(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221101BHJP
H02M 7/21 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 F
H02M3/28 C
H02M7/21 A
H02M3/28 B
(21)【出願番号】P 2018219353
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 英夫
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-259673(JP,A)
【文献】特開2017-175753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、
二次側に配置される二次側制御部と、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備え、
当該絶縁型DC/DCコンバータは絶縁同期整流型DC/DCコンバータであって、
同期整流を実現するために二次側に配置される同期整流トランジスタが前記二次側制御部により制御され、
前記スイッチングトランジスタのターンオン及びターンオフに関わる信号が前記通信用トランスを介し前記一次側制御部及び前記二次側制御部間で送受信され、
前記一次側制御部は、前記スイッチングトランジスタのターンオンする際に所定の第1信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、前記スイッチングトランジスタのターンオフする際に所定の第2信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、
前記二次側制御部は、受信した前記第1信号及び前記第2信号に基づき、前記同期整流トランジスタのオン/オフを制御し、
前記二次側制御部は、前記第1信号の受信に応答して所定の第1応答信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信し、且つ、前記第2信号の受信に応答して所定の第2応答信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信するように構成されており、
前記一次側制御部は、前記第1信号の送信に対して前記第1応答信号の返信が得られないとき、又は、前記第2信号の送信に対して前記第2応答信号の返信が得られないとき、前記スイッチングトランジスタをオン状態にすることを禁止する処理を含む所定の通信エラー処理を実行する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、
二次側に配置される二次側制御部と、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備え、
当該絶縁型DC/DCコンバータは絶縁同期整流型DC/DCコンバータであって、
同期整流を実現するために二次側に配置される同期整流トランジスタが前記二次側制御部により制御され、
前記スイッチングトランジスタのターンオン及びターンオフに関わる信号が前記通信用トランスを介し前記一次側制御部及び前記二次側制御部間で送受信され
、
前記二次側制御部は、前記スイッチングトランジスタのターンオンを指示する所定の第1信号及び前記スイッチングトランジスタのターンオフを指示する所定の第2信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信可能であり、
前記一次側制御部は、前記第1信号に受信に応答して前記スイッチングトランジスタをターンオンし、前記第2信号に受信に応答して前記スイッチングトランジスタをターンオフし、
前記一次側制御部は、前記第1信号の受信に応答して所定の第1応答信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、且つ、前記第2信号の受信に応答して所定の第2応答信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信するように構成されており、
前記二次側制御部は、前記第1信号の送信に対して前記第1応答信号の返信が得られないとき、又は、前記第2信号の送信に対して前記第2応答信号の返信が得られないとき、前記同期整流トランジスタをオン状態にすることを禁止する処理を含む所定の通信エラー処理を実行する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、
二次側に配置される二次側制御部と、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備え、
前記一次側制御部への電力供給の開始により前記一次側制御部が起動したとき、前記二次側電圧の値に関係なく前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を行う初期動作が実行され、
前記初期動作により前記二次側電圧が所定電圧以上となることで前記二次側制御部が起動すると、前記通信用トランスを介し前記一次側制御部及び前記二次側制御部間で所定のハンドシェイク通信が行われ、前記ハンドシェイク通信の正常完了後に、前記二次側電圧に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を行う通常動作が実行可能とされる
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、
二次側に配置される二次側制御部と、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備え、
前記一次側制御部は、前記一次側回路内における所定の異常の有無を検出する一次側異常検出部を有して、前記一次側回路内に前記異常が検出されたとき、前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を停止するとともに所定の一次側異常検出信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項5】
電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、
二次側に配置される二次側制御部と、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備え、
前記二次側制御部は、前記二次側回路内における所定の異常の有無を検出する二次側異常検出部を有して、前記二次側回路内に前記異常が検出されたとき、所定の二次側異常検出信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信し、
前記一次側制御部は、前記二次側異常検出信号を受信すると、前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を停止する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項6】
電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、
二次側に配置される二次側制御部と、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備え、
前記一次側制御部及び前記二次側制御部の内、一方の制御部から他方の制御部に対し所定信号が前記通信用トランスを介して送信され且つ前記他方の制御部にて前記所定信号が受信されたとき、前記他方の制御部は前記所定信号の受信に応答する信号を前記通信用トランスを介して前記一方の制御部に送信する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項7】
当該絶縁型DC/DCコンバータは絶縁同期整流型DC/DCコンバータであって、
同期整流を実現するために二次側に配置される同期整流トランジスタが前記二次側制御部により制御され、
前記スイッチングトランジスタのターンオン及びターンオフに関わる信号が前記通信用トランスを介し前記一次側制御部及び前記二次側制御部間で送受信される
、請求項3~6の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記一次側制御部は、前記スイッチングトランジスタのターンオンする際に所定の第1信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、前記スイッチングトランジスタのターンオフする際に所定の第2信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、
前記二次側制御部は、受信した前記第1信号及び前記第2信号に基づき、前記同期整流トランジスタのオン/オフを制御する
、請求項7に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項9】
前記二次側制御部は、前記第1信号の受信に応答して所定の第1応答信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信し、且つ、前記第2信号の受信に応答して所定の第2応答信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信するように構成されており、
前記一次側制御部は、前記第1信号の送信に対して前記第1応答信号の返信が得られないとき、又は、前記第2信号の送信に対して前記第2応答信号の返信が得られないとき、前記スイッチングトランジスタをオン状態にすることを禁止する処理を含む所定の通信エラー処理を実行する
、請求項8に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項10】
前記二次側制御部は、前記スイッチングトランジスタのターンオンを指示する所定の第1信号及び前記スイッチングトランジスタのターンオフを指示する所定の第2信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信可能であり、
前記一次側制御部は、前記第1信号に受信に応答して前記スイッチングトランジスタをターンオンし、前記第2信号に受信に応答して前記スイッチングトランジスタをターンオフする
、請求項7に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項11】
前記一次側制御部は、前記第1信号の受信に応答して所定の第1応答信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、且つ、前記第2信号の受信に応答して所定の第2応答信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信するように構成されており、
前記二次側制御部は、前記第1信号の送信に対して前記第1応答信号の返信が得られないとき、又は、前記第2信号の送信に対して前記第2応答信号の返信が得られないとき、前記同期整流トランジスタをオン状態にすることを禁止する処理を含む所定の通信エラー処理を実行する
、請求項10に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項12】
交流電圧を全波整流する整流回路と、
全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する平滑コンデンサと、
前記直流電圧としての一次側電圧から直流の二次側電圧を出力電圧として生成する、請求項1~11
の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータと、を備えた
、AC/DCコンバータ。
【請求項13】
交流電圧を受けるプラグと、
請求項12に記載のAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータを収容する筐体と、を備えた
、電源アダプタ。
【請求項14】
請求項12に記載のAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータの出力電圧に基づき駆動される負荷と、を備えた
、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスを用いた絶縁型DC/DCコンバータの一種では、二次側電圧に応じたフィードバック信号をフォトカプラ等を用いて一次側に伝達し、トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをフィードバック信号に応じてスイッチング駆動することにより、二次側電圧の安定化を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の絶縁型DC/DCコンバータでは、二次側電圧の情報が一方的に一次側に伝達されるだけであり、二次側回路における他の情報を一次側回路で知ることができないし、一次側回路における情報を二次側回路で知ることもできない。このため例えば、二次側回路で何らかの問題が発生していても、それに関係無く一次側回路はスイッチングトランジスタの駆動を継続するしかないし、逆に一次側回路で何らかの問題が発生していても、それに関係無く二次側回路は二次側での動作(例えば同期整流トランジスタのオン、オフ制御)を継続するしかない。このような動作の継続が行われたとしても、DC/DCコンバータが安全に停止するような仕組みが組み込まれることが多いが、停止までに相応の時間がかかることで問題が深刻化するといったことも有りえる。
【0005】
また、二次側に同期整流トランジスタを配置して同期整流を行う場合にあっては、同期整流トランジスタのオン、オフタイミングの制御が重要となる。一次側のスイッチングトランジスタと二次側の同期整流トランジスタの同時オンはシステムの破壊等に繋がりうるため、回避されるべきである。この点に関し、トランスの二次側巻線における電圧を監視することにより、二次側で一次側の情報を推測し同期整流トランジスタの制御を行う方法があるが、同期整流方式を採用する場合にあっては、同時オンの回避を含むトランジスタ制御を、より確実に又は安定して実現させうる技術の開発が期待される。尚、同期整流に関わる事情を説明したが、当該事情は説明の具体化のための例示に過ぎず、本発明は同期整流型のDC/DCコンバータに限定されない。
【0006】
本発明は、一次側及び二次側の動作の安全性向上等に寄与する絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る絶縁型DC/DCコンバータは、電力用トランスの一次側及び二次側に配置された一次側回路と二次側回路とを互いに絶縁しつつ、前記電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動することにより、前記一次側回路における一次側電圧から前記二次側回路にて二次側電圧を得る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、一次側に配置されて前記スイッチングトランジスタを制御する一次側制御部と、二次側に配置される二次側制御部と、前記一次側制御部及び前記二次側制御部間の双方向通信を実現する通信用トランスと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
具体的には例えば、当該絶縁型DC/DCコンバータは絶縁同期整流型DC/DCコンバータであって、同期整流を実現するために二次側に配置される同期整流トランジスタが前記二次側制御部により制御され、前記スイッチングトランジスタのターンオン及びターンオフに関わる信号が前記通信用トランスを介し前記一次側制御部及び前記二次側制御部間で送受信されて良い。
【0009】
より具体的には例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側制御部は、前記スイッチングトランジスタのターンオンする際に所定の第1信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、前記スイッチングトランジスタのターンオフする際に所定の第2信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、前記二次側制御部は、受信した前記第1信号及び前記第2信号に基づき、前記同期整流トランジスタのオン/オフを制御すると良い。
【0010】
この際例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記二次側制御部は、前記第1信号の受信に応答して所定の第1応答信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信し、且つ、前記第2信号の受信に応答して所定の第2応答信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信するように構成されており、前記一次側制御部は、前記第1信号の送信に対して前記第1応答信号の返信が得られないとき、又は、前記第2信号の送信に対して前記第2応答信号の返信が得られないとき、前記スイッチングトランジスタをオン状態にすることを禁止する処理を含む所定の通信エラー処理を実行しても良い。
【0011】
或いは例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記二次側制御部は、前記スイッチングトランジスタのターンオンを指示する所定の第1信号及び前記スイッチングトランジスタのターンオフを指示する所定の第2信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信可能であり、前記一次側制御部は、前記第1信号に受信に応答して前記スイッチングトランジスタをターンオンし、前記第2信号に受信に応答して前記スイッチングトランジスタをターンオフしても良い。
【0012】
この際例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側制御部は、前記第1信号の受信に応答して所定の第1応答信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信し、且つ、前記第2信号の受信に応答して所定の第2応答信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信するように構成されており、前記二次側制御部は、前記第1信号の送信に対して前記第1応答信号の返信が得られないとき、又は、前記第2信号の送信に対して前記第2応答信号の返信が得られないとき、前記同期整流トランジスタをオン状態にすることを禁止する処理を含む所定の通信エラー処理を実行しても良い。
【0013】
また例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側制御部への電力供給の開始により前記一次側制御部が起動したとき、前記二次側電圧の値に関係なく前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を行う初期動作が実行され、前記初期動作により前記二次側電圧が所定電圧以上となることで前記二次側制御部が起動すると、前記通信用トランスを介し前記一次側制御部及び前記二次側制御部間で所定のハンドシェイク通信が行われ、前記ハンドシェイク通信の正常完了後に、前記二次側電圧に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を行う通常動作が実行可能とされて良い。
【0014】
また例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側制御部は、前記一次側回路内における所定の異常の有無を検出する一次側異常検出部を有して、前記一次側回路内に前記異常が検出されたとき、前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を停止するとともに所定の一次側異常検出信号を前記通信用トランスを介して前記二次側制御部に送信しても良い。
【0015】
また例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記二次側制御部は、前記二次側回路内における所定の異常の有無を検出する二次側異常検出部を有して、前記二次側回路内に前記異常が検出されたとき、所定の二次側異常検出信号を前記通信用トランスを介して前記一次側制御部に送信し、前記一次側制御部は、前記二次側異常検出信号を受信すると、前記スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を停止しても良い。
【0016】
また例えば、前記絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側制御部及び前記二次側制御部の内、一方の制御部から他方の制御部に対し所定信号が前記通信用トランスを介して送信され且つ前記他方の制御部にて前記所定信号が受信されたとき、前記他方の制御部は前記所定信号の受信に応答する信号を前記通信用トランスを介して前記一方の制御部に送信しても良い。
【0017】
本発明に係るAC/DCコンバータは、交流電圧を全波整流する整流回路と、全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する平滑コンデンサと、前記直流電圧としての一次側電圧から直流の二次側電圧を出力電圧として生成する前記絶縁型DC/DCコンバータと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る電源アダプタは、交流電圧を受けるプラグと、前記AC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータを収容する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る電気機器は、前記AC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータの出力電圧に基づき駆動される負荷と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一次側及び二次側の動作の安全性向上等に寄与する絶縁型DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、電源アダプタ及び電気機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る絶縁同期整流型DC/DCコンバータの全体構成図である。
【
図2】
図1に示されるパルストランス部の構成図である。
【
図3】一次側制御部及び二次側制御部間における双方向通信の信号の説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係り、DC/DCコンバータ内の各部の波形を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係り、スイッチングトランジスタの状態と双方向通信の信号との関係例を示す図である(実施例EX2_1)。
【
図6】本発明の第2実施形態に係り、スイッチングトランジスタの状態と双方向通信の信号との関係例を示す図である(実施例EX2_1)。
【
図7】本発明の第2実施形態に係り、スイッチングトランジスタ及び同期整流トランジスタの状態と双方向通信の信号との関係例を示す図である(実施例EX2_2)。
【
図8】本発明の第2実施形態に係り、スイッチングトランジスタ及び同期整流トランジスタの状態と双方向通信の信号との関係例を示す図である(実施例EX2_2)。
【
図9】本発明の第2実施形態に係り、スイッチングトランジスタ及び同期整流トランジスタの状態と双方向通信の信号との関係例を示す図である(実施例EX2_3)。
【
図10】本発明の第3実施形態に係り、DC/DCコンバータの起動時における動作の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第3実施形態に係り、ハンドシェイク通信の一例の説明図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係り、ハンドシェイク通信の他の例の説明図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係り、一次側制御部及び二次側制御部の夫々に異常検出部が設けられる様子を示した図である。
【
図14】本発明の第6実施形態に係るAC/DCコンバータの構成を示す図である。
【
図15】本発明の第6実施形態に係る電源アダプタの構成を示す図である。
【
図16】本発明の第6実施形態に係る電気機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“M1”によって参照されるスイッチングトランジスタは(
図1参照)、スイッチングトランジスタM1と表記されることもあるし、トランジスタM1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0023】
まず、本実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。周期的にレベルがローレベルとハイレベルとの間で切り替わる任意の信号又は電圧について、当該信号又は電圧の1周期分の区間の長さに対する、当該信号又は電圧のレベルがハイレベルとなる区間の長さの割合を、デューティと称する。
【0024】
FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタについて、トランジスタがオン状態となっている区間をオン区間と称することがあり、トランジスタがオフ状態となっている区間をオフ区間と称することがある。
【0025】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る絶縁同期整流型DC/DCコンバータ1(以下、DC/DCコンバータ1と略記され得る)の全体構成図である。DC/DCコンバータ1は、フライバック方式のDC/DCコンバータであり、直流の一次側電圧V
Pから所定の目標電圧V
TGに安定化された直流の二次側電圧V
Sを生成する。
【0026】
DC/DCコンバータ1は、DC/DCコンバータ1の一次側に配置された一次側回路とDC/DCコンバータ1の二次側に配置された二次側回路とから成り、一次側回路と二次側回路とは互いに電気的に絶縁される。一次側回路におけるグランドは“GND1”にて参照され、二次側回路におけるグランドは“GND2”にて参照される。一次側電圧VPはグランドGND1を基準とする電圧であり、二次側電圧VSはグランドGND2を基準とする電圧である。一次側回路及び二次側回路の夫々において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部(所定電位点)を指す又は基準電位そのものを指す。但し、グランドGND1とグランドGND2は互いに絶縁されているため、互いに異なる電位を有し得る。
【0027】
DC/DCコンバータ1における一対の入力端子TM1A及びTM1Bの内、入力端子TM1BがグランドGND1に接続され、入力端子TM1Aに対し入力端子TM1Bの電位を基準として一次側電圧VPが加わる。DC/DCコンバータ1における一対の出力端子TM2A及びTM2Bの内、出力端子TM2BがグランドGND2に接続され、出力端子TM2Aに対し出力端子TM2Bの電位を基準として二次側電圧VSが加わる。DC/DCコンバータ1は、出力端子TM2A及びTM2B間に接続された任意の負荷(不図示)に二次側電圧VSを供給することができる。
【0028】
DC/DCコンバータ1は、一次側巻線W1及び二次側巻線W2を有する電力用トランスであるトランスTRを備える。トランスTRにおいて、一次側巻線W1と二次側巻線W2とは電気的に絶縁されつつ互いに逆極性にて磁気結合されている。
【0029】
DC/DCコンバータ1には特徴的な要素として通信用トランスであるパルストランス部30が設けられており、パルストランス部30を用いて様々な動作を実現することができるが、まずパルストランス部30以外の要素について説明する。尚、パルストランス部30を用いることで後述のフィードバック回路40及びフォトカプラ41を省略することも可能となり得るが、それについては他の実施形態で後述するものとし、原則としてフィードバック回路40及びフォトカプラ41がDC/DCコンバータ1に設けられていると考える。
【0030】
DC/DCコンバータ1の一次側回路には、一次側巻線W1に加えて、一次側制御部10と、一次側電源回路11と、入力コンデンサに相当するコンデンサC1と、スイッチングトランジスタM1と、センス抵抗RCSと、が設けられる。スイッチングトランジスタM1はNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。一次側巻線W1の一端は入力端子TM1Aに接続されて直流の一次側電圧VPを受ける。一次側巻線W1の他端はスイッチングトランジスタM1のドレインに接続され、スイッチングトランジスタM1のソースはセンス抵抗RCSを介してグランドGND1に接続される。入力端子TM1A及びTM1B間にコンデンサC1が設けられ、故にコンデンサC1の両端間に一次側電圧VPが加わる。一次側電源回路11は、一次側電圧VPを直流―直流変換することで所望の電圧値を有する電源電圧VCCを生成して一次側制御部10に供給する。一次側制御部10は電源電圧VCCに基づいて駆動する。
【0031】
DC/DCコンバータ1の二次側回路には、二次側巻線W2に加えて、二次側制御部20と、フィードバック回路40と、同期整流トランジスタM2と、ダイオードD2と、分圧抵抗R1~R4と、出力コンデンサに相当するコンデンサC2と、が設けられる。同期整流トランジスタM2(以下、SRトランジスタM2と称され得る)はNチャネル型のMOSFETとして構成されている。ダイオードD2はSRトランジスタM2の寄生ダイオードである。故に、SRトランジスタM2のソースからドレインに向かう方向を順方向としてダイオードD2がSRトランジスタM2に並列接続されることになる。ダイオードD2は寄生ダイオードとは別に設けられたダイオードであっても良い。
【0032】
二次側巻線W2の一端は出力端子TM2Aに接続され、故に二次側巻線W2の一端には二次側電圧VSが加わる。二次側巻線W2の他端はSRトランジスタM2のドレインに接続される。二次側巻線W2の他端での電圧(換言すればSRトランジスタM2のドレイン電圧)を“VDR”にて表す。二次側巻線W2の他端及びSRトランジスタM2のドレイン間の接続ノードは分圧抵抗R1の一端に接続され、分圧抵抗R1の他端は分圧抵抗R2を介してグランドGND2に接続される。このため、分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードには電圧VDRの分圧である電圧VAが加わる。一方、二次側電圧VSが加わる出力端子TM2Aは分圧抵抗R3の一端に接続され、分圧抵抗R3の他端は分圧抵抗R4を介してグランドGND2に接続される。このため、分圧抵抗R3及びR4間の接続ノードには二次側電圧VSの分圧である電圧VBが加わる。
【0033】
SRトランジスタM2のソースはグランドGND2に接続される。また、出力端子TM2A及びTM2B間にコンデンサC2が設けられ、故にコンデンサC2の両端間に二次側電圧VSが加わる。コンデンサC2とDC/DCコンバータ1の負荷(不図示)との間に、過電流の発生を検知するための抵抗が挿入されても良い。
【0034】
二次側制御部20は二次側電圧VSを電源電圧として用いて駆動する。二次側制御部20は、SRトランジスタM2のゲート電圧を制御することでSRトランジスタM2のオン、オフを制御する。二次側制御部20は、当該制御を、電圧VAに基づき又は電圧VA及びVBに基づき行っても良く、この際、トランジスタM1及びM2が同時にオンとならないようにSRトランジスタM2のゲート電圧を制御することができる。SRトランジスタM2の制御方法として公知の方法を含む任意の方法を利用でき、例えば、以下のコンパレータ方式を用いても構わない。SRトランジスタM2がオフとなっている状態を起点に考えると、コンパレータ方式において、二次側制御部20は、電圧VAが所定の負のターンオン判定電圧(例えば-100mV)以下となったことを受けてSRトランジスタM2をターンオンし、その後、電圧VAが所定の負のターンオフ判定電圧(例えば-10mV)以上となったことを受けてSRトランジスタM2をターンオフする。ターンオフ判定電圧の電位はターンオン判定電圧の電位よりも高い。
【0035】
DC/DCコンバータ1において、一次側回路と二次側回路とに亘ってフォトカプラ41が設けられている。フォトカプラ41は、二次側回路に配置された発光素子と、一次側回路に配置された受光素子と、を有する。フォトカプラ41の発光素子は、二次側電圧V
Sにて又は二次側電圧V
Sの分圧にてバイアスされており、フィードバック回路40は、一次側制御部10と協働して、二次側電圧V
Sが所定の目標電圧V
TGに追従するように(即ち電圧V
S及びV
TG間の差がゼロに向かうように)フォトカプラ41の発光素子を駆動する。例えば、フィードバック回路40は、
図1に示す如く分圧抵抗R3及びR4間の接続ノードに接続され、二次側電圧V
Sに応じた電圧V
Bに基づき、二次側電圧V
S及び目標電圧V
TG間の誤差に応じた電流をフォトカプラ41の発光素子に供給する。フィードバック回路40はシャントレギュレータやエラーアンプ等にて構成される。
【0036】
一次側制御部10はフォトカプラ41の受光素子に接続され、フォトカプラ41の受光素子に流れるフィードバック電流IFBに応じたフィードバック信号VFBが一次側制御部10に入力される。また、センス抵抗RCSでの電圧降下に相当する電流検出信号VCSも一次側制御部10に入力される。
【0037】
一次側制御部10はスイッチングトランジスタM1のゲートに接続され、スイッチングトランジスタM1のゲートにパルス信号を供給することでスイッチングトランジスタM1をスイッチング駆動する。パルス信号は、信号レベルがローレベル及びハイレベル間で切り替わる矩形波状の信号である。トランジスタM1のゲートにローレベル、ハイレベルの信号が供給されているとき、トランジスタM1は、夫々、オフ状態、オン状態となる。一次側制御部10の構成及び制御方式は特に限定されない。例えば、一次側制御部10は、PWM(パルス幅変調)を利用してフィードバック信号VFBに応じたデューティを有するパルス信号をスイッチングトランジスタM1のゲートに供給しても良いし、PFM(パルス周波数変調)を利用してフィードバック信号VFBに応じた周波数を有するパルス信号をスイッチングトランジスタM1のゲートに供給しても良い。また例えば一次側制御部10は電流検出信号VCSに基づいて(即ちスイッチングトランジスタM1に流れる電流に応じて)上記パルス信号のデューティを調節しても良い。
【0038】
一次側制御部10には複数の端子が設けられており、一次側制御部10に設けられた複数の端子には、スイッチングトランジスタM1のゲートに接続される端子TM11と、電源電圧VCCを受ける端子TM12と、グランドGND1に接続される端子TM13と、フィードバック信号VFBを受ける端子TM14と、電流検出信号VCSを受ける端子TM15と、パルストランス部30に接続される端子TM16及びTM17と、が含まれる。端子TM16は後述の信号S1を送出するための出力端子であり、端子TM17は後述の信号S2を受けるための入力端子である。
【0039】
二次側制御部20には複数の端子が設けられており、二次側制御部20に設けられた複数の端子には、SRトランジスタM2のゲートに接続される端子TM21と、二次側電圧VSを受ける端子TM22と、グランドGND2に接続される端子TM23と、電圧VAを受ける端子TM24と、電圧VBを受ける端子TM25と、パルストランス部30に接続される端子TM26及びTM27と、が含まれる。端子TM26は後述の信号S1を受けるための入力端子であり、端子TM27は後述の信号S2を送出するための出力端子である。
【0040】
このように構成されたDC/DCコンバータ1では、スイッチングトランジスタM1をスイッチング駆動することにより一次側電圧VPから二次側電圧VSを得ることができる。即ち、スイッチングトランジスタM1のオン区間において一次側巻線W1にエネルギが蓄積され、スイッチングトランジスタM1のオフ区間において蓄積されたエネルギが二次側巻線W2から放出されることによりコンデンサC2が充電されて二次側電圧VSが得られる。エネルギが二次側巻線W2から放出される際にSRトランジスタM2をオンにしておくことで損失の低減が図られる。
【0041】
尚、一次側電源回路11を設ける代わりに、トランスTRに補助巻線を設けておき、補助巻線を含んで構成される自己電源回路にて一次側制御部10の電源電圧VCCが生成されるようにしても良い。また、一次側回路において、入力端子TM1Aから一次側巻線W1を通じてグランドGND1へと流れる電流を一次側電流と称し、記号“IP”にて表す。二次側回路において、グランドGND2から二次側巻線W2を通じて出力端子TM2Aへと流れる電流を二次側電流と称し、記号“IS”にて表す。
【0042】
パルストランス部30について説明する。パルストランス部30は、一次側制御部10及び二次側制御部20間の双方向通信を実現するための通信用トランスであり、1以上のパルストランスを備えて構成される。以下の説明において、特に断りなく記される双方向通信とは、一次側制御部10及び二次側制御部20間の双方向通信を指す。
【0043】
一次側制御部10から二次側制御部20に対しパルストランス部30を介して送信される信号を記号“S1”により参照する。信号S1の内、一次側回路内を伝搬する信号を特に記号“S1a”によって参照し、二次側回路内を伝搬する信号を特に記号“S1b”によって参照する。信号S1a及びS1bの形態は任意であるが、パルス信号等のデジタル信号であって良い。
二次側制御部20から一次側制御部10に対しパルストランス部30を介して送信される信号を記号“S2”により参照する。信号S2の内、一次側回路内を伝搬する信号を特に記号“S2a”によって参照し、二次側回路内を伝搬する信号を特に記号“S2b”によって参照する。信号S2a及びS2bの形態は任意であるが、パルス信号等のデジタル信号であって良い。
【0044】
パルストランス部30には複数の端子が設けられており、パルストランス部30に設けられた複数の端子には、一次側制御部10からの信号S1aを受けるための端子TM31と、二次側制御部20に対し信号S1bを送出するための端子TM32と、二次側制御部20からの信号S2bを受けるための端子TM33と、一次側制御部10に対し信号S2aを送出するための端子TM34と、が含まれる。
【0045】
図2にパルストランス部30の構成例を示す。
図2の構成例において、パルストランス部30は、パルストランス31及び32と、一次側送信部33、一次側受信部34、二次側送信部35及び二次側受信部36とを備える。パルストランス31及び32は、各々に、一次側回路内に配置された一次側巻線と二次側回路内に配置された二次側巻線とを備える。
【0046】
一次側制御部10及び二次側制御部20の内、まず一次側制御部10から信号(S1)を送信するケースを一次側送信ケースと称する。一次側送信ケースにおいて、一次側送信部33は、一次側制御部10からの信号S1aに基づくパルス信号を生成し、生成したパルス信号をパルストランス31の一次側巻線に印加する。この印加によりパルストランス31の二次側巻線に生じた電圧に基づき、二次側受信部36は信号S1bを生成する。信号S1aに含まれる情報は信号S1bにも含まれ、信号S1aと信号S1bは互いに等価であると考えて良い。信号S1の送信とは厳密には信号S1aの送信を意味し、信号S1の受信とは厳密には信号S1bの受信を意味するが、以下では、特に必要の無い限り、信号S1a及びS1bをまとめて信号S1と表現する。
【0047】
一次側制御部10及び二次側制御部20の内、まず二次側制御部20から信号(S2)を送信するケースを二次側送信ケースと称する。二次側送信ケースにおいて、二次側送信部35は、二次側制御部20からの信号S2bに基づくパルス信号を生成し、生成したパルス信号をパルストランス32の二次側巻線に印加する。この印加によりパルストランス32の一次側巻線に生じた電圧に基づき、一次側受信部34は信号S2aを生成する。信号S2bに含まれる情報は信号S2aにも含まれ、信号S2bと信号S2aは互いに等価であると考えて良い。信号S2の送信とは厳密には信号S2bの送信を意味し、信号S2の受信とは厳密には信号S2aの受信を意味するが、以下では、特に必要の無い限り、信号S2a及びS2bをまとめて信号S2と表現する。
【0048】
尚、ここでは、一次側送信部33、一次側受信部34、二次側送信部35及び二次側受信部36がパルストランス部30内に設けられていると考えたが、一次側送信部33及び一次側受信部34の内、少なくとも一方は一次側制御部10内に設けられていると考えても構わないし、二次側送信部35及び二次側受信部36の内、少なくとも一方は二次側制御部20内に設けられていると考えても構わない。
【0049】
このようなパルストランス部30を設けておくことで、一次側の情報及び二次側の情報を一次側制御部10及び二次側制御部20で共有することが可能となる。これにより例えば、制御部10及び20の内、何れか一方に何らかの異常が発生した場合に、一次側回路及び二次側回路の動作を直ちに停止させて安全性を確保するといったことが可能となる。また、パルストランス部30を用いた双方向通信を通じ、トランジスタM1及びM2のオン/オフタイミングを適正にする制御を行ったりすることが可能となるなど、様々なメリットが得られる。
【0050】
図3(a)に示す如く、一次側送信ケースにおいて、一次側制御部10から送信される所定の信号S1を特に基準信号CMD1と称することがある(基準信号をコマンド信号と読み替えても良い)。一次側送信ケースにおいて、二次側制御部20は、基準信号CMD1を受信したとき、基準信号CMD1の受信に応答する所定の信号S2を遅滞なく送信することができる。基準信号CMD1の受信に応答する信号S2を特に応答信号ACK2と称する。応答信号ACK2の送信は基準信号CMD1に対する返信に相当する。一次側制御部10は、この応答信号ACK2を受信することで二次側制御部20にて基準信号CMD1が正常に受信されたと認識できる。
【0051】
一次側送信ケースにおいて、一次側制御部10が基準信号CMD1(S1)を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても一次側制御部10にて応答信号ACK2(S2)が受信されない場合、一次側制御部10は所定の通信エラー処理を実行することができる。一次側制御部10が行う通信エラー処理は、通信エラーフラグFLG1に“1”を設定する処理を含み、更に通信エラー報知処理などを含みうる。
通信エラーフラグFLG1は一次側制御部10が保持するフラグであって、“0”又は“1”の値をとる。通信エラーフラグFLG1の初期値は“1”であり、後述のハンドシェイク通信が正常完了する際に通信エラーフラグFLG1に“0”が設定される。一次側制御部10において、フラグFLG1に“1”が設定されているときスイッチングトランジスタM1をオン状態にすることが禁止され(故にトランジスタM1がオフ状態に維持され)、フラグFLG1に“0”が設定されているときに限りスイッチングトランジスタM1をオン状態とすることが許可される(但し、後述のバースト充電動作の実行時を除く)。故に、一次側制御部10が行う通信エラー処理は、スイッチングトランジスタM1をオン状態にすることを禁止する処理(換言すればトランジスタM1をターンオフする又はオフ状態に維持する処理)を含むと言え、トランジスタM1がオンであるときに当該通信エラー処理が実行されるとトランジスタM1が直ちにターンオフされる。
【0052】
図3(b)に示す如く、二次側送信ケースにおいて、二次側制御部20から送信される所定の信号S2を特に基準信号CMD2と称することがある(基準信号をコマンド信号と読み替えても良い)。二次側送信ケースにおいて、一次側制御部10は、基準信号CMD2を受信したとき、基準信号CMD2の受信に応答する所定の信号S1を遅滞なく送信することができる。基準信号CMD2の受信に応答する信号S1を特に応答信号ACK1と称する。応答信号ACK1の送信は基準信号CMD2に対する返信に相当する。二次側制御部20は、この応答信号ACK1を受信することで一次側制御部10にて基準信号CMD2が正常に受信されたと認識できる。
【0053】
二次側送信ケースにおいて、二次側制御部20が基準信号CMD2(S2)を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても二次側制御部20にて応答信号ACK1(S1)が受信されない場合、二次側制御部20は所定の通信エラー処理を実行することができる。二次側制御部20が行う通信エラー処理は、通信エラーフラグFLG2に“1”を設定する処理を含み、更に通信エラー報知処理などを含みうる。
通信エラーフラグFLG2は二次側制御部20が保持するフラグであって、“0”又は“1”の値をとる。通信エラーフラグFLG2の初期値は“1”であり、後述のハンドシェイク通信が正常完了する際に通信エラーフラグFLG2に“0”が設定される。二次側制御部20において、フラグFLG2に“1”が設定されているときSRトランジスタM2をオン状態にすることが禁止され(故にトランジスタM2がオフ状態に維持され)、フラグFLG2に“0”が設定されているときに限り二次側制御部20にてSRトランジスタM2をオン状態とすることが許可される。故に、二次側制御部20が行う通信エラー処理は、SRトランジスタM2をオン状態にすることを禁止する処理(換言すればトランジスタM2をターンオフする又はオフ状態に維持する処理)を含むと言え、トランジスタM2がオンであるときに当該通信エラー処理が実行されるとトランジスタM2が直ちにターンオフされる。
【0054】
上記の通信エラー報知処理は、DC/DCコンバータ1に内蔵された又はDC/DCコンバータ1に接続された所定の報知部(発光素子、画像表示部、スピーカ等)を用いて、DC/DCコンバータ1の外部に対し所定の通信エラー報知を行う処理であって良い。通信エラー報知は、双方向通信に異常が発生している旨を示す視覚的又は聴覚的な報知であって良い。
【0055】
後述の幾つかの実施形態の中で、パルストランス部30を利用した具体的な動作及び制御の方法を説明する。尚、一次側制御部10及び二次側制御部20が双方向通信を介して協調動作を行う際、所謂マスタ/スレーブ方式を採用して、一次側制御部10及び二次側制御部20の内、何れか一方をマスタとして機能させ且つ他方をスレーブとして機能させることが可能である。
【0056】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3~第7実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第7実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第7実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3~第7実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第7実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0057】
第2実施形態は以下の実施例EX2_1~EX2_3を含む。パルストランス部30を用いてトランジスタM1及びM2のオン/オフ制御に関わる信号を送受信することができ、この送受信の例を以下の実施例EX2_1~EX2_3の中で説明する。尚、第2実施形態で示される各動作は、後述のハンドシェイク動作が正常完了した後の動作であって、特に記述無き限り、通信エラーフラグFLG1及びFLG2に“0”が設定された状態での動作であるとする。
【0058】
[実施例EX2_1]
実施例EX2_1を説明する。実施例EX2_1では、一次側制御部10がマスタとして機能し且つ二次側制御部20がスレーブとして機能する。実施例EX2_1に係る一次側制御部10は、第1実施形態で述べた方法によりフィードバック信号VFB又は電流検出信号VCSに基づき、スイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御して良い。また、実施例EX2_1では、二次側制御部20にてコンパレータ方式が採用されていることを想定する。コンパレータ方式は、電圧VDRに基づいて(詳細には電圧VDRに応じた電圧VAとターンオン判定電圧及びターンオフ判定電圧との比較結果に基づいて)、SRトランジスタM2のターンオン及びターンオフタイミングを決定する方式である。
【0059】
図4を参照してコンパレータ方式を具体的に説明する。
図4は実施例EX2_1の想定下におけるDC/DCコンバータ1の不連続モードでのタイミングチャートである。一次側制御部10の制御により、タイミングt
A1及びt
A2間の区間においてスイッチングトランジスタM1がオン状態とされ、その後、タイミングt
A5までの区間においてスイッチングトランジスタM1がオフ状態とされる。スイッチングトランジスタM1のオン区間においてSRトランジスタM2がオフ状態となるように、SRトランジスタM2のオン区間においてスイッチングトランジスタM1がオフ状態となるように、トランジスタM1及びM2が制御される。
【0060】
スイッチングトランジスタM1のオン区間において、一次側巻線W1に電流IPが流れ、電圧VDRが二次側電圧VSよりも電圧VOR2だけ高くなる。電圧VOR2はスイッチングトランジスタM1のオン区間において二次側巻線W2に生じる誘起電圧である。誘起電圧VOR2は一次側電圧VPとトランスTRの巻き数比nを用いて、“VOR2=VP/n”にて表される。ここで、巻き数比nは“n=NP/NS”で表される。NPは一次側巻線W1の巻き数であり、NSは二次側巻線W2の巻き数である。
【0061】
タイミングtA2にてスイッチングトランジスタM1がターンオフすると、電圧VDR及びVAが急峻に低下し、ダイオードD2を通じて二次側電流ISが流れる。その結果として、電圧VAが所定の負のターンオン判定電圧(例えば-100mV)を下回ったことが二次側制御部20にて検知されると、二次側制御部20はSRトランジスタM2をターンオンする。タイミングtA3はSRトランジスタM2のターンオンタイミングを表す。
【0062】
SRトランジスタM2がターンオンした後、二次側電流ISはSRトランジスタM2のチャネルを通じて流れ、二次側電流ISの大きさはトランスTRの蓄積エネルギの低下と共に低下してゆく。タイミングtA3の後のタイミングtA4において、二次側制御部20は、SRトランジスタM2をターンオフする。例えば、二次側制御部20は、電圧VAが所定の負のターンオフ判定電圧(例えば-10mV)以上となったことを受けてSRトランジスタM2をターンオフする。ターンオフ判定電圧の電位はターンオン判定電圧の電位よりも高い。SRトランジスタM2のターンオフタイミングtA4は電圧VBをも参照して決定されるものであっても良い。その後、一次側制御部10の制御の下、タイミングtA5にてスイッチングトランジスタM1がターンオンする。以後、同様の動作が繰り返される。
【0063】
上述のようなコンパレータ方式によるSRトランジスタM2の制御を前提としつつ、パルストランス部30を用いた双方向通信が以下のように行われる。
【0064】
図5はタイミングt
A1及びt
A2近辺のタイミングチャートである。一次側制御部10は、タイミングt
A1にてスイッチングトランジスタM1をターンオンすると、それに同期して信号S1としての基準信号CMD1(この基準信号CMD1を基準信号211と称する)を送信する。基準信号211は、トランジスタM1がターンオンしたことを通知する信号として機能する。基準信号211(CMD1)を受信した二次側制御部20は、遅滞なく信号S2としての応答信号ACK2(この応答信号ACK2を応答信号212と称する)を送信する。基準信号211の送信タイミングはタイミングt
A1と一致していると考えて良いが、タイミングt
A2から若干ずれることが有りえて良い。二次側制御部20は、原則として上述のコンパレータ方式にてSRトランジスタM2のターンオン及びターンオフタイミングを決定して良いが、SRトランジスタM2がオンとされている状態で基準信号211を受信したとき、電圧V
Aに依らず直ちにSRトランジスタM2をターンオフする。即ち、基準信号211(CMD1)を受信した二次側制御部20はSRトランジスタM2のオフ状態を確保する。SRトランジスタM2のオフ状態を確保するとは、SRトランジスタM2がオン状態であるならばSRトランジスタM2をターンオフし、SRトランジスタM2が既にオフ状態であるならばSRトランジスタM2のオフ状態を維持することを指す。条件によっては、電圧V
Aがターンオフ判定電圧以上となることが検知される前にスイッチングトランジスタM1がターンオンされることもあり得るが、本方式によりトランジスタM1及びM2の同時オンによる不具合を抑制することが可能となる。
【0065】
また、一次側制御部10は、タイミングtA2にてスイッチングトランジスタM1をターンオフすると、それに同期して信号S1としての基準信号CMD1(この基準信号CMD1を基準信号213と称する)を送信する。基準信号213は、トランジスタM1がターンオフしたことを通知する信号として機能する。基準信号213(CMD1)を受信した二次側制御部20は、遅滞なく信号S2としての応答信号ACK2(この応答信号ACK2を応答信号214と称する)を送信する。基準信号213の送信タイミングはタイミングtA2と一致していると考えて良いが、タイミングtA2から若干ずれることが有りえて良い。二次側制御部20は、原則として上述のコンパレータ方式にてSRトランジスタM2のターンオン及びターンオフタイミングを決定して良いが、SRトランジスタM2がオフとされている状態で基準信号213を受信したとき、電圧VAに依らず直ちにSRトランジスタM2をターンオンして良い。これにより二次側回路での損失を更に低減することが可能となる。
【0066】
尚、基準信号CMD1(
図5では211、213)の送信に対して応答信号ACK2(
図5では212、214)の返信がないとき、一次側制御部10が通信エラー処理を実行して良いことは第1実施形態で述べた通りである。
【0067】
ところで、
図5の方法では、短時間であってもトランジスタM1及びM2が同時にオン状態となることが有り得る。トランジスタM1及びM2が同時にオン状態となる区間の長さが十分に短ければ実質的な問題は生じないこともあるが、トランジスタM1及びM2の同時オンを確実に回避すべく
図6に示すような改良方法を採用しても良い。
【0068】
図6は当該改良方法に係るタイミングt
A1近辺のタイミングチャートである。当該改良方法において、一次側制御部10は、スイッチングトランジスタM1のターンオンに先立ち、タイミングt
A0にて信号S1としての基準信号CMD1(この基準信号CMD1を基準信号211aと称する)を送信する。基準信号211aは、スイッチングトランジスタM1のターンオンを予告する信号として機能すると共にSRトランジスタM2のオフ状態の確保を指示する信号として機能する。基準信号211a(CMD1)を受信した二次側制御部20は、SRトランジスタM2のオフ状態を確保すると共に信号S2としての応答信号ACK2(この応答信号ACK2を応答信号212aと称する)を送信する。一次側制御部10は、応答信号212aを受信するとタイミングt
A1にてスイッチングトランジスタM1をターンオンする。一次側制御部10は応答信号212aを受信しない限りスイッチングトランジスタM1をターンオンせずにオフ状態に維持する。これにより、トランジスタM1及びM2の同時オンを確実に回避することができ、DC/DCコンバータ1の安全性を高めることができる。
【0069】
実施例EX2_1の方法によれば、コンパレータ方式を基礎としつつも、双方向通信を利用して損失低減や安全性向上を図ることができる。コンパレータ方式ではSRトランジスタM2のターンオン/ターンオフタイミングを決定するための回路の応答性が重要になることが多いが、実施例EX2_1の方法によれば、一次側制御部10からの信号S1(CMD1)を利用してSRトランジスタM2のターンオン/ターンオフタイミングを決定することもできるため、上記回路の応答性に対する要求を緩和することができ、以ってコンパレータ方式に関わる電力消費を低減することも可能となる。
【0070】
[実施例EX2_2]
実施例EX2_2を説明する。実施例EX2_2においても、実施例EX2_1と同様に、一次側制御部10がマスタとして機能し且つ二次側制御部20がスレーブとして機能する。実施例EX2_2に係る一次側制御部10は、第1実施形態で述べた方法によりフィードバック信号V
FB又は電流検出信号V
CSに基づき、スイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御して良い。実施例EX2_2では、二次側制御部20においてコンパレータ方式が採用されず、一次側制御部10からの指示の下でSRトランジスタM2が制御される。
図7を参照して、これを具体的に説明する。
【0071】
図7は、実施例EX2_2に係るDC/DCコンバータ1のタイミングチャートである。
図7の例において、タイミングt
B0においてトランジスタM1、M2が、夫々、オフ状態、オン状態となっており、その直後のタイミングt
B1において一次側制御部10がスイッチングトランジスタM1をターンオンするものとする。
【0072】
一次側制御部10は、タイミングt
B1にてスイッチングトランジスタM1をターンオンすると、それに同期して信号S1としての基準信号CMD1(この基準信号CMD1を基準信号221と称する)を送信する。基準信号221は、トランジスタM1がターンオンしたことを通知する信号として機能すると共にSRトランジスタM2のターンオフを指示する信号として機能する。基準信号221(CMD1)を受信した二次側制御部20は、遅滞なくSRトランジスタM2をターンオフすると共に信号S2としての応答信号ACK2(この応答信号ACK2を応答信号222と称する)を送信する。尚、
図7の例では、基準信号221の受信に基づきSRトランジスタM2がターンオフされているが、二次側制御部20の制御の下、電圧V
Aに基づきタイミングt
B1以前にSRトランジスタM2がターンオフされていても良い。
【0073】
一次側制御部10は、タイミングtB1より後のタイミングtB2にてスイッチングトランジスタM1をターンオフすると、それに同期して信号S1としての基準信号CMD1(この基準信号CMD1を基準信号223と称する)を送信する。基準信号223は、トランジスタM1がターンオフしたことを通知する信号として機能すると共にSRトランジスタM2のターンオンを指示する信号として機能する。基準信号223(CMD1)を受信した二次側制御部20は、遅滞なくSRトランジスタM2をターンオンすると共に信号S2としての応答信号ACK2(この応答信号ACK2を応答信号224と称する)を送信する。
【0074】
以後、スイッチングトランジスタM1をターンオンタイミング及びターンオフタイミングの到来に対して、上述と同様の動作が繰り返される。尚、基準信号CMD1(
図7では221、223)の送信に対して応答信号ACK2(
図7では222、224)の返信がないとき、一次側制御部10が通信エラー処理を実行して良いことは第1実施形態で述べた通りである。
【0075】
実施例EX2_2の方法によれば、実施例EX2_1と同様、安全性が確保された適正な同期整流を行うことができ、更に、コンパレータ方式の実現に必要な回路を省略することが可能となるため、二次側回路における回路規模の縮小及びコンパレータ方式に関わる電力消費の削減を実現できる。
【0076】
ところで、
図7の方法では、短時間であってもトランジスタM1及びM2が同時にオン状態となることが有り得る。トランジスタM1及びM2が同時にオン状態となる区間の長さが十分に短ければ実質的な問題は生じないこともあるが、トランジスタM1及びM2の同時オンを確実に回避すべく
図8に示すような改良方法を採用しても良い。
【0077】
図8は、当該改良方法に係るタイミングt
B1近辺のタイミングチャートである。当該改良方法において、一次側制御部10は、スイッチングトランジスタM1のターンオンに先立ち、タイミングt
B0にて信号S1としての基準信号CMD1(この基準信号CMD1を基準信号221aと称する)を送信する。基準信号221aは、スイッチングトランジスタM1のターンオンを予告する信号として機能すると共に、SRトランジスタM2のターンオフを指示する信号(又はSRトランジスタM2のオフ状態の確保を指示する信号)として機能する。
図8の例では、タイミングt
B0において、トランジスタM1、M2が、夫々、オフ状態、オン状態となっているが、二次側制御部20の制御の下、電圧V
Aに基づきタイミングt
B0以前にSRトランジスタM2がターンオフされていても良い。基準信号221a(CMD1)を受信した二次側制御部20は、SRトランジスタM2のオフ状態を確保すると共に信号S2としての応答信号ACK2(この応答信号ACK2を応答信号222aと称する)を送信する。一次側制御部10は、応答信号222aを受信するとタイミングt
B1にてスイッチングトランジスタM1をターンオンする。一次側制御部10は応答信号222aを受信しない限りスイッチングトランジスタM1をターンオンせずにオフ状態に維持する。これにより、トランジスタM1及びM2の同時オンを確実に回避することができ、DC/DCコンバータ1の安全性を高めることができる。
【0078】
[実施例EX2_3]
実施例EX2_3を説明する。実施例EX2_3では、二次側制御部20がマスタとして機能し且つ一次側制御部10がスレーブとして機能することを想定する。そして、実施例EX2_3に係る二次側制御部20は、二次側電圧V
Sに基づき(
図1の構成例においては電圧V
Bに基づき)基準信号CMD2の送信を通じて一次側制御部10にスイッチングトランジスタM1のターンオン及びターンオフを指示することでスイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御する。例えば、二次側制御部20は、PWM(パルス幅変調)を利用して二次側電圧V
Sに応じたデューティを有するパルス信号がスイッチングトランジスタM1のゲートに供給されるよう基準信号CMD2の送信を行っても良いし、PFM(パルス周波数変調)を利用して二次側電圧V
Sに応じた周波数を有するパルス信号がスイッチングトランジスタM1のゲートに供給されるよう基準信号CMD2の送信を行っても良い。この際、二次側制御部20は、二次側電圧V
Sに応じた電圧V
Bに基づき、二次側電圧V
Sが所定の目標電圧V
TGに追従するように(即ち電圧V
S及びV
TG間の差がゼロに向かうように)、基準信号CMD2の送信を通じてスイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御することができる。
【0079】
実施例EX2_3では、二次側制御部20が主体となって二次側電圧VSに応じたスイッチングトランジスタM1の制御が行われるので、フィードバック信号VFBの一次側制御部10への伝達は不要であり、故にフィードバック回路40及びフォトカプラ41はDC/DCコンバータ1から削除されて良い。
【0080】
図9は、実施例EX2_3に係るDC/DCコンバータ1のタイミングチャートである。
図9の例では、タイミングt
C0の直前にてトランジスタM1、M2が、夫々、オフ状態、オン状態となっている。PWM又はPFMによる制御の下、スイッチングトランジスタM1をターンオンすべきタイミングに至ると、タイミングt
C0にて二次側制御部20はSRトランジスタM2のオフ状態を確保すると共に信号S2としての基準信号CMD2(この基準信号CMD2を基準信号231と称する)を送信する。
図9の例では、タイミングt
C0にてSRトランジスタM2がターンオフされているが、二次側制御部20の制御の下、電圧V
Aに基づきタイミングt
C0以前にSRトランジスタM2がターンオフされていても良い。基準信号231は、スイッチングトランジスタM1のターンオンを指示する信号として機能する。基準信号231(CMD2)を受信した一次側制御部10は、遅滞なくスイッチングトランジスタM1をターンオンすると共に信号S1としての応答信号ACK1(この応答信号ACK1を応答信号232と称する)を送信する。タイミングt
C0より後のタイミングt
C1はスイッチングトランジスタM1のターンオンタイミングを表している。
【0081】
その後、PWM又はPFMによる制御の下、スイッチングトランジスタM1をターンオフすべきタイミングに至ると、タイミングtC2にて二次側制御部20は信号S2としての基準信号CMD2(この基準信号CMD2を基準信号233と称する)を送信する。基準信号233は、スイッチングトランジスタM1のターンオフを指示する信号として機能する。基準信号233(CMD2)を受信した一次側制御部10は、遅滞なくスイッチングトランジスタM1をターンオフすると共に信号S1としての応答信号ACK1(この応答信号ACK1を応答信号234と称する)を送信する。タイミングtC2より後のタイミングtC3はスイッチングトランジスタM1のターンオフタイミングを表している。
【0082】
二次側制御部20は、応答信号234の受信を契機にしてSRトランジスタM2をターンオンする。二次側制御部20は応答信号234を受信しない限りSRトランジスタM2をターンオンせずにオフ状態に維持する。二次側制御部20は、応答信号234が受信され且つ電圧VAが所定の負のターンオン判定電圧(例えば-100mV)を下回ったことが二次側制御部20にて検知されたときに限り、SRトランジスタM2をターンオンするようにしても良い。以後、スイッチングトランジスタM1をターンオンすべきタイミング及びターンオフすべきタイミングの到来に対して、上述と同様の動作が繰り返される。
【0083】
尚、基準信号CMD2(
図9では231、233)の送信に対して応答信号ACK1(
図9では232、234)の返信がないとき、二次側制御部20が通信エラー処理を実行して良いことは第1実施形態で述べた通りである。
【0084】
実施例EX2_3によれば、トランジスタM1及びM2の同時オンを確実に回避することができ、DC/DCコンバータ1の安全性を高めることができる。また、二次側電圧VSを直接観測できる二次側制御部20にてスイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御することができるため、一次側制御部10がフィードバック信号VFBに応じてスイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御する方式との比較において、二次側電圧VSの安定性や負荷応答性の向上が期待される。
【0085】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第1及び第2実施形態において説明したDC/DCコンバータ1の動作は、基本的に、DC/DCコンバータ1が正常に起動した後における動作(後述の通常動作)に相当する。第3実施形態では、DC/DCコンバータ1の起動時における動作を説明する。
【0086】
図10は、DC/DCコンバータ1の起動時における動作の流れを示すフローチャートである。DC/DCコンバータ1に対して電圧が入力されておらず、一次側電圧V
P及び二次側電圧V
Sが0Vである状態を起点として、ステップSTP11にてDC/DCコンバータ1に必要な電圧が入力されると(即ち一次側電圧V
Pが所定の正の電圧にまで上昇すると)、一次側電源回路11の起動を通じて一次側制御部10に必要な電源電圧VCCが入力され、これによって一次側制御部10が起動する。一次側制御部10の起動直後において上述の通信エラーフラグFLG1(
図3(a)参照)には“1”が設定される。
【0087】
一次側制御部10が起動すると、ステップSTP12において一次側制御部10はバースト充電動作(初期動作)を行う。バースト充電動作において、一次側制御部10は、二次側電圧VSの値に関係なくスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行う。つまり例えば、通常動作において実施例EX2_1又はEX2_2の如くフィードバック信号VFBに応じてスイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御する構成にあっては、バースト充電動作においてフィードバック信号VFBに関係なくスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行う。また例えば、通常動作において実施例EX2_3の如く二次側制御部20からの基準信号CMD2(二次側電圧VSに基づく基準信号CMD2)に従ってスイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御する構成にあっては、バースト充電動作において基準信号CMD2に関係なくスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行う。
【0088】
バースト充電動作では、スイッチングトランジスタM1に流れる電流に応じた信号である電流検出信号VCSが利用されると良い。即ち例えば、バースト充電動作において、一次側制御部10は、スイッチングトランジスタM1をターンオンした後、電流検出信号VCSの電圧値が所定値に達した時点でスイッチングトランジスタM1をターンオフするという単位動作を周期的に繰り返し実行すると良い。単位動作が所定回数だけ実行されると又は単位動作の繰り返しが所定のバースト充電時間だけ実行されると、バースト充電動作は終了する。或いは、一次側制御部10にて後述の二次側起動信号が受信されたときにバースト充電動作が終了されるようにしても良い。
【0089】
バースト充電動作の実行により二次側電圧V
Sが所定電圧以上になるまで上昇すると、ステップSTP13にて二次側制御部20が起動する。二次側制御部20の起動直後において上述の通信エラーフラグFLG2(
図3(b)参照)には“1”が設定される。二次側制御部20が起動したとき、二次側制御部20は所定の二次側起動信号を信号S2として一次側制御部10に送信するようにしても良い。
【0090】
二次側制御部20の起動後、ステップSTP14にてハンドシェイク通信が実行される。ハンドシェイク通信は、バースト充電動作の終了後に開始されることがあっても良いし、バースト充電動作の実行中に開始されることがあっても良い。二次側制御部20の起動に連動して上述の二次側起動信号が送信される構成にあっては、二次側制御部20による二次側起動信号の送信を契機にして、又は、一次側制御部10による二次側起動信号の受信を契機にして、ハンドシェイク通信が実行されて良い。また例えば、バースト充電動作が一定時間だけ実行されたことを条件にハンドシェイク通信が実行されるようにしても良い(この場合には、ハンドシェイク通信における最初の信号の送信主体は一次側制御部10となる)。
【0091】
ハンドシェイク通信は、一次側制御部10及び二次側制御部20間における、パルストランス部30を介した1往復以上の信号のやりとりにて構成される。
【0092】
図11にハンドシェイク通信の一例としてのハンドシェイク通信HS1の流れを示す。ハンドシェイク通信HS1は、一次側制御部10がマスタとして機能すると共に二次側制御部20がスレーブとして機能するときに利用される(但し二次側制御部20がマスタとして機能する場合にハンドシェイク通信HS1が実行されることがあり得ても良い)。
【0093】
図11のハンドシェイク通信HS1では、まず一次側制御部10が二次側制御部20に対し信号311を信号S1として送信し、信号311を受信した二次側制御部20が一次側制御部10に対し信号312を信号S2として送信し、信号312を受信した一次側制御部10が二次側制御部20に対し信号313を信号S1として送信し、信号313を受信した二次側制御部20が一次側制御部10に対し信号314を信号S2として送信する。信号311及び313が基準信号CMD1として機能し、信号312及び314が応答信号ACK2として機能する。一次側制御部10にて信号314が受信されることでハンドシェイク通信HS1は正常完了する。二次側制御部20の起動に連動して上述の二次側起動信号が送信される構成にあっては、一次側制御部10による二次側起動信号の受信を契機にして信号311の送信が行われても良い。
【0094】
信号311~313は、制御部10及び20間の双方向通信が可能であるかを確認するためのチェック信号である。一次側制御部10は、信号312の受信により、制御部10及び20間の双方向通信が可能となっていると認識できる。二次側制御部20は、信号311及び313の受信により、制御部10及び20間の双方向通信が可能となっていると認識できる。二次側制御部20は信号314を送信する際に自身が保持する通信エラーフラグFLG2に“0”を設定し、一次側制御部10は信号314を受信したときに自身が保持する通信エラーフラグFLG1に“0”を設定する。故に、ハンドシェイク通信HS1が正常完了した段階ではフラグFLG1及びFLG2の夫々に“0”が設定されていることになる。フラグFLG1及びFLG2の双方が“0”であることは制御部10及び20間の双方向通信を正常に行うことができることを示す。
【0095】
図12にハンドシェイク通信の他の例としてのハンドシェイク通信HS2の流れを示す。ハンドシェイク通信HS2は、二次側制御部20がマスタとして機能すると共に一次側制御部10がスレーブとして機能するときに利用される(但し一次側制御部10がマスタとして機能する場合にハンドシェイク通信HS2が実行されることがあり得ても良い)。
【0096】
図12のハンドシェイク通信HS2では、まず二次側制御部20が一次側制御部10に対し信号321を信号S2として送信し、信号321を受信した一次側制御部10が二次側制御部20に対し信号322を信号S1として送信し、信号322を受信した二次側制御部20が一次側制御部10に対し信号323を信号S2として送信し、信号323を受信した一次側制御部10が二次側制御部20に対し信号324を信号S1として送信する。信号321及び323が基準信号CMD2として機能し、信号322及び324が応答信号ACK1として機能する。二次側制御部20にて信号324が受信されることでハンドシェイク通信HS2は正常完了する。二次側制御部20の起動に連動して上述の二次側起動信号が送信される構成にあっては、二次側起動信号が信号321として機能しても良い。
【0097】
信号321~323は、制御部10及び20間の双方向通信が可能であるかを確認するためのチェック信号である。二次側制御部20は、信号322の受信により、制御部10及び20間の双方向通信が可能となっていると認識できる。一次側制御部10は、信号321及び323の受信により、制御部10及び20間の双方向通信が可能となっていると認識できる。一次側制御部10は信号324を送信する際に自身が保持する通信エラーフラグFLG1に“0”を設定し、二次側制御部20は信号324を受信したときに自身が保持する通信エラーフラグFLG2に“0”を設定する。故に、ハンドシェイク通信HS2が正常完了した段階ではフラグFLG1及びFLG2の夫々に“0”が設定されていることになる。
【0098】
図10の説明に戻る。ハンドシェイク通信(例えばHS1又はHS2)が正常完了するとステップSTP16に進んで、通常動作が開始される。即ち、第1又は第2実施形態に示した、二次側電圧V
Sを参照しつつ二次側電圧V
Sを目標電圧V
TGにて安定化させるためのスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動が開始される。例えば、実施例EX2_1、EX2_2又はEX2_3に示した、トランジスタM1及びM2のオン、オフ制御を含む動作が通常動作として開始される。尚、ステップSTP16にて通常動作が開始されるまではSRトランジスタM2はオフに維持されている。
【0099】
一方、ハンドシェイク通信が正常完了しない場合にあっては、通常動作は開始されずにステップSTP15からステップSTP17に移行する。ステップSTP17では、一次側制御部10により所定時間だけスイッチングトランジスタM1がオフ状態に維持され、その後、ステップSTP12に戻って、再度、バースト充電動作が行われる。尚、ステップSTP17に移行した後は、ステップSTP12に戻ることなく、一次側制御部10への電源電圧VCCの供給が遮断されるまでトランジスタM1のオフ状態が継続されるようにしても良い(この場合、プラグを通じて供給される商用交流電圧を元に一次側電圧VPが生成されるのであれば、DC/DCコンバータ1の再起動に、プラグの挿抜が必要となる)。
【0100】
例えば、
図11のハンドシェイク通信HS1を行う場合にあっては、一次側制御部10より信号311を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても一次側制御部10にて信号312が受信されないとき、又は、一次側制御部10より信号313を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても一次側制御部10にて信号314が受信されないとき、ハンドシェイク通信が正常完了しないと判断されて、ステップSTP15からステップSTP17への移行が発生する。
【0101】
或いは例えば、
図12のハンドシェイク通信HS2を行う場合にあっては、一次側制御部10より信号322を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても一次側制御部10にて信号323が受信されないとき、ハンドシェイク通信が正常完了しないと判断されて、ステップSTP15からステップSTP17への移行が発生する。
【0102】
また例えば、
図12のハンドシェイク通信HS2が行われる場合において、二次側制御部20より信号321を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても二次側制御部20にて信号322が受信されないとき、又は、二次側制御部20より信号323を送信してから所定のタイムアウト時間が経過しても二次側制御部20にて信号324が受信されないとき、双方向通信が正常に機能しておらず、二次側制御部20は一次側回路の状態を知ることができないが、この際には、通信エラーフラグFLG2に“1”が設定されているのでSRトランジスタM2がオン状態とならず、トランジスタM1及びM2の同時オンは回避される。また、この際、二次側制御部20がマスタとして機能するのであれば実施例EX2_3に示す方法によりスイッチングトランジスタM1はターンオンされないし、一次側制御部10がマスタとして機能する場合であっても速やかに通信エラー処理が実行されてトランジスタM1、M2のオフ状態が確保される。
【0103】
上記のような方法により、双方向通信が正常であることが担保された状態で通常動作を開始することができる。即ち、双方向通信が不完全な状態で通常動作が開始されることが抑止され、安全性に関わるような予期せぬ事象の発生を予防することが可能となる。
【0104】
また、一次側制御部10の起動後、一次側制御部10にて何らかの異常が検出された場合、一次側制御部10は、ハンドシェイク通信の中で、その旨を示す信号を二次側制御部20に送信すると良く、この場合にはステップSTP17への移行が発生すると良い。同様に例えば、二次側制御部20の起動後、二次側制御部20にて何らかの異常が検出された場合、二次側制御部20は、ハンドシェイク通信の中で、その旨を示す信号を一次側制御部10に送信すると良く、この場合にもステップSTP17への移行が発生すると良い。尚、ここにおける異常については後述の他の実施形態でも説明される。
【0105】
制御部10及び20の一方で異常が発生しているときに、他方が当該異常の発生に関係なく普段通りの動作(例えば、スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動、又は、SRトランジスタM2のオン、オフ制御)を行うことは好ましくなく、異常の内容によってはDC/DCコンバータ1自体や負荷に劣化や破損を招き得る。上記の方法によれば、このような不具合を回避することができる。
【0106】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では、一次側制御部10又は二次側制御部20にて異常が発生した場合の対応について説明する
【0107】
図13に示す如く、一次側制御部10には一次側回路内(特に例えば一次側制御部10内)における異常の有無を検出する一次側異常検出部15が設けられ、二次側制御部20には二次側回路内(特に例えば二次側制御部20内)における異常の有無を検出する二次側異常検出部25が設けられる。
【0108】
一次側異常検出部15は複数種類の異常を個別に検出可能であっても良い。一次側異常検出部15にて検出可能な異常の例として、一次側過熱異常、一次側電圧過大異常、一次側電圧過小異常、電流センス異常、オフ不全異常が挙げられる。
【0109】
一次側過熱異常は、一次側制御部10の温度又はスイッチングトランジスタM1の温度が所定温度T1_UL以上となる状態を指す。一次側制御部10の温度又はスイッチングトランジスタM1の温度に応じた信号を出力する温度センサを用いて、異常検出部15は一次側過熱異常の有無を検出できる。
一次側電圧過大異常、一次側電圧過小異常は、夫々、一次側電圧VPが所定の上限電圧VP_UL以上となる状態、又は、一次側電圧VPが所定の下限電圧VP_LL以下となる状態を指す。一次側制御部10は、一次側電圧VPそのもの又は一次側電圧VPの分圧に基づいて、一次側電圧過大異常及び一次側電圧過小異常の有無を検出できる。尚、一次側電圧VPの過渡期を考慮し、一次側制御部10の起動後、一定時間は一次側電圧過小異常の検出がマスクされると良い。
電流センス異常は、スイッチングトランジスタM1がターンオンしてから所定時間が経過したタイミングにおける電流検出信号VCSの値(即ちセンス抵抗RCSの電圧降下)が所定の閾値VCS1以下である状態を指す(そのタイミングにおいてトランジスタM1はオン状態であるとする)。センス抵抗RCSが短絡しているとき電流センス異常が検出される。
オフ不全異常は、スイッチングトランジスタM1がオフとなるように制御しているにも関わらず(トランジスタM1のゲート電圧をローレベルにしているにも関わらず)、電流検出信号VCSの値(即ちセンス抵抗RCSの電圧降下)が所定の閾値以上である状態を指す。トランジスタM1のドレイン-ソース間が短絡された状態となっているときにオフ不全異常が検出される。
【0110】
二次側異常検出部25は複数種類の異常を個別に検出可能であっても良い。二次側異常検出部25にて検出可能な異常の例として、二次側過熱異常、二次側電圧過大異常、二次側電圧過小異常が挙げられる。
【0111】
二次側過熱異常は、二次側制御部20の温度又はSRトランジスタM2の温度が所定温度T2_UL以上となる状態を指す。二次側制御部20の温度又はSRトランジスタM2の温度に応じた信号を出力する温度センサを用いて、異常検出部25は二次側過熱異常の有無を検出できる。
二次側電圧過大異常、二次側電圧過小異常は、夫々、二次側電圧V
Sが所定の上限電圧V
S_UL以上となる状態、又は、二次側電圧V
Sが所定の下限電圧V
S_LL以下となる状態を指す。二次側制御部20は、二次側電圧V
Sに基づいて(
図1の構成では電圧V
Bに基づいて)、二次側電圧過大異常及び二次側電圧過小異常の有無を検出できる。定常状態において、本来、二次側電圧過大異常又は二次側電圧過小異常は発生しないはずであるが、何らかの部品の故障等により、それらの異常が発生することが有りえる。尚、二次側電圧V
Sの過渡期を考慮し、二次側制御部20の起動後、一定時間は二次側電圧過小異常の検出がマスクされると良い。
【0112】
異常検出部15又は25にて異常が検出されたときの動作の例を、第4実施形態に属する以下の実施例EX4_1~EX4_4の中で説明する。尚、実施例EX4_1~EX4_4に示される各動作は、上述の通常動作の開始後の動作であると解して良い。尚、異常が検出されるとは、詳細には、異常が発生していることが検出されることを指す。
【0113】
[実施例EX4_1]
実施例EX4_1を説明する。実施例EX4_1では、一次側制御部10がマスタとして且つ二次側制御部20がスレーブとして機能している状況で、一次側の異常検出部15にて任意の異常(便宜上、この異常を異常AB1と称する)が検出されたことを想定する。
【0114】
異常AB1が検出されたときの一次側制御部10の動作について説明する。異常AB1が検出されると、一次側制御部10は、スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を停止する。スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動の停止とは、トランジスタM1がオン状態であるならばトランジスタM1を直ちにターンオフしてオフ状態に保持し、トランジスタM1が既にオフ状態であるならばトランジスタM1をそのままオフ状態で保持することを指す。スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動の停止は、異常AB1の解消が検知されるまで継続される。また、異常AB1が検出されると、一次側制御部10は、異常AB1が検出されたことを示す所定の異常検出信号S1(一次側異常検出信号)を二次側制御部20に送信し、通常動作を実現するための信号送信を停止する。ここにおける通常動作を実現するための信号送信の停止とは、上述の実施例EX2_1を利用する場合にあっては基準信号CMD1(211、213、211a;
図5及び
図6)の送信を行わないことを意味し、上述の実施例EX2_2を利用する場合にあっては基準信号CMD1(221、223、221a;
図7及び
図8)の送信を行わないことを意味する。
【0115】
異常AB1の検出後、異常検出部15により異常AB1が解消したか否かが監視され、異常AB1の解消が検知されたとき、一次側制御部10は、所定の回復信号S1を二次側制御部20に送信する。この後、所定のタイムアウト時間内に、回復信号S1に応答する、二次側制御部20からの応答信号が一次側制御部10にて受信されたならば、一次側制御部10は通常動作を再開して良い。一方、所定のタイムアウト時間内に、回復信号S1に応答する、二次側制御部20からの応答信号が一次側制御部10にて受信されなかったならば、二次側制御部20の駆動が停止する程度に二次側電圧V
Sが低下していると考えられるので、一次側制御部10は、
図10のステップSTP12のバースト充電動作から第3実施形態に示す処理を実行すると良い。
【0116】
異常AB1が検出されたときの二次側制御部20の動作について説明する。二次側制御部20は、異常AB1が検出されたことを示す異常検出信号S1を受信すると、その受信に応答する応答信号を一次側制御部10に送信すると共に、SRトランジスタM2のオフ状態を確保し、以後、一次側制御部10から回復信号が送信されてくるのを待機する。待機の過程で、二次側電圧VSが所定のリセット電圧を下回るまで低下すると二次側制御部20の駆動は停止される。
【0117】
[実施例EX4_2]
実施例EX4_2を説明する。実施例EX4_2では、二次側制御部20がマスタとして且つ一次側制御部10がスレーブとして機能している状況で、一次側の異常検出部15にて任意の異常AB1が検出されたことを想定する。
【0118】
異常AB1が検出されたときの一次側制御部10の動作について説明する。異常AB1が検出されると、一次側制御部10は、スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を停止する。スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動の停止は、異常AB1の解消が検知されるまで継続される。また、異常AB1が検出されると、一次側制御部10は、異常AB1が検出されたことを示す所定の異常検出信号S1(一次側異常検出信号)を二次側制御部20に送信する。
【0119】
異常AB1の検出後、異常検出部15により異常AB1が解消したか否かが監視され、異常AB1の解消が検知されたとき、一次側制御部10は、所定の回復信号S1を二次側制御部20に送信する。この後、所定のタイムアウト時間内に、回復信号S1に応答する、二次側制御部20からの応答信号が一次側制御部10にて受信されたならば、スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動の停止を解消し、以後、マスタである二次側制御部20の制御の下で、当該スイッチング駆動を再開して良い。一方、所定のタイムアウト時間内に、回復信号S1に応答する、二次側制御部20からの応答信号が一次側制御部10にて受信されなかったならば、二次側制御部20の駆動が停止する程度に二次側電圧V
Sが低下していると考えられるので、一次側制御部10は、
図10のステップSTP12のバースト充電動作から第3実施形態に示す処理を実行すると良い。
【0120】
異常AB1が検出されたときの二次側制御部20の動作について説明する。二次側制御部20は、異常AB1が検出されたことを示す異常検出信号S1を受信すると、その受信に応答する応答信号を一次側制御部10に送信すると共にSRトランジスタM2のオフ状態を確保し、以後、通常動作を実現するための信号送信を停止すると共に一次側制御部10から回復信号が送信されてくるのを待機する。ここにおける通常動作を実現するための信号送信の停止とは、上述の実施例EX2_3を利用する場合にあっては基準信号CMD2(231、233;
図9)の送信を行わないことを意味する。待機の過程で、二次側電圧V
Sが所定のリセット電圧を下回るまで低下すると二次側制御部20の駆動は停止される。
【0121】
[実施例EX4_3]
実施例EX4_3を説明する。実施例EX4_3では、一次側制御部10がマスタとして且つ二次側制御部20がスレーブとして機能している状況で、二次側の異常検出部25にて任意の異常(便宜上、この異常を異常AB2と称する)が検出されたことを想定する。
【0122】
異常AB2が検出されたときの二次側制御部20の動作について説明する。異常AB2が検出されると、二次側制御部20は、SRトランジスタM2のオフ状態を確保し、以後は、異常AB2の解消が検知されない限りSRトランジスタM2のオフ状態を維持する。また、異常AB2が検出されると、二次側制御部20は、異常AB2が検出されたことを示す所定の異常検出信号S2(二次側異常検出信号)を一次側制御部10に送信する。
【0123】
異常AB2の検出後、異常検出部25により異常AB2が解消したか否かが監視され、異常AB2の解消が検知されたとき、二次側制御部20は、所定の回復信号S2を一次側制御部10に送信する。異常AB2の解消が検知されることなく二次側電圧VSが所定のリセット電圧を下回るまで低下すると二次側制御部20の駆動は停止される。
【0124】
異常AB2が検出されたときの一次側制御部10の動作について説明する。一次側制御部10は、二次側制御部20からの異常検出信号S2を受信すると、その受信に応答する応答信号を二次側制御部20に送信すると共にスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を停止し、これに連動して通常動作を実現するための信号送信を停止する。ここにおける通常動作を実現するための信号送信の停止とは、上述の実施例EX2_1を利用する場合にあっては基準信号CMD1(211、213、211a;
図5及び
図6)の送信を行わないことを意味し、上述の実施例EX2_2を利用する場合にあっては基準信号CMD1(221、223、221a;
図7及び
図8)の送信を行わないことを意味する。
【0125】
スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動の停止は、原則として、二次側制御部20からの回復信号S2が受信されるまで継続される。但し、異常検出信号S2の受信後、所定時間が経過しても回復信号S2が受信されない場合、二次側制御部20の駆動が停止する程度に二次側電圧V
Sが低下していることも考えられるので、一次側制御部10は、
図10のステップSTP12のバースト充電動作から第3実施形態に示す処理を実行すると良い。
【0126】
[実施例EX4_4]
実施例EX4_4を説明する。実施例EX4_4では、二次側制御部20がマスタとして且つ一次側制御部10がスレーブとして機能している状況で、二次側の異常検出部25にて任意の異常AB2が検出されたことを想定する。
【0127】
異常AB2が検出されたときの二次側制御部20の動作について説明する。異常AB2が検出されると、二次側制御部20は、SRトランジスタM2のオフ状態を確保し、以後は、異常AB2の解消が検知されない限りSRトランジスタM2のオフ状態を維持する。また、異常AB2が検出されると、二次側制御部20は、異常AB2が検出されたことを示す所定の異常検出信号S2(二次側異常検出信号)を一次側制御部10に送信し、以後、通常動作を実現するための信号送信を停止する。ここにおける通常動作を実現するための信号送信の停止とは、上述の実施例EX2_3を利用する場合にあっては基準信号CMD2(231、233;
図9)の送信を行わないことを意味する。
【0128】
異常AB2の検出後、異常検出部25により異常AB2が解消したか否かが監視され、異常AB2の解消が検知されたとき、二次側制御部20は、所定の回復信号S2を一次側制御部10に送信する。異常AB2の解消が検知されることなく二次側電圧VSが所定のリセット電圧を下回るまで低下すると二次側制御部20の駆動は停止される。
【0129】
異常AB2が検出されたときの一次側制御部10の動作について説明する。一次側制御部10は、二次側制御部20からの異常検出信号S2を受信すると、その受信に応答する応答信号を二次側制御部20に送信すると共にスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を停止する。
【0130】
スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動の停止は、原則として、二次側制御部20からの回復信号S2が一次側制御部10にて受信されるまで継続される。但し、異常検出信号S2の受信後、所定時間が経過しても回復信号S2が受信されない場合、二次側制御部20の駆動が停止する程度に二次側電圧V
Sが低下していることも考えられるので、一次側制御部10は、
図10のステップSTP12のバースト充電動作から第3実施形態に示す処理を実行すると良い。
【0131】
尚、実施例EX4_1~EX4_4の何れの場合であっても、異常AB1又はAB2が一旦検出された後には、一次側制御部10への電源電圧VCCの供給が遮断されるまでトランジスタM1及びM2のオフ状態が継続されるようにしても良い(この場合、プラグを通じて供給される商用交流電圧を元に一次側電圧VPが生成されるのであれば、DC/DCコンバータ1の再起動に、プラグの挿抜が必要となる)。
【0132】
<<第5実施形態>>
本発明の第5実施形態を説明する。DC/DCコンバータ1として絶縁同期整流型DC/DCコンバータの構成を上述したが、本発明に係るDC/DCコンバータ1は、一次側巻線W1に加わる一次側電圧VPからトランスTRの二次側において二次側電圧VSを生成する絶縁型DC/DCコンバータであれば任意である。
【0133】
例えば、
図1に示したDC/DCコンバータ1では、いわゆるローサイドアプリケーションが採用されているが、ハイサイドアプリケーションが採用されても良い。ハイサイドアプリケーションが採用されたDC/DCコンバータ1では、SRトランジスタM2が出力端子TM
2A側に設けられ、二次側電圧V
Sが加わる出力端子TM
2AとトランスTRの二次側巻線W2との間にSRトランジスタM2が直列に挿入される。この他、本発明の主旨を損なわない形態で、二次側回路におけるSRトランジスタM2の配置位置を変更することが可能である。
【0134】
また例えば、DC/DCコンバータ1は、整流ダイオードを用いたDC/DCコンバータ(絶縁ダイオード整流型DC/DCコンバータ)であっても良い。この場合、DC/DCコンバータ1において、
図1のSRトランジスタM2及び寄生ダイオードD2の代わりに、整流ダイオードを二次側回路に設ける。整流ダイオードは二次側巻線W2とコンデンサC2との間に挿入され、一次側巻線W1から二次側巻線W2に伝搬された電力を整流する。DC/DCコンバータ1をダイオード整流方式のDC/DCコンバータとして構成する場合、第1~第4実施形態で述べた、SRトランジスタM2の制御に関わる説明は無視される。
【0135】
また例えば、DC/DCコンバータ1を、フォワード方式の絶縁型DC/DCコンバータとして構成しても良く、この場合にも、同期整流方式及びダイオード整流方式の何れが採用されても良い。
【0136】
<<第6実施形態>>
本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態では、本発明に係る絶縁型DC/DCコンバータの用途を説明する。
【0137】
図14に示す如く、本発明に係る絶縁型DC/DCコンバータを用いたAC/DCコンバータ600を構成して良い。AC/DCコンバータ600は、フィルタ601、整流回路602、平滑コンデンサ603及び絶縁型DC/DCコンバータ604を備える。フィルタ601は、AC/DCコンバータ600に入力された交流電圧V
ACのノイズを除去する。交流電圧V
ACは商用交流電圧であって良い。整流回路602は、フィルタ601を通じて供給された交流電圧V
ACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。平滑コンデンサ603は全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する。絶縁型DC/DCコンバータ604は、平滑コンデンサ603にて生成された直流電圧を一次側電圧V
Pとして受け、一次側電圧V
Pを電力変換(直流-直流変換)することで二次側電圧V
Sを生成する。二次側電圧V
SはAC/DCコンバータ600の出力電圧に相当する。第1~第5実施形態の何れかに示されたDC/DCコンバータ1を絶縁型DC/DCコンバータ604として用いることができる。この場合、
図1のコンデンサC1は平滑コンデンサ603に相当する。
【0138】
AC/DCコンバータ600を用いて電源アダプタを構成しても良い。
図15は、AC/DCコンバータ600を備える電源アダプタ620を示す図である。電源アダプタ620は、AC/DCコンバータ600、プラグ621、筐体622及び出力コネクタ623を備え、筐体622内にAC/DCコンバータ600が収容及び配置される。プラグ621は図示されないコンセントから商用交流電圧V
ACを受け、AC/DCコンバータ600はプラグ621を通じて入力された商用交流電圧V
ACから直流の二次側電圧V
Sを生成する。二次側電圧V
Sが、出力コネクタ623を通じ、図示されない任意の電気機器に供給される。電気機器としては、ノート型パーソナルコンピュータ、情報端末機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機(スマートフォンに分類されるものを含む)、携帯オーディオプレイヤなどが例示される。
【0139】
AC/DCコンバータ600を備える電気機器を構成しても良い。
図16(a)及び(b)は、AC/DCコンバータ600を備える電気機器640を示す図である。
図16(a)及び(b)に示される電気機器640はディスプレイ装置であるが、電気機器640の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、AC/DCコンバータを内蔵する機器であれば任意である。電気機器640は、AC/DCコンバータ600、プラグ641、筐体642及び負荷643を備え、筐体622内にAC/DCコンバータ600及び負荷643が収容及び配置される。プラグ641は図示されないコンセントから商用交流電圧V
ACを受け、AC/DCコンバータ600はプラグ641を通じて入力された商用交流電圧V
ACから直流の二次側電圧V
Sを生成する。生成された二次側電圧V
Sは負荷643に供給される。負荷643は、二次側電圧V
Sに基づいて駆動する任意の負荷であって良く、例えば、マイコンコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路又はデジタル回路である。
【0140】
<<第7実施形態>>
本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態では、第1~第6実施形態に適用可能な応用技術、変形技術などを説明する。
【0141】
図1の構成では、二次側電圧V
Sに応じた情報を一次側制御部10に伝達する機能がフォトカプラ41を用いて実現されているが、その機能をパルストランス部30を用いて実現するようにしても良い。この場合、
図1の構成からフィードバック回路40及びフォトカプラ41を削除できる。即ち例えば、二次側制御部20は、二次側電圧V
Sに応じた情報を含んだ信号S2を、パルストランス部30を介して一次側制御部10に伝達するようにしても良い。
【0142】
パルストランス部30に2つのパルストランスを含める構成を例示したが(
図2参照)、パルストランス部30に設けられるパルストランスの個数を1つとし、1つのパルストランスを時分割で用いることで制御部10及び20間の双方向通信を実現するようにしても良い。1つのパルストランスを用いて双方向通信を実現する方法として公知の方法を含む任意の方法(例えば特開2007-209082号公報に記載の方法)を利用できる。
【0143】
一次側制御部10、二次側制御部20及びパルストランス部30を1チップの半導体基板上に集積化した半導体装置SMC1を構成するようにしても良い。一次側制御部10、二次側制御部20及びパルストランス部30が集積化された1チップの半導体基板が樹脂にて構成されたパッケージ(筐体)に収容されて封止されることで半導体装置SMC1が構成される。
【0144】
或いは、一次側制御部10を第1半導体基板上に集積化した第1チップと、二次側制御部20を第2半導体基板上に集積化した第2チップと、パルストランス部30を第3半導体基板上に集積化した第3チップとを作成し、第1~第3チップを共通のパッケージ(筐体)に収容して封止することで半導体装置SMC2を構成しても良い。
【0145】
但し、一次側制御部10及び二次側制御部20を別々の半導体装置として構成するようにしても良い。即ち、一次側制御部10を第1半導体基板上に集積化した第1チップを第1パッケージに収容して封止することで半導体装置SMC3Aを構成し、これとは別に、二次側制御部20を第2半導体基板上に集積化した第2チップを第2パッケージに収容して封止することで半導体装置SMC3Bを構成しても良い。この場合、パルストランス部30は、半導体装置SMC3A及びSMC3Bとは別に設けられたディスクリート部品であって良いが、パルストランス部30を第3半導体基板上に集積化した第3チップを第3パッケージに収容して封止することで半導体装置SMC3Cを構成しても良い。半導体装置SM1、SMC2及びSMC3Cにおいて、既存の集積回路プロセスを利用し、パルストランスを構成することが可能である。
【0146】
一次側制御部10が集積化された半導体装置(SM1、SMC2又はSMC3A)に、スイッチングトランジスタM1が更に集積化されて含まれていても良いし、センス抵抗RCSが更に集積化されて含まれていても良い。
【0147】
二次側制御部20が集積化された半導体装置(SM1、SMC2又はSMC3B)に、SRトランジスタM2が更に集積化されて含まれていても良いし、分圧抵抗R1及びR2が更に集積化されて含まれていても良いし、分圧抵抗R3及びR4が更に集積化されて含まれていても良い。
【0148】
上述の主旨を損なわない形で、任意の信号又は電圧に関して、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。また、上述の主旨を損なわない形で、FETのチャネル型を任意に変更可能である。
【0149】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0150】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0151】
1 絶縁同期整流型DC/DCコンバータ
10 一次側制御部
20 二次側制御部
30 パルストランス部
M1 スイッチングトランジスタ
M2 同期整流トランジスタ
TR トランス
W1 一次側巻線
W2 二次側巻線