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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20221101BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
G10K11/178 120
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018098623
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019004456
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017119455
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】大塚 幸治
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 裕美
(72)【発明者】
【氏名】米山 大輔
【審査官】梅本 達雄
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00195641(EP,A2)
【文献】米国特許第08447045(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前気室側に設けられており、外部音を含む前気室音を受ける第1マイクロホンと、
前記第1マイクロホンが受けた前記前気室音に含まれる前記外部音の少なくとも一部を打ち消すノイズキャンセル音を前記前気室内に放音するドライバユニットと、
前記ドライバユニットに対して前記前気室と反対側に設けられており、前記ドライバユニットから放音された前記ノイズキャンセル音を受ける第2マイクロホンと、
前記第1マイクロホンが受けた前記前気室音に基づく信号に前記第2マイクロホンが受けた前記ノイズキャンセル音に基づく信号を加算することにより前記ノイズキャンセル音を生成する音生成部と、
を有し、
前記音生成部は、
前記第2マイクロホンが受けた前記ノイズキャンセル音を減衰させる減衰器と、
前記第1マイクロホンが受けた前記前気室音に基づく信号と、前記減衰器において減衰された後の信号とを加算する加算器と、
前記加算器が加算した後の信号を反転する反転器と、
を有する、ヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズキャンセル機能を有するヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部のノイズを打ち消すためのノイズキャンセル機能を有するヘッドホンが知られている。特許文献1には、ヘッドホンのハウジングとユーザの耳との間の前気室に設けられたマイクロホンによって外部からのノイズを集音し、集音したノイズを打ち消すノイズキャンセル信号によりドライバユニットを駆動することで、ノイズを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-23637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドホンがフィードバック方式のノイズキャンセル機能を有することにより外来ノイズが低減するが、イヤーカップ内での音の反射、並びにマイクロホン及びドライバユニットの特性の影響等によりノイズが残っていた。また、ドライバユニットから放出されるノイズキャンセル音もマイクロホンで集音されてしまうので、ノイズキャンセル信号に、外部からのノイズを打ち消す成分以外の成分が含まれていた。その結果、ノイズキャンセル機能によるノイズ除去力が低下していた。そこで、ノイズキャンセル機能によるノイズ除去力を向上させることが求められている。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ヘッドホンにおけるノイズ除去能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘッドホンは、前気室側に設けられており、外部音を含む前気室音を受ける第1マイクロホンと、前記第1マイクロホンが受けた前記前気室音に含まれる前記外部音の少なくとも一部を打ち消すノイズキャンセル音を前記前気室内に放音するドライバユニットと、前記ドライバユニットに対して前記前気室と反対側に設けられており、前記ドライバユニットから放音された前記ノイズキャンセル音を受ける第2マイクロホンと、前記第1マイクロホンが受けた前記前気室音に基づく信号に前記第2マイクロホンが受けた前記ノイズキャンセル音に基づく信号を加算することにより前記ノイズキャンセル音を生成する音生成部と、を有する。
【0007】
前記第2マイクロホンは、例えば、前記ドライバユニットに対して前記第1マイクロホンと反対側に設けられている。前記第2マイクロホンと前記ドライバユニットの中心位置との距離は、例えば、前記第1マイクロホンと前記ドライバユニットの中心位置との距離よりも小さい。
【0008】
前記音生成部は、前記第2マイクロホンが受けた前記ノイズキャンセル音を減衰させる減衰器と、前記第1マイクロホンが受けた前記前気室音に基づく信号と、前記減衰器において減衰された後の信号とを加算する加算器と、前記加算器が加算した後の信号を反転する反転器と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘッドホンにおけるノイズ除去能力を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るヘッドホンにおけるノイズキャンセル方法について説明するための図である。
図2】ヘッドホンのイヤーカップの構成を示す図である。
図3】イヤーカップによる効果を確認するための実験方法について説明するための図である。
図4】ダミーヘッドを用いて測定した従来のヘッドホンのノイズキャンセル性能を示す図である。
図5】ダミーヘッドを用いて測定した本実施の形態のヘッドホンのノイズキャンセル性能を示す図である。
図6】ヘッドホンの各種のノイズキャンセル方式のノイズキャンセル性能を模式的に示す図である。
図7】イヤーカップの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ノイズキャンセル方法の概要]
図1は、本実施の形態に係るヘッドホン1におけるノイズキャンセル方法について説明するための図である。ヘッドホン1は、ドライバユニット11と、フィードバックマイクロホン12と、バランスマイクロホン13とを有する。また、ヘッドホン1は、外来ノイズをキャンセルするノイズキャンセル音を生成する音生成部21をさらに有する。音生成部21は、減衰器211、加算器212、増幅器213及び反転器214を有する。音生成部21は、フィードバックマイクロホン12が受けた前気室音に基づく信号に、バランスマイクロホン13が受けたノイズキャンセル音に基づく信号を加算することにより、ノイズキャンセル音を生成する。
【0012】
ドライバユニット11は、ヘッドホン1の使用状態においてイヤーカップとユーザの耳との間において、ドライバユニット11の正面側に形成される前気室10に放音する。
第1マイクロホンであるフィードバックマイクロホン12は前気室10に設けられており、前気室10において受けた、外部音を含む前気室音を電気信号に変換する。図1に示すように、フィードバックマイクロホン12には、外部音aと、ドライバユニット11から放音されるノイズキャンセル音b1が減衰した減衰ノイズキャンセル音b2と、が含まれる前気室音が入る。フィードバックマイクロホン12は、前気室音を電気信号に変換し、変換後の電気信号である前気室信号c1を加算器212へと出力する。
【0013】
第2マイクロホンであるバランスマイクロホン13は、ドライバユニット11の裏面側、すなわち前気室10と反対の側に設けられており、ドライバユニット11の裏面から放出される音を受けて、受けた音を電気信号に変換する。ドライバユニット11の裏面から放出される音の位相は、ドライバユニット11の正面から前気室10に放出される音と反対の位相である。したがって、バランスマイクロホン13には、ノイズキャンセル音b1と同じ周波数で位相が反転した反転ノイズキャンセル音b3が入る。バランスマイクロホン13は、反転ノイズキャンセル音b3を電気信号に変換し、電気信号を減衰器211に対して出力する。
【0014】
減衰器211は、バランスマイクロホン13から入力された反転ノイズキャンセル音b3に基づく電気信号を減衰することにより減衰信号b4を生成する。減衰器211における減衰量は、ドライバユニット11から放出されたノイズキャンセル音b1がフィードバックマイクロホン12に届いて減衰ノイズキャンセル音b2になるまでの間に減衰する量と同等である。すなわち、減衰器211における電気信号の減衰率は、ノイズキャンセル音b1がフィードバックマイクロホン12に届いた時点における減衰ノイズキャンセル音b2をノイズキャンセル音b1で除算した値b2/b1により表される。減衰器211は、減衰後の電気信号である減衰信号b4を加算器212へと出力する。
【0015】
加算器212は、フィードバックマイクロホン12から入力された前気室信号c1に、減衰器211から入力された減衰信号b4を加算する。減衰信号b4は、減衰器211において反転ノイズキャンセル音b3が減衰した音に基づく電気信号であり、前気室信号c1に含まれている減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号と同一周波数、及び同一レベルであり、かつ位相が反対の信号である。したがって、加算器212が前気室信号c1に減衰信号b4を加算することにより、前気室信号c1に含まれている減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号を打ち消して、外部音aに基づく信号を生成することができる。加算器212は、外部音aに基づく信号を増幅器213へと出力する。
【0016】
増幅器213は、加算器212から入力された外部音aに基づく信号を増幅して、前気室10内の残留ノイズレベルとほぼ同等のレベルの増幅信号a1を生成する。増幅器213は、生成した増幅信号a1を反転器214へと出力する。
【0017】
反転器214は、増幅器213から入力された信号を反転することにより、ノイズキャンセル音b1を生成する。反転器214が生成したノイズキャンセル音b1は、ドライバユニット11から放出される。オーディオ信号と、音生成部21から出力されたノイズキャンセル音b1とがドライバユニット11に加えられる。ヘッドホン1は、例えば、オーディオ機器から出力されたオーディオ信号とノイズキャンセル音b1に対応する信号とを加算して加算信号を生成する加算処理部(不図示)を有しており、生成された加算信号がドライバユニット11に加えられる。
【0018】
[イヤーカップ2の構成]
図2は、ヘッドホン1のイヤーカップ2の構成を示す図である。イヤーカップ2は、ハウジング31及びイヤーパッド32を有する。図2(a)は、ユーザの耳側からイヤーカップ2を見た図である。図2(b)は、ユーザの耳側に向かってイヤーカップ2を見た図である。図2(a)に示すように、フィードバックマイクロホン12は、ドライバユニット11の正面側において、ドライバユニット11の近傍に設けられている。
【0019】
図2(b)に示すように、バランスマイクロホン13は、ドライバユニット11に対してフィードバックマイクロホン12と反対側において、ドライバユニット11の近傍に設けられている。例えば、バランスマイクロホン13は、ドライバユニット11の背面における、ドライバユニット11の振動板が設けられている領域に含まれる位置に設けられている。バランスマイクロホン13が、振動板に近い位置に設けられていることにより、ドライバユニット11から放音されるノイズキャンセル音b1と、バランスマイクロホン13が受ける反転ノイズキャンセル音b3との間の位相のずれを小さくすることができるので、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。
【0020】
ドライバユニット11から放音されるノイズキャンセル音b1と、バランスマイクロホン13が受ける反転ノイズキャンセル音b3との間の位相のずれをできるだけ小さくするために、バランスマイクロホン13は、ドライバユニット11に埋め込まれるように構成されていてもよい。例えば、バランスマイクロホン13は、振動板の裏面側における振動板の中心位置付近において、ドライバユニット11に固定されている。
【0021】
バランスマイクロホン13とドライバユニット11の中心との距離は、フィードバックマイクロホン12とドライバユニット11の中心との距離よりも小さいことが好ましい。イヤーカップ2がこのような構成を有することにより、バランスマイクロホン13が集音する反転ノイズキャンセル音b3の位相と、ドライバユニット11が放出するノイズキャンセル音b1の位相との位相差がほぼ180°になる。また、フィードバックマイクロホン12が受けるノイズキャンセル音のレベルを低く抑えるとともに、バランスマイクロホン13が受けるノイズキャンセル音のレベルを高くすることができる。その結果、ノイズキャンセル性能を向上させることができる。
【0022】
[効果確認実験]
図3は、イヤーカップ2による効果を確認するための実験方法について説明するための図である。本実験においては、人間の頭部を模した測定冶具として、ダミーヘッドH(HATS)を用いる。ダミーヘッドHは擬似耳殻の内側に測定用マイクロホン3を有している。測定用マイクロホン3で集音される信号は、人間の鼓膜位置に到達する信号に相当する。
【0023】
ダミーヘッドHに本実施の形態のヘッドホン1を装着した状態で、スピーカー4からピンクノイズを流している間にノイズキャンセル機能を動作させ、この間に測定用マイクロホン3が集音したノイズ音のレベルを測定した。実験においては、フィードバックマイクロホン12のゲインを変化させて、それぞれのゲインにおけるノイズキャンセル性能を測定した。フィードバックマイクロホン12のゲインが増加すると、加算器212に入力される減衰ノイズキャンセル音b2に基づく電気信号のレベルも大きくなるので、フィードバックマイクロホン12のゲインを変化させる際には、減衰器211の減衰量も変化させた。
【0024】
図4及び図5は、ダミーヘッドHを用いて測定したヘッドホンのノイズキャンセル性能を示す図である。図4は、フィードバックマイクロホン12を有しており、バランスマイクロホン13を有していない従来のヘッドホンのノイズキャンセル性能を示す図である。図5は、フィードバックマイクロホン12及びバランスマイクロホン13を有する本実施の形態のヘッドホン1のノイズキャンセル性能を示す図である。
【0025】
図4及び図5の横軸は周波数であり、縦軸はノイズキャンセル量である。図4及び図5における実線はフィードバックマイクロホン12のゲインを10dBに設定した状態におけるノイズキャンセル量を示し、破線はフィードバックマイクロホン12のゲインを11dBに設定した状態におけるノイズキャンセル量を示し、一点鎖線はフィードバックマイクロホン12のゲインを12dBに設定した状態におけるノイズキャンセル量を示し、二点鎖線はフィードバックマイクロホン12のゲインを13dBに設定した状態におけるノイズキャンセル量を示している。
【0026】
フィードバックマイクロホン12のゲインを増加させるにつれてノイズキャンセル量は増加する傾向にあるが、図4においては、フィードバックマイクロホン12のゲインが10dBを越えてからフィードバックマイクロホン12のゲインを増加させても、ノイズキャンセル量はほとんど変化していない。これは、フィードバックマイクロホン12が減衰ノイズキャンセル音b2を受け、受けた減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号を含む信号を反転させてノイズキャンセル音b1を生成するというループ状態に陥っていることに起因すると考えられる。
【0027】
これに対して、図5においては、フィードバックマイクロホン12のゲインが10dBを越えてからも、フィードバックマイクロホン12のゲインを増加させるにつれてノイズキャンセル量が増加している。これは、フィードバックマイクロホン12が受けた減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号を、バランスマイクロホン13が受けた逆位相の反転ノイズキャンセル音b3に基づく減衰信号b4で打ち消すことで、フィードバックマイクロホン12に入力される減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号成分が小さく維持されることに起因すると考えられる。
【0028】
フィードバックマイクロホン12に入力される減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号成分が小さく維持される結果、フィードバックマイクロホン12のゲインを増加させることで、反転器214に入力される外部音aに基づく信号成分に対する減衰ノイズキャンセル音b2に基づく信号成分の比が小さくなる。その結果、フィードバックマイクロホン12のゲインを増加させることによるノイズキャンセル効果が表れやすいと考えられる。
【0029】
[各方式の比較]
図6は、ヘッドホンの各種のノイズキャンセル方式のノイズキャンセル性能を模式的に示す図である。図6においては、ヘッドホンのノイズキャンセル方式として知られているフィードバック方式、フィードフォワード方式及びハイブリッド方式のノイズキャンセル性能と、本実施の形態の方式のノイズキャンセル性能とを示している。図6の横軸は周波数を示している。縦軸は、図3に示した方法で測定した際に測定用マイクロホン3が受けた残留ノイズをキャンセルできる量を示している。
【0030】
図6における破線は、フィードバック方式を用いたヘッドホンが放出する音に含まれている残留ノイズの大きさを示している。この方式においては、周波数によらずほぼ一定量のノイズがキャンセルされ、残留ノイズの大きさが一定に保たれている。
【0031】
図6における一点鎖線は、フィードフォワード方式を用いたヘッドホンが放出する音に含まれている残留ノイズの大きさを示している。ハイブリッド方式においては、ヘッドホンの外面に設けたマイクロホンでノイズを集音し、耳に届くまでのノイズ信号の変化を予測してノイズキャンセル信号を生成することによりノイズを打ち消すことができる。この方式においては、特定の周波数では残留ノイズが小さくなっているが、他の周波数ではフィードバック方式に比べて残留ノイズが大きいことがわかる。
【0032】
図6における二点鎖線は、フィードバック方式とフィードフォワード方式とを組み合わせたハイブリッド方式を用いたヘッドホンが放出する音に含まれている残留ノイズの大きさを示している。この方式においては、ハイブリッド方式の影響が支配的で、特定の周波数範囲ではフィードバック方式よりも残留ノイズが小さくなっているが、他の周波数範囲ではフィードバック方式よりも残留ノイズが大きい。その結果、ユーザが不快感又は違和感を抱いてしまう。
【0033】
図6における実線は、本実施の形態のフィードバックマイクロホン12及びバランスマイクロホン13を有するヘッドホンが放出する音に含まれている残留ノイズの大きさを示している。この方式においては、広い周波数範囲で他の方式よりも残留ノイズが小さいことがわかる。
【0034】
[変形例1]
上記の説明においては、加算器212が生成した外部音aに基づく信号を増幅器213において増幅し、増幅器213が生成した増幅信号a1を反転器214が反転する構成を例示したが、増幅器213における増幅処理と反転器214における反転処理の順序は反対であってもよい。すなわち、加算器212が生成した外部音aに基づく信号を反転器214で反転した後に、増幅器213において増幅してもよい。また、反転器214が増幅器213の増幅機能を有してもよい。
【0035】
[変形例2]
上記の説明においては、イヤーカップ2にフィードバックマイクロホン12及びバランスマイクロホン13が1個ずつ設けられている構成を例示したが、複数のフィードバックマイクロホン12が設けられていてもよい。また、イヤーカップ2に複数のバランスマイクロホン13が設けられていてもよい。
【0036】
図7は、イヤーカップ2の変形例を示す図である。図7(a)は、イヤーカップ2に複数のフィードバックマイクロホン12(12a,12b,12c,12d)が設けられている例を示している。図7(a)に示す例においては、複数のフィードバックマイクロホン12が、ドライバユニット11の振動板の中心位置を中心とする同心円上に設けられている。複数のフィードバックマイクロホン12は、例えばドライバユニット11の振動板の中心位置を中心とする同心円上に等間隔に設けられている。加算器212は、複数のフィードバックマイクロホン12から入力された複数の減衰ノイズキャンセル音b2の平均値又は中央値を、減衰器211から入力される減衰信号b4と加算する。このように、加算器212が、複数の減衰ノイズキャンセル音b2の平均値又は中央値を用いることで、フィードバックマイクロホン12が設けられた位置によるばらつきの影響を軽減できるので、ノイズキャンセル性能がさらに向上する。
【0037】
図7(b)は、イヤーカップ2に複数のバランスマイクロホン13(13a,13b,13c,13d)が設けられている例を示している。図7(b)に示す例においては、複数のバランスマイクロホン13が、ドライバユニット11の振動板の中心位置を中心とする同心円上に等間隔に設けられている。減衰器211は、複数のバランスマイクロホン13から入力された複数の反転ノイズキャンセル音b3の平均値又は中央値を減衰させて減衰信号b4を生成する。このように、減衰器211が、複数の反転ノイズキャンセル音b3の平均値又は中央値を用いることで、バランスマイクロホン13が設けられた位置によるばらつきの影響を軽減できるので、ノイズキャンセル性能がさらに向上する。
【0038】
[本実施の形態のヘッドホン1による効果]
以上説明したように、本実施の形態のヘッドホン1は、ドライバユニット11と、フィードバックマイクロホン12と、バランスマイクロホン13と、減衰器211と、加算器212と、反転器214とを有する。バランスマイクロホン13は、ドライバユニット11から出力されたノイズキャンセル音を受け、減衰器211はノイズキャンセル音に基づく電気信号を減衰させる。そして、加算器212は、フィードバックマイクロホン12が受けた音に基づく電気信号に、減衰器211で減衰された後の減衰ノイズキャンセル信号を加算し、反転器214は、加算後の信号を反転することによりノイズキャンセル信号を生成する。このようにすることで、フィードバックマイクロホン12に入り込むノイズキャンセル音の影響を抑制して、外部音を打ち消すノイズキャンセル音を生成できるので、ヘッドホン1のノイズキャンセル性能が向上する。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0040】
例えば、上記の説明においては、ドライバユニット11からノイズキャンセル音b1のみが放出される場合を例示したが、ドライバユニット11からノイズキャンセル音b1とともに楽音が放出されてもよい。また、上記の説明においては、フィードバック方式のヘッドホン1に本発明を適用する例を示したが、ハイブリッド方式に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ヘッドホン
2 イヤーカップ
3 測定用マイクロホン
4 スピーカー
10 前気室
11 ドライバユニット
12 フィードバックマイクロホン
13 バランスマイクロホン
21 音生成部
211 減衰器
212 加算器
213 増幅器
214 反転器
31 ハウジング
32 イヤーパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7