響を小さくすることができる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の変位センサ4について説明する。
図9は、第4実施形態の変位センサ4を第2面側から見た図である。
図9に示すように、基板10の第2面には、IC20が設けられる。IC20の上方には、測定対象物T1を測定時に通過させるための通過穴14が設けられる。第4実施形態の変位センサ4は、例えば、円盤状の測定対象物T1を測定の対象とする。測定対象物T1の幅は通過穴14の幅よりも狭く、測定対象物T1の高さは通過穴14の高さよりも低く、通過穴14を通過可能である。
【0064】
通過穴14の内側面には、コイル22が実装される。コイル22は、上記の共通事項において説明したものである。コイル22は通過穴14の内側面に沿って、1ターン未満で配置される。
【0065】
第4実施形態の変位センサ4は、上記第1実施形態及び第2~第7実施形態の共通事項で説明した作用効果を奏する。また、第4実施形態の変位センサ4では、コイル22がコイル実装部12に設けられた通過穴14の内側面に沿って配置されるので、基板10に対して、Z方向に離間する位置から測定対象物T1がZ方向に通過穴を通過するのを高い感度で検出することができる。
【0066】
また、コイル22が1ターン未満であることから、コイルサイズを大きくしてもインダクタンスを小さくすることができる。さらに、通過穴14を通過する測定対象物T1に対して非常に近い位置にコイル22を配置することができるので、大きな物体の通過を検知することができる。
【0067】
特に、通過穴14の内側面にコイル22を設ける場合には、基板10の第1面及び第2面の一方または両方において通過穴14に沿ってコイルを設ける場合よりも、測定対象物をコイル22に近づけることができる。したがって、通過穴14の内側面にコイル22を設ける場合には、基板10の第1面及び第2面の一方または両方において通過穴14に沿ってコイルを設ける場合よりも、高い感度で測定対象物の変位を測定することができる。
【0068】
図10は、第4実施形態の変位センサ4の検出結果の一例を示すグラフである。
図10の横軸は測定対象物T1を通過穴14に通過させた場合の時間を示し、縦軸はそのときのセンサ出力を示す。
図10に示すように、時刻t11において、測定対象物T1が通過穴14を通過し始めた段階では、センサ出力が小さく、時刻t12まではセンサ出力が漸増する。時刻t12の後、測定対象物T1の径が大きくなる段階で、センサ出力が大きく増加するようになる。その後、時刻t13において、測定対象物T1が最大径となった後、センサ出力は大きく減少し、時刻t14において、測定対象物T1の径が小さくなった後、センサ出力は減少を続けるが、その減少量は小さくなり、センサ出力は漸減を続ける。その後、時刻t15において測定対象物の測定が終了する。このようなセンサ出力の時間変化により、通過した測定対象物T1の形状や径などを測定することができる。
【0069】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の変位センサ5について説明する。
図11Aは、第5実施形態の変位センサ5を第2面側から見た図、
図11Bは、第5実施形態の変位センサ5を側方から見た図である。
図11Aに示すように、変位センサ5において、基板10には、一辺が切り欠かれた半円状の切欠き部15が形成されている。切欠き部15は、基板10の一部が切り欠かれた状態に形成された部分である。基板10の一辺を切り欠くことにより、基板10は、その厚さ方向の全長分にわたって切り欠かれることになる。第5実施形態の変位センサ5は、例えば、棒状の測定対象物を測定の対象とする。測定対象物の半径は、切欠き部15の径よりも短い。なお、
図11A、
図11Bにおいては、測定対象物として、長手方向に径が変動する問題個所を有する棒状をなす測定対象物T2が描かれている。
【0070】
基板10には、コイル22が実装される。コイル22は、上記の共通事項において説明したものである。コイル22は、切欠き部15の内側面に1ターン未満で配置される。
図11A、
図11Bに示す例では、コイル22は、基板10の第1面及び第2面の端部にそれぞれ配置された水平部及び水平部を接続する鉛直部を備え、断面コ字形状をなす。コイル22は、他の態様で切欠き部15の内側面に配置されてもよいし、基板10の第1面及び第2面の一方または両方において、切欠き部15に沿って配置されてもよい。コイル22は、切欠き部15の全面に渡って形成される。
【0071】
第5実施形態の変位センサ5は、上記第1実施形態及び第2~第7実施形態の共通事項で説明した作用効果を奏する。また、第5実施形態の変位センサ5では、基板10の一辺に切欠き部15が形成され、切欠き部15の内側面にコイル22が配置されている。このため、基板10の上方向(Y方向)から測定対象物T2をコイル22に近づけられるようになるので、変位センサ5を設置場所の制限を少なくすることができ、変位センサ5の設置を容易にすることができる。また、基板10の一辺側に開放された位置にコイル22が設けられるので、大きな測定対象物T2の測定を容易なものとすることができる。
【0072】
図12は、第5実施形態の変位センサ5の検出結果の一例を示すグラフである。
図12の横軸は測定対象物T2がX方向に切欠き部15を通過させた場合の時間を示し、縦軸はそのときのセンサ出力を示す。この例において、測定対象物T2は、本来、円筒形状の製造されるべきところを、第1問題個所ML1において径が太くなる問題が生じており、第2問題個所ML2において径が細くなる問題が生じているものとする。
【0073】
図12に示すように、時刻t21において、測定対象物T2が切欠き部15を通過し始めてからしばらくの間は、センサ出力が漸増する。時刻t22~時刻t23の間で、
図11Bに示す測定対象物T2の第1問題個所ML1が変位センサ5の切欠き部15を通過するときには、センサ出力が大きく増加し、その後センサ出力が減少に転じる。さらに、時刻t23~時刻t24の間で測定対象物T2の第2問題個所ML2が変位センサ5の切欠き部15を通過するときには、センサ出力が減少し、減少した後のセンサ出力が増加に転じる。時刻t24において測定対象物T2の第2問題個所ML2が変位センサ5の切欠き部15を通過した後は、センサ出力が漸増し、時刻t25で測定対象物T2の全体が切欠き部15を通過する。このように、変位センサ5では、センサ出力の増減により、測定対象物T2に生じた問題及びその問題個所の特定や問題となる形状の特定を行うことができる。
【0074】
なお、第5実施形態の変位センサ5では、切欠き部15は、半円形をなすが、他の形状であってもよい。例えば、切欠き部15は、2本の直線を鋭角、直角、または鈍角を挟んでつないだV字形状であってもよいし、3本の直線を鋭角、直角、または鈍角を挟んだ繋いだコ字形状であってもよい。また、コイル22は、切欠き部15の全面に渡って形成されるが、切欠き部15の一部に形成されてもよい。
【0075】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態の変位センサ6について説明する。
図13は、第6実施形態の変位センサ6を第2面側から見た図である。
図13に示すように、変位センサ6において、基板10の一辺には、円形の一部が切り取られた形状の穴部16が設けられる。穴部16は、中心点回りに180°を超える範囲まで延在する。第6実施形態の変位センサ6は、例えば、棒状の測定対象物を測定の対象とする。測定対象物T3の径は、穴部16の切り取られた部分の長さよりも短い。
【0076】
基板10に設けられるコイル22は、基板10の第2面において、穴部16に沿って1ターン未満で配置される。コイル22は、上記の共通事項において説明したものである。コイル22は、例えば、穴部16の内側面に1ターン未満で配置される。コイル22は、穴部16の全周に渡って形成される。コイル22は、穴部16の全面に渡らず、穴部16の一部を除いた範囲にわたって形成されていてもよい。
【0077】
第6実施形態の変位センサ6は、上記第1実施形態及び第2~第7実施形態の共通事項で説明した作用効果を奏する。また、第6実施形態の変位センサ6では、基板10の一辺に穴部16が形成され、穴部16の内側面にコイル22が配置され、穴部16の一部が切り取られた形状をしている。このため、測定対象物T3は、穴部16へZ方向から通す以外に、穴部16の一部が切り取られた箇所から穴部16へ通す事ができ、変位センサ6と測定対象物T3の設置を容易にすることができる。
【0078】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態の変位センサ7について説明する。
図14は、第7実施形態の変位センサ7を第2面側から見た図である。
図14に示すように、変位センサ7において、基板10は、第1基板17と第2基板18とを備える。第1基板17には、IC20などの電子部品が実装される。第2基板18は、第1基板17に組み合わせ可能とされている。
【0079】
第1基板17の一辺には、半円形の第1切欠き部31が設けられ、第2基板18の一辺には、第1切欠き部31と同一の大きさ及び形状の第2切欠き部32が設けられる。第2切欠き部32は、第1基板17に第2基板18を組み合わせた際に、第1切欠き部31と向き合い、第1切欠き部31と第2切欠き部32で円形の接続穴23が形成される位置に配置される。第7実施形態の変位センサ7は、例えば、棒状の測定対象物T4を測定の対象とする。測定対象物T4の径は、第1切欠き部31と第2切欠き部32により形成される円形の接続穴23の径よりも短い。
【0080】
基板10に設けられるコイル22は、第1切欠き部31及び第2切欠き部32に沿って、第1切欠き部31においてその一部が切断された状態で形成される。コイル22は、上記の共通事項において説明したものである。第1基板17に第2基板18が組み合わされることにより、コイル22は、例えば、接続穴23の内側面に1ターン未満で配置される。
【0081】
第7実施形態の変位センサ7は、上記第1実施形態及び第2~第7実施形態の共通事項で説明した作用効果を奏する。また、第7実施形態の変位センサ7では、第1基板17と第2基板18を取り外し可能とされており、第2基板18を第1基板17から取り外すことにより、接続穴23が開放される。このため、測定対象物T4を容易に接続穴23の内側に配置することができる。
【0082】
なお、第2基板18として、第2切欠き部32の形状および大きさの異なる複数の第2基板18を第1基板17に組み合わせられるようにしてもよい。この場合、測定対象物T4の大きさに合わせて第2基板18を選択することにより、種々の大きさの測定対象物T4についての変位を検出できるようすることができる。また、第1基板17に第2基板18を組み合わせる際に、キャリブレーション(メモリの調整)が必要になることがあるため、キャリブレーションの対策を施してもよい。また、形状及び大きさの異なる第2基板18を第1基板17に組み合わせられるようにしてもよい。
【0083】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態の変位センサシステム100について説明する。
図15Aは、第8実施形態の変位センサシステム100の分解斜視図であり、
図15Bは、第8実施形態の変位センサシステム100を側方から見た図である。
図15Aに示すように、変位センサシステム100は、第1変位センサ70及び第2変位センサ80を備える。第1変位センサ70は、第1基板71及び第1コイル72を備え、第2変位センサ80は、第2基板81及び第2コイル82を備える。第1基板71と第2基板81は、同一の形状および大きさである。
【0084】
第1基板71と第2基板81は、互いに向き合って配置される。第1基板71の第1面(第2基板81と向き合う側の面)には、第1コイル72が、円形の一部が切り取られた形状で、1ターン未満で形成される。第2基板81の第1面(第1基板71と向き合う側の面)には、第2コイル82が、円形の一部が切り取られた形状で、1ターン未満で形成される。第1基板71と第2基板81とは、第1コイル72と第2コイル82とが向き合う位置に配置される。第1基板71の第2面には第1IC73などの電子部品が実装され、第2基板81の第2面には第2IC83などの電子部品が実装される。第1基板71及び第2基板81において、第1IC73及び第2IC83は、リード線を介して第1コイル72及び第2コイル82にそれぞれ接続される。第1IC73及び第2IC83は、第1実施形態のIC20と同様の構成を有し、それぞれが周波数検出部30で検出した周波数を制御装置40に出力する。第1IC73には、例えば第1インバータ及び第1周波数検出部が含まれ、第2IC83には、例えば第2インバータ及び第2周波数検出部が含まれる。
【0085】
第8実施形態の変位センサシステム100は、例えば、板状の測定対象物T5の変位を測定する。変位センサシステム100は、第1基板71と第2基板81の間に測定対象物T5を配置し、第1基板71及び第2基板81のそれぞれに設けられた第1IC73及び第2IC83により検出される発振周波数を制御装置40に出力する。制御装置40は、第1IC73及び第2IC83のそれぞれが有する周波数検出部30から出力された発振周波数を示す値を、測定対象物T5と第1コイル72との間の距離に換算して、測定対象物T5の変位を検出する。制御装置40は測定部の一例である。
【0086】
第8実施形態の変位センサシステム100は、上記第1実施形態で説明した変位センサ1と同等の作用効果を奏する。また、第8実施形態の変位センサシステム100では、第1基板71と第2基板81のそれぞれに第1コイル72及び第2コイル82が設けられ、第1IC73及び第2IC83により出力される発振周波数に基づいて測定対象物T5に変位を検出する。このため、例えば、温度変化によって測定誤差が生じる場合でも、第1IC73及び第2IC83が温度変化の誤差を受けて同様の測定誤差が発生する。よって、各ICにより得られる測定結果を演算すること、例えば減算することで、測定誤差が相殺され、その結果、測定対象物の変位を高い感度で検出することができる。
【0087】
また、第1コイル72及び第2コイル82の感度が高くなることから、測定対象物T5の変位を検出できる第1基板71と第2基板81の離間距離を広くすることができる。
【0088】
図16Aは、第10実施形態の変位センサシステム100における第1IC73及び第2IC83によるセンサ出力と、第1コイル72と測定対象物T5との距離の関係を示すグラフであり、
図16Bは、変位センサシステム100における第1IC73及び第2IC83によるセンサ出力の差と、第1コイル72と測定対象物T5との距離の関係を示すグラフである。例えば、
図16Aに示すように、第1出力グラフP41で示す第1IC73によるセンサ出力(以下、「第1センサ出力」という)と、第2出力グラフP42で示す第2IC83によるセンサ出力(以下、「第2センサ出力」という)が得られたとする。このとき、変位センサシステム100による出力が温度の影響を受けた誤差を含むとする。この場合、温度の影響がない場合の第1IC73によるセンサ出力(以下、「第1センサ実出力」)が第1実出力グラフP51で表され、温度の影響がない場合の第2IC83によるセンサ出力(以下、「第2センサ実出力」)が第2実出力グラフP52で表されるとする。
【0089】
ここで、第1センサ出力と第2センサ出力の差分に基づいて、
図16Bに示す第1コイル72と測定対象物T5との距離を示す距離グラフP60が得られたとする。第1センサ出力及び第2センサ出力は、いずれも温度の影響に基づく誤差を含む。したがって、第1センサと第2センサ出力の差分は、第1センサ実出力と第2センサ実出力の差分とほぼ同等のものとなる。第1センサと第2センサ出力の差分に基づいて、第1コイル72と測定対象物T5との距離を求めることにより、測定時に温度等の影響があった場合でも、測定対象物の変位を高い感度で検出することができる。
【0090】
なお、上記の各実施形態においては、コイル22等の配線幅が太くなるほど、感度が高くなる。このため、コイル22等の配線幅を広くするようにしてもよい。また、リード配線等が短いほど感度が高くなる。このため、リード配線等を短くするようにしてもよい。また、リード配線等は、基板の第1面や第2面のみならず、基板側面に配線されてもよいし、これらの面にまたがって配線されてもよい。また、基板は、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板などの曲げることができる基板でもよい。この場合基板を曲げた後にコイルを取り付けてもよいし、コイルを取り付けた後に基板を曲げてもよい。また、リード配線等がノイズを拾わないように、にシールド材を設けてもよい。また、コイルは、プリント基板に用いられる材料で生成してよく、例えば、銅をエッチングするなどしてパターンコイルをとして生成してもよい。また、スルーホールにコンデンサを取り付けるなどして、周波数を調整してもよい。また、第1実施形態等に示すIC20の他に、他のICや入力コネクタ等を設けてもよい。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1~7…変位センサ、10…基板、11…部品配置部、12…コイル実装部、14…通過穴、15…切欠き部、16…穴部、17,71…第1基板、18,81…第2基板、22…コイル、31…第1切欠き部、32…第2切欠き部、70…第1変位センサ、72…第1コイル、73…第1IC、80…第2変位センサ、82…第2コイル、83…第2IC、T,T1~T5…測定対象物