(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】折畳式段ボール棺
(51)【国際特許分類】
A61G 17/007 20060101AFI20221101BHJP
A61G 17/013 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61G17/007
A61G17/013
(21)【出願番号】P 2018228935
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018071885
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594101994
【氏名又は名称】株式会社平和カスケット
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 章
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-272135(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201243(JP,U)
【文献】特開2005-187049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0185133(US,A1)
【文献】登録実用新案第3176847(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/007
A61G 17/013
B65D 5/12
B65D 5/32
B65D 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化段ボール材にV溝加工を施して、このV溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に組み上げるようにした段ボール棺であって、
平面方向から見て矩形の底箱と、
この底箱の左右上方に設けられる可倒式の側板と、
前記側板の前後にV溝を介して連結され、前記底箱の前後に向き合うように折り曲げられる折り代板と、
前記折り代板の上方から落とし込まれて前記側板の起立状態を保持する下向きコ字状の妻板と、を備えており、
前記側板は、
前記底箱の左右に立ち上げられる側板本体部と、
前記側板本体部の上端かつ前記折り代板よりも高い位置でV溝を介して棺内側に折り曲げられる側板上端部と、
前記側板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられる側板折返し部と、を有し、
前記妻板は、
前記折り代板の棺外側に重なる妻板本体部と、
前記妻板本体部の上端でV溝を介して棺内向きに折り曲げられる妻板上端部と、
前記妻板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられ、前記折り代板の棺内側に重なる妻板折返し部とを有しており、
さらに、前記側板は、前記側板本体部、前記側板上端部および前記側板折返し部の棺前後端に、同側板と同側板の折り代板とを折り曲げるためのV溝に沿って形成される側板繋ぎ面を有する一方、
前記妻板は、前記妻板上端部および前記妻板折返し部の棺左右端に、平面方向から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に向けて互いに近づくように傾斜する妻板繋ぎ面を有し、
前記折り代板の上方から前記妻板が落とし込まれて前記側板の起立状態が保持されるとき、前記側板繋ぎ面と前記妻板繋ぎ面とが重なり合うことにより、前記側板上端部と前記妻板上端部とが平面方向から見て直交方向に連結され、かつ、前記側板折返し部と前記妻板折返し部とが平面方向から見て直交方向に連結されることを特徴とする、折畳式段ボール棺。
【請求項2】
強化段ボール材にV溝加工を施して、このV溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に組み上げるようにした段ボール棺であって、
平面方向から見て矩形の底板と、
この底板の左右上方に設けられる可倒式の側板と、
前記側板の前後にV溝を介して連結され、前記底板の前後に向き合うように折り曲げられる折り代板と、
前記底板の前後にV溝を介して連結され、前記底板の前後に向き合うように折り曲げられる折り代板と、
前記折り代板の上方から落とし込まれて前記側板の起立状態を保持する下向きコ字状の妻板と、を備えており、
前記側板は、
前記底板の左右に立ち上げられる側板本体部と、
前記側板本体部の上端かつ前記側板の折り代板よりも高い位置でV溝を介して棺内側に折り曲げられる側板上端部と、
前記側板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられる側板折返し部と、を有し、
前記妻板は、
前記折り代板の棺外側に重なる妻板本体部と、
前記妻板本体部の上端でV溝を介して棺内向きに折り曲げられる妻板上端部と、
前記妻板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられ、前記折り代板の棺内側に重なる妻板折返し部とを有しており、
さらに、前記側板は、前記側板本体部、前記側板上端部および前記側板折返し部の棺前後端に、同側板と同側板の折り代板とを折り曲げるためのV溝に沿って形成される側板繋ぎ面を有する一方、
前記妻板は、前記妻板上端部および前記妻板折返し部の棺左右端に、平面方向から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に向けて互いに近づくように傾斜する妻板繋ぎ面を有し、
前記折り代板の上方から前記妻板が落とし込まれて前記側板の起立状態が保持されるとき、前記側板繋ぎ面と前記妻板繋ぎ面とが重なり合うことにより、前記側板上端部と前記妻板上端部とが平面方向から見て直交方向に連結され、かつ、前記側板折返し部と前記妻板折返し部とが平面方向から見て直交方向に連結されることを特徴とする、折畳式段ボール棺。
【請求項3】
請求項1または2記載の段ボール棺であって、前記妻板本体部の左右側端に強化段ボール材の切断面を覆い隠す目隠し材が設けられる、折畳式段ボール棺。
【請求項4】
請求項1記載の段ボール棺であって、前記底箱と前記側板とを上下に仕切る位置に、同位置における強化段ボール材の棺内側から外側に向けて切り込まれるV溝であって、前記側板を起立状態から折畳状態に切替可能なV溝が設けられる、折畳式段ボール棺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、強化段ボール材からなる折畳式段ボール棺に関し、詳しくは、可倒式の左右側板を妻板で保持するタイプの折畳式段ボール棺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、強化段ボール材にV溝加工を施して、このV溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に組み上げる段ボール棺が知られている。この種の段ボール棺には、箱状に折り曲げた強化段ボール材を接着剤等で固定して最初から棺の完成品とする固定式タイプと、棺の展開状態を半製品として作製し、この半製品を棺の使用時に組み立てて完成品とする折畳式タイプとがある。
本発明者らは、このような段ボール棺を開発する中で、折畳式段ボール棺として、矩形の底板の左右に可倒式の側板を連結しておき、この側板の起立状態を上方から落とし込んだ妻板により保持するものを提案している。
例えば
図16に示すように、従来形態(1)の段ボール棺10Aは、矩形の底板1Aの左右に可倒式の側板2Aが設けられる。これらの底板1Aと側板2Aの前後にはV溝を介して折り代板3A,3Bが連結される。左右の側板2Aをほぼ垂直に立ち上げ、折り代板3A,3Bを底板1Aの前後に向き合うように折り曲げる。
そして、折り代板3A,3Bの上方から下向きコ字状の妻板4Aを落とし込んで、左右の側板2Aの起立状態を保持する。
このように段ボール棺10Aを組み上げることにより、使用前には棺をコンパクトに折り畳んだ状態にしておき、葬儀等で必要となったときには棺を迅速に組み上げて使用することが可能になる。
折畳式段ボール棺の構成としては、耐久性の向上のために、
図16に示すような段ボール棺の底板1Aに代えて、底板の前後左右に枠状の板を立ち上げた底箱1Bを採用する場合もある(
図17参照)。このような段ボール棺では、底箱1Bの左右に可倒式の側板2Bが設けられることになる。
【0003】
なお、このような折畳式段ボール棺に関する先行技術としては、特許文献1および2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-272135号公報
【文献】特開2014-000281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような従来形態(1)の折畳式段ボール棺は、折り代板3A,3Bに下向きコ字状の妻板4Aを被せるという構造上、妻板4Aの左右幅が棺の左右幅よりも小さくなる。このため、妻板4Aの外側部分で側板2Aと妻板4Aとの繋ぎ目に段差が生じ(
図16二点鎖線参照)、棺の前後に妻板4Aの出っ張り部分が目立ちやすくなって、棺の外観が違和感のあるものになってしまう。
【0006】
これに対し、
図17に示すように、側板と妻板との繋ぎ目にアリ溝とホゾとを採用して妻板の出っ張りを解消した折畳式段ボール棺がある。
例えば
図17に示す段ボール棺10Bは、平面方向から見て矩形の底箱1Bの左右上方に可倒式の側板2B,2Bが設けられる。強化段ボール材からなる側板2Bと妻板4Bとの繋ぎ目部分に、アリ溝とホゾを加工した木片5,6が固定される。底箱1Bの左右に側板2Bを立ち上げ、妻板4Bを上方から落とし込む際に、一方の木片5のアリ溝に他方の木片6のホゾを差し込む。これにより、左右の側板2Bの起立状態が妻板4Bによって保持される。
【0007】
しかしながら、このような従来形態(2)の折畳式段ボール棺では、木片5,6にアリ溝とホゾを加工する作業が面倒で、さらには、木片5,6を段ボール材の端部に固定するといった作業が必要になるため、このような作業に手間がかかり棺の製造コストが大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、可倒式の左右側板と妻板との繋ぎ目に段差をなくして棺の外観の仕上がりを良好にし、しかも、簡単な加工作業により側板と妻板を製造可能にした折畳式段ボール棺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[第1発明]
前記課題を解決するための第1発明の折畳式段ボール棺は、
強化段ボール材にV溝加工を施して、このV溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に組み上げるようにした段ボール棺であって、
平面方向から見て矩形の底箱(21)と、
この底箱の左右上方に設けられる可倒式の側板(22)と、
前記側板の前後にV溝を介して連結され、前記底箱の前後に向き合うように折り曲げられる折り代板(23,23)と、
前記折り代板の上方から落とし込まれて前記側板の起立状態を保持する下向きコ字状の妻板(24)と、を備えており、
前記側板(22)は、
前記底箱の左右に立ち上げられる側板本体部(22a)と、
前記側板本体部の上端かつ前記折り代板よりも高い位置でV溝を介して棺内側に折り曲げられる側板上端部(22b)と、
前記側板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられる側板折返し部(22c)と、を有し、
前記妻板(24)は、
前記折り代板の棺外側に重なる妻板本体部(24a)と、
前記妻板本体部の上端でV溝を介して棺内向きに折り曲げられる妻板上端部(24b)と、
前記妻板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられ、前記折り代板の棺内側に重なる妻板折返し部(24c)とを有しており、
さらに、前記側板(22)は、前記側板本体部、前記側板上端部および前記側板折返し部の棺前後端に、同側板と同側板の折り代板(23)とを折り曲げるためのV溝に沿って形成される側板繋ぎ面(Fs)を有する一方、
前記妻板(24)は、前記妻板上端部および前記妻板折返し部の棺左右端に、平面方向から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に向けて互いに近づくように傾斜する妻板繋ぎ面(Ft)を有し、
前記折り代板の上方から前記妻板が落とし込まれて前記側板の起立状態が保持されるとき、前記側板繋ぎ面と前記妻板繋ぎ面とが重なり合うことにより、前記側板上端部と前記妻板上端部とが平面方向から見て直交方向に連結され、かつ、前記側板折返し部と前記妻板折返し部とが平面方向から見て直交方向に連結される構成とした。
【0010】
第1発明の構成は、段ボール棺の側板上部における折返し構造を、そのまま下向きコ字状の妻板の繋ぎ目として利用する点に特徴がある。このような段ボール棺の折返し構造は、通常、棺の補強のために採用されるところ、第1発明の構成では、単なる補強に留まらず、側板と妻板との繋ぎ目の外観を美しく仕上げるために利用する。
図16に示すように、下向きコ字状の妻板を採用する従来の折畳式段ボール棺では、棺角部分の寸法精度を高めるため、側板2Aの折返し構造が折り代板3Bまで延長される。側板2Aと折り代板3BとをV溝に沿って折り曲げると、これらの折返し構造が平面方向から見て90゜折れ曲がって繋がり、棺の角部分となる。
第1発明の構成では、このような従来の折返し構造のうち、折り代板の折返し構造を省略し、この省略部分を下向きコ字状の妻板で埋めるようにしている。つまり、側板と折り代板を折り曲げるためのV溝に沿った面を側板繋ぎ面として使用し、他方、この側板繋ぎ面に合わせて、下向きコ字状の妻板の左右端面を、平面方向から見て棺内側に向けて互いに近づくように傾斜させ、妻板繋ぎ面として使用する。これにより、側板と妻板との繋ぎ目における段差解消と、側板および妻板の繋ぎ目形状のシンプル化を実現するものである。
【0011】
第1発明の折畳式段ボール棺によれば、側板繋ぎ面と妻板繋ぎ面とが平面方向から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に向けて互いに近づくように傾斜する面で重なる。これにより、側板と妻板とがV溝を介して自然に折り曲げられたような格好になり、棺の外観の仕上がりを良好にすることができる。側板と妻板との繋ぎ目に段差をなくすことができるから、棺の前後に妻板の外側部分が出っ張るような外観になることがない。
【0012】
また、第1発明の構成によれば、側板と妻板との繋ぎ目にアリ溝とホゾのような加工が不要で、このような加工を施した木片を強化段ボール材に固定する必要もない。このため、側板および妻板の繋ぎ目の加工作業が簡単で製造コストを抑えることができる。
また、側板と折り代板とを折り曲げるためのV溝に沿って、側板繋ぎ面を形成することができるため、これらの加工作業を同じ工程で行うことが可能になる。
【0013】
[第2発明]
第2発明の折畳式段ボール棺は、
強化段ボール材にV溝加工を施して、このV溝に沿って同強化段ボール材を折り曲げて箱状に組み上げるようにした段ボール棺であって、
平面方向から見て矩形の底板(31)と、
この底板の左右上方に設けられる可倒式の側板(22)と、
前記側板の前後にV溝を介して連結され、前記底板の前後に向き合うように折り曲げられる折り代板(33a)と、
前記底板の前後にV溝を介して連結され、前記底板の前後に向き合うように折り曲げられる折り代板(33b)と、
前記折り代板の上方から落とし込まれて前記側板の起立状態を保持する下向きコ字状の妻板(24)と、を備えており、
前記側板(22)は、
前記底板の左右に立ち上げられる側板本体部(22a)と、
前記側板本体部の上端かつ前記側板の折り代板(33a)よりも高い位置でV溝を介して棺内側に折り曲げられる側板上端部(22b)と、
前記側板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられる側板折返し部(22c)と、を有し、
前記妻板(24)は、
前記折り代板の棺外側に重なる妻板本体部(24a)と、
前記妻板本体部の上端でV溝を介して棺内向きに折り曲げられる妻板上端部(24b)と、
前記妻板上端部の棺内側端でV溝を介して下向きに折り曲げられ、前記折り代板(33a,33b)の棺内側に重なる妻板折返し部(24c)とを有しており、
さらに、前記側板(22)は、前記側板本体部、前記側板上端部および前記側板折返し部の棺前後端に、同側板と同側板の折り代板(33a)とを折り曲げるためのV溝に沿って形成される側板繋ぎ面(Fs)を有する一方、
前記妻板(24)は、前記妻板上端部および前記妻板折返し部の棺左右端に、平面方向から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に向けて互いに近づくように傾斜する妻板繋ぎ面(Ft)を有し、
前記折り代板の上方から前記妻板が落とし込まれて前記側板の起立状態が保持されるとき、前記側板繋ぎ面と前記妻板繋ぎ面とが重なり合うことにより、前記側板上端部と前記妻板上端部とが平面方向から見て直交方向に連結され、かつ、前記側板折返し部と前記妻板折返し部とが平面方向から見て直交方向に連結される構成とした。
【0014】
第2発明は、棺底部の構成において、第1発明の底箱に代えて、底板を採用したものである。
第1発明の構成は、棺底部に底箱を採用することにより棺全体の強度(耐荷重性)が増すものの、底箱を製作する作業に手間がかかる。第2発明の構成によれば、矩形の底板の左右にV溝を介して直接側板を連結することができるため、強化段ボール材の加工作業が簡単になり、棺の製造コストをさらに抑えることができる。もちろん前述したような第1発明と同様の効果も得ることもできる。
【0015】
[第3発明]
第3発明の折畳式段ボール棺は、第1発明または第2発明の構成を備えるものであって、前記妻板本体部の左右側端に強化段ボール材の切断面を覆い隠す目隠し材(H)が設けられる構成とした。
【0016】
第1発明または第2発明の構成において、下向きコ字状の妻板を強化段ボール材で製作する場合、通常は、その左右側端面に強化段ボール材の切断面が現れる(
図6および
図9参照)。このような切断面のうち、妻板上端部と妻板折返し部の切断面は、棺の組み立て後に側板との繋ぎ目になって棺の外観に現れないが、妻板本体部の切断面は、棺前後の外観に現れることになる。
第3発明の構成によれば、妻板本体部の左右側端に目隠し材を設けることで、棺の前後の外観に強化段ボール材の切断面が現れることはない。これにより、棺の外観の仕上がりをさらに良好にすることができる。
目隠し材は、棺表面の色や柄と統一感のあるもので、シート、フィルム、布などで形成することができる。予め妻板本体部に設けてもよいし、棺の組み立てが完了してから、妻板本体部に設けてもよい。
【0017】
[第4発明]
第4発明の折畳式段ボール棺は、第1発明の構成を備えるものであって、前記底箱と前記側板とを上下に仕切る位置に、同位置における強化段ボール材の棺内側から外側に向けて切り込まれるV溝であって、前記側板を起立状態から折畳状態に切替可能なV溝が設けられる構成とした。
【0018】
第4発明の構成によれば、起立状態の側板がV溝に沿って棺の内側に折り曲がることにより折畳状態になる。このV溝は強化段ボール材の棺内側から外側に向けて切り込まれるため、棺の内側に隠れる。つまり、棺の外側から底箱と側板との間のV溝が見えない構成になるため、棺の側面を切れ目のないフラットな外観にすることができる。
また、左右の側板が棺の内側に向けて倒れるため、棺の折畳状態がコンパクトになり、棺の保管や運搬の作業性を良好にすることができる。
【0019】
[第1~4発明]
第1~4発明において、棺の用途(人用、ペット用等)や棺桶の種類(寝棺、座棺等)や形状は、特に限定されることはない。
第1~4発明の構成に加え、折り代板に妻板を落とし込んだ後に同妻板が上方へ移動するのを規制するロック手段を設けてもよい。例えば折り代板と妻板との隣接部分に、ロック手段としてダボ穴とこれに嵌まるダボを設ける。
このようなロック手段を設けることにより、棺の組み立て後に妻板の脱落を防止することができ、棺の信頼性を高めることができる。
第1~4発明の折畳式段ボール棺は、強化段ボール材を主体として形成されるが、必要に応じて木材等で補強してもよい。
なお、第1~4発明は、これらの発明を必要に応じて組み合わせて適用することができる。また、第1~3発明に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態による折畳式段ボール棺を示す斜視図である。
【
図2】同段ボール棺を示すもので、
図1の[2]-[2]線断面図である。
【
図3】同段ボール棺の側板を倒した状態を示す断面図である。
【
図4】同段ボール棺の棺本体を示す一部切り欠き組立分解斜視図である。
【
図5】同段ボール棺の棺本体を示すもので、側板の折り代板を折り曲げる前の状態を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図6】同段ボール棺の妻板を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図7】同妻板の展開状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図8】同段ボール棺の側板に妻板を落とし込む様子を示した断面図である。
【
図9】同妻板のロック手段の一例を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図10】第2実施形態による折畳式段ボール棺を示す斜視図である。
【
図11】同段ボール棺の棺本体を示す一部切り欠き組立分解斜視図である。
【
図12】第3実施形態による折畳式段ボール棺の棺本体を示す一部切り欠き組立分解斜視図である。
【
図13】第4実施形態による折畳式段ボール棺の棺本体を示す一部切り欠き組立分解斜視図である。
【
図14】同段ボール棺を示すもので、
図2に対応した断面図である。
【
図15】同段ボール棺の側板を倒した状態を示すもので、
図3に対応した断面図である。
【
図16】従来形態(1)による折畳式段ボール棺の棺本体を示す一部切り欠き組立分解斜視図である。
【
図17】従来形態(2)による折畳式段ボール棺の棺本体を示す一部切り欠き組立分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載の実施形態およびその変形例は、本発明を適用した形態の一例であり、発明の範囲がこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[第1実施形態]
図1に示すように、段ボール棺10は、棺本体12と蓋13とからなる。棺本体12の上方に蓋13が設けられ、蓋13の片寄りの位置に窓枠14が設けられる。この窓枠14には観音扉が取り付けられ、これらの扉を開くことで棺の内部が覗けるようになっている。
段ボール棺10の寸法は、例えば前後の棺長さ(長辺)が170~200cm程度、左右の棺幅(短辺)が50~70cm程度、高さが40~50cm程度である。
【0023】
棺本体12および蓋13は、強化段ボール材により形成される。棺本体12は、展開形状にカットされた強化段ボール材にV溝加工を施し、この段ボール材をV溝に沿って箱状に折り曲げることにより形成される。
強化段ボール材としては、例えば、板厚10~20mm程度の三層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)が採用される。この種の段ボール材は、
図2のR部分拡大図に示すように、2枚の厚板(ライナー)Rb,Rfとの間に、3層の波板r1~r3が仕切り板r4およびr5を介して積層されてなるもので、優れた耐圧性・耐水性をもつ。
【0024】
強化段ボール材に折曲げ用のV溝を形成する際には、これらの層のうち厚板Rf,Rbのいずれかを残して他の層を回転刃等を用いて切削する。強化段ボール材を折り曲げる場合、残した片方の厚板(ライナー)のみを折り曲げてV溝の溝面を互いに密着させる。V溝の溝角がほぼ90゜になるようにV溝加工を施せば、隣り合う板材同士がほぼ垂直に折れ曲がる。180゜を超えない範囲で溝角を設定することで、強化段ボール材を自在の角度に折り曲げることができる。
このように強化段ボール材をV溝で折り曲げることにより、厚板(ライナー)の折り曲げ部分がヒンジとなって、折り曲げた板材同士の切れ目がV溝の反対側に隠れることになる。これにより、棺本体12の角部の寸法精度が向上し、外観の仕上がりを良好にすることができる。なお、V溝加工の手段としては、プレス機等で強化段ボール材を断面V字状に圧縮してもよい。
【0025】
段ボール棺10の表面には、必要に応じて布やフィルムなどの化粧シートが貼り付けられる。このような化粧仕上げ施すことで、段ボール棺10の質感が高められる。強化段ボール材の表面に予め木目などの化粧柄をプリントしておき、このような強化段ボール材を箱状に組み立てて段ボール棺10とすることも可能である。
【0026】
図4に示すように、棺本体12は、底箱21、左右の側板22,22、折り代板23,23、および妻板24を備えている。底箱21は、平面方向から見て縦長矩形になっており、この底箱21の左右上方に可倒式の側板22が設けられる。これらの側板22の前後には、V溝を介して折り代板23が連結される。
【0027】
底箱21は、予め強化段ボール材を箱状に折り曲げて接着剤等で固定される。底箱21の左右上方には側板22が連結されており、これらが一枚の強化段ボール材により一体的に形成されている。
底箱21の製法は特に限定されないが、本実施形態では、矩形の底板の左右に側板21a、前後に台形の妻板21bがそれぞれV溝を介して連結されている。側板21aの前後には三角形の折り代板21cがV溝を介して連結される。これらの側板21a、妻板21bおよび折り代板21cがV溝に沿って折り曲げられ、各V溝面が接着剤等で固定されることで底箱21が組み上げられる。側板21aと折り代板21cの折り曲げ部分となる底箱21の角部分は、隣り合う板同士のズレがなく、良好な外観の仕上がりとなる。
【0028】
底箱21と側板22との間は、強化段ボール材に切り込まれたI溝18(
図3参照)により仕切られている。I溝18は、前述した強化段ボール材の積層構造のうち、棺内側の厚板(ライナー)のみを残して残りの部分を切断してなる。
図2に示すように、底箱21と側板22との間のI溝18は、棺外側から内側に向けてほぼ水平に形成されている。これにより、左右の側板22は底箱21の上方に向けた起立状態から棺内側に倒れた折畳状態になる(
図3参照)。このように側板22を内側に倒れるようにすることで、棺を折り畳んだ状態をコンパクトにすることができ、保管や運搬の作業性を良好にすることができる。
【0029】
なお、本実施形態は、上記のように側板22を棺内側に倒す構造を採用するため、棺本体12の側面にI溝18による切れ目が現れることになる。これに対し、他の実施形態として、棺内側から外側に向けてI溝を形成してもよい。この場合、外側の厚板(ライナー)の折れ部分がヒンジとなって側板22を底箱21の外側に倒す構造となるため、底箱21と側板22との間のI溝18による切れ目を棺の内側に隠すことができる。
【0030】
図5は、底箱21の左右上方に側板22を立ち上げた状態を示している。この状態から底箱21の前後に向き合うように、折り代板23を側板22に対してほぼ垂直に折り曲げると、
図4に示すように、折り代板23,23が底箱21の前後上方に隙間Sを保って立ち上がった状態になる。そして、この状態で折り代板23の上方から下向きコ字状の妻板24が落とし込まれると、可倒式の側板22の起立状態が妻板24によって保持される。
【0031】
図2に示すように、側板22は、側板本体部22a、側板上端部22bおよび側板折返し部22cを備えている。側板本体部22aの上端でV溝を介して側板上端部22bが棺内向きに折り曲げられ、この側板上端部22bの棺内側端でV溝を介して側板折返し部22cが下向きに折り曲げられる。これらの各部は、折り返した状態で予め接着剤等で固定される。
このようにV溝に沿って各部を折り曲げることにより、棺本体12(側板22)の開口端(上端)が段ボール材の切断面の見えないフラットな面となる。また、側板上端部22bおよび側板折返し部22cの折返し構造によって棺本体12の強度が向上する。
【0032】
図4および
図5に示すように、側板本体部22a、側板上端部22bおよび側板折返し部22cの前後端には、側板繋ぎ面Fsが形成される。この側板繋ぎ面Fsは、側板22と折り代板23とを折り曲げるためのV溝に沿って延長される面であり、側板本体部22a、側板上端部22bおよび側板折返し部22cを折返した後、この段ボール材に折り代板23を折り曲げるためのV溝加工を施すことにより同時に形成される。
【0033】
図6および
図7に示すように、妻板24は、妻板本体部24aと、妻板上端部24bと、妻板折返し部24cとを備えている。妻板本体部24aの上端でV溝28(
図7参照)を介して妻板上端部24bが折り曲げられ、妻板上端部24bの棺内側端で妻板折返し部24cがV溝29(
図7参照)を介して下向きに折り曲げられる。これにより、これらの部位が棺側面方向から見て下向きコ字状の形状になる(
図6(C)参照)。
【0034】
妻板本体部24aは、棺の妻面とほぼ同じサイズの矩形に形成されており、妻板折返し部24cは、棺内に収まるように妻板本体部24aよりも小さいサイズの矩形に形成されている。妻板上端部24bは、妻板本体部24aと妻板折返し部24cとを繋ぐように平面方向からみて台形の板面になるように形成される(
図7(B)参照)。
【0035】
妻板上端部24bと妻板折返し部24cの側端面は、棺上方(平面方向)から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に行くに従い互いに近づくように傾斜している。つまり、妻板上端部24bの台形の傾斜に合わせて妻板折返し部24cの端面がカットされる。このように加工された妻板上端部24bと妻板折返し部24cの端面が妻板繋ぎ面Ftとなる(
図6参照)。
【0036】
妻板本体部24aと妻板折返し部24cとの間には中板25が挟み込まれている。この中板25は、強化段ボール材からなるもので、中板25の厚みは、折り代板23の厚みと等しく、そのサイズは、左右の折り代板23の間にできる隙間Sより若干小さい程度である。折り代板23の上方から妻板24を落とし込んだとき、この隙間Sに中板25がぴったりと収まる(
図8参照)。
このような中板25を採用することで妻板24の形状を安定させることができる。加えて、妻板繋ぎ面Ftと側板繋ぎ面Fsとの位置ズレを防止し、棺の寸法精度を向上させることが可能になる。これらの妻板24を構成する各板は、予め接着剤等で固定され、
図6の形態に保たれる。
【0037】
ここで、第1実施形態において、棺本体12には、
図9に示すように、組み立て後に妻板24が抜けるのを防止するロック手段としてダボ27が取り付けられる。底箱21と妻板24との隣接部分、および折り代板23と妻板24との隣接部分にダボ穴を設けておき、これらのダボ穴にダボ27を差し込んで妻板24と折り代板23とを固定する。
図9の例では、妻板24の棺内側から見て左右端部(折り代板23と妻板24との隣接部分)にそれぞれ2箇所、下端部(底箱21と妻板24との隣接部分)に2箇所の計6箇所にダボ27を設けている(
図6参照)。
【0038】
このような構成によれば、棺本体12を組み立てた後に妻板24を引き上げようとしても、ダボ27が折り代板23に引っかかるため、妻板24の移動を規制することができる。これにより、折り代板23と側板22のガタ付きを抑えることができ、棺本体12の形状安定性をさらに向上させることが可能になる。
なお、妻板24の上方への移動を規制するロック手段としては、ダボ27に限定されることなく、係止爪やピン等を採用してもよい。棺の使用後に折り畳む必要がない場合には、折り代板23と妻板24との接触面を接着剤で固定することも可能である。
【0039】
棺本体12を組み立てる場合、まず、
図3のように折り畳まれた左右の側板22を起こして底箱21の上方に立ち上げ、前後の折り代板23を底箱21の前後に向き合うように折り曲げる(
図4参照)。この状態で折り代板23の上方から妻板24を落とし込んで側板22の起立状態を保持する。
折り代板23の上方から妻板24を落とし込むとき、側板繋ぎ面Fsに妻板繋ぎ面Ftがスライドしながら妻板24が下方に移動し、妻板24の下端は、折り代板23を前後に挟む位置から底箱21の妻板21bおよび折り代板21cを前後に挟む位置に達する。妻板24が最も下の位置まで来ると、
図1に示すように、棺正面の外観となる。このとき、側板繋ぎ面Fsと妻板繋ぎ面Ftとが重なり合うことにより、棺上方(平面方向)から見て側板上端部22bと妻板上端部24bとが直交方向に連結され、これらが同じ高さに連なる。側板折返し部22cと妻板折返し部24cとは、棺上方(平面方向)から見て直交方向に連結される。そして、折り代板23の間に中板25が収まることになる。
【0040】
第1実施形態の段ボール棺によれば、棺本体12を組み立てると、側板22と妻板24とがV溝を介して自然に折り曲げられたような格好になる(
図1参照)。側板22と妻板24との繋ぎ目に段差をなくすことができるから、棺の前後に妻板24の外側部分が出っ張るような形になることもなく、棺の外観の仕上がりを良好にすることができる。
【0041】
また、第1実施形態の段ボール棺によれば、側板繋ぎ面Fsと妻板繋ぎ面Ftとが共に段差のない平面であるため、V溝加工用の回転刃等でこれらの繋ぎ面を単一工程(ワンカット)で仕上げることができる。このため、側板22および妻板24の繋ぎ目の加工作業が簡単で製造コストを抑えることができる。
側板22と妻板24との繋ぎ目にアリ溝とホゾのような加工が不要で、このような加工を施した木片を強化段ボール材に固定する作業も必要ない。
【0042】
第1実施形態において、強化段ボール材で妻板24を製作する場合、その左右側端面に強化段ボール材の切断面が現れる(
図6参照)。このような切断面のうち、妻板上端部24bと妻板折返し部24cの切断面は、棺の組み立て後に側板22との繋ぎ目になって棺の外観に現れないが、妻板本体部24aの切断面は、棺前後の外観(側面)に現れる。
この対策として、妻板本体部24aの左右側端に、
図9(A)の符号Hで示す目隠し材Hを貼り付けてもよい。
【0043】
妻板本体部24aの左右側端に目隠し材Hを設けることにより、棺前後の外観に強化段ボール材の切断面が現れるのを防止することができ、棺の外観の仕上がりをさらに良好にすることができる。
なお、目隠し材Hは、棺表面の色や柄と統一感のあるシート、フィルム、布などを採用することができる。予め妻板本体部24aの左右側端(切断面)に貼り付けておいてもよいし、棺表面の装飾材を延長させて妻板本体部24aの左右側端(切断面)を覆うようにしてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の折畳式段ボール棺を
図10および
図11に示す。第2実施形態は、棺本体12の底箱21に代えて、底板31を採用したものである。
段ボール棺30は、第1実施形態と同様、箱状の棺本体12と、この棺本体12に被せられる蓋13とを備えている。
図11に示すように、棺本体12は、底板31と、側板22と、妻板24とを備えている。底板31の左右に、V溝の折り曲げ部分をヒンジとする可倒式の側板22が設けられる。側板22の前後には、V溝を介して折り代板33a,33aが連結され、底板31の前後にはV溝を介して折り代板33bが連結されている。妻板24の構成は、第1実施形態と実施的に同様である。
側板繋ぎ面Fsは、側板本体部22aと、側板上端部22bと、側板折返し部22cの前後端に、側板22と折り代板33aとを折り曲げるためのV溝に沿って形成される。妻板繋ぎ面Ftは、第1実施形態と同様に、妻板上端部24bと妻板折返し部24cの側端に、棺上方(平面方向)から見て棺左右幅と一致する位置から棺内側に行くに従い互いに近づくように傾斜して形成される。
【0045】
第2実施形態の棺本体12を組み立てる場合、側板22、折り代板33a、33bが平面上に連なった展開状態から、まず底板31の左右上方に側板22を立ち上げ、側板22の前後で折り代板33aを棺前後に向き合うように折り曲げる。底板31の折り代板33bも同様に棺前後に向き合うように折り曲げる(
図11参照)。
このような状態で妻板24を上方から折り代板33a,33bに落とし込んで、左右の側板22の起立状態を保つ。このとき、側板繋ぎ面Fsと妻板繋ぎ面Ftとが重なり合うことにより、棺上方(平面方向)から見て側板上端部22bと妻板上端部24bとが直交方向に連結され、これらが同じ高さに連なる。側板折返し部22cと妻板折返し部24cとは、棺上方(平面方向)から見て直交方向に連結される。折り代板33a,33bの隙間Sには中板25(図示省略)が収まる。
【0046】
第2実施形態の段ボール棺30においても、第1実施形態と同様に、棺本体12の組み立て後に側板22と妻板24とがV溝を介して自然に折り曲げられたような格好になり(
図10参照)、棺の外観の仕上がりを良好にすることができる。側板22と妻板24との繋ぎ目に段差が生じないため、棺の前後に妻板24の外側部分が出っ張るような外観になることもない。
また、底板31の左右に直接側板22が立ち上げられるため、棺側面にI溝18(
図4参照)による切れ目をなくすこともできる。
さらに、第2実施形態よれば、第1実施形態のような底箱の製作が不要となるため、強化段ボール材の加工工程が少なくなり、棺の製造コストをさらに抑えることができる。
【0047】
[第3実施形態]
第3実施形態の折畳式段ボール棺を
図12に示す。第3実施形態は、折り代板23と妻板24との間に位置決め手段を設けたものである。
図12に示すように、段ボール棺40は、基本的には第1実施形態と共通の棺本体12を備えている。
左右の側板22に連結される折り代板23にそれぞれ上方から所定長さのスリット41,41が設けられる。妻板24の内側には中板25の左右側方に各スリット41の位置に合わせて結合片42,42が固定されている。結合片42の長さは、スリット41よりも短く形成される。その他の構成については第1実施形態と実質的に同様である。
【0048】
折り代板23の上方から妻板24を落とし込むと、折り代板23の間(隙間S)に妻板24の中板25が収まり、同時に、各スリット41に結合片42が挿入される。側板繋ぎ面Fsと妻板繋ぎ面Ftとは、互いに重なって側板22と妻板24との間に隠れる。
【0049】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果に加え、スリット41と結合片42とが嵌まり合うことで、折り代板23に対して妻板24を正確に位置決めすることができる。また、側板22の展開を確実に抑えることができるので、側板22に負荷がかかっても妻板24がズレにくくなり、棺の形状をより安定させることができる。
【0050】
[第4実施形態]
第4実施形態の折畳式段ボール棺を
図13~
図15に示す。第4実施形態は、棺本体12の外観に底箱21と側板22の切れ目が見えないようにしたものである。
前述したように、第1実施形態の構造では、側板22を起立状態から折畳状態にするために棺本体12の側面、すなわち底箱21と側板22とを仕切る位置にI溝18が設けられている。このI溝は、強化段ボール材の棺内側の厚板(ライナー)を残して棺外側から内側に向けて切り込まれている。このため、この厚板(ライナー)の折れ部分がヒンジとなって側板22を棺内側に向けて倒すことができる。
しかしながら、このような構造では、折畳式段ボール棺の組み立て後に、棺本体12の側面にI溝18による切れ目が現れて見た目が好ましくないことがある。特に、葬儀の際には、祭壇の前に置かれた棺の側面が参列者から直接見える場合があり、その外観はフラットであることが望ましい。
これに対して、前述したように、強化段ボール材の棺内側から外側に向けてI溝18を切り込むようにすると、棺本体12の内側にI溝18による切れ目を隠して棺本体12の側面の外観をフラットにすることができる。しかしながら、このような構成では、左右の側板22が棺の外向きに倒れることになるため、棺本体12をコンパクトに折り畳むことが難しくなる。
【0051】
上記のような課題を解決するために、第4実施形態の折畳式段ボール棺50は、第1実施形態の棺本体12のI溝18に代えてV溝51を採用したものである。
図13および
図14に示すように、棺本体12は、底箱21の左右上方に可倒式の側板22が設けられる。棺本体12の内側であって底箱21と側板22とを仕切る位置に、側板22,22を起立状態から折畳状態に切替可能なV溝51,51が設けられている。
これらのV溝51,51は、同位置における強化段ボール材の棺外側の厚板(ライナー)を残して棺内側から外側に向けて切り込まれる。棺本体12の長さ方向に沿って連なっており、溝断面はほぼ90゜に保たれる。この厚板(ライナー)の折れ部分がヒンジとなることにより、側板22,22が起立状態から棺内側に向けて倒れるようになっている(
図15参照)。棺本体12を組み立てる手順は、第1実施形態と同様である。
【0052】
第4実施形態の折畳式段ボール棺50によれば、第1実施形態の効果に加え、側板22を折り畳むためのV溝51を棺の内側に隠すことができる。このため、側板22を立ち上げた後の棺本体12の側面が底箱21と側板22の切れ目のないフラットな外観となる(
図13参照)。
また、左右の側板22,22が棺本体12の内側に向けて倒れるため、棺本体12の折畳状態がコンパクトになり、棺の保管や運搬の作業性を良好にすることができる。
なお、第4実施形態では、棺本体12を組み立てる際に折り代板23に妻板24を落とし込むと、側板22の起立姿勢が安定する。このため、起立状態の側板22と底箱21との間にV溝51による隙間があっても、棺本体12の形状安定性を十分確保することができる。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の実施形態による棺桶を説明したが、本発明の実施形態は、これらの構成に限定されることなく、種々の変形や変更を伴ってもよい。
第1~4実施形態では、強化段ボール材で段ボール棺(棺本体12、蓋13および窓枠14)を形成するものであるが、必要に応じて、木片等を段ボール材に組み込んでもよい。例えば底箱21または底板31に合板や集成材を重ねて貼り合わせると、棺の強度を高めて耐荷重性を向上させることができる。
また、前記実施形態では、平面的な形状の蓋を採用しているが、段ボール材を箱状に折り曲げることにより立体的な形状の蓋としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10・・段ボール棺(折畳式段ボール棺)
12・・棺本体 13・・蓋 14・・窓枠 18・・I溝
21・・底箱 22・・側板 23・・折り代板 24・・妻板
22a・・側板本体部 22b・・側板上端部 22c・・側板折返し部
24a・・妻板本体部 24b・・妻板上端部 24c・・妻板折返し部
25・・中板 ダボ(ロック手段)・・27
31・・底板 31a・・折り代板 33b・・折り代板
51・・V溝
Fs・・側板繋ぎ面 Ft・・妻板繋ぎ面 H・・目隠し材 S・・隙間