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  • 特許-梱包フィルム及び梱包体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】梱包フィルム及び梱包体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20221101BHJP
   B65D 85/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B65D85/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018177480
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020045162
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 里香
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-202372(JP,A)
【文献】特開平11-245986(JP,A)
【文献】特開平07-257576(JP,A)
【文献】特開2008-307779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/02
B65D 85/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状形状を有する梱包対象の両端面及び周面を覆うための梱包フィルムであって、
梱包時に外部に面することになる当該梱包フィルムの外側面において、前記両端面のうちの一方を覆うことになる前記外側面の第1領域の静摩擦係数が、前記両端面のうちの他方を覆うことになる前記外側面の第2領域の静摩擦係数よりも高
前記第1領域の静摩擦係数が前記第2領域の静摩擦係数よりも高くなるように、前記第1領域と前記第2領域とが異なるフィルム材料から構成されている、
梱包フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の梱包フィルムにおいて、
前記第1領域の静摩擦係数が前記第2領域の静摩擦係数よりも高くなるように、少なくとも前記第1領域に粗面化処理が施されている、
梱包フィルム。
【請求項3】
柱状形状を有する梱包対象と、
前記梱包対象の両端面及び周面を覆う請求項1又は請求項2に記載の梱包フィルムと、を備えた、
梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状形状を有する梱包対象を覆うための梱包フィルム、及び、梱包フィルムを用いて梱包対象を覆った梱包体、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、柱状形状を有する梱包対象を覆うための梱包フィルムが提案されている。例えば、ドーナツ状に束巻きされた電線(以下「束線」ともいう。)の外周面、及び、束線の上下両面を覆うための、熱収縮性のプラスチックシートが提案されている。このプラスチックシートは、束線の中空部の内側面を露出させながら、束線の外周面および上下両面を覆うようになっている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-202372号公報
【文献】特開2000-344285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の梱包フィルムは、一般に、束線を梱包フィルムで覆った梱包体の取り扱いの利便性などの観点から、潤滑性の高いプラスチックシートから構成されている。しかし、例えば、一の梱包体の上面に他の梱包体の下面が接するように多数の梱包体を積層して保管する際、プラスチックシートの潤滑性の高さに起因し、梱包体同士が相互に滑り易く、梱包体を積層する作業や梱包体が積層された状態を維持することが困難となる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、梱包フィルムとしての取り扱い易さを維持しながら複数の梱包体の積層にも適した梱包フィルム、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る梱包フィルム及び梱包体は、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
柱状形状を有する梱包対象の両端面及び周面を覆うための梱包フィルムであって、
梱包時に外部に面することになる当該梱包フィルムの外側面において、前記両端面のうちの一方を覆うことになる前記外側面の第1領域の静摩擦係数が、前記両端面のうちの他方を覆うことになる前記外側面の第2領域の静摩擦係数よりも高
前記第1領域の静摩擦係数が前記第2領域の静摩擦係数よりも高くなるように、前記第1領域と前記第2領域とが異なるフィルム材料から構成されている、
梱包フィルムであること。
[2]
上記[1]に記載の梱包フィルムにおいて、
前記第1領域の静摩擦係数が前記第2領域の静摩擦係数よりも高くなるように、少なくとも前記第1領域に粗面化処理が施されている、
梱包フィルムであること。

柱状形状を有する梱包対象と、
前記梱包対象の両端面及び周面を覆う上記[1]又は上記[2]に記載の梱包フィルムと、を備えた、
梱包体であること。
【0007】
上記[1]の構成の梱包フィルムによれば、梱包対象の両端面および周面を覆う梱包フィルムの外側面について、両端面のうちの一方を覆う第1領域の外側面の摩擦係数が、両端面のうちの他方を覆う第2領域の外側面の摩擦係数よりも高くなっている。このため、梱包フィルムで梱包対象を覆う際、梱包対象の上面に梱包フィルムの第1領域が位置し、且つ、梱包対象の下面に梱包フィルムの第2領域が位置するように梱包すれば、積層されていない梱包物を滑らせるように移動させる際には下面(即ち、第2領域)の摩擦係数が相対的に低いため作業性に優れ、梱包物を積層する際には上面(即ち、第1領域)の摩擦係数が相対的に高いため梱包体同士の滑りが抑制されて積層が容易になる。よって、本構成の梱包フィルムは、梱包フィルムの外側面の全体が均一な摩擦係数を有する場合に比べ、梱包フィルムとしての取り扱い易さを維持しながら複数の梱包体の積層にも適している。
更に、上記[1]の構成の梱包フィルムによれば、梱包フィルムの第1領域と第2領域とを異なるフィルム材料から構成することにより、第1領域の摩擦係数が第2領域の摩擦係数よりも高くされる。例えば、フィルムを構成する樹脂材料に加える添加剤(例えば、金属石鹸、ワックス、及び、オイル等)の種類や量を調整することで、第1領域および第2領域に適したフィルム材料を準備できる。また、実際に梱包フィルムを製造するにあたり、第1領域を構成するフィルムと第2領域を構成するフィルムとを個別に準備してそれらフィルムを張り合わせてもよいし、異なるフィルム材料を用いて一括して(例えば、二色成形などの手法により)梱包フィルムを成形してもよい。
【0008】
上記[2]の構成の梱包フィルムによれば、梱包フィルムの外側面に粗面化処理を施すことにより、第1領域の摩擦係数が第2領域の摩擦係数よりも高くされる。粗面化処理は、第1領域のみに施されてもよく、第1領域および第2領域の双方に施されてもよい。なお、粗面化処理として、例えば、コロナ放電処理やエンボス加工処理が挙げられる。
【0010】
上記[]の構成の梱包体によれば、梱包対象の両端面および周面を覆う梱包フィルムの外側面について、両端面のうちの一方を覆う第1領域の外側面の摩擦係数が、両端面のうちの他方を覆う第2領域の外側面の摩擦係数よりも高くなっている。このため、梱包フィルムで梱包対象を覆う際、梱包対象の上面に梱包フィルムの第1領域が位置し、且つ、梱包対象の下面に梱包フィルムの第2領域が位置するように梱包すれば、積層されていない梱包物を滑らせるように移動させる際には下面(即ち、第2領域)の摩擦係数が相対的に低いため作業性に優れ、梱包物を積層する際には上面(即ち、第1領域)の摩擦係数が相対的に高いため梱包体同士の滑りが抑制されて積層が容易になる。よって、本構成の梱包体は、梱包フィルムの外側面の全体が均一な摩擦係数を有する場合に比べ、取り扱い易く且つ積層にも適している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、梱包フィルムとしての取り扱い易さを維持しながら複数の梱包体の積層にも適した梱包フィルムを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)は、第1実施形態に係る梱包フィルムで梱包した束線の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のB-B位置の断面図であり、図1(C)は側面図である。
図2図2は、積層された束線の崩れ難さの試験方法及び摩擦係数等の測定結果を示す表である。
図3図3は、第1実施形態に係る梱包フィルムの製造方法を示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態に係る梱包フィルムを用いて束線を梱包する工程を示す斜視図である。
図5図5(A)は、第2実施形態に係る梱包フィルムの作成方法を示す斜視図であり、図5(B)は、第2実施形態に係る梱包フィルムで梱包した束線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る梱包フィルム及び梱包体について説明する。図1(A)は、第1実施形態に係る梱包フィルムで梱包した束線(即ち、梱包体)の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のB-B位置の断面図であり、図1(C)は側面図である。
【0015】
図1(B)に示すように、ドーナツ状に束巻きされた電線ケーブル(以下「束線1」という。)は、その外周面1aならびに束の上下の両端面1b,1cが、梱包フィルム10Aによって梱包されるとともに、束線1の中空部1eの内側内面1dは梱包されていない。このため、梱包フィルム10Aを開くことなく、内側内面1dに面する電線を中空部1eから引き出すことができる。
【0016】
図1(A)及び図1(B)に示すように、梱包フィルム10Aは、束線1の上端面1bを覆う第1領域11と、束線1の下端面1cを覆う第2領域12と、束線1の外周面1aを覆う第3領域13を有する。第1領域11の上外側面111の静摩擦係数は、第2領域12の下外側面121の静摩擦係数よりも高い。以下、静摩擦係数を単に「摩擦係数」ともいう。
【0017】
上外側面111は、粗面化処理としてコロナ処理が施されたコロナ処理層14が設けられている。また、下外側面121は、粗面化処理としてエンボス加工が施されたエンボス加工層15が設けられている。コロナ処理層14の上表面の摩擦係数は、エンボス加工層15の下表面の摩擦係数よりも高く設定される。
【0018】
また、第1領域11と第2領域12の間には、束線1の外周面1aを覆う第3領域13が設けられている。第3領域13の外周面131には、コロナ処理層16が部分的に設けられている。コロナ処理層16は、例えば、矩形状に形成されており、所定間隔で設けて、色々な角度から視認することができるようにする。なお、図1(C)に示すように、コロナ処理層14及びエンボス加工層15を外周面131まで延長して、第3領域13の一部を構成するようにすることもできる。
【0019】
以下、第1実施形態に係る梱包フィルム10Aを用いて束線1を覆った梱包体の特性についての評価結果を述べる。図2に示すように、本実施形態に係る梱包フィルム10Aにより梱包された3つの束線1を積層した。梱包フィルム10Aの上外側面111(即ち、第1領域11)の摩擦係数および下外側面121(即ち、第2領域12)の摩擦係数は、周知の測定方法により、予め測定した。なお、JIS K 6768に準拠した濡れ張力試験において、梱包フィルム10Aの上外側面111(即ち、第1領域11)の濡れ張力は33mN/mであり、下外側面121(即ち、第2領域12)の濡れ張力は39mN/mであった。
【0020】
そして、2段目の束線1を積層方向に交差する向き(即ち、横向き)に引くように外力を及ぼしたとき、2段目の束線1が動き始める時点での外力の大きさを荷重計で計測した。この外力の大きさは、図2に示す表中に「滑り性」として記載されている。また、比較例として、図2に示すように外側面の摩擦係数が一様であるフィルムにより梱包された3つの束線1を、同様に積層し、同様に滑り性を測定した。
【0021】
その結果、図2に示すように、第1実施形態に係る梱包フィルム10Aを用いた場合の滑り性(9.7kg)が、比較例の場合の滑り性(8.6kg)よりも大きいことが明らかになった。本試験結果により、第1実施形態に係る梱包フィルム10Aを用いた場合、比較例に比べ、積層した束線1の意図しない滑りが生じ難く、束線1を積層した状態をより適正に維持できる(即ち、積層した束線1が崩れ難い)ことが明らかになった。
【0022】
次いで、上記構成の梱包フィルム10Aの製造方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る梱包フィルム10Aを製造する様子を示す斜視図である。
【0023】
図3に示すように、図中最も左側には、梱包フィルム10Aの材料となるフィルムFをロールしたフィルムロール20があり、その下流側(右側)隣には、コロナ処理装置21が配置されている。コロナ処理装置21は、送られてきたフィルムFを支持する支持ローラ211と、支持ローラ211に対向してフィルムFの幅方向(図3において上下方向)における上側約三分の一にコロナ処理を施す第1コロナ処理装置212を有しており、前述したコロナ処理層14を形成する。第1コロナ処理装置212では、送られてくるフィルムFの全長にわたってコロナ処理を施す。
【0024】
また、コロナ処理装置21は、フィルムFの幅方向中央部において幅の狭い領域にコロナ処理を施す第2コロナ処理装置213を有しており、前述したコロナ処理層16を形成する。第2コロナ処理装置213では、送られてくるフィルムFの送り方向に所定の長さでコロナ処理を施すようになっている。
【0025】
コロナ処理装置21の下流側隣には、エンボス処理装置22が配置されている。エンボス処理装置22は、送られてきたフィルムFを挟む第1ローラ221と第2ローラ222を有する。第1ローラ221及び第2ローラ222は、幅方向下側の約三分の一に、エンボス処理を施すためのエンボス処理部223を有する。エンボス処理部223は、送られてきたフィルムFの全長にわたってエンボス処理を施す。
【0026】
エンボス処理装置22の下流側には、巻取りローラ23が設けられており、製造された梱包フィルム10Aを巻き取る。このようにして、梱包フィルム10Aが製造される。
【0027】
次いで、束線1の梱包方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る梱包フィルム10Aを用いて束線1を梱包する状態を示す斜視図である。
【0028】
図4に示すように、梱包フィルム10Aを折り曲げて、第1領域11、第2領域12及び第3領域13を形成する。そして、束線1の外周面1aに第3領域13を配置するとともに、上端面1bに第1領域11を、下端面1cに第2領域12を配置して、束線1を覆う。その後、梱包フィルム10Aを加熱して収縮させ、束線1を梱包する。これら工程を経て、束線1が梱包フィルム10Aに覆われた梱包体が製造される。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態に係る梱包フィルム10Aは、束線1の両端面1b,1cおよび周面1aを覆う梱包フィルム10Aの外側面について、両端面のうちの一方を覆う第1領域11の外側面の摩擦係数が、両端面のうちの他方を覆う第2領域12の外側面の摩擦係数よりも高くなっている。このため、梱包フィルム10Aで束線1を覆う際、束線1の上面に梱包フィルム10Aの第1領域11が位置し、且つ、束線1の下面に梱包フィルム10Aの第2領域12が位置するように梱包することで、積層されていない梱包物を滑らせるように移動させる際には下面(即ち、第2領域12)の摩擦係数が相対的に低いため作業性に優れ、梱包物を積層する際には上面(即ち、第1領域11)の摩擦係数が相対的に高いため梱包体同士の滑りが抑制されて積層が容易になる。よって、梱包フィルム10A、及び、梱包フィルム10Aによって覆われた束線1は、梱包フィルム10Aの外側面の全体が均一な摩擦係数を有する場合に比べ、梱包フィルム10Aとしての取り扱い易さを維持しながら複数の梱包体の積層にも適している。
【0030】
更に、梱包フィルム10Aによれば、梱包フィルム10Aの外側面に粗面化処理を施すことにより、第1領域11の摩擦係数が第2領域12の摩擦係数よりも高くされる。
【0031】
更に、梱包フィルム10Aによれば、第1領域11の静摩擦係数が0.3以上であり且つ第2領域12の静摩擦係数が0.1以下であることから、梱包体の取り扱い易さと積層し易さとのバランスに優れた梱包フィルム10Aを提供できる。
【0032】
更に、梱包フィルム10Aによれば、JIS K 6768に準拠した濡れ張力試験において、第1領域11の濡れ張力が35mN/m以下であり且つ第2領域12の濡れ張力が38mN/m以上であることから、梱包体の取り扱い易さと積層し易さとのバランスに優れた梱包フィルム10Aを提供できる。
【0033】
更に、本実施形態に係る梱包フィルム10Aによれば、第1領域11及び第2領域12の間に設けられ束線1の外周面1aを覆う第3領域13の外周面131に、濡れ性のよいコロナ処理層16が部分的に設けられている。このため、積層状態で外部から視認できる外周面131に印字ができるので、積層状態にある所望の束線1の出し入れが容易になり、作業性が向上する。
【0034】
<第2実施形態>
次いで、図面を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る梱包フィルム10Bについて説明する。図5(A)は、第2実施形態に係る梱包フィルム10Bの作成方法を示す斜視図であり、図5(B)は、第2実施形態に係る梱包フィルム10Bで梱包した束線1の断面図である。なお、前述した第1実施形態に係る梱包フィルム10Aと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0035】
図5(A)に示すように、第2実施形態に係る梱包フィルム10Bは、帯状の高摩擦係数フィルム31と、帯状の低摩擦係数フィルム32を用いて製造する。すなわち、低摩擦係数フィルム32の幅方向の内側約半分と、高摩擦係数フィルム31の幅方向の内側約半分とを重ねて張り合わせる。高摩擦係数フィルム31及び低摩擦係数フィルム32の摩擦係数は、例えば、フィルムを構成する樹脂材料に加える添加剤(例えば、金属石鹸、ワックス、及び、オイル等)の種類や量により、調整するが可能である。そして、高摩擦係数フィルム31及び低摩擦係数フィルム32の外側の約半分を図中上方へ折り曲げる。これにより、図5(B)に示すように、束線1を梱包した際に、第1領域11の上外側面111は高摩擦係数となる。一方、第2領域12の下外側面121及び第3領域13の外周面131は、低摩擦係数となる。
【0036】
なお、第2実施形態では、2種類のフィルム(高摩擦係数フィルム31及び低摩擦係数フィルム32)を個別に準備してそれらフィルムを張り合わせ、梱包フィルム10Bを製造している。これに対し、例えば、異なるフィルム材料を用いて一括して(例えば、二色成形などの手法により)梱包フィルムを成形してもよい。
【0037】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
例えば、上記各実施形態では、梱包フィルム10A,10Bによって覆われる梱包対象として、束線1が用いられている。しかし、本発明の梱包フィルムは、必ずしも束線1を梱包する目的のみに用いられる必要はなく、柱状形状を有する他の梱包対象を覆うように用いられてもよい。
【0039】
ここで、上述した本発明に係る梱包フィルム及び梱包体の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
柱状形状を有する梱包対象(1)の両端面(1b,1c)及び周面(1a)を覆うための梱包フィルム(10A,10B)であって、
梱包時に外部に面することになる当該梱包フィルム(10A,10B)の外側面において、前記両端面(1b,1c)のうちの一方を覆うことになる前記外側面の第1領域(11)の静摩擦係数が、前記両端面(1b,1c)のうちの他方を覆うことになる前記外側面の第2領域(12)の静摩擦係数よりも高い、
梱包フィルム(10A,10B)。
[2]
上記[1]に記載の梱包フィルム(10A,10B)において、
前記第1領域(11)の静摩擦係数が前記第2領域(12)の静摩擦係数よりも高くなるように、少なくとも前記第1領域(11)に粗面化処理が施されている、
梱包フィルム(10A,10B)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の梱包フィルム(10A,10B)において、
前記第1領域(11)の静摩擦係数が前記第2領域(12)の静摩擦係数よりも高くなるように、前記第1領域(11)と前記第2領域(12)とが異なるフィルム材料から構成されている、
梱包フィルム(10A,10B)。
[4]
柱状形状を有する梱包対象(1)と、
前記梱包対象の両端面(1b,1c)及び周面(1a)を覆う上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の梱包フィルム(10A,10B)と、を備えた、
梱包体。
【0040】
更に、上述した本発明に係る梱包フィルム及び梱包体の実施形態は、以下[5]~[7]の点も特徴としている。
[5]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の梱包フィルム(10A,10B)において、
前記第1領域(11)の静摩擦係数が0.3以上であり、
前記第2領域(12)の静摩擦係数が0.1以下である、
梱包フィルム(10A,10B)。
[6]
上記[1]~上記[3]及び上記[5]の何れか一つに記載の梱包フィルム(10A,10B)において、
JIS K 6768に準拠した濡れ張力試験において、
前記第1領域(11)の濡れ張力が35mN/m以下であり、
前記第2領域(12)の濡れ張力が38mN/m以上である、
梱包フィルム(10A,10B)。
[7]
上記[4]に記載の梱包体において、
前記梱包対象(1)は、
柱状形状を有するように電線が巻かれた束線(1)である、
梱包体。
【符号の説明】
【0041】
1 束線(梱包対象)
1a 外周面(周面)
1b 上端面(端面)
1c 下端面(端面)
1e 中空部
10A、10B 梱包フィルム
11 第1領域
111 上外側面(外側面)
12 第2領域
121 下外側面(外側面)
13 第3領域
131 外周面(外側面)
14 コロナ処理層
15 エンボス加工層
16 コロナ処理層
31 高摩擦係数フィルム
32 低摩擦係数フィルム
図1
図2
図3
図4
図5