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特許7168319資料タンクへの小動物侵入防止方法及び飼料タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】資料タンクへの小動物侵入防止方法及び飼料タンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/26 20060101AFI20221101BHJP
   A01F 25/14 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B65D88/26 Z
A01F25/14 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017248656
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019112121
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】503193568
【氏名又は名称】JA東日本くみあい飼料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】平位 修一
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-239243(JP,A)
【文献】実開昭58-091583(JP,U)
【文献】実開昭54-159473(JP,U)
【文献】実開昭52-124849(JP,U)
【文献】特開2001-261093(JP,A)
【文献】実開昭55-069093(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/26
A01F 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜産農場に設置されている飼料タンクへ配送車から飼料を投入する際に、キャップが開いた投入口から、野鳥を含む小動物が、飼料タンク(1)内に侵入するのを防止する小動物侵入防止方法であって、
該飼料タンクの投入口(31)の中の下方に、侵入防止対象の小動物である雀などの野生の小鳥や鼠は通過困難で、投入される飼料(F)は容易に通過可能な網目開口寸法の網からなる籠状のフィルター(6)を設け、
前記網の網目開口の寸法が、短辺の寸法が10mm~25mmであり、長辺の寸法が15mm~100mmであり(短辺の寸法と長辺の寸法が同じであるものを含む)、
前記フィルター(6)を、前記飼料タンク(1)の投入口(31)を開閉する投入口キャップ(5)の開閉を妨げることのないように構成したことを特徴とする、養鶏農家における鳥インフルエンザ対策を含む、家畜への病原菌の伝搬を排除する対策としての小動物侵入防止方法。
【請求項2】
内部の飼料貯蔵スペー(36)、飼料投入口(31)、及び、飼料払い出し口(39)を有するタンク本体(3)と、
前記飼料投入口(31)に配設された飼料タンク投入口フィルター(6)と、を備える飼料タンクであって、
前記フィルター(6)が、網籠(60)と、該網籠を飼料タンク(1)の投入口(31)の中の下方に係止させる係止部材(61)と、を具備し、
前記網籠の網目開口寸法が、侵入防止対象の小動物である雀などの野生の小鳥や鼠は通過困難で、投入される飼料(F)は容易に通過可能な寸法であり、
前記網籠の網目開口の寸法が、短辺の寸法が10mm~25mmであり、長辺の寸法が15mm~100mmであり(短辺の寸法と長辺の寸法が同じであるものを含む)、
前記フィルター(6)の上部の径は、前記投入口(31)の内径寸法に対応しており、
前記フィルター(6)が、前記飼料タンク(1)の投入口(31)を開閉する投入口キャップ(5)の開閉を妨げることのないように構成されており、
畜産農場に設置されている飼料タンクへ配送車から飼料を投入する際に、キャップが開いた投入口から、野鳥を含む小動物が、飼料タンク(1)内に侵入するのを防止し、養鶏農家における鳥インフルエンザ対策を含む、家畜への病原菌の伝搬を排除する対策が施されていることを特徴とする飼料タンク(1)。
【請求項3】
前記フィルター(6)が上に延び出るフック(61)を有し、該フックの上部は外側に張り出すように曲がって上端部は内側に折り返されたフック部(61b)となっており、該フック部(61b)を、前記飼料タンク(1) の投入口(31)に引っ掛けることにより、前記フィルター(6)が前記タンク投入口(31)の中の下方にセットされていることを特徴とする請求項2記載の飼料タンク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配合飼料や飼料原料の配送車から飼料タンクへ飼料を投入する際に、キャップが開いた投入口から、野鳥などの小動物や異物が、飼料タンク内に入るのを防ぐことのできるフィルター等に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の図1図2などには、穀物やその加工品等からなる被貯蔵物を貯蔵するためのサイロであって、サイロ本体2上部の未充填空間3内を換気するための換気手段10を備えるものが開示されている。同換気手段10は、未充填空間3内へ外気を導入するための吸気ダクト11を有している。そして、この吸気ダクト11の途中部には、サイロ本体2内へのゴミや埃、ネズミや昆虫等の侵入を規制するためのフィルター17が設けられている(段落0021)。ただし、同サイロへの穀物等の投入口6には、ゴミ等の侵入を規制するフィルターは設けられておらず、その必要性についての言及もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-261093
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、配合飼料や飼料原料(以下、両者合わせて単に飼料ということもある)の配送車から飼料タンクへ飼料を投入する際に、今まで以上に投入時間をかけることなく、飼料投入口から、野鳥などの小動物や異物が、飼料タンク内に入るのを防ぐことのできるフィルター等を提供することを目的とする。また、そのようなフィルターにより、飼料タンク内に野鳥やネズミなどの小動物が侵入するのを防ぎ、飼料の盗み食いや汚染、あるいは家畜への病原菌の伝播を排除して、衛生的な飼料を給与することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定するものではない。
【0006】
本発明の飼料タンク投入口フィルター(6)は、 網籠(60)と、該網籠を飼料タンク(1)の投入口(31)に係止させる係止部材(61)と、を備える飼料タンク投入口フィルター(6)であって、 前記網籠の網目開口寸法が、侵入防止対象の小動物は通過困難で、投入される飼料(F)は容易に通過可能な寸法であり、 前記フィルター(6)の上部の径は、前記投入口(31)の内径寸法に対応していることを特徴とする。
【0007】
上記網籠の網目開口形状は、典型的には矩形である。矩形の短辺の寸法の好適な範囲は、10mm~25mmであり、長辺の寸法の好適な範囲は、15mm~100mmである。一例として、正方形の開口寸法19mm(線間20mm、線径1mm)、あるいは、長方形の開口寸法「短辺10mm×長辺100mm」や、「短辺20mm×長辺40mm」などである。この場合における侵入防止対象の小動物は、例えば、雀などの野生の小鳥、あるいは鼠である。特に、野生の小鳥の飼料タンクへの侵入防止は、養鶏農家における鳥インフルエンザ対策として、近年きわめて重要な事項である。牛や豚の飼料タンクにおいても、飼料の盗み食いや汚染、あるいは家畜への病原菌の伝播を排除して、衛生的な飼料を給与することが重要であることはもちろんである。
配合飼料は、飼料原料であるトウモロコシ粉、飼料用米、大豆油粕などの混合物が主体である。さらに、牛・豚用には、それらの圧ぺんやペレットを混合して用いる場合もある。具体的な飼料の状態・粒度に応じて、実験を行うことにより、網籠の網目開口の形状や寸法を設定できる。なお、上述のとおり、本明細書中で「飼料」という文言は、特に断らない限り、配合飼料及び飼料原料の双方を意味するものであり、前者に限った意味に用いるものではない。
【0008】
投入口(31)の内径寸法の例は、400~800mm程度である。投入口(31)の内径とフィルター(6)との間の隙間は、10mm以下であることが好ましい。フィルター(6)の網籠(60)の深さは、例えば、300~400mmである。籠の深さは、図1を参照しつつ後述するように、飼料配送車のスクリューコンベア(11)先端のホース(13)の飼料投入口(31)への差し入れ寸法や、ホース(13)から下に自由落下する飼料の落下代を見込んだ寸法となる。具体的には、実際の飼料を、具体的に選定した網目開口寸法の網籠を用いて、望ましい速度で連続投入する実験を行って決定できる。
【0009】
網の素線は、径1mm~5mm程度のステンレス鋼線が好ましい。網は、いわゆる溶接金網が好ましい。溶接金網は、素線を四角マス目状に配列し、各交点をスポット溶接などで接合したものである。溶接金網は、編み金網に比べて、飼料などの粉粒体が通過しやすい。また、強度が高く、ピッチが変わらない(編み金網は線径や網方によっては、網目が広がることもあり得る)。なお、網籠の側面は、全てが網である必要はない(孔の開いていない板でもよい)。網の材質は、通常金属であるが、それに限定されるものではない。
【0010】
本発明の飼料タンク(1)は、 内部の飼料貯蔵スペース(36)、飼料投入口(31)、及び、飼料払い出し口(39)を有するタンク本体(3)と、 前記飼料投入口(31)に配設された請求項1記載の飼料タンク投入口フィルター(6)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の飼料タンクへの小動物の侵入防止方法は、 飼料タンクの投入口(31)に、侵入防止対象の小動物は通過困難で、投入される飼料(F)は容易に通過可能な網目開口寸法の網からなる籠状のフィルター(6)を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、今まで以上に投入時間をかけることなく(投入速度を落とすことなく)、野鳥などの小動物や異物が、飼料タンクの投入口から飼料タンク内に入るのを防ぐことができる。これにより、飼料の盗み食いや汚染、あるいは家畜への病原菌の伝播を排除して、衛生的な飼料を給与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る配合飼料タンク1の構成を示す模式的な図である。
図2図1の装置における投入口フィルター6を模式的に示す図であって、(A)は斜め上から見た斜視図であり、(B)は鳥瞰図的な平面図である。
図3】投入口フィルターの形状の変形例を示す模式的側面図である。
【符号の説明】
【0014】
F;飼料、1;飼料タンク(バラタンク)、
11;スクリューコンベア、13;ホース
3; タンク本体、31;投入口、33;口縁リング、35;天井部、
36;飼料貯蔵スペース(内部)、37;胴部、38;ロート部、39;飼料払い出し口
5;投入口キャップ
6;飼料タンク投入口フィルター、
60;網籠、61;係止部材(フック)、61b;フック部、63;上縁リング、65;縦条
67;側網、69;下縁リング、71;底条、73;底網、
8;支柱
106;フィルター、106b;上辺、106f;側面、106j;下辺、
206;フィルター、206b;上辺、206f;側面、206j;底面
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ここに記載した実施の形態は、一例であって、本発明の範囲を定めるものではない。
まず、図1を参照しながら、本発明の実施の形態に係る飼料タンク1の構成を説明する。飼料タンク1は、一般的に農場などに設置されている略円筒状のものである。例えば5トン容量のもので、高さ5m程度、径2m程度の寸法である。この程度の大きさのものは、通常、FRP製又は鉄製である。
【0016】
飼料タンク1の本体3は、上から下に、下方向に広がる天井部35、その下の略円筒状の胴部37、その下のロート部38などを有している。飼料タンク本体3の内部36は、粒・粉状のバラ飼料Fの貯蔵スペースとなっている。タンク本体3は、支柱8で地面あるいは土台上に支えられている。タンク本体3の上部には飼料投入口31が設けられており、下部には飼料払い出し口39が設けられている。自動化された畜産農場の場合、飼料払い出し口39には、飼料の搬送コンベア(図示されず)が接続されている。
【0017】
投入口31は、図1の上部に示すように、円環状の口縁リング33の中央の開口として、設けられている。投入口31の内径は、例えば、400~800mmである。投入口31は、スイング開閉式の投入口キャップ5で、開閉可能になっている。投入口31から、タンク1内に飼料Fを投入する際は、飼料配送専用車(バルク車ともいう、図示されず)から、車載のスクリューコンベア11で投入口31の上まで飼料を運び、コンベア11の先から、ホース13を介してタンク内36に飼料Fを落下させる。
【0018】
次に、図2も参照しつつ、本発明の飼料タンク1における特徴的構成である投入口フィルター6について説明する。図2は、図1の装置における投入口フィルター6を模式的に示す図であって、(A)は斜め上から見た斜視図であり、(B)は鳥瞰図的な平面図である。
【0019】
この実施形態(一例)の投入口フィルター6は、図2(A)に示すように、全体が有底円筒状の網籠60を主体に構成されている。フィルター6は、側面を一周円く取り巻く側網67と、この側網67の底をカバーする底網73を有する。このフィルター6では、網67・73は、いずれも、ステンレス鋼製の太さ1mmの線を、四角マス目ピッチ20mmで配列し、各交点をスポット溶接などで接合したもの(いわゆる溶接金網)である。溶接金網は、編み金網に比べて、強度が高く、ピッチが変わらない(編み金網は網目が広がることもありうる)。また、飼料などの粉粒体が通過しやすい。なお、側網67は、全てが金網である必要は必ずしもない。
【0020】
側網67の上辺には、上縁リング63が溶接されて補強されている。上縁リング63は、ステンレス鋼の幅狭帯板や棒などを用いることができる。側網67の外面の円周上4か所には、縦方向に縦条65が沿わされている(縦条65は六ケ所などであってもよい)。縦条65は、この例では、ステンレス鋼の幅狭帯板である。縦条65上端と上縁リング63との間は溶接されている。
【0021】
側網67の下辺には、下縁リング69が溶接されて補強されている。下縁リング69は、ステンレス鋼の幅狭帯板や棒などを用いることができる。下縁リング69は、底網73の外周に溶接接続されている。底網73の底面には、十字型に、底条71が沿わされている。底条71は、この例では、ステンレス鋼の幅狭帯板である。底条71と下縁リング69との間は溶接接続されている。
【0022】
縦条65の上部は、上に延び出て、フック61となっている。フック61の上部は、やや外側に張り出すように曲がっている。フック61の上端部は、内側に折り返されたフック部61bとなっている。このフック部61bは、図1に示すように、タンク1の投入口31の口縁リング33に引っ掛けることができ、これにより、投入口フィルター6を、タンク投入口31の中の下方にセットできる。すなわち、フィルター6の本体(網籠)60は、ほとんどの部分が、タンク本体3の内部36に存在している。そして、フィルター6が存在しても、投入口キャップ5の開閉は妨げられることはない。
【0023】
投入口フィルター6の外径は、投入口31の口縁リング33の内径よりも10mm以下である。これにより、フィルター6を投入口31に設置しやすいとともに、投入口フィルター6の外径と、投入口31の口縁リング33との間の隙間からの、小動物の侵入を防止できる。なお、小動物等のタンクへの侵入は、飼料投入時に投入口のキャップが開いた状態ばかりでなく、キャップが閉まっている状態でもキャップと投入口の隙間から侵入することがありうるが、本実施形態のフィルターは、その両方を防ぐことができる。投入口フィルター6の深さは、飼料の連続投入に支障のない寸法である。後述の実験例では、350mmである。
【0024】
ここで、実際にフィルター6を通して飼料を投入する実験の例を説明する。
フィルター6の緒元;径500mm、深さ350mm、網素線径1.6mm、素線ピッチ20mm
投入飼料;商品名「パワーチックZK前期」、飼料形状クランブル、通過篩隙間20mm
飼料投入速度;1000リットル/分
【0025】
この条件で、飼料が問題なく通過することを確認した。すなわち、図1に示すように、飼料配送専用車(図示されず)のスクリューコンベア11の先から、ホース13を介して、投入口31からフィルター6内に、飼料F1を投入すると、この飼料F1は、底網73を通過してスムーズに下に落ち(飼料F2)、タンク内部に貯まる(F3)。籠の深さは、飼料配送車のスクリューコンベア11先端のホース13の飼料投入口31への差し入れ寸法H1、及び、ホース13から下に側網67まで自由落下する飼料の落下代H2を見込んだ寸法である。
【0026】
次に、図3を参照しつつ、投入口フィルターの形状の変形例を説明する。図3は、模式的側面図である。
図3(A)のフィルター106は、上辺106bの方が下辺106jよりも大きい円錐台状である。側面106fは、下窄まりの円錐面である。
図3(B)のフィルター206は、側面206fと底面206jが連続した曲面である。なお、上辺206bは平面上にある。
図3(C)のフィルター306は、下辺306jの方が上辺306bよりも大きい円錐台状である。側面306fは、下広がりの円錐面である。
図3(D)のフィルター406は、上辺406bが水平でなく斜めになっている。飼料タンクへの飼料投入口を、タンク天井部の端の少し傾斜した部位に設けるような場合に適したフィルター形状である。
図3(E)のフィルター506は、側面506fと底面506jが連続した曲面である。そして、図3(D)同様に、上辺506bが水平でなく斜めになっている。
【0027】
本発明においては、既に述べたものの他、以下のような改変・追加を行うことができる。
図2のフィルター6では、底網73の底面に、十字型に底条71を設けて、側網67を補強してあるが、側網自体に十分強度がある場合には、この底条71は省略することもできる。その方が、飼料の通過性が良い。図3の(B)や(E)のように、底が曲面のものは、底網の強度が高いので、底条や下縁リングによる補強を省略しやすい。
図1
図2
図3