(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】雄不妊のためのバイオセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20221101BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221101BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221101BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20221101BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20221101BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20221101BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221101BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20221101BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221101BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221101BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20221101BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
G01N33/50 J
G01N33/53 S
G01N33/53 D
G01N33/543 595
G01N33/553
G01N27/327
G01N27/416 336M
C07K16/28 ZNA
C07K14/705
C12M1/00 A
C12Q1/02
C12Q1/06
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021507472
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2019072574
(87)【国際公開番号】W WO2020039064
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-16
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521056179
【氏名又は名称】スパーモセンス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プンヤニ,クシャグル
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ,スダ
(72)【発明者】
【氏名】タクワ,モハマド
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/026906(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0148930(US,A1)
【文献】特表2011-515677(JP,A)
【文献】国際公開第2013/122265(WO,A1)
【文献】Enrica Bianchi et al.,Juno is the egg Izumo receptor and is essential for mammalian fertilization,Nature,2014年04月24日,Vol.508,PP.483-487
【文献】HALIL AYDIN et al.,Molecular architecture of the human sperm IZUMO1 and egg JUNO fertilization complex ,Nature ,2016年06月01日,Vol.534,No.7608,PP.562-565
【文献】YU MENGURU et al.,Mutational analysis of IZUMO1R in women with fertiilization failure and polyspermy after in vitro feritilization,journal of assisted reproduction and genetics,2017年12月15日,Vol.35,No.3,PP.539-544
【文献】KATERINA GEORGADAKI et al.,The molecular basis of fertilization (Review),INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR MEDICINE,2016年08月31日,Vol.38,No.4,PP.979-986
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精子機能の検出かつ/または定量化のためのバイオセンサであって、基板とJUNOタンパク質またはその断片とを含み、前記断片が、精子またはIZUMO1に結合することができ、前記JUNOタンパク質またはその断片が、前記基板上に固定化される、バイオセンサ。
【請求項2】
透明帯1(ZP1)、透明帯2(ZP2)、透明帯3(ZP3)および/または抗IZUMO抗体またはそれらの断片をさらに含み、前記断片が、精子またはIZUMO1に結合することができ、前記ZP1、ZP2、ZP3、および/または前記抗IZUMO抗体またはその断片が、前記基板上に固定化される、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3、および抗IZUMO抗体の少なくとも1つが、ペプチドおよび標識からなる群から選択される追加の部分に結合される、および/または
前記精子機能が、前記センサ上に固定化されたタンパク質への精子細胞の少なくとも一部分の結合から決定され、前記タンパク質が、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3および/または前記抗IZUMO抗体、またはその断片からなる群から選択され、前記断片が、精子またはIZUMO1に結合することができる、
請求項1または2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記基板が、ディッシュでありかつ前記ディッシュが、それが顕微鏡または光変換器に連結され得るように構成されるか、
前記基板が、マイクロビーズであり、前記マイクロビーズが、それらが顕微鏡、光変換器または測定回路に連結され得るように構成されるか、
前記基板が、電極でありかつ前記電極が、それが電気化学ワークステーションまたは測定回路に連結され得るように構成されるか、または
前記基板が、チップでありかつ前記チップが、それが表面プラズモン共鳴検出器に連結され得るように構成される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
精子機能を検出するかつ/または定量化するための方法であって、
a.対象からの精液サンプルを提供するステップであって、前記精液サンプルが、1つ以上の精子細胞を含む、提供するステップと、
b.前記精液サンプルを請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオセンサと接触させるステップと、
c.前記センサ上に固定化されたタンパク質への前記精子細胞の結合を決定するステップ、
を含み、それにより前記サンプルの前記精子機能を検出するかつ/または定量化する、方法。
【請求項6】
前記サンプルの前記精子機能が、顕微鏡分析、電気化学的検出および/または表面プラズモン共鳴により結合精子細胞対非結合精子細胞の割合を決定することにより定量化される、および/または
前記サンプルの前記精子機能が、顕微鏡分析、電気化学的検出および/または表面プラズモン共鳴により前記精液サンプル中の前記精子細胞の先体状態を決定することにより定量化される、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
精子を選択する方法であって、
a.対象からの精液サンプルを提供することであって、精液サンプルが、1つ以上の精子細胞を含む、提供することと、
b.前記精液サンプルを請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオセンサと接触させることと、
c.顕微鏡により前記バイオセンサに結合した精子を可視化することと、
d.前記バイオセンサに結合した精子を選択すること、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載のJUNOタンパク質を含むバイオセンサを製造するための方法であって、
a.基板を提供することと、
b.前記JUNOタンパク質を提供することと、
c.前記JUNOタンパク質を前記基板上に固定すること、
d.前記基板上に固定化されたタンパク質への精子細胞の結合を決定するための手段を提供することと、
を含み、それにより前記JUNOタンパク質を含むバイオセンサを製造する、方法。
【請求項9】
精子機能の検出かつ/または定量化のためのハンドヘルドデバイスであって、
a.サンプル用の注入口と、
b.JUNOタンパク質またはその断片を含むバイオセンサであって、前記断片が、精子またはIZUMO1に結合することができ、前記JUNOタンパク質が、前記バイオセンサ上に固定化され、かつ前記注入口が、前記センサと接触して前記サンプルを置くように構成される、バイオセンサと、
c.前記センサから信号を受信しかつそれをユーザにより読み取り可能な形式に変換するように構成される検出器と、
d.任意により、細胞成分を前記サンプルから分離するための手段、
を含む、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精子機能の定量化および雄の受精の評価のためのバイオセンサおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
世界人口の約15%が不妊の影響を受けており、男性不妊がこの症例全体の20~70%を占めることが公知である(Reprod Biol Endocrinol.2015、13:37)。さらに、すべての男性の2.5~12%が不妊であると推定されている。欧州では出生率の低下および他の男性不妊に関連する要因があるために、この状況は憂慮すべきである。男性不妊の治療は正確な診断に依存するため、根本原因の分析および検出が重要である。解剖学的および内分泌学的分析に加えて、男性不妊の検査室診断における現在の傾向は、精子および精液の特徴にわたる(Mayo Clinic)。男性不妊の症例の30~40%は、未知の男性不妊関連要因に関連している(European Association of Urology、2015)。これは特発性男性不妊として知られており、その治療には詳細な機能分析の調査を必要とする。
【0003】
さらに、生殖補助医療(ART)は、この障壁にも直面する標準的な治療選択肢である。2015年には、米国の全乳児の1.6%がARTを介して受胎された。2015年のみで231,936のARTサイクルが米国で実施されたが、それらは60,778の出生をもたらした(Centers for Disease Control and Prevention、2016)。2017年に、欧州ヒト生殖発生学会(European Society of Human Reproduction and Embryology)は、定期的な体外受精(IVF)後の卵母細胞の受精失敗率(FFR)を、ARTラボの重要業務評価指標として特定し、能力レベルは5%と非常に低くなっている(Human Reprod Open.2017、2)。精子の形態はIVFの成功/失敗と相関させることはできないが、受精の失敗は精子機能の問題に起因することに留意することが重要である(Human Reprod.2000、15(3):702;Fertil Steril.2003 Jan;79(1):74)。したがって、IVFの生存率を予測し、適切なART法をより適切に選択するために、精子細胞の受精能力を診断するための頑強な方法を開発する必要がある。
【0004】
ARTの前に、典型的には、男性不妊に関連する要因が精査され、要因は精子の質の分析、精子の数、濃度、形態および運動性、精液中の非定型細胞型の識別、ならびに自己免疫抗体の存在を含む。追加の分析は、精子細胞と子宮頸管粘液との相互作用、先体反応、副性器機能の生化学的アッセイ、ならびに活性酸素種およびDNA損傷の推定を研究することを伴い得る(World Health Organization、2010)。特発性男性不妊およびIVFでの受精の失敗の場合、これらの値は不妊の根本原因に関する多くの情報を提供しない。卵細胞質内精子注入法(ICSI)を用いることは、もっとも多くの場合、好ましい方法であるが、IVFの不要なステップは、健康な卵母細胞の浪費および経済的負荷をもたらす。
【0005】
精子細胞の形態学的および速度論的特性は、in vivoまたはIVFでの受精に重要であるが、受精の最終的なステップは、卵子との精子細胞の融合である。ヘミゾナアッセイ、ヒト精子-卵母細胞相互作用検査、およびヒト透明帯結合検査などの研究方法は、このステップの一部を模倣することができる。しかし、これらの方法は、容易に入手できないヒト卵母細胞またはその一部に依存するため、商品化することができない。透明帯非含有ハムスター卵母細胞侵入検査は、ヒト卵母細胞の代わりにハムスター卵母細胞を使用する目的で開発された。この検査では、ヒト卵母細胞の要件が不要となるが、いずれの授精濃度においてもIVF治療での受精の成功に関する予測値が低いため、この検査の使用は大幅に制限される。
【0006】
2つの配偶子間の一次結合は、卵子を取り巻く透明帯(ZP)糖タンパク質の細胞外層によって媒介される(Cell.2017、169(7):1315;Reprod Biomed Online.2003、7(6):641)。この相互作用は、精子細胞での先体反応を引き起こす原因である。さらに、ZPに遭遇する前に先体反応を開始していない精子細胞は、卵子を受精させることができない。次に、先体から放出された加水分解酵素はZPを消化する必要があり、それによって精子が卵子膜に進むことができるようになる。
【0007】
この結合における重要なステップは、2014年に発見された。精子表面抗原IZUMO1は、以前は葉酸受容体4として知られていた雌の対応するJUNOタンパク質に結合する(Nature.508:483-487;Nature.2016、534(7608):566)。この生化学的事象は、2つの配偶子の融合に必須であることが発見された。生化学的不一致はいずれも、受精の失敗につながり得る。
【0008】
したがって、JUNOタンパク質に結合できる精液サンプル中の精子細胞の量を定量化できることは、受精の評価において重要である。
【0009】
バイオセンサは、生体物質(例えば、微生物、酵素、抗体、DNA、およびRNA)の分子識別機能を利用するセンサであり、分子識別要素としてそのような生体物質を用いる。換言すれば、バイオセンサは、固定化された生体物質が標的基板、微生物の呼吸によって消費される酸素、酵素反応、発光などを識別するときに起こる反応を利用する。バイオセンサの中でも、酵素センサの実用化が発展している。例えば、グルコース、乳酸、尿酸、およびアミノ酸の酵素センサは、医療機器および食品加工業界における用途を見出している。
【0010】
例えば電極に結合したタンパク質と精子などの標的種との間の相互作用を追跡するために、異なる技術を使用してもよい。そのような技術のうちの1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)に依存する。SPRでは、タンパク質などの1つの分子パートナが金属(チップ)上に固定化される。光は金属の表面プラズモンを励起し、結合パートナが固定化された分子に結合するときに、これが表面プラズモンシグナルの検出可能な変化を生じる。そのような技術の別のものは、生物学的事象の電子信号への直接変換によって生物学的サンプルの内容物が分析される、電気化学的変換に依存する。電気化学的バイオセンシングの最も一般的な技術には、サイクリックボルタンメトリ、クロノアンペロメトリ、クロノポテンシオメトリ、インピーダンス分光法、および電界効果トランジスタベースの方法、ならびにナノワイヤまたは磁性ナノ粒子ベースのバイオセンシングが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、精子細胞の受精能を識別するために、JUNOタンパク質と精子表面抗原IZUMO1との間の生化学的反応を利用する。不妊の根本原因を明らかにすることに加えて、これは、卵子の浪費を最小限に抑えながら、好適なART技術の選択、すなわち通常のIVFとICSIとの間での選択に特に有用であろう。本発明者らは、男性不妊を診断するために精子細胞の受精能を精査する電気化学的および/または光学的感知プラットフォーム(複数可)の開発および臨床的検証をさらに提唱する。男性不妊を診断し、精子の質を確認するための既存の商業的方法では、受精事象に必要な生化学的相互作用を監視(overlooking)しながら、精子細胞の物理的態様を調べる。提唱される方法は、精子細胞の生体受容体を利用する男性の受精を分析するための最初のバイオインスパイアードアッセイであり、この方法は、精子細胞による受精の重要なステップを模倣し、それによってそれらの受精能への直接的な洞察が得られるため、既存の診断方法に勝る利点を有する。これまでに、精子と卵母細胞との相互作用検査が開発されているが、それらはすべて、容易に入手できないヒト卵母細胞および透明帯を使用する必要があるか、または検査結果と様々な精液パラメータとの間において低い相関を有するために信頼性がないかのいずれかである。本発明は、卵母細胞を模倣する条件を作り出すことによって、特に精子-卵母細胞融合に関与する重要なタンパク質受容体の1つ以上を使用することによって、卵母細胞の利用可能性の問題を克服する。
【0012】
精子機能を定量化するためのバイオセンサを提供することは、本開示の一態様であり、本バイオセンサは、基板と、JUNOタンパク質またはその断片とを含み、ここで、JUNOタンパク質またはその断片は、基板上に固定化される。
【0013】
精子機能を検出するためのバイオセンサを提供することは、本開示のさらなる一態様であり、本バイオセンサは、基板と、JUNOタンパク質またはその断片とを含み、ここで、JUNOタンパク質またはその断片は、基板上に固定化される。
【0014】
精子機能を検出するかつ/または定量化するための方法を提供することもまた、本開示の一態様であり、この方法は、
a.対象からの精液サンプルを提供するステップであって、精液サンプルが、1つ以上の精子細胞を含む、提供するステップと、
b.精液サンプルを前述の請求項のいずれか一項に記載のバイオセンサと接触させるステップと、
c.センサに固定化されたタンパク質への精子細胞の結合を決定するステップ、
を含み、
それにより、サンプルの精子機能を検出するかつ/または定量化する。
【0015】
雄不妊を診断するための方法を提供するステップもまた、本開示の一態様であり、この方法は、
a.対象からの精液サンプルを提供するステップと、
b.精液サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させるステップと、
c.本開示の方法に従って、サンプルの精子機能を定量化するステップと、
d.精子機能を使用して、対象が不妊であるかを診断するステップ、
を含む。
【0016】
雄不妊を診断するための方法を提供することもまた、本開示の一態様であり、この方法は、
a.対象からの精子サンプルを提供するステップと、
b.精子サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させるステップと、
c.本開示の方法に従って、サンプルの精子機能を定量化するステップと、
d.精子機能を使用して、対象が不妊であるかを診断するステップ、
を含む。
【0017】
本開示の別の態様は、JUNOタンパク質を含むバイオセンサを製造するための方法の提供であり、この方法は、
a.基板を提供することと、
b.JUNOタンパク質を提供することと、
c.JUNOタンパク質を基板に固定すること、
を含み、それにより、JUNOタンパク質を含むバイオセンサを製造する。
【0018】
精子を選択する方法を提供することは、本開示のさらなる一態様であり、この方法は、
a.対象からの精液サンプルを提供することであって、精液サンプルが、1つ以上の精子細胞を含む、提供することと、
b.精液サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させることと、
c.顕微鏡によってバイオセンサに結合した精子を可視化すること、
を含み、それにより、精子を選択する。
【0019】
精子を選択する方法を提供することは、本開示のさらなる一態様であり、この方法は、
a.対象からの精子サンプルを提供することと、
b.精子サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させることと、
c.顕微鏡によってバイオセンサに結合した精子を可視化すること、
を含み、それにより、精子を選択する。
【0020】
精子機能の検出かつ/または定量化のためのハンドヘルドデバイスを提供することもまた、本開示の一態様であり、本デバイスは、
a.サンプル用の注入口と、
b.JUNOタンパク質またはその断片を含むバイオセンサであって、JUNOタンパク質がバイオセンサ上に固定化され、かつ注入口が、サンプルをセンサと接触させるように構成される、バイオセンサと、
c.センサから信号を受信し、その信号をユーザが読み取り可能な形式に変換するように構成される検出器と、
d.任意により、細胞成分をサンプルから分離するための手段、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】以下のサイクリックボルタンメトリ応答を示す図である。a)バッファのみ添加後(実線)およびバッファで1.67x10
-2倍に希釈した精液サンプルの添加後(点線)の電極-金ナノ粒子-BSAブロッキング、b)電極-金ナノ粒子-JUNO-BSAブロッキング(二点鎖線)、およびc)バッファで1.67x10
-2倍に希釈した精液サンプルを添加した後の電極-金ナノ粒子-ZP3-BSAブロッキング応答(破線)。希釈係数は、初期容量/最終容量による。
【
図2】6つの異なる精液サンプル(
図2A~F)の3つの異なる希釈液(1.56x10
-5倍(点線)、1.67x10
-2倍(二点鎖線)、および2.5x10
-2倍(破線))を添加後の電極-金ナノ粒子-ZP3-BSAブロッキングのサイクリックボルタンメトリ応答を示す図である。実線はバッファのみ(精液サンプルなし)での電極応答を示す。
【
図3】精液サンプルS1、S2、S3、S4、S5およびS6(それぞれ
図3A~F)の3つの異なる希釈液(1.56x10
-5倍(点線)、1.67x10
ー2倍(一点鎖線)および2.5x10
-2倍(破線))の添加後の電極-金ナノ粒子-JUNO-BSAブロッキング、のサイクリックボルタンメトリ応答を示す図である。実線はバッファのみ(精液サンプルなし)での電極応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に開示されるのは、雄不妊を評価するために精子機能を定量化するためのバイオセンサおよびその用途である。さらに、本開示は、対象から得られたサンプル中の精子細胞の精子機能を決定することを含む、対象における不妊を診断するための方法に関する。
精子機能
【0023】
精子の主な機能は、卵子に到達して、卵子と融合して2つの細胞内構造:(i)遺伝物質を含む雄の前核および(ii)微小管細胞骨格の組織化を助ける構造である中心体、を送達することにより受精を誘発することである。したがって、精子機能は、精子が卵子に到達しかつ受精を誘発する能力として理解され得る。
【0024】
2つの配偶子間の一次結合は、卵子を取り巻く透明帯(ZP)糖タンパク質の細胞外層によって媒介される(Cell.2017、169(7):1315;Reprod Biomed Online.2003、7(6):641)。この相互作用は、精子細胞の先体反応を引き起こす原因である。さらに、ZPに遭遇する前に先体反応を開始していない精子細胞は、卵子を受精させることができない。次に、先体から放出された加水分解酵素はZPを消化する必要があり、それによって精子が卵子膜に進むことができるようになる。
【0025】
この結合における重要なステップは、2014年に発見された。精子表面抗原IZUMO1は、以前は葉酸受容体4として知られていた雌の対応するJUNOタンパク質に結合する(Nature.508:483-487;Nature.2016、534(7608):566)。この生化学的事象は、2つの配偶子の融合に必須であることが発見された。
【0026】
本開示は、精子機能を定量化するためのバイオセンサに関するものであり、バイオセンサは、基板と、JUNOタンパク質またはその断片とを含み、JUNOタンパク質またはその断片は、基板上に固定化される。実際に、JUNOタンパク質を含むバイオセンサへの精子細胞の結合を介して精子機能を精査することは、実行可能な戦略であり得、最終的には雄不妊の診断を可能にし、ヒトまたは動物の卵母細胞またはその一部分の必要性を克服する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、精子機能は、タンパク質またはその断片への精子の少なくとも一部分の結合から決定され、これらのタンパク質またはその断片は、センサ上に固定化され、タンパク質(複数可)は、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3および/または抗IZUMO抗体、またはそれらの断片である。いくつかの実施形態では、精子の少なくとも一部分は、IZUMO1表面抗原を含む。
【0028】
精子機能を検出するかつ/または定量化するための方法を提供することは、本開示の一態様であり、この方法は、
a.対象からの精液サンプルを提供するステップであって、精液サンプルが、1つ以上の精子細胞を含む、提供するステップと、
b.精液サンプルを前述の請求項のいずれか一項に記載のバイオセンサと接触させるステップと、
c.センサに固定化されたタンパク質への精子細胞の結合を決定するステップ、
を含み、それにより、サンプルの精子機能を検出するかつ/または定量化する。
【0029】
雄不妊を診断するための方法を提供することもまた、本開示のさらなる一態様であり、この方法は、
a.対象からの精液サンプルを提供するステップと、
b.精液サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させるステップと、
c.本明細書に開示される方法に従って、サンプルの精子機能を定量化するステップと、
d.精子機能を使用して、対象が不妊であるかを診断するステップ、
を含む。
【0030】
雄不妊を診断するための方法を提供することもまた、本開示の別の態様であり、この方法は、
a.対象からの精子サンプルを提供するステップと、
b.精子サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させるステップと、
c.本明細書に開示される方法に従って、サンプルの精子機能を定量化するステップと、
d.精子機能を使用して、対象が不妊であるかを診断するステップ、
を含む。
【0031】
本明細書で使用される「精子機能」という用語は、精子の健康を指し、これは、精子が卵に受精能を獲得させ、受精させる能力である。精子機能検査は、精子細胞の生化学的特徴または分子的特徴を精査する診断または研究方法である。次の参照文献は、精子機能検査のいくつかの例を有する:Talwar and Hayatnagarkar 2015.J Hum Reprod Sci.8(2):61-69。本開示は、精子-卵母細胞相互作用検査とも呼ばれる精子機能検査に関するものであり、この検査は、卵母細胞を使用する代わりに、精子と卵母細胞との融合に関与する重要なタンパク質受容体の1つ以上を使用することによって精子-卵母細胞相互作用の条件を模倣する。
【0032】
本開示の方法による一実施形態では、精液サンプルは、1つ以上の精子細胞を含むかまたは含むことが疑われる。
【0033】
本開示の方法による一実施形態では、サンプルの精子機能は、センサ上に固定化されたタンパク質への精子細胞の結合を決定することによって検出され、タンパク質は、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3および/もしくは抗IZUMO抗体、またはそれらの断片からなる群から選択され、この結合は、顕微鏡分析、電気化学的検出、および/または表面プラズモン共鳴によって検出される。
【0034】
本開示の方法による一実施形態では、サンプルの精子機能は、センサ上に固定化されたタンパク質への精子細胞の結合を決定することによって定量化され、タンパク質は、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3および/もしくは抗IZUMO抗体、またはそれらの断片からなる群から選択され、この結合は、顕微鏡分析、電気化学的検出、および/または表面プラズモン共鳴によって検出される。
【0035】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、顕微鏡分析によって結合精子細胞対非結合精子細胞の割合を決定することによって定量化される。
【0036】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、電気化学的検出によって結合精子細胞対非結合精子細胞の割合を決定することによって定量化される。
【0037】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、表面プラズモン共鳴によって結合精子細胞対非結合精子細胞の割合を決定することによって定量化される。
【0038】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、顕微鏡分析によって、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞の先体状態を決定することによって定量化される。
【0039】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、電気化学的検出によって、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞の先体状態を決定することによって定量化される。
【0040】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、表面プラズモン共鳴によって、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞の先体状態を決定することによって定量化される。
【0041】
本開示の方法による一実施形態では、本方法は、結合精子細胞対非結合精子細胞の割合および/または精子細胞の先体状態をそれぞれの基準値と比較することをさらに含み、ここで、基準値は、正の基準値(機能的精子を表す)および/または負の基準値(非機能的精子を表す)であり得る。基準値は、対照精液サンプルおよび/または対照精子サンプルを検査することによって得ることができる。基準値はまた、科学文献で入手可能なデータから得ることができる。
【0042】
本開示の方法による一実施形態では、サンプルは、ステップbの前に処理される。例えば、精液サンプル処理は、精子の液化を含み得る。精液サンプル処理は、任意により受精能を獲得することを含み得る。精子サンプル処理は、精子の液化を含み得る。精子サンプル処理は、任意により受精能を獲得することを含み得る。
【0043】
本明細書に開示されるバイオセンサは、様々なレベルで精子機能を決定するために使用され得る。
【0044】
例えば、本開示のバイオセンサは、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞が透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合する能力を決定するために使用され得る。
【0045】
本開示のバイオセンサは、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞が先体反応を受ける能力を決定するために使用され得る。
【0046】
透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3への結合は、先体反応を受けるために精子細胞にとって必要なステップである。したがって、透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合できない精子細胞は、先体反応を受けない。
【0047】
精子細胞が透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合し先体反応を受けることができるかを決定することは、使用可能な生殖補助医療を確立するために重要である。特に、透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合できない、および/または先体反応を受けない精子細胞は、透明帯コートが卵から除去されている場合には、IVFに好適であり得る。
【0048】
本開示のバイオセンサは、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞がJUNOタンパク質を結合する能力を決定するために使用され得る。
【0049】
精子細胞は、透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合できず、かつ/または先体反応を受けない場合であっても、JUNOタンパク質に結合できる可能性がある。これは、精子細胞が誘発されて、卵母細胞の細胞膜への結合のために必要な表面抗原を可能にし露出させ得るためである。
【0050】
いくつかの実施形態では、精子機能は、固定化されたJUNOタンパク質またはその断片に結合する精子の能力によって決定される。この結合は、例えば、精子上にあるIZUMO1タンパク質またはその断片を介して起こり得る。この結合は、例えば、精子によって発現されるIZUMO1タンパク質またはその断片を介して起こり得る。
【0051】
実際に、受精能獲得を受けた精子は、その表面にIZUMO1タンパク質もしくはその断片を提示し得、IZUMO1タンパク質もしくはその断片は、その卵受容体対応物、例えば、JUNOタンパク質もしくはその断片、または抗IZUMO抗体もしくはその断片を結合できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、精子機能は、固定化されたJUNOタンパク質またはその断片へのIZUMO1タンパク質またはその断片の結合によって決定される。
【0053】
特定の実施形態では、本開示による方法は、雄不妊を治療するステップをさらに含む。
【0054】
本開示による方法の特定の実施形態では、治療は、治療有効量での薬剤の投与、および/または人工生殖技術(ART)によることを含む。例えば、精子機能の低下と診断された対象は、子宮内授精(IUI)、体外受精(IVF)、またはIVFおよび卵細胞質内精子注入法(ICSI)などのARTの助けにより、生殖を受け得る。
【0055】
例えば、精子機能の低下、特に、
-透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合する能力の低下、
-先体反応を受ける能力の低下;
-JUNOタンパク質を結合する通常の能力、
を特徴とする精子細胞を有すると診断された対象は、IVFの助けにより生殖を受け得る。
【0056】
例えば、精子機能の低下、特に、
-透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/またはZP3に結合する能力の低下、
-先体反応を受ける能力の低下;
-JUNOタンパク質を結合する能力の低下、
を特徴とする精子細胞を有すると診断された対象はIVFおよびICSIによる助けにより、生殖を受け得る。
【0057】
本明細書で使用される「能力の低下」および「通常の能力」という用語は、陽性対照であり得る基準値に関連する。基準値は、受精能のある対象の精液サンプルの平均値を計算することによって得ることができる。基準値は、受精能のある対象の精子サンプルの平均値を計算することによって得ることができる。基準値は、科学的報告からも得ることができる。したがって、精子機能の低下および/または雄不妊を有する対象を診断するために、精液サンプルおよび/もしくは精子サンプルから採取された対象の精子細胞が透明帯タンパク質ZP1、ZP2および/もしくはZP3に結合する能力、ならびに/または先体反応を受ける能力を、少なくとも陽性対照および/または陰性対照などの基準値と比較する。
【0058】
当業者に公知である雄不妊の任意の治療を使用できる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示によるバイオセンサは、精子機能の検出かつ/または定量化のために構成される。
【0060】
本開示の方法による一実施形態では、精子機能は、ステップc)で、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞の先体状態を決定することによって定量化され、これは、精子機能の測定値への先体反応性の程度の変換をもたらす。特定の実施形態では、蛍光色素がサンプルに添加され、その後に、SPRまたは顕微鏡法によってサンプルを分析して精子細胞の先体状態(すなわち、精子細胞が「先体反応」するか)を決定するステップを行う。いくつかの実施形態では、蛍光色素は、サンプルを基板と接触させた後にのみ、バイオセンサの注入口でサンプルに添加される。いくつかの実施形態では、蛍光色素は、先体反応が起こった後にのみ、バイオセンサの注入口でサンプルに添加される。蛍光色素の存在は、精子細胞の先体状態を決定するステップを容易にし得る。例えば、エンドウ(エンドウ豆凝集素)もしくはラッカセイ(ピーナッツレクチン)などの蛍光標識レクチン、または先体抗原CD46に対するモノクローナル抗体を使用して、精子細胞の先体状態を評価できる。先体反応を検出するための方法は、ヒト精液の検査および処理に関するWHO laboratory manual(WHO,5th Edition,2010,ISBN978 92 4 154778 9)(特に第4章を参照のこと)に見出される。
【0061】
本開示の方法によるいくつかの実施形態では、精子機能は、ステップc)で、精液サンプル中および/または精子サンプル中の精子細胞の先体状態を決定することによって定量化され、これは、精子機能の測定値への先体反応性の程度の変換をもたらし、精液サンプルおよび/または精子サンプルの先体反応性が、受精能のある雄個体から収集された精子の平均先体反応性と比較され、機能性精子は、受精能のある雄個体から収集された精子の平均先体反応性と同等であるかまたはそれを超える先体反応性を有し得る。受精能のある雄個体から収集された精子の平均先体反応性に関するデータは、科学文献および臨床報告に見出され得る。
【0062】
本開示の方法によるいくつかの実施形態では、精子機能は、ステップc)で、先体反応性の程度を精子機能の測定値に変換することによって定量化され、15%以上の先体反応性は、機能的精子を示し得る。
【0063】
本開示の方法によるいくつかの実施形態では、精子機能は、ステップc)で、先体反応性の程度を精子機能の測定値に変換することによって定量化され、10%以下の先体反応性は、非機能的精子を示し得る。
【0064】
本開示の方法によるいくつかの実施形態では、精子機能は、ステップc)で、先体反応性の程度を精子機能の測定値に変換することによって定量化され、10~15%の先体反応性は、異常な精子機能を示し得る。
先体反応
【0065】
受精中に、精子は最初に原形質膜と融合し、次に雌の卵を受精させるために雌の卵に浸透する必要がある。精子細胞は、卵の硬い殻または細胞外マトリックスを貫通する前に、先体反応として知られているプロセスを受ける。先体反応は、精子が透明帯に結合した後に起こる細胞外プロセスであり、精子が卵母細胞の層(vestment)に浸透し卵母細胞と融合できる前に起こる必要がある。先体は、精子の頭の前半分を覆うキャップ様構造である。精子が、先体反応を開始するために必要である卵の透明帯に近づくと、先体を取り巻く膜が精子の頭の原形質膜と融合し、先体の内容物を露出させる。内容物は、卵の細胞膜への結合に必要である表面抗原、および卵の頑強なコーティングを介して破壊しかつ受精の発生を可能にする多くの酵素を含む。例えば、先体の内容物は、IZUMO1タンパク質またはその断片を含み得る。
バイオセンサ
【0066】
精子機能を定量化するためのバイオセンサを提供することは、本開示の一態様であり、本バイオセンサは、基板と、JUNOタンパク質またはその断片とを含み、ここで、JUNOタンパク質またはその断片は、基板上に固定化される。
【0067】
また、精子機能を検出するためのバイオセンサを提供することは、本開示のさらなる一態様であり、本バイオセンサは、基板と、JUNOタンパク質またはその断片とを含み、ここで、JUNOタンパク質またはその断片は、基板上に固定化される。
【0068】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、センサである。本開示のセンサまたはバイオセンサは、精子機能の検出かつ/または定量化のために構成される。
【0069】
本明細書で使用される「バイオセンサ」は、「センサ」と呼ばれることもある。リガンド/受容体相互作用を検出するための様々なデバイスが公知である。これらの最も基本的なものは、検出可能な反応生成物を測定するかまたは定量化することによって分析物の存在または量を検出する純粋な化学的アッセイ/酵素的アッセイである。リガンド/受容体の相互作用は、放射性標識アッセイによって検出され、定量化されてもよい。
【0070】
この種類の定量的結合アッセイは、2つの別個の構成部分:反応基板、例えば、固相試験ストリップ、ディッシュ、チップまたは電極、および別個の読み取り器または検出器、例えば、シンチレーションカウンタ、分光光度計、顕微鏡、または当技術分野で公知である他の検出器、を含む。基板は一般に、少量の体液サンプルからの複数の分析物アッセイを処理するための複数のアッセイまたは小型化には好適でない。
【0071】
対照的に、バイオセンサでは、アッセイ基板および検出器表面を単一のデバイスへと一体化できる。1つの一般的な型のバイオセンサは、リガンド-受容体結合事象の存在に応答する電流またはインピーダンスの変化を検出するために、電流測定要素またはインピーダンス測定要素と組み合わせて電極表面を使用する。別の型のバイオセンサは、光学検出器と組み合わせて、例えば表面プラズモン共鳴と組み合わせて、チップ、例えばガラスチップを使用し得る。別の型のバイオセンサは、顕微鏡と組み合わせてディッシュを使用し得る。さらなる型のバイオセンサは、例えば、ラテックス凝集試験に好適である、光学的検出器または電気的検出器と組み合わせてマイクロビーズを使用し得る。さらに別の型のバイオセンサは、例えば横方向流動試験に好適である光学的検出器または電気的検出器と組み合わせて、セルロース紙またはニトロセルロース紙などのポリマー基板を使用し得る。
【0072】
本明細書で使用される「ディッシュ」という用語は、ガラス、セラミック、プラスチック、セルロース、ニトロセルロースまたは他の任意の材料で作製された容器またはスライドを指し得、顕微鏡的または肉眼的光学的検出および選択を行うための基板として使用できる。例としては、スライドガラス、マイクロタイタプレート、マルチウェルプレート、ペトリディッシュ、ガラス時計皿などが挙げられる。ディッシュは、例えば、金の層でコーティングされた修飾され得る材料製であってもよい。
【0073】
本明細書で使用される「マイクロビーズ」という用語は、1mm以下の直径を有する粒子を指す。マイクロビーズは、天然または合成の高分子材料で構成されてよい。マイクロビーズは、修飾可能な表面を有することを特徴とする材料から作製され得、例えば、金ナノ粒子などのナノ粒子、および/またはペプチドなどの分子に結合され得る表面を有し得る。
【0074】
バイオセンサは、生物学的要素を含むセンサを指す。バイオセンサは、手間および費用を要し複雑でありかつin situでの監視には適切でない可能性がある従来の分析技術の実質的な代替品である。バイオセンサは、生物学的要素を交換器と一体化する化学分析デバイスであり得る。このバイオセンサは、検出器にさらに搬送される単一の分析物に比例する信号を生成する交換器内のまたは交換器と密接に接触している生物学的要素を統合する。いくつかの実施形態では、分析物の結合から出力される信号は、顕微鏡検査によって可視化され得る。いくつかの実施形態では、分析物の結合から出力される信号は、光学検出器によって可視化され得る。
【0075】
バイオセンサは、3つの基本的な構成部品、バイオ受容体(生物学的要素)、交換器、および電子回路を含む。生体受容体または生物学的要素は、酵素、DNA、タンパク質、全細胞、抗体などのような、交換器に埋め込まれた生体分子である。本出願において、生体受容体は、JUNOタンパク質であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、バイオセンサは、2つ以上の種類のバイオ受容体を含み、例えば、一つの種類のバイオ受容体は、JUNOタンパク質またはその断片であり得、別の種類のバイオ受容体は、ZP1、ZP2、ZP3、および抗IZUMO抗体からなる群から選択され得る。
【0076】
本開示の方法に含まれる検出器は、表面プラズモン共鳴検出器、電気化学検出器、および測定回路などの光学検出器である。電子回路は、電気信号を処理可能な信号に変換する信号処理バイオセンサを含む。いくつかの実施形態では、検出器は顕微鏡であり得る。
【0077】
表面プラズモン共鳴(SPR)効果に基づくバイオセンサは、SPRインターフェースでの摂動(結合事象など)で発生するSPR表面反射角のシフトを活用する。最後に、バイオセンサはまた、バイオセンサ表面での光学特性の変化を利用し得る。
【0078】
電気化学的バイオセンサは通常、電子を生成するかまたは消費する反応(レドックス酵素)の酵素触媒作用に基づく。センサ基板は通常、3つの電極(参照電極、作用電極、対極)を含む。標的分析物は、活性電極表面で起こる反応に関与し、この反応は、二重層を横切る電子移動を引き起こし(電流を生成する)得るか、または二重層電位に寄与する(電圧を生成する)可能性がある。電子の流量が固定電位での分析対象物の濃度に比例する電流を測定するか、ゼロ電流での電位を測定して対数応答を得ることができる。さらに、小さいペプチドおよびタンパク質の標識を使わない直接的な電気的検出が、生体機能化されたイオン感応性電界効果トランジスタを使用するそれらの固有電荷によって可能である。
【0079】
ゼロ電流で電位が生成される電位差測定バイオセンサは、高いダイナミックレンジで対数応答を提供する。そうしたバイオセンサは多くの場合、導電性ポリマーでコーティングされたプラスチック基板上に電極パターンをスクリーン印刷し、次にタンパク質(酵素または抗体)を付着させることによって作製される。これらのセンサは、わずか2つの電極を有し、非常に高感度であり、かつ頑強である。これらは、以前はHPLCおよびLC/MSのみで達成可能であったレベルで、かつ厳密なサンプル前処理なく分析対象物の検出を可能にする。すべてのバイオセンサは通常、生物学的感知部品が関連する分析物に対して非常に選択的であるため、最小限のサンプル調製を伴う。信号は、センサの表面で発生する変化による導電性ポリマー層の電気化学的変化および物理的変化によって生成される。このような変化は、イオン強度、pH、水和、およびレドックス反応に起因し得る。ゲート領域が酵素または抗体で修飾されている電界効果トランジスタ(FET)は、FETのゲート領域への分析物の結合がドレインソース電流の変化を引き起こすため、非常に低濃度の様々な分析物を検出することもできる。
【0080】
バイオセンサは、従来の結合アッセイを上回る複数の潜在的な利点を有する。重要な1つの利点は、マイクロチップ製造方法を使用して、小規模であるが再現性の高いバイオセンサユニットを製造できることである。
【0081】
様々な種類のバイオセンサの多くの潜在的な用途がある。研究および商業的用途の観点から有益なバイオセンサアプローチの主な要件は、標的分子の同定、好適な生物学的認識要素の利用可能性、および状況によっては実験室ベースの高感度の技術よりも好ましい使い捨ての携帯型検出バイオセンサの可能性である。
【0082】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、透明帯1(ZP1)、透明帯2(ZP2)、透明帯3(ZP3)、および/または抗IZUMO抗体またはその断片をさらに含み、ZP1、ZP2、ZP3、および/または抗IZUMO抗体またはその断片は、基板上に固定化される。
【0083】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、タンパク質JUNOおよびZP3を含み、タンパク質は、基板上に固定化される。
【0084】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、タンパク質JUNOおよびZP2を含み、タンパク質は、基板上に固定化される。
【0085】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、タンパク質JUNOおよびZP1を含み、タンパク質は、基板上に固定化される。
【0086】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、タンパク質JUNOおよび抗IZUMO抗体を含み、タンパク質は、基板上に固定化される。
【0087】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサは、タンパク質JUNO、ZP2およびZP3を含み、タンパク質は、基板上に固定化される。
【0088】
ZP1、ZP2、ZP3および抗IZUMO抗体の1つ以上と組み合わせたJUNOの存在は、バイオセンサの特異性を改善し得、分析された精液サンプルおよび/または分析された精子サンプルの精子機能のより正確な決定を可能にし得る。例えば、ZP1、ZP2、ZP3、および抗IZUMO抗体の1つ以上と組み合わせたJUNOの存在は、透明帯タンパク質に結合し、先体反応を受け、卵母細胞に結合する精子の能力のより正確な決定を可能にし得る。
【0089】
一実施形態では、基板に固定化され得るタンパク質JUNO、ZP1、ZP2およびZP3は、哺乳動物タンパク質である。例えば、タンパク質JUNO、ZP1、ZP2およびZP3は、ヒトタンパク質またはその断片であり得る。例えば、タンパク質JUNO、ZP1、ZP2およびZP3は、ウマタンパク質またはその断片であり得る。例えば、タンパク質JUNO、ZP1、ZP2およびZP3は、イヌタンパク質またはその断片であり得る。例えば、タンパク質JUNO、ZP1、ZP2およびZP3は、ウシタンパク質またはその断片であり得る。
【0090】
さらなる実施形態では、本開示によるバイオセンサは、配列番号1に対して少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性など、少なくとも97%の配列同一性など、少なくとも98%の配列同一性など、少なくとも99%の配列同一性エンティティなど、約100%の配列同一性などを有するポリペプチド、またはそのオルソログ、またはタンパク質の断片を含むかまたはそれらからなるJUNOタンパク質を含む。
【0091】
一実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、ZP1は、配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性など、少なくとも97%の配列同一性など、少なくとも98%の配列同一性など、少なくとも99%の配列同一性エンティティなど、約100%の配列同一性などを有するポリペプチド、またはそのオルソログ、またはタンパク質の断片を含むか、またはそれらからなる。
【0092】
さらなる実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、ZP2は、配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性など、少なくとも97%の配列同一性など、少なくとも98%の配列同一性など、少なくとも99%の配列同一性エンティティなど、約100%の配列同一性などを有するポリペプチド、またはそのオルソログ、またはタンパク質の断片を含むか、またはそれらからなる。
【0093】
さらなる実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、ZP3は、配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性など、少なくとも97%の配列同一性など、少なくとも98%の配列同一性など、少なくとも99%の配列同一性エンティティなど、約100%の配列同一性などを有するポリペプチド、またはそのオルソログ、またはタンパク質の断片を含むか、またはそれらからなる。
【0094】
いくつかの実施形態では、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3、および抗IZUMO抗体の少なくとも1つは、追加の部分に結合される。例えば、追加の部分は、ペプチドまたは標識であり得る。例えば、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3、および抗IZUMO抗体の少なくとも1つは、ポリヒスチジンタグに結合される。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、基板は、マイクロビーズ、ディッシュ、チップ、または電極である。
【0096】
一実施形態では、基板はポリマーマイクロビーズである。例えば、基板は、アガロースマイクロビーズ、セルロースマイクロビーズ、ニトロセルロースマイクロビーズ、またはラテックスマイクロビーズであり得る。いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、顕微鏡、光変換器、または測定回路に連結できるように構成される。
【0097】
一実施形態では、基板は、プラスチックディッシュ、セラミックディッシュ、またはガラスディッシュなどのディッシュである。さらなる実施形態では、ディッシュは、顕微鏡または光変換器に連結できるように構成される。
【0098】
いくつかの実施形態では、チップはガラスチップである。
【0099】
本明細書で使用される「ガラス」という用語は、石英またはシリカと同等であり、SiO2の化学式全体を有する連続フレームワーク中にシリコンおよび酸素原子を含む。
【0100】
特定の実施形態では、電極は、炭素、金、または白金の電極である。一実施形態では、電極はスクリーン印刷された電極である。
【0101】
いくつかの実施形態では、基板は修飾された表面を有する。一実施形態では、基板の少なくとも1つの表面は、金の層でコーティングされる。いくつかの実施形態では、基板の少なくとも1つの表面は、金、銀、酸化銅、グラフェン、酸化鉄、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるナノ粒子で修飾される。
【0102】
特定の実施形態では、本開示によるバイオセンサは、基板が顕微鏡、電気化学ワークステーション、表面プラズモン共鳴検出器、測定回路または光変換器に連結され得るように構成される。
【0103】
一実施形態では、基板は電極であり、電気化学ワークステーションまたは測定回路に連結できるように構成される。
【0104】
一実施形態では、基板はチップであり、表面プラズモン共鳴検出器に連結できるように構成される。
タンパク質の固定化
【0105】
本開示は、バイオセンサに関する。
【0106】
精子機能の検出および定量化のために、本バイオセンサは、基板と、基板上に固定化されたタンパク質JUNOまたはその断片とを含む。
【0107】
センサの表面(金属、ポリマー、ガラスなど)上の目的のタンパク質などの生物学的要素の固定化は、バイオセンサの設計において必要かつ重要なステップである。使用される基板に応じて異なる固定化技術が存在し、これらの技術は当業者に知られている。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3、および抗IZUMO抗体の少なくとも1つが追加の部分に結合される。いくつかの実施形態では、追加の部分はペプチドである。一実施形態では、追加の部分は標識である。
【0109】
いくつかの実施形態では、追加の部分は、ペプチド、例えば、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)である。
【0110】
いくつかの実施形態では、追加の部分は、蛍光タグまたはプローブとも呼ばれる、標識である。
【0111】
ポリヒスチジンタグは、金属表面上などの表面上の、例えば金、ニッケル、またはコバルトでコーティングされたマイクロタイタプレートまたはタンパク質アレイ上のタンパク質の固定化にうまく使用され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3および/または抗IZUMO抗体が基板上に固定化される。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示によるバイオセンサが提供され、JUNOタンパク質、ZP1、ZP2、ZP3および/または抗IZUMO抗体が、ナノ粒子を介して、例えば金ナノ粒子を介して基板上に固定化される。基板とタンパク質との間のナノ粒子の存在は、それがタンパク質のアンフォールディングを防ぎ、タンパク質が正しいコンフォメーションに留まるのを補助するため、有利である。
方法
【0114】
本明細書に開示されるバイオセンサなどの、JUNOタンパク質を含むバイオセンサを製造するための方法を提供することは、本開示の一態様であり、この方法は、
a.基板を提供するステップと、
b.JUNOタンパク質を提供することと、
c.JUNOタンパク質を基板に固定すること、
を含み、それにより、JUNOタンパク質を含むバイオセンサを製造する。
【0115】
いくつかの実施形態では、バイオセンサを製造するための方法は、ZP1、ZP2、ZP3および抗IZUMO抗体の1つ以上を基板上に固定化することをさらに含む。
【0116】
精子を選択する方法を提供することは、本開示のさらなる態様であり、この方法は、
a.対象からの精液サンプルを提供することと、
b.精液サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させることと、
c.顕微鏡によってバイオセンサに結合した精子を可視化することと、
d.バイオセンサに結合した精子を選択すること、
を含む。
【0117】
精子を選択する方法を提供することは、本開示のさらなる態様であり、この方法は、
a.対象からの精子サンプルを提供することと、
b.精子サンプルを本開示によるバイオセンサと接触させることと、
c.顕微鏡によってバイオセンサに結合した精子を可視化することと、
d.バイオセンサに結合した精子を選択すること
を含む。
【0118】
本開示の方法による一実施形態では、精液サンプルは、1つ以上の精子細胞を含むかまたは含むことが疑われる。
ホームデバイス
【0119】
精子機能の検出かつ/または定量化のためのハンドヘルドデバイスを提供することもまた、本開示の一態様であり、本デバイスは、
a.サンプル用の注入口と、
b.JUNOタンパク質またはその断片を含むバイオセンサであって、JUNOタンパク質がバイオセンサ上に固定化され、かつ注入口が、サンプルをセンサと接触させるように構成される、バイオセンサと、
c.センサから信号を受信し、その信号をユーザが読み取り可能な形式に変換するように構成される検出器と、
d.任意により、細胞成分をサンプルから分離するための手段、
を含む。
【0120】
特定の実施形態では、本開示によるハンドヘルドデバイスは、本開示の実施形態のいずれか1つで画定されるバイオセンサを含む。
対象
【0121】
対象がヒト対象である、本開示による方法を提供することは、本開示の一態様である。特定の実施形態では、ヒト対象は小児または成人である。
【0122】
本開示による方法のさらなる実施形態では、対象は哺乳動物である。本開示による方法のさらなる実施形態では、対象は、ウマ、ウシ、バッファロ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ネコまたはイヌである。
【0123】
本開示のいくつかの実施形態では、対象はウマであり、バイオセンサは、基板上に固定化されたJUNOタンパク質またはその断片を含み、JUNOタンパク質は、配列番号6のウマのJUNOタンパク質に対して少なくとも95%の配列同一性、配列番号6のウマJUNOタンパク質に対して少なくとも96%の配列同一性など、少なくとも97%の配列同一性など、少なくとも98%の配列同一性など、少なくとも98%の配列同一性など、少なくとも99%の配列同一性など、約100%の配列同一性などを有する配列を有する。
【0124】
本開示のいくつかの実施形態では、対象はイヌであり、バイオセンサは、基板上に固定化されたJUNOタンパク質またはその断片を含み、JUNOタンパク質は、イヌのJUNOタンパク質である。
【0125】
本開示のいくつかの実施形態では、対象はウシであり、バイオセンサは、基板上に固定化されたJUNOタンパク質またはその断片を含み、JUNOタンパク質は、ウシのJUNOタンパク質である。
サンプル
【0126】
本開示による方法の特定の実施形態では、サンプルは精液サンプルであり、任意により、サンプルは分析の前に処理されている。
【0127】
本開示による方法の特定の実施形態では、サンプルは精子サンプルであり、任意により、サンプルは分析の前に処理されている。
【0128】
本開示の方法による一実施形態では、精液サンプルおよび/または精子サンプルは、1つ以上の精子細胞を含むかまたは含むことが疑われる。
【0129】
いくつかの実施形態では、精液サンプルは分析の前に処理され、この処理は、精子を液化することを含む。
【0130】
本明細書では、精液サンプルは、精子サンプルおよび精液(seminal fluid)と同義的に使用され得る。精液サンプルおよび/または精子サンプルは、本明細書では、精子(spermatozoa)を含み得る精液のサンプルとして定義される。精液サンプルはさらに、本開示の特定の実施形態において、精液/精子サンプルの希釈などの処理に好適な溶媒、培地、バッファおよび/または流体を使用することによって、処理(希釈など)されてよい。
【0131】
精液は、雄または雌雄同体の動物の生殖腺(性腺)および他の性器から分泌され、雌の卵子を受精させることができる。ヒトの場合、精液は精子に加えていくつかの構成成分を含む。タンパク質分解酵素および他の酵素、ならびにフルクトースは、精液の構成要素であり、精子の生存を促進し、それを通じて精子が移動するまたは「泳ぐ」ことができる媒体を提供する。精液は、骨盤内に存在する精嚢から生成され、発生する。
本明細書で使用されている「精子」という用語は、雄の生殖細胞を指し、「精子細胞」の同義語である。運動性のある単鞭毛精子細胞は精子と呼ばれ、運動性のない精子細胞は不動精子と呼ばれる。本開示において、「精子(sperm)」および「精子(spermatozoa)」という用語は同義的に使用される。
検出技術
【0132】
本開示による方法のいくつかの実施形態では、精子機能は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して検出される。特定の実施形態では、表面プラズモン共鳴の読み出しを使用して、甲状腺ホルモンの1つ以上の濃度を決定する。
【0133】
表面プラズモン共鳴は、入射光によって刺激された負および正の誘電率材料間の界面での伝導電子の共鳴振動である。SPRは、平面金属(金もしくは銀など)の表面上へのまたは金属ナノ粒子の表面上への材料の吸着を測定するための多くの標準ツールの基礎である。これは、多くのカラーベースのバイオセンサアプリケーション、様々なセンサ、珪藻光合成の背後にある基本原理である。SPRは、生体分子結合相互作用を検出するために使用され得る。SPRでは、タンパク質などの1つの分子パートナが金属膜上に固定化される。光は、金属の表面プラズモンを励起し、固定化された分子に結合パートナが結合するときに、これは表面プラズモンシグナルの検出可能な変化を引き起こす。
【0134】
本開示による方法のいくつかの実施形態では、精子機能は、電気化学的変換によって検出されるかまたは定量化される。
【0135】
電気化学的変換を利用するバイオセンサとも呼ばれる電気化学的バイオセンサは、電子信号への生物学的事象の直接変換のため、生物学的サンプルの内容物を分析するための魅力的な手段を提供する。電気化学的バイオセンシングの最も一般的な技術は、サイクリックボルタンメトリ、クロノアンペロメトリ、クロノポテンシオメトリ、インピーダンス分光法、および電界効果トランジスタベースの方法、ならびにナノワイヤまたは磁性ナノ粒子ベースのバイオセンシングを含む。電気化学的検出と組み合わせて有用な追加の測定技術は、表面プラズモン共鳴、光導波路光モード分光法、エリプソメトリ、水晶振動子微量天秤、および走査型プローブ顕微鏡法の電気化学的型をさらに含み得る。
雄不妊
【0136】
雄不妊とは、雄が受精能のある雌に妊娠を引き起こすことができないことを指す。ヒトでは、それは不妊の40~50%を占める。それは、全男性の約7%に影響を及ぼす。男性不妊は一般的に精液における欠陥が原因であり、精液の質は男性の生殖能力の代理測定として使用される。
【0137】
雄不妊は、雄の個体が受精能のある雌の個体に妊娠を引き起こすことができないものとして定義される。雄不妊の原因は、機能しない精子の生成であり得る。
【0138】
雄不妊の診断は、一連の機能検査に、例えば、本明細書に開示される精子機能検査のいずれか1つに基づいてよい。これらの検査は、当業者に公知であるガイドライン、例えば、WHO laboratory manual for the Examination and processing of human semen、WHO、第5版、2010、ISBN 978 92 4 154778 9(特に第4章を参照)に従って評価され得る。
配列
配列番号1:JUNO_ヒト精子-卵融合タンパク質Juno
MACWWPLLLELWTVMPTWAGDELLNICMNAKHHKRVPSPEDKLYEECIPWKDNACCTLTTSWEAHLDVSPLYNFSLFHCGLLMPGCRKHFIQAICFYECSPNLGPWIQPVGSLGWEVAPSGQGERVVNVPLCQEDCEEWWEDCRMSYTCKSNWRGGWDWSQGKNRCPKGAQCLPFSHYFPTPADLCEKTWSNSFKASPERRNSGRCLQKWFEPAQGNPNVAVARLFASSAPSWELSYTIMVCSLFLPFLS
配列番号2:ZP1_ヒト透明帯精子-結合タンパク質1
MAGGSATTWGYPVALLLLVATLGLGRWLQPDPGLPGLRHSYDCGIKGMQLLVFPRPGQTLRFKVVDEFGNRFDVNNCSICYHWVTSRPQEPAVFSADYRGCHVLEKDGRFHLRVFMEAVLPNGRVDVAQDATLICPKPDPSRTLDSQLAPPAMFSVSTPQTLSFLPTSGHTSQGSGHAFPSPLDPGHSSVHPTPALPSPGPGPTLATLAQPHWGTLEHWDVNKRDYIGTHLSQEQCQVASGHLPCIVRRTSKEACQQAGCCYDNTREVPCYYGNTATVQCFRDGYFVLVVSQEMALTHRITLANIHLAYAPTSCSPTQHTEAFVVFYFPLTHCGTTMQVAGDQLIYENWLVSGIHIQKGPQGSITRDSTFQLHVRCVFNASDFLPIQASIFPPPSPAPMTQPGPLRLELRIAKDETFSSYYGEDDYPIVRLLREPVHVEVRLLQRTDPNLVLLLHQCWGAPSANPFQQPQWPILSDGCPFKGDSYRTQMVALDGATPFQSHYQRFTVATFALLDSGSQRALRGLVYLFCSTSACHTSGLETCSTACSTGTTRQRRSSGHRNDTARPQDIVSSPGPVGFEDSYGQEPTLGPTDSNGNSSLRPLLWAVLLLPAVALVLGFGVFVGLSQTWAQKLWESNRQ
配列番号3:ZP2_ヒト透明帯精子-結合タンパク質2
MACRQRGGSWSPSGWFNAGWSTYRSISLFFALVTSGNSIDVSQLVNPAFPGTVTCDEREITVEFPSSPGTKKWHASVVDPLGLDMPNCTYILDPEKLTLRATYDNCTRRVHGGHQMTIRVMNNSAALRHGAVMYQFFCPAMQVEETQGLSASTICQKDFMSFSLPRVFSGLADDSKGTKVQMGWSIEVGDGARAKTLTLPEAMKEGFSLLIDNHRMTFHVPFNATGVTHYVQGNSHLYMVSLKLTFISPGQKVIFSSQAICAPDPVTCNATHMTLTIPEFPGKLKSVSFENQNIDVSQLHDNGIDLEATNGMKLHFSKTLLKTKLSEKCLLHQFYLASLKLTFLLRPETVSMVIYPECLCESPVSIVTGELCTQDGFMDVEVYSYQTQPALDLGTLRVGNSSCQPVFEAQSQGLVRFHIPLNGCGTRYKFEDDKVVYENEIHALWTDFPPSKISRDSEFRMTVKCSYSRNDMLLNINVESLTPPVASVKLGPFTLILQSYPDNSYQQPYGENEYPLVRFLRQPIYMEVRVLNRDDPNIKLVLDDCWATSTMDPDSFPQWNVVVDGCAYDLDNYQTTFHPVGSSVTHPDHYQRFDMKAFAFVSEAHVLSSLVYFHCSALICNRLSPDSPLCSVTCPVSSRHRRATGATEAEKMTVSLPGPILLLSDDSSFRGVGSSDLKASGSSGEKSRSETGEEVGSRGAMDTKGHKTAGDVGSKAVAAVAAFAGVVATLGFIYYLYEKRTVSNH
配列番号4:ZP3_ヒト透明帯精子-結合タンパク質3
MELSYRLFICLLLWGSTELCYPQPLWLLQGGASHPETSVQPVLVECQEATLMVMVSKDLFGTGKLIRAADLTLGPEACEPLVSMDTEDVVRFEVGLHECGNSMQVTDDALVYSTFLLHDPRPVGNLSIVRTNRAEIPIECRYPRQGNVSSQAILPTWLPFRTTVFSEEKLTFSLRLMEENWNAEKRSPTFHLGDAAHLQAEIHTGSHVPLRLFVDHCVATPTPDQNASPYHTIVDFHGCLVDGLTDASSAFKVPRPGPDTLQFTVDVFHFANDSRNMIYITCHLKVTLAEQDPDELNKACSFSKPSNSWFPVEGSADICQCCNKGDCGTPSHSRRQPHVMSQWSRSASRNRRHVTEEADVTVGPLIFLDRRGDHEVEQWALPSDTSVVLLGVGLAVVVSLTLTAVILVLTRRCRTASHPVSASE
配列番号5:IZUMO1_ヒトIzumo精子-卵融合タンパク質1
MGPHFTLLCAALAGCLLPAEGCVICDPSVVLALKSLEKDYLPGHLDAKHHKAMMERVENAVKDFQELSLNEDAYMGVVDEATLQKGSWSLLKDLKRITDSDVKGDLFVKELFWMLHLQKETFATYVARFQKEAYCPNKCGVMLQTLIWCKNCKKEVHACRKSYDCGERNVEVPQMEDMILDCELNWHQASEGLTDYSFYRVWGNNTETLVSKGKEATLTKPMVGPEDAGSYRCELGSVNSSPATIINFHVTVLPKMIKEEKPSPNIVTPGEATTESSISLQPLQPEKMLASRLLGLLICGSLALITGLTFAIFRRRKVIDFIKSSLFGLGSGAAEQTQVPKEKATDSRQQ
実施例
実施例1サイクリックボルタンメトリを使用する精子結合用の電気化学的バイオセンサ
【0139】
バイオセンサを、スクリーン印刷した金電極上に製造した。簡潔に説明すると、10μLの2mg/mLシステアミン塩酸塩を金電極に加え、室温暗所で乾燥させた。電極を脱イオン水で洗浄した後、10μLのクエン酸塩でキャップした金ナノ粒子で修飾した。乾燥させ、脱イオン水で洗浄した後、10μLの50mMニトリロ三酢酸を添加し、室温で一晩インキュベートした。この後、pH7.4の0.01Mリン酸緩衝生理食塩水中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。10μLの10mM硫酸ニッケルを添加し、室温で2時間インキュベートした。pH7.4の0.01Mリン酸緩衝生理食塩水で電極を洗浄した後、ポリヒスチジンタグを含む0.5μgのJUNOまたはZP3をバイオセンサ上に固定化した。
【0140】
精液サンプルを、標準手順に従って液化させ、精液調製培地において様々な希釈液に希釈した(#1070/1069、Origio A/S Denmark、https://origio.marketport.net/MarketingZone/MZDirect/Source/510e96f4-075b-4684-9a99-d472c1e3d31b)。バイオセンサを電気化学ステーションに接続し、希釈した精液サンプルをバイオセンサに添加し、固定化されたタンパク質と精液サンプル中に存在する精子との間の相互作用のサイクリックボルタンメトリ応答を記録した。
【0141】
結果を
図1~
図3に示す。
図1は、a)バッファのみ添加後(実線)およびバッファで1.67x10
-2倍に希釈した精液サンプルの添加後(点線)の電極-金ナノ粒子-BSAブロッキング、b)電極-金ナノ粒子-JUNO-BSAブロッキング(二点鎖線)、およびc)バッファで1.67x10
-2倍に希釈した精液サンプルを添加した後の電極-金ナノ粒子-ZP3-BSAブロッキング応答(破線)、のサイクリックボルタンメトリ応答を示す。希釈係数は、初期容量/最終容量による。
【0142】
図2は、電極-金ナノ粒子-6つの異なる精液サンプル(
図2A~F)の3つの異なる希釈液(1.56x10
-5倍(点線)、1.67x10
-2倍(二点鎖線)、および2.5x10
-2倍(破線))を添加後のZP3-BSAブロッキングのサイクリックボルタンメトリ応答を示す。実線はバッファのみ(精液サンプルなし)での電極応答を示す。
【0143】
図3は、精液サンプルS1、S2、S3、S4、S5およびS6(それぞれ
図3A~F)の3つの異なる希釈液(1.56x10
-5倍(点線)、1.67x10
ー2倍(一点鎖線)および2.5x10
-2倍(破線))の添加後の電極-金ナノ粒子-JUNO-BSAブロッキング、のサイクリックボルタンメトリ応答を示す。実線はバッファのみ(精液サンプルなし)での電極応答を示す。
結論:
【0144】
図1に示すとおり、精子は、JUNOまたはZP3が固定化されていないバイオセンサには結合しない。JUNOまたはZP3の存在下では、サイクリックボルタンメトリ曲線の明確な還元および/または酸化ピークから明らかなように、精子はバイオセンサと相互作用する。さらに、結合はサイクリックボルタンメトリを使用して定量化可能である。ZP3-精子およびJUNO-精子の双方の相互作用で、還元および酸化のピークは、それぞれ
図2および
図3に示すように、ZP3およびJUNOとの結合に利用できる精子の数と一致する傾向でシフトする。さらに、信号は陰性対照についてゼロとゼロ以外の精子濃度の間で変化しないままなので、すなわち結合タンパク質の非存在下では(
図1)、プローブされた相互作用はタンパク質特異的である。
実施例2電気インピーダンス分光法を使用して分析される精子結合のための電気化学的バイオセンサ
【0145】
スクリーン印刷した金電極を、10μlの2mg/mlシステアミン塩酸塩(CyHCl)を介して機能化し、室温暗所で2~4時間インキュベートする。電極を脱イオン水で洗浄した後、5μlのAsn-AuNPを機能化電極に分注する。電極を室温で5時間インキュベートした後、脱イオン水で洗浄する。さらに、5μlのPB(10mM、pH7.4)中のJUNO 160μg/mlおよびZP3 160μg/mlの5μlを添加し、4℃で一晩インキュベートする。最後に、電極を4℃で5時間、10μlのPBS中の1%BSAでブロックする。
【0146】
修飾された電極を、電気化学ワークステーションに接続する。
【0147】
5~50μLの前処理された精液サンプルを、作用電極に添加するか、または電極をサンプルバイアルに浸漬する。精子細胞を修飾電極に1~10分間結合させた後、脱イオン水で洗浄する。結合を、好適な濃度のレドックス媒体の存在下で電気インピーダンス分光法を介して分析する。
【0148】
同様の実験を、JUNOのみ、ZP2、およびZP2、ZP3、JUNOの組み合わせを使用して実施する。
【0149】
本実施例および以下のすべての実施例について、精液サンプルを、次の手順に従って、分析する前に前処理(液化)する:
-実験室または診療所で収集された精液サンプルを、室温または37℃のインキュベータ中で15~60分間液化させる。これを穏やかな回転または撹拌によって支援して、不均質に液化される精液サンプルを防ぎ得る。
-この液化精液サンプルを、好適な精液調製培地で洗浄、再構成、または希釈し得る。
結論:
【0150】
JUNO、またはJUNOとZP2およびZP3のいずれか1つとの組み合わせ、またはそれらの組み合わせにより機能化されかつ修飾されたスクリーン印刷された金電極を含むセンサを使用して、電気化学ワークステーションを介して精子機能を検出し、かつ定量化することができる。
実施例3先体反応のための電気化学的バイオセンサ
【0151】
スクリーン印刷された金電極を、10μlの2mg/mlシステアミン塩酸塩(CyHCl)を介して機能化し、室温暗所で2~4時間インキュベートする。電極を脱イオン水で洗浄した後、5μlのAsn-AuNPを機能化電極に分注する。次いで、電極を室温で5時間インキュベートした後、脱イオン水で洗浄する。さらに、5μlのPB(10mM、pH7.4)中のJUNO 160μg/mlおよびZP3 160μg/mlの5μlを添加し、4℃で一晩インキュベートする。最後に、電極を4℃で5時間、10μlのPBS中の1%BSAでブロックする。
【0152】
修飾された電極を、電気化学ワークステーションに接続する。
5~50μLの前処理された精液サンプルを、作用電極に添加するか、または電極をサンプルバイアルに浸漬する。結合を電気インピーダンス分光法または電流測定によって電気化学的に分析する間、精子細胞を、修飾された電極に結合させる。
【0153】
同様の実験を、ZP2およびJUNO、ZP3、ZP2の組み合わせを使用して実施する。
結論:
【0154】
JUNO、またはJUNOとZP2およびZP3のいずれか1つとの組み合わせ、またはそれらの組み合わせにより機能化されかつ修飾されたスクリーン印刷された金電極を含むセンサを使用して、電気化学ワークステーションを介して精子機能を検出し、かつ定量化することができる。
実施例4表面プラズモン共鳴(SPR)による精子機能の検出/定量化
【0155】
SPRチップを、ZP2、ZP3、およびJUNOのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせで化学的に機能化し、かつ修飾する。次に、チップを脱イオン水で洗浄し、コーティングされていない領域をウシ血清アルブミン(BSA)でブロックする。チップを、SPR検出器と組み合わせて使用する。前処理された精液サンプルを、チップの表面に流す。タンパク質コートと精子細胞との間の相互作用を、結合速度論および親和性の観点から質量変化として分析する。これにより、精子機能を検出し、定量化する。
結論:
【0156】
SPRチップを含むセンサは、ZP2、ZP3、JUNOのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせで化学的に機能化されかつ修飾され、SPR検出器を介して精子機能を検出し、定量化するために使用され得る。
実施例5光交換器による精子結合の検出/定量化
【0157】
ガラスディッシュの全体または一部を、最初にAuNPにより化学的に機能化し、次にZP2、ZP3、JUNOのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせにより修飾する。ディッシュを脱イオン水で洗浄し、コーティングされていない領域をBSAでブロックする。前処理された精液サンプルの液滴をコーティング領域に添加し、明視野または暗視野顕微鏡などの光変換器で結合を可視化する。これにより、精子機能を検出し、定量化する。
結論:
【0158】
AuNPと結合されたZP2およびZP3のいずれか1つもしくはそれらの組み合わせ、またはAuNPにより修飾されたガラスディッシュまたはプラスチックディッシュを含むセンサを使用して、光交換器を介して精子機能を検出し、かつ定量化できる。
実施例6光交換器による先体反応の検出/定量化
【0159】
前処理した精液サンプルを、これまでにAuNPと結合されたZP2とZP3のいずれか1つ、またはそれらの組み合わせとインキュベートする。精子をタンパク質と5~60分間相互作用させた後、遠心分離により洗浄する。次に、精子をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(PSA-FITC)で標識したエンドウ凝集素(PSA)により先体反応について染色し、次いで蛍光顕微鏡またはフローサイトメータなどの光交換器下で可視化する(セクション4.4.1を参照のこと、http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/44261/9789241547789_eng.pdf;jsessionid=2EF9F9030760BB60B84C83708999AF64?sequence=1)。これにより、精子機能を検出し、定量化する。
【0160】
あるいは、前処理した精液サンプルを、これまでにAuNP修飾ガラスディッシュまたはプラスチックディッシュと結合されたZP2およびZP3のいずれか1つまたはそれらの組み合わせと5~60分間インキュベートする。精子を表面から除去し、PSA-FITCにより先体反応について染色し、次いで蛍光顕微鏡またはフローサイトメータなどの光交換器下で可視化する。これにより、精子機能を検出し、定量化する。
【0161】
あるいは、前処理した精液サンプルを、これまでにAuNP修飾ガラスディッシュまたはプラスチックディッシュと結合されたZP2およびZP3のいずれか1つまたはそれらの組み合わせと5~60分間インキュベートする。次に、精子をin situでまたは基板から除去した後に抗CD46抗体により標識して、先体反応を受けた精子を検出する。検出を、蛍光顕微鏡またはフローサイトメータなどの光交換器により実施する。これにより、精子機能を検出し、定量化する。
結論:
【0162】
AuNPと結合されたZP2、ZP3およびJUNOのいずれか1つもしくはそれらの組み合わせ、またはAuNPにより修飾されたガラスディッシュまたはプラスチックディッシュを含むセンサを使用して、光交換器を介して精子機能を検出し、かつ定量化できる。
【配列表】