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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】グラフェン-金属複合線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/186 20170101AFI20221101BHJP
【FI】
C01B32/186
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021503159
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2019097285
(87)【国際公開番号】W WO2020020153
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】201810817130.2
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509159274
【氏名又は名称】南▲開▼大学
【氏名又は名称原語表記】NANKAI UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】94 Weijin Road, Nankai District, Tianjin 300071 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 永勝
(72)【発明者】
【氏名】張 騰飛
(72)【発明者】
【氏名】任 愛
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208296(JP,A)
【文献】特開2003-019530(JP,A)
【文献】特開2017-031549(JP,A)
【文献】特開平03-104992(JP,A)
【文献】特開平06-089621(JP,A)
【文献】特表2013-518804(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086641(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/025045(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102560415(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103700440(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
D02G 1/00-3/48
D02J 1/00-13/00
B21F 1/00-99/00
B21B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン-金属複合線の製造方法であって、
(1)化学蒸着プロセスによって金属線の表面にグラフェンを成長させる工程と、
(2)得られた線材に加撚複合処理を行う工程と、
(3)得られた線材に600~1100℃で熱処理を30~60分間行うことによって前記線材を弛緩させた後、線材を真っ直ぐになるまで伸ばし、1N以下の張力でプリテンションをかけることにより前記線材にプリテンション操作を受けさせ、その後200℃以下に降温させることによりプレストレイン操作を受けさせる工程と、
(4)得られた線材に冷間引抜処理を行って緻密構造を得る工程と、
(5)得られた線材に化学蒸着プロセスを受けさせる工程とを含み、
ここで、線材に前記工程(2)~(5)を循環で順次受けさせ、n回繰り返され、そのうち、第1回の循環には工程(1)で得られたf本の線材を使用し、その後の各循環のいずれにも前の循環から得られたf本の線材を使用し、最後にfnストランドを有するグラフェン-金属複合線を得、ただし、(a)fは2~9の整数であり、(b)nは6以上の整数である、方法。
【請求項2】
工程(1)の前に、前記金属線を洗浄し、前記洗浄は、脱イオン水、エタノール、アセトン、イソプロパノール、およびトリクロロメタンからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒で前記金属線を、2~3回繰り返して洗浄することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、工程(3)と工程(4)との間の選択自由の工程として、得られた線材に化学蒸着プロセスを受けさせてその表面にグラフェンを成長させる工程(3’)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)の化学蒸着プロセスは、大気圧化学蒸着プロセスまたは気圧1~300Paの低圧化学蒸着プロセスであり、そのうち、キャリアガスは、アルゴン、ヘリウム、水素、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、炭素源は気体炭素源または液体炭素源であり、前記気体炭素源は、メタン、エタン、エチレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、前記液体炭素源は、メタノール、エタノール、トルエン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)の化学蒸着プロセスは、金属線を温度800~1100℃に加熱して30~100分間を維持することによって熱処理を受けさせ、続いて金属線を前記熱処理の温度に等しいまたはより高い成長温度800~1100℃に加熱し、且つ、炭素源を運ぶキャリアガスと接触させ、前記金属線の表面にグラフェンを5~60分間成長させることを含み、そのうち、前記キャリアガスの流量は1~500mL/minであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(5)および選択自由の工程(3’)で使用される化学蒸着プロセスと、工程(1)における化学蒸着プロセスとが同じであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(2)の加撚複合処理は空気、アルゴン、またはヘリウムの雰囲気中で行われ、ねじれ度は5~40回転/cmであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
一循環において、工程(3)を3~8回繰り返すことによって線材の伸び率は10~30%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(4)は、工程(3)または(3’)で得られた線材に、常温常圧で引抜ダイスによる冷間引抜処理を受けさせ、ここで、冷間引抜ダイスで前記線材を1~30パス受けさせ、前記線材はパスごとに2~5%伸びることを含み、そのうち、工程(4)で最後に得られた線材の直径と工程(1)における金属線の直径とが同じであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属線は銅線またはニッケル線であことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属線は純度95~99.999%で直径0.05~0.5mmのタフピッチ銅であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン-金属複合線の製造方法に関し、具体的には、内部にグラフェンが均一に分布しているマルチストランド構造を有することを特徴とするグラフェン-金属複合線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、グラフェンの製造方法は、主に機械剥離法、酸化還元法、化学蒸着法(CVD)などがあるが、化学蒸着法では、前の2つの方法に比べると、特定の金属基板の触媒下でメタン、アセチレンなどを炭素源とすることにより高品質で層数が制御可能なグラフェンを得ることができる。なお、多結晶金属基板上にも、高品質のグラフェンを成長させることができ、多結晶金属基板は単結晶金属基板よりもコスト上安価である。このため、化学蒸着法は、高品質のグラフェンを大量に製造するための効率的な方法の一つとなることが期待されている。
【0003】
グラフェンが一連の優れた特性を備えているため、グラフェンに基づく複合材料は、材料の欠点と不利益を大幅に高度方向性で改善することができる。現在、グラフェンと金属の複合材料を製造する場合、導入されたグラフェンは、通常、グラファイトを機械的に剥離する方法、および酸化グラフェンを還元する方法によって得られる。このようなグラフェン材料を使用し、物理的または化学的手段により金属粉末または金属前駆体と結合し、さらに処理することでグラフェン-金属複合材料を得ることができるが、各成分の分散均一性と界面相分離の問題を完全に解決することは困難である。
【0004】
CVD法を使用して金属粒子の表面にその場でグラフェンを成長させてグラフェン金属複合材料を製造することは、分散問題の解決および界面結合の確保と期待されている有効な手段である。ところが、金属基材の最大の利点は、小さいサイズのグラフェンではなく、大きい面積のグラフェン薄膜を製造することであり、金属粒子は、比較的高い温度でも容易に焼結し、粒子表面にグラフェンを均一に形成することができない。現在、このようなCVD法では、グラフェンがゼロ次元および3次元の金属基板に均一に分布することを確保しにくく、グラフェンと金属の間の界面相互作用を確保することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、本発明は、従来技術におけるいくつかの課題を解決するためのグラフェン-金属複合線の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、グラフェン-金属複合線の製造方法であって、(1)化学蒸着プロセスによって金属線(金属線材とも言い)の表面にグラフェンを成長させる工程と、(2)得られた線材に加撚複合処理を行う工程と、(3)得られた線材にプリテンション処理およびプレストレイン処理を行う工程と、(4)得られた線材に冷間引抜処理を行う工程と、(5)得られた線材に化学蒸着プロセスを受けさせる工程とを含み、ここで、線材に前記工程(2)~(5)を循環で順次受けさせ、n回繰り返され、そのうち、第1回の循環には工程(1)で得られたf本の線材を使用し、その後の各循環のいずれにも前の循環から得られたf本の線材を使用し、最後にfストランドを有するグラフェン-金属複合線を得、ただし、(a)fは2~9の整数であり、(b)nは6以上の整数である、方法を提供する。他の一実施形態によれば、前記方法は、工程(3)と工程(4)との間の工程として、得られた線材に化学蒸着プロセスを受けさせてその表面にグラフェンを成長させる工程(3’)を含む。
【0007】
一実施形態によれば、工程(1)の前に、前記金属線を洗浄し、前記洗浄は、脱イオン水、エタノール、アセトン、イソプロパノール、およびトリクロロメタンからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒で前記金属線を2~3回繰り返して洗浄することを含む。別の一実施形態によれば、工程(1)の化学蒸着プロセスは、大気圧化学蒸着プロセスまたは気圧1~300Paの低圧化学蒸着プロセスであり、そのうち、キャリアガスは、アルゴン、ヘリウム、水素、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、炭素源は気体炭素源または液体炭素源であり、前記気体炭素源は、メタン、エタン、エチレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、前記液体炭素源は、メタノール、エタノール、トルエン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。
【0008】
一実施形態によれば、工程(1)の化学蒸着プロセスは、金属線を温度800~1100℃に加熱して30~100分間維持することによって熱処理を受けさせ、続いて金属線を前記熱処理の温度に等しいまたはより高い成長温度800~1100℃に加熱し、且つ、炭素源を運ぶキャリアガスと接触させ、前記金属線の表面にグラフェンを5~60分間成長させ、そのうち、前記キャリアガスの流量は1~500mL/minであることを含む。別の一実施形態によれば、工程(5)および選択自由の工程(3’)で使用される化学蒸着プロセスと、工程(1)における化学蒸着プロセスと同じである。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、工程(2)の加撚複合処理は空気、アルゴン、またはヘリウムの雰囲気中で行われ、ねじれ度は5~40回転/cmである。別の一実施形態によれば、工程(3)は、得られた線材を600~1100℃で30~60分間熱処理して前記線材を弛緩させ、熱処理の直後に、線材にプリテンション操作を受けさせ、その後200℃以下に降温してプレストレイン操作を受けさせることを含む。他の一実施形態によれば、単一循環において、線材の伸び率が10~30%になるように工程(3)を3~8回繰り返してもよい。
【0010】
一実施形態によれば、工程(4)は、工程(3)または(3’)で得られた線材に、常温常圧で引抜ダイスによる冷間引抜処理を受けさせ、ここで、冷間引抜ダイスで前記線材を1~30パス受けさせ、そのうち、前記線材はパスごとに2~5%伸びることを含む。別の一実施形態によれば、工程(4)で最後に得られた線材の直径と工程(1)における金属線の直径と同じである。
【0011】
一実施形態によれば、金属線は銅線またはニッケル線である。他の一実施形態によれば、金属線は、純度95~99.999%で直径0.05~0.5mmの赤銅線である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は、本願明細書と共に本発明に係る1つ以上の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0013】
図1】fストランドを有することに相当するグラフェン-金属複合線の構造概略図である。
図2】実施例1におけるグラフェンのラマンスペクトル図である。
図3】実施例2において加撚複合で得られた線材のSEM画像である。
図4】実施例3において引抜ダイスによる冷間引抜処理で得られたグラフェン-銅複合線のSEM画像である。
図5】実施例4におけるグラフェン-銅複合線の耐酸化性の光学写真である。
図6】実施例7におけるグラフェン-銅複合線の引張強度の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の内容をよりよく理解するために、以下にいくつかの特定の実施形態を提供する。当業者は実際状況に応じて各実施形態を調整し、複数の実施形態の技術的特徴を組み合わせることもできる。
【0015】
一実施形態において、グラフェン-金属複合線の製造方法であって、(1)化学蒸着プロセスによって金属線の表面にグラフェンを成長させる工程と、(2)得られた線材に加撚複合処理を行う工程と、(3)得られた線材にプリテンション処理およびプレストレイン処理を行う工程と、(4)得られた線材に冷間引抜処理を行う工程と、(5)得られた線材に化学蒸着プロセスを受けさせる工程とを含み、ここで、線材に前記工程(2)~(5)を循環で順次受けさせ、n回繰り返され、そのうち、第1回の循環には工程(1)で得られたf本の線材を使用し、その後の各循環のいずれにも前の循環から得られたf本の線材を使用し、最後にfストランドを有するグラフェン-金属複合線を得、ただし、(a)fは2~9の整数であり、(b)nは6以上の整数である、方法を提供する。別の一実施形態において、上記の工程(1)に従って、高被覆率、高品質および層数制御可能なグラフェンを金属表面上にその場で成長させることができ、それによってグラフェン被覆金属線が得られる。また、別の一実施形態において、上記の工程(1)に従って、出発原料として市販の赤銅線を使用してグラフェン被覆銅線複合線を得ることができる。
【0016】
本願明細書において、高被覆率とは、金属表面上のグラフェンの被覆率が99%を超え、好ましくは99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%を超えることを意味する。本願明細書において、グラフェンの金属表面上の層数は、1~10層、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10層に制御されている。
【0017】
一実施形態において、工程(1)の化学蒸着プロセスは大気圧化学蒸着プロセスである。別の一実施形態において、工程(1)の化学蒸着プロセスは低圧化学蒸着プロセスであり、そのうち、気圧は1~300Paであり、例えば50、100、150、200、250Paである。また、他の一実施形態において、工程(1)では、キャリアガスはアルゴン、ヘリウム、水素、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、例えば、キャリアガスはアルゴンと水素との組合せガスである。さらなる実施形態において、工程(1)では、炭素源は気体炭素源または液体炭素源であり、ここで、前記気体炭素源は、メタン、エタン、エチレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、前記液体炭素源は、メタノール、エタノール、トルエン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。好ましくは、気体炭素源、例えばメタンまたはエタンを使用する。
【0018】
一実施形態において、工程(1)の化学蒸着プロセスは、金属線を800~1100℃まで昇温して30~100分間維持することによって熱処理を受けさせ、続いて金属線を800~1100℃且つ前記熱処理の温度に等しいまたはより高い成長温度まで加熱し、炭素源を運ぶキャリアガスと接触させ、グラフェンを前記金属線の表面に5~60分間成長させ、そのうち、前記キャリアガスの流量は1~500mL/minであることを含む。別の一実施形態において、熱処理温度は800、850、900、950、1000または1050℃である。また、他の一実施形態において、成長温度は850、900、950、1000、1050または1100℃である。一実施形態において、グラフェンの成長時間は5~60分間であり、10~40分間、例えば10、15、20、25、30、35、40分間であることが好ましい。
【0019】
一実施形態において、工程(1)の前に、前記金属線を洗浄し、前記洗浄は、脱イオン水、エタノール、アセトン、イソプロパノール、およびトリクロロメタンからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒で前記金属線を、2~3回繰り返して洗浄することを含む。別の一実施形態において、脱イオン水、エタノールおよびアセトンを順次使用して金属線を、2~3回繰り返して洗浄する。
【0020】
一実施形態において、工程(2)の加撚複合処理は空気、アルゴンまたはヘリウムの雰囲気中で行われ、ねじれ度は5~40回転/cmであり、例えば5、10、15、16、20、25、30、35、40回転/cmである。別の一実施形態において、工程(2)では、グラフェンで被覆された線材2~9本に加撚複合処理を行うことができ、または前の循環で処理された線材2~9本に加撚複合処理を再度行うことができ、例えば2、3、4、5、6、7、8または9本の線材に加撚複合処理を行ってもよい。加撚複合処理により、グラフェンの一部を周囲の他の金属線で包むことができ、且つ、下記の工程(3)および(4)により、複合線の内部にグラフェンを分布させることができる。
【0021】
一実施形態において、工程(3)では、線材を600~1100℃で30~60分間熱処理処理することによって前記線材を弛緩させ、熱処理の直後に、線材にプリテンション操作を受けさせ、その後200℃以下に降温してプレストレイン操作を受けさせることを含む。別の一実施形態において、工程(3)の熱処理温度は600~1100℃、650~1050℃、700~1000℃、750~950℃、800~900℃であり、熱処理時間は30~60分間、35~55分間、40~50分間である。また、他の一実施形態において、工程(3)を3~8回、例えば3~5回繰り返して線材の伸び率を10~30%とし、例えば10、15、18、20、25、30%とする。別途における実施形態において、工程(3)を繰り返す場合、熱処理温度、熱処理時間が同じであってもよく、または異なってもよい。本発明に係る工程(3)では加撚と引抜による応力を解消することができ、且つ金属線と金属線、金属線とグラフェンの界面を良好に接触させ、構造の全体を緻密化させ、すなわち構造の緻密化を実現する。
【0022】
一実施形態において、実際の必要に応じて、工程(3)と工程(4)との間に選択自由の工程として、前の工程で得られた線材に化学蒸着プロセスを受けさせてその表面にグラフェンを成長させることを含む工程(3’)を設定する。別の一実施形態において、工程(3’)で用いられた化学蒸着プロセスは、工程(1)における化学蒸着プロセスと同じである。また、他の一実施形態において、工程(3’)で用いられた化学蒸着プロセスは、工程(1)における化学蒸着プロセスと異なっている。一実施形態において、工程(2)~(5)で循環して繰り返す場合、任意に工程(3’)を実施し、すなわち各循環に工程(3’)をいずれも実施してもよく、いずれも実施しなくてもよく、工程(3’)を必要に応じて実施してもよい。
【0023】
一実施形態において、工程(4)は、工程(3)または(3’)で得られた線材に、常温常圧で引抜ダイスによる冷間引抜処理を受けさせ、ここで、冷間引抜ダイスで前記線材を1~30パス受けさせ、そのうち、前記線材はパスごとに2~5%伸びることを含む。別の一実施形態において、工程(4)で最後に得られた線材の直径と工程(1)における金属線の直径とは同じであり、すなわち、得られた直径が初期線材と同じであり、長さが増え且つ内部にグラフェンが均一に分布しているグラフェン-金属線複合材料が得られる。また、他の一実施形態において、前記引抜ダイスは、前記引抜ダイスは、ダイヤモンド高精度引抜ダイスであり、その穴の断面は円形であり、引抜中に引抜潤滑油を添加しても、添加しなくてもよい。
【0024】
一実施形態において、工程(5)で用いられた化学蒸着プロセスは、工程(1)における化学蒸着プロセスと同じである。別の一実施形態において、工程(5)で用いられた化学蒸着プロセスは、工程(1)における化学蒸着プロセスと異なっている。
【0025】
一実施形態において、線材について工程(2)~(5)を順次受けさせてn回繰り返して循環してもよく、そのうち、nは6以上の整数であり、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20が挙げられるがこれらに限定されない。別の一実施形態において、第1回の循環には工程(1)で得られたf本の線材を使用し、その後の各循環のいずれも前の循環から得られたf本の線材を使用し、最後にfストランドを有するグラフェン-金属複合線を得、そのうち、fは2~9の整数であり、例えば2、3、4、5、6、7、8、9である。
【0026】
一実施形態において、前記金属線は銅線またはニッケル線である。別の一実施形態において、前記金属線は、純度95~99.999%で直径0.05~0.5mmの赤銅線であり、好ましくは、市販の赤銅線である。この実施形態において、銅を基材としているが、銅が炭素と固溶体を形成しにくいため、グラフェンの成長時に主に触媒の役割を果たすが、グラフェンが銅基材の表面を被覆すると、グラフェン被覆部位における銅の触媒作用が大幅に抑制され、炭素原子の更なる堆積やグラフェン層数の増加が阻害される。したがって、本発明に係る方法は、プロセスパラメータを調整することにより、数がより少ない層ひいては単一の層のグラフェン薄膜を効果的に得ることができる。
【0027】
本発明に係る方法によれば、まず金属線にグラフェンをその場で成長させ、次に、さらに順次に加撚複合処理、プリテンション処理およびプレストレイン処理(緻密化処理)、引抜ダイスによる冷間引抜処理を組み合わせ、且つ上記工程を全般的に組み合わせて一つの循環操作とする複数回の循環処理により、最終的に内部にグラフェンが均一に分布し且つグラフェンと金属基質が微視的スケールで良好な界面相互作用を有する複合線材が得られる(その構造の模式図は、図1を参照)。この線材は、優れた電気伝導性と熱伝導性、効果的に改善された機械的強度、および優れた酸化防止と耐腐食性能を有する。また、本発明に係る方法によれば、連続生産を実現することができる。
【0028】
さらに、本発明は、グラフェンをその場で成長させることにより、金属結晶粒とグラフェンに良好な界面相互作用を持たせ、複数の加工プロセスを結合して複数回循環させることにより、グラフェンと金属材料がバルク相に分散するという問題を効果的に解決し、金属線(例えば銅線)が大面積で高品質のグラフェンを製造できないという欠点を克服する。同時に、本発明の方法は簡便かつ連続化の操作を採用し、規模化生産を実現しやすくなっている。
【実施例
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに説明するが、当業者は、これらの実施例が本発明をより明確に説明するためにのみであり、本発明の範囲を何ら制限するものではないと理解できる。
【0030】
実施例1:
(1)直径0.1mm、純度99%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を200mL/minとし、炭素源をエタンとし、熱処理温度を900℃として30分間熱処理を行い、成長温度を950℃とし、成長時間を20分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで被覆された銅線が得られた(図2を参照)。
【0031】
(2)得られたサンプルを3本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は15回転/cmで、この操作は空気中で行った。
【0032】
(3)得られた加撚線材を900℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、180℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度900℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を3回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は15%になった。
【0033】
(4)得られたサンプルに、工程(1)と同じ条件とプロセスを通じて、その表面にグラフェンを再度成長させた。
【0034】
(5)得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、15パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0035】
(6)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0036】
さらに、工程(6)で得られたサンプルに、工程(2)~(6)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.1mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(6)で循環して6回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材3本を取り、その後の5回の循環(第2回の循環~第6回の循環)のいずれも前回の循環の工程(6)で得られた線材3本を使用し、最終的に3ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0037】
実施例2:
(1)直径0.1mm、純度99%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を300mL/minとし、炭素源をエタンとし、熱処理温度を900℃として40分間熱処理を行い、成長温度を950℃とし、成長時間を15分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで完全に被覆された銅線を得た。
【0038】
(2)得られたサンプルを4本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は20回転/cmで、この操作は空気中で行った(図3を参照)。
【0039】
(3)得られた加撚線材を900℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、120℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度900℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を3回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は15%になった。
【0040】
(4)得られたサンプルに、工程(1)と同じ条件とプロセスを通じて、その表面にグラフェンを再度成長させた。
【0041】
(5)得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、15パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0042】
(6)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0043】
さらに、工程(6)で得られたサンプルに、工程(2)~(6)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.1mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(6)で循環して6回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材4本を取り、その後の5回の循環(第2回の循環~第6回の循環)のいずれも前回の循環の工程(6)で得られた線材4本を使用し、最終的に4ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0044】
実施例3:
(1)直径0.2mm、純度99%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を250mL/minとし、炭素源をエタンとし、熱処理温度を900℃として60分間熱処理を行い、成長温度を950℃とし、成長時間を10分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで完全に被覆された銅線を得た。
【0045】
(2)得られたサンプルを3本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は20回転/cmで、この操作は空気中で行った。
【0046】
(3)得られた加撚線材を900℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、150℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度900℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を3回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は18%になった。
【0047】
(4)得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、16パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線が得られた(図4を参照)。
【0048】
(5)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0049】
さらに、工程(5)で得られたサンプルに、工程(2)~(5)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.2mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(5)で循環して8回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材3本を取り、その後の7回の循環(第2回の循環~第8回の循環)のいずれも前回の循環の工程(5)で得られた線材3本を使用し、最終的に3ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0050】
実施例4:
(1)直径0.2mm、純度99%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を300mL/minとし、炭素源をメタンとし、熱処理温度を900℃として40分間熱処理を行い、成長温度を950℃とし、成長時間を20分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで完全に被覆された銅線を得た。
【0051】
(2)得られたサンプルを6本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は15回転/cmで、この操作は空気中で行った。
【0052】
(3)得られた加撚線材を800℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、100℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度800℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を3回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は18%になった。
【0053】
(4)得られたサンプルに、工程(1)と同じ条件とプロセスを通じて、その表面にグラフェンを再度成長させた。
【0054】
(5)得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、15パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0055】
(6)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0056】
さらに、工程(6)で得られたサンプルに、工程(2)~(6)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.2mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(6)で循環して8回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材6本を取り、その後の7回の循環(第2回の循環~第8回の循環)のいずれも前回の循環の工程(6)で得られた線材6本を使用し、最終的に6ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0057】
該グラフェン-銅複合銅線は耐酸化能に優れている。具体的には、グラフェン-銅複合銅線を空気雰囲気中で200℃に加熱し、5分間保持した後、表面のごく一部が酸化されているのに対し、ブランク対照サンプル(すなわち、グラフェンを含まない銅線)では、表面がすべて酸化されていることが観察され、比較結果を図5に示す。
【0058】
実施例5:
(1)直径0.3mm、純度99.9%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を300mL/minとし、炭素源をメタンとし、熱処理温度を900℃として30分間熱処理を行い、成長温度を1000℃とし、成長時間を20分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで完全に被覆された銅線を得た。
【0059】
(2)得られたサンプルを4本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は20回転/cmで、この操作は空気中で行った。
【0060】
(3)得られた加撚線材を900℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、150℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度900℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を3回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は18%になった。
【0061】
(4)得られたサンプルに、工程(1)と同じ条件とプロセスを通じて、その表面にグラフェンを再度成長させた。
【0062】
(5)上記工程(4)で得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、15パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0063】
(6)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0064】
さらに、工程(6)で得られたサンプルに、工程(2)~(6)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.3mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(6)で循環して6回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材4本を取り、その後の5回の循環(第2回の循環~第6回の循環)のいずれも前回の循環の工程(6)で得られた線材4本を使用し、最終的に4ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0065】
実施例6:
(1)直径0.3mm、純度99.9%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を350mL/minとし、炭素源をメタンとし、熱処理温度を900℃として40分間熱処理を行い、成長温度を1050℃とし、成長時間を10分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで完全に被覆された銅線を得た。
【0066】
(2)得られたサンプルを8本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は16回転/cmで、この操作はアルゴン中で行った。
【0067】
(3)得られた加撚線材を1000℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、150℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度1000℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を5回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は20%になった。
【0068】
(4)得られたサンプルに、工程(1)と同じ条件とプロセスを通じて、その表面にグラフェンを再度成長させた。
【0069】
(5)得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、20パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0070】
(6)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0071】
さらに、工程(6)で得られたサンプルに、工程(2)~(6)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.3mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(6)で循環して6回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材8本を取り、その後の5回の循環(第2回の循環~第6回の循環)のいずれも前回の循環の工程(6)で得られた線材8本を使用し、最終的に8ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0072】
実施例7:
(1)直径0.5mm、純度99.9%の市販の銅線を使用し、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次洗浄し、洗浄を3回繰り返した。大気圧化学蒸着法を採用し、キャリアガスをアルゴン、水素とし、キャリアガス流量を300mL/minとし、炭素源をエチレンとし、熱処理温度を900℃として35分間熱処理を行い、成長温度を1000℃とし、成長時間を15分間とした。高被覆率、高品質、制御可能な層を備えたグラフェンを、銅線の表面に連続的に成長させ、長さが制御可能なグラフェンで完全に被覆された銅線を得た。
【0073】
(2)得られたサンプルを4本選択し、加撚複合処理を行って加撚線材を得た。ねじれ度は20回転/cmで、この操作はアルゴン中で行った。
【0074】
(3)得られた加撚線材を1050℃で40分間熱処理して加撚線材を弛緩させた後、線材が真っ直ぐになるまで伸ばしたが、1N以下の張力に耐えてプリテンションをかけた後、160℃まで降温して、機械的プレストレイン操作を行ってから、再度1050℃まで昇温し、工程(3)の上記操作を3回繰り返し、最後に加撚線材の伸び率は18%になった。
【0075】
(4)得られたサンプルに、工程(1)と同じ条件とプロセスを通じて、その表面にグラフェンを再度成長させた。
【0076】
(5)得られたサンプルに引抜ダイスによる冷間引抜処理を行い、常温でダイヤモンド高精度引抜ダイスを通過させた後、20パスを経て、最終的に初期銅線と同じ直径のグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0077】
(6)得られたサンプルを化学蒸着法で再度処理し、表面にグラフェンを成長させ、プロセスおよび条件は工程(1)と同じであった。
【0078】
さらに、工程(6)で得られたサンプルに、工程(2)~(6)を順次繰り返して循環操作を実現することができる。具体的には、直径0.5mmの銅線に工程(1)を受けさせた後、続いて上記工程(2)~(6)で循環して6回繰り返し、そのうち、第1回の循環では工程(1)で得られた線材4本を取り、その後の5回の循環(第2回の循環~第6回の循環)のいずれも前回の循環の工程(6)で得られた線材4本を使用し、最終的に4ストランドを有するグラフェン-銅複合銅線を得た。
【0079】
図6に示すように、複合銅線の引張性能を電子ユニバーサル引張試験機で測定し、その引張強度を200MPaより大きく向上させた。
【0080】
当業者は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に対して適切な調整および変更を行うことができることを理解することができる。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決定されるものを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6