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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】マスク検査方法及びマスク検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018225152
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020085839
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加賀 千翔人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘修
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170914(JP,A)
【文献】特開2008-276002(JP,A)
【文献】特開2013-221766(JP,A)
【文献】特開2012-002675(JP,A)
【文献】特開2015-145922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
G03F 1/00- 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光がマスクで反射した反射光を検出することにより、前記マスクのリファレンス画像を取得するステップと、
前記リファレンス画像を取得した前記マスクに所定の処理を行うステップと、
前記照明光が、前記所定の処理を行った前記マスクで反射した前記反射光を検出することにより、前記マスクの検査画像を取得するステップと、
前記リファレンス画像から、第1特徴部の第1輝度、前記第1輝度よりも高輝度の第2特徴部の第2輝度、及び、前記第2輝度よりも高輝度の第3特徴部の第3輝度を抽出するステップと、
前記検査画像から、前記第1特徴部の第4輝度、前記第2特徴部の第5輝度、及び、前記第3特徴部の第6輝度を抽出するステップと、
前記第1輝度から前記第2輝度までの間の複数の輝度と、前記第4輝度から前記第5輝度までの間の複数の輝度とを対応させるとともに、前記第2輝度から前記第3輝度までの間の複数の輝度と、前記第5輝度から前記第6輝度までの間の複数の輝度とを対応させたテーブルを形成するステップと、
前記テーブルを参照して、前記リファレンス画像の輝度を補正するステップと、
前記検査画像と、補正された前記リファレンス画像と、を比較することにより前記マスクを検査するステップと、
を備えたマスク検査方法。
【請求項2】
前記所定の処理を行うステップにおいて、
前記所定の処理は、前記マスクを洗浄する処理である、
請求項に記載のマスク検査方法。
【請求項3】
照明光がマスクで反射した反射光を検出する第1検出光学系を用いて、前記マスクのリファレンス画像を取得するステップと、
前記第1検出光学系と異なる第2検出光学系を用いて、前記照明光が、前記リファレンス画像を取得した前記マスクで反射した前記反射光を検出することにより、検査画像を取得するステップと、
前記リファレンス画像から、第1特徴部の第1輝度、前記第1輝度よりも高輝度の第2特徴部の第2輝度、及び、前記第2輝度よりも高輝度の第3特徴部の第3輝度を抽出するステップと、
前記検査画像から、前記第1特徴部の第4輝度、前記第2特徴部の第5輝度、及び、前記第3特徴部の第6輝度を抽出するステップと、
前記第1輝度から前記第2輝度までの間の複数の輝度と、前記第4輝度から前記第5輝度までの間の複数の輝度とを対応させるとともに、前記第2輝度から前記第3輝度までの間の複数の輝度と、前記第5輝度から前記第6輝度までの間の複数の輝度とを対応させたテーブルを作成するステップと、
前記テーブルを参照して、前記リファレンス画像の輝度を補正するステップと、
前記検査画像と、補正された前記リファレンス画像と、を比較することにより、前記マスクを検査するステップと、
を備えたマスク検査方法。
【請求項4】
マスクを照明光で照明するとともに、前記照明光が前記マスクで反射した反射光を検出する検出光学系と、
前記検出光学系で検出された前記反射光に基づいて、前記マスクのリファレンス画像を取得するとともに、前記リファレンス画像を取得した前記マスクに対して所定の処理を行った後の前記マスクの検査画像を取得する画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部は、
前記リファレンス画像から、第1特徴部の第1輝度、前記第1輝度よりも高輝度の第2特徴部の第2輝度、及び、前記第2輝度よりも高輝度の第3特徴部の第3輝度を抽出し、
前記検査画像から、前記第1特徴部の第4輝度、前記第2特徴部の第5輝度、及び、前記第3特徴部の第6輝度を抽出し、
前記第1輝度から前記第2輝度までの間の複数の輝度と、前記第4輝度から前記第5輝度までの間の複数の輝度とを対応させるとともに、前記第2輝度から前記第3輝度までの間の複数の輝度と、前記第5輝度から前記第6輝度までの間の複数の輝度とを対応させたテーブルを作成し、
前記テーブルを参照して、前記リファレンス画像を補正し、
前記検査画像と、補正された前記リファレンス画像と、を比較することにより前記マスクを検査する、
マスク検査装置。
【請求項5】
前記所定の処理は、前記マスクを洗浄する処理である、
請求項に記載のマスク検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査方法及びマスク検査装置に関するものであり、例えば、半導体製造工程で利用されるフォトマスクの欠陥を検査するマスク検査方法及びマスク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パターンが形成されたマスクの欠陥を検査する方法として、マスクパターンと設計データとを比較するDie-to-Database比較法、2つの同形状の回路パターンを比較するDie-to-Die比較法、及び、同じ設計パターンの異なるマスクを比較するMask-to-Mask比較法が広く知られている。
【0003】
いずれの方式においても、マスクパターンを対物レンズによって拡大し、その拡大された画像をCCDカメラで検出することにより検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-543463号公報
【文献】特表2002-544555号公報
【文献】特開2004-030368号公報
【文献】特開2007-192743号公報
【文献】特開2011-196728号公報
【文献】特表2016-532902号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/238816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Mask-to-Mask法では、検査装置の変移、及び、パターン形成等のプロセスを経ることにより、基準となるリファレンス画像と、検査が行われる検査画像との間に輝度変化が発生する場合がある。特に、輝度変化の変化率が高輝度(以下、Whiteともいう。)と低輝度(以下、Darkともいう。)とで異なる場合がある。これらの輝度変化は、マスク上の正常なパターンを疑似欠陥として検出してしまう問題を引き起こす。
【0006】
本発明の目的は、検査時の輝度変化を補正して、精度よく検査対象を検査することができる検査方法及び検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマスク検査方法は、照明光がマスクで反射した反射光を検出することにより、前記マスクのリファレンス画像を取得するステップと、前記リファレンス画像を取得した前記マスクに所定の処理を行うステップと、前記照明光が、前記所定の処理を行った前記マスクで反射した前記反射光を検出することにより、前記マスクの検査画像を取得するステップと、前記リファレンス画像と、前記検査画像と、を比較することにより前記マスクを検査するステップと、を備える。このような構成により、精度よく検査対象を検査することができる。
【0008】
また、本発明に係るマスク検査方法は、照明光がマスクで反射した反射光を検出する第1検出光学系を用いて、前記マスクのリファレンス画像を取得するステップと、前記第1検出光学系と異なる第2検出光学系を用いて、前記照明光が、前記リファレンス画像を取得した前記マスクで反射した前記反射光を検出することにより、検査画像を取得するステップと、前記リファレンス画像から、第1特徴部の第1輝度、前記第1輝度よりも高輝度の第2特徴部の第2輝度、及び、前記第2輝度よりも高輝度の第3特徴部の第3輝度を抽出するステップと、前記検査画像から、前記第1特徴部の第4輝度、前記第2特徴部の第5輝度、及び、前記第3特徴部の第6輝度を抽出するステップと、前記第1輝度から前記第2輝度までの間の複数の輝度と、前記第4輝度から前記第5輝度までの間の複数の輝度とを対応させるとともに、前記第2輝度から前記第3輝度までの間の複数の輝度と、前記第5輝度から前記第6輝度までの間の複数の輝度とを対応させたテーブルを作成するステップと、前記テーブルを参照して、前記リファレンス画像の輝度を補正するステップと、前記検査画像と、補正された前記リファレンス画像と、を比較することにより、前記マスクを検査するステップと、を備える。このような構成により、検査時の輝度変化を補正して、精度よく検査対象を検査することができる。
【0009】
さらに、本発明によるマスク検査装置は、マスクを照明光で照明するとともに、前記照明光が前記マスクで反射した反射光を検出する検出光学系と、前記検出光学系で検出された前記反射光に基づいて、前記マスクのリファレンス画像を取得するとともに、前記リファレンス画像を取得した前記マスクに所定の処理を行った後の前記マスクの検査画像を取得する画像処理部と、を備え、前記画像処理部は、前記リファレンス画像から、第1特徴部の第1輝度、前記第1輝度よりも高輝度の第2特徴部の第2輝度、及び、前記第2輝度よりも高輝度の第3特徴部の第3輝度を抽出し、前記検査画像から、前記第1特徴部の第4輝度、前記第2特徴部の第5輝度、及び、前記第3特徴部の第6輝度を抽出し、前記第1輝度から前記第2輝度までの間の複数の輝度と、前記第4輝度から前記第5輝度までの間の複数の輝度とを対応させるとともに、前記第2輝度から前記第3輝度までの間の複数の輝度と、前記第5輝度から前記第6輝度までの間の複数の輝度とを対応させたテーブルを作成し、前記テーブルを参照して、前記リファレンス画像を補正し、前記検査画像と、補正された前記リファレンス画像と、を比較することにより前記マスクを検査する。このような構成により、検査時の輝度変化を補正して、精度よく検査対象を検査することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、精度よく検査対象を検査することができる検査方法及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るマスク検査装置を例示した構成図である。
図2】実施形態に係るマスク検査方法を例示したフローチャート図である。
図3】実施形態に係るマスク検査方法の詳細を例示したフローチャート図である。
図4】(a)は、実施形態に係るマスク検査方法において、リファレンス画像を例示した図であり、(b)は、実施形態に係るリファレンス画像の各特徴部の輝度を例示したグラフであり、横軸は、画像の位置を示し、縦軸は、輝度を示す。
図5】(a)は、実施形態に係るマスク検査方法において、検査画像を例示した図であり、(b)は、実施形態に係る検査画像の各特徴部の輝度を例示したグラフであり、横軸は、画像の位置を示し、縦軸は、輝度を示す。
図6】実施形態に係るマスク検査方法において、各特徴部の各輝度を例示したグラフであり、横軸は、リファレンス画像における輝度を示し、縦軸は、検査画像における輝度を示す。
図7】実施形態に係るマスク検査方法において、ルックアップテーブルを例示した図である。
図8】実施形態の変形例に係るマスク検査方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0013】
(実施形態)
実施形態に係るマスク検査装置及びマスク検査方法を説明する。まず、マスク検査装置の構成を説明する。その後、マスク検査装置を用いたマスク検査方法を説明する。
【0014】
<マスク検査装置の構成>
本実施形態のマスク検査装置は、例えば、半導体製造工程で用いられるフォトマスクの検査装置である。図1は、実施形態に係るマスク検査装置1を例示した構成図である。
【0015】
図1に示すように、マスク検査装置1は、検出光学系10と、画像処理部20と、を備えている。検出光学系10は、ビームスプリッタ11、対物レンズ12、投影レンズ13及び検出器14を有している。画像処理部20は、処理部21及び記憶部22を有している。検出光学系10及び画像処理部20は、これ以外の光学部材等を含んでもよい。
【0016】
図示しない光源から生成された照明光L10は、検査対象のマスク30を照明する照明光として、検出光学系10内に入射する。検出光学系10に入射した照明光L10は、ビームスプリッタ11によって一部が反射し、検査対象のマスク30へ向かう。マスク30へ向かう照明光L10は、対物レンズ12によって集光され、マスク30のパターン面を照明する。
【0017】
照明光L10がマスク30のパターン面で反射された反射光R10は、対物レンズ12で集光され、再び、ビームスプリッタ11に入射する。ビームスプリッタ11に入射した反射光R10の一部は透過し、投影レンズ13で集光される。投影レンズ13で集光された反射光R10は、検出器14で検出される。検出器14は、例えば、TDIを用いたカメラである。このように、検出光学系10は、マスク30を照明光L10で照明するとともに、照明光L10がマスク30で反射した反射光R10を検出する。
【0018】
画像処理部20は、検出光学系10で検出された反射光R10に基づいて、マスク30の画像を取得する。画像処理部20は、所定の処理を行う前のマスク30の画像を取得する。所定の処理を行う前のマスク30の画像をリファレンス画像という。また、画像処理部20は、リファレンス画像を取得したマスク30に対して所定の処理を行った後のマスク30の画像を取得する。所定の処理を行った後のマスク30の画像を検査画像という。例えば、画像処理部20における処理部21が、検出器14からの信号に基づいて画像を生成し、画像処理部20における記憶部22が生成された画像データを記憶する。
【0019】
<マスク検査方法>
次に、マスク検査装置1を用いたマスク検査方法を説明する。図2は、実施形態に係るマスク検査方法を例示したフローチャート図である。
【0020】
図2のステップS11に示すように、マスク30のリファレンス画像を取得する。具体的には、照明光L10がマスク30で反射した反射光R10を検出することにより、マスク30のリファレンス画像を取得する。検出光学系10を用いることにより、検査対象のマスク30を照明光L10で照明する。そして、検出光学系10により、照明光L10がマスク30のパターン面で反射された反射光R10を検出する。画像処理部20は、検出光学系10で検出された反射光R10から画像を取得する。取得する画像は、所定の処理を行う前のマスク30の画像であるので、レファレンス画像である。画像処理部20は、取得したリファレンス画像を記憶部22に記憶させる。
【0021】
次に、ステップS12に示すように、マスク30に所定の処理を行う。所定の処理を行うマスク30は、リファレンス画像を取得したマスク30と同一のもの、もしくは、同一パターンを刻んだ同デザイン(ロット:lot)のマスク30である。所定の処理は、具体的には、フォトリソグラフィーにおける露光処理である。また、所定の処理は、マスクを洗浄する処理である。なお、所定の処理は、マスク30に対する処理であれば、露光処理及び洗浄処理に限らない。また、リファレンス画像の取得と、検査画像の取得との間に、複数回の露光処理または洗浄処理を行ってもよい。
【0022】
次に、ステップS13に示すように、マスク30の検査画像を取得する。具体的には、所定の処理を行ったマスク30に対して、照明光L10で照明し、照明光L10がマスク30で反射した反射光R10を検出することにより、マスク30の検査画像を取得する。画像処理部20は、検出光学系10で検出された反射光R10から画像を取得する。取得する画像は、所定の処理を行った後のマスク30の画像であるので検査画像である。画像処理部20は、取得した検査画像を記憶部22に記憶させる。
【0023】
次に、ステップS14に示すように、リファレンス画像と検査画像とを比較することによりマスク30を検査する。以下で、マスク30の検査方法の詳細を説明する。
【0024】
図3は、実施形態に係るマスク検査方法の詳細を例示したフローチャート図である。図4(a)は、実施形態に係るマスク検査方法において、リファレンス画像を例示した図であり、(b)は、実施形態に係るリファレンス画像の各特徴部の輝度を例示したグラフであり、横軸は、画像の位置を示し、縦軸は、輝度を示す。図5(a)は、実施形態に係るマスク検査方法において、検査画像を例示した図であり、(b)は、実施形態に係る検査画像の各特徴部の輝度を例示したグラフであり、横軸は、画像の位置を示し、縦軸は、輝度を示す。
【0025】
図3のステップS21に示すように、リファレンス画像から各特徴部の各輝度を抽出する。例えば、図4(a)に示すように、処理部21は、記憶部22からリファレンス画像を読み出す。リファレンス画像には、例えば、ラインアンドスペース41のパターン、コンタクト42のパターンが形成されている。
【0026】
処理部21は、読み出したリファレンス画像において、例えば、パターンエッジ部分31を第1特徴部とする。取得されたリファレンス画像において、パターンエッジ部分31には、反射光特有の輝度の落ち込みが観測される。このような輝度の落ち込み部分は、マスク30の条件の変化及び検出光学系10の条件の変化によって、輝度が大きく変化する場合がある。よって、このようなパターンエッジ部分31を第1特徴点として抽出する。図4(b)に示すように、第1特徴部であるパターンエッジ部分31の輝度として、低輝度(Dark)D1を抽出する。低輝度D1は、例えば、256段階のグレースケールで、80/256である。
【0027】
次に、処理部21は、読み出したリファレンス画像において、例えば、吸収膜部分32を第2特徴部とする。取得されたリファレンス画像において、吸収膜部分32には、中程度の輝度が観測される。このような中程度の輝度も、マスク30の条件の変化及び検出光学系10の条件の変化によって輝度が大きく変化する場合がある。よって、このような吸収膜部分32を第2特徴点として抽出する。図4(b)に示すように、第2特徴部である吸収膜部分32の輝度として、中輝度(Gray)G1を抽出する。中輝度G1は、例えば、256段階のグレースケールで、140/256である。
【0028】
次に、処理部21は、読み出したリファレンス画像において、例えば、パターン部分33を第3特徴部とする。取得されたリファレンス画像において、パターン部分33には、高輝度が観測される。このような高輝度も、マスク30の条件の変化及び検出光学系10の条件の変化によって輝度が大きく変化する場合がある。よって、このようなパターン部分33を第3特徴点として抽出する。図4(b)に示すように、第3特徴部であるパターン部分33の輝度として、高輝度(White)W1を抽出する。高輝度W1は、例えば、256段階のグレースケールで、230/256である。
【0029】
このように、画像処理部20は、リファレンス画像から、第1特徴部の低輝度D1、低輝度D1よりも高輝度の第2特徴部の中輝度G1、及び、中輝度G1よりも高輝度の第3特徴部の高輝度W1を抽出する。なお、画像処理部20は、リファレンス画像において、第1特徴部から第3特徴部の3つの特徴点だけでなく、4つ以上の特徴点を抽出してもよい。
【0030】
次に、図3のステップS22に示すように、検査画像から各特徴部の各輝度を抽出する。例えば、図5(a)に示すように、処理部21は、記憶部22から検査画像を読み出す。そして、図5(b)に示すように、第1特徴部であるパターンエッジ部分31の輝度として、低輝度(Dark)D2を抽出する。同様に、第2特徴部である吸収膜部分32の輝度として、中輝度(Gray)G2を抽出し、第3特徴部であるパターン部分33の輝度として、高輝度(White)W2を抽出する。例えば、検査画像において、低輝度D2、中輝度G2及び高輝度W2は、それぞれ、256段階のグレースケールで、70/256、120/256及び210/256である。
【0031】
このように、画像処理部20は、検査画像から、第1特徴部の低輝度D2、低輝度D2よりも高輝度の第2特徴部の中輝度G2、及び、中輝度G2よりも高輝度の第3特徴部の高輝度W2を抽出する。なお、画像処理部20は、検査画像から、第1特徴部から第3特徴部の3つの特徴点だけでなく、4つ以上の特徴点を抽出してもよい。
【0032】
図6は、実施形態に係るマスク検査方法において、各特徴部の各輝度を例示したグラフであり、横軸は、リファレンス画像における輝度を示し、縦軸は、検査画像における輝度を示す。図6に示すように、リファレンス画像及び検査画像において、同じ特徴部における輝度が同じ場合には、直線C上のプロットとなるが、本実施形態のように、同じ特徴部における輝度が、リファレンス画像及び検査画像とで異なる場合がある。
【0033】
例えば、低輝度(D1、D2)から中輝度(G1、G2)までのグラフ上の傾きは、中輝度(G1、G2)から高輝度(W1、W2)までのグラフ上の傾きと異なっている。
【0034】
そこで、図3のステップS23に示すように、リファレンス画像の各特徴点の各輝度と、検査画像の各特徴点の各輝度とを対応させたテーブルを作成する。具体的には、画像処理部20は、リファレンス画像における低輝度D1から中輝度G1までの間の複数の輝度と、検査画像における低輝度D2から中輝度G2までの間の複数の輝度とを対応させるとともに、リファレンス画像における中輝度G1から高輝度W1までの間の複数の輝度と、検査画像における中輝度G2から高輝度W2までの間の複数の輝度とを対応させたテーブルを形成する。テーブルは、例えば、ルックアップテーブル(Look Up Table)である。
【0035】
図7は、実施形態に係るマスク検査方法において、ルックアップテーブルを例示した図である。図7に示すように、ルックアップテーブルは、例えば、各特徴点の輝度を、256のビット数で示している。
【0036】
次に、図3のステップS24に示すように、テーブルを参照してリファレンス画像の輝度を補正する。具体的には、画像処理部20は、リファレンス画像の輝度が、検査画像の輝度に対応するように、テーブルを参照してリファレンス画像の輝度を補正する。例えば、画像処理部20は、リファレンス画像の第1特徴部の低輝度D1(80/256)を、低輝度D2(70/256)に対応するように補正し、第2特徴部の中輝度G1(140/256)を、中輝度G2(120/256)に対応するように補正する。
【0037】
それに加えて、画像処理部20は、低輝度D1から中輝度G1までの間の複数の輝度を、低輝度D2から中輝度G2までの間の複数の輝度に対応するように補正する。例えば、低輝度D1から中輝度G1までの間の複数の輝度から、所定の輝度を加法することにより補正してもよいし、低輝度D1から中輝度G1までの間の複数の輝度に、所定の係数を乗じてもよい。また、検査画像のグレースケールを所定の輝度だけずらしてもよい。このような処理を、画像処理部20は、自動で行ってもよい。
【0038】
また、画像処理部20は、リファレンス画像の第3特徴部の高輝度W1(230/256)を、高輝度W2(210/256)に対応するように補正する。それに加えて、画像処理部20は、中輝度G1から高輝度W1までの間の複数の輝度を、中輝度G2から高輝度W2までの間の複数の輝度に対応するように補正する。このような処理を、画像処理部20は、自動で行ってもよい。
【0039】
低輝度D1から中輝度G1までの間の複数の輝度に行う補正(所定の輝度の加法、所定の係数の乗法等)と、中輝度G1から高輝度W1までの間の複数の輝度に行う補正(所定の輝度の加法、所定の係数の乗法等)とは、異なってもよい。
【0040】
次に、図3のステップS25に示すように、画像処理部20は、検査画像と、補正されたリファレンス画像と、を比較することによりマスク30を検査する。具体的には、画像処理部20は、検査画像と、補正されたリファレンス画像と、を比較することにより、差分を算出し、算出された差分から欠陥を検出することで、マスク30を検査する。このようにして、マスク30を検査することができる。
【0041】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態のマスク検査装置1及びマスク検査方法は、リファレンス画像と検査画像とを比較することによりマスクを検査する。よって、マスク30上のパターンの欠陥を精度よく検査することができる。
【0042】
本実施形態では、リファレンス画像と検査画像とを比較する際に、リファレンス画像の各特徴点の各輝度と、検査画像の各特徴点の各輝度と、を対応させたルックアップテーブルを参照して、リファレンス画像を補正している。これにより、マスク30の条件の変化及び検出光学系10の条件の変化を考慮したリファレンス画像を補正している。よって、疑似欠陥と本来の欠陥とを区別することができ、精度よくマスク30の検査をすることができる。マスク30の条件の変化は、例えば、マスク反射率等の変化によるベースライン輝度の差である。検出光学系10の条件の変化は、例えば、光学系変化によるパターンプロファイル差である。
【0043】
また、ルックアップテーブルを自動で形成することにより、検査時間を短縮し、検査コストを低減することができる。
【0044】
補正する際には、例えば、低輝度(D1、D2)から中輝度(G1、G2)の間、中輝度(G1、G2)から高輝度(W1、W2)の間のように、複数の区間に分けて、補正している。これにより、ルックアップテーブルの傾きを途中で変更することで、輝度値の変域毎によって、補正値を最適化することができる。
【0045】
(変形例)
次に、実施形態の変形例を説明する。本変形例は、リファレンス画像を取得する検出光学系と、検査画像を取得する検出光学系が異なる場合である。
【0046】
図8は、実施形態の変形例に係るマスク検査方法を例示したフローチャート図である。図8のステップS31に示すように、第1光学検出系を用いて、マスク30のリファレンス画像を取得する。リファレンス画像の取得方法は、実施形態のステップS11と同様である。
【0047】
次に、ステップS32に示すように、第2検出光学系を用いてマスク30の検査画像を取得する。ここで、第2検出光学系は、第1検出光学系と異なる装置である。そして、第1検出光学系によりリファレンス画像を取得したマスク30と同一のマスク30、もしくは、同一パターンを刻んだ同デザイン(ロット:lot)のマスク30について、検査画像を取得する。検査画像の取得方法は、第1検出光学系と異なる第2検出光学系を用いる以外は、実施形態のステップS13と同様である。
【0048】
次に、ステップS33に示すように、リファレンス画像から各特徴部の各輝度を抽出する。本ステップは、実施形態のステップS21と同様である。次に、ステップS34に示すように、検査画像から各特徴部の各輝度を抽出する。本ステップも、実施形態のステップS22と同様である。次に、ステップS35に示すように、リファレンス画像の各特徴点の各輝度と、検査画像の各特徴点の各輝度とを対応させたテーブルを作成し、ステップS36に示すように、テーブルを参照してリファレンス画像の輝度を補正する。そして、ステップS37に示すように、検査画像と、補正されたリファレンス画像とを比較して、マスク30を検査する。ステップS35~S37も、実施形態のステップS23~S25と同様である。
【0049】
本変形例によれば、第1検出光学系と、第1検出光学系と異なる第2検出光学系との装置間の差分を補正することができる。よって、例えば、第1検出光学系で取得したリファレンス画像を、異なるマスク検査装置に用いることができる。よって、複数のマスク検査装置を対比させることができ、装置間の誤差を低減することができる。また、基準となるリファレンス画像を統一することにより、低コストで精度よくマスクを検査することができる。これ以外の構成及び効果は実施形態の記載に含まれている。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。また、実施形態及び変形例における構成は、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 マスク検査装置
10 検出光学系
11 ビームスプリッタ
12 対物レンズ
13 投影レンズ
14 検出器
20 画像処理部
21 処理部
22 記憶部
30 マスク
31 パターンエッジ部分
32 吸収膜部分
33 パターン部分
41 ラインアンドスペース
42 コンタクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8