(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ロータアッセンブリ及び回転機械
(51)【国際特許分類】
F01D 5/10 20060101AFI20221101BHJP
F01D 25/06 20060101ALI20221101BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20221101BHJP
F04D 29/34 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F01D5/10
F01D25/06
F04D29/66 L
F04D29/66 M
F04D29/34 F
(21)【出願番号】P 2018180172
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】富井 正幸
(72)【発明者】
【氏名】秋元 健太郎
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303794(JP,A)
【文献】特開2008-045747(JP,A)
【文献】米国特許第03266771(US,A)
【文献】特開2014-105705(JP,A)
【文献】特開2006-125372(JP,A)
【文献】実開昭54-051202(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/10
F16F 15/14
F01D 25/06
F04D 29/66
F04D 29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータディスクと、
前記ロータディスクに固定されて前記ロータディスクの径方向外側に放射状に延びる複数の動翼と、
前記ロータディスクの径方向内側を向く湾曲面上を転がり可能に構成された少なくとも一つの転がり要素と、
を備え
、
前記少なくとも一つの転がり要素は、
前記湾曲面としての第1湾曲面上を転がり可能に構成された第1転がり要素と、
前記湾曲面としての第2湾曲面上を転がり可能に構成された第2転がり要素と、
を含み、
前記第1湾曲面の第1曲率半径R1と、前記第2湾曲面の第2曲率半径R2とが異なることを特徴とするロータアッセンブリ。
【請求項2】
前記転がり要素は、前記ロータディスクの中心軸に沿った方向の直交断面において前記転がり要素の外形が円形状である
ことを特徴とする請求項1に記載のロータアッセンブリ。
【請求項3】
前記湾曲面は一定の曲率半径Rを有し、
前記転がり要素は、前記曲率半径Rよりも小さい半径rを有する
請求項2に記載のロータアッセンブリ。
【請求項4】
前記第1転がり要素と前記第2転がり要素とは、前記ロータディスクの中心軸に沿った方向において互いに異なる位置に配置された
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載のロータアッセンブリ。
【請求項5】
前記転がり要素は、円筒部材又は円柱部材である
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のロータアッセンブリ。
【請求項6】
前記転がり要素は、複数の球部材である
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のロータアッセンブリ。
【請求項7】
前記湾曲面は、前記ロータディスクの周方向に隣り合う前記複数の動翼間に設けられるU字型板バネに設けられ、
前記U字型板バネは、前記ロータディスクの径方向内側を向くU字開口を有する
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載のロータアッセンブリ。
【請求項8】
前記湾曲面としての第1湾曲面が設けられた第1U字型板バネと、
前記湾曲面としての第2湾曲面が設けられた第2U字型板バネと、
を含み、
前記第1U字型板バネと前記第2U字型板バネとは、前記ロータディスクの中心軸に沿った方向において互いに異なる位置に配置された
ことを特徴とする請求項
4に記載のロータアッセンブリ。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のロータアッセンブリを備えることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータアッセンブリ及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動翼体(ロータアッセンブリ)が開示されている。かかるロータアッセンブリは、主軸と一体に回転可能なロータディスクと、ロータディスクの外周部から放射状に延出するように装着される複数の動翼と、周方向に隣接する動翼のプラットフォーム同士の隙間に装着されるダンパ部材と、プラットフォームとダンパ部材との間に介装されてダンパ部材に対する接触角度を調整可能な調整部材とを備える。周方向に隣接するプラットフォーム同士の対向面のうちの一方にロータディスクの放射方向に平行な側面が設けられ、プラットフォーム同士の対向面のうちの他方にロータディスクの放射方向に対して主軸の中心側が拡大するような傾斜面が設けられる。
【0003】
かかるロータアッセンブリは、プラットフォームとダンパ部材との間にダンパ部材に対する接触角度を調整可能な調整部材を介装しており、この接触角度を調整すると、ロータアッセンブリの回転時にプラットフォームから調整部材を介してダンパ部材に入力する反力が増減することになる。そのため、ロータアッセンブリの形状や回転数に応じて最適な接触角度を選定することができ、動翼に発生する振動を適正に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータアッセンブリの設計の裕度向上及び信頼性向上のために動翼に発生する振動の更なる抑制が求められるが、特許文献1が開示するロータアッセンブリではロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動の抑制は困難な場合がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、ロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動の抑制が可能なロータアッセンブリ及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るロータアッセンブリは、
ロータディスクと、
前記ロータディスクに固定されて前記ロータディスクの径方向外側に放射状に延びる複数の動翼と、
前記ロータディスクの径方向内側を向く湾曲面上を転がり可能に構成された少なくとも一つの転がり要素と、
を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ロータアッセンブリが回転することで、転がり要素に遠心力が働く。この遠心力の働きにより、転がり要素がロータディスクの径方向内側を向く湾曲面に押し付けられ、動翼が振動すると転がり要素が湾曲面上を転がる。転がり要素の転がり周波数fnはロータアッセンブリの回転数Ωに比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼の振動は励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリは、ロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記転がり要素は、前記ロータディスクの中心軸に沿った方向の直交断面において前記転がり要素の外形が円形状である。
【0010】
上記(2)の構成によれば、転がり要素は、ロータディスクの径方向内側を向く湾曲面上を円滑に転がるので、ロータアッセンブリは、ロータディスクの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を円滑に抑制できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記湾曲面は一定の曲率半径Rを有し、
前記転がり要素は、前記曲率半径Rよりも小さい半径rを有する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、転がり要素の転がりの周波数fnは下記の数式1で表される。
【数1】
尚、dは、転がり要素のロータディスクの中心軸からの距離である。
よって、下記の数式2で表される定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼の振動は励振ハーモニック上で減衰する。
【数2】
これにより、ロータアッセンブリは、ロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記少なくとも一つの転がり要素は、
前記湾曲面としての第1湾曲面上を転がり可能に構成された第1転がり要素と、
前記湾曲面としての第2湾曲面上を転がり可能に構成された第2転がり要素と、
を含み、
下記(A)~(C)のうち少なくとも一つの条件を満たす。
(A)前記第1湾曲面の第1曲率半径R1と、前記第2湾曲面の第2曲率半径R2とが異なる。
(B)前記第1転がり要素の第1半径r1と、前記第2転がり要素の第2半径r2とが異なる。
(C)前記ロータディスクの中心軸から前記第1転がり要素までの距離d1と、前記ロータディスクの中心軸から前記第2転がり要素までの距離d2とが異なる。
【0014】
上記(4)の構成によれば、第1転がり要素と第2転がり要素とで励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記第1転がり要素と前記第2転がり要素とは、前記ロータディスクの中心軸に沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0016】
上記(5)の構成によれば、ロータディスクの中心軸に沿った方向において第1転がり要素と第2転がり要素とで励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)のいずれか一つの構成において、
前記転がり要素は、円筒部材又は円柱部材である。
【0018】
上記(6)の構成によれば、ロータアッセンブリが回転することで、円筒部材又は円柱部材(転がり要素)に遠心力が働く。この遠心力の働きにより、円筒部材又は円柱部材がロータディスクの径方向内側を向く湾曲面に押し付けられ、動翼が振動すると円筒部材又は円柱部材が湾曲面上を転がる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)のいずれか一つの構成において、
前記転がり要素は、複数の球部材である。
【0020】
上記(7)の構成によれば、ロータアッセンブリが回転することで、複数の球部材(転がり要素)に遠心力が働く。この遠心力の働きにより、複数の球部材がロータディスクの径方向内側を向く湾曲面に押し付けられ、動翼が振動すると複数の球部材が湾曲面上を転がるとともに複数の球部材が相互に衝突する。よって、複数の球部材が相互に衝突することによっても動翼の振動を減衰できる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)のいずれか一つの構成において、
前記湾曲面は、前記ロータディスクの周方向に隣り合う前記複数の動翼間に設けられるU字型板バネに設けられ、
前記U字型板バネは、前記ロータディスクの径方向内側を向くU字開口を有する。
【0022】
上記(8)の構成によれば、U字型板バネと動翼との間に摩擦力が作用して動翼に発生する振動を減衰する。よって、ロータアッセンブリは、動翼の振動を抑制できる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記湾曲面としての第1湾曲面が設けられた第1U字型板バネと、
前記湾曲面としての第2湾曲面が設けられた第2U字型板バネと、
を含み、
前記第1U字型板バネと前記第2U字型板バネとは、前記ロータディスクの中心軸に沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0024】
上記(9)の構成によれば、ロータディスクの中心軸に沿った方向において、第1転がり要素と第1U字型板バネ、及び、第2転がり要素と第2U字型板バネで励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態に係る回転機械は、
上記(1)から(9)のいずれか一つのロータアッセンブリを備える。
【0026】
上記(10)の構成によれば、回転機械は、ロータアッセンブリが回転することで、転がり要素に遠心力が働く。この遠心力の働きにより、転がり要素がロータディスクの径方向内側を向く湾曲面に押し付けられ、動翼が振動すると転がり要素が湾曲面上を転がる。転がり要素の転がり周波数fnはロータアッセンブリの回転数Ωに比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼の振動は励振ハーモニック上で減衰する。よって、回転機械は、ロータアッセンブリの回転数に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ロータアッセンブリ及び回転機械は、ロータアッセンブリの回転に応じた固有振動数での動翼の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図1B】
図1Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図2B】
図2Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図3B】
図3Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図4B】
図4Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図5B】
図6Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図6B】
図6Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリの要部を概略的に示す正面図である。
【
図7B】
図7Aに示す湾曲面を転がる転がり要素を示す斜視図である。
【
図8A】
図2に示したロータアッセンブリのキャンベル線図である。
【
図8B】
図2に示したロータアッセンブリの次数比分析図である。
【
図9】
図4に示したロータアッセンブリのキャンベル線図である。
【
図10A】
図2から
図7に示したU字型板バネと転がり要素とを示す図であって、U字型板バネの弾性変形させる前の状態を示す図である。
【
図10B】
図2から
図7に示したU字型板バネと転がり要素とを示す図であって、U字型板バネを弾性変形させた後の状態を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る回転機械を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0030】
図1から
図7は、本発明の一実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの要部を概略的に示す図ある。
図8Aは、
図2に示したロータアッセンブリ1Bのキャンベル線図である。
図8Bは、
図2に示したロータアッセンブリ1Bの次数比分析図である。
図9は、
図4に示したロータアッセンブリ1Cのキャンベル線図である。
図10は、
図2から
図7に示したU字型板バネ5と転がり要素4B,4C,4D,4E,4F,4Gとを示す図である。
図11は、本発明の一実施形態に係る回転機械を概略的に示す図である。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gは、例えば、回転機械に備えられる。回転機械は、例えば、回転軸101(
図11参照)に沿った方向に流体が流れる軸流の回転機械であり、例えば、ガスタービン(
図11参照)、蒸気タービン、ジェットエンジン等である。
【0032】
図1から
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gは、ロータディスク2、複数の動翼3及び少なくとも一つの転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gを備える。
ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の中心軸Oに直交する面において中心軸Oから遠ざかる方向(以下、「径方向」という)外側に放射状に延びている。少なくとも一つの転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成される。
【0033】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gが回転することで、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gがロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gが湾曲面CS上を転がる。転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する(
図8及び
図9参照)。よって、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gは、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0034】
図8及び
図9に示すように、例えば、4Nの励振ハーモニックに対処するためには、Fn=C×Ωの定数Cを4に設定すればよい。このようにすれば、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数がΩ1のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f1と交差し、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数がΩ2のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f2と交差する。したがって、fn=4×Ωと設定されていれば、Ω1のときにfn=f1となり、Ω2のときにfn=f2となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0035】
図1から
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gでは、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの外形が円形状である。ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの外形が円形状である転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gは、例えば、円筒形状を有する円筒部材、円柱形状を有する円柱部材又は球形状を有する球部材である。円筒部材及び円柱部材は、例えば、中心軸がロータディスク2の中心軸Oに沿って配置される。
【0036】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を円滑に転がるので、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gは、ロータディスク2の回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を円滑に抑制できる。
【0037】
図1から
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gでは、湾曲面CSは一定の曲率半径Rを有し、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gは、曲率半径Rよりも小さい半径rを有する。
【0038】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの転がりの周波数fnは下記の数式3で表される。
【数3】
尚、dは、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gのロータディスク2の中心軸Oからの距離である。
よって、下記の数式4で表される定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する(
図8及び
図9参照)。
【数4】
これにより、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gは、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0039】
図1から
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gでは、一定の曲率半径の湾曲面CSの両側に、ロータディスク2の径方向に沿って延びる側面SDが設けられている。
【0040】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gが回転することで、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gは、これらの側面SDの間に位置する湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gが湾曲面CS上を転がる。換言すれば、一対の側面SDによって、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの転がり範囲が規定される。
【0041】
図3から
図6に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fでは、少なくとも一つの転がり要素4C,4D,4E,4Fは、第1転がり要素41C,41D,41E,41Fと第2転がり要素42C,42D,42E,42Fとを含む。第1転がり要素41C,41D,41E,41Fは、湾曲面CSとしての第1湾曲面CS1上を転がり可能に構成され、第2転がり要素42C,42D,42E,42Fは、湾曲面CSとしての第2湾曲面CS2上を転がり可能に構成される。
この場合において、第1湾曲面CS1、第2湾曲面CS2、第1転がり要素41C,41D,41E,41F及び第2転がり要素42C,42D,42E,42Fは、下記(A)から(C)のうち少なくとも一つの条件を満たす。
(A)第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1と、第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2とが異なる。
(B)第1転がり要素41D,41Fの第1半径r1と、第2転がり要素42D,42Fの第2半径r2とが異なる。
(C)ロータディスク2の中心軸Oから第1転がり要素41D,41E,41Fまでの距離d1と、ロータディスク2の中心軸Oから第2転がり要素42D,42E,42Fまでの距離d2とが異なる。
【0042】
図9に示すように、上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fによれば、第1転がり要素41C,41D,41E,41Fと第2転がり要素42C,42D,42E,42Fとで整数倍次数を異ならしめることで、動翼3の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0043】
例えば、
図3に示すように、第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1と第2湾曲面CS2の第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2とが異なる。
【0044】
例えば、第1転がり要素41Cの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1を設定し、第2転がり要素42Cの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2を設定する。このようにすれば、ロータアッセンブリ1Cの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Cの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Cの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0045】
したがって、第1湾曲面CS1の曲率半径R1を定数C1が4となるように設定し、第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2を定数C2が2となるように設定していれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0046】
例えば、
図4に示すロータアッセンブリ1Dでは、第1転がり要素41Dの第1半径r1と、第2転がり要素42Dの第2半径r2とが異なる。
【0047】
例えば、第1転がり要素41Dの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1転がり要素41Dの第1半径r1を設定し、第2転がり要素42Dの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2転がり要素42Dの第2半径r2を設定する。このようにすれば、
図9に示すように、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0048】
したがって、第1転がり要素41Dの第1半径r1を定数C1が4となるように設定し、第2転がり要素42Dの第2半径r2を定数C2が2となるようにしていれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0049】
例えば、
図5に示すロータアッセンブリ1Eでは、ロータディスク2の中心軸Oから第1転がり要素41Eまでの距離d1と、ロータディスク2の中心軸Oから第2転がり要素42Eまでの距離d2とが異なる。
【0050】
例えば、第1転がり要素41Eの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるようにロータディスク2の中心軸Oから第1転がり要素41Eまでの距離d1を設定し、第2転がり要素42Eの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるようにロータディスク2の中心軸Oから第2転がり要素42Eまでの距離d2を設定する。このようにすれば、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0051】
したがって、ロータディスク2の中心軸Oから第1転がり要素41Eまでの距離d1を定数C1が4となるように設定し、ロータディスク2の中心軸Oから第2転がり要素42Eまでの距離d2を第2転がり要素42Eの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように定数C2が2となるように設定していれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0052】
例えば、
図6に示すロータアッセンブリ1Fでは、下記(A)から(C)のうち、二つの条件((A)及び(B))を満たす。
(A)第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1と、第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2とが異なる。
(B)第1転がり要素41Fの第1半径r1と、第2転がり要素42Fの第2半径r2とが異なる。
(C)ロータディスク2の中心軸Oから第1転がり要素41Fまでの距離d1と、ロータディスク2の中心軸Oから第2転がり要素42Fまでの距離d2とが異なる。
【0053】
例えば、第1転がり要素41Fの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1、及び第1転がり要素41Fの第1半径r1を設定する。また、第2転がり要素42Fの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2、及び第2転がり要素42Fの第2半径r2を設定する。このようにすれば、ロータアッセンブリ1Fの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Fの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Fの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0054】
したがって、第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1、及び第1転がり要素41Fの第1半径r1が第1転がり要素41Fの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように設定し、第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2、及び第2転がり要素42Fの第2半径r2が第2転がり要素42Fの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように設定していれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0055】
図3から
図6に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fでは、第1転がり要素41C,41D,41E,41Fと第2転がり要素42C,42D,42E,42Fとは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0056】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fによれば、第1転がり要素41C,41D,41E,41Fと第2転がり要素42C,42D,42E,42Fとで励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼3の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリ1C,1D,1E,1Fの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0057】
図1から
図6に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1Fでは、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4Fは、円筒部材又は円柱部材である。
【0058】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1Fによれば、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1Fが回転することで、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4Fに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4Fがロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4Fが湾曲面CS上を転がる。
【0059】
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Gでは、転がり要素4Gは、複数の球部材である。
【0060】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Gによれば、ロータアッセンブリ1Gが回転することで、転がり要素4Gに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4Gがロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4Gが湾曲面CS上を転がるとともに転がり要素4Gが相互に衝突する。よって、転がり要素4Gが相互に衝突することによっても動翼3の振動を減衰できる。
【0061】
図2から
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1B,1C,1D,1E,1F,1Gでは、湾曲面CSは、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。
【0062】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、U字型板バネ5と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。よって、ロータアッセンブリ1B,1C,1D,1E,1F,1Gは、動翼3の振動を抑制できる。
【0063】
図10に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1B,1C,1D,1E,1F,1Gでは、U字型板バネ5は、その内側が湾曲面CSとなる湾曲部51と湾曲面CSの両側に設けられる側壁面となる脚部52,53とを有してる。U字型板バネ5の脚部52,53は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており(
図10A参照)、U字型板バネ5の脚部52,53を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される(
図10B参照)。
【0064】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、U字型板バネ5の脚部52,53には元の形に戻るように弾性復元力が作用し、U字型板バネ5の脚部52,53(外側壁面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。よって、ロータアッセンブリ1B,1D,1D,1E,1F,1Gは、動翼3の振動を抑制できる。
【0065】
図1に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Aは、ロータディスク2、複数の動翼3及び転がり要素4Aを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Aの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。転がり要素4Aは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0066】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、動翼3のロータディスク2への固定部31に設けられている。湾曲面CSは、動翼3のロータディスク2への固定部31に設けられた空洞311の一部を構成する。空洞311は、ロータディスク2の径方向に沿って設けられ、ロータディスク2の径方向内側を向く面に湾曲面CSが設けられる。湾曲面CSは、一定の曲率半径Rを有し、一定の曲率半径Rの湾曲面CSの両側にロータディスク2の径方向に沿って延びる側面SDが設けられている。これにより、湾曲面CSは一対の側面SDによって区切られて、湾曲面CSが規定される。
【0067】
転がり要素4Aは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Aの外形が円形状であり、湾曲面CSの曲率半径Rよりも小さな半径rを有する円筒部材である。
【0068】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Aによれば、ロータアッセンブリ1Aが回転することで、転がり要素4Aに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4Aがロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4Aが湾曲面CS上を転がる。転がり要素4Aの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Aの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1Aは、ロータアッセンブリ1Aの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0069】
図2に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Bは、ロータディスク2、複数の動翼3及び転がり要素4Bを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Bの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。転がり要素4Bは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0070】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲部51と、湾曲面CSの両側に設けられる側面SDを有する脚部52,53とを有している。U字型板バネ5の脚部52,53は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、U字型板バネ5の脚部52,53を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着されたU字型板バネ5の湾曲面CSは一定の曲率半径Rを有する(
図2A参照)。
【0071】
図2に示すように、転がり要素4Bは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Bの外形が円形状であり、湾曲面CSの一定の曲率半径Rよりも小さい半径rを有する円筒部材である。
【0072】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Bによれば、U字型板バネ5の脚部52,53は元の形に戻るように弾性復元力が作用し、U字型板バネ5の脚部52,53(外側面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する(
図8Bの次数比分析図の破線を参照)。また、ロータアッセンブリ1Bが回転することで、転がり要素4Bに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4Bがロータディスク2の径方向内側に向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4Bが湾曲面CS上を転がる。転がり要素4Bの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Bの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する(
図8Bの次数比分析図の実線を参照)。これにより、動翼3の振動は相乗的に減衰するので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0073】
図3に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Cは、ロータディスク2、複数の動翼3及び少なくとも一つの転がり要素4Cを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Cの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。少なくとも一つの転がり要素4Cは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0074】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。U字型板バネ5は、第1U字型板バネ5C1と第2U字型板バネ5C2とを含む。第1U字型板バネ5C1には、湾曲面CSとしての第1湾曲面CS1が設けられ、第2U字型板バネ5C2には、湾曲面CSとしての第2湾曲面CS2が設けられる。
【0075】
第1U字型板バネ5C1は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する湾曲部5C11と、第1湾曲面CS1の両側に設けられる側面SDを有する脚部5C12,5C13とを有している。第1U字型板バネ5C1の脚部5C12,5C13は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、第1U字型板バネ5C1の脚部5C12,5C13を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着された第1U字型板バネ5C1の第1湾曲面CS1は一定の曲率半径R1を有する。
【0076】
第2U字型板バネ5C2は、第1U字型板バネ5C1と同様に、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する湾曲部5C21と、第2湾曲面CS2の両側に設けられる側面SDを有する脚部5C22,5C23とを有している。第2U字型板バネ5C2の脚部5C22,5C23は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、第2U字型板バネ5C2の脚部5C22,5C23を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着された第2U字型板バネ5C2の第2湾曲面CS2は一定の曲率半径R2を有する。
【0077】
第1U字型板バネ5C1の第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1と、第2U字型板バネ5C2の第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2とが異なる。第1U字型板バネ5C1と第2U字型板バネ5C2とは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において異なる位置に配置される。
【0078】
転がり要素4Cは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Cの外形が円形状であり、湾曲面CSの一定の曲率半径Rよりも小さい半径rを有する円筒部材である。転がり要素4Cは、第1転がり要素41Cと第2転がり要素42Cとを含む。第1転がり要素41Cの半径rと、第2転がり要素42Cの半径rとは等しく、第1転がり要素41Cと第2転がり要素42Cは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0079】
例えば、第1転がり要素41Cの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1を設定し、第2転がり要素42Cの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2を設定する。このようにすれば、
図9に示すように、ロータアッセンブリ1Cの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Cの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Cの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0080】
したがって、第1湾曲面CS1の曲率半径R1を定数C1が4となるように設定され、第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2を定数C2が2となるように設定されていれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0081】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Cによれば、第1U字型板バネ5C1の脚部5C12,5C13と、第2U字型板バネ5C2の脚部5C22,5C23は元の形に戻るように弾性復元力が作用する。よって、第1U字型板バネ5C1の脚部5C12,5C13(外側面)と動翼3との間、及び、第2U字型板バネ5C2の脚部5C22,5C23(外側面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。
【0082】
また、ロータアッセンブリ1Cが回転することで、第1転がり要素41Cと第2転がり要素42Cとに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、第1転がり要素41Cが第1湾曲面CS1に押し付けられ、第2転がり要素42Cが第2湾曲面CS2に押し付けられる。よって、動翼3が振動すると第1転がり要素41Cが第1湾曲面CS1上を転がり、第2転がり要素42Cが第2湾曲面CS2上を転がる。第1転がり要素41Cの転がり周波数fnと第2転がり要素42Cの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Cの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。これにより、動翼3の振動は相乗的に減衰するので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0083】
また、第1湾曲面CS1の曲率半径R1と第2湾曲面CS2の曲率半径R2とによって、第1転がり要素41Cの励振ハーモニックと第2転がり要素42Cの励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることができる。このように励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼3の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1Cは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリ1Cの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0084】
図4に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Dは、ロータディスク2、複数の動翼3及び少なくとも一つの転がり要素4Dを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Dの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。少なくとも一つの転がり要素4Dは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0085】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲部51と、湾曲面CSの両側に設けられる側面SDを有する脚部52,53とを有している。U字型板バネ5の脚部52,53は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、U字型板バネ5の脚部52,53を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着されたU字型板バネ5の湾曲面CSは一定の曲率半径Rを有する。
【0086】
転がり要素4Dは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Dの外形が円形状であり、湾曲面CSの一定の曲率半径Rよりも小さい半径rを有する円筒部材である。転がり要素4Dは、第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dとを含む。第1転がり要素41Dの第1半径r1と、第2転がり要素42Dの第2半径r2とが異なる。第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0087】
例えば、第1転がり要素41Dの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1転がり要素41Dの第1半径r1を設定し、第2転がり要素42Dの転がり周波数fn=C2×Ωの定数C2が2となるように第2転がり要素42Dの第2半径r2を設定する。このようにすれば、
図9に示すように、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0088】
したがって、第1転がり要素41Dの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1転がり要素41Dの第1半径r1が設定され、第2転がり要素42Dの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2転がり要素42Dの第2半径r2が設定されれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0089】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Dによれば、U字型板バネ5の脚部52,53は元の形に戻るように弾性復元力が作用し、U字型板バネ5の脚部52,53(外側面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。また、ロータアッセンブリ1Dが回転することで、第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dとに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dとがロータディスク2の径方向内側に向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dとが湾曲面CS上を転がる。第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Dの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。これにより、動翼3の振動は相乗的に減衰するので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0090】
また、第1転がり要素41Dの第1半径r1と第2転がり要素42Dの第2半径r2とによって第1転がり要素41Dの励振ハーモニックと第2転がり要素42Dの励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることができる。このように励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼3の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1Dは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリ1Dの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0091】
図5に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Eは、ロータディスク2、複数の動翼3及び少なくとも一つの転がり要素4Eを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Eの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。少なくとも一つの転がり要素4Eは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0092】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、ロータディスク2の隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。U字型板バネ5は、第1U字型板バネ5E1と第2U字型板バネ5E2とを含む。第1U字型板バネ5E1には、湾曲面CSとしての第1湾曲面CS1が設けられ、第2U字型板バネ5E2には、湾曲面CSとしての第2湾曲面CS2が設けられる。
【0093】
第1U字型板バネ5E1は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する湾曲部5E11と、第1湾曲面CS1の両側に設けられる側面SDを有する脚部5E12,5E13とを有している。第1U字型板バネ5E1の脚部5E12,5E13は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、第1U字型板バネ5E1の脚部5E12,5E13を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着された第1U字型板バネ5E1の第1湾曲面CS1は一定の曲率半径Rを有する。
【0094】
第2U字型板バネ5E2は、第1U字型板バネ5E1と同様に、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する湾曲部5E21と、第2湾曲面CS2の両側に設けられる側面SDを有する脚部5E22,5E23とを有している。第2U字型板バネ5C2の脚部5E22,5E23は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、第2U字型板バネ5E2の脚部5E22,5E23を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着された第2U字型板バネ5E2の第2湾曲面CS2は一定の曲率半径Rを有する。
【0095】
第1U字型板バネ5E1の第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1と、第2U字型板バネ5E2の第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2とは等しく、第1U字型板バネ5E1と第2U字型板バネ5E2とは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において異なる位置に配置される。
尚、第1U字型板バネ5E1と第2U字型板バネ5E2を配置するに際して、例えば、ロータディスク2の中心軸に沿った方向においてロータディスク2の径方向に半径の異なる段部が設けられている。
【0096】
転がり要素4Eは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Eの外形が円形状であり、湾曲面CSの一定の曲率半径Rよりも小さい半径rを有する円筒部材である。転がり要素4Eは、第1転がり要素41Eと第2転がり要素42Eとを含む。第1転がり要素41Dの第1半径r1と、第2転がり要素42Dの第2半径r2とは等しく、第1転がり要素41Dと第2転がり要素42Dとは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0097】
例えば、第1転がり要素41Dの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるようにロータディスク2の中心軸Oから第1湾曲面CS1までの距離d1を設定し、第2転がり要素42Eの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるようにロータディスク2の中心軸Oから第2湾曲面CS2までの距離d2を設定する。このようにすれば、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Dの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0098】
したがって、ロータディスク2の中心軸Oから第1湾曲面CS1までの距離d1を定数C1が4となるように設定し、ロータディスク2の中心軸Oから第2湾曲面CS2までの距離d2を第2転がり要素42Eの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように定数C2が2となるように設定していれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0099】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Eによれば、第1U字型板バネ5E1の脚部5E12,5E13と、第2U字型板バネ5E2の脚部5E22,5E23は元の形に戻るように弾性復元力が作用する。よって、第1U字型板バネ5E1の脚部5E12,5E13(外側面)と動翼3との間、及び、第2U字型板バネ5E2の脚部5E22,5E23(外側面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。
【0100】
また、ロータアッセンブリ1Eが回転することで、第1転がり要素41Eと第2転がり要素42Eとに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、第1転がり要素41Eが第1湾曲面CS1に押し付けられ、第2転がり要素42Eが第2湾曲面CS2に押し付けられる。よって、動翼3が振動すると第1転がり要素41Eが第1湾曲面CS1上を転がり、第2転がり要素42Eが第2湾曲面CS2上を転がる。第1転がり要素41Eの転がり周波数fnと第2転がり要素42Eの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Eの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。これにより、動翼3の振動は相乗的に減衰するので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0101】
また、ロータディスク2の中心軸Oから第1転がり要素41Eまでの距離d1とロータディスク2の中心軸Oから第2転がり要素42Eまでの距離d2とによって、第1転がり要素41Eの励振ハーモニックと第2転がり要素42Eの励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることができる。このように励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼3の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1Eは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリ1Eの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0102】
図6に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Fは、ロータディスク2、複数の動翼3及び少なくとも一つの転がり要素4Fを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Fの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。少なくとも一つの転がり要素4Fは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0103】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、ロータディスク2の隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。U字型板バネ5は、第1U字型板バネ5F1と第2U字型板バネ5F2とを含む。第1U字型板バネ5F1には、湾曲面CSとしての第1湾曲面CS1が設けられ、第2U字型板バネ5F2には、湾曲面CSとしての第2湾曲面CS2が設けられる。
【0104】
第1U字型板バネ5F1は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する湾曲部5F11と、第1湾曲面CS1の両側に設けられる側面SDを有する脚部5F12,5F13とを有している。第1U字型板バネ5F1の脚部5F12,5F13は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、第1U字型板バネ5F1の脚部5F12,5F13を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着された第1U字型板バネ5F1の第1湾曲面CS1は一定の曲率半径Rを有する。
【0105】
第2U字型板バネ5F2は、第1U字型板バネ5F1と同様に、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する湾曲部5F21と、第2湾曲面CS2の両側に設けられる側面SDを有する脚部5F22,5F23とを有している。第2U字型板バネ5F2の脚部5F22,5F23は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、第2U字型板バネ5F2の脚部5F22,5F23を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着された第2U字型板バネ5F2の第2湾曲面CS2は一定の曲率半径R2を有する。
【0106】
第1U字型板バネ5F1の第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1と、第2U字型板バネ5F2の第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2とが異なる。第1U字型板バネ5F1と第2U字型板バネ5F2とは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において異なる位置に配置される。
尚、第1U字型板バネ5F1と第2U字型板バネ5F2を配置するに際して、例えば、ロータディスク2の中心軸に沿った方向においてロータディスク2の周方向に幅の異なる段部が設けられている。
【0107】
転がり要素4Fは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Fの外形が円形状であり、湾曲面CSの一定の曲率半径Rよりも小さい半径rを有する円筒部材である。転がり要素4Fは、第1転がり要素41Fと第2転がり要素42Fとを含む。第1転がり要素41Fの第1半径r1と第2転がり要素42Fの第2半径r2とが異なる。第1転がり要素41Fと第2転がり要素42Fとは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において互いに異なる位置に配置される。
【0108】
例えば、第1転がり要素41Fの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1U字型板バネ5F1の第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1、及び第1転がり要素41Fの第1半径r1を設定する。また、第2転がり要素42Fの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2U字型板バネ5F2の第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2及び第2転がり要素42Fの第2半径r2を設定する。このようにすれば、ロータアッセンブリ1Fの回転数がΩ11のときに4Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f11と交差し、ロータアッセンブリ1Fの回転数がΩ12のときに4Nの励振ハーモニックは2次の固有振動数f12と交差する。また、ロータアッセンブリ1Fの回転数がΩ21のときに2Nの励振ハーモニックは1次モードの固有振動数f21(f11)と交差する。
【0109】
したがって、第1転がり要素41Fの転がり周波数fn1=C1×Ωの定数C1が4となるように第1U字型板バネ5F1の第1湾曲面CS1の第1曲率半径R1及び第1転がり要素41Fの第1半径r1が設定し、第2転がり要素42Fの転がり周波数fn2=C2×Ωの定数C2が2となるように第2U字型板バネ5F2の第2湾曲面CS2の第2曲率半径R2及び第2転がり要素42Fの第2半径r2が設定していれば、Ω11のときにfn=f11、Ω12のときにfn=f12、Ω21のときにfn=f21となるから、各回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0110】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Fによれば、第1U字型板バネ5F1の脚部5F12,5F13と、第2U字型板バネ5F2の脚部5F22,5F23は元の形に戻るように弾性復元力が作用する。よって、第1U字型板バネ5F1の脚部5F12,5F13(外側面)と動翼3との間、及び、第2U字型板バネ5F2の脚部5F22,5F23(外側面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。
【0111】
また、ロータアッセンブリ1Fが回転することで、第1転がり要素41Fと第2転がり要素42Fとに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、第1転がり要素41Fが第1湾曲面CS1に押し付けられ、第2転がり要素42Fが第2湾曲面CS2に押し付けられる。よって、動翼3が振動すると第1転がり要素41Fが第1湾曲面CS1上を転がり、第2転がり要素42Fが第2湾曲面CS2上を転がる。第1転がり要素41Fの転がり周波数fnと第2転がり要素42Fの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Fの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。これにより、動翼3の振動は相乗的に減衰するので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0112】
また、第1湾曲面CS1の曲率半径R1と第1転がり要素41Fの第1半径r1、及び、第2湾曲面CS2の曲率半径R2と第2転がり要素42Fの第2半径r2とによって第1転がり要素41Fの励振ハーモニックと第2転がり要素42Fの励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることができる。このように励振ハーモニックの整数倍次数を異ならしめることで、動翼3の振動は複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上で減衰する。よって、ロータアッセンブリ1Fは、複数の異なる整数倍次数の励振ハーモニック上でロータアッセンブリ1Fの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0113】
図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Gは、ロータディスク2、複数の動翼3及び少なくとも一つの転がり要素4Gを備える。ロータディスク2は、ロータアッセンブリ1Gの中心軸Oの周りに回転可能に支持される。複数の動翼3は、ロータディスク2に固定されてロータディスク2の径方向外側に放射状に延びている。少なくとも一つの転がり要素4Gは、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CS上を転がり可能に構成されている。
【0114】
ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSは、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着されるU字型板バネ5に設けられる。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向くU字開口を有する。U字型板バネ5は、ロータディスク2の径方向内側を向く湾曲部51と、湾曲面CSの両側に設けられる側面SDを有する脚部52,53とを有している。U字型板バネ5の脚部52,53は、ロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に設けられる隙間よりも拡がっており、U字型板バネ5の脚部52,53を縮めた(弾性変形させた)状態でロータディスク2の周方向に隣り合う複数の動翼3間に装着される。このように装着されたU字型板バネ5の湾曲面CSは一定の曲率半径Rを有する。
【0115】
転がり要素4Gは、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向の直交断面において転がり要素4Gの外形が円形状であり、湾曲面CSの曲率半径Rよりも小さな半径を有する複数の球部材である。
【0116】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1Gによれば、U字型板バネ5の脚部52,53は元の形に戻るように弾性復元力が作用し、U字型板バネ5の脚部52,53(外側面)と動翼3との間に摩擦力が作用して動翼3に発生する振動を減衰する。また、ロータアッセンブリ1Gが回転することで、転がり要素4Gに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4Gがロータディスク2の径方向内側に向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4Gが湾曲面CS上を転がる。転がり要素4Gの転がり周波数fnはロータアッセンブリ1Gの回転数に比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。これにより、動翼3の振動は相乗的に減衰するので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0117】
また、ロータディスク2の中心軸Oに沿った方向において転がり要素4Gが相互に衝突する。よって、ロータアッセンブリ1Gは、転がり要素4Gが相互に衝突することによっても動翼3の振動を減衰できる。
【0118】
図11に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係る回転機械は、上述した幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gのうち、いずれか一つのロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gを備える。
【0119】
回転機械は、例えば、回転軸101に沿った方向に流体が流れる軸流の回転機械であり、例えば、ガスタービン(
図11参照)、蒸気タービン、ジェットエンジンであり、上述した幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1E,1F,1Gのうち、いずれか一つのロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gを備える。
【0120】
上述した幾つかの実施形態に係る回転機械によれば、回転機械は、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1Eが回転することで、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4A,4B,4C,4D、4E,4F,4Gがロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gが湾曲面CS上を転がる。転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの転がり周波数fnは、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数Ωに比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。よって、回転機械は、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0121】
図11に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係る回転機械は、例えば、ガスタービン100であり、圧縮機110を構成する圧縮機動翼114又はタービン130を構成するタービン動翼133に、上述した幾つかの実施形態に係るロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gのうち、いずれか一つのロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gを備える。
【0122】
上述した幾つかの実施形態に係る回転機械によれば、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gが回転することで、転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4:Gに遠心力Fが働く。この遠心力Fの働きにより、転がり要素4A,4B,4C,4D、4E,4F,4Gがロータディスク2の径方向内側を向く湾曲面CSに押し付けられ、動翼3が振動すると転がり要素4A,4B,4C,4D,4F,4Gが湾曲面CS上を転がる。転がり要素4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gの転がり周波数fnは、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数Ωに比例するので(fn=C×Ω)、その定数Cを励振ハーモニックの整数倍次数に設定すれば、動翼3の振動は励振ハーモニック上で減衰する。よって、回転機械は、ロータアッセンブリ1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gの回転数に応じた固有振動数での動翼3の振動を抑制できる。
【0123】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0124】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G ロータアッセンブリ
2 ロータディスク
3 動翼
31 固定部
311 空洞
4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G 転がり要素
41C,41D 第1転がり要素
42C,42D 第2転がり要素
5 U字型板バネ
51 湾曲部
52,53 脚部
5C1,5E1,5F1 第1U字型板バネ
5C11,5E11,5F11 湾曲部
5C12,5E12,5E12 脚部
5C13,5F13,5F13 脚部
5C2,5E2,5F2 第2U字型板バネ
5C21,5E21,5F21 湾曲部
5C22,5E22,5F22 脚部
5C23,5E23,5F23 脚部
100 ガスタービン
101 回転軸
110 圧縮機
114 圧縮機動翼
130 タービン
133 タービン動翼
O 中心軸
CS 湾曲面
CS1 第1湾曲面
CS2 第2湾曲面
SD 側面
F 遠心力