IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/20 20060101AFI20221101BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221101BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221101BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C09J123/20
C09J7/38
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017229395
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2018090794
(43)【公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2016232749
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉良 佳子
(72)【発明者】
【氏名】谷 賢輔
(72)【発明者】
【氏名】浅井 量子
(72)【発明者】
【氏名】下川 佳世
(72)【発明者】
【氏名】岡田 研一
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-171460(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115521(WO,A1)
【文献】特開2008-163502(JP,A)
【文献】特開平09-316228(JP,A)
【文献】特開2002-188071(JP,A)
【文献】特開2014-231586(JP,A)
【文献】特開平02-011688(JP,A)
【文献】特開2009-144068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物であって、
前記ベースポリマーは前記湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを含み、かつ、前記ベースポリマーの25℃、50%RHで24時間保管後の含水率が0.1重量%以下であり、
前記ベースポリマーは、ポリイソブチレンを含み、
前記粘着剤組成物は吸水性材料をさらに含有し、前記吸水性材料は、吸水性ポリマーである、
前記湿気硬化性成分が未反応状態で含有されている粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ベースポリマーは、厚み100μmの層を形成した際の40℃、90%RHにおける透湿度が25g/m・24hr以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記湿気硬化性成分は、被着体と化学結合可能である請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記湿気硬化性成分は、脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートである請求項1~のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層。
【請求項6】
請求項に記載の粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層が基材上に形成されている請求項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、並びに該粘着剤層を備える粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の防水等を目的として、プライマー組成物が用いられている。例えば、特許文献1には、特定の樹脂組成物及び特定の湿気硬化性溶液を混合してなる被覆剤組成物が、湿潤面に対する密着性に優れたプライマー組成物として使用可能であることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、コンクリート等の無機材や木材のような凹凸の表面を有する被着体に対して十分な接着強度を有する湿気硬化型粘接着剤を光重合により供し得る光重合性組成物、及びこの組成物を用いてなる湿気硬化型粘接着性シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-354749号公報
【文献】特開2000-273418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の被覆剤組成物は液状のプライマー組成物として使用されるものであり、塗工作業及びその後の乾燥を必要とするため、作業効率の観点で問題があった。
【0006】
また、特許文献2では、コンクリート等の無機材や木材のような凹凸の表面を有する被着体に対する接着強度について検討がなされているが、湿潤面に対する接着強度については何ら検討されていない。
【0007】
本発明者らは、湿潤面に対して良好に接着できる粘着シートを提供することを目的として鋭意検討を重ねた結果、粘着剤層を形成する粘着剤組成物として、未反応状態である湿気硬化性成分を含有する粘着剤組成物を用いることを着想した。その上で、湿潤面に対する良好な接着性を得るには、湿気硬化性成分の未反応状態を高く維持することが重要であるとの知見を得た。
【0008】
そこで、本発明は、湿気硬化性成分の保存安定性に優れることにより、湿潤面に対する高い接着力を与える粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、並びに該粘着剤層を備える粘着シートを提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物であって、前記ベースポリマーは前記湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを含み、かつ、前記ベースポリマーの25℃、50%RHで24時間保管後の含水率が0.1重量%以下であり、前記湿気硬化性成分が未反応状態で含有されている粘着剤組成物に関する。
【0010】
本発明の一態様において、ベースポリマーは、厚み100μmの層を形成した際の40℃、90%RHにおける透湿度が25g/m・24hr以下であってもよい。
【0011】
本発明の一態様において、ベースポリマーは、ゴム系ポリマーまたはアクリル系ポリマーを含んでもよい。
【0012】
本発明の一態様において、湿気硬化性成分は被着体と化学結合可能であってもよい。
【0013】
本発明の一態様において、湿気硬化性成分は、脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートであってもよい。
【0014】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は吸水性材料をさらに含有してもよい。
【0015】
本発明の一態様において、吸水性材料は、吸水性ポリマーであってもよい。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層に関する。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記の粘着剤層を備える粘着シートに関する。
【0018】
本発明の一態様において、上記粘着剤層は基材上に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、湿気硬化性成分の保存安定性に優れることにより、湿潤面に対する高い接着力を与える粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、並びに該粘着剤層を備える粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係る粘着剤組成物は、ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物であって、前記ベースポリマーは前記湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを含み、かつ、前記ベースポリマーの25℃、50%RHで24時間保管後の含水率が0.1重量%以下であり、前記湿気硬化性成分が未反応状態で含有されているものである。
【0022】
本実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層または該粘着剤層を備える粘着シート(以下、まとめて粘着シートともいう)は、被着体の湿潤面に貼付されると、粘着剤組成物(粘着剤層)中に未反応状態で含有されている湿気硬化性成分が、被着体の湿潤面から吸収された水分や、周囲の水分や湿気といった水と反応して湿気硬化することにより、被着体に対する接着力が向上する。その結果、被着体の湿潤面に貼付された際に、接着力が経時的に上昇し、高い接着力を発現することができる。なお、湿気硬化性成分が被着体と化学結合可能なものである場合、粘着剤組成物(粘着剤層)中に未反応状態で含有されている被着体と化学結合可能な湿気硬化性成分と、被着体表面との間の化学結合が進行することにより、被着体表面に対する接着力がさらに向上するため好ましい。
【0023】
ここで、粘着剤組成物中に含有されるベースポリマーの含水率が高いと、周囲の水(水分や湿気)が粘着剤組成物(粘着剤層)中に蓄積しやすくなる結果、粘着剤組成物の保存時、粘着剤組成物からの粘着シートの作製時、粘着シートの保存時あるいは粘着シートを被着体に貼付する前等の段階で、湿気硬化性成分が周囲の水(水分や湿気)と反応して湿気硬化してしまうおそれがある。その結果、粘着剤組成物からの粘着剤層あるいは粘着シートの作製や、粘着シートの被着体への貼付が困難になったり、貼付後に十分な接着力が発現されなくなるおそれがある。
【0024】
そこで、本実施形態の粘着剤組成物においては、ベースポリマーの25℃、50%RHで24時間保管後の含水率(以下、単に含水率ともいう)を0.1重量%以下(1000ppm以下)とする。ベースポリマーの含水率が0.1重量%以下であれば、粘着剤組成物の保存時、粘着剤組成物からの粘着シートの作製時、粘着シートの保存時あるいは粘着シートを被着体に貼付する前等の段階で、周囲の水(水分や湿気)が粘着剤組成物(粘着剤層)中に蓄積することを十分に防止ないし抑制できる。これにより、粘着シートを被着体へ貼付する前の各段階における湿気硬化性成分と周囲の水(水分や湿気)との反応を防止ないし抑制でき、保存安定性に優れた粘着剤組成物、粘着剤層または粘着シートとすることができる。その結果、かかる粘着シートは被着体の湿潤面に対して良好に貼付でき、また良好な接着力を発現できる。上記含水率は、好ましくは0.08重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以下である。なお、上記含水率は低い方が好ましく、その下限値は特に限定されないが、例えば、0.01重量%である。
【0025】
なお、ベースポリマーの25℃、50%RH保管後の含水率は、カールフィッシャー水分気化-電量滴定法(JIS K 0113:2005)により測定することができる。具体的には平沼産業株式会社製の平沼微量水分測定装置AQ-2100を用い、200℃、30分間の加熱気化により生じた水分量を測定し、加熱前の試料重量に対する割合を含水率として算出できる。
含水率(%)=(カールフィッシャー測定水分量/測定前の試料全重量)×100
【0026】
また、本実施形態の粘着剤組成物において、ベースポリマーは、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを含む。そのようなポリマーとしては、例えば、官能基を有さないポリマー(無官能ポリマー)が挙げられる。あるいは、湿気硬化性成分と反応しない官能基を有するポリマーであってもよい。
ベースポリマーに湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを用いることで、粘着シートを被着体に貼付する前の各段階における、ベースポリマーと湿気硬化性成分との反応を防止して、保存安定性に優れた粘着剤組成物、粘着剤層または粘着シートとすることができる。その結果、かかる粘着シートは被着体の湿潤面に対して良好に貼付でき、また良好な接着力を発現できる。
【0027】
ここで、湿気硬化性成分と反応する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、リン酸基、イミド基、イソシアネート基、アルコキシ基、シラノール基等の極性官能基が挙げられる。
【0028】
本実施形態の粘着剤組成物において、上記ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ウレタン系ポリマー等が挙げられ、これらの中から、含水率が0.1重量%以下であり、かつ湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないものを適宜選択して用いることができる。なお、湿気硬化性成分と反応しうる官能基は水とも反応しうる官能基であるため、水との親和性が高く、含水率が高くなるため好ましくない。上記例示したポリマーの中でも、接着性の観点からは、アクリル系ポリマー及びゴム系ポリマーが好ましく、透湿性の観点からは、ゴム系ポリマーがより好ましい。透湿性の低い材料であるほど、外部環境の湿度の影響を受けにくく、ポリマー中に水分を取り込みにくくなるため湿気硬化性成分と水との反応を遅らせることができる。透湿性はポリマー中の水の溶解性と拡散性が関わっており、湿気硬化性成分と反応しうる官能基が存在するポリマーは、ポリマーの水の溶解性を高くし、拡散性を低下させるため、不適切である。湿気硬化性成分を低含水率もしくは低透湿性の材料で保護することにより、湿気硬化性成分の保存安定性を確保できる。
【0029】
本実施形態において、ゴム系ポリマーとしては、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、イソブチレンとノルマルブチレンとの共重合体、イソブチレンとイソプレンとの共重合体(例えば、レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム等のブチルゴム類)、これらの加硫物等のイソブチレン系ポリマー;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS、SISの水添物)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水添物)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のスチレン系ブロックコポリマー等のスチレン系熱可塑性エラストマー;ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、EPR(二元系エチレン-プロピレンゴム)、EPT(三元系エチレン-プロピレンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等が挙げられる。中でも含水率が低いことから、PIB、IIR、IR、SIS、SIBSが好ましく、PIBがより好ましい。なお、これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ゴム改質剤のためのポリマーとしては、例えば、1,3-ペンタジエン系ポリマーやポリブテンといった脂肪族系炭化水素樹脂やジシクロペンタジエン系の脂環族系炭化水素樹脂、石油系軟化剤(パラフィン系油、ナフテン系油、芳香族系油)などの低極性のポリマーを用いてもよい。
【0030】
また、本実施形態において、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主たる単量体成分とするポリマーであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)を主たる単量体成分として含有するものを好適に用いることができる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも好ましくは炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、さらに好ましくは炭素数2~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。なお、上記「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」及び/又は「メタクリル酸エステル」を表し、他も同様である。
【0031】
また、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステルは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、極性官能基を有さないモノマーであれば、アクリル系モノマー以外のモノマーを(メタ)アクリル酸エステルと共重合させてもよい。
【0033】
本実施形態において、アクリル系ポリマーを構成する単量体成分のうち、80重量%以上が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、より好ましくは90重量%以上であり、さらに好ましくは100重量%である。
【0034】
本実施形態において、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないアクリル系ポリマーとするには、モノマー成分として、極性基含有単量体や多官能性単量体などの湿気硬化性成分と反応しうる官能基を有する単量体を用いないことが重要である。
【0035】
そのような極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタアクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2-ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。
【0036】
また、上記多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0037】
また、本実施形態において、ベースポリマーは、厚み100μmの層(ポリマーシートまたはポリマー層ともいう)を形成した際の40℃、90%RHにおける透湿度(以下、単に透湿度ともいう)が25g/m・24hr以下であることが好ましい。上記透湿度が25g/m・24hr以下であれば、粘着シートを被着体に貼付する前の各段階において、周囲の水分や湿気が粘着剤組成物(粘着剤層)中に浸入することを良好に防止ないし抑制できる。これにより、粘着シートを被着体に貼付する前の各段階における湿気硬化性成分と周囲の水分や湿気との反応をより良好に防止ないし抑制でき、粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着シートの保存安定性をより優れたものとすることができる。上記透湿度は、好ましくは23g/m・24hr以下であり、より好ましくは20g/m・24hr以下である。なお、当該透湿度は低い方が好ましく、その下限値も特に限定されないが、例えば、10g/m・24hrである。
【0038】
なお、ベースポリマーの、厚み100μmの層を形成した際の40℃、90%RHにおける透湿度は、水蒸気透過度(JIS K 7129:2008)により測定できる。具体的には、例えば後述する実施例の欄に記載の測定手法により測定できる。
【0039】
また、ベースポリマーには、本発明の効果が著しく阻害されない範囲において、上述した湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマー以外の改質剤などのポリマー(以下、他のポリマーともいう)が含有されていてもよい。その場合、ベースポリマー全体(100重量%)に対する他のポリマーの含有割合は、75重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。
また、ベースポリマー全体(100重量%)に対する、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーの含有量は、100重量%であってもよいが、他のポリマーを含有させる場合には、80重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。また、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーの含有量は、上述した効果を良好に発揮するためには、30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。
【0040】
なお、本実施形態の粘着剤組成物においては、粘着シートを被着体の湿潤面に貼付する前の湿気硬化性成分の保存安定性の観点から、ベースポリマー中に、湿気硬化性成分と反応可能な官能基を有するポリマーを含有しないことが好ましい。ここで、湿気硬化性成分と反応する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、リン酸基、イミド基、イソシアネート基、アルコキシ基、シラノール基等の極性官能基が挙げられる。
ただし、本発明の効果が著しく阻害されない範囲、例えば、ベースポリマー全体100重量%に対する含有割合が1重量%以下であれば、湿気硬化性成分と反応可能な官能基を有するポリマーの含有が許容されうる。
【0041】
粘着剤組成物が重合開始剤を含む場合、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することができる。上記重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0043】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。
【0044】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0045】
光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、ベースポリマーを形成するための全モノマー成分(またはベースポリマー)100重量%に対して0.01~5重量%(好ましくは0.05~3重量%)の範囲から選択することができる。
【0046】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー線を照射する。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に限定されず、光重合開始剤を活性させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0047】
上記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´-アゾビス(N,N´-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0048】
上記熱重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、ベースポリマーを形成するための全モノマー成分(又はベースポリマー)100重量%に対して、0.001重量%以上、好ましくは0.05重量%以上であり、5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
【0049】
本実施形態に係る粘着剤組成物中におけるベースポリマーの含有量は特に限定されるものではないが、初期接着力の観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、すなわち粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100重量%として、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。また、ベースポリマーの含有量は、湿気硬化性成分等を含有させる観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましく、70重量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
本実施形態において、湿気硬化性成分とは、水(水分や湿気)の存在により硬化反応を生じる性質(湿気硬化性)を有する成分である。例えば、分子内に一つ以上の加水分解性反応基あるいは水により反応を開始する官能基を有し、空気中などの周囲の水(水分や湿気)によって硬化を開始する樹脂や化合物が包含される。
【0051】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられる湿気硬化性成分は、湿気硬化性を有する。そして、湿気硬化性成分は未反応状態で粘着剤組成物に含有されている。本実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた粘着シートが被着体に貼付されると、未反応状態の湿気硬化性成分自体が、湿潤面から吸収された水分や、周囲の水分や湿気といった水により硬化することで接着性がより向上する。また、湿気硬化性成分は、貼付される被着体と化学結合可能な成分であることが好ましい。そのような場合、未反応状態の湿気硬化性成分と被着体との間で化学結合が進行することで、接着性がより向上する。
【0052】
本実施形態に用いられる湿気硬化性成分は、イソシアネート化合物、アルコキシシリル基含有ポリマー、シアノアクリレート系化合物、ウレタン系化合物等が挙げられる。なかでも、相溶性や硬化速度の点において、イソシアネート化合物及びアルコキシシリル基含有ポリマーが好ましい。なお、湿気硬化性成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
イソシアネート化合物(イソシアネート)は、水の存在下で加水分解されてアミンとなり、イソシアネートとアミンが反応してウレア結合を形成することにより硬化する。また、被着体表面の水酸基や、アミノ基、カルボキシル基等との間で化学結合を形成することができる。
【0054】
イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート及び芳香族イソシアネートが挙げられる。中でも、ベースポリマー、特にゴム系ポリマーとの相溶性が良好であり、湿気や水分との反応性が緩やかなことから、脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートが好ましい。
【0055】
脂肪族イソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、リジントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
【0056】
脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート(CHDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加XDI(HXDI)、水素添加MDI(H12MDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等が挙げられる。
【0057】
芳香族イソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);粗製ジフェニルメタンジイソシアネート;多核ポリフェニレンポリメチルポリイソシアネート(ポリメリックMDI);2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート(TDI);1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート(NDI);1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート;1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート(PDI);キシレンジイソシアネート(XDI);テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI);トリジンジイソシアネート(TODI);2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
アルコキシシリル基含有ポリマーは、水の存在下で加水分解されてシラノールとなり、縮合(架橋)することで硬化する。また、被着体表面の水酸基との間で脱水縮合反応すること等で強固な化学結合を形成することができる。
【0059】
アルコキシシリル基含有ポリマーとしては、例えば、株式会社カネカ製の、サイリルSAX220やサイリルSAT350等の直鎖型ジメトキシ基両末端タイプ、サイリルSAT145等の直鎖型ジメトキシ基片末端タイプ、サイリルSAX510やサイリルSAT580等の直鎖型トリメトキシ基両末端タイプ、サイリルSAT400等の分岐型ジメトキシ基末端タイプ、サイリルMA440やサイリルMA903、サイリルMA904等のアクリル変性タイプから選ばれる1種以上を用いることができる。
【0060】
本実施形態に係る粘着剤組成物中における湿気硬化性成分の含有量は特に限定されるものではないが、高い接着力を得る観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、すなわち粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100重量%として、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上であることが好ましい。また、湿気硬化性成分の含有量は、過剰な硬化により基材との投錨力が低下するおそれがあることから、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して50重量%以下であることが望ましく、40重量%以下であることが望ましく、30重量%以下であることが特に好ましい。
【0061】
本実施形態の粘着剤組成物は、吸水性材料をさらに含有することが好ましい。ここで、本実施形態において、吸水性材料とは、水分を吸収して保持できる材料を表す。粘着剤組成物が吸水性材料を含有すると、粘着シートが被着体の湿潤面に貼付された際に、吸水性材料が粘着シートと被着体との接着の妨げとなる湿潤面の水分を吸収保持することで、粘着シートに要求される被着体に対する初期接着力が良好に発現される。また、吸水性材料により被着体の湿潤面の水分が吸収除去されるため、凹凸表面を有する被着体に対しても粘着シートが良好に追従することができる。その結果、湿潤面に対する接着性がより向上しやすくなる。
【0062】
吸水性材料としては、吸水性ポリマー等の有機系の吸水性材料や、無機系の吸水性材料を用いることができる。なお、吸水性材料は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸類、水溶性セルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキサイド類、デンプン類、アルギン酸類、キチン類、ポリスルホン酸類、ポリヒドロキシメタクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類、ポリビニルアミン類、無水マレイン酸類、これらの共重合体等が挙げられる。なお、吸水性ポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
なかでも、ポリアクリル酸ナトリウム塩、無水マレイン酸及びポリイソブチレンの共重合体が好ましく、無水マレイン酸及びポリイソブチレンの共重合体がより好ましい。
【0064】
吸水性ポリマーとしては、市販品を用いてもよい。吸水性ポリマーの市販品としては、例えば、KCフロック(セルロースパウダー、日本製紙ケミカル株式会社製)、サンローズ(カルボキシメチルセルロース、日本製紙ケミカル株式会社製)、アクアリックCA(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、株式会社日本触媒製)、アクリホープ(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、株式会社日本触媒製)、サンウェット(ポリアクリル酸塩架橋体、サンダイヤポリマー株式会社製)、アクアパール(ポリアクリル酸塩架橋体、サンダイヤポリマー株式会社製)、アクアキープ(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、住友精化株式会社製)、アクアコーク(変性ポリアルキレンオキサイド、住友精化株式会社製)、KIゲル(イソブチレン-無水マレイン酸共重合体架橋物、株式会社クラレ製)等を好適に用いることができる。
【0065】
無機系の吸水性材料としては、例えば、シリカゲルや、クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA等の無機高分子などが挙げられる。
【0066】
本実施形態に係る粘着剤組成物において、吸水性材料をさらに含有する場合の吸水性材料の含有量は特に限定されるものではないが、被着体の水分の吸水除去性や湿潤面への接着性向上の観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、すなわち粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100重量%として、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましい。また、吸水性材料の含有量は、湿気硬化後の接着力の観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、50重量%以下がより好ましく、40重量%以下が好ましく、30重量%以下が特に好ましい。
【0067】
本実施形態に係る粘着剤組成物には、弾性率の調整ならびに初期接着の際のタックを与えることを目的として、タッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させてもよい。タッキファイヤーとしては、例えば、ポリブテン類、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂(例えば、石油系脂肪族炭化水素樹脂、石油系芳香族炭化水素樹脂、石油系脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂、石油系脂環族炭化水素樹脂(芳香族炭化水素樹脂を水素添加したもの)等)、クマロン系樹脂等が挙げられる。相溶性の点において、好ましくは、石油系樹脂、ロジン系樹脂である。タッキファイヤーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
粘着剤組成物中にタッキファイヤーを含有させる場合の含有量は、弾性率を低下させる観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、すなわち粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100重量%として、10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。また、タッキファイヤーの含有量は、粘着剤に適度な凝集力を持たせる観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
また、本実施形態の粘着剤組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲において、粘度調整剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、老化防止剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤等、粘着剤組成物に通常添加される添加剤をさらに添加してもよい。
充填剤としては、例えば、タルク、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボン、シリカ、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウィスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填剤が挙げられる。
充填剤の含有量は、粗面接着性の観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。
【0070】
また、粘着剤組成物に利用される溶剤(溶媒)としては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。前記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の有機溶剤が挙げられる。前記溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0071】
本実施形態の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成したときの(湿気硬化前の)該粘着剤層の弾性率(初期弾性率)が400kPa以下であることが好ましく、300kPa以下であることがより好ましく、200kPa以下であることがさらに好ましい。該初期弾性率が400kPa以下であれば、凹凸面を有する被着体に対しても良好な追従性を発揮することができる。また、吸水性材料が被着体の湿潤面の水分を吸収した際の膨潤が妨げられることなく、吸水性材料の吸水性が良好に発揮される。また、粘着剤層を良好に形成するためには、該初期弾性率は0.1kPa以上であることが好ましい。
【0072】
ここで、粘着剤層を形成したときの該粘着剤層の初期弾性率は、該粘着剤層をひも状に丸めた試料を作製し、引張試験機(株式会社島津製作所製のAG-IS)を用いて50mm/minの速度で引張ったときに測定される応力-ひずみ曲線から算出することができる。
【0073】
本実施形態の粘着剤層は、上記の粘着剤組成物を用いて形成される。形成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができるが、下記の粘着シートの製造方法に準じて行うことができる。なお、粘着剤層中における各成分量の好ましい範囲は、粘着剤組成物中の溶媒を除いた各成分量の好ましい範囲と同様である。
【0074】
粘着剤層は、例えば、粘着剤組成物を公知の塗工方法を用いて後述する基材に塗布し、乾燥させて、粘着シートの形態として得ることができる。また、剥離性を有する表面に粘着剤組成物を塗布して乾燥または硬化させることにより該表面上に粘着剤層を形成した後、その粘着剤層を非剥離性の基材に貼り合わせて転写させてもよい。粘着剤組成物を基材に塗布する方法は、特に制限されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、ファウンテンダイコーター、クローズドエッジダイコーター等を用いて行うことができる。また、圧延や押出などの無溶剤塗工法を適用してもよい。
【0075】
また、粘着剤層は、粘着剤組成物を剥離シート(剥離面を備えるシート状基材であってもよい。)に塗布して粘着剤層を形成してもよい。
【0076】
乾燥後の粘着剤層の厚みは特に制限されないが、凹凸面を有する被着体に対して良好な追従性を発揮させる観点からは、5~1000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましい。乾燥温度は、例えば、50~150℃とすることができる。
【0077】
粘着剤組成物(粘着剤層)が吸水性材料を含有する場合、粘着剤層の被着体に貼付する面(貼付面)においては、吸水性材料が、貼付面の表面積の0.5~80%(より好ましくは1~70%)において露出していることが好ましい。粘着剤層の貼付面の表面積に占める吸水性材料の割合が0.5%以上であれば、被着体の湿潤面の水分を良好に吸水することができる。また、粘着剤層の貼付面の表面積に占める吸水性材料の割合が80%以下であれば、粘着剤層が被着体に対して良好に接着できる。
【0078】
本実施形態の粘着シートは、上記の粘着剤層を有する。
【0079】
本実施形態の粘着シートは、粘着剤層をシート状基材(支持体)の片面又は両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、粘着剤層が剥離シートに保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。
【0080】
なお、粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば、点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本実施形態の粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0081】
基材を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙類;綿布、スフ布等の布類;ポリエステル不織布、ビニロン布織布等の布織布類;金属箔が挙げられる。また、基材の厚みは特に限定されない。
【0082】
前記プラスチックフィルム類は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムであってもよい。また、基材の粘着剤層が設けられる面には、下塗り剤の塗布、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0083】
本実施形態においては、粘着シートに穿孔して貫通孔を設けてもよい。このようにすれば、粘着シートを被着体に張り付けた際に、被着体の湿潤面の水分が貫通孔を通じて粘着シートの背面側(貼付面とは反対側)に抜けることができるため、被着体の湿潤面における水分をより多く除去することができる。
【0084】
本実施形態の粘着シートにおいては、使用時まで粘着剤層が剥離ライナー(セパレータ、剥離フィルム)により保護されていてもよい。また、剥離ライナーによる保護は、粘着剤層中の未反応状態の湿気硬化性成分の未反応状態を維持するためにも有用である。
【0085】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。フッ素系ポリマーからなる低接着性基材のフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。無極性ポリマーからなる低接着性基材の無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、剥離ライナーは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、剥離ライナーの厚さ等も特に制限されない。
【0086】
本実施形態に係る粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層または該粘着剤層を備える粘着シート中において、湿気硬化性成分は未反応状態で含有されている。ここで、未反応状態とは、水(水分や湿気)による硬化反応を生じていない状態を表す。なお、本実施形態において、湿気硬化性成分は、その全部が未反応状態であることが好ましいが、本発明の効果を奏する限りにおいて、その一部が反応状態となっていてもよく、この場合も、本実施形態における湿気硬化性成分が未反応状態で含有されていることに包含される。
【0087】
本実施形態の粘着シート(粘着剤層)においては、25℃、50%RHで24時間保存した後の、粘着剤組成物中の湿気硬化性成分の維持率(残存率)が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
【0088】
上記維持率は、例えば、湿気硬化性成分としてイソシアネート化合物を用いる場合であれば、以下のようにして測定できる。
まず、作製直後の粘着シート(粘着剤層)の赤外分光測定から得られるイソシアネート基由来の2275cm-1における吸光度とベースポリマーのメチレン基由来の2250-2255cm-1における吸光度の比を算出する。ここで、吸光度比とは、上記メチレン基由来の吸光度に対する上記イソシアネート基由来の吸光度の比(イソシアネート基由来の吸光度/メチレン基由来の吸光度)である。また、25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シート(粘着剤層)の赤外分光測定から得られる吸光度比を同様にして算出し、これらの変化率から、湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率を算出する。具体的には、以下の関係式から算出される。
湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率(%)={(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シートの吸光度比)/(作製直後の粘着シートの吸光度比)}×100
【0089】
なお、湿気硬化性成分がイソシアネート化合物以外の場合においても、赤外分光測定においてその湿気硬化性成分に由来する代表的なピークが現れる波数における吸光度比の変化率から、湿気硬化性成分の維持率を算出することができる。
【0090】
本実施形態の粘着剤組成物、粘着剤層並びに粘着シート(粘着剤組成物等)は、粘着剤組成物等の中の未反応状態の湿気硬化性成分の未反応状態を保持するために、周囲の水(水分や湿気)の影響を低減ないし遮断しておくことが好ましい。例えば、本実施形態の粘着シートは、適宜な包装体で包装されていてもよい。包装体の材料としては、アルミニウム製の防湿袋等が例示されるが、これに限定されるものではない。また、包装体内部の雰囲気は、空気であってもよいが、窒素やアルゴン等の不活性ガス等で置換されていてもよい。また、包装体内部にはシリカゲル等の乾燥剤を同梱してもよい。
【0091】
本実施形態の粘着シートが貼付される被着体としては、特に限定されないが、粘着剤組成物(粘着剤層)中の未反応状態の湿気硬化性成分と化学結合しうるものが好ましい。例えば、コンクリート、モルタル、アスファルト、金属、木材、タイル、塗膜面や浴室の内壁等のプラスチック材などの他、皮膚、骨、歯、生体内部などが挙げられる。
【実施例
【0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0093】
(粘着剤組成物の作製)
(実施例1)
ベースポリマーとしてのスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)(日本ゼオン株式会社製のクインタックQTC3520)及びイソプレンゴム(クラレ株式会社製のLIR-30)を溶媒としてのトルエンに溶解させた後、この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)、吸水性材料としてのイソブチレン・無水マレイン酸共重合物(クラレトレーディング株式会社製のKIゲル)、粘着付与剤としての液状完全水添ロジンメチルエステル樹脂(丸善石油化学株式会社製のM-HDR)を、粘着剤組成物中の溶媒を除く成分全量に対する各成分割合が表1に記載された割合になるように配合して、実施例1の粘着剤組成物を作製した。
【0094】
(実施例2)
湿気硬化性成分を三井化学株式会社製のタケネートD-101E(トリレンジイソシアネート、TDI)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着剤組成物を作製した。
【0095】
(実施例3)
湿気硬化性成分を三井化学株式会社製のタケネートD-120N(水素添加キシレンジイソシアネート、HXDI)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の粘着剤組成物を作製した。
【0096】
(実施例4)
湿気硬化性成分を三井化学株式会社製のタケネートD-140N(イソホロンジイソシアネート、IPDI)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の粘着剤組成物を作製した。
【0097】
(実施例5)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)を溶媒としてのトルエンに溶解させた後、この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)、吸水性材料としてのイソブチレン・無水マレイン酸共重合体(クラレトレーディング株式会社製KIゲル)、粘着付与剤としての石油樹脂(EMGマーケティング合同会社、エスコレッツ1202U)、充填剤としての重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を粘着剤組成物中の溶媒を除く成分全量に対する各成分割合が表2に記載された割合になるように配合して、実施例5の粘着剤組成物を作製した。
【0098】
(実施例6)
実施例5において、吸水性材料として変性アクリル系重合体(株式会社日本触媒社製のアクアリックCS-6S)、湿気硬化性成分としてアルコキシシリル基含有ポリマー(株式会社カネカ社製のサイリルSAX510)、別のアルコキシシリル基含有ポリマー(株式会社カネカ社製のサイリルSAT145)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHI2000)を用いるように変更し、また、粘着剤組成物中の溶媒を除く成分全量に対する各成分割合が表2に記載された割合になるように配合して、実施例6の粘着剤組成物を作製した。
【0099】
(実施例7)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのアクリル酸ブチル(BA):100重量部と、重合溶媒としてのトルエン:190重量部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.3重量部の2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを加え、60℃で6時間溶液重合してアクリル酸ブチル(BA)の重合体(アクリル系ポリマー1)の溶液を得た。この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)、吸水性材料としてのクラレトレーディング株式会社製KIゲル、粘着付与剤としての液状完全水添ロジンメチルエステル樹脂(丸善石油化学株式会社製M-HDR)を、粘着剤組成物中の溶媒を除く成分全量に対する各成分割合が表2に記載された割合になるように配合して、実施例7の粘着剤組成物を作製した。
【0100】
(比較例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのアクリル酸ブチル(BA):100重量部及びアクリル酸(AA):10重量部と、重合溶媒としてのトルエン:190重量部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.3重量部の2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを加え、60℃で6時間溶液重合して、アクリル酸ブチル(BA):100重量部とアクリル酸(AA):10重量部の共重合体(アクリル系ポリマー溶液2)の溶液を得た。この溶液に、湿気硬化性成分としてのトリレンジイソシアネート(TDI)(東ソー株式会社製のコロネートL)、吸水性材料としてのクラレトレーディング株式会社製KIゲル、粘着付与剤としての液状完全水添ロジンメチルエステル樹脂(丸善石油化学株式会社製M-HDR)を粘着剤組成物中の溶媒を除く成分全量に対する各成分割合が表2に記載された割合になるように配合して、比較例1の粘着剤組成物を作製した。
【0101】
(比較例2)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのアクリル酸ブチル(BA):100重量部及びアクリル酸(AA):5重量部と、重合溶媒としてのトルエン:190重量部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.3重量部の2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを加え、60℃で6時間溶液重合して、アクリル酸ブチル(BA):100重量部とアクリル酸(AA):5重量部の共重合体(アクリル系ポリマー3)を含むアクリル系ポリマー溶液を得た。この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(東ソー株式会社製のコロネートHL)、吸水性材料としてのクラレトレーディング株式会社製KIゲル、粘着付与剤としての液状完全水添ロジンメチルエステル樹脂(丸善石油化学株式会社製M-HDR)を粘着剤組成物中の溶媒を除く成分全量に対する各成分割合が表2に記載された割合になるように配合して、比較例2の粘着剤組成物を作製した。
【0102】
(ベースポリマーの含水率)
ベースポリマーの25℃、50%RH保管後の含水率を、以下のようにして測定した。その結果を表1~2に示す。
剥離ライナーとして、片面が剥離処理された剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル株式会社製)を用意した。剥離ライナーの剥離面に、各例に係るベースポリマーの溶液を塗布し、130℃で5分間乾燥させ、厚さ20μmのポリマーシート(ポリマー層)を形成した。上記の剥離ライナー上に形成されたポリマー層の他面を、既に貼り合わせた剥離ライナーと同じ剥離ライナーの剥離面に貼り合わせて、両面が剥離ライナーにより保護されたポリマーシートを作製した。
このようにして作製したポリマーシートの両面から剥離ライナーを剥離した後、25℃、50%RH環境下に24時間保管し、カールフィッシャー水分気化―電量滴定法(JIS K 0113:2005)により測定した。具体的には平沼産業株式会社製の平沼微量水分測定装置AQ-2100を用い、200℃、30分間の加熱気化により生じた水分量を測定し、加熱前の試料重量に対する割合を含水率とした。
含水率(%)=(カールフィッシャー測定水分量/測定前の試料全重量)×100
【0103】
(ベースポリマーの透湿度)
厚み100μmのポリマーシート(ポリマー層)の40℃、90%RHにおける透湿度を、以下のようにして測定した。その結果を表1~2に示す。
剥離ライナーとして、片面が剥離処理された剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル株式会社製)を用意した。剥離ライナーの剥離面に、各例に係るベースポリマーの溶液を塗布し、130℃で5分間乾燥させ、厚さ100μmのポリマーシート(ポリマー層)を形成した。上記の剥離ライナー上に形成されたポリマーシートの他面を、厚み25μmのPETフィルム(東レ株式会社製のルミラーS-10、透湿度:24g/m・24hr)に貼り合わせて、ポリマーシートの片面が剥離ライナーにより保護された、PETフィルム上にポリマーシートが形成された積層フィルムを作製した。
作製した積層フィルムから剥離ライナーを剥離した。つづいて、積層フィルムの透湿度Tについて、株式会社日立ハイテクサイエンス社製のMOCON水蒸気透過率測定装置を用いて、25℃、50%RHの一室から40℃、90%RHの2室への水蒸気透過量を測定することで算出した後、下記の計算式によりポリマーシートのみの透湿度R(g/m・24hr)を算出した。
R=1/(1/T-1/24)
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
(粘着剤組成物の液寿命)
各実施例及び比較例の粘着剤組成物について、ベースポリマーの溶液(固形分34%のトルエン溶液)に湿気硬化性成分(イソシアネート)を添加してから1時間後の液粘度上昇を確認することにより、粘着剤組成物の液寿命を以下の評価基準により評価した。これらの結果を表3に示す。
○:液粘度上昇無し
×:ゲル化(液粘度上昇により、塗工できない)
【0107】
(ポリマーシートの開放保存後の湿気硬化性成分の維持率)
各例について、ベースポリマー100重量部に対し、湿気硬化性成分(イソシアネート)を5部添加して作製したポリマーシート(厚み20μm)を用いて、イソシアネートの反応性を赤外吸収スペクトルで追跡することで、ポリマーシートの開放保存後の湿気硬化性成分の維持率を算出した。その結果を表3に示す。
【0108】
まず、作製直後のポリマーシートの赤外分光測定(Varian社製の3100 FT-IRを使用)から得られるイソシアネート基由来の2275cm-1における吸光度とベースポリマーのメチレン基由来の2250-2255cm-1における吸光度の比を算出した。ここで、吸光度比とは、上記メチレン基由来の吸光度に対する上記イソシアネート基由来の吸光度の比(イソシアネート基由来の吸光度/メチレン基由来の吸光度)である。また、25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後のポリマーシートの赤外分光測定から得られる吸光度比を同様にして算出し、これらの変化率から湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率を算出した。具体的には、以下の関係式から算出した。
湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率(%)={(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後のポリマーシートの吸光度比)/(作製直後のポリマーシートの吸光度比)}×100
【0109】
(粘着シートの開放保存後の湿気硬化性成分の維持率)
剥離ライナーとして、片面が剥離処理された剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル株式会社製)を用意した。この剥離ライナーの剥離面に、各例に係る粘着剤組成物を塗布し、80℃で5分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ300μmの粘着剤層を形成した。上記の剥離ライナー上に形成された粘着剤層の他面を、紙製剥離フィルム(王子エフテックス株式会社製)の剥離面に貼り合わせて、両面が剥離ライナーにより保護された粘着シートを作製した。この粘着シート(粘着剤層)について、以下のようにして、開放保存後の湿気硬化性成分の維持率を算出した。その結果を表3に示す。
【0110】
まず、作製直後の粘着シート(粘着剤層)の赤外分光測定(Varian社製の3100 FT-IRを使用)から得られるイソシアネート基由来の2275cm-1における吸光度とベースポリマーのメチレン基由来の2250-2255cm-1における吸光度の比を算出した。ここで、吸光度比とは、上記メチレン基由来の吸光度に対する上記イソシアネート基由来の吸光度の比(イソシアネート基由来の吸光度/メチレン基由来の吸光度)である。また、25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シート(粘着剤層)の赤外分光測定から得られる吸光度比を同様にして算出し、これらの変化率から、湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率を算出した。具体的には、以下の関係式から算出した。
湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率(%)={(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シートの吸光度比)/(作製直後の粘着シートの吸光度比)}×100
【0111】
(粘着シートの防湿保存後の湿気硬化性成分の維持率)
上記と同様にして作製された、厚さ300μmの粘着剤層の両面が2枚の剥離ライナーにより保護されている粘着シートを用意した。
この粘着シートを、アルミニウム製の防湿袋に乾燥剤(シリカゲル)とともに7日間保管した後、これを開封した直後の粘着シート(粘着剤層)中の湿気硬化性成分の維持率を、上記同様の手法により算出した。その結果を表3に示す。
【0112】
(湿潤面に対する180度ピール接着力の測定)
剥離ライナーとして、片面が剥離処理された剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル株式会社製)を用意した。この剥離ライナーの剥離面に、各例に係る粘着剤組成物の溶解液を塗布し、80℃で10分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ300μmの粘着剤層を形成した。上記の剥離ライナー上に形成された粘着剤層の他面を、厚さ25μmの基材フィルムに貼り合わせて、片面粘着シートを作製した。基材フィルムとしては、東レ株式会社製のPETフィルム(樹脂フィルム)、商品名「ルミラーS-10」を使用した。このようにして作製した粘着シートを幅20mm、長さ10cmになるように切断し、後述する接着力測定を行った。なお、作製した粘着シートは、湿気硬化性成分の未反応状態を維持するために、接着力測定の前まで、乾燥剤(シリカゲル)とともにアルミニウム製の防湿袋に封入しておいた。
【0113】
日本テストパネル株式会社製のスレート標準板、製品名「JIS A5430(FB)」(以下、スレート板ともいう)で、厚み3mm、幅30mm、長さ125mmのサイズのものを用意した。このスレート板の光沢面を使用した。このスレート板を130℃で1時間乾燥させ、この時点でのスレート板の重量を測定し、「水中に浸漬前のスレート板の重量」と規定した。
つづいて、用意したスレート板を水中に浸漬させた状態で、超音波脱気装置(ヤマト科学株式会社製のBRANSON3510)で1時間脱気し、1晩静置して、水中から取り出した。この時点でのスレート板の重量を測定し、「水中に浸漬、脱気後のスレート板の重量」と規定した。
測定した「水中に浸漬前のスレート板の重量」及び「水中に浸漬、脱気後のスレート板の重量」に基づき、以下の式よりスレート板の含水率を算出したところ、25%(重量%)であった。
スレート板の含水率(重量%)=〔{(水中に浸漬、脱気後のスレート板の重量)-(水中に浸漬前のスレート板の重量)}/(水中に浸漬前のスレート板の重量)〕×100
【0114】
つづいて、含水率25%のスレート板の表面(湿潤面)に、作製した粘着シート(試験片)を2kgローラーで1往復して圧着して貼付した直後に、水中に浸漬し、23℃で24時間静置した。その後、粘着シート(試験片)が貼着されたスレート板を水中から取り出し、引張試験機(ミネベア株式会社製のテクノグラフTG-1kN)を用いて、スレート板に対する、剥離温度23℃、剥離速度300mm/minでの180度ピール接着力(N/20mm)を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表1~3に示されるように、含水率が本発明規定の範囲内であり、かつ、ベースポリマーが湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーからなる実施例1~7の粘着剤組成物及び粘着シートは、保存安定性が高く、また、湿潤面に対して高い接着力を発現した。
一方、含水率が本発明規定の範囲を超え、かつ、ベースポリマーが湿気硬化性成分と反応する官能基を有するポリマーからなる比較例1~2の粘着剤組成物及び粘着シートは、保存安定性が低く、また、湿潤面に対する接着力も低いものであった。
含水率が高い材料ほどポリマー内に水が保持されるため拡散しにくく、ポリマー外へ放出されにくいため、ポリマー内での湿気硬化性成分の水との反応が促進されうると考えられる。また、湿気硬化性成分と反応しうる極性官能基は親水性が高いことから、それ自身が湿気硬化性成分と反応するだけでなく、水との反応を促進させる一面もあるため、保存安定性の観点から不適切であると考えられる。