(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】審査支援システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20120101AFI20221101BHJP
【FI】
G06Q40/02 300
(21)【出願番号】P 2018189739
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】511108138
【氏名又は名称】テンソル・コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佐良人
(72)【発明者】
【氏名】築地 毅
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060527(JP,A)
【文献】特開2017-182284(JP,A)
【文献】特開2018-049400(JP,A)
【文献】小野 潔 Kiyoshi ONO,インテックの与信モデルの特徴と今後の展開,INTEC TECHNICAL JOURNAL 2016.9 第17号 ,日本,株式会社インテック,2016年09月30日,17,12-17
【文献】岡田 薫,個人向け融資の新サービス 国内初、AIで信用度を自動算出,日経コンピュータ no.952 NIKKEI COMPUTER,日本,日経BP社 Nikkei Business Publications,Inc.,2017年11月23日,952,056-059
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G07C 9/00- 9/38
G07B 15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に対する信用審査の判定を支援する審査支援システムであって、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択する未確定対象者選択部と、
前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行う二次判定部と、を有
し、
前記二次判定部は、デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定されなかった申請者について前記審査者が前記判断材料情報に基づいて行った承認か不承認かの判定の結果を蓄積した人的審査学習データを学習した人工知能を有し、該人工知能により前記人的審査予測指標を算出する、
審査支援システム。
【請求項2】
前記対象者に関する判断材料情報に基づいて該対象者についてデフォルトを起こす度合いに関するデフォルト予測指標を算出し、前記デフォルト予測指標に基づいて前記対象者が承認、不承認、または未確定のいずれに該当するかの一次判定を行う一次判定部を更に有し、
前記二次判定部は、前記一次判定にて未確定に該当した未確定対象者について前記人的審査予測指標に基づいて前記二次判定を行う、
請求項1に記載の審査支援システム。
【請求項3】
前記一次判定部は、契約者の申請時の判断材料情報と前記契約者がデフォルトを起こしたか否かとを対応づけて蓄積したデフォルト学習データを学習して得られた、判断材料情報を入力としデフォルトを起こす度合いに関するデフォルト予測指標を出力とする人工知能を有し、該人工知能により前記対象者に関する判断材料情報に基づいて該対象者について前記デフォルト予測指標を算出し、該デフォルト予測指標に基づいて前記対象者が承認、不承認、または未確定のいずれに該当するかの一次判定を行い、
前記二次判定部は、前記一次判定にて未確定とされた過去の申請者について、前記判断材料情報と、前記審査者が前記判断材料情報と前記
人的審査予測指標とに基づいて承認か不承認かを判定した結果と、を対応づけて蓄積した人的審査学習データを学習して得られた人工知能を有し、該人工知能により前記未確定対象者に関する判断材料情報と前記未確定対象者の前記
人的審査予測指標とに基づいて前記二次判定を行う、
請求項
2に記載の審査支援システム。
【請求項4】
前記二次判定部は、前記審査者が承認したか否かという二値データを学習した人工知能を用いて前記未確定対象者について前記審査者が承認する確率を前記人的審査予測指標として算出し、前記人的審査予測指標を所定の閾値と比較することにより前記二次判定を行う、
請求項1に記載の審査支援システム。
【請求項5】
前記未確定対象者選択部は、所定の割当規則に従って、前記未確定対象者の一部を前記審査者に割り当て、前記未確定対象者の残りの一部を前記二次判定部に割り当てる、
請求項
1に記載の審査支援システム。
【請求項6】
前記未確定対象者選択部は、前記審査者の業務状況を監視し、前記業務状況に応じて前記割当規則を変更する、
請求項
5に記載の審査支援システム。
【請求項7】
前記未確定対象者選択部が前記審査者に割り当てた前記未確定対象者に対する前記審査者の判定結果に基づいて前記二次判定部の人工知能を更新する人的審査学習装置を更に有する、
請求項
5に記載の審査支援システム。
【請求項8】
対象者に対する信用審査の判定を支援する審査支援システムであって、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択する未確定対象者選択部と、
前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行う二次判定部と、
二次判定部による二次判定が適正に行われているか否か検証する検証部
とを有し、
前記未確定対象者選択部は、前記未確定対象者の二次判定を前記二次判定部に行わせるとともに、所定の抽出規則に従って、前記未確定対象者の一部を抽出して前記審査者に割り当て、
前記検証部は、前記未確定対象者選択部が審査者に割り当てた未確定対象者に対する審査者の判定結果と、前記二次判定部による前記二次判定の結果とに基づいて、前記二次判定が適正に行われているか否か検証する
、
審査支援システム。
【請求項9】
対象者に対する信用審査の判定を支援するための審査支援方法であって、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択し、
前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、
前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行う、
ことをコンピュータが実行
するものであり、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定されなかった申請者について前記審査者が前記判断材料情報に基づいて行った承認か不承認かの判定の結果を蓄積した人的審査学習データを学習した人工知能により前記人的審査予測指標を算出する、
審査支援方法。
【請求項10】
対象者に対する信用審査の判定を支援するための審査支援方法であって、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択し、
前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、
前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行い、
前記二次判定が適正に行われているか否か検証する、
ことをコンピュータが実行するものであり、
前記未確定対象者の二次判定を行うとともに、所定の抽出規則に従って、前記未確定対象者の一部を抽出して前記審査者に割り当て、
前記審査者に割り当てた未確定対象者に対する審査者の判定結果と、前記二次判定の結果とに基づいて、前記二次判定が適正に行われているか否か検証する、
審査支援方法。
【請求項11】
対象者に対する信用審査の判定を支援するための審査支援プログラムであって、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択し、
前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、
前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行う、
ことをコンピュータに実行させるための
プログラムであり、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定されなかった申請者について前記審査者が前記判断材料情報に基づいて行った承認か不承認かの判定の結果を蓄積した人的審査学習データを学習した人工知能により前記人的審査予測指標を算出する、
審査支援プログラム。
【請求項12】
対象者に対する信用審査の判定を支援するための審査支援プログラムであって、
デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択し、
前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、
前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行い、
前記二次判定が適正に行われているか否か検証する、
ことをコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記未確定対象者の二次判定を行うとともに、所定の抽出規則に従って、前記未確定対象者の一部を抽出して前記審査者に割り当て、
前記審査者に割り当てた未確定対象者に対する審査者の判定結果と、前記二次判定の結果とに基づいて、前記二次判定が適正に行われているか否か検証する、
審査支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信用審査を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行や信販会社などの金融機関だけでなく、デパートやスーパーマーケットなどの流通業、鉄道会社、IT企業、通信キャリアなど多くの企業がクレジットカード事業を運営している。クレジットカードを発行するときには対象者の信用に関する審査が行われる。また、金融機関が融資を行うときにも対象者の信用に関する審査が行われる。
【0003】
以下、対象者の信用に関する審査を「信用審査」ともいうことにする。
【0004】
信用審査は、所定の管理機関に登録された各個人の取引に関する信用情報など、判断材料となる情報(以下「判断材料情報」ともいう)に基づいて行われる。対象者は個人であっても企業であってもよい。判断材料情報は、対象者に関するなんらかの情報であればよく、信用情報に限定されない。
【0005】
一般に金融機関などでは専門の審査者が判断材料情報を見て経験や知識に基づいて判断を行っている。判断材料情報には多数の詳細な項目の情報が含まれており、判断材料情報に基づいて信用審査を行う審査者の負担は大きい。そのためコンピュータ等により信用審査を支援するシステムが提案されている。
【0006】
特許文献1には、仮審査と本審査を行い、デフォルトの発生を抑制しつつ、離脱率を低減させる情報処理装置について開示されている。情報処理装置は、個人信用情報に基づく入力データおよび予め定められたモデルに基づいてデフォルト確率を決定し、決定されたデフォルト確率に基づいて審査を行う第1審査手段と、第1審査手段によって承諾されたとき、本人証明情報と本人確認情報とに基づいて審査を行う第2審査手段とを有する。第1審査では、デフォルト確率に基づいて契約の諾否の仮審査を行い、仮承諾か拒否かが判定される。第1審査の審査結果が仮承諾とされた場合に、第2審査では、本人証明情報と本人確認情報である住所とに基づいて、ローン等の諾否の本審査を行う。
【0007】
特許文献2には、一次信用格付け処理と二次信用格付け処理の二段階の処理を備えた信用格付けシステムについて開示されている。取引先や債務者に関する基礎データ(財務データ)に基づいて一次信用格付け処理が行われ、一次信用格付け処理結果および基礎データを用いて、権限者が基礎データに対する重み付けスコアを導出し、追加項目および権限者による重み付けスコアを含む調整データを用いて二次信用格付け処理が行われる。
【0008】
特許文献3には、信用リスクを分析するシステム及び方法に係り、特に個人から大企業までの信用リスクを世界的に統一された基準で分析する信用リスク分析システム及び信用リスク分析方法について開示されている。信用リスク分析システムは、各国の信用リスクに関する情報を統計的に分析して生成した各国のリスク分析モデルに基づいて、ユーザからの財務データに対してデフォルトリスクを出力する情報処理装置を備え、各リスク分析モデルに基づいて出力されるデフォルトリスクを、同一の信用リスク指標を用いて表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-60527号公報
【文献】特開2003-216800号公報
【文献】特開2001-282957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、実際の審査では、特許文献1や特許文献3で利用されるようなデフォルトのリスクを示す指標から高い精度で信用審査の判断をすることは容易でない。そのため、システムにより全てのケースの判断はつかず審査者が知識や経験に基づいて判断する必要のあるケースの割合が低くない。そのため、審査者の人的負担が十分に軽減されるとは言えない。
【0011】
また、特許文献2では、二次信用格付け処理では、複数の権限者が、重み付けを行ったり、追加項目を決定したりする必要があり、権限者を含めた審査者の人的負担が十分に軽減されるとは言えない。
【0012】
本発明の目的は、信用審査における審査者の人的負担を軽減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示による審査支援システムは、対象者に対する信用審査の判定を支援する審査支援システムであって、デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択する未確定対象者選択部と、前記未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、前記未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、前記人的審査予測指標に基づいて前記未確定対象者の承認に関する二次判定を行う二次判定部と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば審査者の人的負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態による審査支援システムのブロック図である。
【
図2】第1実施形態による審査支援システムによる審査支援について説明するための図である。
【
図3】デフォルト学習装置による学習の様子を示す図である。
【
図4】デフォルト学習データの構成を示す図である。
【
図5】人的審査学習装置による学習の様子を示す図である。
【
図7】第1審査支援装置および第2審査支援装置による判定処理のフローチャートである。
【
図13】第2審査支援装置を実現するコンピュータシステムのブロック図である。
【
図14】第2実施形態による審査支援システムのブロック図である。
【
図15】第2実施形態による審査支援システムによる審査支援について説明するための図である。
【
図16】第2実施形態による第1審査支援装置および第2審査支援装置による判定処理のフローチャートである。
【
図17】第3実施形態による審査支援システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による審査支援システムのブロック図である。
図2は、第1実施形態による審査支援システムによる審査支援について説明するための図である。
【0018】
本実施形態の審査支援システム10は、対象者に対する信用審査の判定を支援するシステムである。
【0019】
対象者は、信用審査の対象となる者である。例えば、信用審査による承認を得ることを要するサービス等に申請することで信用審査の対象者となる。対象者は、個人であっても企業等の団体であってもよい。
【0020】
信用審査には、例えば、クレジットカード会社が、クレジットカード発行を申請した対象者に対するクレジットカードの発行を承認するか否か判定する審査が含まれる。また他の例として、融資を行う金融機関が対象者に対する所望の金額の融資を承認するか否か判定する審査も含まれる。
【0021】
信用審査は対象者に関する判断材料情報121に基づいて行われる。判断材料情報121は、対象者に関連するいかなる情報であってもよい。典型的には、所定の管理機関に登録された各個人の取引に関する信用情報などが判断材料情報として利用される。判断材料情報121には複数項目の情報が含まれている。
【0022】
なお、判断材料情報121あるいは判断材料情報121と同様の内容の情報が、第1審査支援装置11、第2審査支援装置12、デフォルト学習装置13、および人的審査学習装置14にて利用されるが、各装置にて全ての項目の情報が利用されるとは限らない。各装置にてそれぞれ判断材料情報121あるいは判断材料情報121と同様の内容の情報の少なくとも一部の情報が利用される。
【0023】
図1に示すように、審査支援システム10は、第1審査支援装置11、第2審査支援装置12、デフォルト学習装置13、および人的審査学習装置13を有している。
【0024】
第1審査支援装置11は、対象者に関する判断材料情報に基づいて対象者がデフォルトを起こす度合いに関する指標(以下「デフォルト予測指標」ともいう)を算出し、その指標に基づいて対象者が承認、不承認、または未確定のいずれに該当するかの一次判定を行う。デフォルトを生じさせる度合いに関する指標は、例えばデフォルトを生じさせる確率、デフォルトを生じさせるリスクを表す度数、などである。デフォルトを生じさせる確率は、後述するデフォルト学習装置13が機械学習により算出するデフォルト予測モデル111を用いて算出される。デフォルトを生じさせるリスクは、例えば、デフォルトを生じさせる確率に基づいて定めることができる。
【0025】
第2審査支援装置12は、第1審査支援装置11により未確定と判定された対象者(以下「未確定対象者」ともいう)について、その未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、人的審査予測指標に基づいて未確定対象者の承認に関する二次判定を行う。審査者による承認に関する度合いは、例えば、承認される確率、承認されない確率、承認が期待される度数、などである。承認される確率、あるいは承認されない確率は、後述する人的審査学習装置14が機械学習により算出する人的審査予測モデル112を用いて算出される。承認が期待される度数は、例えば、承認される確率に基づいて定めることができる。
【0026】
図3は、デフォルト学習装置による学習の様子を示す図である。デフォルト学習装置13は、デフォルト学習データ141を学習することにより、判断材料情報を入力としデフォルト予測指標を出力とするデフォルト予測モデル111を生成する。一例として、デフォルト学習装置13は、デフォルトが発生したか否かという二値データをロジスティック回帰モデルにより学習し、デフォルトが発生する確率を示すデフォルト予測指標を算出するデフォルト予測モデル111を生成する。デフォルト予測モデル111は第1審査支援装置11にてデフォルト予測指標を算出する人工知能に利用される。ここではロジスティック回帰モデルにより学習するものを例示したが、これに限定されるものではなく、他の手法で学習を行ってもよい。他の例として決定木やディープラーニングで学習を行ってもよい。
【0027】
図4は、デフォルト学習データ141の構成を示す図である。デフォルト学習データ141は、過去に申請を行い、承認を得て契約に至った契約者の契約者情報を蓄積したものである。契約者情報には、契約者の申請時の判断材料情報と、その契約者が契約後にデフォルトを起こしたか否かというデフォルト情報とが対応づけられている。判断材料情報には、その契約者を識別する識別情報と、その契約者の信用情報が含まれている。
【0028】
図5は、人的審査学習装置による学習の様子を示す図である。人的審査学習装置14は、過去の申請者について、人的審査学習データ142を学習することにより、判断材料情報とリスク指標とを入力とし人的審査予測指標を出力とする人的審査予測モデル112を生成する。一例として、人的審査学習装置14は、審査者が承認したか否かという二値データをロジスティック回帰モデルにより学習し、審査者が承認する確率を示す人的審査予測指標を算出する人的審査予測モデル112を生成する。人的審査予測モデル112は、第2審査支援装置12にて人的審査予測指標を算出する人工知能に利用される。ここではロジスティック回帰モデルにより学習するものを例示したが、これに限定されるものではなく、他の手法で学習を行ってもよい。他の例として決定木やディープラーニングで学習を行ってもよい。
【0029】
図6は、人的審査学習データ142の構成を示す図である。人的審査学習データ142は、過去の申請者について、申請時の判断材料情報と、その契約者が承認されたか否かという人的審査判定結果情報とを対応づけた過去申請者情報を蓄積したものである。判断材料情報には、その契約者を識別する識別情報と、その契約者の信用情報が含まれている。
【0030】
なお、本実施形態による審査支援システム10が導入される以前に、本実施形態におけるデフォルト予測モデル111に相当する、デフォルトを生じさせる度合いに関する指標に基づいて信用審査を支援する審査支援システム(第1審査支援装置11単体に相当する)が運用されていた場合には、そのシステムによりデフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ、その判定にて承認するか否かが確定されなかった申請者について、審査者が判断材料情報(あるいは更にデフォルト予測指標)を参照して行った判定の結果のデータが既に蓄積されている。本実施形態の人的審査学習装置13は、その過去に既に蓄積されたデータを学習に利用することができる。その結果、本実施形態による審査支援システム10を導入する際に、既存の審査支援システムを運用していた段階で蓄積されたデータを利用し、導入当初から高い精度での判定が可能となる。また、既存の審査支援システムを審査支援システム10における第1審査支援装置11として利用することが可能であり、本実施形態による審査支援システム10の導入に要する期間およびコストを低く抑えることも可能である。
【0031】
第1審査支援装置11は、入力部21、一次判定部22、および出力部23を有している。第2審査支援装置12は、未確定対象者選択部24、二次判定部25、および表示部26を有している。
【0032】
入力部21は、入力される対象者の判断材料情報121を受け、一次判定部22に引き渡す。
【0033】
一次判定部22は、予めデフォルト学習装置13からデフォルト予測モデル111を取得しており、入力部21から受けた対象者の判断材料情報121をデフォルト予測モデル111に入力することにより、対象者のデフォルト予測指標を算出する。そして、一次判定部22は、算出した対象者のデフォルト予測指標に基づいて、対象者を承認とするか、不承認とするか、未確定とするか判定する。この判定結果を一次判定結果131ともいうものとする。
【0034】
出力部23は、一次判定部22による、対象者についての一次判定結果131と、対象者の判断材料情報121とを第2審査支援装置12の未確定対象者選択部24に引き渡す。
【0035】
未確定対象者選択部24は、第1審査支援装置11の出力部23からの一次判定結果131が未確定を示している対象者、すなわち未確定対象者について、二次判定部25に判断材料情報121を引き渡す。
【0036】
二次判定部25は、人的審査学習装置14から人的審査予測モデル112を予め取得しており、未確定対象者選択部24から受けた未確定対象者の判断材料情報121を人的審査予測モデル112に入力することにより、人的審査予測指標を算出する。更に、二次判定部25は、その人的審査予測指標に基づいて、未確定対象者を承認とするか、不承認とするか、判定不能とするか判定する。そして、二次判定部25は、この判定結果(以下「二次判定結果132」ともいう)を表示部26に引き渡す。
【0037】
表示部26は、二次判定部25からの二次判定結果132に基づく画面表示を行う。
【0038】
なお、本実施形態においては第1審査支援装置11と第2審査支援装置12とを物理的あるいは論理的に別個の装置とする例を示しているが、そうでなくてもよい。他の例として、第1審査支援装置11と第2審査支援装置12が一体的に構成されていてもよい。
【0039】
ただし、上述した例のように、本実施形態による審査支援システム10が導入される以前に、本実施形態におけるデフォルト予測モデル111に相当する、デフォルトを生じさせる度合いに関する指標に基づいて信用審査を支援する簡易的な審査支援システムが運用されていた場合には、第1審査支援装置11と第2審査支援装置12とを物理的あるいは論理的に別個の装置とするのが好適である可能性がある。その場合、人的審査学習装置14は、従来の簡易的な審査支援システムによりデフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われその判定にて承認するか否かが確定されなかった申請者について審査者が判断材料情報に基づいて行っていた判定の結果を、本実施形態の審査支援システム10への移行時に学習して、第2審査支援装置12にて用いる初期の人的審査予測モデル112とすることにしてもよい。
【0040】
図2に示すように、本実施形態では、信用審査により承認を得ることを要するサービス等へ申し込みを行った対象者に対して、まず一次判定が適用される。
【0041】
この種の信用審査では、できるだけ多くの対象者を承認した方がサービスの利用を促進し、拡大することができるが、その一方で、承認を与えた対象者がデフォルトを起こすと、それにより損害が生じるという、互いに矛盾する2つの要求がある。より慎重な判断を行うために、デフォルトの有無を学習したデフォルト予測モデル111による一次判定を、承認とするか不承認とするかという2者択一の判定とするよりも、承認あるいは不承認を確定できる場合には判定を確定し、そうでない一部の対象者について一次判定では承認か不承認か確定せず他の手法による判定を行うという構成を採るのが有効である。
【0042】
図2において、本実施形態では、一次判定結果131における未確定の対象者(斜線によるハッチングの部分)を、人的審査の審査結果を学習した人的審査予測モデル112による二次判定の対象としている。二次判定では、一次判定で未確定とされた対象者を対象として、審査者による人的審査の結果を学習したモデルを用いて判定を行う、承認、不承認、あるいは判定不能という二次判定結果132を出力する。本実施形態では、二次判定結果132における判定不能の対象者(ドットによるハッチングの部分)のみを審査者が審査することとなる。
【0043】
このように一次判定による未確定対象者を二次判定の対象とすることには多くの利点がある。まず、上述したように、一次判定にて承認か不承認かの2者択一とするよりも慎重な判定が可能となる。それに加え、デフォルトの有無を学習したモデルを用いて判定を行う既存システムを運用していたときと比べて審査者の負担を確実に低減することができる。一次判定による未確定対象者を全て審査者が審査していたが、その未確定対象者の全てあるいは一部をシステムにより二次判定することで、審査者が審査すべき対象は確実に低減される。それに加え、未確定対象者を二次判定の対象者とすれば、デフォルトの有無を学習したモデルを用いて判定を行う既存システムを運用していた過去のデータを人的審査予測モデルの構築に利用できるので、本実施形態のシステムの適用を開始した当初から高い精度で判断することができるという利点もある。
【0044】
以下、審査支援システムの動作について説明する。
【0045】
図7は、第1審査支援装置および第2審査支援装置による判定処理のフローチャートである。
【0046】
ステップS101にて、第1審査支援装置11の入力部21が、対象者の判断材料情報121を取得する。続いてステップS102にて、一次判定部22が、デフォルト予測モデル111を用い、対象者の判断材料情報121に基づいて、対象者のデフォルト予測指標を算出する。
図8は、判断材料情報の構成を示す図である。判断材料情報121は、対象者を識別する識別情報と、対象者の信用情報とを含む。
【0047】
更にステップS103にて、一次判定部22は、算出したデフォルト予測指標に基づいて、対象者を承認とするか、不承認とするか、未確定とするか判定する。その判定結果が一次判定結果131である。
【0048】
例えば、一次判定部22は、デフォルト予測指標承認閾値と、デフォルト予測指標不承認閾値とを予め設定しておき、デフォルト予測指標をそれら閾値と比較することにより判定を行うことにしてもよい。デフォルト予測指標承認閾値は、対象者のデフォルト予測指標がその値以上であれば、その対象者を承認とする閾値である。デフォルト予測指標不承認閾値は、対象者のデフォルト予測指標がその値以下であれば、その対象者を不承認とする閾値である。対象者のデフォルト予測指標がデフォルト予測指標不承認閾値よりも大きく、デフォルト予測指標承認閾値よりも小さい値であれば、その対象者は未確定となる。
【0049】
図9は、一次判定結果の構成を示す図である。一次判定結果131には、対象者を識別する識別情報(対象者識別情報)と、一次判定に用いられたデフォルト予測モデル111を識別するモデル識別子と、デフォルト予測指標と、判定結果と、が対応付けられている。
図9の例では、対象者識別情報が1001-54-678である対象者について、モデル識別子がD011_01であるデフォルト予測モデルで算出されたデフォルト予測指標が「65」であり、判定結果が未確定であるということが分かる。
【0050】
ステップS103の一次判定結果131は第1審査支援装置11から第2審査支援装置12へ伝達される。判定結果の伝達はどのような手段によってもよい。通信ネットワーク経由で送受信されてもよい。判定結果のデータを記憶した記録媒体を介して移動してもよい。第2審査支援装置12は、第1審査支援装置11からの一次判定結果131を画面に表示することにしてもよい。
【0051】
ステップS104にて、第2審査支援装置12の未確定対象者選択部24が、第1審査支援装置11による一次判定結果131にて未確定とされている対象者(未確定対象者)を選択し、二次判定部25が、その未確定対象者の人的審査予測指標を算出する。このとき、二次判定部25は、人的審査予測モデル112を用い、未確定対象者の判断材料情報に基づいて、人的審査予測指標を算出する。
【0052】
次にステップS105にて、二次判定部25が、算出した人的審査予測指標に基づいて、未確定対象者を承認とするか、不承認とするか、確定不能とするか判定する。その判定結果が二次判定結果132である。
【0053】
例えば、二次判定部25は、人的審査予測指標承認閾値と、人的審査予測指標不承認閾値とを予め設定しておき、人的審査予測指標をそれら閾値と比較することにより判定を行うことにしてもよい。人的審査予測指標承認閾値は、対象者の人的審査予測指標がその値以上であれば、その対象者を承認とする閾値である。人的審査予測指標不承認閾値は、対象者の人的審査予測指標がその値以下であれば、その対象者を不承認とする閾値である。対象者の人的審査予測指標が人的審査予測指標不承認閾値よりも大きく、人的審査予測指標承認閾値よりも小さい値であれば、その対象者は確定不能となる。
【0054】
図10は、二次判定結果の構成を示す図である。二次判定結果132には、対象者を識別する識別情報(対象者識別情報)と、二次判定に用いられた人的審査予測モデル112を識別するモデル識別子と、人的審査予測指標と、判定結果と、が対応付けられている。
図10の例では、対象者識別情報が1001-54-678である対象者について、モデル識別子がJ003_02である人的審査予測モデルで算出された人的審査予測指標が「78」であり、判定結果が承認であるということが分かる。
【0055】
ステップS103の一次判定またはステップS105の二次判定にて承認とされた場合、ステップS106にて、表示部26が、承認という審査結果を画面に表示する。また、ステップS103の一次判定またはステップS105の二次判定にて不承認とされた場合、ステップS108にて、表示部26が、不承認という審査結果を画面に表示する。また、ステップS105の二次判定にて確定不能とされた場合、ステップS107にて、表示部26が、確定不能という審査結果を画面に表示する。
【0056】
図11は、画面表示の一例を示す図である。
図11には、審査支援システム10により対象者が一次判定にて承認された場合の画面表示211が例示されている。画面表示211には、対象者を識別する識別情報(対象者識別情報)と、対象者の氏名と、審査結果と、デフォルト予測指標と、人的審査予測指標とが表示可能である。
図11の例では、審査結果として「一次判定で承認」ということが示されている。また、一次判定で承認となっているので、人的審査予測指標は算出されていない。そのため人的審査予測指標として「-」(ブランク)が表示されている。
【0057】
図12は、画面表示の他の例を示す図である。
図12には、審査支援システム10により対象者が二次判定にて確定不能とされた場合の画面表示212が例示されている。画面表示212には、対象者を識別する識別情報(対象者識別情報)と、対象者の氏名と、審査結果と、デフォルト予測指標と、人的審査予測指標とが表示可能である。
図12の例では、審査結果として「確定不能」ということが示されている。また、当該対象者が確定不能であるため、当該対象者について審査者が人的審査を行うことになる。
図12には、人的審査を開始するための審査開始ボタン213が表示されている。審査者がこの審査開始ボタン213を操作すると、人的審査のための画面(不図示)が表示される。
【0058】
図13は、第2審査支援装置を実現するコンピュータシステムのブロック図である。
図13を参照すると、相互にバス54で接続されたCPU51、メインメモリ52、および記憶装置53を有する処理装置50に入力装置61および表示装置71が接続されている。
【0059】
記憶装置53は、書込みおよび読み出しが可能にデータを記憶する装置であって、ソフトウェアプログラム134を格納している。また、一次判定結果131、人的審査予測モデル112、および二次判定結果132も記憶装置53に格納される。
【0060】
CPU51は、記憶装置53に記憶されたデータをメインメモリ52に読み出し、ソフトウェアプログラム134の処理を実行する装置である。CPU51がソフトウェアプログラム134を実行することにより、未確定対象者選択部24、二次判定部25、および表示部26が実現される。入力装置61は、キーボードやマウスなどから構成され、情報を入力するためのものである。対象者の判断材料情報121は入力装置61を介して入力される。表示装置71、ディスプレイなどの出力装置であり、二次判定結果132などを表示する。
【0061】
以上、本実施形態によれば、第2審査支援装置12の未確定対象者選択部24が、デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われ該判定にて承認するか否かが確定していない未確定対象者を選択し、二次判定部25が、未確定対象者に関する判断材料情報に基づいて、未確定対象者について審査者による承認に関する度合いを示す人的審査予測指標を算出し、人的審査予測指標に基づいて未確定対象者の承認に関する二次判定を行う。このように、デフォルトを起こす度合いに基づいて判定した結果、承認するか否か確定されなかった未確定対象者について、審査者による人的審査で承認される度合いを示す指標を算出し、その指標に基づいて二次判定するので、審査者の人的負担を軽減することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、二次判定部25は、審査者が判断材料情報に基づいて行った承認か不承認かの判定の結果を蓄積した人的審査学習データを学習した人工知能を有し、その人工知能により人的審査予測指標を算出する。このように、審査者による実際の判断結果のデータを学習した人工知能により二次判定をするので、審査者による高い精度の人的判断を利用して審査の人的負担を軽減することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、その人工知能は、デフォルトを起こす度合いに基づく判定が行われその判定にて承認するか否かが確定されなかった申請者について審査者が判断材料情報に基づいて行った判定の結果を蓄積した人的審査学習データを学習した人工知能であり、二次判定部25は、その人工知能により人的審査予測指標を算出する。このように、デフォルト確率などデフォルトを起こす度合いによる判定だけが自動化されたシステムが運用されている間に蓄積した、未確定対象者と同様の条件で審査者が判定した結果のデータを学習することにより、二次判定の精度を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、第1審査支援装置11の一次判定部22が、対象者に関する判断材料情報に基づいてその対象者についてデフォルトを起こす度合いに関するデフォルト予測指標を算出し、デフォルト予測指標に基づいて対象者が承認、不承認、または未確定のいずれに該当するかの一次判定を行い、第2審査支援装置12の二次判定部25が、一次判定にて未確定に該当した未確定対象者について人的審査予測指標に基づいて二次判定を行う。このように、デフォルト予測指標による一次判定と、審査者により承認される度合いに関する人的審査予測指標に基づく二次判定とによる二段階の判定を行うので、審査の人的負担を軽減しかつ高い精度で信用審査を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、一次判定部22は、契約者の申請時の判断材料情報と契約者がデフォルトを起こしたか否かとを対応づけて蓄積したデフォルト学習データを学習して得られた、判断材料情報を入力としデフォルトを起こす度合いに関するデフォルト予測指標を出力とする人工知能を有し、その人工知能により対象者に関する判断材料情報に基づいて対象者についてデフォルト予測指標を算出し、そのデフォルト予測指標に基づいて対象者が承認、不承認、または未確定のいずれに該当するかの一次判定を行う。二次判定部25は、一次判定にて未確定とされた過去の申請者について、判断材料情報と、審査者が判断材料情報とデフォルト予測指標とに基づいて承認か不承認かを判定した結果と、を対応づけて蓄積した人的審査学習データを学習して得られた人工知能を有し、その人工知能により未確定対象者に関する判断材料情報と未確定対象者のデフォルト予測指標とに基づいて二次判定を行う。このように、デフォルト予測と人的審査予測という観点の異なる2つの人工知能を用いて二段階の判定を行うので、審査の人的負担を軽減しかつ高い精度で信用審査を行うことができる。また、二次判定の対象となった未確定対象者と同様の条件で審査者が参照していた判断材料情報とリスク指標とを二次判定の人工知能に利用するので、高精度の二次判定が可能となる。
【0066】
また、本実施形態によれば、二次判定部25は、審査者が承認したか否かという二値データをロジスティック回帰モデルにより学習した人工知能を用いて未確定対象者について審査者が承認する確率を人的審査予測指標として算出し、人的審査予測指標を所定の閾値と比較することにより二次判定を行う。このように、審査者が承認したか否かを二値のロジスティック回帰モデルにて学習した人工知能により審査者が承認する確率を算出し、確率を閾値と比較することにより二次判定を行うので、信用審査において明確な承認か不承認かの判断を利用して良好な二次判定が可能となる。
【0067】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1審査支援装置11による一次判定で未確定とされた全ての対象者を第2審査支援装置12による二次判定の対象とする例を示したが、これに限定されることはない。第2実施形態では、一次判定で未確定とされた対象者の一部を二次判定の対象とする。
【0068】
図14は、第2実施形態による審査支援システムのブロック図である。
図15は、第2実施形態による審査支援システムによる審査支援について説明するための図である。
【0069】
図14を参照すると、第2実施形態による審査支援システム30は、第2審査支援装置31の未確定対象者選択部32が第1実施形態と異なる。それ以外は第2実施形態の審査支援システム30は基本的に第1実施形態のものと同様である。
【0070】
未確定対象者選択部32は、所定の割当規則に従って、未確定対象者の一部を審査者に割り当て、未確定対象者の残りの一部を二次判定部25に割り当てる。割当規則は、例えば、第1審査支援装置11による一次判定で未確定とされた対象者のうち、二次判定部25に割り当てる割合、審査官に割り当てる割合、のいずれか一方または両方を定めるものとしてもよい。
【0071】
審査者33は、割り当てられた未確定対象者について人的審査を行い、承認するか否か判定する。判定結果は、人的審査学習データとして蓄積され、人的審査学習装置14で人的審査予測モデル112の更新に利用される。人的審査学習装置14は、未確定対象者選択部32が審査者に割り当てた未確定対象者に対する審査者33の判定結果に基づいて二次判定部25の人工知能を更新する。
図15を参照すると、一次判定結果131における未確定対象者は2つに分離され、二次判定と審査者にそれぞれ割り当てられている。審査者33による審査結果が、二次判定に用いられる人的審査予測モデル112の更新に利用されている。
【0072】
図16は、第2実施形態による第1審査支援装置および第2審査支援装置による判定処理のフローチャートである。第2実施形態における第1審査支援装置11の処理は第1実施形態におけるものと同様である。
【0073】
ステップS103の一次判定結果131を受信した第2審査支援装置31では、ステップS201にて、未確定対象者選択部32が、一次判定結果131にて未確定と判定された対象者について、所定の割り当て規則に従って、二次判定部25によるおける人工知能による審査(機械審査)に割り当てるか、審査者33が行う人的審査に割り当てるかを決定する。機械審査に割り当てた場合には第1実施形態と同様にステップS105以降の処理が実行される。人的審査に割り当てた場合、審査者33が審査を行うために、表示部26が、ステップS202にて、当該未確定対象者の判断材料情報およびデフォルト予測指標を画面に表示する。
【0074】
以上、本実施形態によれば、未確定対象者選択部32は、未確定対象者の一部を審査者に割り当て、未確定対象者の残りの一部を二次判定部25に割り当てる。このように、未確定対象者の一部を審査者に審査させることにより、本審査支援システム30を導入した後も人的審査の結果を学習するための学習データを蓄積することができ、二次判定の人工知能を更新し、精度を維持することが可能となる。
【0075】
なお、本実施形態において、未確定対象者選択部32は、審査者の業務状況を監視し、業務状況に応じて割当規則を変更することにしてもよい。例えば、審査者が審査業務を行っているか否か監視し、空いている人に人的審査を割り当てるといった構成が考えられる。これによれば、審査者の業務状況に応じて割当規則を変更するので、審査者の業務状況に配慮しつつ人的審査の学習データを蓄積することができる。例えば、審査者の負荷が高いときには審査者への割り当てを減らして審査者に過度な負担がかかるのを抑制し、負担が少ないときに審査者に審査を行わせて人的審査学習データを蓄積するといった柔軟な調整が可能となる。
【0076】
また、審査者に経験が豊富でスキルが高いことが期待されるベテランと経験が比較的浅い若手とが含まれている場合に、未確定対象者選択部32は、ベテランの審査者に優先的に人的審査を割り当てることにしてもよい。若手よりもベテランの審査者を優先することで質の高い人的審査学習データの蓄積が可能となる。
【0077】
(第3実施形態)
第2実施形態では、人的審査予測モデル112を更新するための学習データを生成するための仕組みを備えた審査支援システムを例示した。これに対して、第3実施形態では、人的審査予測モデル112の妥当性を検証する仕組みを備えた審査支援システムを例示する。
【0078】
図17は、第3実施形態による審査支援システムのブロック図である。
【0079】
図17を参照すると、第3実施形態による審査支援システム40は、第2審査支援装置41の未確定対象者選択部32が第2実施形態のものと同様であり、更に第2審査支援装置41が検証部42を有することが第1実施形態と異なる。それ以外は第3実施形態の審査支援システム40は基本的に第1実施形態のものと同様である。
【0080】
未確定対象者選択部32は、第2実施形態と同様に、所定の割当規則に従って、未確定対象者の一部を審査者に割り当て、未確定対象者の残りの一部を二次判定部25に割り当てる。審査者は、割り当てられた未確定対象者について人的審査を行い、承認するか否か判定する。
【0081】
検証部42は、審査者33による人的審査の判定結果と、二次判定部25による機械審査の判定結果とを取得し、それらに基づいて機械審査が適正に行われているか否か検証する。例えば、検証部42は、人的審査に割り当てられた未確定対象者に対する審査者33による人的審査における承認率と、二次判定部25による機械審査における承認率との差分を算出し、差分が所定閾値以下であれば機械審査が適正に行われていると判断することにしてもよい。ここで、承認率は、機械審査あるいは人的審査に割り当てられた全体の対象者に対する、承認と判定された対象者の割合である。
【0082】
あるいは、未確定対象者選択部32は、第2実施形態と異なり、全ての未確定対象者を二次判定部25に割り当て、そのうちの一部の未確定対象者を審査者にも割り当てることにし、検証部42は、同一の未確定対象者に対する二次判定部25による判定結果と審査者33による判定結果とに基づいて、機械審査が適正に行われているか否か検証することにしてもよい。例えば、検証部42は、二次判定部25による機械審査の判定結果と、審査者33による人的審査の判定結果の一致率を算出し、一致率が所定閾値以下であれば機械審査が適正に行われていると判断することにしてもよい。
【0083】
以上、本実施形態によれば、未確定対象者選択部32は、未確定対象者の二次判定を二次判定部25に行わせるとともに、所定の抽出規則に従って、未確定対象者の一部を抽出して審査者33に割り当て、検証部42は、未確定対象者選択部32が審査者33に割り当てた未確定対象者に対する審査者33の判定結果と、未確定対象者に対する二次判定部25による二次判定の結果とに基づいて、二次判定が適正に行われているか否か検証する。審査者による人的審査の結果と二次判定部による自動判定の結果とを比較して、自動判定が良好に行われているか否かを容易に検証することができる。
【0084】
上述した各実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
10…審査支援システム、11…審査支援装置、12…審査支援装置、13…人的審査学習装置、13…デフォルト学習装置、14…人的審査学習装置、21…入力部、22…一次判定部、23…出力部、24…未確定対象者選択部、25…二次判定部、26…表示部、30…本審査支援システム、30…審査支援システム、31…審査支援装置、32…未確定対象者選択部、33…審査者、40…審査支援システム、41…審査支援装置、42…検証部、50…処理装置、51…CPU、52…メインメモリ、53…記憶装置、54…バス、61…入力装置、71…表示装置、111…デフォルト予測モデル、112…人的審査予測モデル、121…判断材料情報、131…一次判定結果、132…二次判定結果、134…ソフトウェアプログラム、141…デフォルト学習データ、142…人的審査学習データ、211…画面表示、212…画面表示、213…審査開始ボタン