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特許7168212頭皮のフケ及び/又は痒みの予防及び改善用頭皮頭髪化粧料
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  • 特許-頭皮のフケ及び/又は痒みの予防及び改善用頭皮頭髪化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】頭皮のフケ及び/又は痒みの予防及び改善用頭皮頭髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20221101BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20221101BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/26
A61K8/27
A61Q5/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019002622
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020111529
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三浦 史帆里
(72)【発明者】
【氏名】赤座 誠文
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150266(JP,A)
【文献】特開2001-261529(JP,A)
【文献】特開2010-090049(JP,A)
【文献】特開2011-148773(JP,A)
【文献】特表2015-500871(JP,A)
【文献】特開2014-151137(JP,A)
【文献】Purifying Anti-Dandruff , ID 1866687,Mintel GNPD[online],2012年8月,[検索日2022.09.14],インターネット<https://www.portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛を含有することを特徴とする頭皮のフケ及び/又は痒みの予防及び/又は改善用頭皮頭髪化粧料。
【請求項2】
マラセチアに対する抗菌効果を有することを特徴とする請求項1記載の頭皮頭髪化粧料。
【請求項3】
硫酸アルミニウムカリウムの含有量が頭皮頭髪化粧料全量に対し0.0001~1重量%、且つ硫酸亜鉛の含有量が頭皮頭髪化粧料全量に対し0.0001~1重量%未満であることを特徴とする請求項2記載の頭皮頭髪化粧料。
【請求項4】
硫酸アルミニウムカリウムの含有量が頭皮頭髪化粧料全量に対し0.0001~0.009重量%、且つ硫酸亜鉛の含有量が頭皮頭髪化粧料全量に対し0.0001~0.009重量%未満であることを特徴とする請求項2記載の頭皮頭髪化粧料。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮のフケ及び/又は痒みに対する予防及び/又は改善効果に優れる頭皮頭髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
フケは、頭皮の角質片が剥がれ落ちたものであり、正常な頭皮においても発生する。さらに、この症状が過剰になった場合、フケ症と呼ばれる皮膚トラブルとなることもある。
【0003】
頭皮におけるフケ及び痒みの原因の一つとして、マラセチアが知られている。頭皮の皮脂が過剰になった場合、皮膚常在菌であるマラセチアが過剰増殖し、フケ及び痒みを引き起こすのである。そのため、頭皮のフケ及び痒みを抑制する目的で、マラセチアに対する抗菌剤又は殺菌剤を含有した頭皮頭髪化粧料が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(A)マルトオリゴ糖と、(B)ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン、硝酸ミコナゾール及び硫黄から選択される少なくとも1種の抗菌剤を含有させ、(A)マルトオリゴ糖と(B)抗菌剤の含有量の質量比(A/B)を0.01~100とすることで、頭皮の赤み及びフケを飛躍的に改善でき、更に頭皮の痒みを改善し、且つ頭皮の痒み改善効果が長期間にわたって持続可能な頭皮頭髪化粧料が開示されている。特許文献2には、(A)ユーカリエキス、(B)多価アルコール、(C)(c1)抗菌剤及び(c2)清涼剤から選ばれる1種以上を含有させ、フケ及び痒みの低減効果及び清涼感・爽快感に優れ、且つ製剤の経時安定性に優れる頭皮頭髪化粧料が開示されている。
【0005】
【文献】特開2011-148773号公報
【文献】特開2005-206538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの頭皮頭髪化粧料によるフケ及び/又は痒みに対する効果は必ずしも十分ではなく、効果の高い、新しい成分の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決に向けた鋭意研究の結果、ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛の3成分の併用が、頭皮に常在するマラセチアに対する優れた抗菌性を有することを見出した。さらに、ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛の3成分を含有した頭皮頭髪化粧料に、頭皮のフケ及び/又は痒みに対する予防及び/又は改善効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明におけるピロクトンオラミンは、1-ヒドロキシ-2-ピリドン系化合物である。マラセチアに対する増殖抑制効果が知られている。化粧品原料としての使用実績があり、安全性が確認されている。ピロクトンオラミンとしては、医薬品用や化粧品用として市販されているものを用いることができる。
【0009】
本発明における硫酸アルミニウムカリウムは、明礬(ミョウバン)泉の成分であり、AlK(SOで表される。カリウムミョウバン、又はカリミョウバンとも呼ばれる。製法は特に限定されない。
【0010】
本発明における硫酸亜鉛は、硫酸塩泉の成分であり、ZnSOで表される。製法は特に限定されない。
【0011】
本発明におけるピロクトンオラミンの頭皮頭髪化粧料への含有量は、好ましくは0.001~1重量%である。0.001重量%未満では十分な効果を得にくく、1重量%を超えると効果の増強は小さく、また不経済である。
【0012】
本発明における硫酸アルミニウムカリウムの頭皮頭髪化粧料への含有量は、好ましくは0.0001~1重量%であり、より好ましくは0.001~0.009重量%である。0.0001重量%未満では十分な効果を得にくく、1重量%を超えると効果の増強は小さく、また不経済である。
【0013】
本発明における硫酸亜鉛の頭皮頭髪化粧料への含有量は、好ましくは0.0001~1重量%であり、より好ましくは0.001~0.009重量%である。0.0001重量%未満では十分な効果を得にくく、1重量%を超えると効果の増強は小さく、また不経済である。
【0014】
本発明の頭皮頭髪化粧料には、その効果を損なわない範囲内で、通常の頭皮頭髪化粧料に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を含有することもできる。
【0015】
本発明において、ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、洗浄剤、軟膏等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛の3成分の併用は、頭皮に常在するマラセチアに対する優れた抗菌性を示した。また、ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛の3成分を含有した頭皮頭髪化粧料は、頭皮のフケ及び痒みに対する優れた予防及び/又は改善効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】処方例1及び比較例の化粧水における、頭皮に常在するマラセチアに対する抗菌効果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す含有量の部とは重量部を示す。
【実施例1】
【0019】
処方例1 化粧水
[処方] 含有量
1.ピロクトンオラミン 0.05 部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.002
3.硫酸亜鉛 0.001
4.1,3-ブチレングリコール 1.0
5.1-メントール 0.1
6.エタノール 40.0
7.精製水 58.847
[製造方法]成分1~7を均一に混合し製品とする。
【0020】
比較例
処方例1において、成分1~3を0~2つ含有し、残りは精製水に置き換えたものを比較例1~5とした。
比較例1:成分1~3を含有せず
比較例2:ピロクトンオラミン(成分1)のみ含有
比較例3:ピロクトンオラミン(成分1)及び硫酸アルミニウムカリウム(成分2)のみ含有
比較例4:ピロクトンオラミン(成分1)及び硫酸亜鉛(成分3)のみ含有
比較例5:硫酸アルミニウムカリウム(成分2)及び硫酸亜鉛(成分3)のみ含有
【0021】
処方例2 化粧水
[処方] 含有量
1.ピロクトンオラミン 0.05 部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.005
3.硫酸亜鉛 0.005
4.炭酸水素ナトリウム 0.2
5.1,3-ブチレングリコール 8.0
6.グリセリン 2.0
7.キサンタンガム 0.02
8.クエン酸 0.01
9.クエン酸ナトリウム 0.1
10.エタノール 5.0
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
12.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
13.香料 0.1
14.精製水 84.31
[製造方法]成分1~9及び14と、成分10~13をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0022】
処方例3 クリーム
[処方] 含有量
1.ピロクトンオラミン 0.04 部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.006
3.硫酸亜鉛 0.004
4.スクワラン 5.5
5.オリーブ油 3.0
6.ステアリン酸 2.0
7.ミツロウ 2.0
8.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
9.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
10.ベヘニルアルコール 1.5
11.モノステアリン酸グリセリン 2.5
12.香料 0.1
13.1,3-ブチレングリコール 8.5
14.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
15.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
16.精製水 68.10
[製造方法]成分4~11を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1~3及び13~16を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃にて成分12を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0023】
処方例4 乳液
[処方] 含有量
1.ピロクトンオラミン 0.05 部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.005
3.硫酸亜鉛 0.003
4.スクワラン 5.0
5.オリーブ油 5.0
6.ホホバ油 5.0
7.セタノール 1.5
8.モノステアリン酸グリセリン 2.0
9.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
10.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
(20E.O.)
11.香料 0.1
12.プロピレングリコール 1.0
13.グリセリン 2.0
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.精製水 73.142
[製造方法]成分4~10を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1~3及び12~15を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃にて成分11を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0024】
処方例5 ゲル剤
[処方] 含有量
1.ピロクトンオラミン 0.03 部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.008
3.硫酸亜鉛 0.002
4.エタノール 5.0
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
6.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
7.香料 0.1
8.1,3-ブチレングリコール 5.0
9.グリセリン 5.0
10.キサンタンガム 0.1
11.カルボキシビニルポリマー 0.2
12.水酸化カリウム 0.2
13.精製水 84.16
[製造方法]成分4~7と、成分1~3及び8~13をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【実施例2】
【0025】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0026】
実験1 マラセチアに対する抗菌性試験
日本化学療法学会標準法のカンテン平板希釈法に準じて、マラセチア(Malasezzia globosa NBRC 101597)に対するピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛の最小発育阻止濃度(MIC、μg/mL)を測定した。すなわち、各成分を1~1000μg/mL(公比2)となるように加えた培地を用い、マラセチアの増殖性を検討した。培地としてはLeeming&Notman agar培地(J Clin Microbiol,Vol.25,PP.2017-2019,1987)を用い、32.5℃、12日間培養した。
【0027】
ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛のマラセチアに対する最小発育阻止濃度を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
硫酸アルミニウムカリウム、及び/又は硫酸亜鉛を併用した場合における、ピロクトンオラミンのマラセチアに対する最小発育阻止濃度を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2の結果から、硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸亜鉛を併用することにより、ピロクトンオラミンのマラセチアに対する抗菌性が顕著に向上することが明らかとなった。
【0032】
実験例2 頭皮に常在するマラセチアに対する抗菌効果の検討
処方例1及び比較例の化粧水を用いて、頭皮にフケ及び/又は痒みのある86名を対象に、頭皮に対する1ヶ月間の使用試験を行った。使用前後に、2%ポリソルベート80水溶液を含ませた綿棒を用いて頭頂部の2cmの範囲を拭き取り、マラセチア菌数を測定した。マラセチア菌数測定は、文献(J Dermatol 43,906-911,2016)に準じ、リアルタイムPCRを用いたDNA定量解析によって行った。
【0033】
処方例1及び比較例の化粧水における、頭皮に常在するマラセチアに対する抗菌効果を図1に示す。
【0034】
図1の結果から、ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム及び/又は硫酸亜鉛を0~2つ含有する比較例1~5の比較例と比べ、3成分を併用した処方例1は、頭皮に常在するマラセチアに対する抗菌効果が高いことが明らかとなった。
【0035】
実験例3 頭皮のフケ・痒みの改善効果
処方例1及び比較例の化粧水を用いて、頭皮にフケ及び/又は痒みのある86名を対象に、頭皮に対する1ヶ月間の使用試験を行った。使用後に、アンケート調査によりフケ・痒みの予防及び/又は改善効果について調査した。
【0036】
結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3の結果から、ピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム及び/又は硫酸亜鉛を0~2つ含有する比較例1~5の比較例と比べ、3成分を併用した処方例1は、優れた頭皮のフケ及び/又は痒みの改善効果を示すことが明らかとなった。なお、試験期間中皮膚トラブルは1人もなく、安全性においても問題なかった。
【0039】
処方例2~5で得られた皮膚外用剤についても同様に使用試験を行った結果、いずれも十分な頭皮のフケ及び/又は痒みの改善効果を示した。また、試験期間中皮膚トラブルは1人もなく、安全性においても問題なかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のピロクトンオラミン、硫酸アルミニウムカリウム、及び硫酸亜鉛を含有することを特徴とする頭皮頭髪化粧料は、頭皮のフケ及び/又は痒みの予防及び/又は改善に利用可能である。


図1