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特許7168288シリコン切粉を電子級ポリシリコンまたは冶金級シリコンにリサイクルする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】シリコン切粉を電子級ポリシリコンまたは冶金級シリコンにリサイクルする方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/037 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
C01B33/037
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019557490
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018012831
(87)【国際公開番号】W WO2018194729
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】62/487,447
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/487,452
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505379467
【氏名又は名称】サンパワー コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】519371884
【氏名又は名称】トータル ソーラー インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ムーン
(72)【発明者】
【氏名】サクス、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルストラエテン、デイヴィッド
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-293528(JP,A)
【文献】特開昭55-023083(JP,A)
【文献】特開2014-094866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットを切断して、前記シリコンインゴットをウェハ部分と、1ミクロン未満の平均粒径を有する複数のシリコン粒子を含むシリコン切粉とに分けることと、
前記シリコン切粉をシリコン凝集体に圧縮することと、
前記シリコン凝集体を加熱及び脱水して複数の冶金級シリコン粒子を形成することであって、前記複数の冶金級シリコン粒子は、50ミクロンから10mmの範囲の粒径を有する、加熱及び脱水することと、
前記複数の冶金級シリコン粒子を粉砕して、前記複数の冶金級シリコン粒子の粒径を1000ミクロン未満に低減させることと、
を備え、
前記シリコン切粉を圧縮することが、前記シリコン切粉を遠心分離することを含み、
前記シリコン凝集体を加熱することは、前記シリコン凝集体を含む遠心管を、炉内に配置することを含む、
方法。
【請求項2】
前記シリコンインゴットを切断することが、ダイヤモンドワイヤー切断プロセスを使用して前記シリコンインゴットをソーイングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン切粉が前記複数のシリコン粒子と液体廃棄物との混合物であり、前記シリコン切粉を遠心分離することが、前記液体廃棄物を前記複数のシリコン粒子から分離し、前記複数のシリコン粒子を前記シリコン凝集体に圧縮する、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン凝集体の水分含有量が、前記複数の冶金級シリコン粒子の水分含有量の少なくとも2倍である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱及び脱水において形成された前記複数の冶金級シリコン粒子の前記粒径が、70~100ミクロンの範囲である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱及び脱水において形成された前記複数の冶金級シリコン粒子の前記粒径は、直径が、100ミクロンよりも大きいサイズを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粉砕された複数の冶金級シリコン粒子の前記粒径が500ミクロンよりも大きい、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粉砕された複数の冶金級シリコン粒子の前記粒径のサイズが、10ミクロン未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉砕された複数の冶金級シリコン粒子の第1のサブセットを、前記粉砕された複数の冶金級シリコン粒子の第2のサブセットから分離することをさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のサブセットは、少なくとも1ミクロンの粒径のサイズを有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記粉砕された複数の冶金級シリコン粒子を電子級ポリシリコン粒子に精製することをさらに備え、前記粉砕された複数の冶金級シリコン粒子が第1の純度を有し、前記電子級ポリシリコン粒子が前記第1の純度よりも高い第2の純度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「METHOD OF RECYCLING SILICON SWARF INTO ELECTRONIC GRADE POLYSILICON」と題された、2017年4月19日出願の米国仮特許出願第62/487,447号の利益を主張し、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、「METHOD OF RECYCLING SILICON SWARF INTO METALLURGICAL GRADE SILICON」と題された、2017年4月19日出願の米国仮特許出願第62/487,452号の利益も主張し、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、再生可能エネルギーの分野に関し、詳細にはシリコン副産物をリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽光発電業界では、シリコンウェハを使用して、光起電力電池およびモジュールを構築している。光起電力電池は、太陽電池として一般に知られており、太陽放射を電気エネルギーに直接変換するためのよく知られた装置である。一般に、太陽電池は、半導体加工技術を使用して半導体ウェハ上または半導体基板上に作製され、基板の表面近くにp-n接合が形成される。太陽放射が基板の表面に衝突して基板内に入ると、基板のバルク内に電子正孔対が生成される。電子正孔対が基板内のp型およびn型のドープ領域まで移動する結果、ドープ領域間に電圧差が発生する。ドープ領域は、太陽電池の導電性領域に接続され、太陽電池からそれと結合された外部回路へと電流が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして高純度ポリシリコンを生成する方法のフローチャートである。
【0005】
図2】本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして高純度ポリシリコンを生成する方法におけるインゴット切断プロセスを表すフローチャートである。
【0006】
図3】本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして高純度ポリシリコンを生成する方法における高純度冶金シリコンプロセスを表すフローチャートである。
【0007】
図4】本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして冶金級シリコン粒子を生成する方法のフローチャートである。
【0008】
図5】本開示の一実施形態による、シリコン切粉を分離するための遠心分離装置の図である。
【0009】
図6】本開示の一実施形態による、シリコン切粉から分離されたシリコン粒子の純度レベルを示すチャートである。
【0010】
図7】本開示の一実施形態による、遠心管内のシリコン凝集体の絵図である。
【0011】
図8】本開示の一実施形態による、冶金級シリコン粒子の絵図である。
【0012】
図9】本開示の一実施形態による、シリコン切粉および冶金級シリコン粒子の粒径分布のグラフを示している。
【0013】
図10】本開示の一実施形態による、冶金級シリコン粒子を使用するシリコン精製プロセスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の「発明を実施するための形態」は、本質的に単に例示的であり、本主題の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することは意図されていない。本明細書で使用するとき、「例示的(exemplary)」という語は、「一例、実例、または例示としての役割を果たすこと」を意味する。本明細書で例示的として説明される実装形態はいずれも、必ずしも他の実装形態よりも好ましいかまたは有利なものとして解釈されるべきではない。さらに、前項の「技術分野」、「背景技術」、「発明の概要」、または以下の「発明を実施するための形態」で提示される、明示または暗示されるいずれの理論によっても、制約されることを意図するものではない。
【0015】
本明細書は、「1つの実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」への言及を含む。「1つの実施形態では(in one embodiment)」または「一実施形態では(in an embodiment)」という語句の出現は、必ずしも、同じ実施形態を指すものではない。特定の特徴、構造、または特性を、本開示と矛盾しない任意の好適な方式で組み合わせることができる。
【0016】
[用語]
以下のパラグラフは、本開示(添付の「特許請求の範囲」を含む)で使用されている用語に関する、定義および/またはコンテキストを提供する。
【0017】
「備える(Comprising)」。この用語は、オープンエンド型である。添付の「特許請求の範囲」で使用されるとき、この用語は、付加的な構造または段階を排除するものではない。
【0018】
「~ように構成された(Configured To)」。様々なユニットまたは構成要素が、1つ以上のタスクを実行する「ように構成された」として記述または請求されることがある。そのようなコンテキストでは、「~ように構成された」は、それらのユニット/構成要素が、動作する際にそれらのタスクを実行する構造を含むことを示すことによって、その構造を含意するために使用される。それゆえ、ユニット/構成要素は、指定のユニット/構成要素が現時点で動作可能ではない(例えば、オン/アクティブではない)場合であっても、そのタスクを実行するように構成されていると言うことができる。ユニット/回路/構成要素が、1つ以上のタスクを実行する「ように構成された」と記載することは、そのユニット/構成要素に関して、米国特許法第112条第6項が適用されないことを、明示的に意図するものである。
【0019】
「第1の」、「第2の」など。本明細書で使用するとき、これらの用語は、それらが前に置かれる名詞に関する標識として使用されるものであり、いずれのタイプの(例えば、空間的、時間的、論理的などの)順序付けも暗示するものではない。例えば、「第1の」太陽電池への言及は、必ずしもこの太陽電池が順序として最初の太陽電池を意味するものではなく、「第1の」という用語は、この太陽電池を他の太陽電池(例えば「第2の」太陽電池)と区別するために使われている。
【0020】
「結合された」-以下の説明では、要素またはノードまたは機能が共に「結合されている」ことを意味する。本明細書で使用するとき、明示的に別段の定めがある場合を除き、「結合された」とは、1つの要素/ノード/機能が、他の要素/ノード/機能に、直接的または間接的に連結される(または、他の要素/ノード/機能と直接的若しくは間接的に連通する)ことを意味するものであり、必ずしも機械的に連結されるわけではない。
【0021】
さらに、特定の用語法はまた、以下の説明において参照目的のためにのみ使用される場合があり、それゆえ、限定的であることは意図されていない。例えば、「上部」、「下部」、「上方」、および「下方」などの用語は、参照された図面内での方向を指す。「前部」、「後方」、「後部」、「側部」、「外側」、および「内側」などの用語は、説明されている構成要素について記述する本文および関連図面を参照することによって明らかになる、一貫性はあるが任意の基準系内における、構成要素の諸部分の向きおよび/または位置を記述するものである。そのような用語法は、具体的に上述された語、それらの派生語、および類似の意味の語を含み得る。
【0022】
「抑制する」-本明細書で使用するとき、抑制する、とは、効果を低減または最小限に抑えることを説明するために使用される。構成要素または機能が、作用、動作、若しくは状態を抑制するものとして説明される場合、それは、完全に、その結果若しくは成果または将来の状態を完全に阻止し得るものである。さらに、「抑制する」はまた、抑制しなければ生じるかもしれない成果、パフォーマンス、および/または効果を低減または減少させることを意味し得る。したがって、構成要素、要素、または機能が、結果または状態を抑制するとして言及される場合、これらの構成要素、要素、または機能は、その結果若しくは状態を完全に阻止または排除する必要はない。
【0023】
効率は、太陽電池の発電能力に直接関連するため、太陽電池の重要な特性である。同様に、太陽電池を生産する上での効率は、そのような太陽電池の費用対効果に直接関連する。したがって、太陽電池の効率を向上させるための技術、または、太陽電池の製造効率を向上させるための技術が、一般的に望ましい。本開示のいくつかの実施形態は、太陽電池構造体を製造するための新規なプロセスを提供することによって、太陽電池の製造効率の向上を可能にする。本開示のいくつかの実施形態は、新規の太陽電池構造体を提供することによって、太陽電池の効率の向上を可能にする。
【0024】
本明細書では、シリコン切粉を電子級ポリシリコンまたは冶金級シリコンにリサイクルする方法が説明される。以下の説明では、本開示の実施形態の十分な理解を提供するために、多数の具体的詳細が記載される。これらの具体的詳細なしに、本開示の実施形態は実施できることが、当業者には明らかとなるであろう。他の場合には、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないために、インゴットから切断された個々のウェハから太陽電池を形成するアプローチなどの、よく知られた製造技術は詳細に説明されない。さらに、図に示される様々な実施形態は、例示的な表現であって、必ずしも原寸に比例して描写されるものではないことを理解されたい。
【0025】
本明細書では、シリコン副産物をリサイクルする方法が開示される。1つの実施形態では、方法が、シリコンインゴットを切断することと、切断プロセスから第1の純度を有するシリコン切粉を回収することとを含む。回収されたシリコンは、高純度冶金シリコンプロセスで精製され、第1の純度よりも高い第2の純度を有する電子級ポリシリコン粒子が生成される。高純度冶金シリコンプロセスは、回収シリコン粒子を精錬された溶融アルミニウム金属に溶解することを含むことができる。
【0026】
他の実施形態では、方法が、シリコンインゴットを切断することと、切断プロセスからシリコン切粉を回収することとを含む。回収されたシリコン切粉は、シリコン凝集体に圧縮することができ、シリコン凝集体は、脱水されて冶金級シリコン粒子を形成することができる。冶金級シリコン粒子は、取り扱いに適した所定の粒径にすることができる。冶金級シリコン粒子は、精製プロセスに導入されて電子級ポリシリコン粒子を生成することができる。
【0027】
シリコンウェハは、シリコンインゴットから切断されることができる。インゴットをウェハにスライスすることは、通常、例えばダイヤモンドワイヤーソーイングプロセスを使用して、シリコンインゴットをソーイングする必要がある。
【0028】
第1の態様では、ソーイングプロセスは、シリコン切粉としても知られるシリコン粒子などの副産物を生成することができる。シリコン切粉は、副産物が将来の使用のために回収されない限り、価値の損失を表す。光起電力(PV)電池およびモジュールで使用するためにシリコン切粉を回収してリサイクルする試みは、シリコン切粉を従来のシーメンス法または流動床反応器(FBR)プロセスに再導入することを含む。しかしながら、これらのプロセスは、エネルギー集約的であり、高効率の太陽電池用途に必要なレベルの純度を有するリサイクルインゴットを確実に生成することが示されていない。より具体的には、従来のリサイクルプロセスを使用してシリコン切粉から電子級シリコンを生成する経済的な実行可能性は実証されていない。
【0029】
本開示の一実施形態によれば、シリコン切粉をリサイクルして高純度の電子級ポリシリコン粒子を生成する方法が提供される。インゴット切断プロセスによって生成されたシリコン切粉が、高純度冶金シリコンプロセスによって精製され、汚染物質が除去されてシリコン切粉の純度を高めることができる。高純度冶金シリコンプロセスは、回収シリコン粒子を精錬された溶融アルミニウム金属に溶解することを含むことができる。このプロセスは、従来のシーメンス法またはFBRプロセスと比較して、あまりエネルギー集約的でなく、より具体的には化石燃料系のエネルギー投入の必要性を低減することができる。したがって、以下で説明するプロセスによってリサイクルされるシリコン切粉は、費用対効果が高く環境的に持続可能な方法でシリコン副産物をPVのバリューストリームに戻すことができる。
【0030】
図1を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして高純度ポリシリコンを生成する方法のフローチャート100が示されている。材料の単結晶インゴット(通常はブールと呼ばれる)が、チョクラルスキー法またはブリッジマン法などの方法を使用して(例えば、結晶成長によって)成長する。ブールは、例えば、太陽光発電業界または電子業界などの他の業界で使用するためのシリコンウェハを生成するのに使用することができる。多結晶シリコンインゴットも、様々な用途のウェハを形成するのに使用することができる。インゴットは、通常、金型内で溶融液(大抵の場合に溶融物と呼ばれる)を凝固させることにより製造される。金型でのインゴットの製造は、凝固溶融物によって形成された構造が材料の物理的特性を制御するため、完全に凝固して、後の処理に必要な適切な結晶粒構造を形成するように設計される。さらに、金型の形状およびサイズは、インゴットの取り扱いと後工程の処理を容易にすることができるように設計される。通常、溶融物またはインゴットのいずれかを無駄にすると最終製品の製造コストが増加するため、金型は、溶融廃棄物を最小限に抑え、インゴットの排出を支援するように設計される。結晶性物質の物理的構造は、溶融金属を冷却して沈殿させる方法によってほとんど決まる。
【0031】
結晶シリコンインゴットは、所定のドーピング特性および抵抗率特性を有することができる。例えば、シリコンインゴットは、1~10Ω・cmの範囲のバルクシリコン抵抗率を有することができる。抵抗率は、シリコンインゴットに含まれるドーパントに対応することができる。例えば、シリコンインゴットは、ホウ素、インジウム、アルミニウム、またはガリウムなどのp型ドーパントを含むことができる。あるいは、シリコンインゴットは、リン、ヒ素、またはスズなどのn型ドーパントを含むことができる。ドーパント物質を除くシリコンインゴットの純度は、10Nよりも高く、例えば11Nとすることができる。この純度は、高純度冶金級シリコン(UMG-Si)プロセスまたは他のシリコン精製プロセスおよび/またはインゴット形成プロセスによって達成されることができる。
【0032】
工程102において、シリコンインゴットを切断して、インゴットをウェハ部分、および未切断部分、およびシリコン切粉に分ける。インゴットをウェハにスライスする、例えば単結晶シリコンウェハにスライスするために、様々なアプローチが使用されてきた。一般的なアプローチは、インゴットのビーム処理を含む。ビームレスインゴットスライスのアプローチも使用される。インゴット切断プロセスの一例が、限定ではなく例として以下に説明される。
【0033】
図2を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして高純度ポリシリコンを生成する方法におけるインゴット切断プロセスを表すフローチャート200が示されている。工程202において、インゴットの一部が保持される。例えば、接着剤を使用してインゴットが樹脂ビーム材料に保持されることができる。あるいは、インゴットは、グリッパーによって把持されてもよい。工程204において、インゴットを部分的に切断して、インゴットの未切断部分から突出する複数のウェハ部分を形成する。例えば、ワイヤーソーの、ダイヤモンドを埋め込んだニッケルメッキのワイヤーが使用され、インゴットをウェハ形状に切断する。一実施形態では、切断の程度は、インゴットから切断された対称的なウェハを最終的に提供するのに適している。工程206において、インゴットはまた、工程204の切断方向と直交する方向にインゴットをさらに切断することも含む。例えば、工程204の切断は、インゴットの長手方向軸に対して直角とすることができ、工程206の切断は、長手方向軸に対して平行とすることができる。そのような直交方向の切断は、未切断部分からウェハ部分を分離するために使用され、複数の個別のウェハが提供される。
【0034】
一実施形態では、インゴットを部分的に切断すること(工程204)および更に切断すること(工程206)が両方とも、限定されるものではないが、ダイヤモンドワイヤー(DW)切断プロセスおよびスラリー系のワイヤースライシングプロセスなどの同じワイヤー切断技術を使用することを含む。DW切断プロセスは、事前に選択された様々なサイズおよび形状の微細なダイヤモンド粒子を含浸させた、様々な直径および長さのワイヤーを使用して材料を切断するプロセスである。スラリースライシング用のスラリー系のワイヤーソーは、通常、裸線を使用し、切削液(例えば、ポリエチレングリコール、PEG)に切削材料(例えば、炭化ケイ素、SiC)を含む。それに対して、DW切断は、通常、粗い研磨剤を使用するのではなく、むしろ冷却液(水性またはグリコール系のいずれか)のみを使用して、切断部の潤滑、冷却、および破片の除去を行う。
【0035】
ワイヤーソーは、切断に金属ワイヤーまたはケーブルを使用する機械を指すことができる。通常、ワイヤーソーの動きには、連続式(またはエンドレス式またはループ式)と揺動式(または往復運動式)の2種類がある。ワイヤーは、1本のストランドを有するかまたは一体に編まれた複数のストランドを有することができる。ワイヤーソーは、研磨剤を使用して切断する。上述したように、用途に応じて、ダイヤモンド材料が研磨剤として使用されても使用されなくてもよい。単一ストランドソーを研磨用に粗くすることができるか、研磨剤をケーブルに接着することができるか、またはダイヤモンド含浸ビーズ(およびスペーサー)をケーブルに装着することができる。
【0036】
したがって、例示的な実施形態では、単結晶シリコンインゴットの場合、最初は円形のインゴットが切断プロセスを経て、シリコンインゴットが1つ以上のウェハ部分に分けられる。ソーイング技術、例えばDW切断プロセスの副産物として、シリコンの微粒子がソーワイヤーまたはブレードによって切断経路から排出されることができる。これらの粒子は、おがくずに類似している。シリコン材料は、切断プロセスからの1種以上の追加の副産物と混合して、シリコン切粉と呼ばれる混合物になり得る。例えば、シリコン切粉は、シリコン粒子と、金属片や冷却剤添加物などの1種以上の汚染物質を含む可能性がある。切断プロセス中に汚染物質がシリコン粒子と混合する可能性がある。例えば、冷却剤添加物は、ソーイングプロセス中に使用される切削液に由来し得る。冷却添加物および/または冷却液は、再利用またはリサイクルのために回収され得ることを理解されたい。
【0037】
再度図1を参照すると、工程104において、シリコン切粉をフィルタにかけて、シリコン汚染物質混合物からシリコン粒子を回収する。一実施形態では、シリコン切粉をフィルタにかけて、フィルタにかけた後に回収シリコン粒子と呼ぶことができるシリコン粒子から1種以上の汚染物質を分離する。汚染物質は、低コストの濾過プロセスを使用して効果的に除去することができる。例えば、シリコン切粉は、シリコン粒子または汚染物質のうちの一方を通し、シリコン粒子または汚染物質のうちの他方をとどめる多孔質の布または膜でフィルタにかけることができる。回収シリコン粒子は、第1の純度を有することができる。例えば、フィルタにかけた後、回収シリコン粒子は、4N未満、例えば1~3Nの純度を有することができる。より具体的には、第1の純度は、98~99.9%Siの範囲とすることができる。回収シリコン粒子の第1の純度は、シリコンインゴットの純度よりも低くなることができることが認識される。したがって、回収シリコン粒子は、インゴット形成プロセスで使用される前に、さらなる精製を必要とする可能性がある。
【0038】
工程106において、回収シリコン粒子は精製され、電子級ポリシリコン粒子が生成される。回収シリコン粒子は、高純度冶金級シリコンプロセスの冶金級シリコン原料として導入されることができる。高純度冶金シリコンプロセスの一例が以下に説明される。
【0039】
図3を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして高純度ポリシリコンを生成する方法における高純度冶金シリコンプロセスを表すフローチャート300が示されている。回収シリコン粒子は、高純度冶金シリコンプロセス用の、既知の電気抵抗率を有する出発材料を提供する。例えば、回収されたシリコン出発材料の抵抗率は、シリコンインゴットの抵抗率と同じとすることができる。同様に、回収されたシリコン出発材料は、同じドーピング、例えば、p型またはn型ドーパントを有してよく、したがって、事前にドープされているとみなされてよい。
【0040】
工程302において、回収シリコン粒子は、精錬された溶融アルミニウム金属に溶解される。回収シリコン粒子は、1,000℃未満の温度で溶解することができる。したがって、回収シリコン粒子とアルミニウム材料との溶融溶液が形成されることができる。
【0041】
工程304において、精錬された溶融アルミニウム金属を凝固させて、溶液をマスター合金(アルミニウム-シリコン合金)とソーラーシリコンフレークとに分離することができる。ソーラーシリコンフレークは、外表面を有することができ、アルミニウム材料は、外表面に存在することができる。しかしながら、ソーラーシリコンフレークを形成するシリコン材料は、回収シリコン粒子の第1の純度よりも高い純度を有することができる。例えば、ドーパントおよびアルミニウムコーティング材料を除くソーラーシリコンフレークの純度は、3Nよりも高くすることができる。
【0042】
工程306において、ソーラーシリコンフレークを酸で洗浄する。例えば、塩酸をソーラーシリコンフレークにかけて、フレークの外表面のアルミニウム材料を除去することができる。ソーラーシリコンフレークを洗浄した後、フレークは、電子級ポリシリコン粒子と呼ばれることができる。より具体的には、電子級ポリシリコン粒子は、任意のドーパント物質を除いて、回収シリコン粒子の第1の純度よりも高い第2の純度を有することができる。第2の純度は、10Nよりも高く、例えば11Nとすることができる。より具体的には、電子級ポリシリコン粒子のシリコン純度は、99.99999999%Siとすることができる。任意のドーパント物質を含む電子級ポリシリコン粒子の純度は、10N未満、例えば7Nとすることができる。
【0043】
電子級ポリシリコン粒子は、シリコンインゴットと同じ抵抗率を有することができる。例えば、電子級ポリシリコン粒子は、1~10Ω・cmの範囲の抵抗率を有することができる。同様に、電子級ポリシリコン粒子は、シリコンインゴットに含まれる同じドーパントによって事前にドープされることができる。例として、電子級ポリシリコン粒子は、ホウ素、インジウム、アルミニウム、またはガリウムなどのp型ドーパントを含むことができる。あるいは、電子級ポリシリコン粒子は、リン、ヒ素、またはスズなどのn型ドーパントを含むことができる。
【0044】
工程308において、電子級ポリシリコン粒子は、再生シリコンインゴットに変えることができる。例えば、電子級ポリシリコン粒子は、溶融されて金型で鋳造され、シリコン切粉の生成に使用されるシリコンインゴットと同一のサイズ、形状、および材料を有する再生シリコンインゴットが形成されることができる。したがって、再生シリコンインゴットは、例えばDW切断によりさらに加工され、より多くのウェハ部分を生成することができる。
【0045】
上述した回収シリコン粒子または電子級ポリシリコン粒子は、様々な段階で太陽電池生産ラインに導入することができることが認識される。例えば、材料の特性、例えば材料の種類、純度などに応じて、粒子は、ソーラーシリコン生産ラインのスラグ処理段階、浸出段階、または凝固段階で原料として使用されることができる。したがって、上記の説明は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見られるべきである。
【0046】
一実施形態では、太陽電池は、再生シリコンインゴットから形成されたウェハ部分のうちの1つから製造される。例えば、PV電池は、再生シリコンインゴットにビームレススライシング法を適用することによって製造された単結晶シリコンウェハを使用して形成されることができる。PV電池は、太陽電池として一般に知られており、太陽放射を電気エネルギーに直接変換するためのよく知られた装置である。一般に、太陽電池は、半導体加工技術を使用して半導体ウェハ上または半導体基板上に作製され、基板の表面近くにp-n接合が形成される。太陽放射が基板の表面に衝突して基板内に入ると、基板のバルク内に電子正孔対が生成される。電子正孔対が基板内のp型ドープ領域およびn型ドープ領域まで移動する結果、ドープ領域間に電圧差が発生する。ドープ領域は、太陽電池の導電性領域に接続され、太陽電池からそれと結合された外部回路へと電流が流れる。しかしながら、上記のシリコンリサイクルプロセスは、太陽電池製造用のウェハの生成に限定されないことを理解されたい。
【0047】
他の態様では、ソーイングプロセスは、シリコン切粉としても知られるシリコン粒子および汚染物質のスラリーなどの副産物を生成し得る。光起電力(PV)電池およびモジュールに使用するためにシリコン切粉を回収してリサイクルする試みは、シリコン切粉をポリシリコン製造プロセス、例えば従来のシーメンス法に再導入することを含む。しかしながら、シリコン切粉からシリコン粒子を回収する試みは以前には、1ミクロン未満の平均粒径を有する微細なシリコン粉末を回収することしか成功していなかった。微細なシリコン粉末は、取り扱いが難しく、ポリシリコン製造プロセスの原料としてはすぐに役に立たない。より具体的には、微細なシリコン粉末は、輸送の目的には準最適であり、シーメンス法ベースのポリシリコン製造用の冶金級シリコン(MG-Si)のような直接の原料としても準最適である。
【0048】
説明は、主にPV電池およびモジュールに使用するためのシリコン切粉のリサイクルに関するものであるが、シリコン切粉のリサイクルは、はるかに広い用途を有することが理解される。例えば、リサイクルされるシリコン切粉および/またはシリコン切粉をリサイクルする際の副産物は、シリコンおよびアルミニウム合金の用途に使用されることができる。以下に説明する方法、より具体的にはシリコン切粉のリサイクル製品から利益を得ることができる業界は、自動車、航空宇宙、および建築材料のセクターを含む。
【0049】
本開示の一実施形態によれば、シリコン切粉をリサイクルしてMG-Si粒子を生成する方法が提供される。インゴット切断プロセスによって生成されたシリコン切粉は、シリコン凝集体に圧縮されることができ、シリコン凝集体は、脱水されてMG-Si粒子を形成することができる。MG-Si粒子は、シリコン切粉中のシリコン粒子の粒径よりも少なくとも一桁大きい粒径を有することができる。例えば、リサイクルプロセスから生じるMG-Si粒子の大部分は、50ミクロンよりも大きく、例えば50ミクロンから10mmの範囲の粒径を有することができる。MG-Si粒子は、さらに加工され、例えば粉砕され、サイズに基づいて選択されることができる。選択されたMG-Si粒子は、ポリシリコン製造プロセスに導入され、さらなるシリコンウェハの製造のためにリサイクルシリコンインゴットを生成することができる。選択されないMG-Si粒子は、リサイクルプロセスに再導入されて回収されることができる。
【0050】
図4を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉をリサイクルして冶金級シリコン粒子を生成する方法のフローチャート400が示されている。材料の単結晶インゴット(通常はブールと呼ばれる)は、チョクラルスキー法またはブリッジマン法などの方法を使用して(例えば、結晶成長によって)成長する。ブールは、例えば、太陽光発電業界または電子業界などの他の業界で使用するためのシリコンウェハを生成するのに使用することができる。多結晶シリコンインゴットも、様々な用途のウェハを形成するのに使用することができる。インゴットは、通常、金型内で溶融液(大抵の場合に溶融物と呼ばれる)を凝固させることにより製造される。金型でのインゴットの製造は、凝固溶融物によって形成された構造が材料の物理的特性を制御するため、完全に凝固して、後の処理に必要な適切な結晶粒構造を形成するように設計される。さらに、金型の形状およびサイズは、インゴットの取り扱いと後工程の処理を容易にすることができるように設計される。通常、溶融物またはインゴットのいずれかを無駄にすると最終製品の製造コストが増加するため、金型は、溶融廃棄物を最小限に抑え、インゴットの排出を支援するように設計される。結晶性物質の物理的構造は、溶融金属を冷却して沈殿させる方法によってほとんど決まる。
【0051】
結晶シリコンインゴットは、所定のドーピング特性および抵抗率特性を有することができる。例えば、シリコンインゴットは、1~10Ω・cmの範囲のバルクシリコン抵抗率を有することができる。抵抗率は、シリコンインゴットに含まれるドーパントに対応することができる。例えば、シリコンインゴットは、ホウ素、インジウム、アルミニウム、またはガリウムなどのp型ドーパントを含むことができる。あるいは、シリコンインゴットは、リン、ヒ素、またはスズなどのn型ドーパントを含むことができる。ドーパント物質を除くシリコンインゴットの純度は、10Nよりも高く、例えば11Nとすることができる。この純度は、高純度冶金級シリコン(UMG-Si)プロセスまたは他のシリコン精製プロセスおよび/またはインゴット形成プロセスによって達成されることができる。
【0052】
工程402において、シリコンインゴットを切断して、インゴットをウェハ部分およびシリコン切粉に分ける。インゴットをウェハにスライスする、例えば単結晶シリコンウェハにスライスするために、様々なアプローチが使用されてきた。一般的なアプローチは、インゴットのビーム処理を含む。ビームレスインゴットスライスのアプローチも使用される。一実施形態では、シリコン切粉をリサイクルして冶金級シリコン粒子を生成する方法におけるインゴット切断プロセスの一例が、図2のフローチャート200に関連して上述したプロセスと同じまたは同様である。
【0053】
一例では、得られたシリコン切粉は、シリコン粒子と1種以上の汚染物質との混合物を含み得る。汚染物質は、例として、金属片または液体廃棄物とすることができる。より具体的には、液体廃棄物は、切断プロセス中にシリコン粒子と混合する切削液からの冷却剤添加物を含んでもよい。切削液は、希釈された水性冷却剤とすることができ、シリコン切粉の0.5~4%の体積を占めることができる。冷却添加物および/または冷却液は、再利用またはリサイクルのために回収されることができることを理解されたい。
【0054】
ポリシリコン製造プロセスに使用するシリコン切粉からシリコン粒子を回収するために、液体廃棄物がシリコン粒子から分離され得る。再度図4を参照すると、工程404において、シリコン切粉は、シリコン凝集体に圧縮される。シリコン切粉の圧縮は、以下に説明するように液体廃棄物をシリコン粒子から分離することができる。例えば、シリコン切粉を圧縮することは、シリコン粒子が遠心管の外側領域に回転して液体廃棄物から分離するように、シリコン切粉を遠心分離することを含むことができる。
【0055】
図5を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉を分離するための遠心分離装置500の図が示されている。シリコン切粉502は、供給懸濁液として遠心分離装置500の遠心管504に導入される。遠心分離装置500は、例えば、遠心管504を含むデカンタ遠心分離を実施するための装置とすることができる。遠心管504は、外側コーティング508によって形成された無孔ボウル506によって囲まれていてもよい。遠心管504は、モータ510によって回転し、より重いシリコン粒子を遠心管504に対して外向きに回転させ、遠心管504の壁にケーキ512を形成することができる。ケーキ512は、シリコン凝集体と呼ばれることができる。シリコン凝集体は、顕微鏡レベルの圧縮を有することができる。しかしながら、凝集体内の粒子は、まだ粉末形態になっていることがある。液体514は、図5の矢印の流れにしたがって除去され、最終的には遠心分離物516として蓄積されることができる。
【0056】
図6を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉から分離されたシリコン粒子の純度レベルを示すチャート600が示されている。一実施形態では、シリコン切粉のシリコン粒子は、非遠心分離技術を使用して液体廃棄物から分離される。例えば、シリコン切粉は、液体廃棄物を除去してシリコン凝集体を得る多孔質の布または膜でフィルタにかけることができる。図6のデータは、分離されたシリコン粒子の純度に関して、異なる分離方法の間に有意な差がないことを示している。具体的には、標準的な遠心分離、超遠心分離、布濾過、または膜濾過という分離方法のうちのいずれかによって達成されるシリコン凝集体は、3Nのシリコン純度(炭素および酸素を除く)を有する。より具体的には、シリコン切粉から抽出されたシリコン粒子は、99.9%Siの純度を有することができる。典型的な冶金級の金属レベルは、チャート600の領域602に示されている。
【0057】
図7を参照すると、本開示の一実施形態による、遠心管702内のシリコン凝集体の絵図が示されている。シリコン切粉を遠心分離することは、シリコン切粉中のシリコン粒子を、遠心管702の管壁706の内側チャネル704に堆積させることができる。堆積したシリコン凝集体708は、シリコン切粉の水分含有量よりも少ない水分含有量を有することができる。例えば、シリコン凝集体708は、40~50%、例えば45%の水分含有量を有することができる。圧縮されたシリコン凝集体708は、50~60%の範囲、例えば55%のシリコン体積密度を有することができる。そのようなプロセス中の遠心力に応じて、シリコン切粉の圧縮は、より大きなシリコン粒子を同時に形成することができる。例えば、圧縮されたシリコン粒子は、直径が100μmよりも大きいサイズを有する個別の粒子であってもよい。
【0058】
再度図4を参照すると、工程406において、シリコン凝集体を脱水してMG-Si粒子を形成する。シリコン凝集体の脱水は、炉によって行うことができる。例えば、シリコン凝集体を含む遠心管は、所定の期間、例えば250℃の温度に上げた炉内に配置されてもよい。シリコン凝集体の加熱は、シリコン凝集体中の水分、例えば、切削液から残った有機残留物を蒸発させることができる。
【0059】
図8を参照すると、本開示の一実施形態による、冶金級シリコン粒子800の絵図が示されている。工程406における加熱プロセスはまた、シリコン凝集体を冶金級シリコン(MG-Si)粒子800に凝集させることもできる。一実施形態では、脱水プロセスから生じるMG-Si粒子800は、図7のシリコン凝集体708とは実質的に異なるバルク特性を有する。例えば、シリコン凝集体708の水分含有量は、MG-Si粒子800の水分含有量の少なくとも2倍とすることができる。例として、MG-Si粒子800の水分含有量は、2%未満、例えば0.11%とすることができる。したがって、MG-Si粒子800の水分含有量は、図7のシリコン凝集体708よりも少なくとも一桁小さくすることができる。
【0060】
図9を参照すると、本開示の一実施形態による、シリコン切粉および冶金級シリコン粒子の粒径分布のグラフ900および902がそれぞれ示されている。説明全体で使用される粒径は、既知のサイジング技術によって決定される粒子の平均最大寸法を参照することができることを理解されたい。粒子は、完全に球形ではないことがあり、したがって、技術的な意味で直径を有していないことがあるが、粒径は、直径または当該技術分野において知られている他の寸法基準として表すことができる。
【0061】
MG-Si粒子800の粒径はまた、シリコン凝集体708の粒径と実質的に異なってもよい。一実施形態では、ソーイングしたままのシリコン切粉中のシリコン粒子の粒径の範囲は、1ミクロン未満である。上述したように、シリコン凝集体708中のシリコン粒子は、ソーイングしたままのシリコン切粉と実質的に同じサイズを有することができる。それに対して、遠心分離圧縮904および脱水プロセス906から生じるMG-Si粒子800の大部分は、ソーイングしたままのシリコン粒子の粒径よりも少なくとも一桁大きい粒径を有する。例えば、一実施形態では、MG-Si粒子800は、40ミクロンよりも大きい粒径を有し、MG-Si粒子の大部分は、50ミクロンよりも大きい粒径を有する。MG-Si粒子800の大部分は、70~100ミクロンの範囲またはさらに大きいサイズを有することができる。したがって、遠心分離および脱水プロセスによって生成されたMG-Si粒子800は、ダイヤモンドワイヤー(DW)切断プロセスによって生成されたシリコン粉末と比較して、取り扱いによく適合することができる。
【0062】
一実施形態では、シリコン切粉をリサイクルする方法は、ポリシリコン製造プロセスに導入されるMG-Si粒子のサイズをより均一にする工程を必要に応じて含むことができる。再度図4を参照すると、工程408において、MG-Si粒子800は、粉砕されてMG-Si粒子分布の最大サイズを所定の閾値未満に低減することができる。例えば、MG-Si粒子800は、ボールミリングプロセスまたは他の粉砕プロセスを通過し、MG-Si粒子800の粒径を1000ミクロン未満、例えば100~1000ミクロンの範囲に低減することができる。一実施形態では、最大粒径は、1ミクロン未満に低減される。
【0063】
再度図4を参照すると、脱水プロセスから生じるMG-Si粒子のサイズを変えることに加えて、ポリシリコン製造プロセスに導入するために、所定のサイズ範囲のMG-Si粒子が選択されることができる。例えば、工程410において、MG-Si粒子の第1のサブセットを、MG-Si粒子の第2のサブセットから分離することができる。一実施形態では、第1のサブセットは、所定の最小サイズを有するMG-Si粒子を含む。例えば、第1のサブセットは、少なくとも1ミクロンの粒径を有するMG-Si粒子を含むことができる。最小サイズ閾値を満たさないMG-Si粒子の第2のサブセットは、工程404においてリサイクル方法に再導入されてもよい。すなわち、MG-Si粒子の第2のサブセットは、シリコン切粉と混合して遠心分離プロセスに再導入することができる。したがって、シリコン切粉からのシリコン粒子の圧縮および脱水は、ポリシリコン製造プロセスにおいてさらに処理するための最小サイズ閾値を満たすMG-Si粒子に凝集されるまでループで処理されることができる。
【0064】
再度図4を参照すると、工程412において、MG-Si粒子は、電子級ポリシリコン粒子に精製することができる。MG-Si粒子は、シリコン精製プロセスにおいてポリシリコンを製造するための直接の原料として輸送および使用するのに最適なサイズにすることができる。
【0065】
図10を参照すると、本開示の一実施形態による、冶金級シリコン(MG-Si)粒子1002を使用するシリコン精製プロセス1000の図が示されている。例えば図4のフローチャート400の工程402~410によって生成されるような冶金級シリコン粒子1002は、例えば、通常、二酸化ケイ素の還元プロセスによって生成される冶金級シリコン粒子1002を使用する段階で、シーメンス法ベースのポリシリコン製造プロセスに導入することができる。一実施形態では、冶金級シリコン粒子1002は、2~4Nの範囲、例えば3Nなどの第1の純度を有する。より具体的には、1つの実施形態では、シリコン精製プロセスに導入される冶金級シリコン粒子1002は、99~99.9%Siの第1の純度を有することができる。冶金級シリコン粒子1002は、冶金級シリコン粒子1002中の不純物をさらに精製および除去するために、以下により詳細に説明する一連のプロセス、例えばトリクロロシランプロセスなどを介して精製することができる。一実施形態では、冶金級シリコン粒子1002にシリコン精製プロセスを適用した後、冶金級シリコン粒子1002は、第1の純度よりも高い第2の純度を有する電子級ポリシリコン粒子1004に変えることができる。
【0066】
一実施形態では、電子級ポリシリコン粒子1004の第2の純度は、インゴット成長1006および/またはブロック鋳造1008および/またはシリンダ成長1010に適している。例えば、第2の純度は、10Nよりも高く、例えば99.99999999%Siとすることができる。したがって、電子級ポリシリコン粒子1004は、さらに処理され、図4のフローチャート400の工程402においてシリコン切粉を形成するために使用されるシリコンインゴットと同じまたは本質的に同じ材料特性を有するリサイクルシリコンインゴットを形成することができる。リサイクルシリコンインゴットは、全体のシリコンウェハ製造プロセス1014においてウェハ切断1012を受けることができる。すなわち、リサイクルシリコン切粉は、リサイクルシリコンインゴットの前駆体物質である冶金級シリコン粒子1002として、光起電力(PV)シリコンバリューチェーンに効果的に再導入することができる。冶金級シリコンは、高価になる可能性があり、したがって、リサイクルしなければシリコン切粉として無駄になるであろうシリコン粒子の再回収は、全て込みのシリコンコストを削減し、経済的利益を実現することを理解されたい。
【0067】
再度図10を参照すると、一実施形態では、精製プロセスは、二酸化ケイ素還元工程1016を含むことができる。SiO源1018および炭素源1020は、摂氏1900~2000度の範囲の温度で電子アーク炉1022にさらされる。
【0068】
再度図10を参照すると、一実施形態では、精製プロセスは、化学的Si精製工程1024を含むことができる。塩酸供給源1026は、流動床反応器(FBR)1030内で二酸化ケイ素還元工程1016からの生成物1028と結合する。流動床反応器(FBR)1030では、水素ガス(H)1032が排出されることができる。トリクロロシラン(SiHCl)1034が生成され、ダスト濾過1036、およびトリクロロシラン凝縮工程1038を受ける。そして、得られた生成物は、トリクロロシラン貯蔵タンク1040に保持され、最終的に蒸留段階1042において蒸留される。得られた精製トリクロロシラン生成物1044は、水素(H)1048が導入されるSi蒸発器1046を介して処理される。得られた生成物は次に、化学気相成長(CVD)反応装置1050によって処理され、電子級ポリシリコン粒子1004および排気ガス1052が生成される。
【0069】
一実施形態では、太陽電池は、リサイクルシリコンインゴットから形成されたウェハ部分のうちの1つから製造される。例えば、PV電池は、リサイクルシリコンインゴットにビームレススライシング法を適用して製造された単結晶シリコンウェハを使用して形成されることができる。PV電池は、太陽電池として一般に知られており、太陽放射を電気エネルギーに直接変換する装置としてよく知られている。一般に、太陽電池は、半導体加工技術を使用して半導体ウェハ上または半導体基板上に作製され、基板の表面近くにp-n接合が形成される。太陽放射が基板の表面に衝突して基板内に入ると、基板のバルク内に電子正孔対が生成される。電子正孔対が基板内のp型ドープ領域およびn型ドープ領域まで移動する結果、ドープ領域間に電圧差が発生する。ドープ領域は、太陽電池の導電性領域に接続され、太陽電池からそれと結合された外部回路へと電流が流れる。しかしながら、上記のシリコンリサイクルプロセスは、太陽電池製造用のウェハの生成に限定されないことを理解されたい。
【0070】
このように、シリコン副産物をリサイクルする方法が開示されてきた。
【0071】
具体的な実施形態が上述されてきたが、これらの実施形態は、特定の特徴に関して単一の実施形態のみが説明される場合であっても、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示で提供される特徴の例は、別段の記述がある場合を除き、限定的であることよりも、むしろ例示的であることを意図するものである。上記の説明は、本開示から利益を得る当業者には明らかとなるような、代替形態、変更形態、および均等物を包含することを意図するものである。
【0072】
本開示の範囲は、本明細書で対処される問題のいずれかまたは全てを軽減するか否かにかかわらず、本明細書で(明示的または暗示的に)開示される、あらゆる特徴若しくは特徴の組み合わせ、またはそれらのあらゆる一般化を含む。したがって、本出願(または、本出願に基づく優先権を主張する出願)の特許出願手続き中に、任意のそのような特徴の組み合わせに対して、新たな請求項を考案することができる。具体的には、添付の「特許請求の範囲」を参照して、従属請求項からの特徴を、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、それぞれの独立請求項からの特徴を、単に添付の請求項で列挙される具体的な組み合わせのみではなく、任意の適切な方式で組み合わせることができる。
図1
図2
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