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特許7168183エネルギー診断の支援システム、エネルギー診断の支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】エネルギー診断の支援システム、エネルギー診断の支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20221101BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20221101BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q50/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021187081
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2021-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】710007630
【氏名又は名称】株式会社コスモウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 浩幸
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238801(JP,A)
【文献】特開2020-042472(JP,A)
【文献】特開2005-332165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ入力に基づいて、省エネルギー対策を選択するように構成された対策設定部と、
前記対策設定部による選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するように構成された効果算出部と、
前記効果算出部による算出結果を示す画面をモニタ上に表示させるように構成された出力部と、を備え、
前記エネルギー使用量の予測値は、電力を含む複数種のエネルギーそれぞれの予測値であり、
前記対策設定部は、
契約電力の削減に関する第1ユーザ入力を受けた場合に、前記第1ユーザ入力に基づいて、前記契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得して、前記契約電力の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されており、
使用量に応じて料金が計算される電力の従量使用量の削減に関する第2ユーザ入力を受けた場合に、前記第2ユーザ入力に基づいて、前記従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得して、前記従量使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されており、
前記エネルギー使用量の削減率に関する第3ユーザ入力を受けた場合に、前記第3ユーザ入力に基づいて、前記エネルギー使用量の削減率の入力値を取得して、前記エネルギー使用量の削減率の入力値に応じた前記エネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている、エネルギー診断の支援システム。
【請求項2】
ユーザ入力に基づいて、前記契約電力の現在の設定値を取得するように構成されたユーザ入力取得部を更に備え、
前記ユーザ入力取得部は、施設の業種及び延床面積の組合せと前記契約電力とが対応付けられた契約電力データベースを参照して、ユーザによる施設の業種及び延床面積の選択結果に応じた前記契約電力の値を含む入力画面を前記モニタ上に表示させるように構成されており、
前記効果算出部は、前記契約電力の削減が省エネルギー対策として選択された場合に、前記契約電力の削減量又は削減率の入力値、及び、前記契約電力の現在の設定値に基づいて、前記削減効果を算出するように構成されている、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記ユーザ入力取得部は、基本料金単価の設定値、及び、従量料金単価の設定値を取得するように構成されており、
前記ユーザ入力取得部は、電力会社及び契約電力種別と、前記基本料金単価及び前記従量料金単価と、が対応付けられた料金データベースを参照して、ユーザによる電力会社及び契約電力種別の選択結果に応じた前記基本料金単価の値及び前記従量料金単価の値を含む前記入力画面を前記モニタ上に表示させるように構成されており、
前記効果算出部は、前記契約電力の削減が省エネルギー対策として選択された場合に、前記契約電力の削減量又は削減率の入力値、前記基本料金単価の設定値、及び、前記契約電力の現在の設定値に基づいて、前記削減効果を算出するように構成されており、
前記効果算出部は、前記従量使用量の削減が省エネルギー対策として選択された場合に、前記従量使用量の削減量又は削減率の入力値、及び、前記従量料金単価の設定値に基づいて、前記削減効果を算出するように構成されている、請求項2に記載の支援システム。
【請求項4】
施設の業種と、施設でのエネルギーの消費先を分類した複数の消費区分それぞれにおけるエネルギーの使用割合と、を対応付けた消費区分データベースを記憶するように構成された記憶部を更に備え、
前記対策設定部は、
消費電力の削減に関する第4ユーザ入力を受けた場合に、前記第4ユーザ入力に基づいて、前記診断対象の施設に既に設置されている現行機器の消費電力、前記現行機器の台数、前記現行機器の使用時間、及び導入予定の機器の消費電力の入力値を取得して、消費電力の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されており、
前記エネルギー使用量の削減量に関する第5ユーザ入力を受けた場合に、前記第5ユーザ入力に基づいて、前記エネルギー使用量の削減量の入力値を取得して、前記エネルギー使用量の削減量の入力値に応じた前記エネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されており、
いずれかの消費区分でのエネルギーの削減に関する第6ユーザ入力を受けた場合に、前記第6ユーザ入力に基づいて、前記消費区分の入力値と当該消費区分でのエネルギーの削減率の入力値とを取得して、前記消費区分でのエネルギーの削減を省エネルギー対策として選択するように構成されており、
節電率に関する第7ユーザ入力を受けた場合に、前記第7ユーザ入力に基づいて、前記診断対象の施設での節電率の入力値を取得して、節電によるエネルギーの削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項5】
前記対策設定部は、節電金額に関する第8ユーザ入力を受けた場合に、前記第8ユーザ入力に基づいて、前記診断対象の施設での節電による電気料金の削減量の入力値を取得して、節電による電気料金の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている、請求項4に記載の支援システム。
【請求項6】
前記対策設定部は、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した画面への第9ユーザ入力を受けた場合に、前記第9ユーザ入力に基づいて、前記候補対策リストの中のいずれかの導入設備を省エネルギー対策として選択するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項7】
施設の業種と、施設でのエネルギーの消費先を分類した複数の消費区分それぞれにおけるエネルギーの使用割合と、を対応付けた消費区分データベースを記憶するように構成された記憶部を更に備え、
前記効果算出部は、前記候補対策リストの中のいずれかの導入設備が省エネルギー対策として選択された場合に、前記対策設定部により選択された前記導入設備に関して予め設定された消費区分及びエネルギーの削減率と、前記消費区分データベースを参照して得られる、前記診断対象の施設での前記使用割合と、に基づいて、前記削減効果を算出するように構成されている、請求項6に記載の支援システム。
【請求項8】
支援システムの対策設定部が、ユーザ入力に基づいて、省エネルギー対策を選択する第1ステップと、
前記支援システムの効果算出部が、省エネルギー対策の選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出する第2ステップと、
前記支援システムの出力部が、前記削減効果の算出結果を示す画面をモニタ上に表示させる第3ステップと、を含み、
前記エネルギー使用量の予測値は、電力を含む複数種のエネルギーそれぞれの予測値であり、
前記第1ステップでは、
前記対策設定部が、契約電力の削減に関する第1ユーザ入力を受けた場合に、前記第1ユーザ入力に基づいて、前記契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得して、前記契約電力の削減を省エネルギー対策として選択し、
前記対策設定部が、使用量に応じて料金が計算される電力の従量使用量の削減に関する第2ユーザ入力を受けた場合に、前記第2ユーザ入力に基づいて、前記従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得して、前記従量使用量の削減を省エネルギー対策として選択し、
前記対策設定部が、前記エネルギー使用量の削減率に関する第3ユーザ入力を受けた場合に、前記第3ユーザ入力に基づいて、前記エネルギー使用量の削減率の入力値を取得して、前記エネルギー使用量の削減率の入力値に応じた前記エネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択する、エネルギー診断の支援方法。
【請求項9】
ユーザ入力に基づいて、省エネルギー対策を選択する第1ステップと、
省エネルギー対策の選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出する第2ステップと、
前記削減効果の算出結果を示す画面をモニタ上に表示させる第3ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記エネルギー使用量の予測値は、電力を含む複数種のエネルギーそれぞれの予測値であり、
前記第1ステップでは、
契約電力の削減に関する第1ユーザ入力を受けた場合に、前記第1ユーザ入力に基づいて、前記契約電力の削減量又は削減率の入力値が取得されて、前記契約電力の削減が省エネルギー対策として選択され、
使用量に応じて料金が計算される電力の従量使用量の削減に関する第2ユーザ入力を受けた場合に、前記第2ユーザ入力に基づいて、前記従量使用量の削減量又は削減率の入力値が取得されて、前記従量使用量の削減が省エネルギー対策として選択され、
前記エネルギー使用量の削減率に関する第3ユーザ入力を受けた場合に、前記第3ユーザ入力に基づいて、前記エネルギー使用量の削減率の入力値が取得されて、前記エネルギー使用量の削減率の入力値に応じた前記エネルギー使用量の削減が省エネルギー対策として選択される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー診断の支援システム、エネルギー診断の支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タブレットを使用した総合エネルギー診断ツールが開示されている。特許文献2には、モバイル端末とサーバとを備えた省エネルギー診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-238801号公報
【文献】特開2020-42472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ユーザの利便性の向上に有用なエネルギー診断の支援システム、エネルギー診断の支援方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るエネルギー診断の支援システムは、記憶部と、予測部と、対策設定部と、効果算出部と、出力部と、を備える。記憶部は、施設の業種及び延床面積の組合せと、所定期間でのエネルギー使用量の予測値と、を対応付けた予測データベースを記憶するように構成されている。予測部は、診断対象の施設における業種及び延床面積に関するユーザ入力に基づいて、予測データベースを参照して、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値を取得するように構成されている。対策設定部は、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した画像へのユーザ入力に基づいて、候補対策リストの中のいずれかの導入設備を省エネルギー対策として選択するように構成されている。効果算出部は、対策設定部による選択結果に基づいて、予測部により取得されたエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するように構成されている。出力部は、効果算出部による算出結果を示す画像をモニタ上に表示させるように構成されている。
【0006】
本開示の一側面に係るエネルギー診断の支援システムは、対策設定部と、効果算出部と出力部と、を備える。対策設定部は、ユーザ入力に基づいて、省エネルギー対策を選択するように構成されている。効果算出部は、対策設定部による選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するように構成されている。出力部は、効果算出部による算出結果を示す画像をモニタ上に表示させるように構成されている。対策設定部は、契約電力の削減に関する第1ユーザ入力を受けた場合に、第1ユーザ入力に基づいて、契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得して、契約電力の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部は、使用量に応じて料金が計算される電力の従量使用量の削減に関する第2ユーザ入力を受けた場合に、第2ユーザ入力に基づいて、従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得して、従量使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部は、エネルギー使用量の削減率に関する第3ユーザ入力を受けた場合に、第3ユーザ入力に基づいて、エネルギー使用量の削減率の入力値を取得して、削減率の入力値に応じたエネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。
【0007】
本開示の一側面に係るエネルギー診断の支援方法は、診断対象の施設における業種及び延床面積に関するユーザ入力に基づいて、施設の業種及び延床面積の組合せと、所定期間でのエネルギー使用量の予測値と、が対応付けられた予測データベースを参照して、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値を取得するステップを含む。上記支援方法は、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した画像へのユーザ入力に基づいて、候補対策リストの中のいずれかの導入設備を省エネルギー対策として選択するステップと、省エネルギー対策の選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するステップと、削減効果の算出結果を示す画像をモニタ上に表示させるステップと、を更に含む。
【0008】
本開示の一側面に係るプログラムは、診断対象の施設における業種及び延床面積に関するユーザ入力に基づいて、施設の業種及び延床面積の組合せと、所定期間でのエネルギー使用量の予測値と、が対応付けられた予測データベースを参照して、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値を取得するステップと、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した画像へのユーザ入力に基づいて、候補対策リストの中のいずれかの導入設備を省エネルギー対策として選択するステップと、省エネルギー対策の選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するステップと、削減効果の算出結果を示す画像をモニタ上に表示させるステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ユーザの利便性の向上に有用なエネルギー診断の支援システム、エネルギー診断の支援方法、及びプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、エネルギー診断の支援システムの機能構成の一例を示す図である。
図2図2は、予測データベースで保持される情報の一例を示す図である。
図3図3は、消費区分データベースで保持される情報の一例を示す図である。
図4図4は、支援システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図5図5は、支援システムによる処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図6図6は、ユーザ端末における表示画像の一例を示す図である。
図7図7は、ユーザ端末における表示画像の一例を示す図である。
図8図8は、ユーザ端末における表示画像の一例を示す図である。
図9図9は、ユーザ端末における表示画像の一例を示す図である。
図10図10は、ユーザ端末における表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[エネルギー診断の支援システム]
図1には、一実施形態に係るエネルギー診断の支援システムが示されている。図1に示されるエネルギー診断の支援システム10は、工場及びビル等の施設でのエネルギー管理に関する診断を支援するためのシステムである。支援システム10は、コンピュータ(例えば、サーバ)によって構成されてもよい。エネルギー診断を行う対象の施設(以下、「診断対象の施設」という。)は、例えば、一般家庭以外の種々の施設であり、法人、地方公共団体、組合、又は社団等が利用及び管理する施設である。診断対象の施設の一例として、工場及びビルに加えて、事務所、病院、デパート、スーパー、ホテル、パチンコ店、飲食店、リネンサプライ事業所、庁舎、学校、集会所、福祉施設、及びマンションの共用施設等が挙げられる。以下、これらの施設の分類を「業種」と称し、業種(事業の種類)には、非営利の経済活動を行う事業も含まれる。
【0013】
診断対象の施設でのエネルギー診断には、例えば、現状の各種エネルギーの使用量を把握すること、当該施設において取り(採り)得る省エネルギー対策を検討すること、及び、検討している省エネルギー対策による効果を算出すること、が含まれる。以下、「省エネルギー」のことを単に「省エネ」と称する場合がある。診断を行う対象のエネルギーは、施設で消費されているエネルギーであり、1種類のエネルギーであってもよく、複数種のエネルギーであってもよい。診断対象のエネルギーとしては、例えば、電力、都市ガス、LPG(液化石油ガス)、灯油、重油、冷温水、蒸気、及び水道が挙げられる。
【0014】
支援システム10を利用する機会の一例としては、施設のエネルギー管理に関してコンサルティングを行うエネルギー管理士等が、コンサルティング業務を実行する場合、施設の管理者等が省エネ対策を検討する場合、及び、省エネを図ることが可能な機器を販売する販売員が機器の営業を行う場合が挙げられる。エネルギー管理士等のユーザは、診断対象の施設に関するエネルギー診断を実行する際に、支援システム10を補助ツールとして利用してもよい。
【0015】
支援システム10は、ユーザからの要求に応じて、エネルギー診断を支援するための処理を実行し、処理結果をユーザに提供する。支援システム10へのユーザからの要求の入力、及び、支援システム10からの処理結果の提供は、ユーザが使用するユーザ端末2によって行われる。ユーザ端末2は、例えば、パーソナルコンピュータ、又はタブレット端末等であり、ユーザが情報を入力可能な端末装置である。ユーザ端末2は、ユーザへ画像情報を提示するモニタ(例えば、液晶ディスプレイ)を有する。ユーザ端末2は、支援システム10との間で通信ネットワークを介して通信可能な端末であってもよい。
【0016】
支援システム10は、ユーザ端末2から閲覧及びアクセスが可能なWebページ等をユーザ(より詳細には、ユーザが操作するユーザ端末2)に対して提示することで、ユーザ端末2との間で情報の受け渡しを行ってもよい。支援システム10は、Webページに代えて、支援システム10と連携するアプリケーションが準備されたうえでユーザ端末2に対して情報を提供するシステムであってもよい。この場合、支援システム10は、アプリケーションのインタフェースを介して、ユーザ端末2に対して必要な情報を提示してもよく、ユーザ端末2において入力される情報等を取得してもよい。
【0017】
ここで、支援システム10による処理フローの一例について、その概要を説明する。支援システム10による処理フローは、以下の3つのステップを含んでもよい。最初に、ユーザが、診断対象の施設に関する情報を支援システム10に入力することで、支援システム10は、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設における所定期間(例えば、1年間)での各種エネルギーの使用量を予測する。次に、ユーザが、検討中の省エネ対策に関する情報を支援システム10に入力することで、支援システム10は、省エネ対策を設定する。そして、支援システム10は、各種エネルギーの使用量の予測値と、入力された省エネ対策とに基づいて、省エネ対策の効果(例えば、エネルギーの削減の程度、及び、費用削減の程度)をユーザに提示する。以下、支援システム10の詳細について説明する。
【0018】
支援システム10は、図1に示されるように、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、ユーザ入力取得部12と、記憶部30と、予測部14と、対策設定部16と、効果算出部18と、出力部22と、を有する。これらの機能モジュールが実行する処理は、支援システム10が実行する処理に相当する。
【0019】
ユーザ入力取得部12は、エネルギー診断の支援に必要なユーザ(ユーザ端末2)からの入力情報を取得するように構成されている。ユーザ入力取得部12は、ユーザからの入力情報を得るためのインタフェース用の画像をユーザ端末2のモニタ上に表示させてもよく、インタフェース用の画像へのユーザ入力に基づいて、ユーザからの入力情報を取得してもよい。
【0020】
記憶部30は、予測データベース32と、消費区分データベース34とを記憶するように構成されている。図2には、予測データベース32で保持される情報の例が示されている。予測データベース32は、施設の業種及び延床面積の組合せと、所定期間でのエネルギー使用量の予測値と、を対応付けたデータベースである。これらの組合せと予測値とは、業種及び延床面積の種々の組合せでの過去の実績値に基づいて、予め対応付けられていてもよい。所定期間は、例えば、1月、半年、又は1年である。エネルギー使用量の予測値は、複数種のエネルギーそれぞれの予測値であってもよい。
【0021】
施設の業種によっては、使用することが想定されないエネルギーがあり、そのエネルギーの使用量の予測値はゼロに設定されている。施設の延床面積は、ある範囲ごとに区分されてもよく、その範囲ごとにエネルギー使用量の予測値が設定されてもよい。一般的には、施設の延床面積が大きくなると、エネルギー使用量も増加する傾向がある。予測データベース32が準備されることで、診断対象の施設の業種及び延床面積から、その施設でのエネルギー使用量を簡易に予測することができる。すなわち、実際のエネルギー使用量が把握できていない、又は、それを把握することが煩雑な場合であっても、現状のエネルギー使用量の概算を簡易に把握することができる。
【0022】
図3には、消費区分データベース34で保持される情報の例が示されている。消費区分データベース34は、施設の業種と、施設でのエネルギーの消費先を分類した複数の消費区分それぞれにおけるエネルギーの使用割合(の予測)と、を対応付けたデータベースである。消費区分ごとのエネルギーの使用量の割合は、詳細は後述するが、省エネ対策の効果を算出する際に利用される場合がある。複数の消費区分、及び複数の消費区分それぞれにおけるエネルギーの使用割合[%]は、種々の業種の施設での過去の実績値に基づいて予め定められてもよい。エネルギーの使用割合は、業種が同じであれば、延床面積によらずに一定の割合となるように設定されていてもよい。各消費区分でのエネルギーの使用割合は、当該施設において使用される全ての種類のエネルギー(エネルギー全体)を基準に定められてもよい。
【0023】
施設の業種によっては、消費(使用)することが想定されない消費区分があり、その消費区分の割合は0%に設定されている。消費区分の例としては、冷却水ポンプ等の「補機動力」、ヒートポンプ又はボイラ等の「熱源本体」、冷温水二次ポンプ等の「水搬送」、空調機等の「空気搬送」、照明器具等の「照明」、事務機器等の「コンセント」、電気温水器等の「熱源本体」、駐車場ファン等の「換気」、揚水ポンプ等の「給排水」、エレベータ等の「昇降機」、及び、店舗動力等の「その他」が挙げられる。
【0024】
予測部14は、診断対象の施設における業種及び延床面積に関するユーザ入力に基づいて、予測データベース32を参照して、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値を取得するように構成されている。例えば、ユーザ端末2において、ユーザが、診断対象の施設の業種、及び、その施設の延床面積を選択可能になっている。予測部14は、ユーザによる選択結果に応じて、予測データベース32から、診断対象の施設での各種エネルギーの所定期間(例えば、1年間)での使用量の予測値を取得する。
【0025】
対策設定部16は、ユーザ入力に基づいて省エネルギー対策を設定するように構成されている。具体的には、対策設定部16は、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した画像へのユーザ入力に基づいて、候補対策リストの中のいずれかの設備(機器)を省エネルギー対策として選択する。設備の「導入」は、その設備が設置されていない施設において新しく設備を設置することに加えて、既存の設備を新しいもの(最新の設備、又は、高性能な設備)に更新することも含む。導入候補の設備の一覧は、例えば、省エネ対策の効果、及び補助金の有無等に基づいて予め定められている。導入候補の設備の一覧は、業種に関係なく、一律に定められていてもよい。
【0026】
候補対策リストでは、少なくとも2種類の導入候補の設備が定められている。予め定められる導入候補の設備の具体例としては、空調機、ヒートポンプ、給湯器、蒸気ボイラ、コジェネレーション(熱電併給)、工業炉、変圧器、冷凍冷蔵設備、モータ、生産設備、LED照明、コンプレッサ、節水設備、吸収式冷温水機、氷蓄熱式冷水装置、電子ブレーカ、自然冷媒冷凍設備、太陽光発電システム、太陽熱給湯システム、及びモータをインバータ制御するための設備が挙げられる。候補対策リストには、設備導入以外の省エネ対策が含まれていてもよい。候補対策リストには、電力会社の切り替え、及び遮熱断熱塗装の導入等が含まれていてもよい。
【0027】
エネルギー管理の診断を行う際には、上記の導入候補の設備を導入すること以外の様々な省エネ対策が考えられる。種々の省エネ対策を講じた際の効果を把握することができるように、支援システム10では、ユーザ入力に応じた入力値を使用して効果を算出する複数の計算ロジックが、省エネ対策として準備されている。支援システム10では、ユーザが、複数の計算ロジックの中から、採用し得る対策又は採用を検討している対策に応じた計算ロジックを指定可能となっている。対策設定部16は、ユーザによって指定された計算ロジックを省エネ対策として選択するように構成されている。計算ロジックの詳細については後述する。
【0028】
効果算出部18は、対策設定部16による選択結果に基づいて、予測部14により取得されたエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するように構成されている。効果算出部18は、上記候補対策リストの中から導入設備が省エネ対策として選択された場合には、その導入設備に対して定められた計算ロジック及び設定値に基づいて、エネルギーの削減効果を算出してもよい。効果算出部18は、いずれかの計算ロジックが省エネ対策として選択された場合には、その計算ロジック及びユーザからの入力値に基づいて、エネルギーの削減効果を算出してもよい。
【0029】
効果算出部18は、各種エネルギーの削減の程度、全種類のエネルギーを含むエネルギー全体での削減の程度、エネルギーの削減に伴う費用の削減額、及び、投資対効果から選択される1つ以上を削減効果として算出してもよい。エネルギーの削減の程度は、エネルギーの削減率であってもよく、エネルギーの削減量であってもよい。費用対効果は、省エネ対策に要する導入費用が回収可能な期間であってもよい。出力部22は、効果算出部18による算出結果を示す画像をユーザ端末2のモニタ上に表示させるように構成されている。
【0030】
図4には、支援システム10に用いられるコンピュータ110のハードウェア構成の一例が示されている。コンピュータ110は、制御回路100を有してもよい。一例では、制御回路100は、1つ又は複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105と、を有する。プロセッサ101は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行する。ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、又は取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを記憶する。
【0031】
メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、又はプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、個々の機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、キーボード、マウス、モニタ、又はタッチパネル等の入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0032】
[エネルギー診断の支援方法]
続いて、図5図10を参照しながら、支援システム10によるエネルギー診断の支援方法について説明する。図5は、エネルギー診断の支援方法において実行される一連の処理の例を示すシーケンス図である。
【0033】
(エネルギー使用量の予測)
ユーザは、エネルギー使用量の予測値を取得する際に、ステップS11を実行する。ステップS11では、ユーザが、ユーザ端末2を操作することで、支援システム10に対してエネルギー使用量の設定開始を要求する。支援システム10は、ステップS11の要求を受けると、ステップS12を実行する。ステップS12では、例えば、支援システム10のユーザ入力取得部12が、ユーザが情報を入力するための入力画像をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。
【0034】
図6には、ユーザ端末2においてモニタ上に表示される表示画像50が示されている。表示画像50は、エネルギー使用量の設定に対応したタブ52を含む。ユーザが、タブ52をクリックすることにより、上記ステップS11が実行される。タブ52がクリックされると、あるいは、初期画面において、ユーザ入力取得部12は、エネルギー使用量の設定を行うための入力画像62をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。
【0035】
ユーザは、入力画像62が表示された後に、ステップS13を実行する。ステップS13では、ユーザが、ユーザ端末2を介した入力画像62への入力によって、エネルギー診断を行う診断対象の施設の業種、及び、診断対象の施設の延床面積を指定する。ステップS13を実行する時点で、ユーザは、診断対象の施設の業種及び延床面積を把握している。入力画像62は、基本情報を入力する際に選択されるタブ64aと、電力契約に関する情報を入力する際に選択されるタブ64bと、を含んでもよい。
【0036】
入力画像62では、タブ64aが選択されているときには、基本情報を入力するための入力画像66が表示される。入力画像66において、業種及び延床面積の選択候補が、プルダウン(ドロップダウン)方式で表示されてもよい。プルダウン方式で表示される選択の候補は、予測データベース32に登録されている情報に応じて定められてもよい。ユーザが、入力画像66において診断対象の施設の業種、及び延床面積を選んだ後に、登録ボタン63をクリックすることで、業種及び延床面積の指定(基本情報の設定)が完了する。
【0037】
ステップS13のユーザ入力があると、支援システム10は、ステップS14を実行する。ステップS14では、例えば、予測部14が、ステップS13でのユーザ入力に基づいて、予測データベース32を参照して、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値を取得する。一例では、予測部14は、ステップS13において指定された業種及び延床面積に対応付けられたエネルギーの使用量(例えば、1年間での各種エネルギーの使用量)を予測データベース32から取得する。
【0038】
次に、支援システム10は、ステップS15を実行する。ステップS15では、例えば、予測部14が、ステップS13でのユーザ入力に基づいて、消費区分データベース34を参照して、診断対象の施設でのエネルギーの消費先を分類分けした複数の消費区分でのエネルギーの使用割合を取得する。一例では、予測部14は、ステップS13において選択された業種に対応付けられた各消費区分での使用割合を消費区分データベース34から取得する。
【0039】
次に、支援システム10は、ステップS16を実行する。ステップS16では、例えば、ユーザ入力取得部12が、ステップS14,S15で取得した結果をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。図6に示されるエネルギー登録画像68は、ステップS14,S15で取得した結果を提示するための画像である。図6に示される例では、業種が「病院」であり、且つ、延床面積が「3000m以上4000m未満」である場合の各種エネルギーの1年間の使用量の予測値が取得及び表示されている。
【0040】
支援システム10は、エネルギーの使用量の予測値に加えて、その予測値に応じた費用(エネルギーの使用により発生する費用:光熱費)を演算し、ユーザ端末2のモニタ上に表示してもよい。支援システム10は、予め定められた条件に従って、各種エネルギーの光熱費を演算してもよく、ユーザ入力によって設定された条件に従って、少なくとも一部のエネルギーの光熱費を演算してもよい。
【0041】
図7に示されるエネルギー登録画像68では、図6に示される例とは異なるタブが選択されており、複数の消費区分それぞれでのエネルギーの使用割合が示されている。図7に示される例では、業種が「病院」である場合の消費区分ごとの使用割合が取得及び表示されている。
【0042】
支援システム10は、ユーザ入力に基づいて、電力契約に関する情報を設定可能であってもよい。ユーザ入力取得部12は、入力画像62において、タブ64bがユーザによって選択されると、電力契約に関する情報を入力するための入力画像67をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。入力画像67では、「電力会社」の選択、「契約電力種別」の選択、「契約電力」の入力、「基本料金単価」の入力、「従量料金単価」の入力、及び「力率」の入力が可能となっている。契約電力は、所定期間(例えば、過去1年間)に含まれる各月での最大需要電力のうちの最も大きい値に相当する。
【0043】
支援システム10は、施設の業種及び延床面積の組合せと、契約電力とが対応付けられた契約電力データベースを記憶していてもよい。支援システム10は、施設の業種及び延床面積の組合せの選択結果に応じて、契約電力データベースから得られる契約電力を入力画像67に表示させてもよい。支援システム10は、電力会社及び契約電力種別と、基本料金単価及び従量料金単価とが対応付けられた料金データベースを記憶していてもよい。支援システム10は、電力会社及び契約電力種別の選択結果に応じて、料金データベースから得られる料金単価を入力画像67に表示させてもよい。
【0044】
支援システム10では、データベースから自動取得することに加えて、エネルギー使用量と消費区分ごとの使用割合とをユーザが直接入力すること(手入力)が可能であってもよい。予測部14は、各種のエネルギーの使用量の予測値から、エネルギーの種類に応じた熱量換算係数を用いて、エネルギーごとに熱量[GJ]を算出してもよい。予測部14は、各種のエネルギーの熱量から、原油換算のための係数を用いて、エネルギーごとに原油換算量[kl]を算出してもよい。単位が異なる各種のエネルギーを熱量又は原油換算量に変換することで、単位を同じにして各種のエネルギーを取り扱う(評価する)ことができる。例えば、施設におけるエネルギー全体での使用量を評価することができる。
【0045】
(省エネ対策の設定)
ユーザは、省エネ対策の設定を行う際に、ステップS21を実行する。ステップS21では、ユーザが、ユーザ端末2を操作することで、支援システム10に対して省エネ対策の設定開始を要求する。支援システム10は、ステップS21の要求を受けると、ステップS22を実行する。ステップS22では、例えば、ユーザ入力取得部12が、省エネ対策に関してユーザが情報を入力するための入力画像をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。
【0046】
図8又は図9に示されるように、表示画像50は、省エネ対策に対応したタブ54を含む。ユーザが、タブ54をクリックすることにより、上記ステップS21が実行される。タブ54がクリックされると、ユーザ入力取得部12は、省エネ対策を行うための入力画像70をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。図8に示される入力画像70と、図9に示される入力画像70とでは、スクロール位置(現在の表示範囲)が異なっている。
【0047】
入力画像70では、省エネ対策の候補の一覧を示すリストが表示されている。そのリストには、導入(更新)の候補となる設備の一覧と、上述した計算ロジックによる対策の一覧とが含まれる。リストの横には、ユーザが省エネ対策を指定するための選択ボタン72が表示されており、候補設備等の導入に伴う導入費用が表示されている。リスト中の計算ロジックの位置の横には、計測ロジックにおける入力値を入力するためのウィンドウを表示させる入力ボタン74が表示されている(図9参照)。
【0048】
ユーザは、入力画像70が表示された後に、ステップS23を実行する。ステップS23では、ユーザが、ユーザ端末2を介した入力画像70への入力によって、検討している省エネ対策を指定する。対策設定部16は、ユーザの指定に応じて省エネ対策を選択(設定)する。検討している省エネ対策は、採用した場合の効果をユーザが知りたい対策である。例えば、図8に示される「ヒートポンプ導入」による施設全体でのエネルギーの削減効果を知りたい場合に、ユーザは、その「ヒートポンプ導入」を指定する。いずれかの計算ロジックによる施設全体でのエネルギーの削減効果を知りたい場合には、ユーザは、その計算ロジックを指定する。
【0049】
(省エネ診断)
ユーザは、省エネ診断の結果を算出させる際に、ステップS31を実行する。ステップS31では、ユーザが、ユーザ端末2を操作することで、支援システム10に対して省エネ診断の実行を要求する。支援システム10は、ステップS31の要求を受けると、ステップS32を実行する。ステップS32では、例えば、効果算出部18が、対策設定部16による選択結果に基づいて、予測部14により取得されたエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出する。
【0050】
ここで、対策設定部16による選択と効果算出部18による削減効果の算出とについて、種々の具体例を説明する。入力画像70のリスト中に表示されている導入候補の設備等が選択された場合の効果の算出は、計算ロジックが選択された場合と同様に実行されるので、最初に各計算ロジックについて説明する。以下では、診断対象の施設において、電力、LPG、重油、及び水道が、エネルギーとして使用される場合を例示する。
【0051】
電力の使用量ep[kWh]の原油換算量、LPGの使用量el[m]の原油換算量、重油の使用量[kl]の原油換算量、及び水道の使用量ew[m]の原油換算量それぞれを、Ep、El、Eh、及びEwと定義したときに、診断対象の施設におけるエネルギー全体での使用量Et[kl]は、下記の式(1)で算出される。
Et=Ep+El+Eh+Ew ・・・(1)
【0052】
電力の使用量に応じた費用(光熱費)、LPGの使用量に応じた費用、重油の使用量に応じた費用、及び水道の使用量に応じた費用それぞれを、up、ul、uh、及びuwと定義したときに、診断対象の施設におけるエネルギー全体での費用Ut[円]は、下記の式(2)で算出される。
Ut=up+ul+uh+uw ・・・(2)
【0053】
複数の計算ロジックは、契約電力の削減による計算、従量料金分の電力の削減による計算、及び、特定のエネルギーでの削減率による計算を含む。また、複数の計算ロジックは、消費電力の削減による計算、特定のエネルギーでの削減量による計算、特定の消費区分でのエネルギーの削減率による計算、節電率による計算、及び、電気料金の削減量による計算を含む。ユーザは、診断対象の施設において検討中の対策を取ることで、省エネの効果が得られそうな場合に、その得られる効果に応じて、複数の計算ロジックの中から適したものを選択する。
【0054】
例えば、ユーザが、何からの対策を採用することで契約電力を数%削減できると把握している場合、ユーザは、契約電力の削減による計算を選択する。計算ロジックの種類によっては、計算ロジックを選択する段階において、ユーザは、省エネ対策の効果を把握している。ユーザは、支援システム10を利用することで、施設全体で見たときの省エネの効果を知ることができる。そのため、本開示では、複数の計算ロジックそれぞれは、施設全体での省エネを図るための1つの手法と考えて、省エネ対策であるとする。
【0055】
<計算ロジック:契約電力の削減>
上述のように、ユーザが、何らかの対策を採用することで契約電力(ピーク時の電力)を削減できると把握している場合に、契約電力の削減による計算ロジックが省エネ対策として指定される。ユーザは、契約電力の削減による計算ロジックを指定する際に、契約電力の削減量又は削減率を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得可能である。
【0056】
対策設定部16は、契約電力の削減に関するユーザ入力(第1ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得して、契約電力の削減を省エネルギー対策として選択する。例えば、ユーザによる削減率の入力値を「a」とした場合、対策設定部16は、契約電力をa%削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0057】
法人用の電気料金の計算は、例えば、下記のように計算される。なお、再生可能エネルギー発電促進賦課金、及び燃料費調整額等は省略している。
電気料金=基本料金+従量料金
基本料金=基本料金単価×契約電力×(185-力率)/100
従量料金=従量料金単価×使用電力量
【0058】
効果算出部18は、例えば、契約電力をa%削減することによる削減の効果(費用削減の効果)を下記の式(3)のように算出する。
【数1】

式(3)において、x1は基本料金単価であり、x2は契約電力の現在の設定値であり、x3は力率(%)である。x1、x2、及びx3の値は、例えば、電力契約に関する情報をユーザが入力することで定まる(図7参照)。式(3)で得られる料金の削減量Δu1と、式(2)で得られるエネルギー全体での費用Utとを比較することで、エネルギー全体(施設全体)での契約電力の削減による効果がわかる。
【0059】
<計算ロジック:従量料金分の電力使用量の削減>
ユーザが、何らかの対策を採用することで、使用量に応じて料金が計算される電力の使用量(以下、「従量使用量」という。)を削減できると把握している場合に、従量使用量の削減による計算ロジックが省エネ対策として指定される。なお、上述の電気料金の計算の例のように、使用電力量の全てに従量料金が課せられる場合には、従量使用量は使用電力量に相当する。一例では、ユーザは、各月での最大需要電力を抑えることができると想定される場合には、契約電力による削減を指定し、使用電力量を減らすことができると想定される場合には、従量使用量の削減を指定する。ユーザは、最大需要電力及び使用電力量の両方を抑えることができると想定される場合には、契約電力による削減及び従量使用量の削減の2つの計算ロジックを指定してもよい。
【0060】
ユーザは、電力の従量使用量の削減による計算ロジックを指定する際に、従量使用量の削減量又は削減率を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得可能である。対策設定部16は、従量使用量の削減に関するユーザ入力(第2ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得して、従量使用量の削減を省エネルギー対策として選択する。例えば、ユーザによる従量使用量の削減率の入力値を「b」とした場合、対策設定部16は、従量使用量をb%削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0061】
効果算出部18は、例えば、従量使用量をb%削減することによる効果を下記の式(4)及び式(5)のように計算する。
ΔE2=Ep×(b/100) ・・・(4)
Δu2=ep×(b/100)×x4 ・・・(5)
式(4)において、ΔE2は、原油換算量での電力の削減量を表している。式(5)において、Δu2は、従量使用量を削減することによる費用の削減量を表しており、x4は、従量料金単価である。x4の値は、例えば、電力契約に関する情報をユーザが入力することで定まる。
【0062】
効果算出部18は、例えば、エネルギー全体での省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、下記の式(6)の計算を行う。
ΔE2t=ΔE2/Et×100 ・・・(6)
効果算出部18は、電力の省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、下記の式(7)の計算を行う。
ΔE2p=ΔE2t×(Et/Ep) ・・・(7)
なお、効果算出部18は、電力の省エネ率[%]を算出する際に、式(7)に代えて、下記の式(8)の計算を行ってもよい。
ΔE2p=ΔE2/Ep×100 ・・・(8)
【0063】
<計算ロジック:特定エネルギーの削減率>
ユーザが、何らかの対策を採用することで、いずれかの種類のエネルギー(特定のエネルギー)を削減でき、その削減率を把握又は推定している場合に、削減率による計算ロジックが省エネ対策として指定される。ユーザは、削減率による計算ロジックを指定する際に、削減対象のエネルギーの種類及び削減率を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、削減対象のエネルギー及び削減率の入力値を取得可能である。
【0064】
対策設定部16は、エネルギー使用量の削減率に関するユーザ入力(第3ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、エネルギー使用量の削減率の入力値を取得して、削減率の入力値に応じたエネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択する。対策設定部16は、エネルギーの種類のユーザ指定を更に取得し、ユーザによって指定された種類のエネルギーを、削減対象の特定のエネルギーとして設定する。例えば、ユーザによって削減対象のエネルギーが「重油」に指定され、その重油の使用量の削減率の入力値を「c」とした場合、対策設定部16は、重油の使用量をc%削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0065】
効果算出部18は、例えば、重油の使用量をc%削減することによる効果を下記の式(9)及び式(10)のように計算する。
ΔE3=Eh×(c/100) ・・・(9)
Δu3=uh×(c/100) ・・・(10)
式(9)において、ΔE3は、重油の使用量の削減量を表している。式(10)において、Δu3は、重油をc%削減することによる費用の削減量を表している。
【0066】
効果算出部18は、エネルギー全体での省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(11)の計算を行う。
ΔE3t=ΔE3/Et×100 ・・・(11)
効果算出部18は、重油の省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、下記の式(12)又は式(13)の計算を行う。
ΔE3h=ΔE3t×(Et/Eh) ・・・(12)
ΔE3h=ΔE3/Eh×100 ・・・(13)
対策設定部16及び効果算出部18は、重油以外の種類のエネルギーが指定された場合も、重油が指定された場合と同様に、選択及び算出をそれぞれ実行する。
【0067】
<計算ロジック:消費電力の削減>
ユーザが、施設の電力を消費する現行の機器を新しい機器に入れ替えることを検討している場合に、消費電力の削減による計算ロジックが省エネ対策として指定される。ユーザは、消費電力による計算ロジックを指定する際に、診断対象の施設に既に設置されている機器(以下、「現行機器」という。)の消費電力、その現行機器の台数、現行機器の使用時間、及び導入予定の機器(以下、「導入予定機器」という。)の消費電力を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、現行機器の消費電力、現行機器の台数、現行機器の使用時間、及び導入予定機器の消費電力それぞれの入力値を取得可能である。
【0068】
対策設定部16は、消費電力の削減に関するユーザ入力(第4ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設に既に設置されている現行機器の消費電力、現行機器の台数、現行機器の使用時間、及び導入予定機器の消費電力の入力値を取得して、消費電力の削減を省エネルギー対策として選択する。例えば、現行機器の消費電力[W]を「d1」とし、現行機器の個数を「d2」とし、現行機器の1年間の使用時間[h]を「d3」とし、導入予定機器の消費電力[W]を「d4」とした場合、対策設定部16は、消費電力がd1(W)であり、1年間にd3時間だけ使用する現行機器をd2個だけ、消費電力がd4(W)である新しい機器に入れ替えることを省エネ対策として選択(設定)する。
【0069】
効果算出部18は、例えば、消費電力の削減による効果を下記の式(16)のように計算する。
ΔE4=[d4-d1]×d2×d3×αp×β ・・・(16)
式(14)において、ΔE4は、機器の入れ替えによる電力の削減量[kl]を表しており、「αp」は、電力に関する熱量換算係数であり、「β」は、原油換算量に変換するための係数である。
【0070】
効果算出部18は、エネルギー全体での省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(17)の計算を行う。
ΔE4t=ΔE4/Et×100 ・・・(17)
効果算出部18は、電力の省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(18)又は式(19)の計算を行う。
ΔE4p=ΔE4t×(Et/Ep) ・・・(18)
ΔE4p=ΔE4t/Ep×100 ・・・(19)
【0071】
効果算出部18は、消費電力の削減による費用の削減を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(20)の計算を行う。
Δu4=up×(ΔE4p/100) ・・・(20)
式(20)において、「Δu4」は、費用の削減額を表している。
【0072】
<計算ロジック:特定エネルギーの削減量>
ユーザが、何らかの対策を採用することで、いずれかの種類のエネルギー(特定のエネルギー)を削減でき、その削減量を把握又は推定している場合に、削減量による計算ロジックが省エネ対策として指定される。ユーザは、削減量による計算ロジックを指定する際に、削減対象のエネルギーの種類及び削減量を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、削減対象のエネルギー及び削減量の入力値を取得可能である。
【0073】
対策設定部16は、エネルギー使用量の削減量に関するユーザ入力(第5ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、エネルギー使用量の削減量の入力値を取得して、削減量の入力値に応じたエネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択する。対策設定部16は、エネルギーの種類に関したユーザ指定を更に取得し、ユーザによって指定された種類のエネルギーを、削減対象の特定のエネルギーとして設定する。例えば、ユーザによって削減対象のエネルギーが「重油」に指定され、その重油の使用量の削減量の入力値を「f」とした場合、対策設定部16は、重油の使用量をf[kL]だけ削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0074】
効果算出部18は、例えば、重油の使用量をf[kL]だけ削減することによる効果を下記の式(23)のように計算する。
ΔE5=f×αh×β ・・・(23)
式(23)において、ΔE5は、重油使用量の原油換算量での削減量を表しており、「αh」は重油に関する熱量換算係数である。効果算出部18は、重油以外のエネルギーの種類が指定されている場合には、熱量換算係数を変更して、式(23)と同様に削減量を算出する。
【0075】
効果算出部18は、エネルギー全体での省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(24)の計算を行う。
ΔE5t=ΔE5/Et×100 ・・・(24)
効果算出部18は、重油の省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(25)又は式(26)の計算を行う。
ΔE5h=ΔE5t×(Et/Eh) ・・・(25)
ΔE5h=ΔE5/Eh×100 ・・・(26)
【0076】
効果算出部18は、重油の使用量をf[kl]だけ削減することによる費用の削減を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(27)の計算を行う。
Δu5=uh×(ΔE5h/100) ・・・(27)
式(27)において「Δu5」は、費用の削減額を表している。
【0077】
<計算ロジック:特定消費区分での削減率>
ユーザが、何らかの対策を採用することで、いずれかの消費区分(特定の消費区分)でのエネルギーを削減でき、その削減率を把握又は推定している場合に、特定の消費区分での削減率により計算ロジックが省エネ対策として指定される。一例では、ユーザが、特定の消費区分である「照明」全体において、エネルギー(電力)を削減できそうな場合、又は削減を検討している場合に、本計算ロジックが省エネ対策として指定される。
【0078】
ユーザは、特定の消費区分での削減率による計算ロジックを指定する際に、削減対象の消費区分及び削減率を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、削減対象の消費区分及び削減量の入力値を取得可能である。ユーザは、その消費区分での削減によって削減されるエネルギーの種類を把握している場合に、その種類を入力してもよい。この場合、対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、エネルギーの種類の入力値を取得可能である。
【0079】
対策設定部16は、いずれかの消費区分でのエネルギーの削減に関するユーザ入力(第6ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、消費区分の入力値と当該消費区分でのエネルギーの削減率の入力値とを取得して、消費区分でのエネルギーの削減を省エネルギー対策として選択する。対策設定部16は、エネルギーの種類に関したユーザ指定を更に取得し、削減されるエネルギーの種類を設定する。例えば、ユーザによって削減対象の消費区分が「熱源本体」に指定され、その熱源本体での削減率[%]の入力値を「g」とした場合、対策設定部16は、熱源本体でのエネルギーの使用量をg%削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0080】
効果算出部18は、例えば、特定の消費区分(例えば、熱源本体)でエネルギー使用量をg%削減することによる効果を下記の式(30)のように計算する。
ΔE6=Et×(ps/100)×(g/100) ・・・(30)
式(30)において、ΔE6は、特定の消費区分でのエネルギーの削減量[kl]を表しており、「ps」は、指定された消費区分に設定されている使用割合[%]を表している(図3又は図7を参照)。
【0081】
効果算出部18は、エネルギー全体での省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(31)の計算を行う。
ΔE6t=ΔE6/Et×100 ・・・(31)
エネルギーの種類として「電力」が指定されている場合、効果算出部18は、電力の省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(32)又は式(33)の計算を行う。
ΔE6p=ΔE6t×(Et/Ep) ・・・(32)
ΔE6p=ΔE6/Ep×100 ・・・(33)
【0082】
効果算出部18は、特定の消費区分(例えば、熱源本体)でエネルギー使用量をg%削減することによる費用の削減を省エネ対策の効果として算出する場合には、例えば、下記の式(34)の計算を行う。
Δu6=up×(ΔE6p/100) ・・・(34)
式(34)において「Δu6」は、費用の削減額を表している。
【0083】
<計算ロジック:節電率>
ユーザが、何らかの対策を採用することで、節電を図ることができ、節電率を把握又は推定している場合に、節電率による計算ロジックが省エネ対策として指定される。ユーザは、節電率による計算ロジックを指定する際に、節電率を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、節電率の入力値を取得可能である。
【0084】
対策設定部16は、節電率に関するユーザ入力(第7ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設での節電率の入力値を取得して、節電によるエネルギーの削減を省エネルギー対策として選択する。例えば、ユーザによる節電率[%]の入力値を「f」とした場合、対策設定部16は、電力の使用量をf%削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0085】
効果算出部18は、例えば、節電率f%で省エネを図ることによる効果を下記の式(36)のように計算する。
ΔE7=Ep×(f/100) ・・・(36)
式(36)において、ΔE7は、電力の原油換算での削減量を表している。
【0086】
効果算出部18は、エネルギー全体での省エネ率[%]を省エネ対策による効果として算出する場合には、例えば、下記の式(37)の計算を行う。
ΔE7t=ΔE7/Et×100 ・・・(37)
効果算出部18は、節電率f%で省エネを図ることによる費用の削減(削減量Δu7)を省エネ対策の効果として算出する場合には、例えば、下記の式(38)の計算を行う。
Δu7=up×(f/100) ・・・(38)
【0087】
<計算ロジック:節電金額>
ユーザが、何らかの対策を採用することで、節電を図ることができ、その節電による削減金額を把握又は推定している場合に、節電金額による計算ロジックが省エネ対策として指定される。ユーザは、節電金額による計算ロジックを指定する際に、節電金額を支援システム10に入力する。対策設定部16は、入力画像70におけるユーザ入力に基づいて、節電金額の入力値を取得可能である。
【0088】
対策設定部16は、節電金額に関するユーザ入力(第8ユーザ入力)を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設での節電による電気料金の削減量の入力値を取得して、節電による電気料金の削減を省エネルギー対策として選択する。例えば、ユーザによる節電金額の入力値を「h」とした場合、対策設定部16は、節電により電気料金をh円だけ削減することを省エネ対策として選択(設定)する。
【0089】
効果算出部18は、例えば、節電により電気料金をh円削減することによる費用削減の効果を下記の式(39)のように計算する。
Δu8=h ・・・(39)
式(39)において、「Δu8」は、費用の削減額を表している。効果算出部18は、Δu8をUtで除算することで、エネルギー全体での費用の削減率を算出してもよい。効果算出部18は、他の計算ロジックにおいても、特定のエネルギーでの費用の削減額と全体の費用(Ut)とから、エネルギー全体での費用の削減率を算出してもよい。
【0090】
ユーザは、2以上の計算ロジックを省エネ対策として指定可能である。ユーザによって、2以上の計算ロジックが指定された場合、対策設定部16は、指定された2以上の計算ロジックを省エネ対策として選択(設定)する。この場合、効果算出部18は、2以上の計算ロジックそれぞれで算出された削減効果を合算することで、エネルギーの削減効果を算出してもよい。例えば、効果算出部18は、2以上の計算ロジックそれぞれで算出された省エネ率を合算して得られる値を削減効果として算出してもよく、2以上の計算ロジックそれぞれ算出された費用の削減額を合算して得られる値を削減効果として算出してもよい。
【0091】
<リストからの導入設備の選択>
導入候補の設備の一覧を示すリストを表示した入力画像70において、いずれかの導入設備の指定を示すユーザ入力があった場合、対策設定部16は、そのユーザ入力に基づいて、指定された導入設備(導入設備を導入すること)を省エネルギー対策として選択する。支援システム10では、導入設備ごとに、その省エネ効果を算出する方法として、上述したいずれかの計算ロジックが予め定められてもよい。導入設備の一部では、契約電力の削減による計算ロジックによって省エネの効果が算出されてもよく、導入設備の別の一部では、特定の消費区分でのエネルギーの削減率による計算ロジックによって省エネの効果が算出されてもよく、導入設備の別の一部では、特定のエネルギーでの削減率による計算ロジックによって省エネの効果が算出されてもよい。
【0092】
特定の消費区分でのエネルギーの削減率による計算ロジックを用いて省エネ効果を算出する導入設備には、エネルギーを削減できる消費区分と、その消費区分での削減率と、削減できるエネルギーの種別とが、予め設定されていてもよい。効果算出部18は、対策設定部16によって選択された導入設備に関して予め設定された消費区分及びエネルギーの削減率と、消費区分データベース34を参照して得られる、診断対象の施設での使用割合と、に基づいて、削減効果を算出してもよい。
【0093】
一例として、リスト中の導入設備の1つである「LED照明への更新」がユーザによって指定された場合を説明する。この場合、対策設定部16は、LED照明への更新を省エネ対策として選択(設定)する。LED照明への更新に関して、削減可能な消費区分は「照明」であり、その削減率の設定値をg1(%)とした場合、効果算出部18は、上述の式(30)と同様に、下記の式(40)の計算を行う。
ΔEt=Et×(ps1/100)×(g1/100) ・・・(40)
式(40)において、ΔEtは、LED照明への更新に伴うエネルギーの削減量[kl]を表しており、「ps1」は、診断対象の施設での「照明」に設定されている使用割合[%]を表している。なお、削減率の設定値が、ユーザによって変更可能であってもよい。
【0094】
図5に戻り、ステップS32の実行後、支援システム10は、ステップS33を実行する。ステップS33では、例えば、出力部22が、ステップS32での算出結果を示す画像をユーザ端末2のモニタ上に表示させる。図10には、ステップS32の算出結果(省エネの診断結果)を表す出力画像80の一例が示されている。出力画像80は、例えば、結果画像82と、結果画像84と、結果画像86とを含む。
【0095】
結果画像82は、エネルギー全体での省エネ率、又は、特定の種類のエネルギーでの省エネ率を表示する。結果画像82は、更に、省エネ対策前の費用と省エネ対策後の費用とを比較したグラフを表示し、その差額(例えば、年間の利益)を表示する。結果画像84は、省エネ対策としてユーザが指定した対策を表示する。結果画像86は、省エネ対策前後の費用と、省エネ対策に伴う初期投資額と、投資回収に必要な期間とを表示する。投資回収に必要な期間が、効果算出部18によって算出される投資対効果に相当する。
【0096】
効果算出部18は、費用削減の程度と対策設定部16により選択された導入設備に関して予め定められた導入費用とに基づいて、投資対効果を省エネ対策による削減効果として算出する。一例では、効果算出部18は、省エネ対策を取るための投資額を、省エネ対策を取ることにより得られる削減額(年間の利益)で除算することで、投資回収に必要な期間を算出する。効果算出部18は、投資額及び削減額に加えて補助金に基づいて、投資対効果を算出してもよい。この場合、支援システム10において、補助金の有無、及び補助金の額が、ユーザによって入力可能であってもよい。
【0097】
出力画像80は、エネルギーの削減効果を提示可能であれば、どのような画像であってもよい。ユーザは、ステップS33の実行後に、再度、ステップS21,S23を実行してもよい。この際、ユーザは、省エネ対策、又は、省エネ対策に関する設定値を変更してもよい。ユーザは、省エネ対策等を変更後に、再度、ステップS31を実行してもよい。
【0098】
支援システム10が2以上のコンピュータによって構成されてもよい。例えば、ユーザ入力取得部12、予測部14、対策設定部16、効果算出部18、及び出力部22が1つのコンピュータによって実現され、記憶部30が、別のコンピュータによって実現されてもよい。以上に例示した支援システム10は、ネットワークを介して接続されたユーザ端末2によって操作されるが、ユーザ端末2に代えて、支援システム10が有するユーザインタフェースを介して、ユーザからの情報が入力されてもよい。
【0099】
[実施形態の効果]
以上に説明した支援システム10は、記憶部30と、予測部14と、対策設定部16と、効果算出部18と、出力部22と、を備える。記憶部30は、施設の業種及び延床面積の組合せと、所定期間でのエネルギー使用量の予測値と、を対応付けた予測データベース32を記憶するように構成されている。予測部14は、診断対象の施設における業種及び延床面積に関するユーザ入力に基づいて、予測データベース32を参照して、診断対象の施設での上記エネルギー使用量の予測値を取得するように構成されている。対策設定部16は、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した入力画像70へのユーザ入力に基づいて、候補対策リストの中のいずれかの導入設備を省エネルギー対策として選択するように構成されている。効果算出部18は、対策設定部16による選択結果に基づいて、予測部14により取得された上記エネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するように構成されている。出力部22は、効果算出部18による算出結果を示す出力画像80をモニタ上に表示させるように構成されている。
【0100】
この支援システム10では、予測データベース32を利用して、診断対象の施設でのエネルギー使用量が予測される。また、導入候補の設備の一覧を示すリストの中から選択されることで、ユーザによる省エネ対策の指定が可能である。そのため、ユーザは、エネルギー診断のための複雑な情報を入力することなく、診断対象の施設の業種及び延床面積を把握したうえで、リストの中から検討中の省エネ対策を指定することで、診断対象の施設でのエネルギー診断の結果を知ることができる。従って、上記支援システム10は、ユーザの利便性の向上に有用である。
【0101】
以上に説明した支援システム10において、効果算出部18は、対策設定部16による選択結果に基づいて上記エネルギー使用量の削減に伴う費用削減の程度を削減効果として算出すると共に、当該費用削減の程度と対策設定部16によって選択された導入設備に関して予め定められた導入費用とに基づいて投資対効果を削減効果として算出するように構成されている。この場合、導入設備に関してその導入に伴う費用が予め定められているので、ユーザは、導入設備を指定するだけで、導入設備の導入による費用対効果を知ることができる。従って、ユーザの利便性の向上に更に有用である。
【0102】
以上に説明した支援システム10において、記憶部30は、施設の業種と、施設でのエネルギーの消費先を分類した複数の消費区分それぞれにおけるエネルギーの使用割合と、を対応付けた消費区分データベース34を更に記憶するように構成されている。効果算出部18は、対策設定部16により選択された導入設備に関して予め設定された消費区分及びエネルギーの削減率と、消費区分データベースを参照して得られる、診断対象の施設での使用割合と、に基づいて、削減効果を算出するように構成されている。この場合、導入設備に関して、消費区分とエネルギーの削減率とが予め定められており、ユーザは、導入設備を指定するだけで、導入設備の導入による省エネ対策の効果を知ることができる。また、診断対象の施設の業種に応じた、消費区分での使用割合を用いて省エネ対策の効果が算出されるので、業種に応じた導入設備による省エネの効果を知ることができる。従って、ユーザの利便性の向上に更に有用である。
【0103】
以上に説明した支援システム10において、対策設定部16は、契約電力の削減に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得して、契約電力の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、使用量に応じて料金が計算される電力の従量使用量の削減に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得して、従量使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、エネルギー使用量の削減率に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、エネルギー使用量の削減率の入力値を取得して、エネルギー使用量の削減率の入力値に応じたエネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。この構成では、ユーザが、契約電力の削減、電力の従量使用量の削減、又は、削減率に応じたエネルギー使用量の削減のいずれかを検討している際に、それらの対策による省エネの効果を知ることができる。従って、ユーザの利便性の向上に更に有用である。
【0104】
以上に説明した支援システム10において、記憶部30は、施設の業種と、施設でのエネルギーの消費先を分類した複数の消費区分それぞれにおけるエネルギーの使用割合と、を対応付けた消費区分データベース34を更に記憶するように構成されている。対策設定部16は、消費電力の削減に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設に既に設置されている現行機器の消費電力、現行機器の台数、現行機器の使用時間、及び導入予定の機器の消費電力の入力値を取得して、消費電力の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、エネルギー使用量の削減量に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、エネルギー使用量の削減量の入力値を取得して、エネルギー使用量の削減量の入力値に応じたエネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、いずれかの消費区分でのエネルギーの削減に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、消費区分の入力値と当該消費区分でのエネルギーの削減率の入力値とを取得して、消費区分でのエネルギーの削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、節電率に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設での節電率の入力値を取得して、節電によるエネルギーの削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。
【0105】
エネルギー診断を行う際に取り得る省エネ対策は、契約電力の削減、電力の従量使用量の削減、削減率に応じたエネルギー使用量の削減、消費機器の入れ替え、削減量に応じたエネルギー使用量の削減、特定の消費区分でのエネルギーの削減、及び、節電率に応じた節電のうちのいずれかに該当する場合が多い。そのため、上記構成では、エネルギー診断を行う多くの場合において、ユーザは、その検討している内容に応じた対策を指定でき、その対策による効果を知ることができる。従って、ユーザの利便性の向上に更に有用である。
【0106】
以上に説明した支援システム10において、対策設定部16は、節電金額に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、診断対象の施設での節電による電気料金の削減量の入力値を取得して、節電による電気料金の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。電力の使用量は減らせない場合でも、電気料金を削減できそうな場合もある。ユーザは、そのような電気料金を削減できそうな場合に、その省エネによる効果を知ることができる。従って、ユーザの利便性の向上に更に有用である。
【0107】
以上に説明した支援システム10は、ユーザ入力に基づいて、省エネルギー対策を選択するように構成された対策設定部16と、対策設定部16による選択結果に基づいて、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出するように構成された効果算出部18と、効果算出部18による算出結果を示す出力画像80をモニタ上に表示させるように構成された出力部22と、を備える。対策設定部16は、契約電力の削減に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、契約電力の削減量又は削減率の入力値を取得して、契約電力の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、使用量に応じて料金が計算される電力の従量使用量の削減に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、従量使用量の削減量又は削減率の入力値を取得して、従量使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。対策設定部16は、エネルギー使用量の削減率に関するユーザ入力を受けた場合に、そのユーザ入力に基づいて、エネルギー使用量の削減率の入力値を取得して、エネルギー使用量の削減率の入力値に応じたエネルギー使用量の削減を省エネルギー対策として選択するように構成されている。
【0108】
この支援システム10では、ユーザが、契約電力の削減、電力の従量使用量の削減、又は、削減率に応じたエネルギー使用量の削減のいずれかを検討している際に、それらの対策による省エネの効果を知ることができる。複数種の省エネ対策による効果を算出可能となっており、ユーザは、エネルギー診断での検討中の対策に合わせて、その効果を知ることができる。従って、ユーザの利便性の向上に更に有用である。
【符号の説明】
【0109】
10…エネルギー診断の支援システム、14…予測部、16…対策設定部、18…効果算出部、22…出力部、30…記憶部、32…予測データベース、34…消費区分データベース。
【要約】      (修正有)
【課題】エネルギー診断の支援システム、エネルギー診断の支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】エネルギー診断の支援システムにおいて、記憶部は、施設の業種及び延床面積の組合せと、エネルギー使用量の予測値とを対応付けた予測データベースを記憶する。予測部は、診断対象の施設における業種及び延床面積に関するユーザ入力に基づいて、予測データベースを参照して、診断対象の施設でのエネルギー使用量の予測値を取得する。対策設定部は、導入候補の設備の一覧を示す候補対策リストを表示した画像へのユーザ入力に基づいて、候補対策リストの中のいずれかの導入設備を省エネルギー対策として選択する。効果算出部は、対策設定部による選択結果に基づいて、予測部により取得されたエネルギー使用量の予測値からのエネルギーの削減効果を算出する。出力部は、効果算出部による算出結果を示す画像をモニタ上に表示させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10