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特許7168218固定具及び固定具を有する車両用牽引フック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】固定具及び固定具を有する車両用牽引フック
(51)【国際特許分類】
   B60D 1/18 20060101AFI20221101BHJP
   B60D 1/56 20060101ALI20221101BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B60D1/18
B60D1/56
B60R19/48 W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019095444
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020189558
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】394016106
【氏名又は名称】株式会社キャロッセ
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 努
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-904(JP,A)
【文献】特開2000-296742(JP,A)
【文献】実開平4-39911(JP,U)
【文献】特開2013-103277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60D 1/18
B60D 1/52
B60D 1/56
B60R 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引ストラップが取り付けられ、車両を牽引する際に車両ボディに固定される固定具であって、
前記車両ボディは、前記固定具を固定するためのボルトと螺合する取付穴を有するとともに、前記車両のバンパー内の緩衝部材は、前記取付穴を前記車両の外部に露出させるために予め形成された空洞を有しており、
前記固定具は、
前記ボルトを挿通可能であり、前記ボルトを前記取付穴に螺合したときに前記ボルトの頭部によって前記車両ボディに押圧されるベース部と、
前記ベース部の外縁から牽引方向に突出しており、前記ボルトを前記取付穴に螺合したときに前記ボルトの頭部の側面全体を包囲し、前記空洞に挿入可能な大きさに形成される側壁と、
前記側壁の厚み方向に貫通して前記側壁に形成され、前記牽引ストラップが取り付けられる貫通穴部と、を有することを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記側壁は円筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記貫通穴部は、前記ボルトの頭部を包囲する方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定具。
【請求項4】
前記貫通穴部の長手方向の長さは、前記牽引ストラップの幅に対応することを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の固定具と、
前記固定具に取り付けられる牽引ストラップと、を有することを特徴とする車両用牽引フック。
【請求項6】
前記牽引ストラップは、前記固定具の前記貫通穴部に取り付けられるリング部を有することを特徴とする請求項5に記載の車両用牽引フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を牽引する際に用いられる固定具及び、固定具を有する車両用牽引フックに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を牽引する際に車両に装着される車両用牽引フックが広く知られている。一般的に、車両には、車両用牽引フックを装着するための取付穴が設けられている。
【0003】
車両用牽引フックを装着するための取付穴は、車両のバンパー内に設けられることが多い。図8に、車両のバンパー内における取付穴付近の拡大図を示す。なお、説明の便宜のため、図8において取付穴100を破線で、空洞110aを網掛けで、空洞110aの外郭を一点鎖線で、緩衝部材110をドットでそれぞれ示し、図4及び図10においても同様とする。
【0004】
図8を参照して、バンパー(不図示)内には、車両が壁などに衝突した際の衝撃を和らげて車両を保護する緩衝部材(すなわち、緩衝効果を付与する緩衝部材)110が充填されている。緩衝部材110には、緩衝部材110を貫通する空洞110aが形成されている。車両の牽引方向に見た場合における空洞110aの中央に、取付穴100が設けられている。すなわち、取付穴100は緩衝部材110に包囲された位置に設けられている。
【0005】
取付穴100には車両用牽引フックが装着されるため、取付穴100は、緩衝部材110で覆われることなく、車両の外部に露出させておく必要がある。このため、干渉部材110には空洞110aが形成される。
【0006】
取付穴100を有する車両ボディに対しては、可撓性の非剛性材料からなる牽引ストラップを有する車両用牽引フックが用いられることがある。このような車両用牽引フックとしては、例えば、牽引ストラップと、図9に示す略三角形状のプレートと、を有する車両用牽引フックが広く知られている。図9を参照して、略三角形状のプレート10には、略長方形状の穴11と、円形状の穴12とが、それぞれプレート10を厚み方向に貫通して設けられている。穴11には、牽引ストラップ(不図示)が取り付けられる。
【0007】
車両を牽引する場合、事前に車両に車両用牽引フックを装着する必要がある。図10は、プレート10を有する従来の車両用牽引フックを取付穴100に取り付けて車両ボディに固定した状態を示す図である。図10において、取付穴100に螺合するボルト及び牽引ストラップについては、図示を省略する。図10を参照して、穴12と取付穴100とが略同心円状に位置するようにプレート10を配置し、穴12にボルトを挿通させてボルトの軸に形成されたねじ部を取付穴100の内周面に形成されたねじ部に螺合させる。これにより、ボルトの頭部がプレート10を車両ボディに対して押圧してプレート10が車両ボディに固定され、車両ボディに車両用牽引フックが装着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10を参照して、車両ボディに上述の車両用牽引フックを装着しようとすると、緩衝部材110が邪魔となり、プレート10を車両ボディに固定することができないことがある。すなわち、図9に示すプレート10では、穴11,12が同一平面内に形成されているため、プレート10のうち、穴11を形成するための領域が緩衝部材110と干渉しやすくなる。そのため、車両ボディに車両用牽引フックを装着する前に、プレート10を車両ボディに固定する際に邪魔になると予測される領域(斜めのハッチングで示す)に存する緩衝部材110を除去する必要があり、手間が煩雑である。
【0009】
そこで、本発明は、車両ボディの取付穴の周囲に配置された緩衝部材と干渉することなく取付穴に固定することができる固定具、及びこの固定具を有する車両用牽引フックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、牽引ストラップが取り付けられ、車両を牽引する際に車両ボディに固定される固定具である。ここで、車両ボディは、固定具を固定するためのボルトと螺合する取付穴を有しており、車両のバンパー内の緩衝部材は、取付穴を車両の外部に露出させるために予め形成された空洞を有している。
【0011】
本発明の固定具は、ベース部と、側壁と、貫通穴部とを有する。ベース部にはボルトを挿通可能であり、ボルトを取付穴に螺合したときに、ベース部は、ボルトの頭部によって車両ボディに押圧される。側壁は、ベース部の外縁から牽引方向に突出しており、空洞に挿入可能な大きさに形成される。また、ボルトを取付穴に螺合したときに、側壁は、ボルトの頭部の側面全体を包囲する。貫通穴部は、側壁の厚み方向に貫通して側壁に形成されており、この貫通穴部には牽引ストラップが取り付けられる。
【0012】
側壁は円筒状に形成することができる。また、貫通穴部は、ボルトの頭部を包囲する方向に延びるように形成することができる。ここで、貫通穴部の長手方向の長さは、牽引ストラップの幅に対応させることができる。
【0013】
本発明の車両用牽引フックは、上述した固定具と、固定具に取り付けられる牽引ストラップと、を有する。牽引ストラップには、固定具の貫通穴部に取り付けられるリング部を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベース部においてボルトを挿通可能としつつ、牽引ストラップを取り付けるための貫通穴部を、ベース部から突出した側壁に形成している。これにより、ボルトを挿通させる部分と、牽引ストラップを取り付ける貫通穴部とを同一平面内に配置する場合と比べて、固定具を小型化することができる。そして、固定具を緩衝部材と干渉させることなく、車両ボディに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両用牽引フックの斜視図である。
図2図1に示す固定具の斜視図である。
図3図1及び図2に示す固定具を、所定の軸方向上方から見た図である。
図4】本実施形態に係る車両用牽引フックを取付穴に取り付けて車両ボディに固定した状態を示す図である。
図5】本実施形態に係る固定具が有する側壁の変形例である。
図6】固定具が有する側壁の比較例である。
図7】本実施形態に係る固定具が有するベース部の変形例である。
図8】車両のバンパー内における取付穴付近の拡大図である。
図9】従来の車両用牽引フックが有する略三角形状のプレートである。
図10】プレートを有する従来の車両用牽引フックを取付穴に取り付けて車両ボディに固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る固定具及び本実施形態に係る車両用牽引フックの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両用牽引フックの斜視図である。図2は、図1に示す固定具の斜視図である。図3は、図1及び図2に示す固定具を、所定の軸方向上方から見た図である。
【0017】
図1を参照して、車両用牽引フック1は、車両ボディに固定される鉄製の固定具2と、固定具2に取り付けられる牽引ストラップ3と、を有する。図2及び図3を参照して、固定具2は、円筒状の側壁21と、側壁21の中心軸AXLに沿った方向(以下、軸方向と称することがある)における側壁21の一端(図2の下端)の内壁面に沿って形成される環状のベース部22と、を有する。すなわち、側壁21はベース部22の外縁に沿って形成されており、ベース部22の中央には円形状の穴部23が設けられている。なお、本実施形態において、側壁21が延びる方向(軸方向)は、車両の牽引方向と略一致する。
【0018】
図1及び図2を参照して、側壁21は、側壁21の周方向に沿って延びており、側壁21の厚み方向に貫通して形成された貫通穴部210を有する。貫通穴部210は、牽引ストラップ3を取り付けることができるように形成される。
【0019】
牽引ストラップ3は、可撓性を有する非剛性材料のシート、例えば布地シート等によって構成されるが、これに限られず、種々の非剛性材料が用いられてよい。本実施形態において、牽引ストラップ3は、長方形状の布地シート30から構成されている。
【0020】
布地シート30の一端を貫通穴部210に挿通させて折り返した後、重ね合わせて互いに縫着することにより、第1リング部31が形成される。これにより、第1リング部31が貫通穴部210に取り付けられる。すなわち、牽引ストラップ3が固定具2に取り付けられる。
【0021】
布地シート30の他端をループ状に折り返して、互いに重ね合わせた部分を縫着することにより、第2リング部32が形成される。第2リング部32の役割については後述する。
【0022】
車両を牽引する際の手順について、図1及び図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る車両用牽引フックを取付穴に取り付けて車両ボディに固定した状態を示す図である。図4において、取付穴100に螺合するボルト及び牽引ストラップ3については、図示を省略する。
【0023】
まず、固定具2の穴部23と車両のバンパー内に設けられた取付穴100とが略同心円状に位置するように固定具2を配置する。穴部23にボルトの軸を挿通させて、ボルトの軸に形成されたねじ部を取付穴100の内周面に形成されたねじ部に螺合させる。これにより、ボルトの頭部がベース部22を車両ボディに対して押圧し、車両ボディに固定具2が固定される。すなわち、車両用牽引フック1が車両に装着される。
【0024】
車両ボディに固定具2を固定するとき、側壁21の軸AXLの周りで固定具2を回転させることにより、貫通穴部210の位置、言い換えれば、固定具2及び牽引ストラップ3の接続位置を調整することができる。また、車両ボディに固定具2を固定したとき、ボルトの頭部は、固定具2の側壁21の内側に位置している。すなわち、側壁21によって囲まれたスペースは、ボルトの頭部を収容可能なサイズに形成されている。
【0025】
次に、牽引ストラップ3の第2リング部32に、牽引車(図示せず、以下同様)が備える、車両と牽引車とを連結するための連結具(図示せず、以下同様)を取り付ける。この状態で牽引車を牽引方向に動かすことにより、連結具及び車両用牽引フック1を介して、車両が牽引車に牽引される。ここで、連結具としては例えば、牽引ロープやフック等が用いられる。
【0026】
従来の車両用牽引フックにおける固定具(例えば、図9に示すプレート10)によれば、プレート10に、牽引ストラップを取り付ける穴11と、ボルトを挿通させる穴12と、が形成される。ここで、車両牽引時における牽引力に対して耐久可能な構成とすべく、プレート10における穴11と穴12とを、所定距離だけ離隔して形成する必要がある。
【0027】
一方、本実施形態における固定具2の構成によれば、側壁21に貫通穴部210を形成し、ベース部22に穴部23が形成される。図9に示すプレート10と同様に、1つの平面(ベース部22)に穴部23及び貫通穴部210の両方を形成することも考えられるが、この場合には、ベース部22が大型化しやすくなる。本実施形態のように、側壁21及びベース部22に貫通穴部210及び穴部23を振り分けることにより、ベース部22に貫通穴部210を形成するスペースを省略することができるため、図9に示すプレート10と比べてベース部22を小型化して、ベース部22の外径を緩衝部材110に形成された空洞110aの径よりも小さく形成することができる。また、側壁21はベース部22の外縁に沿って形成され、側壁21の外径は緩衝部材110に形成された空洞110aの径よりも小さく形成されている。
【0028】
したがって、車両用牽引フック1を車両に装着する際に、固定具2を空洞110aに挿入して取付穴100に取り付けることができる。すなわち、固定具2が緩衝部材110と干渉することなく、言い換えれば、緩衝部材110の一部を除去することなく、車両用牽引フック1を車両に装着することができる。
【0029】
また、ベース部22の構成によれば、貫通穴部210をベース部22に形成しない分だけ、ベース部22の剛性の低下を抑制することができる。
【0030】
側壁21の周方向における貫通穴部210の長さは、第1リング部31の幅に対応していることが好ましい。ここで、「対応」とは、側壁21の周方向における貫通穴部210の長さが第1リング部31の幅と一致する場合のみならず、布地シート30の一端を貫通穴部210に挿通しやすくするために、言い換えれば、第1リング部31を形成しやすくするために、側壁21の周方向における貫通穴部210の長さが第1リング部31の幅に対して多少のクリアランスを有する場合を含むものと定義する。
【0031】
側壁21の周方向における貫通穴部210の長さが第1リング部31の幅に対応している構成によれば、側壁21の周方向における貫通穴部210の長さが第1リング部31の幅に対して必要以上に長尺に形成されている構成と比べ、貫通穴部210の形成に伴う側壁21の剛性の低下を抑制することができる。
【0032】
図2を参照して、貫通穴部210の縁210aは、面取りされている。この構成によれば、車両を牽引する際に、牽引ストラップ3と貫通穴部210の縁210aとの摺動による牽引ストラップ3の摩耗を緩和することができる。
【0033】
図2を参照して、側壁21の他端(図2の上端)における径方向内側(内壁面側)の角部21a及び径方向外側(外壁面側)の角部21bは、それぞれ面取りされている。側壁21の他端とは、軸方向における側壁21の両端のうち、ベース部22が形成されていない端部である。この構成によれば、車両を牽引する際に、牽引ストラップ3と角部21a、21bとの摺動による牽引ストラップ3の摩耗を緩和することができる。
【0034】
なお、本実施形態において固定具2は鉄製であるが、車両牽引時における牽引力に耐久可能な材質であれば、固定具2の材質は特に限定されない。
【0035】
(変形例1)
本実施形態において、固定具2が有する側壁21は円筒状に形成され、側壁21の外径は空洞110aの径よりも小さく形成されている。しかしながら、これに限られず、側壁21は、ボルトの頭部の側面全体を包囲して、空洞110aに挿入可能な大きさに形成されていればよい。このボルトは、上述したように、固定具2を車両ボディに固定するためのボルトである。したがって、側壁は、例えば、図5に示すように、軸AXLに沿った方向に見た場合に一対の長辺21d及び一対の短辺21eからなる長方形状となる、筒状の側壁21Aであってよい。また、固定具2を軸AXLに沿った方向に見た場合において、側壁は、図5に示す長方形状とは異なる形状(多角形状)に形成されていてもよい。
【0036】
ここで、「空洞110aに挿入可能な大きさ」とは、固定具2を空洞110aに挿入する際、固定具2が空洞110aを形成する緩衝部材110に干渉しないだけの大きさと定義する。また、「筒状の側壁」とは、軸AXLと平行に延びる側壁のことを指すものとする。側壁21Aで囲まれたスペースは、ボルトの頭部を収容可能なサイズに形成されている。軸方向における側壁21Aの一端の内壁面に沿って、穴部23が設けられた長方形状のベース部22Aが形成される。固定具2を軸AXLに沿った方向に見た場合のベース部の形状は、固定具2を軸AXLに沿った方向に見た場合の側壁の形状に依存する。
【0037】
側壁21Aは、軸AXLに沿った方向に見た場合における外壁面の各角部21cが緩衝部材110に接触しないように形成されている。これにより、車両用牽引フック1を車両に装着する際に、固定具2を空洞110aに挿入して取付穴100に取り付けることができる。すなわち、固定具2が緩衝部材110と干渉することなく、車両用牽引フック1を車両に装着することができる。
【0038】
以下、筒状の側壁21に貫通穴部210を形成することの意義について説明する。
【0039】
まず、牽引ストラップ3は、所定の幅を有することが好ましい。牽引ストラップ3の幅が小さすぎると、車両牽引の際に牽引ストラップ3が破損する恐れがある。また、牽引ストラップ3の幅が大きすぎると、実用に際して扱いづらい。そのため、牽引ストラップ3の幅は所定範囲内から適宜選択される。
【0040】
ここで、図6に示すように、図5に示す1つの長辺21dに対応する側壁21Bのみを有する固定具20について考える。この側壁21Bには、所定の幅を有する牽引ストラップ3を通すことができる貫通穴部210を形成する必要がある。すなわち、軸方向に見た場合において、側壁21Bの長手方向(図6の左右方向)における長さが牽引ストラップ3の幅よりも長くなるように、側壁21Bを形成する必要がある。この場合、固定具20を車両ボディの取付穴100に取り付ける際に、側壁21Bが空洞110aを包囲する緩衝部材110と干渉するおそれがある。
【0041】
一方、図5に示す側壁21Aによれば、1つの長辺21dだけでなく、この長辺21dと繋がる短辺21eを利用して、貫通穴部210を形成することができる。そのため、長辺21dの長手方向(図5の左右方向)における長さを牽引ストラップ3の幅より短くすることができる。すなわち、側壁21Aによれば、長辺21dの長手方向において、固定具2の小型化を行うことができる。
【0042】
なお、固定具2が有する側壁の形状は、軸方向において径が一定である筒状に限られない。側壁の形状は例えば、段付き状であってもよく、軸方向において内径及び/又は外径が大きくなったり、小さくなったりするテーパー形状であってもよい。ここで、側壁の形状に関係なく、側壁で囲まれたスペースは、ボルトの頭部を収容可能なサイズに形成されている。
【0043】
(変形例2)
本実施形態において、ベース部22は環状に形成されているが、ベース部の形状はこれに限られない。ベース部は、例えば図5に示すように長方形状であってよい。また、ベース部は、図7に示すように、側壁21の内壁面から径方向内側に延びる複数のフランジ部22aからなるベース部22Bであって良い。複数のフランジ部22aは、円筒状に形成された側壁21の周方向に並んで配置されている。固定具2を軸方向に見た場合における中央には、複数のフランジ部22aの先端22bによって、ボルトを挿通させるスペース23aが形成されている。このスペース23aにボルトを挿通させて、ボルトの軸に形成されたねじ部を取付穴100の内周面に形成されたねじ部に螺合させる。これにより、ボルトの頭部が各フランジ部22aを車両ボディに対して押圧し、車両ボディに固定具2が固定される。すなわち、車両用牽引フック1が車両に装着される。
【0044】
フランジ部22aの先端22bは、ボルトの軸の形状に対応して、図7に示すように弧状に形成されることが好ましい。しかしながら、これに限られず、ボルトがフランジ部22aと干渉せずにボルトを挿通させる構成であればよい。
【0045】
なお、ベース部22Bは、図7において複数のフランジ部22aから構成されているが、フランジ部22aの数は適宜決めることができ、1つのフランジ部22aから構成されてもよい。ここで、側壁21の周方向におけるフランジ部22aの長さは、適宜決めることができる。一方、図7では、側壁21が円筒状に形成されているが、他の形状(例えば、図5に示す形状や段付き形状、テーパー形状等)であってもよい。この場合であっても、側壁21の輪郭に沿って、複数のフランジ部22aが並んで配置されていればよい。
【0046】
本変形例におけるフランジ部22aの基端は、本実施形態におけるベース部22の外縁(図3参照)及び変形例1に示すベース部22Aの外縁(図5参照)に相当する。
【0047】
(変形例3)
本実施形態において、貫通穴部210は、側壁21の周方向に沿って1つのみ形成されているが、これに限られず、貫通穴部210が複数形成された構成であってよい。複数の貫通穴部210は、側壁21の周方向に沿って隣接するように形成されてもよく、側壁21の軸方向に沿って隣接するように形成されてもよく、側壁21の周方向に沿って離隔して形成されてもよい。
【0048】
ここで、本実施形態において、第1リング部31は1つのみ形成されているが、上述したように複数の貫通穴部210を形成する場合には、第1リング部31が複数形成された構成とすればよい。第1リング部31を複数形成することにより、車両を牽引する際、各第1リング部31にかかる牽引力が分散されるため、より安定的に固定具2(車両)を牽引することができる。
【0049】
また、複数の貫通穴部210が、側壁21の周方向に沿って等間隔に形成されている構成が好ましい。したがって、例えば、2つの貫通穴部210が、側壁21の径方向において対向する位置、すなわち、側壁21の軸AXLを挟んで対向する位置に形成される構成が好ましい。
【0050】
車両を牽引する際には、牽引方向の力成分のみを発生させ、牽引方向に直交する方向の力成分を発生させないことが好ましい。この点、本構成によれば、側壁21の周方向に沿って偏りなく第1リング部31を配置することができるため、車両を牽引する際に発生する牽引力における、牽引方向に直交する方向の力成分を最小とすることができる。そのため、牽引力を牽引方向に効率よく発生させやすくなり、車両をより効率よく牽引することが可能となる。
【0051】
なお、この効果を奏することができる構成は、複数の貫通穴部210が、側壁21の周方向に沿って等間隔に形成されている構成であれば、上述の構成に限られない。例えば、図5に示す側壁21Aに形成された複数の貫通穴部(不図示)が、側壁21Aの周方向に沿って等間隔に形成された構成であっても、上述の効果を奏することができる。
【0052】
また、第1リング部31を複数形成する方法としては、例えば、布地シート30の長手方向端部に切れ込みを入れて複数に分岐させた各一端を、貫通穴部210に挿通させて折り返した後、重ね合わせてそれぞれ縫着する方法を用いてもよい。この方法においては、折り返した一端同士を重ね合わせてから縫着することが好ましい。これにより、折り返した各一端を別々に重ね合わせて縫着する場合と比べて縫着にかかる時間を短縮することができる。そのため、牽引ストラップ3を製造する時間を短縮することができ、効率的である。ただし、第1リング部31を複数形成する方法はこの方法に限られず、種々の方法を用いてよい。
【0053】
(変形例4)
本実施形態において、側壁21に形成された貫通穴部210の形状は、適宜決めることができる。側壁21に形成される貫通穴部210の形状は、牽引ストラップ3を取り付けることができるように形成されていればよく、側壁21の展開図において、例えば長方形状や楕円形状、正方形状であって良い。本変形例は、他の変形例にも適用することができる。
【0054】
(変形例5)
本実施形態において、牽引ストラップ3として長方形状の布地シート30が用いられているが、これに限られず、シートの形状、幅、厚み及び長さを種々変更することができる。本変形例は、他の変形例にも適用することができる。
【0055】
(変形例6)
空洞110aの形状は、車両の牽引方向に見た場合において必ずしも円形状であるとは限らず、取付穴100を車両の外部に露出させることができる形状であればよく、例えば楕円形状等もありうる。本変形例は、他の変形例にも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:車両用牽引フック 2:固定具 3:牽引ストラップ 21、21A:側壁 22、22A、22B:ベース部 23:穴部 23a:スペース 31:第1リング部 32:第2リング部 100:取付穴 110:緩衝部材 110a:空洞 210:貫通穴部
図1
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図10