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特許7168279液体組成物およびサーチュイン活性化用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】液体組成物およびサーチュイン活性化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20221101BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221101BHJP
   A23L 33/13 20160101ALI20221101BHJP
【FI】
A23L2/52 101
A23L2/00 F
A23L33/105
A23L33/13
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022547105
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021047040
【審査請求日】2022-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520068733
【氏名又は名称】ドリームパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生駒 優希
(72)【発明者】
【氏名】山根 拓也
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158212(WO,A1)
【文献】特表2020-500021(JP,A)
【文献】Journal of Nutritional Biochemistry,2013年,Vol.24 ,pp.1564-1570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12G
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミドモノヌクレオチドおよびアロニアの抽出物を含む、サーチュイン活性化用飲料であり、
前記飲料中に含まれる前記アロニア抽出物の含有量は、飲料全量に対して、50質量%以上であり、
前記飲料中に含まれる前記ニコチンアミドモノヌクレオチドの含有量は、飲料全量に対して、0.001mg/mL以上1.0mg/mL以下である、飲料。
【請求項2】
前記サーチュインがサーチュイン1である、請求項に記載の飲料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、液体組成物およびサーチュイン活性化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドモノヌクレオチドは、補酵素NAD+の生合成中間代謝物である。非特許文献1(Mihoko Yoshino, Jun Yoshino, Brandon D Kayser, Gary J Patti, Michael P Franczyk, Kathryn F Mills, Miriam Sindelar, Terri Pietka, Bruce W Patterson, Shin-Ichiro Imai, Samuel Klein, Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women, Science 2021, 372, 1224-1229)においては、経口摂取によるヒトの臨床試験で、ニコチンアミドモノヌクレオチドに、肥満改善、糖尿病予防、筋肉インスリン感受性改善、の作用があることが報告されている。また、非特許文献2(Kathryn F. Mills, Shohei Yoshida, Liana R. Stein, Koji Uchida, Jun Yoshino, Shin-ichiro Imai, Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice, Cell Metabolism 2016, 24, 795-806)においては、経口摂取によるマウスを用いた試験で、ニコチンアミドモノヌクレオチドに、体重増加抑制、インスリン感受性改善、脂質代謝改善、ミ視覚能力改善、骨密度上昇、免疫機能上昇、の作用があることが報告されている。非特許文献3(Jun Yoshino, Kathryn F. Mills, Myeong Jin Yoon, Shin-ichiro Imai, Nicotinamide Mononucleotide, a Key NAD+ Intermediate, Treats the Pathophysiology of Diet- and Age-Induced Diabetes in Mice, Cell Metabolism 2011, 14, 528-536)においては、マウスを用いた試験で、ニコチンアミドモノヌクレオチドに、サーチュイン活性化の作用があることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Mihoko Yoshino, Jun Yoshino, Brandon D Kayser, Gary J Patti, Michael P Franczyk, Kathryn F Mills, Miriam Sindelar, Terri Pietka, Bruce W Patterson, Shin-Ichiro Imai, Samuel Klein, Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women, Science 2021, 372, 1224-1229
【文献】Kathryn F. Mills, Shohei Yoshida, Liana R. Stein, Koji Uchida, Jun Yoshino, Shin-ichiro Imai, Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice, Cell Metabolism 2016, 24, 795-806
【文献】Jun Yoshino, Kathryn F. Mills, Myeong Jin Yoon, Shin-ichiro Imai, Nicotinamide Mononucleotide, a Key NAD+ Intermediate, Treats the Pathophysiology of Diet- and Age-Induced Diabetes in Mice, Cell Metabolism 2011, 14, 528-536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、優れた生理機能活性を有する新たな組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] ニコチンアミドモノヌクレオチドおよびアロニアの抽出物を含む、液体組成物。
[2] 老化抑制用である、[1]に記載の液体組成物。
[3] サーチュイン活性化作用を有する、[2]に記載の液体組成物。
[4] ニコチンアミドモノヌクレオチドおよびアロニアの抽出物を含む、サーチュイン活性化用組成物。
[5] 前記サーチュインがサーチュイン1である、[4]に記載の組成物。
[6] 経口用である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、優れた生理機能活性を有する新たな組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】所定時間毎に測定した蛍光強度の結果を示す図である。
図2】SIRT1酵素活性の相対値を示す図である。
図3】SIRT1酵素活性について、液体試料2と液体試料3の結果を足し合わせた計算値と液体試料1の測定値とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[組成物]
本発明の組成物は、ニコチンアミドヌクレオチド(以下、「NMN」とも称する)とアロニアの抽出物を含む。本発明の組成物は、好ましくは経口用組成物である。
【0009】
<NMN>
NMN(化学式:C1115P)には、光学異性体としてα、βの2種類が存在するが、本発明ではβ-NMN(CAS番号:1094-61-7)が用いられる。β-NMNの構造を下記に示す。
【0010】
【化1】
【0011】
β-NMNとしては、いずれの方法で調製されたものであってもよい。例えば、化学合成法、酵素法、発酵法等により、人工的に合成したβ-NMNを精製したものを用いることができる。また、β-NMNは広く生体に存在する成分であるため、動物、植物、微生物などの天然原料から抽出・精製することによって得られたβ-NMNを用いることもできる。また、市販されている精製されたβ-NMNを使用してもよい。
【0012】
β-NMNを合成する化学合成法としては、例えば、ニコチンアミドとL-リボーステトラアセテートとを反応させ、得られたニコチンアミドモノヌクレオシドをリン酸化することによりβ-NMNを製造できる。また、酵素法としては、例えば、ニコチンアミドと5’-ホスホリボシル-1’-ピロリン酸(PRPP)から、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)によりβ-NMNを製造できる。発酵法としては、例えば、NAMPTを発現している微生物の代謝系を利用して、ニコチンアミドからβ-NMNを製造できる。
【0013】
本発明の組成物に用いられるNMNとしては、β-NMNの薬理学的に許容される塩であってもよい。β-NMNの薬理学的に許容される塩としては、無機酸塩であってもよく、アミンのような塩基性部位を有する有機酸塩であってもよい。このような酸塩を構成する酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、β-NMNの薬理学的に許容される塩としては、アルカリ塩であってもよく、カルボン酸のような酸性部位を有する有機塩であってもよい。このような酸塩を構成する塩基としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であって、水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、アンモニア、トリメチルアンモニア、トリエチルアンモニア、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、プロカイン、ジエタノールアミン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基から誘導されるものが挙げられる。
【0014】
本発明の組成物に用いられるNMNとしては、遊離のβ-NMN又はβ-NMNの薬理学的に許容される塩の溶媒和物であってもよい。当該溶媒和物を形成する溶媒としては、水、エタノール等が挙げられる。
【0015】
<アロニアの抽出物>
アロニアは、バラ科アロニア属の植物であり、好ましくはアロニア・アルブティフォリア、アロニア・メラノカルパ、アロニア・プルニフォリアの1種又は2種以上から選択されることが好ましい。ここでいう抽出物には、植物をそのまま圧搾することによって得られる圧搾物、植物の抽出物自体、植物の抽出物由来物が含まれる。植物の抽出物としては、圧搾流出物、水蒸気蒸留物、蒸留物、溶媒抽出物何れも使用可能である。植物の抽出物由来物には、植物抽出物を分画及び精製した分画、精製物の溶媒除去物等が含まれる。
【0016】
溶媒抽出に用いる溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、水、エタノ-ル、イソプロパノ-ルなどのアルコ-ル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが好ましく例示でき、中でもエタノ-ルを含有する水溶液が好ましく例示できる。このときの含有量は、溶媒全量に対して50質量%~95質量%が好ましく、60質量%~90質量%がさらに好ましい。抽出は、植物体又はその乾燥物1質量部に対して、1質量部~10質量部の溶媒を加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬すればよい。必要に応じて不溶物を濾過して取り除いてもよい。濃縮する場合には、減圧留去すればよい。
【0017】
アロニアの抽出物の作製に用いる植物部位には、特段の限定がなされず、全草を用いることができるが、もちろん、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾、果実等の部位のみを使用することも可能である。好ましくは、果実が例示できる。アロニアの抽出物としては、有効成分を効果的に活用することができる観点から、果実部をそのまま圧搾することによって得られる果汁を用いることが特に好ましい。
【0018】
アロニアの抽出物は、上記のように調製して用いることもできるし、既に市販されているものを購入して用いることもできる。
【0019】
<食品組成物、医薬品組成物、化粧品組成物>
本発明の組成物は、好ましくは、食品組成物、医薬品組成物または化粧品組成物である。
【0020】
食品組成物としては、例えば、食品(栄養機能食品、特定保健用食品などを含む)、栄養補助剤、栄養剤、飲料または飼料等が挙げられる。医薬品組成物としては、例えば、動物薬、医薬部外品、医薬品、治療薬または予防薬等が挙げられる。
【0021】
食品としては、例えば、チーズ、調製粉乳、アイスクリーム、ヨーグルト等の乳製品、チョコレート、クッキー、ビスケット、キャンディー、和菓子、米菓、ケーキ、パイ、プリン等の菓子類、パン、麺類等の小麦粉製品、雑炊、米飯等の米製品、しょうゆ、味噌、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料等を挙げることができる。食品は、水産加工品、農産加工品、畜産加工品であってもよい。
【0022】
飲料としては、例えば、茶、コーヒー、牛乳、乳飲料、果汁飲料、ジュース、乳酸飲料、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンク等を挙げることができる。
【0023】
これらの組成物は、その種類に応じて種々の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば甘味料が挙げられる。甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、マルチトールなどが挙げられる。
【0024】
その他の添加剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0025】
栄養補助剤、栄養剤または医薬品組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、チュアブル錠、丸剤、トローチ剤、舌下錠、液剤、アンプル剤、ガム製剤、ドロップス製剤、軟膏、クリーム剤、乳剤、懸濁剤、ゼリー剤、シロップ、液剤などが挙げられる。
【0026】
製剤化にあたっては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。
【0027】
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マグロゴール等が挙げられる。
【0028】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプンまたはセルロース誘導体等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。なお、製剤中には、本発明の有用性を補強したり増強したりするために、他の成分、薬剤等を含有させてもよい。
【0029】
組成物が栄養補助剤または栄養剤などの食品組成物、あるいは医薬品組成物である場合、該組成物中のNMNおよびアロニアの抽出物の合計の含有量は、好ましくは0.1質量%~100質量%、より好ましくは10質量%~90質量%、さらに好ましくは40質量%~80質量%である。
【0030】
化粧品組成物とは、皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、または身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変えるために、身体に塗擦、散布などにより適用される組成物をいう。化粧品組成物は、例えば、基礎化粧品、メイクアップ用化粧品、頭髪用化粧品などが挙げられる。本明細書においては、「化粧品」は、薬用化粧品のような、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律における定義では医薬部外品に分類されるものも含む。
【0031】
(液体組成物)
本発明の組成物の一形態として液体組成物が挙げられる。また、本発明の液体組成物の一形態として、飲料が挙げられる。NMNは、水分の多い環境下で分解されやすいことが知られている。本発明によると水分が多い飲料中においても、アロニアの抽出物とともに用いることによりNMNの分解を抑制することができる。
【0032】
飲料には、NMNおよびアロニアの抽出物の他に、通常飲料に配合される種々の成分、例えば、甘味料、酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンE等のビタミン類、酸化防止剤、安息香酸ナトリウム等の保存剤、増粘剤、乳化剤、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄、マンガン、銅等のミネラル類、グルタミン酸ナトリウム、リジン塩酸塩、カルニチンシトルリン、アルギニン、オルニチン等のアミノ酸やその塩、ハーブ系等の香料、アップル、グレープ、グレープフルーツ、パイナップル、ピーチ、レモン、梅、オレンジ等の果汁およびそれらの濃縮果汁、ローヤルゼリー、ガラナエキス、カフェイン、ニンニクエキス、マカエキス、生薬、海藻エキス等を本発明の効果を損なわない限度で任意に添加することができる。
【0033】
甘味料としては、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、またはD-ソルビトール等の低甘味度甘味料が挙げられる。酸味料としては、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸またはそれらの塩類等が挙げられる。
【0034】
飲料は、例えば、NMNおよびアロニアの抽出物、および必要に応じて添加されるその他の成分を、定法に従って水に均一に混合することで得ることができる。各成分の添加順序は限定されることはなく、例えば、アロニアの抽出物を含む飲料に他の成分を添加して得ることができる。調整した後の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰め飲料としてもよい。容器詰め飲料中の飲料の総量は限定されないが、例えば、5mL以上500mL以下であり、好ましくは10mL以上100mL以下である。各成分の調合タイミングは、殺菌処理前に限られず、特定の成分、例えば、分解しやすいNMNや揮発性が相対的に高い香気成分を殺菌処理後に調合してもよい。
【0035】
飲料の保管温度は、特に限定されないが、例えば1℃以上40℃以下とすることができ、好ましくは2℃以上10℃以下である。飲料は凍結して保管してもよい。本発明の飲料は、保管温度が25℃以上の室温であっても、NMNの分解を抑制することができるとの効果を奏する。
【0036】
容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料または積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。取扱性、流通性、安定性等の観点から、容器は紙パックまたは瓶であることが好ましい。
【0037】
飲料中に含まれる、NMNの含有量は、総量で、飲料全量に対して好ましくは0.001mg/mL以上であり、より好ましくは0.01mg/mL以上である。NMNの含有量は、例えば、1.0mg/mL以下であってもよく、0.1mg/mL以下であってもよい。本発明によると、飲料中でのNMNの分解を抑制することができるので、保管時や輸送時に飲料中のNMNの分解を抑制することができ、投与対象に効率よくNMNを投与することができる。
【0038】
飲料中に含まれる、アロニアの抽出物の含有量は、総量は、飲料中に含まれるNMN等の固体添加物を除いた飲料全量に対して好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。上限値は例えば100質量%以下であり、または99質量%以下である。
【0039】
飲料は、1食当たりに摂取されるものであってもよく、1回で摂取されるものであってもよく、複数回で摂取されるものであってもよい。
【0040】
(飼料)
飼料としては、例えばペットフード、家畜飼料および養魚飼料等が挙げられる。飼料組成物は、一般的な飼料またはその原料、例えば穀類、粕類、糠類、魚粉、骨粉、油脂類、脱脂粉乳、ホエー、鉱物質飼料、および酵母類等に、乳酸化合物および果糖を混合することにより製造することができる。製造された飼料は、一般的な哺乳動物、家畜類、養魚類、および愛玩動物等に経口的に投与することが可能である。
【0041】
(投与対象)
本発明の組成物は、ヒトやヒト以外の動物に投与されることができる。ヒト以外の動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物が挙げられる。本発明の経口組成物は、ヒト、家畜、実験動物、ペットに投与・摂取されるものであることが好ましく、ヒトに投与・摂取されるものであることがさらに好ましい。
【0042】
<用途>
本発明の組成物はサーチュイン活性化の用途として用いることができる。本明細書において、「サーチュイン」という場合、サーチュインタンパク質およびそのホモログを意味する。
【0043】
本明細書において、「サーチュイン活性化」とは、例えば、サーチュイン発現を増強することが挙げられる。「サーチュイン発現」とは、サーチュイン遺伝子の転写産物レベルでの発現とサーチュインタンパク質レベルでの発現の両者を意味する。
【0044】
本明細書において、「サーチュイン遺伝子」とは、サーチュインをコードする遺伝子を意味する。
【0045】
本明細書において、「サーチュイン発現増強」とは、サーチュイン遺伝子の転写産物および/またはサーチュインタンパク質が増加することであって、例えば、遺伝子の転写および/または翻訳の活性化、転写産物および/またはタンパク質の安定性の向上、転写産物および/またはタンパク質分解の阻害、等が包含される。
【0046】
サーチュイン活性化の程度は、例えばコントロールに比べて、サーチュイン遺伝子の転写および/または翻訳の活性化(例えば、サーチュイン酵素の活性化)が、例えば統計学的有意差(例えばスチューデントのt検定)をもって増加することや、一定割合(例えば数十%、数百%)以上増加すること等をもって判断することができる。
【0047】
本発明の組成物によると、NMNとアロニアの抽出物とを含むことにより、どちらか一方のみを含む組成物のサーチュイン活性化の程度と比較して、またはどちらか一方のみを含む組成物のサーチュイン活性化の程度を相加することにより予測される両者を含むことによるサーチュイン活性化の程度と比較して、優れたサーチュイン活性化の効果を有する。
【0048】
サーチュインの由来の動物は特に特定されず、ヒト以外の動物であってもよいが好ましくはヒトである。ヒトの場合、サーチュイン1~7(SIRT1~7)が知られている。本発明において、サーチュインは好適にはサーチュイン1(SIRT1)である。
【0049】
サーチュインは、カロリー制限による細胞老化の抑制、寿命の延長などに関与することが知られており、サーチュインの中でも最も研究の進んでいるSIRT1は、細胞老化抑制、ストレス耐性、代謝調節、抗炎症、がんや細胞分化、細胞移動、うつ病、神経変性疾患、糖尿病など、多岐にわたる生命現象に関与していることが知られている。例えば、血管内皮細胞において、SIRT1を阻害すると細胞老化が誘導され、過剰発現すると酸化ストレスによる細胞老化誘導を回避できることが知られている(SIRT1 modulates premature senescence-like phenotype in human endothelial cells., J. Mol. Cell Cardiol., 43, 571-579 (2007))。
【0050】
本発明の組成物は、サーチュイン活性化作用を有し、中でもSIRT1活性化作用を有することから、サーチュイン活性化用に用いることができ、SIRT1活性化用に好適に用いることができる。また、本発明の組成物は、サーチュイン活性化作用を有し、中でもSIRT1活性作用を有することから、老化抑制用に用いることができる。老化抑制作用としては、細胞死の予防、細胞老化の抑制、細胞寿命延長、がん細胞発生の予防、等に利用することができる。
【0051】
本発明の組成物は、上記用途と併用される用途して、または上記用途と異なる用途として、例えば、肥満改善用、糖尿病予防用、体重増加抑制用、インスリン感受性改善用、脂質代謝改善用、視覚能力改善用、骨密度上昇用、及び免疫機能上昇用からなる群より選択される少なくとも一つの用途でも用いることができる(非特許文献1、2等を参照)。
【0052】
本発明の組成物は、その用途、効能、効果、機能、有効成分の種類、機能性成分の種類、摂取方法などに関する記載を表示したものであってもよい。「表示」とは、医薬組成物、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示商品等)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食又は介護食等)等のそれぞれに適した表示を意味する。また、「表示」には、消費者に対して本発明の組成物の用途、効能、効果、機能等を知らせるための全ての表示が含まれる。この表示は、上記した本発明の組成物の作用を想起・類推させ得るような表示であればよく、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体などに関わらず全ての表示を含み得る。例えば、製品の包装・容器での表示、製品に関する広告・価格表もしくは取引書類への表示およびこれらを展示もしくは頒布すること、またはこれらを電磁気的(インターネットなど)方法により提供すること等が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物は、経口組成物である場合、投与・摂取量は、投与される動物の生物種、年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択・決定される。例えば、成人1人あたりの1日量が、β-NMN量として、0.1mg~50g、好ましくは0.5mg~35g、より好ましくは10mg~25g、さらに好ましくは100mg~10gとなるように、1回又は数回に分けて投与することができる。
【0054】
β-NMNは、生体構成成分であり、かつ食品中にも含まれている成分であることから、安全性が高く、長期間の継続的摂取に適している。
【実施例
【0055】
以下、試験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(液体試料1)
アロニアの抽出物からなる果汁飲料(ホクサン社製、アロニア果汁100%)5μLにβ-NMN0.5μgを溶解させたものを液体試料1として準備した。
【0057】
(液体試料2)
水5μLにβ-NMN0.5μgを溶解させたものを液体試料2として準備した。
【0058】
(液体試料3)
アロニアの抽出物からなる果汁飲料(ホクサン社製、アロニア果汁100%)5μLを液体試料3として準備した。
【0059】
[試験1]
試験1は、SIRT1活性作用の評価を、以下に示すように、ヒト神経芽細胞におけるSIRT1 mRNAを測定することにより行った。試料として、上記液体試料1~3を用いた。
【0060】
ヒト神経芽細胞(SH-SY5Y)を1ウェル当り4.0×10個となるように、10cm dishに播種した。播種培地には10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル/ハムF-12(DMEM/Ham’s F-12)培地を用いた。24時間後、液体試料1~3を添加し及び液体試料を添加しないコントロールも準備し、温度37℃、5%CO中でインキュベート後、培地を捨て、PBSで洗浄し、LysisBufferを加え、セルスクレーパーで細胞をファルコンチューブに回収した。ボルテックスで攪拌し、氷上で保持後、スクロース溶液を加えて遠心分離した。上清を捨て、10mMTris-HCl(pH7.5)、10mMNaClを加えてサスペンド後、マイクロチューブに移し替え、遠心分離した。上清を捨て、抽出溶液中で超音波処理後、氷上で保持した。遠心分離し、上清についてタンパク質定量を行った。
【0061】
SIRT1の酵素活性測定は、SIRT1/Sir2 Deacetylase Fluorometric Assay Kit Ver.2(MBL社)を用いて行った。任意の濃度に調整した上清に0.02U/mL SIRT1酵素、25μM NAD、25μM蛍光標識された基質を添加し、37℃にて60分間インキュベートした後、励起波長355nm、発光波長460nmにて蛍光を測定した。図1は、測定開始から所定時間毎に測定した蛍光強度の結果を示す。図2は、図1に示す測定開始から60分経過後の蛍光強度に基づいて、試料無添加のコントロールにおけるSIRT1酵素活性を100とした相対値にて示す。図2において、t検定における有意確率P値に対し、有意確率5%未満(P<0.05)を*で示す。図3は、図2に示す結果について、液体試料2と液体試料3の結果を足し合わせた計算値と、液体試料1の測定値とを示す。
【0062】
図3に示す結果から、液体試料1は、液体試料2,3でのSIRT1活性化作用を相加したことにより得られる効果よりも顕著なSIRT1活性化作用を示すことがわかった。
【要約】
ニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、優れた生理機能活性を有する新たな組成物を提供する。本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドおよびアロニアの抽出物を含む、液体組成物に関する。
図1
図2
図3