(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】透湿性フィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221101BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2018050780
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】外山 達也
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508254(JP,A)
【文献】特開平08-058005(JP,A)
【文献】特開2011-084735(JP,A)
【文献】特開2014-087948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、有機フィラーおよび無機フィラーから選択される少なくとも一種のフィラーと、を含む二軸延伸フィルム層(A)と、
前記二軸延伸フィルム層(A)の少なくとも一方の面上に設けられた表面樹脂層(B)と、を備え、
前記表面樹脂層(B)の総厚みが10μm以下であ
り、
前記二軸延伸フィルム層(A)中の前記フィラーの含有量が、前記二軸延伸フィルム層(A)の全体を100質量%としたとき、40質量%以上70質量%以下である、透湿性フィルム。
ただし、前記表面樹脂層(B)に亀裂を形成するものを除く。
【請求項2】
請求項
1に記載の透湿性フィルムにおいて、
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む透湿性フィルム。
【請求項3】
請求項
2に記載の透湿性フィルムにおいて、
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂から選択される少なくとも一種を含む透湿性フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の透湿性フィルムにおいて、
前記二軸延伸フィルム層(A)は表面に通気孔を有する透湿性フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の透湿性フィルムにおいて、
前記フィラーが、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、チタン酸カリウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、タルク、マイカ、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ポリスチレン系樹脂粒子およびポリ(メタ)アクリル系樹脂粒子から選択される一種または二種以上を含む透湿性フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の透湿性フィルムにおいて、
40℃、90%RHでの水蒸気透過度が20g/(m
2・24h)以上である透湿性フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の透湿性フィルムにおいて、
前記表面樹脂層(B)がポリオレフィン系樹脂を含む透湿性フィルム。
【請求項8】
請求項
7に記載の透湿性フィルムにおいて、
前記表面樹脂層(B)における前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂から選択される少なくとも一種を含む透湿性フィルム。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の透湿性フィルムにおいて、
衛生製品、医療用製品、ヘルスケア製品、フィルタ製品、ジオテキスタイル製品、農業用製品、園芸用製品、衣類、履物製品、鞄製品、家庭用製品、工業用製品、包装用製品、建設用製品および構造用製品からなる群から選択されるいずれか一種に用いられる透湿性フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の透湿性フィルムを用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性フィルムおよび包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
透湿性フィルムとしては、熱可塑性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成されたフィルムが知られている。
このような透湿性フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2017-31293号公報)に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、25~75質量部のポリエチレン系樹脂(A)と、75~25質量部の無機充填材(B)と、上記(A)と(B)の合計量100質量部に対して0.5~5質量部のエステル系可塑剤(C)を含有する樹脂組成物からなる通気性フィルムであって、上記樹脂組成物は、さらに、加熱によって融解して通気性フィルムのボイドを一部閉塞する通気抑制剤(D)を、上記(A)と(B)の合計量100質量部に対して0.5~10質量部含有し、透気度が1,000~45,000秒/100mL、かつ90℃で30分間加熱処理による透気度上昇率が1.5~5.0であることを特徴とする通気性フィルムが記載されている。
特許文献1には、上記のような構成を有する通気性フィルムは、加熱時に透気度が上昇する機能を有し、衛生材料のシート、防護服、作業服、乾燥剤、吸湿剤の収納袋として好適に利用することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、熱可塑性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成された透湿性フィルムは、連続製膜する際に、チルロールへの貼り付き不良が発生したり、ロール汚れが発生したりする場合があり、連続製膜性や外観に劣ることが明らかになった。
さらに、熱可塑性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成された透湿性フィルムは、機械的特性等の基本的特性を維持しながら、透湿性のレベルを高度に制御することが難しかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、連続製膜性および外観に優れるとともに、透湿性を高度に制御することが可能な透湿性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する二軸延伸フィルム層の表面に、総厚みが10μm以下の樹脂層を設けることにより、連続製膜性および外観を良好に保ちながら、上記樹脂層の総厚みによって透湿性を高度に制御することができることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す透湿性フィルムおよび包装体が提供される。
【0009】
[1]
熱可塑性樹脂と、有機フィラーおよび無機フィラーから選択される少なくとも一種のフィラーと、を含む二軸延伸フィルム層(A)と、
上記二軸延伸フィルム層(A)の少なくとも一方の面上に設けられた表面樹脂層(B)と、を備え、
上記表面樹脂層(B)の総厚みが10μm以下である透湿性フィルム。
[2]
上記[1]に記載の透湿性フィルムにおいて、
上記二軸延伸フィルム層(A)中の上記フィラーの含有量が、上記二軸延伸フィルム層(A)の全体を100質量%としたとき、40質量%以上70質量%以下である透湿性フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載の透湿性フィルムにおいて、
上記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む透湿性フィルム。
[4]
上記[3]に記載の透湿性フィルムにおいて、
上記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂から選択される少なくとも一種を含む透湿性フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の透湿性フィルムにおいて、
上記二軸延伸フィルム層(A)は表面に通気孔を有する透湿性フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の透湿性フィルムにおいて、
上記フィラーが、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、チタン酸カリウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、タルク、マイカ、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ポリスチレン系樹脂粒子およびポリ(メタ)アクリル系樹脂粒子から選択される一種または二種以上を含む透湿性フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の透湿性フィルムにおいて、
40℃、90%RHでの水蒸気透過度が20g/(m2・24h)以上である透湿性フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の透湿性フィルムにおいて、
上記表面樹脂層(B)がポリオレフィン系樹脂を含む透湿性フィルム。
[9]
上記[8]に記載の透湿性フィルムにおいて、
上記表面樹脂層(B)における上記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂から選択される少なくとも一種を含む透湿性フィルム。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の透湿性フィルムにおいて、
衛生製品、医療用製品、ヘルスケア製品、フィルタ製品、ジオテキスタイル製品、農業用製品、園芸用製品、衣類、履物製品、鞄製品、家庭用製品、工業用製品、包装用製品、建設用製品および構造用製品からなる群から選択されるいずれか一種に用いられる透湿性フィルム。
[11]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の透湿性フィルムを用いた包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連続製膜性および外観に優れるとともに、透湿性を高度に制御することが可能な透湿性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の透湿性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の透湿性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0013】
<透湿性フィルム>
図1および
図2は、本発明に係る実施形態の透湿性フィルム10の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る透湿性フィルム10は、熱可塑性樹脂と、有機フィラーおよび無機フィラーから選択される少なくとも一種のフィラーと、を含む二軸延伸フィルム層(A)と、上記二軸延伸フィルム層(A)の少なくとも一方の面上に設けられた表面樹脂層(B)と、を備え、上記表面樹脂層(B)の総厚みが10μm以下である。
【0014】
上述したように、透湿性フィルムとしては、熱可塑性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成されたフィルムが知られている。本発明者らの検討によれば、熱可塑性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成された透湿性フィルムは、連続製膜する際に、チルロールへの貼り付き不良が発生したり、ロール汚れが発生したりする場合があり、連続製膜性や外観に劣ることが明らかになった。さらに、熱可塑性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成された透湿性フィルムは、機械的特性等の基本的特性を維持しながら、透湿性のレベルを高度に制御することが難しかった。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する二軸延伸フィルム層(A)の表面に、総厚みを10μm以下に制御した表面樹脂層(B)を設けることにより、連続製膜性および外観を良好に保ちながら、表面樹脂層(B)の総厚みによって透湿性を高度に制御することができることを見出した。特に、本実施形態に係る透湿性フィルム10は、表面樹脂層(B)の総厚みを段階的に制御することによって、水蒸気透過度等を段階的に制御することができる。そのため、表面樹脂層(B)の総厚みを制御することによって、所望の水蒸気透過度を有する透湿性フィルム10を容易に得ることが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、連続製膜性および外観に優れるとともに、透湿性を高度に制御することが可能な透湿性フィルム10を提供することができる。
【0015】
本実施形態に係る透湿性フィルム10において、透湿性により優れた透湿性フィルム10または包装体を安定的に得る観点から、下記の方法で測定される、40℃、90%RHでの水蒸気透過度が20g/(m2・24h)以上であることが好ましく、30g/(m2・24h)以上であることがより好ましく、50g/(m2・24h)以上であることがさらに好ましく、100g/(m2・24h)以上であることが特に好ましい。
(測定方法)
本実施形態に係る透湿性フィルム10を折り返し、2方をヒートシールして袋状にする。その後、内容物として塩化カルシウムを入れる。次いで、もう1方をヒートシールして表面積が0.01m2になるように袋を作製する。次いで、得られた袋を40℃、湿度90%RHの条件で1時間保管する。保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m2・24h))を算出する。
このような水蒸気透過度は、例えば、二軸延伸フィルム層(A)に含まれるフィラーの含有割合、二軸延伸フィルム層(A)の厚みや延伸倍率、表面樹脂層(B)の総厚み等を調整することにより達成できる。特に、本実施形態に係る透湿性フィルム10は、表面樹脂層(B)の総厚みを制御することによって、透湿性フィルム10の機械的特性等の基本的特性を特徴づける二軸延伸フィルム層(A)の構成を変えずに水蒸気透過度を高いレベルで制御することができる。すなわち、本実施形態に係る透湿性フィルム10によれば、機械的特性等の基本的特性を維持しながら、透湿性のレベルを高度に制御することが可能となる。
【0016】
本実施形態に係る透湿性フィルム10の厚みは特に限定しないが、水蒸気透過度、コスト、機械的特性、軽量性等の所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されないが、例えば10μm以上500μm以下であり、好ましくは15μm以上400μm以下であり、より好ましく20μm以上300μm以下である。
透湿性フィルムの厚みが上記範囲内であると、透湿性、通気性、製袋性、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、軽量性、コスト等のバランスがより優れる。
【0017】
以下、透湿性フィルムを構成する各層について説明する。
【0018】
[二軸延伸フィルム層(A)]
本実施形態に係る二軸延伸フィルム層(A)は、例えば、熱可塑性樹脂と、有機フィラーおよび無機フィラーから選択される少なくとも一種のフィラーと、を含む樹脂組成物(A)により構成された無延伸フィルム層を二軸延伸することにより形成されたものである。
【0019】
本実施形態に係る二軸延伸フィルム層(A)は単層であってもよいし、樹脂組成物(A)により構成された層が複数積層された構成でもよいが、二軸延伸されてなることが必要である。
【0020】
また、本実施形態に係る透湿性フィルム10において、透湿性フィルム10の全体の厚みに対する二軸延伸フィルム層(A)の厚みの比が、好ましくは0.50以上0.998以下であり、より好ましくは0.60以上0.99以下であり、さらに好ましくは0.70以上0.98以下であり、特に好ましくは0.75以上0.98以下である。
【0021】
本実施形態に係る透湿性フィルム10において、二軸延伸フィルム層(A)は表面に通気孔を有することが好ましい。これにより、透湿性フィルムの透湿性および通気性をより一層向上させることができる。ここで、通気孔は、二軸延伸フィルム層(A)の表面から表面樹脂層(B)を剥離した後の透湿性フィルムの表面(すなわち二軸延伸フィルム層(A)の表面)を電子顕微鏡により観察することによって確認することができる。通気孔の最大孔径は、例えば、5μm以上50μm以下である。ここで最大孔径とは1つの通気孔の孔径の最大値を意味する。
このような通気孔は、例えば、二軸延伸フィルム層(A)に含まれるフィラーの含有割合、二軸延伸フィルム層(A)の厚みや延伸倍率等を調整することにより形成することができる。
【0022】
(樹脂組成物(A))
本実施形態に係る樹脂組成物(A)は熱可塑性樹脂およびフィラーを含む。
本実施形態に係る樹脂組成物(A)すなわち二軸延伸フィルム層(A)に含まれるフィラーの含有量の下限値は、透湿性フィルム10の透湿性や通気性を向上させる観点から、二軸延伸フィルム層(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは55質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上である。
また、本実施形態に係る樹脂組成物(A)すなわち二軸延伸フィルム層(A)に含まれるフィラーの含有量の上限値は、透湿性フィルム10の成形性や機械的特性等を向上させる観点から、二軸延伸フィルム層(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは70質量%以下である。
【0023】
本実施形態に係る樹脂組成物(A)すなわち二軸延伸フィルム層(A)に含まれる熱可塑性樹脂およびフィラーの含有量の合計は、樹脂組成物(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、透湿性、通気性、機械的特性、取扱い性、外観および成形性等のバランスをより良好にすることができる。
【0024】
(熱可塑性樹脂)
二軸延伸フィルム層(A)に用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ノルボルネン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド樹脂等のポリフェニレン系樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、透湿性、通気性、機械的特性、取扱い性、外観、軽量性、価格および成形性等のバランスに優れる点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
(ポリオレフィン系樹脂)
二軸延伸フィルム層(A)に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂から選択される少なくとも一種が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0026】
(ポリエチレン系樹脂)
二軸延伸フィルム層(A)に用いられるポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂の融点は、耐熱性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは95℃以上135℃以下、より好ましくは100℃以上130℃以下の範囲にある。
【0028】
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。
【0029】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、ポリエチレン系樹脂は市販されているものを用いてもよい。
【0030】
(ポリプロピレン系樹脂)
二軸延伸フィルム層(A)に用いられるポリプロピレン系樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中でもエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、またブロック共重合体を形成してもよい。エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ポリプロピレン系樹脂の全体を100モル%としたとき、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。二軸延伸フィルム層(A)中のポリプロピレン系樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、耐熱性、成形性、機械的特性および剛性等の性能バランスにより一層優れた二軸延伸フィルム層(A)を得る観点から、ポリプロピレン系樹脂としてはホモポリプロピレンよびプロピレンとエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体(以下、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体とも呼ぶ。)から選択される少なくとも一種が好ましい。
本実施形態に係るホモポリプロピレンは、ホモポリプロピレンを構成する構成単位の含有量の合計を100モル%としたとき、プロピレンから導かれる構成単位の含有量が99.0モル%以上、好ましくは99.5モル%以上、さらに好ましくは99.9モル%以上、特に好ましくは100.0モル%である。
【0031】
本実施形態に係るプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、α―オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらの共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0032】
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0033】
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂の融点は、耐熱性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは90℃以上175℃以下、より好ましくは95℃以上170℃以下、さらに好ましくは100℃以上167℃以下の範囲にある。
【0034】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは7g/10分以下である。
【0035】
(フィラー)
本実施形態に係る二軸延伸フィルム層(A)は必須成分として有機フィラーおよび無機フィラーから選択される少なくとも一種のフィラーを含む。
二軸延伸フィルム層(A)に用いられるフィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、チタン酸カリウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、タルク、マイカ、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト等の無機フィラー;ポリスチレン系樹脂粒子、ポリ(メタ)アクリル系樹脂粒子等の有機フィラー等が挙げられる。これらのフィラーは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、安価であり、かつ、透湿性フィルムの透湿性をより向上できる点から、炭酸カルシウムが好ましい。
【0036】
また、フィラーは無処理のまま使用してもよく、熱可塑性樹脂との界面接着性を向上させ、熱可塑性樹脂に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤や、チタンカップリング剤、界面活性剤等で表面を処理して使用してもよい。
【0037】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物(A)には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0038】
(樹脂組成物(A)の調製方法)
本実施形態に係る樹脂組成物(A)は、例えば、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0039】
[表面樹脂層(B)]
本実施形態に係る透湿性フィルム10は、成形機への貼り付き不良やロール汚れ等を抑制し、連続製膜性を良好にするために、二軸延伸フィルム層(A)の少なくとも一方の面上に表面樹脂層(B)を備える。成形機への貼り付き不良等をより抑制し、連続製膜性をより良好にする観点から、表面樹脂層(B)は二軸延伸フィルム層(A)の両面に設けられていることが好ましい。
また、成形機への貼り付き不良やロール汚れ等をより抑制し、連続製膜性をより良好にする観点から、表面樹脂層(B)は透湿性フィルム10の最外層に設けられていることが好ましい。
【0040】
また、表面樹脂層(B)は、二軸延伸フィルム層(A)の表面上に直接接するように設けられていることが好ましい。これにより、透湿性フィルム10の製造工程を簡略化することができる。
【0041】
本実施形態に係る透湿性フィルム10において、表面樹脂層(B)の厚みは、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下、さらにより好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは0.6μm以下である。
また、本実施形態に係る透湿性フィルム10において、表面樹脂層(B)の総厚みは10μm以下であるが、好ましくは6.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、特に好ましくは1.2μm以下である。
ここで、表面樹脂層(B)の厚みとは二軸延伸フィルム層(A)の片面に設けられた表面樹脂層(B)の厚みであり、表面樹脂層(B)の総厚みとは二軸延伸フィルム層(A)に設けられた、すべての表面樹脂層(B)の厚みの合計をいう。
また、表面樹脂層(B)の厚みまたは総厚みが上記上限値以下であることにより、透湿性フィルム10の透湿性や通気性をより一層向上させることができる。
また、表面樹脂層(B)の厚みが上記上限値以下であることにより、二軸延伸フィルム層(A)と表面樹脂層(B)との密着性が向上し、二軸延伸フィルム層(A)上に表面樹脂層(B)を形成させることがより容易となる。すなわち、二軸延伸フィルム層(A)の表面上に直接接するように表面樹脂層(B)を設けることが容易となるため、透湿性フィルム10の製造工程を簡略化することができる。
【0042】
本実施形態に係る透湿性フィルム10において、表面樹脂層(B)の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上である。
また、本実施形態に係る透湿性フィルム10において、表面樹脂層(B)の総厚みは0.02μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。
表面樹脂層(B)の厚みまたは総厚みが上記下限値以上であることにより、成形機への貼り付き不良やロール汚れ等をより抑制し、連続製膜性をより良好にすることができる。
【0043】
本実施形態に係る透湿性フィルム10において、一方の面に設けられる表面樹脂層(B)は、単層であることが好ましい。これにより、透湿性フィルム10の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0044】
また、表面樹脂層(B)は、二軸延伸フィルム層(A)の延伸前の状態にあるフィルムと同時に延伸されて形成されることが好ましい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すなわち一度の成形で作製した積層フィルムを用いて透湿性フィルム10を作製することができるため、透湿性フィルム10の製造工程をより一層簡略化することができる。したがって、表面樹脂層(B)は延伸されていることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る表面樹脂層(B)は、例えば、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(B)により構成された無延伸フィルム層を二軸延伸することにより形成することができる。
【0046】
(樹脂組成物(B))
本実施形態に係る樹脂組成物(B)は熱可塑性樹脂を含む。
本実施形態に係る樹脂組成物(B)すなわち表面樹脂層(B)に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、成形機への貼り付き不良等をより抑制し、連続製膜性をより良好にすることができる。
【0047】
(熱可塑性樹脂)
表面樹脂層(B)に用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ノルボルネン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド樹脂等のポリフェニレン系樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、機械的特性、取扱い性、外観、軽量性、価格および成形性等のバランスに優れる点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
(ポリオレフィン系樹脂)
表面樹脂層(B)に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂から選択される少なくとも一種が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0049】
(ポリエチレン系樹脂)
表面樹脂層(B)に用いられるポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂の融点は、耐熱性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは95℃以上135℃以下、より好ましくは100℃以上130℃以下の範囲にある。
【0051】
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。
【0052】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、ポリエチレン系樹脂は市販されているものを用いてもよい。
【0053】
(ポリプロピレン系樹脂)
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記炭素数が4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中でもエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらのα-オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、またブロック共重合体を形成してもよい。エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ポリプロピレン系樹脂の全体を100モル%としたとき、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。表面樹脂層(B)中のポリプロピレン系樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、耐熱性、成形性、機械的特性および剛性等の性能バランスにより一層優れた表面樹脂層(B)を得る観点から、ポリプロピレン系樹脂としてはホモポリプロピレンよびプロピレンとエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体(以下、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体とも呼ぶ。)から選択される少なくとも一種が好ましい。
本実施形態に係るホモポリプロピレンは、ホモポリプロピレンを構成する構成単位の含有量の合計を100モル%としたとき、プロピレンから導かれる構成単位の含有量が99.0モル%以上、好ましくは99.5モル%以上、さらに好ましくは99.9モル%以上、特に好ましくは100.0モル%である。
【0054】
本実施形態に係るプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとエチレンまたは炭素数が4~10のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、α―オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらの共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0055】
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0056】
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂の融点は、耐熱性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは90℃以上175℃以下、より好ましくは95℃以上170℃以下、さらに好ましくは100℃以上167℃以下の範囲にある。
【0057】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは7g/10分以下である。
【0058】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物(B)には、必要に応じて、フィラー、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0059】
<透湿性フィルムの製造方法>
本実施形態に係る透湿性フィルム10は、例えば、二軸延伸フィルム層(A)を形成するための樹脂組成物(A)と、表面樹脂層(B)を形成するための樹脂組成物(B)と、をフィルム状に共押出し成形して得た無延伸フィルムを、公知の延伸方法を用いて二軸延伸することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができる。成形装置としては、多層T-ダイ押出機あるいは多層インフレーション成形機等を用いることができる。延伸の条件は熱可塑性樹脂およびフィラーの含有比率や組み合わせによって適宜調整されるため特に限定されないが、例えば、公知の各種二軸延伸フィルムの製造条件を採用することができる。
【0060】
<透湿性フィルムの用途>
本実施形態に係る透湿性フィルム10は透湿性および通気性に優れ、さらに耐水性や機械的特性にも優れている。そのため、透湿性や通気性、耐水性、機械的特性が求められる用途に好適に用いることができる。このような用途としては、例えば、食品や医薬品、乾燥剤、脱酸素剤、アルコール揮散剤、鮮度保持剤等の包装用製品、紙おむつバックシート、生理用品バックシート等の衛生製品、医療用製品、ヘルスケア製品、フィルタ製品、ジオテキスタイル製品、農業用製品、園芸用製品、簡易ジャンパー等の衣類、履物製品、鞄製品、家庭用製品、工業用製品、建材用防水透湿シート等の建設用製品または構造用製品等が好ましい。
【0061】
また、本実施形態に係る透湿性フィルムは本実施形態に係るフィルムは用途に応じその一部に本実施形態に係る透湿性フィルム10を使用してもよいし、用途物品の全体に本実施形態に係る透湿性フィルム10を使用してもよい。
包装用製品としては、例えば、食品や医薬品、アルコール揮散剤、鮮度保持剤パッケージング、乾燥剤パッケージング、除湿剤パッケージング、脱酸素剤等の吸着剤パッケージング、ギフトボックス、ファイルボックス、不織布バッグ、ブックカバー、封筒、エクスプレスエンベロープ、配達バッグなどが挙げられる。
建設用および構造用製品としては、例えば、ハウスラップ、アスファルトオーバーレイ、道路および鉄道の路床、ゴルフコート、テニスコート、壁装材の裏地、音響用壁装材、屋根材、タイルの下張り、土壌安定材、道路の下敷き、基礎安定材、侵食防止製品、運河建設、排水系統、ジオメンブレン保護製品、防霜製品、農業用マルチ、池および運河の防水壁、暗渠排水用の砂侵入防止壁などが挙げられる。
衛生用製品としては、例えば、吸収衛生製品(例えば乳児用おむつ、おむつ、婦人用衛生製品、成人失禁用製品)、脱毛ストリップ、包帯、創傷用包帯、芳香剤容器の芳香剤揮発部分、使い捨てカイロ、使い捨てバスタオル、フェイスタオル、使い捨てスリッパ、履物、トップシート、カバーストック、消費者用フェイスマスク、レッグカフ、収集/分配層、コアラップ、バックシート、伸縮性イア、着床ゾーン、ダスティング層および固定システム、拭き取り用品(例えばウェットワイプ、スキンケアワイプ、ベビーワイプ、フェイシャルワイプ、クレンジングワイプ、ハンドおよびボディワイプ、モイストタオル、パーソナル衛生ワイプ、婦人用衛生ワイプ、抗菌ワイプ、医療用ワイプ)などが挙げられる。
医療用およびヘルスケア製品としては、例えば、滅菌できる医療用製品、医療用パッケージ、キャップ(例えば手術用使い捨てキャップ)、保護衣類、手術用ガウン、手術用マスク、手術用フェイスマスク、手術着、手術用カバー、手術用ドレープ、ラップ、パック、スポンジ、包帯、ワイプ、ベッドリネン、汚染防止ガウン、検査ガウン、実験室用コート、アイソレーションガウン、経皮ドラッグデリバリー、シュラウド、アンダーパッド、処置用パック、ヒートパック、オストミーバッグライナー、固定テープ、インキュベーターマットレス、滅菌ラップ、創傷ケア、冷/熱パック、ドラッグデリバリーシステム(例えばパッチ等)などが挙げられる。
衣類、履物製品および鞄製品としては、例えば、芯地(例えば防護服、オーバーコートのフロント、カラー、見返し、ウエストバンド、下襟など)、使い捨て下着、靴構成部材(例えば靴紐小穴強化材、運動靴、サンダル強化材、インナーソールライニングなど)、結合剤、組成物、(洗濯)注意事項ラベルなどが挙げられる。
【0062】
また、本実施形態に係る透湿性フィルムは包装体を構成するフィルムとして好適に用いることもできる。本実施形態に係る包装体は、例えば、食品や医薬品、乾燥剤、脱酸素剤、アルコール揮散剤、鮮度保持剤等を収容することを目的として使用される包装袋自体または当該袋に収容物等を収容したものである。また、本実施形態に係る包装体は用途に応じその一部に本実施形態に係る透湿性フィルム10を使用してもよいし、包装体の全体に本実施形態に係る透湿性フィルム10を使用してもよい。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0065】
1.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
(1)ポリプロピレン系樹脂
PP1:ホモポリプロピレン(MFR:3g/10分、融点:165℃、プライムポリマー社製)
(2)フィラー含有マスターバッチ
MB1:炭酸カルシウムおよびホモポリプロピレンを含有するマスターバッチ(炭酸カルシウムの含有量:80質量%、ホモポリプロピレンの含有量:20質量%、炭酸カルシウムの平均粒径4.5μm)
【0066】
2.測定および評価方法
(1)ポリプロピレン系樹脂のMFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0067】
(2)ポリプロピレン系樹脂の融点
DSC(示差走査熱量計)を用いて得られた、ポリプロピレンのDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。
【0068】
(3)通気孔の有無
表面樹脂層(B)剥離後の透湿性フィルムの表面(すなわち二軸延伸フィルム層(A)の表面)を電子顕微鏡により観察し、通気孔の有無を調べた。ここで、最大孔径が5μm以上50μm以下のものを通気孔とした。
【0069】
(4)連続製膜性の評価
以下の基準により透湿性フィルムの連続製膜性を評価した。
○:連続製膜する際に、チルロールへの貼り付き不良や、ロール汚れが発生せず、連続製膜が良好なもの
×:連続製膜する際にチルロールへの貼り付き不良が発生し、連続製膜が不可のもの、および/または、連続製膜する際にロール汚れが発生し、連続製膜が不可のもの
【0070】
(5)外観の評価
以下の基準により透湿性フィルムの連続製膜性を評価した。
○:表面にメヤニが観察されないもの。
×:表面にメヤニが観察されるもの
【0071】
(6)透湿性の評価
実施例および比較例で得られた透湿性フィルムを折り返し、2方をヒートシールして袋状にした。その後、内容物として塩化カルシウムを入れた。次いで、もう1方をヒートシールして表面積が0.01m2になるように袋を作製した。次いで、得られた袋を40℃、湿度90%RHの条件で1時間保管した。保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m2・24h))をそれぞれ算出した。
次いで、以下の基準により透湿性フィルムの透湿性を評価した。
〇:水蒸気透過度が20g/(m2・24h)以上
×:水蒸気透過度が20g/(m2・24h)未満
なお、連続製膜性が「×」であるものについては、透湿性の評価はおこなっていない。
【0072】
[実施例1~6および比較例1~3]
表1に示す配合割合および層構成で各層を押出成形することにより、無延伸フィルムをそれぞれ得た。次いで、得られた無延伸フィルムを二軸延伸処理することで透湿性フィルムをそれぞれ作製し、各評価をおこなった。押出成形条件および二軸延伸処理条件は以下のとおりである。ここで、二軸延伸フィルム層(A)の一方の面に形成された表面樹脂層(B)を表面樹脂層1と呼び、他方の面に形成された表面樹脂層(B)を表面樹脂層2と呼ぶ。
多層押出成形機:60mmφ多層T-ダイ押出成形機(L/D=27、スクリュー精機株式会社製)
押出設定温度:200~250℃
加工速度:4.0m/min
縦延伸温度:120~145℃
縦延伸倍率:5.0倍
横延伸温度:160~180℃
横延伸倍率:10.0倍
得られた結果を表1に示す。なお、連続製膜性が「×」であるものについては、厚みの測定はおこなっていない。
【0073】
【0074】
実施例の透湿性フィルムは、透湿性、連続製膜性および外観に優れるとともに、表面樹脂層(B)の総厚みによって透湿性を高度に制御することが可能なものであった。一方、比較例の透湿性フィルムは透湿性および連続製膜性のバランスに劣っていた。
【符号の説明】
【0075】
10 透湿性フィルム
A 二軸延伸フィルム層
B 表面樹脂層