(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】リード線端子及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/008 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
H01G9/008
(21)【出願番号】P 2017165628
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-07-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2016172607
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】谷 英一
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】山田 正文
【審判官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-130339(JP,A)
【文献】特開2001-176753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/008
H01G9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用の機器に使用されるハイブリッド型電解コンデンサの電極として用いられるリード線端子であって、
外表面が第1酸化皮膜で被覆された金属棒をプレス加工することによって成形されたタブ端子(10)と、
前記タブ端子(10)の一端に接続されたリード線(20)と
を備え、
前記タブ端子(10)は、一端側に棒状部(11)を有するとともに他端側に圧延部(12)を有しており、
前記圧延部(12)の外表面全体及び前記棒状部(11)における前記圧延部(12)側の端面から前記棒状部(11)の軸線方向に所定長さL1離間した位置までの部位の外表面が第2酸化皮膜で被覆されており、
前記所定長さL1は、前記棒状部(11)の軸線方向の全長よりも短い、リード線端子。
【請求項2】
前記圧延部(12)における前記棒状部(11)側の端部に、前記圧延部(12)と前記棒状部(11)の間に跨る補強リブ(121)が形成されている、請求項1に記載のリード線端子。
【請求項3】
リード線端子が取り付けられた陽極箔(41)と、リード線端子が取り付けられた陰極箔(42)とを、それらの間にセパレータ(43)を介在させた状態で巻回することによって形成されたコンデンサ素子(40)を備え
て、車載用の機器に使用されるハイブリッド型電解コンデンサ(100)であって、
前記陽極箔(41)側のリード線端子と前記陰極箔(42)側のリード線端子のうち、少なくとも一方が請求項1又は2に記載のリード線端子により構成されているハイブリッド型電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド型電解コンデンサ又は固体電解コンデンサの電極として用いられるリード線端子の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電解コンデンサ用のリード線端子は、アルミニウム等の金属棒によって形成されたタブ端子と、その一端に接続されたリード線とを備えている。タブ端子の素材である金属棒の外表面には、電流の漏洩を抑制するために、化成処理により酸化皮膜が形成されている。タブ端子は、一端側に棒状部を有するとともに他端側に圧延部を有している。圧延部は、金属棒の一部をプレス加工することにより形成されるが、その際に酸化皮膜に亀裂が生じることがある。そこで、タブ端子に二次化成処理を行い、酸化皮膜の亀裂を修復する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タブ端子に二次化成処理を行う際に、タブ端子とリード線との接続部に化成液が付着すると、この接続部が腐蝕する虞があるため、圧延部における棒状部から軸線方向に所定長さ以上離間した領域にのみ二次化成処理が施される。圧延部における棒状部側の端部は、プレス加工による塑性変形が大きい箇所であるため、とりわけ酸化皮膜に亀裂が生じやすい。この箇所には二次化成処理が施されないが、電解質が電解液のみから成る液体電解コンデンサの場合には、この箇所に電解液が接して酸化皮膜の亀裂が自己修復される。
【0005】
しかしながら、電解質が固体電解質のみから成る固体電解コンデンサでは、酸化皮膜の亀裂が自己修復されにくいため、亀裂から電流が漏れて電解コンデンサの歩留まり率が低下するという問題がある。また、近年、低ESR、特性安定等を目的として、電解質が固体電解質と電解液から成るハイブリッド型電解コンデンサが種々提案されている。この種の電解コンデンサでは、固体電解コンデンサよりも酸化皮膜の亀裂の自己修復性は高いものの、液体電解コンデンサに比べて自己修復性が劣る。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであり、その目的は、ハイブリッド型電解コンデンサ又は固体電解コンデンサにおいて、酸化皮膜の亀裂に起因する漏れ電流を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、車載用の機器に使用されるハイブリッド型電解コンデンサの電極として用いられるリード線端子であって、
外表面が第1酸化皮膜で被覆された金属棒をプレス加工することによって成形されたタブ端子(10)と、
前記タブ端子(10)の一端に接続されたリード線(20)と
を備え、
前記タブ端子(10)は、一端側に棒状部(11)を有するとともに他端側に圧延部(12)を有しており、
前記圧延部(12)の外表面全体及び前記棒状部(11)における前記圧延部(12)側の端面から前記棒状部(11)の軸線方向に所定長さL1離間した位置までの部位の外表面が第2酸化皮膜で被覆されており、
前記所定長さL1は、前記棒状部(11)の軸線方向の全長よりも短い、リード線端子。
【0008】
第2の発明は、前記圧延部(12)における前記棒状部(11)側の端部に、前記圧延部(12)と前記棒状部(11)の間に跨る補強リブ(121)が形成されているリード線端子である。
【0009】
また、第3の発明は、リード線端子が取り付けられた陽極箔(41)と、リード線端子が取り付けられた陰極箔(42)とを、それらの間にセパレータ(43)を介在させた状態で巻回することによって形成されたコンデンサ素子(40)を備えて、車載用の機器に使用されるハイブリッド型電解コンデンサ(100)であって、
前記陽極箔(41)側のリード線端子と前記陰極箔(42)側のリード線端子のうち、少なくとも一方が請求項1又は2に記載のリード線端子により構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハイブリッド型電解コンデンサ又は固体電解コンデンサにおいて、酸化皮膜の亀裂に起因する漏れ電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるリード線端子の実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1のリード線端子のタブ端子の拡大平面図である。
【
図3】
図1のリード線端子を備えたコンデンサ素子の斜視図である。
【
図4】
図3のコンデンサ素子を備えた電解コンデンサの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態のリード線端子1は、ハイブリッド型電解コンデンサ又は固体電解コンデンサに用いられるもので、
図1に示すように、アルミニウム等から成る金属棒によって形成されたタブ端子10と、その一端に接続されたリード線20とを備えている。
【0013】
前記金属棒は、ホウ酸やアジピン酸等を含む化成液によってあらかじめ化成処理され、外表面が酸化皮膜(以下、この酸化皮膜を「第1酸化皮膜」と称する。)で被覆されている。タブ端子10は、前記金属棒をプレス加工することにより成形され、一端側に棒状部11を有するとともに他端側に圧延部12を有している。
【0014】
前記棒状部11の一端には、溶接等によってリード線20が接続されている。リード線20は、例えば、鉄線の外周面に銅層を設けたCP線によって形成される。圧延部12は、前記金属棒の一部を平板状にプレス加工するとともに、その外周を厚み方向に沿って切断することにより形成される。本実施形態では、圧延部12全体の外表面と、棒状部11における圧延部側の部位の外表面とが、ホウ酸やアジピン酸等を含む化成液によって二次化成処理されている。
【0015】
図2において、実線のハッチングは、二次化成処理が施される領域を表しており、この領域には、二次化成処理による酸化皮膜(以下、この酸化皮膜を「第2酸化皮膜」と称する。)が形成されている。棒状部11の二次化成処理は、棒状部11における圧延部12側の端面から棒状部11の軸線方向に所定長さL1離間した位置まで施される。
【0016】
本実施形態では、L1は棒状部11の軸線方向の全長の略1/2に設定されているが、L1の長さは特に限定されない。棒状部11とリード線20の接続部に化成液が付着するのを抑制するために、L1は棒状部11の軸線方向の全長の1/2以下であることが好ましい。
【0017】
また、本実施形態では、棒状部11と圧延部12の間に跨る補強リブ121が形成されている。補強リブ121は、棒状部11における圧延部12側の端面と圧延部12の一方の面とに接続され、平面視略半円状を呈している。
【0018】
このリード線端子1では、圧延部12の外表面の全体に二次化成処理が施され、補強リブ121及びその他の箇所の第1酸化皮膜に生じた亀裂を修復することができるので、漏れ電流を抑制することができる。
【0019】
また、このリード線端子1では、棒状部11の外表面の一部まで化成液に浸漬するため、棒状部11の外表面に生じた第1酸化皮膜の亀裂も修復することができるので、圧延部12のみを化成液に浸漬する場合と比べて漏れ電流の発生が低減する。
【0020】
圧延部12の外表面全体及び棒状部11における圧延部12に隣接する部位の外表面に第2酸化皮膜を形成する方法としては、例えば、複数本のリード線端子1を束ねた状態で化成液に浸漬する方法や、複数本のリード線端子1を長手方向に直交する方向に離間させた状態で治具に固定し、治具を下降させて各リード線端子1を化成液に浸漬する方法等がある。
【0021】
なお、車載用の機器に使用される電解コンデンサは、安全性の向上のために特に高い信頼性が要求されるが、圧延部12の外表面全体及び棒状部11における圧延部12に隣接する部位の外表面を二次化成処理することにより、かかる厳しい品質要求に応じた高品質の電解コンデンサを提供することができる。
【0022】
化成液に浸漬されたリード線端子1は、純水で洗浄され、脱水された後、乾燥機で乾燥される。このようにして製造されたリード線端子1を、コンデンサ素子の素材である陽極箔と陰極箔とにそれぞれ取り付け、
図3に示すように、陽極箔41と陰極箔42とを、それらの間にセパレータ43を介在させた状態で巻回してコンデンサ素子40を形成する。そして、公知の方法により、陽極箔41と陰極箔42との間に固体電解質層(図示せず)を形成する。
【0023】
コンデンサ素子40の端面から突出している一対のリード線20を円盤状の封口体50(
図4参照)に形成された一対の貫通孔51のいずれかに挿通し、コンデンサ素子40及び封口体50を有底円筒状の外装ケース60に収納し、外装ケース60の開口端を絞り加工して、封口体50を外装ケース60の開口端に固定する。なお、ハイブリッド型の電解コンデンサの場合には、コンデンサ素子40に電解液を含浸させる。さらに、製品名、メーカ名等が記載された円筒状のシュリンクフィルム(図示せず)を外装ケース60の外周に嵌着し、このシュリンクフィルムを熱収縮させることにより、電解コンデンサ100が完成する。
【0024】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、陽極箔側のリード線端子と陰極箔側のリード線端子との両方を本発明のリード線端子としているが、いずれか一方のリード線端子のみを本発明のリード線端子としてもよい。
【0025】
また、補強リブの形状と個数は上記実施形態で示したものに限定されない。また、本発明は、補強リブを有していないリード線端子にも適用することができる。
【0026】
また、リード線端子を取り付けた治具を下降させて圧延部を化成液に浸漬する代わりに、化成液が収容された槽を上昇させて圧延部を化成液に浸漬するようにしてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、金属棒の一端にリード線を接続してから金属棒をプレス加工してタブ端子を成形しているが、金属棒をプレス加工してタブ端子を成形してからタブ端子の一端にリード線を接続してもよい。
【0028】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の実施形態に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 リード線端子
10 タブ端子
11 棒状部
12 圧延部
121 補強リブ
20 リード線
40 コンデンサ素子
41 陽極箔
42 陰極箔
43 セパレータ
50 封口体
60 外装ケース
100 電解コンデンサ