(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】風止板及び該風止板を備えるサッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 7/26 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
E06B7/26
(21)【出願番号】P 2018016429
(22)【出願日】2018-02-01
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194205
【氏名又は名称】河内 幸雄
(74)【復代理人】
【識別番号】100173657
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】畑谷 賢吾
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208447(JP,A)
【文献】特開2007-177465(JP,A)
【文献】特開2017-166261(JP,A)
【文献】特開2014-84648(JP,A)
【文献】特開2015-94172(JP,A)
【文献】特開2005-16190(JP,A)
【文献】実開平4-110895(JP,U)
【文献】特開2006-214228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ枠と、引違障子の召合せ部の端部との間に配置される風止板であって、
前記サッシ枠に設けられ、且つ、気密材を取り付ける取付部に、スライドさせるガイド片と、
前記サッシ枠に載置される載置部と、
前記載置部の下面に向かって延びる立ち上げ部と、を有
し、
前記立ち上げ部は、前記ガイド片に設けられており、
前記ガイド片は、前記取付部に係止する係止部が設けられた弾性片を備える風止板。
【請求項2】
前記係止部は、突起である請求項
1に記載の風止板。
【請求項3】
前記弾性片は、前記ガイド片の先端側から片持ちに設けられている請求項
1又は2に記載の風止板。
【請求項4】
前記風止板には、加熱発泡材が取り付けられている請求項
1~3のいずれかに記載の風止板。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれかに記載の風止板と、サッシ枠と、前記サッシ枠に建て込まれた外障子と内障子の少なくとも1つの引違障子とを備えるサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引違障子の召合せ部の水密ラインを構成する風止板及び該風止板を備えるサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
採光や換気等を目的として、建物の開口部にサッシ枠を設け、このサッシ枠に、外障子と内障子とからなる引違障子を取り付けた引違サッシが使用されている。このような引違サッシでは、サッシ枠の下枠と、内障子下部及び外障子下部との間から雨水が室内に浸入することを防止するために、サッシ枠の下枠における内障子と外障子の召し合せ部と対向した位置に、風止板を取り付けたものがある。
【0003】
例えば特開平9-24223号公報(特許文献1)には、サッシ枠の下枠の突出横板の長手方向中間部に形成された取付開口部及び切欠部に嵌合させて風止板を取り付けることにより、サッシ枠の下枠と、内障子下部及び外障子下部との間から雨水が室内に浸入することを防止することが記載されている(例えば段落〔0001〕、〔0032〕及び
図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の風止板では、風止板を取り付けるための取付開口部及び切欠部を形成しなければならず、サッシ枠の下枠の加工に必要な工数が増加し、加工が複雑になる。また、取付開口部及び切欠部は、上面と下面とを貫通するように、サッシ枠の下枠に形成されている。そのため、取付開口部及び切欠部と風止板との隙間に浸入した雨水は、室内にまで浸入する可能性があり、引違障子の召合せ部における水密性を十分に確保することができていない。
【0006】
また近年では、火災が発生した場合にも閉塞状態を維持して火炎を貫通させない防火性能がサッシに求められている。しかしながら、特許文献1に記載の従来の風止板では、取付開口部及び切欠部と風止板との隙間から火炎が室内に到達するため、要求される防火性能を達成することができていない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、サッシ枠の下枠の加工における工数の増加及び複雑化を抑制でき、かつ、引違障子の召合せ部における水密性を十分に確保でき、しかも、サッシの防火性能を向上させることができる風止板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の風止板は、サッシ枠と、引違障子の召合せ部の端部との間に配置される風止板であって、前記サッシ枠に設けられ、且つ、気密材を取り付ける取付部に、スライドさせるガイド片と、前記サッシ枠に載置される載置部と、前記載置部の下面に向かって延びる立ち上げ部と、を有し、前記立ち上げ部は、前記ガイド片に設けられており、前記ガイド片は、前記取付部に係止する係止部が設けられた弾性片を備える、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の風止板においては、係止部は、突起であることが好ましい。さらにこの場合には、前記弾性片は、前記ガイド片の先端側から片持ちに設けられていることが好ましい。
【0010】
また本発明の風止板においては、風止板には、加熱発泡材が取り付けられていることが好ましい。
【0011】
本発明のサッシは、本発明の風止板と、サッシ枠と、前記サッシ枠に建て込まれた外障子と内障子の少なくとも1つの引違障子とを備える、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サッシ枠の下枠の加工における工数の増加及び複雑化を抑制でき、かつ、引違障子の召合せ部における水密性を十分に確保でき、しかも、サッシの防火性能を向上させることができる風止板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態にかかるサッシの縦方向における断面の構成の概略を示す図
【
図2】一実施形態にかかるサッシの横方向における断面の構成の概略を示す図
【
図3】
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の拡大図
【
図4】サッシ枠の横方向略中央部分における下枠を、室外側から見た斜視図
【
図6A】風止板を取り付けた状態の
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の要部拡大横断面図
【
図6B】風止板を取り付けた状態の
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の要部拡大縦断面図
【
図8】他の風止板を取り付けた状態の
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の拡大図
【
図9】加熱発泡材の取付位置を示す他の風止板の斜視図
【
図10】変形例にかかるサッシの全体を示す概略図である。
【
図11】変形例にかかるサッシのサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の縦方向における断面の構成の概略を示す図
【
図12】変形例にかかるサッシの横方向における断面の構成の概略を示す図
【
図13】他の変形例にかかるサッシのサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の縦方向における断面の構成の概略を示す図
【
図15】加熱発泡材の取付位置を示す振れ止め金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
なお、本明細書においては、共通する構成には、共通する用語を用いると共に、各図において略同一に図示して詳細な説明は省略し、必要に応じて同一の符号で示すこととする。
本発明の風止板4は、
図3以下に図示するように、サッシ枠2に取付けられた引違障子3の閉止状態において、サッシ枠2の下枠2bと引違障子3の召合せ部との間に配置されるもので、サッシ枠2の下枠2bに設けられ、かつ、外障子5に当接する気密材が取り付けられる取付部22に挿入されるガイド片45を有するものである。
図1は、本発明の一実施形態にかかる風止板を備えるサッシ1の縦方向における断面の構成の概略を示す図であり、
図2はサッシ1の横方向における断面の構成の概略を示す図である。本実施形態におけるサッシ1は、サッシ枠2と、サッシ枠2に建て込まれた引違障子3と、風止板4とを備えるものである。本実施形態では、引違障子3は、外障子5と内障子6とから構成されている。なお、
図1においては、風止板4は図示されていない。
【0015】
サッシ枠2は、例えば、上枠2aと、下枠2bと、左右の縦辺を構成する竪枠2c及び2dとにより、矩形に構成することができ、各枠材2a~2dには、それぞれアルミニウム合金の一体押し出し成型材を用いることができる。サッシ枠2には、引違障子3を構成する外障子5及び内障子6が面内方向に移動自在に且つ引き違い式に建て込まれている。
外障子5及び内障子6は、例えば、矩形枠状の框枠体5a及び6aと、框枠体の内側に嵌め込まれたガラスパネル5b及び6bとからそれぞれ構成することができる。框枠体5a及び6aは、上框5c及び6cと、下框5d及び6dと、召合せ框5e及び6eと、戸先框5f及び6fとからなる。これら各框もまた、アルミニウム合金の一体押し出し成型材を用いることができる。
【0016】
召合せ框5e及び6eは、戸先框がサッシ枠2の横方向端部に位置して、竪枠2c及び2dに突き合わされた状態において、サッシ枠2の横方向(見付方向)略中央に位置して、室内外方向に重なり合うことで、召合せ部を構成する。本明細書においては、このような、召合せ框同士が室内外方向に重なり合い、戸先框がサッシ枠に突き合わされた状態を、外障子及び内障子の閉止状態、即ち外障子と内障子とを含む引違障子の閉止状態という。本実施形態では、召合せ框5e及び6eが、この引違障子の閉止状態において、室内外方向に重なり合うことで、サッシ枠2の横方向(見付方向)略中央に召合せ部を構成している。
【0017】
図3は、
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の拡大図である。
下枠2bは
図3に示すように、室内側横板11と、中間横板12と、室外側横板13とを備える段差を有する形状を有している。室内側横板11の室外側の端部には、室内側中間縦板14の上端が接続されている。室内側中間縦板14の下端には、室内側中間傾斜板15の上端が接続されており、この室内側中間傾斜板15の下端は、中間横板12の室内側の端部が接続されている。また、中間横板12の室外側の端部には、室外側中間傾斜板16の上端が接続されている。室外側中間傾斜板16の下端には、室外側中間縦板17の上端が接続されており、この室外側中間縦板17の下端は、室外側横板13の室内側の端部が接続されている。
【0018】
室内側横板11の室外側の端部近傍には、内障子6に向かって延びる内下レール18が一体的に設けられている。また、室内側横板11の室内側の端部には、室内側立ち上がり縦板19が一体的に形成されている。この室内側立ち上がり縦板19の室外側の面には、内障子6に当接する内側気密材を保持する内側気密材保持部19aが内障子6に向かって設けられている。なお、
図4においては、図面の理解を容易にするために、内側気密材を図示していない。
【0019】
中間横板12の室外側の端部近傍には、内外障子5に向かって延びる外下レール20が一体的に設けられている。また、室外側横板13の室外側の端部には、網戸用下レール21が一体的に形成されている。
【0020】
室内側中間縦板14の上端近傍には、外障子5に当接する外側気密材が取り付けられる取付部22が設けられている。この取付部22は、室内側中間縦板14の上端近傍から室外側に向かって延びる突出横板23と、突出横板23の室外側の端部に設けられて外障子5に当接する外側気密材を保持する外側気密材保持部24とを備えている。なお、
図2~
図5においては、図面の理解を容易にするために、外側気密材を図示していない。
【0021】
図4は、サッシ枠2の横方向略中央部分における下枠2bを、室外側から見た斜視図である。取付部22には、引違障子3を構成する外障子5及び内障子6の閉止状態において、召合せ框5e及び6eが屋内外方向に重なり合う位置、即ち引違障子3の召合せ部と対向する位置に、切り欠き部25が形成されている。本実施形態では、切り欠き部25は、サッシ枠2の横方向略中央に位置している。なお、切り欠き部25は、引違障子3の召合せ部と対向する位置から、サッシ枠2の横方向の一方に変位した位置に形成されていてもよい。この切り欠き部25は水抜き用に形成されるもので、閉止状態において内障子6側で、突出横板23の上面に沿って流れる雨水を、室内側中間傾斜板15上に落下させる。そのため、閉止状態において、後に詳細に説明する風止板4に向かって流れる雨水の量を減らして、閉止状態において室内側に存在する、外障子5側の突出横板23の上面に、雨水が浸入することを抑制でき、水密性を向上させることができる。
【0022】
本実施形態の外側気密材保持部24は、
図3に図示するように、前記突出横板23の一部と、突出横板23の室外側の端部から下方向に延びる上側突出部24aと、突出横板23の室外側の端部近傍から上側突出部24aと平行に下方向に延びる保持用縦板24bと、保持用縦板24bの下端から室外側に向かって延びる保持用横板24cと、保持用横板24cの室外側の端部から上方向に延びる下側突出部24dとから構成されている。保持用縦板24bには、切り欠き部25の近傍に、保持用縦板24bを室内側から室外側に向けて貫通する貫通孔24e(
図4参照)が形成されている。
【0023】
なお、内側気密材及び外側気密材はそれぞれ、内側気密材保持部19a及び外側気密材保持部24の全体にわたって保持される必要はなく、内側気密材は閉止状態において内障子6と当接する位置に、外側気密材は閉止状態において外障子5と当接する位置に、それぞれ設けられていればよい。
【0024】
次に
図5A乃至
図5G、
図6A及び
図6Bを参照して、本実施形態の風止板4の構成を説明する。
図5A乃至
図5Gは、本実施形態の風止板4のそれぞれ、斜視図、正面図、平面図、底面図、背面図、右側面図及び左側面図である。
図6A及び
図6Bは、風止板4を取り付けた状態の
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の要部拡大縦横断面図である。
風止板4は、サッシ枠2と、引違障子3の召合せ部の端部との間に配置される。風止板4は本発明の風止板に該当する風止板である。本実施形態では、風止板4は、外障子5及び内障子6の閉止状態において、サッシ枠2の下枠2bと、外障子5及び内障子6の召合せ部との間に配置されて、サッシ枠2の下枠2bと、外障子5の下部及び内障子6の下部との間から雨水が室内に浸入することを防止する。
図5A乃至
図5Gに示すように、本実施形態の風止板4は、ポリプロピレン等の合成樹脂製の基部41と、ゴム、ビニール等のエラストマーからなる弾性部42と、防火性能がサッシに求められる場合に取り付けられる、後述する加熱発泡材43とから構成されている。なお、加熱発泡材43を取り付ける場合は、基部41と弾性部42とが難燃性材(例えば、UL94 V-0相当品)であることが好ましい。
【0025】
基部41は、基部本体44と、ガイド片45とを備えている。本実施形態の基部本体44は、サッシ枠2の下枠2bに載置される載置部46と、この載置部46の側面の一つに沿って形成された板状部47とを備えている。
【0026】
本実施形態の載置部46は、サッシ枠2の下枠2bの上面と対向する略矩形状の下面46aと、この下面46aと対向する略矩形状の上面46bと、略台形形状を有して室外側に面する第1の側面46cと、第1の側面46cと対向して室内側に面する第2の側面46dと、板状部47が一体的に形成された第3の側面46eと、第3の側面46eと対向する略矩形状の第4の側面46fとを備えている。
図5A及び
図5Bに示すように、本実施形態の載置部46は、断面略台形の柱形状を有している。また、
図5A及び
図5Bに示すように、基部本体44は、載置部46と板状部47とにより略L字状に構成されている。
【0027】
本実施形態の板状部47は、上端47aが載置部46の上面46bに接続されている。また本実施形態の板状部47は、
図5Gのように、室外側の半部47bの下端47cが、室内側の半部47dの下端47eよりも下方に延在する形状を有している。本実施形態では、板状部47の室外側の半部47bが、外側気密材を保持する外側気密材保持部24の、切り欠き部25に開口する端部に当接することにより、切り欠き部25側から外側気密材保持部24内に雨水等が浸入することを抑制している。そして板状部47の室内側の半部47dの下端47eには、載置部46の下面46aに沿って延びるようにガイド片45が設けられている。
【0028】
ガイド片45は、取付部22に切り欠き部25から竪枠2c側に向けてスライドさせるものである。本実施形態では、サッシ枠2の下枠2bの室内側中間縦板14と、外障子5に当接する外側気密材が取り付けられる取付部22を構成する突出横板23と、外側気密材保持部24の保持用縦板24bとの間に挿入される。本実施形態のガイド片45は、板状部47の室内側の半部47dの下端47eに一端が接続されて、載置部46の下面46aに沿って延びるように設けられている。本実施形態では、ガイド片45は、板状部47の室内側の半部47dの下端47eの全体に設けられており、板形状を有している。本実施形態のガイド片45は、一端側の厚み寸法が、他端側の厚み寸法よりも厚く形成されている。本実施形態では、ガイド片45の他端には、載置部46の下面46aに向かって延びる立ち上げ部45aが設けられている。この立ち上げ部45aは、ガイド片45の先端(他端)側の端部がテーパ加工されている。
また本実施形態では、ガイド片45の他端には、板状部47の室外側の半部47bの下端47cに向かって、載置部46の下面46aに沿って延びるように、ガイド片45の先端側(他端側)から片持ちに設けられることで、弾性を有するように構成された弾性片48を備えている。本実施形態では、ガイド片45の室外側の側面の他端に、弾性片48の室内側の側面の先端(一方の端部)側が、接続部を介して設けられている。本実施形態では、弾性片48の室外側の側面の先端(一方の端部)側が、テーパ加工されている。この弾性片48の板状部47の室外側の半部47bの下端47c側の端部(他方の端部)側には、外側気密材保持部24の保持用縦板24bに形成された貫通孔24eに係止する係止部としての突起48aが設けられている。
【0029】
本実施形態の風止板4においては、弾性部42は、板状部47の室外側の側面の一部に設けられた第1の部分42aと、載置部46の第1の側面46cに設けられた第2の部分42bと、載置部46の第2の側面46dに設けられた第3の部分42cと、載置部46の第4の側面46fの下部に形成された凹部に設けられた第4の部分42dと、載置部46の上面46bに設けられた第5の部分42eとを備えており、これらの部分は一体的に形成されている。
【0030】
本実施形態では、弾性部42の第1の部分42aは、板状部47の室外側の側面に沿って延びるように形成されている。この第1の部分42aの室外側の端部は、板状部47の室外側の端部よりも室外側に突出するように形成されている。
また弾性部42の第2の部分42b及び第3の部分42cはそれぞれ、載置部46の第1の側面46c及び第2の側面46dの全体を覆う形状を有している。
本実施形態では、弾性部42の第4の部分42dは、後述の加熱発泡材を設けるために載置部46の下面46aに凹部を形成した結果、第4の側面46fの下部に形成された凹部に設けられるものであり、その下端が、弾性部42の第2の部分42b及び第3の部分42cの下端と面一となるように構成されている。
また、弾性部42の第5の部分42eは、載置部46の上面46bにおける、板状部47との接続部近傍に形成されており、板状部47側の端部及び載置部46の第4の側面46f側の端部には、弾性部42の第3の部分42cの上端と面一となる高さまで延在する薄肉状の起立部を有している。
【0031】
本実施形態では、載置部46の下面46aに、加熱発泡材43を設けるための凹部49が形成されている。具体的には、載置部46の第1の側面46cに沿って形成された第1の凹部49aと、載置部46の第4の側面46fに沿って形成された第2の凹部49bとからなる略L字型の凹部が載置部46の下面46aに形成されている。
本実施形態では、この凹部49は、載置部46の下面46aの残部と、弾性部42の第2の部分42bと、弾性部42の第3の部分42cと、弾性部42の第4の部分42dとにより囲まれている。
【0032】
また本実施形態では、載置部46の第2の側面46d側に加熱発泡材43を設けるために、載置部46の第2の側面46dを矩形の板状としている。そして、弾性部42の第3の部分42cを、この第2の側面46dの輪郭に沿って形成することにより、第2の側面46dには、加熱発泡材43を設けるための矩形の凹部50が形成されている。
以上のように構成された風止板4は、
図6A及び
図6Bに図示したように、外障子5及び内障子6の閉止状態において、サッシ枠2の下枠2bと、外障子5及び内障子6の召合せ部の下端との間に配置されている。よって、閉止状態にある外障子5及び内障子6により画される室内側に、雨水が浸入することを防止する。
【0033】
図7は、加熱発泡材の取付位置を示す風止板4の斜視図である。
図7に示すように、載置部46の下面46aに形成されたL字型の凹部49に、この凹部49に嵌まる形状を有する加熱発泡材43を、例えば貼り付けることにより取り付ける。同様に、第2の側面46dに形成された矩形の凹部50には、この凹部50に嵌まる形状を有する加熱発泡材43を、例えば貼り付けることにより取り付ける。加熱発泡材は、厚さが数ミリ程度の帯状(板状、シート状)で、加熱により少なくとも板厚方向に発泡(膨張)し、耐火性を有するものであることが好ましく、例えば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」を使用できる。
【0034】
次に本実施形態の風止板を下枠に取り付ける方法について
図4を参照して説明する。上述のように、本実施形態の風止板4は、サッシ枠2の下枠2bと、サッシ枠2の下枠2bに設けられ、かつ、外障子5に当接する外側気密材が取り付けられた取付部22の突出横板23との間に挿入されるガイド片45を有している。そのため、
図4に示すように、取付部22に形成された切り欠き部25内に、風止板4のガイド片45を、取付部22の上面側から挿入する。次いで、風止板4の基部本体44の載置部46が、突出横板23の上面に接触した状態で、挿入されたガイド片45を、サッシ枠2の下枠2bの室内側中間縦板14と、取付部22の突出横板23の下面と、外側気密材保持部24の保持用縦板24bとの間に挿入し、風止板4をサッシ枠2の横方向(竪枠2c側)に向かって、突起48aが貫通孔24eに嵌まって係止するまで、変位させるだけで、風止板4をサッシ枠2の下枠2bに取り付けることができる。
【0035】
図8は、室内側横板11上に他の風止板51を取り付けた状態の
図1のサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の拡大図であり、
図9は他の風止板51における加熱発泡材の取付位置を示す他の風止板の斜視図である。なお、他の風止板51は、本発明の風止板に該当するものではない。他の風止板51は、室内側横板11上の、内障子6の召合せ框6eの端部との間に配置される。
図4に示すように、本実施形態の風止板51は、閉止状態において下枠2bを上枠2a側からみたときに、風止板4と少なくとも一部が屋内外方向に重なり合う位置に取付られている。本実施形態の風止板51もまた、ポリプロピレン等の合成樹脂製の基部52と、ゴム、ビニール等のエラストマーからなる弾性部53と、加熱発泡材54とから構成されている。なお、基部52と弾性部53も、風止板4と同様に難燃性材(例えば、UL94 V-0相当品)であることが好ましい。
【0036】
以下、本実施形態の風止板4の作用効果について説明する。
【0037】
本実施形態の風止板4は、外障子5に当接する外側気密材が取り付けられた取付部22及びこの取付部22に形成された水抜き用の切り欠き部25を利用して取り付けることができる。そのため、風止板4を取り付ける際に、風止板を取り付けるために従来のように取付開口部及び切欠部を別に形成する必要がない。そのため、サッシ枠の下枠の加工における工数が増加することはなく、複雑化することもない。また、風止板を取り付けるための取付開口部及び切欠部が形成されないため、これらの隙間を経由して雨水や火炎が室内に到達することがない。
以上のように、本実施形態の風止板4によれば、サッシ枠の下枠の加工における工数の増加及び複雑化を抑制でき、かつ、引違障子の召合せ部における水密性を十分に確保でき、しかも、サッシの防火性能を向上させることができる。
【0038】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、ガイド片45は、取付部22を構成する保持用縦板24bに係止する係止部48aが設けられた弾性片48を備えることが好ましい。この構成によれば、係止部48aによる係止により、取り付けられた風止板4が取付部22を構成する保持用縦板24bに対して変位することが規制されて、風止板4が取付部22を構成する保持用縦板24bから脱落することを抑制することができる。また、係止部48aは弾性片48に設けられているため、風止板4を取り付ける際に、係止部48aにより、取り付けの抵抗となる力が発生することを抑制することができる。そのため、風止板4の取り付けの容易性を維持しつつ、風止板4の脱落を抑制することができる。
【0039】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、係止部48aは、突起であることが好ましい。この構成によれば、係止部48aを簡単な構成とすることができるだけでなく、取付部22を構成する保持用縦板24bに孔または凹部を設けるのみで風止板4を取り付ける際の風止板4の位置決めが可能となり、かつ、風止板4を取り付ける際に抵抗となる力が発生することをより抑制することができる。
【0040】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、弾性片48は、ガイド片45の先端側である他端側から片持ちに設けられていることが好ましい。この構成によれば、風止板4を取り付ける際に大きな力が風止板4に加えられても、片持ち構造により弾性片48に設けられた係止部に加わる力は低減される。また、係止部(突起)48aが弾性片48の板状部47側である端部側(他方の端部側)に設けられているので、風止板4のスライドが初期の段階で係止部48aが抵抗になることがなく、スライドが終了する段階で貫通孔24eに係止する。よって、弾性片48の片持ち部(根元)に過度な力が加わらないので、風止板4の取り付け時に弾性片48及び係止部48aが破損することを抑制することができる。
【0041】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、防火性能がサッシに求められる場合に、風止板4には、加熱発泡材が取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、火災により風止板4が溶融等して失われた場合でも、加熱発泡材による発泡により、火災が室内に到達することを抑制することができる。特に、
図1乃至
図7の一実施形態に示すように、風止板4の載置部46の下面46a及び載置部46の第2の側面46dに設けることにより、火災が室内に到達する経路に加熱発泡材を発泡させることができ、火災が室内に到達することをより抑制することができる。具体的には、加熱発泡材43が下枠2bの突出横板23と内下レール18の室外面に面しているので、アルミニウム合金製の下枠が火炎により高温に上昇した熱を感知し易く、加熱発泡材43を早期に発泡させることができる。
【0042】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、ガイド片45の先端(他端)には、載置部46の下面46aに向かって延びる立ち上げ部45aが設けられていることが好ましい。この構成によれば、風止板4を取り付けるために、ガイド片45をサッシ枠2の下枠2bの室内側中間縦板14と、取付部22の突出横板23と、外側気密材保持部24の保持用縦板24bとの間に挿入する際に、立ち上げ部45aが取付部22の突出横板23の下面と接触することにより、風止板の載置部46の下面46aを取付部22の突出横板23に付勢する力が風止板4に加わる。そのため、風止板の載置部46の下面46aが、取付部22の突出横板23に圧接されて、風止板の載置部46の下面46aと、取付部22の突出横板23の上面との間から雨水が浸入することを抑制することができる。また、風止板の載置部46の下面46aを取付部22の突出横板23に付勢する力が発生することにより、立ち上げ部45aと風止板の載置部46の下面46aとにより、取付部22の突出横板23が挟み込まれることとなる。そのため、風止板4を強固に取り付けることができて、風止板4の脱落をより抑制することができる。
【0043】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、立ち上げ部45aは、ガイド片45の先端(他端)側の端部がテーパ加工されていることが好ましい。この構成によれば、風止板4を取り付けるために、ガイド片45をサッシ枠2の取付部22に挿入する際に、立ち上げ部45aが破損することを抑制することができる。
【0044】
本発明にあっては、一実施形態に示すように、弾性部42が、板状部47の室外側の側面の一部、載置部46の第1の側面46c、載置部46の第2の側面46d、載置部46の第4の側面46fの下部に形成された凹部及び載置部46の上面46bの少なくとも一つに設けられることが好ましい。この構成によれば、風止板4と、風止板4と接触する他の部材(例えば、後述の振れ止め金具64)との間の水密性を確保することができる。
【0045】
図10は変形例にかかるサッシの全体を示す概略図であり、
図11は変形例にかかるサッシのサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の縦方向における断面の構成の概略を示す図であり、
図12は、変形例にかかるサッシの横方向における断面の構成の概略を示す図である。
図10~12に示すように、変形例のサッシ1においては、室内側中間縦板14の室外側の面の、風止板4が取り付けられる位置に、加熱発泡材61が設けられている。また、変形例のサッシ1においては、外側気密材保持部24の内部に沿って加熱発泡材62が設けられている。さらに、内障子6の召合せ框6e室内側の面にも加熱発泡材63が設けられている。これらの加熱発泡材61~63を設けることにより、サッシの防火性能をさらに向上させることができる。なお、サッシの各枠並びに外障子5及び内障子6の各框に、他の加熱発泡材を設けてもよいのは勿論である。
【0046】
図13は、振れ止め金具64が取付られた他の変形例にかかるサッシのサッシ枠の下枠並びに外障子及び内障子の下框の縦方向における断面の構成の概略を示す図であり、
図14は、振れ止め金具64の取付状態を示す図であり、
図15は振れ止め金具64における加熱発泡材の取付位置を示す振れ止め金具64の斜視図である。
図13~
図15に示すように、振れ止め金具64は、内障子6の閉止状態及び走行状態における揺れ防止のために、内障子6に設けられている。本実施形態では、振れ止め金具は、ポリプロピレンからなる本体部64aと、本体部64aの下部及び室外側に設けられたゴム、ビニール等のエラストマーからなり、風止板4の弾性部42に当接する弾性部64bとを備えている。本体部64aの上面には、加熱発泡材64cが設けられている。また、本体部64aには、サッシ2の横方向の側面にも、加熱発泡材64cが設けられている。なお、本体部64aと弾性部64bも、風止板4と同様に難燃性材(例えば、UL94 V-0相当品)であることが好ましい。
このような構成の振れ止め金具64を採用することにより、内障子6の閉止状態及び走行状態における揺れ防止しつつ、サッシの防火性能を向上させることができる。
【0047】
本発明は、本発明の風止板を備えるサッシとして把握することができる。
【0048】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において、通常の知識を有する者により可能である。
例えば、外障子及び内障子の障子、または少なくとも1つの障子を建て込んだ建具(引違サッシ、片引きサッシ、両引きサッシ等)において、上述の発明が解決しようとする課題を抱えている場合に、本発明と同様な構成を採用することにより、同課題を解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の風止板によれば、サッシ枠の下枠の加工における工数の増加及び複雑化を抑制でき、かつ、引違障子の召合せ部における水密性を十分に確保でき、しかも、サッシの防火性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1:サッシ
2:サッシ枠 2a:上枠 2b:下枠 2c:竪枠 2d:竪枠
3:引違障子
4:風止板
5:外障子
5a:框枠体 5b:ガラスパネル 5c:上框 5d:下框
5e:召合せ框 5f:戸先框
6:内障子
6a:框枠体 6b:ガラスパネル 6c:上框 6d:下框
6e:召合せ框 6f:戸先框
11:室内側横板
12:中間横板
13:室外側横板
14:室内側中間縦板
15:室内側中間傾斜板
16:室外側中間傾斜板
17:室外側中間縦板
18:内下レール
19:室内側立ち上がり縦板 19a:内側気密材保持部
20:外下レール
21:網戸用下レール
22:取付部
23:突出横板
24:外側気密材保持部
24a:上側突出部 24b:保持用縦板 24c:保持用横板
24d:下側突出部 24e:貫通孔
25:切り欠き部
41:基部
42:弾性部
42a:第1の部分 42b:第2の部分 42c:第3の部分
42d:第4の部分 42e:第5の部分
43:加熱発泡材
44:基部本体
45:ガイド片
45a:立ち上げ部
46:載置部
46a:下面 46b:上面 46c:第1の側面 46d:第2の側面
46e:第3の側面 46f:第4の側面
47:板状部
47a:上端 47b:室外側の半部 47c:下端 47d:室内側の半部
47e:下端
48:弾性片
48a:突起(係止部)
49:凹部
50:凹部
51:他の風止板
52:基部
53:弾性部
54:加熱発泡材
61:加熱発泡材
62:加熱発泡材
63:加熱発泡材
64:振れ止め金具
64a:本体部
64b:弾性部
64c:加熱発泡材