(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ソフトウェア無線機試験システム、ソフトウェア無線機試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/17 20150101AFI20221101BHJP
H04B 1/00 20060101ALI20221101BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20221101BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20221101BHJP
【FI】
H04B17/17
H04B1/00 103
H04B17/29 200
H04W88/02 160
H04W88/02 150
(21)【出願番号】P 2019005351
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000232221
【氏名又は名称】日本電気航空宇宙システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 由美子
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0313197(US,A1)
【文献】特開2008-131409(JP,A)
【文献】特開2005-039557(JP,A)
【文献】特開2010-044488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/17
H04B 1/00
H04B 17/29
H04W 88/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアを試験するソフトウェア無線機試験システムであって、
試験対象の前記ソフトウェア無線機とのCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信により取得したドメイン・マネジャ(Domain Manager)に基づいて、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを定義する定義ファイルとしてSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)を取得し、
取得した該ドメイン・プロファイル(Domain Profile)から抽出した前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを試験するための試験データを生成して、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを自動的に試験する、
ことを特徴とするソフトウェア無線機試験システム。
【請求項2】
前記試験データによる自動試験の対象範囲が、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアのうち、SCA規格にて規定されているCF(Core Framework)インタフェースのデバイス(Device)とアプリケーションのリソース(Resource)とである、
ことを特徴とする請求項1に記載のソフトウェア無線機試験システム。
【請求項3】
前記定義ファイルとしてSCA規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)に含まれている各種のファイルのうち、少なくとも、SAD(Software Assembly Descriptor)ファイル、SPD(Software Package Descriptor)ファイル、SCD(Software Component Descriptor)ファイル、PRF(Properties Descriptor)ファイルを用いて、前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティを抽出する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のソフトウェア無線機試験システム。
【請求項4】
前記CORBA API通信において試験対象の前記ソフトウェア無線機の名前サービスを利用することにより、前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関する前記ドメイン・マネジャ(Domain Manager)を取得する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のソフトウェア無線機試験システム。
【請求項5】
ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアを試験するソフトウェア無線機試験方法であって、
試験対象の前記ソフトウェア無線機とのCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信により取得したドメイン・マネジャ(Domain Manager)に基づいて、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを定義する定義ファイルとしてSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)を取得し、
取得した該ドメイン・プロファイル(Domain Profile)から抽出した前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを試験するための試験データを生成して、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを自動的に試験する、
ことを特徴とするソフトウェア無線機試験方法。
【請求項6】
前記試験データによる自動試験の対象範囲が、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアのうち、SCA規格にて規定されているCF(Core Framework)インタフェースのデバイス(Device)とアプリケーションのリソース(Resource)とである、
ことを特徴とする請求項5に記載のソフトウェア無線機試験方法。
【請求項7】
前記定義ファイルとしてSCA規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)に含まれている各種のファイルのうち、少なくとも、SAD(Software Assembly Descriptor)ファイル、SPD(Software Package Descriptor)ファイル、SCD(Software Component Descriptor)ファイル、PRF(Properties Descriptor)ファイルを用いて、前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティを抽出する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載のソフトウェア無線機試験方法。
【請求項8】
前記CORBA API通信において試験対象の前記ソフトウェア無線機の名前サービスを利用することにより、前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関する前記ドメイン・マネジャ(Domain Manager)を取得する、
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のソフトウェア無線機試験方法。
【請求項9】
ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアを試験する処理をコンピュータによって実行するソフトウェア無線機試験プログラムであって、
試験対象の前記ソフトウェア無線機とのCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信により取得したドメイン・マネジャ(Domain Manager)に基づいて、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを定義する定義ファイルとしてSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)を取得し、
取得した該ドメイン・プロファイル(Domain Profile)から抽出した前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを試験するための試験データを生成して、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを自動的に試験する、
ことを特徴とするソフトウェア無線機試験プログラム。
【請求項10】
前記試験データによる自動試験の対象範囲が、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアのうち、SCA規格にて規定されているCF(Core Framework)インタフェースのデバイス(Device)とアプリケーションのリソース(Resource)とである、
ことを特徴とする請求項9に記載のソフトウェア無線機試験プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウェア無線機試験システム、ソフトウェア無線機試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラムに関し、特に、ソフトウェア無線機に搭載したSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格準拠のソフトウェアを試験するためのソフトウェア無線機試験システム、ソフトウェア無線機試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の無線機においては、無線通信方式ごとにそれぞれに専用の信号処理部をハードウェアとして備えて構成されている。しかし、近年、無線通信方式の多様化の進展が急激に進み、多様な無線機間の通信を行うことが必要となる状況に変化してきている。このため、近年においては、一つの汎用的なハードウェアを用いて、変復調や符号化・復号化、送信パワー、周波数制御等に関する各種の無線通信方式それぞれに対応する処理をソフトウェア化するという無線機の開発が活発化してきている。かかる無線機のことを「ソフトウェア無線機」と称している。ここで、ソフトウェア無線機においては、ソフトウェアの入れ替えにより異なる機能も実現することができるので、ハードウェア無線機に比して無線機の開発費用を圧縮することが可能になるという利点もある。
【0003】
しかし、無線機としてソフトウェアの記述部分が増加すればするほど、その組み合わせは増加して複雑化していく。かかる事態に対処するために、例えば特許文献1の特開2009-223732号公報「分散処理プログラム」等に分散処理技術として記載されているように、OMG(Object Management Group)によって標準化されたCORBA(Common Object Request Broker Architecture)がある。CORBA環境においては、分散システム環境においてプラットフォームやプログラム言語の壁を超えてソフトウェア同士の結合を実現するために、ソフトウェア部品を組み合わせてアプリケーションを構築していく手法が導入され、ソフトウェア部品同士がプラットフォームやプログラム言語の壁を超えてメッセージを交換するための共通仕様が規定されている。
【0004】
そして、ソフトウェア部品を組み合わせてアプリケーションを構築する技術の一つとして、Open SOA Collaborationにて仕様策定されたSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)仕様がある。該SCA仕様においては、ソフトウェア部品(コンポーネント)のインタフェースをサービス、リファレンス、プロパティにより規定することにより、多様な通信プロトコルや多様なプログラム言語により作成された装置間、例えば無線機間の組み合わせを容易に実現することができることを目指している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、現状の無線通信分野においては、多種多様な無線通信方式が使用されるようになってきており、無線機についても多様な無線通信方式に対応した処理を行うためにソフトウェア化したソフトウェア無線機が一般的になってきつつある。
【0007】
このようなソフトウェア無線機向けのソフトウェア開発を効率的に行うために、前述したように、CORBA分散システムにおけるソフトウェア部品間のインタフェース技術としてSCA(ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格に沿った技術が導入されるようになってきている。
【0008】
しかし、現状の技術においては、SCA規格に準拠して記述したアプリケーションを搭載したソフトウェア無線機を構築しようとしても、該ソフトウェア無線機の動作を検証するための通信動作試験には、相変わらず膨大な作業工数を必要としている。さらに、ソフトウェア記述部分が増えれば増えるほど、益々、通信動作試験の作業工数が増加してしまう状況にある。したがって、SCA規格準拠のソフトウェアに関する試験工程をより効率化して、ソフトウェア無線機の開発費用を低減するという解決するべき課題がある。
【0009】
(本開示の目的)
本開示の目的は、かかる課題に鑑み、SCA(ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格に準拠したソフトウェアを搭載したソフトウェア無線機の試験を効率化するためのソフトウェア無線機ソフトウェア試験システム、ソフトウェア無線機ソフトウェア試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明によるソフトウェア無線機試験システム、ソフトウェア無線機試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)本発明によるソフトウェア無線機試験システムは、
ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアを試験するソフトウェア無線機試験システムであって、
試験対象の前記ソフトウェア無線機とのCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信により取得したドメイン・マネジャ(Domain Manager)に基づいて、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを定義する定義ファイルとしてSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)を取得し、
取得した該ドメイン・プロファイル(Domain Profile)から抽出した前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを試験するための試験データを生成して、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを自動的に試験する、
ことを特徴とする。
【0012】
(2)本発明によるソフトウェア無線機試験方法は、
ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアを試験するソフトウェア無線機試験方法であって、
試験対象の前記ソフトウェア無線機とのCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信により取得したドメイン・マネジャ(Domain Manager)に基づいて、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを定義する定義ファイルとしてSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)を取得し、
取得した該ドメイン・プロファイル(Domain Profile)から抽出した前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを試験するための試験データを生成して、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを自動的に試験する、
ことを特徴とする。
【0013】
(3)本発明によるソフトウェア無線機試験プログラムは、
ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアを試験する処理をコンピュータによって実行するソフトウェア無線機試験プログラムであって、
試験対象の前記ソフトウェア無線機とのCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信により取得したドメイン・マネジャ(Domain Manager)に基づいて、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを定義する定義ファイルとしてSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているドメイン・プロファイル(Domain Profile)を取得し、
取得した該ドメイン・プロファイル(Domain Profile)から抽出した前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを試験するための試験データを生成して、試験対象の前記ソフトウェア無線機上のソフトウェアを自動的に試験する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のソフトウェア無線機試験システム、ソフトウェア無線機試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラムによれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
【0015】
SCA規格に準拠した試験データを生成して、試験対象の各ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関する試験を自動的に実施することが可能になっているので、各ソフトウェア無線機上のソフトウェアがSCA規格に準拠しているか否かの妥当性を自動的にチェックすることができる。而して、試験対象の各ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関する試験を効率的に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ソフトウェア無線機試験システムのシステム構成の一例を示す接続構成図である。
【
図2】
図1に示した各ソフトウェア無線機に搭載されたソフトウェアの構成例を示すプログラム構成図である。
【
図3】
図1に示した試験制御装置の自動試験ソフトウェアが実施する試験に関する一例を説明するための説明図である。
【
図4】
図1に示した試験制御装置の自動試験ソフトウェアが対象とするコア・フレームワークIDL関連の自動試験範囲の一例を示す説明図である。
【
図5】
図1に示したソフトウェア無線機試験システムの自動試験に関する動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるソフトウェア無線機試験システム、ソフトウェア無線機試験方法およびソフトウェア無線機試験プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるソフトウェア無線機試験システムおよびソフトウェア無線機試験方法について説明するが、かかるソフトウェア無線機試験方法をコンピュータにより実行可能なソフトウェア無線機試験プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、ソフトウェア無線機試験プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
【0018】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、ソフトウェア無線機に搭載したSCA(Software Communications Architecture:ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格例えばSCA2.2.2規格に準拠したソフトウェアの試験をするために、新たに試験データを準備することなく、該SCA規格例えばSCA2.2.2に規定された定義ファイル(「ドメイン・プロファイル(Domain Profile)」と称する)を参照して生成した試験データを用いることにより、ソフトウェア無線機に搭載したソフトウェアに関する自動試験の実施(すなわち、SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェアであるか否かを自動的に試験すること)を可能にすることを主要な特徴としている。
【0019】
すなわち、SCA規格においては、ソフトウェアを構成する或るソフトウェア部品が他のソフトウェア部品を利用しようとする場合には、XML(Extensible Markup Language)言語にて記述された定義ファイルすなわち「ドメイン・プロファイル(Domain Profile)」を用いて結合する。つまり、該定義ファイルすなわち「ドメイン・プロファイル(Domain Profile)」は、ソフトウェア部品間を結合するために、各ソフトウェア部品に設定すべきポート、インタフェースおよびプロパティを規定している。
【0020】
一般に、SCA規格準拠のソフトウェアを試験する場合、ソフトウェア部品間のインタフェースの試験用として、試験工程において類似試験項目が多くなる。そこで、ソフトウェア試験において、定義ファイルすなわち「ドメイン・プロファイル(Domain Profile)」を用いて自動試験を行うことを可能にすることにより、ソフトウェア部品間のインタフェースの試験を効率良く行うことを可能にすることを、本発明の主要な特徴としている。
【0021】
(本明の実施形態の構成例)
次に、本発明に係るソフトウェア無線機試験システムのシステム構成の一例について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、ソフトウェア無線機試験システムのシステム構成の一例を示す接続構成図である。
図1に示すソフトウェア無線機試験システム100は、ソフトウェア試験を制御する試験制御装置10と被試験用のソフトウェアを搭載している第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nとの間をWAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)等のネットワーク30を介して接続した構成からなっている。
【0022】
試験制御装置10は、第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nそれぞれに搭載の各ソフトウェアのソフトウェア部品間のインタフェースを試験するための自動試験ソフトウェア11を有している。自動試験ソフトウェア11は、分散システムを構築するためのCORBA(Common Object Request Broker Architecture)11aとXML(Extensible Markup Language)言語を処理するXMLパーサ11bとを内蔵している。
【0023】
一方、試験対象の各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nにはそれぞれ無線通信用のソフトウェアが搭載されているが、各ソフトウェアは、
図2に示すようなSCA2.2.2規格に規定のソフトウェア構造からなっている。
図2は、
図1に示した各ソフトウェア無線機に搭載されたソフトウェアの構成例を示すプログラム構成図であり、破線で囲む範囲が、本実施形態において自動試験ソフトウェア11による自動試験の対象となる範囲を示している。
【0024】
図2に示すように、試験対象の各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nに搭載されたソフトウェアは、いずれも、基幹ソフトであるOS(Operating System)50の上に、SCA規格に規定されているAEP(Application Environment Profile)51、CORBA APIs(Application Programming Interfaces)52、CFインタフェース(Core Framework Interfaces:コア・フレームワーク・インタフェース)53等の各種のミドルウェア層を介して、無線通信用の処理を実行するアプリケーション・リソース(Application Resources)55を実装する形で構成されている。
【0025】
そして、CORBA APIs52としては、オブジェクト(ソフトウェア部品)間の相互接続用の機能を有するORB(Object Request Broker)と分散システム用の各種機能を実現するCORBAサービス(CORBA Services)とを有している。また、CF(コア・フレームワーク)インタフェース53としては、コア・フレームワーク(CF:Core Framework)用の制御(Control)、サービスServices)、デバイス(Devices)、ファイルアクセス(File access)等の各インタフェースを有している。
【0026】
図2に破線で囲んで示すように、試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11の試験対象となる範囲は、無線通信用の処理を行うアプリケーション・リソース(Application Resources)55用の各リソース(Resource)55aと、ハードウェアとのインタフェースを実現するCFインタフェース53用の各デバイス(Device)53aと、が該当する。
【0027】
次に、
図1に示した試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11と、試験対象の各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nに搭載されたソフトウェア内の自動試験対象と、の間の接続構成例について、
図3を用いてさらに説明する。
図3は、
図1に示した試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11が実施する試験に関する一例を説明するための説明図であり、試験対象の各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nに搭載されたソフトウェア内にある自動試験対象のソフトウェア部品に関する試験実施時における接続構成例について示している。
【0028】
図3に示すように、試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11と各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nとは、SCAインタフェースとしてSCA規格にて規定されているCORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interface)通信により互いに通信を行う。
【0029】
そして、自動試験ソフトウェア11は、各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nのCFインタフェース53に配置されているドメイン・マネジャ(Domain Manager)54を介して、CFインタフェース53のドメイン・プロファイル(Domain Profile)56a、アプリケーション・リソース(Application Resources)55のドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bのそれぞれを取得して解析する。
【0030】
解析結果に基づき、自動試験ソフトウェア11は、各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2nにおいて自動試験の対象とする各ソフトウェア部品としてCFインタフェース53の各デバイス(Device)53aとアプリケーション・リソース55の各リソース(Resource)55aとに関する情報を取得する。ここで、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56a、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bは、それぞれ、CFインタフェース53の各デバイス(Device)53a、アプリケーション・リソース55の各リソース(Resource)55aに関するサービスの特性や属性を記述した定義ファイルである。
【0031】
自動試験ソフトウェア11は、各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2n上で動作する試験対象の各デバイス(Device)53a、各リソース(Resource)55aに関する情報を取得すると、該情報を解析する。解析結果、試験対象の各デバイス(Device)53a、各リソース(Resource)55aそれぞれに関し、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56a、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bそれぞれのSCD(Software Component Descriptor:ソフトウェア・コンポーネント記述子)ファイルに記述されているポート、インタフェースを取得し、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56a、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bそれぞれのPRF(Properties Descriptor:プロパティ記述子)ファイルに記述されているプロパティを取得する。
【0032】
そして、自動試験ソフトウェア11は、試験対象の各デバイス(Device)53a、各リソース(Resource)55aそれぞれに関し、SCD(Software Component Descriptor)ファイルから取得したポート、インタフェースに対して、PRF(Properties Descriptor)ファイルから取得したプロパティにしたがって自動試験用の試験データ(SCA規格に準拠して正常に動作するソフトウェア部品であるか否かをチェックすることが可能な試験データ)を生成して、自動試験を実行する。
【0033】
ここで、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56a、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bは、いずれも、XML(Extensible Markup Language)言語にて記述された定義ファイル(Descriptor Files)であり、SCA規格に規定されている以下のファイルから構成されている。
(1)Domain Manager Configuration Descriptor(DMD:ドメイン・マネジャ実体の構成・特性を定義)
(2)Device Configuration Descriptor(DCD:デバイス・マネジャのプロパティを定義)
(3)Software Assembly Descriptor(SAD:ソフトウェアの構成を定義)
(4)Software Package Descriptor(SPD:ソフトウェアの詳細を定義)
(5)Properties Descriptor(PRF:プロパティを定義)
(6)Software Component Descriptor(SCD:ソフトウェア部品のインタフェースを定義)
(7)Device Package Descriptor(DPD:デバイスのクラス・特性を定義)
【0034】
ここで、各第1ソフトウェア無線機21、第2ソフトウェア無線機22、…、第nソフトウェア無線機2n上で動作するソフトウェアすなわち自動試験対象の各デバイス(Device)53a、各リソース(Resource)55aに関するポート、インタフェースおよびプロパティは、SCA規格に規定されている前述のような定義ファイル(Descriptor Files)の各種ファイルのうち、少なくとも、SAD(Software Assembly Descriptor)ファイル、SPD(Software Package Descriptor)ファイル、SCD(Software Component Descriptor)ファイル、PRF(Properties Descriptor)ファイルを用いて、抽出される。
【0035】
次に、ミドルウェア層のCFインタフェース53に関して、ソフトウェア部品間のインタフェースを規定するコア・フレームワーク(CF:Core Framework)IDL(Interface Definition Language)関連の自動試験範囲の詳細について、
図4に示す。
図4は、
図1に示した試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11が対象とするコア・フレームワークIDL関連の自動試験範囲の一例を示す説明図であり、SCA2.2.2規格においてコア・フレームワークIDL関連の構成要素として記載されている図面を流用して、本実施形態における自動試験の対象とする範囲を破線にて囲んで示している。
【0036】
図4に示すように、
図2に前述した自動試験範囲に関連するコア・フレームワークIDLに関して、例えば、CORBAインタフェース・CFデバイス(CF::Device)57a、CORBAインタフェース・CFリソース(CF::Resource)57b、CORBAインタフェース・CFプロパティセット(CF::PropertySet)57c、CORBAインタフェース・CFポートサプライア(CF::PortSupplier)57d、CORBAインタフェース・CFライフサイクル(CF::LifeCycle)57e、CORBAインタフェース・CFテスタブルオブジェクト(CF::TeastableObject)57f、CORBAインタフェース・CFポート(CF::Port)57gの各インタフェースが自動試験の対象範囲として挙げられる。
【0037】
(本発明の実施形態の動作例の説明)
次に、本発明の一実施形態として
図1~
図4に示したソフトウェア無線機試験システム100の自動試験に関する動作について、その一例を、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5は、
図1に示したソフトウェア無線機試験システム100の自動試験に関する動作の一例を説明するためのフローチャートであり、試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11が、試験対象の各ソフトウェア無線機上のソフトウェア試験を自動的に行う場合の動作の一例について示している。なお。以下の説明においては、試験対象のソフトウェア無線機として、第1ソフトウェア無線機21を対象としている場合について説明する。
【0038】
まず、試験制御装置10の自動試験ソフトウェア11は、CORBA(Common Object Request Broker Architecture) API(Application Programming Interfaces)通信を行い、試験対象の第1ソフトウェア無線機21に関する名前サービスを利用することにより、該第1ソフトウェア無線機21のドメイン・マネジャ(Domain Manager)54を取得する(ステップS1)。ドメイン・マネジャ(Domain Manager)54は、SCA規格に準拠するソフトウェアシステム全体を制御し管理するコンポーネントであり、ソフトウェア・アプリケーション、アプリケーション・ファクトリ、デバイス・マネジャ等を管理している。
【0039】
しかる後、自動試験ソフトウェア11は、取得したドメイン・マネジャ(Domain anager)54に登録されているCFインタフェース53のデバイス(Device)53a側すなわちデバイス(Device)コンポーネントに関するドメイン・プロファイル(Domain Profile)56a、および、試験対象のソフトウェア無線機21にインストール済みのアプリケーション・リソース55側すなわちアプリケーション・ファクトリ(Application Factory)に関するドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bを取得する(ステップS2)。ここで、ドメイン・プロファイル(Domain Profile)56aおよびドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bは、それぞれ、試験対象の第1ソフトウェア無線機21上のソフトウェアに関するCFインタフェース53のデバイス(Device)53aおよびアプリケーション・リソース55のそれぞれを定義する定義ファイルとして、SCA(ソフトウェア・コミュニケーション・アーキテクチャ)規格にて規定されているファイルのことである。
【0040】
そして、自動試験ソフトウェア11は、まず、取得したデバイス(Device)コンポーネントに関するドメイン・プロファイル(Domain Profile)56aに含まれているSPD(Software Package Descriptor)ファイルを取得する(ステップS3)。その結果、デバイス(Device)コンポーネント側のデバイス試験対象(
図3の各デバイス(Device)53a)を特定することができる。
【0041】
さらに、自動試験ソフトウェア11は、取得したアプリケーション・ファクトリ(Application Factory)に関するドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bを読み出して、その中に含まれているSAD(Software Assembly Descriptor)ファイルを取得する(ステップS4)。そして、取得したSADファイルを解析して、該当するSPD(Software Package Descriptor)ファイルを取得する(ステップS5)。その結果、アプリケーション・ファクトリ(Application Factory)側のアプリケーション・リソース試験対象(
図3の各リソース(Resource)55a)を特定することができる。
【0042】
さらに、自動試験ソフトウェア11は、取得した該当のSPD(Software Package Descriptor)ファイルを解析することにより、試験対象に関するSCD(Software Component Descriptor)ファイルとPRF(Properties Descriptor)ファイルとを取得する(ステップS6)。
【0043】
取得したSCDファイルから試験対象とする提供ポート(ports)と提供インタフェース(interfaces)とを読み取って特定する。さらに、取得したPRF(Properties Descriptor)ファイルから試験対象とするプロパティ(properties)を読み取って特定する(ステップS7)。
【0044】
つまり、SCA規格としてドメイン・プロファイル(Domain Profile)56bに含まれている各種のファイルのうち、少なくとも、SAD(Software Assembly Descriptor)ファイル、SPD(Software Package Descriptor)ファイル、SCD(Software Component Descriptor)ファイル、PRF(Properties Descriptor)ファイルを用いて、試験対象の第1ソフトウェア無線機21上のソフトウェアに関するポート、インタフェースおよびプロパティに関する情報を抽出して特定することができる。
【0045】
しかる後、自動試験ソフトウェア11は、デバイス側のデバイス(Device)試験、アプリケーション側のリソース(Resource)試験それぞれに関する試験データを抽出して、特定したポート、インタフェースおよびプロパティに基づいて、例えば次の表1のように対応付けて、それぞれに対する試験データを生成する(ステップS8)。例えば、CORBAインタフェース・CFプロパティセット(CF::PropertySet)に関するインタフェースの試験データは、表1の第1行目に示すように、PRF(Properties Descriptor:プロパティ記述子)ファイルに記述されているプロパティ「<properties>」を用いて生成する。
【0046】
【0047】
生成したデバイス側の試験データにより、ステップS2においてデバイス試験対象として特定したデバイス(Device)コンポーネントのポートに関するデバイス(Device)試験を実施する。さらに、生成したアプリケーション側の試験データにより、ステップS5においてアプリケーション・リソース試験対象として特定したアプリケーション・リソースのインタフェースに関するリソース(Resource)試験を実施する。そして、デバイス(Device)試験、リソース(Resource)試験それぞれにおいて実施した試験結果を期待値と比較することにより、試験対象とするデバイスコンポーネントおよびアプリケーション・リソースそれぞれが、SCA規格に準拠して正常に動作しているか否かを判定する(ステップS9)。
【0048】
以上のように、試験対象の第1ソフトウェア無線機21のソフトウェアに関して、新たな試験データを、人手を介して作成することなく、自動的に、試験データを抽出・生成して試験を実施し、合否判定を行うことができるので、ソフトウェア無線機のソフトウェアに関する試験の省力化を図ることが可能になり、効率化を実現することができる。
【0049】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては以下のような効果が得られる。
【0050】
SCA規格に準拠した試験データを生成して、試験対象の各ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関する試験を自動的に実施することが可能になっているので、各ソフトウェア無線機上のソフトウェアがSCA規格に準拠しているか否かの妥当性を自動的にチェックすることができる。而して、試験対象の各ソフトウェア無線機上のソフトウェアに関する試験を効率的に行うことが可能になる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0052】
10 試験制御装置
21 第1ソフトウェア無線機
22 第2ソフトウェア無線機
2n 第nソフトウェア無線機
30 ネットワーク
11 自動試験ソフトウェア
11a CORBA
11b XMLパーサ
50 OS(Operating System)
51 AEP(Application Environment Profile)
52 CORBA APIs(Application Programming Interfaces)
53 CFインタフェース(Core Framework Interfaces)
53a デバイス(Device)
54 ドメイン・マネジャ(Domain Manager)
55 アプリケーション・リソース(Application Resources)
55a リソース(Resource)
56a ドメイン・プロファイル(Domain Profile)
56b ドメイン・プロファイル(Domain Profile)
57a CORBAインタフェース・CFデバイス
57b CORBAインタフェース・CFリソース
57c CORBAインタフェース・CFプロパティセット
57d CORBAインタフェース・CFポートサプライア
57e CORBAインタフェース・CFライフサイクル
57f CORBAインタフェース・CFテスタブルオブジェクト
57g CORBAインタフェース・CFポート
100 ソフトウェア無線機試験システム