(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車両遠隔操作支援システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/00 20060101AFI20221101BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221101BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20221101BHJP
【FI】
G05D1/00 B
G08G1/09 V
B60W50/08
(21)【出願番号】P 2018084758
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安木 佑介
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】香川 正和
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 直輝
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334229(US,A1)
【文献】特開2018-032321(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145314(WO,A1)
【文献】特開2007-310698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両遠隔操作支援システム(500)であって、
自動運転を実行する自動運転システム(100)を有する車両(10)と、
オペレータ(OP)を有する管制センタ(20)と、を備え、
前記車両は、
前記車両の周辺情報を取得する周辺センサ(120)と、
走行している移動体が前記車両の周辺に存在することに起因して前記自動運転が困難となる場合を含む前記自動運転が困難な場合に前記周辺情報の送信と共に前記オペレータを呼び出す呼び出し部(110)を備え、
前記管制センタは、
前記オペレータが前記車両を遠隔操縦する遠隔操縦部(22)と、
前記オペレータが前記周辺情報に応じて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部(27)と、
前記パラメータを用いて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと前記周辺情報とを用いて前記車両の経路を生成する経路生成部(24)と、を備え
、
前記経路生成部は、前記オペレータが前記遠隔操縦において前記経路生成部が生成した経路を変更する場合に、前記周辺情報と前記パラメータと前記遠隔操縦における実際の走行経路とを学習する、車両遠隔操作支援システム。
【請求項2】
車両遠隔操作支援システムであって、
自動運転を実行する自動運転システムを有する車両と、
オペレータを有する管制センタと、を備え、
前記車両は、
前記車両の周辺情報を取得する周辺センサと、
走行している移動体が前記車両の周辺に存在することに起因して前記自動運転が困難となる場合を含む前記自動運転が困難な場合に前記周辺情報の送信と共に前記オペレータを呼び出す呼び出し部を備え、
前記管制センタは、
前記オペレータが前記車両を遠隔操縦する遠隔操縦部と、
前記オペレータが前記周辺情報に応じて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部と、
前記パラメータを用いて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと前記周辺情報とを用いて前記車両の経路を生成する経路生成部と、を備え
、
前記複数の走行パターンは、減速と、前記車両の進行方向と垂直方向における移動体と反対側への移動と、移動体の追い抜きと、走行車線の変更と、を含む、車両遠隔操作支援システム。
【請求項3】
車両遠隔操作支援システムであって、
自動運転を実行する自動運転システムを有する車両と、
オペレータを有する管制センタと、を備え、
前記車両は、
前記車両の周辺情報を取得する周辺センサと、
走行している移動体が前記車両の周辺に存在することに起因して前記自動運転が困難となる場合を含む前記自動運転が困難な場合に前記周辺情報の送信と共に前記オペレータを呼び出す呼び出し部を備え、
前記管制センタは、
前記オペレータが前記車両を遠隔操縦する遠隔操縦部と、
前記オペレータが前記周辺情報に応じて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部と、
前記パラメータを用いて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと前記周辺情報とを用いて前記車両の経路を生成する経路生成部と、を備え
、
前記経路生成部は、前記車両が前記車両の後方の移動体の移動を優先する経路を生成した場合に、前記車両に前記移動体の移動を促す情報を前記車両の指示表示部(140)に表示する指示をする、車両遠隔操作支援システム。
【請求項4】
請求項1
から請求項3のうちいずれか一項に記載の車両遠隔操作支援システムであって、
前記周辺情報は、前記車両の周辺の画像を含む、車両遠隔操作支援システム。
【請求項5】
請求項1
から請求項4のうちいずれか一項に記載の車両遠隔操作支援システムであって、
前記管制センタは、更に、前記経路生成部が生成した経路を前記オペレータに表示する経路表示部(26)を備える、車両遠隔操作支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両遠隔操作支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転システムとして、特許文献1に記載されているように、車両の周辺状況が判断できない場合に、運転者から情報を取得するものが知られている。また、周辺状況の判断として、特許文献2には、自車両の前方を走行する二輪車が検出された場合に、二輪車の走行状態に基づいて警告する注意喚起システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-41233号公報
【文献】特開2009-122854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転において、搭乗者の負担を低減したいという課題があった。そこで、オペレータによる遠隔操縦によって走行を継続できるものが考えられる。遠隔操縦においてオペレータは周辺状況の判断や走行経路の選定を行う必要があり、煩雑となるおそれがある。そのため、遠隔操縦におけるオペレータの負担を低減できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本発明の第1の形態によれば、車両遠隔操作支援システム(500)が提供される。この車両遠隔操作支援システムは;自動運転を実行する自動運転システム(100)を有する車両(10)と;オペレータ(OP)を有する管制センタ(20)と、を備える。前記車両は;前記車両の周辺情報を取得する周辺センサ(120)と;走行している移動体が前記車両の周辺に存在することに起因して前記自動運転が困難となる場合を含む前記自動運転が困難な場合に前記周辺情報の送信と共に前記オペレータを呼び出す呼び出し部(110)を備える。前記管制センタは;前記オペレータが前記車両を遠隔操縦する遠隔操縦部(22)と;前記オペレータが前記周辺情報に応じて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部(27)と;前記パラメータを用いて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと前記周辺情報とを用いて前記車両の経路を生成する経路生成部(24)と、を備える。前記経路生成部は、前記オペレータが前記遠隔操縦において前記経路生成部が生成した経路を変更する場合に、前記周辺情報と前記パラメータと前記遠隔操縦における実際の走行経路とを学習する。
本発明の第2の形態によれば、車両遠隔操作支援システムが提供される。この車両遠隔操作支援システムは;自動運転を実行する自動運転システムを有する車両と;オペレータを有する管制センタと、を備える。前記車両は;前記車両の周辺情報を取得する周辺センサと;走行している移動体が前記車両の周辺に存在することに起因して前記自動運転が困難となる場合を含む前記自動運転が困難な場合に前記周辺情報の送信と共に前記オペレータを呼び出す呼び出し部を備える。前記管制センタは;前記オペレータが前記車両を遠隔操縦する遠隔操縦部と;前記オペレータが前記周辺情報に応じて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部と;前記パラメータを用いて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと前記周辺情報とを用いて前記車両の経路を生成する経路生成部と、を備える。前記複数の走行パターンは、減速と、前記車両の進行方向と垂直方向における移動体と反対側への移動と、移動体の追い抜きと、走行車線の変更と、を含む。
本発明の第3の形態によれば、車両遠隔操作支援システムが提供される。この車両遠隔操作支援システムは;自動運転を実行する自動運転システムを有する車両と;オペレータを有する管制センタと、を備える。前記車両は;前記車両の周辺情報を取得する周辺センサと;走行している移動体が前記車両の周辺に存在することに起因して前記自動運転が困難となる場合を含む前記自動運転が困難な場合に前記周辺情報の送信と共に前記オペレータを呼び出す呼び出し部を備える。前記管制センタは;前記オペレータが前記車両を遠隔操縦する遠隔操縦部と;前記オペレータが前記周辺情報に応じて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部と;前記パラメータを用いて前記車両の前記遠隔操縦における走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと前記周辺情報とを用いて前記車両の経路を生成する経路生成部と、を備える。前記経路生成部は、前記車両が前記車両の後方の移動体の移動を優先する経路を生成した場合に、前記車両に前記移動体の移動を促す情報を前記車両の指示表示部(140)に表示する指示をする。
【0007】
この形態の車両遠隔操作支援システムによれば、経路生成部は、オペレータからのパラメータ入力によって走行パターンを選択し、経路を生成するため、オペレータが経路を生成する煩雑さを低減できる。そのため、遠隔操縦におけるオペレータの負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両遠隔操作支援システムの構成の概要を示す説明図である。
【
図2】自動運転システムの構成の概要を示す説明図である。
【
図3】管制センタの構成の概要を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態における自動運転が困難な場合の一例を示した図である。
【
図7】第1実施形態における走行パターン選択処理の一例を示した図である。
【
図10】第2実施形態における走行パターン選択処理の一例を示した図である。
【
図11】走行パターンP4の一例を示した図である。
【
図12】走行パターンP5の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、車両遠隔操作支援システム500は、車両10と管制センタ20を備える。本実施形態の車両10は、自動運転モードと手動運転モードと遠隔操縦モードの3つのモードで走行可能である。車両10は自動運転システム100を搭載する。手動運転モードでは、車両10の搭乗者によって操縦される。遠隔操縦モードでは、車両10は遠隔操縦元である管制センタ20のオペレータOPによって遠隔操縦される。車両10は3つのモードのいずれで走行しているかにかかわらず、車両10の周辺の画像を管制センタ20に送信する、管制センタ20は、車両10より受信した画像を画像表示部21に表示し、オペレータOPが遠隔操縦部22で車両10を遠隔操縦することが可能である。遠隔操縦部22は、例えば、ハンドル22aとマウス22bとを含む。
【0010】
図2に示すように、自動運転システム100は、呼び出し部110と、周辺センサ120と、自車位置センサ126と、指示表示部140と、通信部200と、運転制御EUC(Electronic Control Unit)210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、通信部200と、を備える。呼び出し部110と、運転制御ECU210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240とは、車載ネットワーク250を介して接続される。
【0011】
呼び出し部110は、状況判定部112と、周辺情報送信部114と、車両情報送信部116と、を備える。呼び出し部110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。
【0012】
状況判定部112は、周辺センサ120の検出信号を用いて、自動運転が可能か否かを判定し、自動運転が困難な場合に、通信部200を介して管制センタ20のオペレータOPを呼び出す。周辺情報送信部114は、周辺センサ120の検出信号を通信部200を介して遠隔操縦元である管制センタ20に送信する。車両情報送信部116は、自車位置センサ126で検知された自車位置や車速等を含む車両情報を通信部200を介して管制センタ20に送信する。
【0013】
周辺センサ120は、周辺認識カメラ122と周辺物体センサ124とを備える。周辺認識カメラ122は、自車両の周囲を撮像して画像を取得する。周辺物体センサ124は、自車両の周囲の状況を検出する。周辺物体センサ124として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。周辺センサ120は更に、走行している車線の左右の区画線の存在とその位置や、信号機の状態、交通標識を検出する。
【0014】
自車位置センサ126は、現在の自車位置を検出する。自車位置センサ126として、例えば、汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))やジャイロセンサ等が挙げられる。
【0015】
指示表示部140は、遠隔操縦において移動体に道を譲る走行パターンが選択された場合、移動体に対して道を譲ることを伝える。指示表示部140は、例えば、電光掲示板やウィンカーが挙げられる。
【0016】
通信部200は、管制センタ20への自動運転が困難である状況や遠隔操縦の要求、周辺情報、車両情報の送信と、管制センタ20からの操縦内容の受信と、を行う。
【0017】
運転制御ECU210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。
【0018】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、運転制御ECU210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。また、遠隔操縦される場合、駆動力制御ECU220は、管制センタ20から与えられた要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0019】
制動力制御ECU230は、車両の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、運転制御ECU210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。また、遠隔操縦される場合、制動力制御ECU230は、管制センタ20から与えられた要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0020】
操舵制御ECU240は、車両の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、運転者が少量の力でステアリングを操作でき、車両の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、運転制御ECU210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。また、遠隔操縦される場合、操舵制御ECU240は、管制センタ20から与えられた要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0021】
図3に示すように、管制センタ20は、画像表示部21と、遠隔操縦部22と、通信部23と、経路生成部24と、データベース25と、経路表示部26と、入力部27とを備える。管制センタ20は、遠隔操縦を実行するオペレータOPが1人以上存在する。
【0022】
画像表示部21は、通信部23を介して受信した車両10の周辺の画像を表示する。遠隔操縦部22は、通信部23を介して車両10を遠隔操縦する。経路生成部24は、遠隔操縦における車両10の走行パターンを複数の走行パターンの中から選択し、選択した走行パターンと通信部23を介して受信した周辺情報とを用いて遠隔操縦における車両10の経路を生成する。複数の走行パターンは、例えば、減速、車両10の進行方向と垂直方向における移動体と反対側への移動、移動体の追い抜き、走行車線の変更、を含む。データベース25は、経路生成部24が経路を生成する際に用いる車線数、車線幅、各車線の中心座標、カーブ曲率、停止線位置、信号機位置等の道路情報を記憶する。経路表示部26は、経路生成部24が生成した経路をオペレータOPに表示する。入力部27は、オペレータが走行パターンを選択するためのパラメータを入力する入力部である。
【0023】
図4に示す呼び出し処理は、自動運転が困難な場合に、遠隔操縦の要求を行う処理である。この処理は自動運転システム100の動作中、呼び出し部110により繰り返し実行される処理である。
【0024】
まず、状況判定部112は、ステップS10において周辺センサ120から周辺情報を取得する。次に、状況判定部112は、ステップS20において、ステップS10で取得した周辺情報を用いて自動運転が困難であるか否か判別する。自動運転が困難である場合、呼び出し部110はステップS30に進み、通信部200を介して管制センタ20に周辺情報や車両情報の送信と共に遠隔操縦を要求する。一方、自動運転が困難でない場合、ステップS10の処理へ戻る。
【0025】
図5に示す経路生成処理は、自動運転が困難な場合に、遠隔操縦における経路を生成する処理である。本実施形態では、
図6に示すように、自車両VL1の前方の予め定められた範囲を自車両VL1の車速よりも低速で移動体VL2が走行している場合に、自動運転が困難と判断されて遠隔操縦の要求が発行される場合を例として説明する。この範囲は予め実験的または経験的に定めることができ、例えば20mである。
図5の例では移動体VL2は二輪車である。
【0026】
まず、通信部23は、ステップS100において、車両10から遠隔操縦要求があるか否か判別する。遠隔操縦要求がない場合、通信部23はステップS100の処理に戻る。一方、遠隔操縦要求がある場合、経路生成部24は、ステップS110に進み、オペレータOPに車両10の遠隔操縦における走行パターンを選択するためのパラメータの入力を要求する。パラメータは、ステップS100で遠隔操縦要求と共に取得した周辺情報をオペレータOPが観察して入力部27によりオペレータOPが入力する。本実施形態では、パラメータとして、自転車の乗員人数と、乗員年齢と、走行している路面の状況(例えば、水たまりや凸凹、ガードレールの有無)と、をオペレータOPが入力する。パラメータはこれらに限られず、例えば、自転車の進行予測方向等を入力するようにしてもよい。あるいは、複数の走行パターンの中から特定の一つの走行パターンを選択することを示す数値や選択肢をパラメータとして入力するようにしてもよい。
【0027】
次に、経路生成部24は、ステップS120において、ステップS110で入力されたパラメータを取得する。続いて、経路生成部24は、ステップS130において、ステップS120で取得したパラメータを用いて、複数の走行パターンの中から走行パターンを選択する。走行パターンの選択については後述する。経路生成部24は、ステップS140において、ステップS100で取得した周辺情報とステップS130で選択した走行パターンを用いて、経路を生成する。経路生成部24は、経路表示部26に生成した経路(以下、「生成経路」ともいう)を表示する。
【0028】
続いて、オペレータOPは、ステップS150において経路に従って走行させてもよいか否か確認する。生成経路ではよくない場合には、ステップS160に進み、オペレータOPが遠隔操縦部22を操作して生成経路の一部を変更したり新たな経路を入力することによって経路を変更する。一方、経路が良好な場合、遠隔操縦部22はステップS170に進み、経路に従って車両10を走行させる。具体的には、例えば、オペレータOPが走行OKの指示を入力すると、管制センタ20が車両10に経路情報を送信してその経路に従って走行させる。なお、ステップS150、160は省略してもよい。その場合、ステップS130における経路表示部26への生成経路の表示を省略してもよい。
【0029】
図7に示すパターン選択処理(
図5、ステップS130)は、まず、ステップS200において、経路生成部24が、減速状況がないか否か判別する。本実施形態において、「減速状況」とは、車両10の減速が必要である状況を意味する。減速状況としては、例えば、車両10の走行路線上の赤信号や踏切の存在や、右左折の走行予定が挙げられる。経路生成部24は、オペレータOPによる入力部27から入力されたパラメータによって判別してもよく、周辺情報より判別してもよい。減速状況がある場合、ステップS244に進み、経路生成部24はパターンP3を選択する。走行パターンについては後述する。一方、減速状況がない場合、ステップS210の処理に進む。
【0030】
経路生成部24は、ステップS210において、オペレータOPによる入力部27から入力されたパラメータを用いて自転車の乗員人数が1人か否か判別する。乗員人数が2人以上の場合、自転車走行が不安定になりやすい傾向がある。乗員人数が2人以上の場合、ステップS242に進み、経路生成部24はパターンP2を選択する。一方、乗員人数が1人の場合、経路生成部24はステップS220の処理に進む。
【0031】
経路生成部24は、ステップS220において、オペレータOPによる入力部27から入力されたパラメータを用いて自転車の乗員の年齢が予め定められた範囲内であるか否か判定する。この範囲は予め実験的または経験敵に定めることができ、例えば、13歳~50歳である。この範囲内の年齢の乗員であれば、幼児や高齢者でないため、安定した自転車走行ができる傾向がある。乗員の年齢が範囲内でない場合、ステップS242に進み、経路生成部24はパターンP2を選択する。一方、乗員の年齢が範囲内である場合、ステップS230に進み、オペレータOPによる入力部27から入力されたパラメータを用いて車両10が走行する路面上に異物が無いか否か判定する。異物が無い場合、ステップS240に進み、経路生成部24はパターンP1を選択する。一方、異物がある場合、ステップS242に進み、経路生成部24はパターンP2を選択する。なお、複数の走行パターンの中から特定の一つの走行パターンを選択することを示す数値や選択肢をパラメータとして入力する場合、ステップS200~S230は省略される。
【0032】
図6に示すように、パターンP1は、自車両VL1がそのまま直進して移動体VL2を追い抜く走行パターンである。自車両VL1が車線Ln1を方向D1に直進中において、走行予定走路、すなわち車線Ln1の前方に自車両VL1の車速よりも遅い速度で走行している移動体VL2がある場合、走行経路を変更すること無く、移動体VL2を追い抜く。
【0033】
図8に示すように、パターンP2は、自車両VL1の幅方向に移動体VL2と反対側へ移動して移動体VL2を追い抜く走行パターンである。より具体的には、自車両VL1が曲線状の経路を通ることによって、移動体VL2を追い抜く走行パターンである。自車両VL1が車線Ln1を方向D1に直進中において、走行予定走路、すなわち車線Ln1の前方に自車両VL1の車速よりも遅い速度で走行している移動体VL2があり、対向車線Ln2を車両が走行していない場合、自車両VL1の幅方向における移動体VL2と反対側である対向車線Ln2側へはみ出して移動体VL2を追い抜く。
【0034】
図9に示すように、パターンP3は、自車両VL1が減速する走行パターンである。自車両VL1が車線Ln1を左折する場合、移動体VL2を追い抜くこと無く、減速をして移動体VL2に追従して左折を行う。
【0035】
以上で説明した本実施形態の車両遠隔操作支援システム500によれば、経路生成部24は、オペレータOPからのパラメータ入力によって走行パターンを選択し、経路を生成するため、オペレータOPが経路を生成する煩雑さを低減できる。そのため、遠隔操縦におけるオペレータOPの負担を低減できる。
【0036】
B.第2実施形態:
図10に示す第2実施形態の走行パターン選択処理は、車両10の後方の予め定められた範囲を車両10よりも高速で移動体が走行している場合の処理である。第2実施形態の車両遠隔操作支援システムの構成は、第1実施形態の車両遠隔操作支援システムの構成と同一であるため、車両遠隔操作支援システムの構成の説明は省略する。
【0037】
まず、ステップS300において、経路生成部24は、自車両と移動体とが交差する可能性があるか否か判別する。この判断は、オペレータOPによる入力部27から入力されたパラメータによって行ってもよく、オペレータOPの入力したパラメータを用いること無く周辺情報と車両情報とを用いて行ってもよい。交差する可能性がある場合、ステップS310に進み、経路生成部24はパターンP4を選択する。走行パターンについては後述する。一方、交差する可能性がない場合、ステップS315に進み、パターンP5を選択する。
【0038】
図11に示すように、パターンP4は、自車両VL1が路側により近い経路を通ることによって移動体VL2が自車両VL1と併走できない状態とする走行パターンである。自車両VL1が車線Ln1を左折する場合、左折前に路側に寄り、自転車に減速や注意喚起を促す。
【0039】
図12に示すように、パターンP5は、自車両VL1が幅方向に移動して移動体VL2よりも低速で走行することによって移動体VL2に追い抜かせる走行パターンである。自車両VL1が車線Ln1を方向D1に直進中において、自車両VL1の進行方向よりも道路の中央側へ移動できるスペースがある場合、自車両VL1を道路の中央側へ移動して、移動体VL2に追い抜くことを促す。なお、自車両VL1は車線Ln1の両端のどちら側に移動してもよく、移動体VL2が二輪車の場合には道路の中央側に寄り、移動体VL2が四輪車の場合には路側に寄ることが好ましい。
【0040】
図13に示すように、経路生成部24は、車両10に移動体の移動を促す情報を指示表示部140に表示する指示をしてもよい。また、車両10は、移動体側のウィンカーを移動体側と反対側から移動体側へ順にシーケンシャル点灯することで、追い抜くことを促す表示としてもよい。
【0041】
以上で説明した本実施形態の車両遠隔操作支援システム500によれば、経路生成部24は、オペレータOPからのパラメータ入力によって走行パターンを選択し、経路を生成するため、オペレータOPが経路を生成する煩雑さを低減できる。そのため、遠隔操縦におけるオペレータOPの負担を低減できる。
【0042】
C.その他の実施形態:
上記実施形態において、経路生成部24は、
図5のステップS160において、オペレータOPが遠隔操縦において経路生成処理で生成した経路を変更する場合に、周辺情報とパラメータと遠隔操縦における実際の走行経路とを学習してもよい。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両、20 管制センタ、21 画像表示部、22 遠隔操縦部、22a ハンドル、22b マウス、23 通信部、24 経路生成部、25 データベース、26 経路表示部、27 入力部、100 自動運転システム、110 呼び出し部、112 状況判定部、114 周辺情報送信部、116 車両情報送信部、120 周辺センサ、122 周辺認識カメラ、124 周辺物体センサ、126 自車位置センサ、140 指示表示部、200 通信部、210 運転制御ECU、220 駆動力制御ECU、230 制動力制御ECU、240 操舵制御ECU、250 車載ネットワーク、500 車両遠隔操作支援システム、OP オペレータ