(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】熱膨張性耐火シート及び該熱膨張性耐火シートのバッテリーにおける使用
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20221101BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221101BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20221101BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20221101BHJP
H01M 50/143 20210101ALI20221101BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
C08J5/18
C08J5/04 CEZ
H01M10/658
H01M50/143
(21)【出願番号】P 2018003226
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2017003911
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 彰人
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-068720(JP,A)
【文献】特開2002-181246(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066645(WO,A1)
【文献】特開2014-179392(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29B 11/16;
15/08-15/14
C08J 5/00-5/24
H01M 50/10
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂と、熱膨張性黒鉛とを含有する熱膨張性耐火シート
と、
基材(但し、フッ素系樹脂又は延伸ポリエステル樹脂からなるものを除く)とを積層したバッテリー用耐火多層シートであり、
前記熱膨張性黒鉛を5質量%以上含み、前記熱膨張性耐火シートの厚みが1200μm以下であり、かつ、前記熱膨張性耐火シートの厚みT(μm)と前記熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比Rが、T×R≧800の関係を満たすことを特徴とする
バッテリー用耐火多層シート。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火シートにおいて無機充填剤をさらに含有する請求項1に記載の
バッテリー用耐火多層シート。
【請求項3】
前記マトリックス樹脂が、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムからなる群から選択される一種以上である請求項1又は2に記載の
バッテリー用耐火多層シート。
【請求項4】
前記マトリックス樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む請求項1~3のいずれかに記載の
バッテリー用耐火多層シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の
バッテリー用耐火多層シートからなるバッテリー用耐火材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の
バッテリー用耐火多層シートの、バッテリーにおける使用。
【請求項7】
前記バッテリーが電子機器用のバッテリーである請求項6に記載の使用。
【請求項8】
筐体と、筐体に収容された複数のバッテリーセルと、バッテリーセルの表面に設けられ
た熱膨張性耐火シートとを備えたバッテリー
であって、隣り合うバッテリーモジュールの間に熱膨張性耐火シートが配置されており、
マトリックス樹脂と、熱膨張性黒鉛とを含有する熱膨張性耐火シートであり、
前記熱膨張性耐火シートは、前記熱膨張性黒鉛を5質量%以上含み、前記熱膨張性耐火シートの厚みが1200μm以下であり、かつ、前記熱膨張性耐火シートの厚みT(μm)と前記熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比Rが、T×R≧800の関係を満たすことを特徴とする、バッテリー。
【請求項9】
電子機器用のバッテリーである請求項8に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性耐火シート及び該熱膨張性耐火シートのバッテリーにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に代表される各種バッテリーでは、高温になると発火、発煙等の災害が生じることがある。こうした災害を最小限に抑えるために、異常高温になったバッテリーの熱を周囲のバッテリー及びバッテリーを収容した筐体に伝え難くする対策が重要である。
【0003】
バッテリーから出火した際の被害を抑える為に、バッテリーの周辺に熱膨張性耐火材を用いる場合がある。例えば特許文献1は、電池セルの外側の一部が耐火性コーティングで覆われている電池セルについて開示している。耐火性コーティングはアブレーティブコーティング、膨張性コーティングまたは吸熱性コーティングであり、市販のポリウレタン系コーティングが例示として挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、モバイル端末等の小型電子機器内では、バッテリーの空間は非常に限られているため、熱膨張性耐火材の薄化が求められている。しかしながら、熱膨張性耐火材を薄化すると、強度上の問題が生じ、熱膨張性耐火材の強度を保ちながら薄化することは困難であった。強度を保つために、熱膨張性耐火材を構成するマトリックス樹脂の含有量を、相対的に増加させることが考えられる。しかし、マトリックス樹脂の含有量を相対的に増加させると、十分な耐火性を得ることができない。
【0006】
本発明の目的は、優れた耐火性を有するとともに、薄くても強度に優れた熱膨張耐火性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の以下の態様が提供される。
[1]マトリックス樹脂と、熱膨張性黒鉛とを含有する熱膨張性耐火シートであって、 前記熱膨張性黒鉛を5質量%以上含み、前記熱膨張性耐火シートの厚みが1200μm以下であり、かつ、前記熱膨張性耐火シートの厚みT(μm)と前記熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比Rが、T×R≧800の関係を満たすことを特徴とする熱膨張性耐火シート。
[2]無機充填剤をさらに含有する項1に記載の熱膨張性耐火シート。
[3]マトリックス樹脂が、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びゴムからなる群から選択される一種以上である項1又は2に記載の熱膨張性耐火シート。
[4]前記マトリックス樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む項1~3のいずれかに記載の熱膨張性耐火シート。
[5]項1~4のいずれかに記載の熱膨張性耐火シートからなるバッテリー用耐火材。
[6]項1~4のいずれかに記載の熱膨張性耐火シートの、バッテリーにおける使用。
[7]前記バッテリーが電子機器用のバッテリーである項6に記載の使用。
[8]バッテリーセルと、バッテリーセルの表面に設けられた項1~4のいずれかに記載の熱膨張性耐火シートとを備えたバッテリー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた耐火性を有するとともに、薄くても強度に優れた熱膨張耐火性シートを提供することができる。この熱膨張性耐火シートは、薄くても十分な強度と十分な耐火性を有するため、小型電子機器内のバッテリーにも優れた耐火性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の熱膨張性耐火シートに基材が積層された耐火性多層シートを示す略断面図。
【
図2】本発明の熱膨張性耐火シートを施工したバッテリーモジュールの一例の略縦断面図。
【
図3】
図2のバッテリーモジュールを備えたバッテリーパックの略縦断面図。
【
図4】スマートフォンのバッテリーに本発明の熱膨張性耐火シートを施工した例の略平面図。
【
図5】スマートフォンのバッテリーに本発明の熱膨張性耐火シートを施工した別例の略平面図。
【
図6】スマートフォンのバッテリーに本発明の熱膨張性耐火シートを施工した別例の略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を熱膨張性耐火シートに具体化した一実施形態について説明する。
【0011】
本発明の熱膨張性耐火シートを構成する樹脂組成物は、マトリックス樹脂及び熱膨張性黒鉛を含有する。
【0012】
[マトリックス樹脂]
マトリックス樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0014】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
【0015】
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0016】
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0017】
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0018】
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、成形加工性の点では、PVC、EVAが好ましい。柔軟でゴム的性質を得るためには、ブチルゴム等の非加硫ゴムおよびポリオレフィン樹脂が好ましい。耐火性の点では、PVCが好ましい。樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
[熱膨張性黒鉛]
熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を無機酸と強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。熱膨張性黒鉛は、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0020】
熱膨張性黒鉛は任意選択で中和処理されてもよい。つまり、上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛を、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和する。
【0021】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。
【0022】
本発明の熱膨張性耐火シートにおける熱膨張性黒鉛の含有量は特に限定されないが、5質量%以上であり、15質量%以上であることがより好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量が5質量%以上であると、火の通過を阻止するのに適した膨張が得られる。熱膨張性黒鉛の含有量の上限値は特に限定されないが、機械的強度の観点から、50質量%以下であることが好ましい。
【0023】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20~200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより値が小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより値が大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。
【0024】
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、特に限定されないが、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比の上限は特に限定されないが、熱膨張性黒鉛の割れ防止の観点から、1000以下であることが好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が2以上であることにより、樹脂組成物の高い膨張性と燃焼後の高い残渣硬さに寄与する。
【0025】
熱膨張性黒鉛片の最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値をアスペクト比とする。そして、10個以上の膨張黒鉛片につきアスペクト比を測定し、その平均値を平均アスペクト比とする。熱膨張性黒鉛の長径および短径は、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定することができる。
【0026】
[無機充填剤]
本発明の熱膨張性耐火シートを構成する樹脂組成物は、無機充填剤をさらに含むことができる。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;難燃剤としての無機リン酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0027】
無機充填剤の粒径としては、0.5~100μmが好ましく、より好ましくは1~50μmである。無機充填剤は、含有量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満では二次凝集が起こり分散性が悪くなる場合があるため、0.5μm以上であることが好ましい。含有量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、粒径が100μmを超えると、成形体の表面性や樹脂組成物の力学的性能が低下する場合があるため、100μm以下であることが望ましい。
【0028】
上記無機充填剤の市販品では、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「H-42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「H-31」(昭和電工社製);炭酸カルシウムとして、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「BF300」(白石カルシウム社製)等が挙げられる。また、粒径の大きい無機充填剤と粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせることによって、さらに高充填化が可能となる。
【0029】
熱膨張性耐火シートにおける無機充填剤の含有量は特に限定されないが、1~50重量%であることが好ましい。
【0030】
また、熱膨張性耐火シートにおける熱膨張性黒鉛及び無機充填剤の合計含有量は、5~80重量%であることが好ましい。燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得る点で5重量%以上であることが好ましく、機械的物性を維持する点で80重量%以下であることが好ましい。
【0031】
[リン化合物]
さらに、本発明の熱膨張性耐火シートを構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含むことができる。リン化合物は難燃剤として作用する。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
【0032】
【0033】
化学式(1)中、R1およびR3は、同一又は異なって、水素、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6~16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6~16のアリール基、または、炭素数6~16のアリールオキシ基を示す。
【0034】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
【0035】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチル-ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t-ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0036】
前記リン化合物の添加量は、少ないと難燃性が低下し、多くなると成型性が低下する傾向があるため、熱膨張性耐火シート中に1~50質量%、より好ましくは5~30質量%であることが好ましい。
【0037】
[可塑剤]
本発明の熱膨張性耐火シートを構成する樹脂組成物は、可塑剤をさらに含有することができる。
【0038】
前記可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤;アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤;トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤;鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0039】
前記可塑剤の含有量は、少ないと押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため可塑剤の含有量は限定されないが、熱膨張性耐火シート中に0~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましい。一実施形態では、熱膨張性耐火シート中の可塑剤の含有量0~20質量%である。さらなる実施形態では、熱膨張性耐火シート中の可塑剤の含有量5~20質量%である。
【0040】
[その他成分]
本発明の熱膨張性耐火シートに含有することができる上記その他の成分の例としては、その物性を損なわない範囲で、更に、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が挙げられる。
【0041】
本発明の熱膨張性耐火シートの厚みは特に限定されないが、1200μm以下であることが好ましく、60~1000μmがより好ましい。なお、本明細書でいう熱膨張性耐火シートの「厚み」とは、熱膨張性耐火シートの幅方向3点の平均厚みを指す。
【0042】
本発明者らは、熱膨張性耐火シートの厚みをT(μm)、熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比をRとしたときに、T×R≧800となる関係を満たすことにより熱膨張性耐火シートは厚みが薄くても十分な強度を有することを見出した。T×R≧1000であることがより好ましい。
【0043】
熱膨張性耐火シートの破断点伸度は特に限定されないが、熱膨張性耐火シートの強度の点で、70%以上であることが好ましい。
【0044】
また、熱膨張性耐火シートは、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。600℃で30分間加熱した後の膨張倍率が3~50倍のものであれば好ましく、15~40倍のものであればより好ましく、20~35のものであればさらに好ましい。膨張倍率が3倍以上であると、膨張倍率がマトリックス成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。なお、膨張倍率は熱膨張性耐火シートの試験片の(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)として算出される。
【0045】
熱膨張性耐火シートは、上記のマトリックス成分、熱膨張性黒鉛、及び任意選択のその他の成分を単軸押出機、二軸押出機、射出成型機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の装置を用いて混合した耐火性樹脂組成物を、塗工又は成形することにより製造することができる。成形にはプレス成形、押出し成形、射出成形が含まれる。塗工又は成形は当該技術分野において周知である。
【0046】
残渣硬さは、加熱後の熱膨張性耐火シートを圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、圧子で圧縮することにより測定することができる。残渣硬さは特に限定されないが、耐火性の点で、0.2kgf/cm2以上であることが好ましい。
【0047】
図1に示すように、本発明の熱膨張性耐火シートは、基材とさらに積層又はラミネートされてもよい。基材は熱膨張性耐火シートの片面又は両面に積層される。
図1は、本発明の熱膨張性耐火シート4と基材8とが積層された耐火多層シート1の略断面図である。
【0048】
基材は、可燃層であっても、準不燃層または不燃層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~1mmである。
【0049】
可燃層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、天然樹脂、合成樹脂等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0050】
準不燃層または不燃層に使用される素材としては、例えば、金属、無機材等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
【0051】
布材としては、例えば、木綿、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の織布、不織布からなるもの等を挙げることができる。
【0052】
紙材としては、例えば、木材等の植物から取り出した繊維状物質、化学繊維を水等の分散媒中に分散させ、これを濾過して均一層を形成してから乾燥させた紙等が挙げられる。
【0053】
紙に対して、塗料、撥水剤等を塗布して得られる加工紙、波状の紙をライナーと呼ばれる平面の紙により挟んで接着した段ボール等が挙げられる。
【0054】
木材としては、例えば、天然木材から得られる木素材に限られず、木素材を含む集成木材、積層木材、積層木板等が挙げられる。
【0055】
天然樹脂としては、例えば、セルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、プルラン、ペクチン、カラゲナン、タンパク質、タンニン、リグニン、ロジン酸等を主成分とする高分子、天然ゴム等が挙げられる。
【0056】
合成樹脂としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレンゴム、塩化ブチルゴム等の合成ゴム、
ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、
ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0057】
金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、錫、鉛、錫鉛合金、銅等が挙げられる。
【0058】
また金属として金属箔を使用することが好ましく、前記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、銅箔等が挙げられる。
【0059】
無機材としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。無機繊維層は、前記無機繊維を用いた無機繊維クロスを使用することが好ましい。また無機繊維層に使用する無機繊維は、金属箔をラミネートしたものを使用することが好ましい。
【0060】
金属箔ラミネート無機繊維の具体例としては、例えば、アルミニウム箔ラミネートガラスクロス、銅箔ラミネートガラスクロス等がさらに好ましい。
【0061】
一実施形態では、基材が不織布である。この場合、破断防止などの膨張材保護の点が優れている。
【0062】
本明細書において、「バッテリー」とは、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池を意味する。本明細書において、「バッテリー」は「電池」と互換的に使用される。
【0063】
上記リチウムイオン電池は、セルの形状により、円筒型、角型、ラミネート型に分類される。
【0064】
本明細書において、「バッテリーセル」とは、正極材、負極材、セパレータ、正極タブ又は正極端子、負極タブ又は負極端子等が外装部材に収容されたバッテリーの構成単位を指す。
【0065】
バッテリーセルが円筒型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極タブ、負極タブ、絶縁材、ガス排出弁、ガスケット、正極キャップ等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。
【0066】
バッテリーセルが角型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、ガス排出弁等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。
【0067】
バッテリーセルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極タブ、負極タブ、等が外装フィルムに収容されているバッテリーの構成単位を指す。外装フィルムとしては例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されたアルミニウムフィルム等が挙げられる。
【0068】
本明細書において、「バッテリーモジュール」とは複数のバッテリーセルを筐体に収容したバッテリーの構成単位を指し、「バッテリーパック」とは複数のバッテリーモジュールを筐体に収容したものを指し、バッテリーモジュール、バッテリーパック及びバッテリーの内部には、バッテリーセルの他に、バッテリーセルと電気的に接続される電気接続ケーブル等必要な部材が必要に応じて使用される。
【0069】
図2は、
図1の熱膨張性耐火シート4を施工したバッテリーモジュール1の例の略縦断面図である。
【0070】
バッテリーモジュール1の筐体2内には複数のバッテリーセル3(図では3個を図示)が互いに離間して垂直方向に延在するように並べて収容されており、隣り合うバッテリーセル3の間には、本発明の熱膨張性耐火シート4が配置されている。各熱膨張性耐火シート4はバッテリーセル3の一面に取り付けられている。
【0071】
一つのバッテリーセル3の表面は、通常、PETフィルムが積層されたアルミニウムシート又は円筒形状等の金属等で形成されている。バッテリーセル3の少なくとも一面(例えば片面又は対をなす両面)の一部又は全部に熱膨張性耐火シート4を設置する方法としては、例えば、熱膨張性耐火シート4を粘着材を介して又は熱膨張性耐火シート4の自己粘着性により一つのバッテリーセル3の表面に貼り付けて固定する方法や、バッテリーセル3と熱膨張性耐火シート4とを積層した後で枠を用いて固定する方法等が挙げられる。
【0072】
このため、熱膨張性耐火シート4はバッテリーの通常の使用時には放熱性に優れ、バッテリーセル3の作動により生じた熱を良好に放散することができる。また、熱膨張性耐火シート4は、異常発熱又は火災等により熱膨張性耐火シート4が加熱されると、比較的低温でも膨張を開始し、火や熱の流路となる空間を閉塞すると共に、隣り合うバッテリーセル3の間に断熱層を形成する。このため、あるバッテリーセル3から隣りのバッテリーセル3への熱伝達又は引火を防止又は抑制するか、又は遅延させることができ、バッテリーの安全性が確保される。
【0073】
熱膨張性耐火シート4の寸法は特に限定されず、バッテリーセル3の大きさ及びバッテリーモジュール1内の空間の大きさに応じて変更され得る。
【0074】
筐体2は例えば金属製又は樹脂成型品の筐体であるが、これに限定されない。バッテリーセル3及び熱膨張性耐火シート4は
図2では平板状の略直方体であり、互いに略平行に配置されている。筐体2内のバッテリーセル3及び熱膨張性耐火シート4の周囲には空間5が設けられ、また、バッテリーセル3と該バッテリーセル3に隣り合う熱膨張性耐火シート4との間にも空間6が設けられている。これらの空間5,6はバッテリーセル3の放熱のための空気の通路として作用する。例えばバッテリーセル3は作動時に加熱される場合があるが、かかる空間5,6を確保することによりバッテリーセル3をより早く放熱することができる。
【0075】
熱膨張性耐火シート4は断熱層として機能し、あるバッテリーセル3から隣りのバッテリーセル3へ熱伝達又は引火するのを防止するか又は遅延させることができ、バッテリーモジュール1の発火遅延性が向上し、安全性が確保される。
【0076】
図3は、
図2のバッテリーモジュール1を備えたバッテリーパック10の略縦断面図である。バッテリーパック10の筐体11内には複数のバッテリーモジュール1(図では2個を図示)が収容されている。筐体11は例えば金属製又は樹脂成型品の筐体であるが、これに限定されない。また、隣り合うバッテリーモジュール1の間には熱膨張性耐火シート4が配置されている。複数のバッテリーモジュール1が直列又は並列に配置され、円筒型バッテリーを構成する。
【0077】
異常発熱又は火災等により、熱膨張性耐火シート4が加熱されると、熱膨張性耐火シート4は膨張する。これにより、火や熱の流路となる空間を閉塞する。
【0078】
このような構成により、
図2のバッテリーパック10においても、バッテリーセル3の放熱用の空気の通路を確保しつつ、異常発熱又は火災等の高温時には熱膨張性耐火シート4が断熱材として作用することによりバッテリーモジュール1及びバッテリーパック10は発火遅延性を発揮でき、バッテリーパックの通常時の放熱性と、高温時の安全性とを兼ね備えることができる。なお、
図2及び3において、バッテリーセル3と熱膨張性耐火シート4とは、接触していても良いし、空間を介して隔てられていても良い。また、空間5,6が存在しなくても良い。
【0079】
本発明の熱膨張性耐火シートは、薄くても強度に優れ、十分な耐火性を有するため、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に収容されたバッテリーの耐火材として好適に用いることができる。
【0080】
図4~6はそれぞれ、スマートフォンのバッテリーに本発明の熱膨張性耐火シートを施工した例の平面図である。
図4はスマートフォン20の本体21から蓋22を外した状態である。スマートフォン20の本体21は略四角形の凹み22を有し、凹み22の縁には複数の孔23(図面において上下に1つずつ、左右に2つずつ)が設けられている。蓋22の裏側には、孔23と同じ数の突起(非図示)が、孔23と対応する位置に設けられており、蓋22を本体21に対して装着する場合に、孔23と突起が嵌合することにより、蓋22が本体21により堅固に装着される。凹み22の図面において中央下方には平面視略矩形の凹部24が設けられ、凹部24にはバッテリーセル25が収容されている。また、凹部24においてバッテリーセル25の4辺の周囲には熱膨張性耐火シート4が設けられている。
図4では一枚の熱膨張性耐火シート4がバッテリーセル25の4つの側面に巻き付けられているが、バッテリー25の一つの側面に対し、一枚の熱膨張性耐火シート4を貼り付けてもよい。この例では、バッテリーセル25の4辺の周囲に熱膨張性耐火シート4が設けられているため、熱膨張性耐火シート4はバッテリーセル25の周囲への熱伝達又は引火を防止又は抑制するか、又は遅延させることができる。
スマートフォン20の本体21にはカメラ26が内蔵されており、蓋22を本体21に装着した状態で撮影が行えるよう、蓋22におけるカメラ26に対応する部分にはカメラ26を挿通させる開口部27が設けられている。
図5は熱膨張性耐火シート4の別の配置を示す。この例では、バッテリーセル25の上面(スマートフォン20を静置したときに上側になる面)と下面に熱膨張性耐火シート4が設けられている。この場合でも、熱膨張性耐火シート4はバッテリーセル25の周囲への熱伝達又は引火を防止又は抑制するか、又は遅延させることができる。
図6は熱膨張性耐火シート4の別の配置を示す。この例では、バッテリー25の一つの側面のみに熱膨張性耐火シート4が設けられている。この場合でも、熱膨張性耐火シート4は、バッテリーセル25と、カメラ26及びそれ以外の本体21の内部の電子部品との間の障壁を形成し、バッテリーセル25の周囲への熱伝達又は引火を防止又は抑制するか、又は遅延させることができる。
図4~6以外にも、熱膨張性耐火シート4は接続端子の部分を除くバッテリーセル25の全面を覆ってもよいし、他の配置をとってもよい。
また、電子機器に収容されたバッテリーの耐火材の他にも、本発明の熱膨張性耐火シートは、各種バッテリーの耐火材として用いることができる。
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0082】
(実施例1~6、比較例1~3)
表1に示したマトリックス樹脂、熱膨張性黒鉛、難燃剤及び可塑剤を含有する樹脂組成物を、一軸押出機に供給し、150℃で押出成形し、実施例1~6、比較例1~3の熱膨張性耐火シートを得た。各成分は以下のものを使用した。
【0083】
EVA樹脂 製品名 エバフレックスEV460、三井デュポンポリケミカル株式会社
ポリ塩化ビニル樹脂 製品名 TK-1000、信越化学工業株式会社
ブチルゴム 製品名 Butyl 065、JSR株式会社
熱膨張性黒鉛 製品名 EXP50T 日本黒鉛工業株式会社
熱膨張性黒鉛 製品名 GREP-EG 東ソー株式会社
熱膨張性黒鉛 GREP-EG(150メッシュ) 東ソー株式会社
難燃剤 AP422(ポリリン酸アンモニウム) クラリアント社
無機充填剤 炭酸カルシウム ホワイトンBF300 備北粉化株式会社
可塑剤 DIDP(ジイソデシルフタレート)ジェイ・プラス社
【0084】
(T及びRの測定)
熱膨張性耐火シートの厚みをT(μm)、熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比をRとした。熱膨張性耐火シートの厚みは、シートの巾方向と流れ方向の各3点をノギスで測定した。また熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定した。
【0085】
(引張強度の測定)
JIS K6767の方法に従って測定した。
【0086】
(破断点伸度)
JIS K6767の方法に従って測定した。
【0087】
(膨張倍率)
熱膨張性耐火シートを長さ100mm、幅100mmの寸法に切断した試験片を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。
【0088】
(残渣硬さ)
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、0.25cm2の圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮し、破断点応力を測定した。
【0089】
(残渣硬さの形状保持性)
上記残渣硬さは膨張後の残渣の硬さの指標になるが、測定が残渣の表面部分に限られるため、残渣全体の硬さの指標にならないことがある。このため、残渣全体の硬さの指標として形状保持性を測定した。残渣の形状保持性は、膨張倍率を測定した試験片の両端部を手で持って持ち上げて、その際の残渣の崩れやすさを目視して測定した、試験片が崩れることなく持ち上げられた場合をPASSと評価し、試験片が崩壊して持ち上げられない場合をFAILと評価した。
【0090】
【0091】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0092】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【0093】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
4・・・熱膨張性耐火シート