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特許7168428廃棄物処理装置、および、廃棄物処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置、および、廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20221101BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20221101BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20221101BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20221101BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G21F9/30 531D
G21F9/00 Z
G21F9/30 531K
G01T1/167 C
G06Q50/08
G21F9/36 511C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018226363
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020091102
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 博
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075897(JP,A)
【文献】特開2015-230223(JP,A)
【文献】特開2015-087300(JP,A)
【文献】特開2016-211952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物機器の形状を示す形状モデルデータに対して、解体開始時点における残留放射能データをもとに、複数の解体開始時点の候補それぞれについて前記廃棄物機器上の放射能分布を計算する放射能分布計算部と、
前記廃棄物機器を廃棄物機器断片に切断するための切断線を前記廃棄物機器の前記形状モデルデータに設定した切断線付形状データを、前記放射能分布計算部が計算した前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて生成する切断線生成部と、
前記切断線付形状データに従って切断された各前記廃棄物機器断片を収納する廃棄物収納容器について、放射能分布の放射能濃度に応じて高レベル用容器と低レベル用容器とに分けて充填するための容器モデルデータを、前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて生成する容器モデル生成部と
前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて、前記容器モデルデータと、その容器モデルデータに対する評価指標とを廃棄物量評価画面に表示する計算制御部とを有しており、
前記切断線生成部は、前記高レベル用容器に充填する前記廃棄物機器断片のための第1切断線設定ルールと、前記低レベル用容器に充填する前記廃棄物機器断片のための第2切断線設定ルールとを互いに異なるルールで設定することを特徴とする
廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記切断線生成部は、前記廃棄物機器上の高レベルの放射能分布となる箇所は密に切断線を設定する前記第1切断線設定ルールと、前記廃棄物機器上の低レベルの放射能分布となる箇所は粗に切断線を設定する前記第2切断線設定ルールとをもとに、各切断線を設定することを特徴とする
請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記放射能分布計算部は、前記残留放射能データから読み込んだ放射能インベントリの理論値を、前記廃棄物機器の現場線量を計測した計測値で補正することで、前記廃棄物機器上の放射能分布を計算することを特徴とする
請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記計算制御部は、必要となる前記高レベル用容器の個数と、解体終了時点のデータとを、前記廃棄物量評価画面に評価指標として表示することを特徴とする
請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
廃棄物処理装置は、放射能分布計算部と、切断線生成部と、容器モデル生成部と、計算制御部とを有しており、
前記放射能分布計算部は、廃棄物機器の形状を示す形状モデルデータに対して、解体開始時点における残留放射能データをもとに、複数の解体開始時点の候補それぞれについて前記廃棄物機器上の放射能分布を計算し、
前記切断線生成部は、前記廃棄物機器を廃棄物機器断片に切断するための切断線を前記廃棄物機器の前記形状モデルデータに設定した切断線付形状データを、前記放射能分布計算部が計算した前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて生成し、
前記容器モデル生成部は、前記切断線付形状データに従って切断された各前記廃棄物機器断片を収納する廃棄物収納容器について、放射能分布の放射能濃度に応じて高レベル用容器と低レベル用容器とに分けて充填するための容器モデルデータを、前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて生成し、
前記計算制御部は、前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて、前記容器モデルデータと、その容器モデルデータに対する評価指標とを廃棄物量評価画面に表示し、
前記切断線生成部は、前記高レベル用容器に充填する前記廃棄物機器断片のための第1切断線設定ルールと、前記低レベル用容器に充填する前記廃棄物機器断片のための第2切断線設定ルールとを互いに異なるルールで設定することを特徴とする
廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理装置、および、廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質で汚染されたプラントなどの施設の解体作業は、困難な作業であるので、特に注意深く事前に計画する必要がある。例えば、解体作業の計画を支援するシステムとして、以下の各文献にそれぞれ開示されている。
特許文献1には、放射性物質で汚染された施設の解体作業において、表面線量率がしきい値以下である部分を切り離し、容器に収納することが記載されている。
特許文献2には、原子力プラントの解体手順計画に関するもので、廃棄物収納容器は容器番号ごとに放射能量が管理されていることが記載されている。
特許文献3には、放射性固体廃棄物の処理方法に関するもので、処分区分の異なる複数の部分に分割し、放射能濃度の高い細片を中央部に配置し、放射能濃度の低い細片を周辺部に配置するが、高濃度と低濃度の細片をそれぞれ別の容器に収納することも可能であることが記載されている。
特許文献4には、放射性廃棄物の収納計画に関するもので、各機器・配管の線量率の強度に応じた配置位置、及び、組み合わせごとに容器に収納する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017―096696号公報
【文献】特開2016―211952号公報
【文献】特開2002―207098号公報
【文献】特開2015―230223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃棄物機器を廃棄物機器断片に切断する場合、いつ、どのような順序で、どの程度の粒度の断片になるように切断工程を設けるかが重要となる。つまり、廃棄物機器上にどのような切断線を設けるかによって、切断に要する期間や、切断結果の廃棄物機器断片の分量などが決まってくる。特許文献4には、切断工程の良し悪しを決める尺度として、「プラント全体として、廃棄物収納容器の個数が少なくなるようにする」旨が記載されている。
【0005】
ここで、通常の解体作業と異なり、放射性物質で汚染された廃棄物機器の解体作業には、放射能に関する特殊な事情もある。例えば、廃棄物機器断片を収容する廃棄物収納容器として、高レベル放射能用の高レベル用容器と、低レベル放射能用の低レベル用容器とでは、同じ容量の廃棄物機器断片を収容するものであっても、そのコストは圧倒的に高レベル用容器のほうが高くなる。例えば、放射線の容器外への漏洩を抑えるために、高レベル用容器には厚い容器板が使用されたり、高レベル用容器を地中に保管するために何百メートルも地下を掘り下げたりすることで、コストが高くなってしまう。
【0006】
さらに、社会からの要請により、解体作業が収束するまでの作業期間の短縮化も求められる。このように、廃棄物機器の解体作業計画の良し悪しを決める尺度はさまざまなものがあり、それらをバランスよく満たす適切な解体計画を立案することは至難である。
【0007】
そこで、本発明は、放射性物質で汚染されたプラントなどの施設の解体計画の立案を、適切に支援することを、主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の廃棄物処理装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、廃棄物機器の形状を示す形状モデルデータに対して、解体開始時点における残留放射能データをもとに、複数の解体開始時点の候補それぞれについて前記廃棄物機器上の放射能分布を計算する放射能分布計算部と、
前記廃棄物機器を廃棄物機器断片に切断するための切断線を前記廃棄物機器の前記形状モデルデータに設定した切断線付形状データを、前記放射能分布計算部が計算した前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて生成する切断線生成部と、
前記切断線付形状データに従って切断された各前記廃棄物機器断片を収納する廃棄物収納容器について、放射能分布の放射能濃度に応じて高レベル用容器と低レベル用容器とに分けて充填するための容器モデルデータを、前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて生成する容器モデル生成部と
前記複数の解体開始時点の候補それぞれについて、前記容器モデルデータと、その容器モデルデータに対する評価指標とを廃棄物量評価画面に表示する計算制御部とを有しており、
前記切断線生成部が、前記高レベル用容器に充填する前記廃棄物機器断片のための第1切断線設定ルールと、前記低レベル用容器に充填する前記廃棄物機器断片のための第2切断線設定ルールとを互いに異なるルールで設定することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射性物質で汚染されたプラントなどの施設の解体計画の立案を、適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に関する廃棄物量総合管理装置の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に関する廃棄物量総合管理装置の表示画面のうちの解体計画支援システムのトップ画面の一例である。
図3】本発明の一実施形態に関する廃棄物量総合管理装置の表示画面の遷移図である。
図4】本発明の一実施形態に関する工程指定画面を示す画面図である。
図5】本発明の一実施形態に関する放射能データ読込画面を示す画面図である。
図6】本発明の一実施形態に関する切断変数指定画面を示す画面図である。
図7】本発明の一実施形態に関する廃棄物量評価画面を示す画面図である。
図8】本発明の一実施形態に関する廃棄物量総合管理装置の処理を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に関する3Dモデルデータベースに格納される3Dモデルを示す立体図である。
図10】本発明の一実施形態に関する3Dモデルデータベースに格納される3Dモデルの属性データを示すテーブルである。
図11】本発明の一実施形態に関する残留放射能データベースに格納される残留放射能データを示すテーブルである。
図12】本発明の一実施形態に関する収納容器タイプ格納データベースに格納される収納容器タイプデータを示すテーブルである。
図13】本発明の一実施形態に関する切断線付3Dデータの立体図である。
図14】本発明の一実施形態に関する2020年における切断線付3Dデータを示す平面図である。
図15】本発明の一実施形態に関する図14の状態から5年後の2025年における切断線付3Dデータを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、廃棄物量総合管理装置(廃棄物処理装置)の構成図である。
廃棄物量総合管理装置は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピュータとして構成される。
このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部により構成される制御部(制御手段)を動作させる。
【0013】
廃棄物量総合管理装置は、入力装置10と、表示装置20と、計算制御装置30と、放射能分布計算装置40と、切断線生成装置50と、容器モデル生成装置60とを処理装置(処理部)として有する。
さらに、廃棄物量総合管理装置は、記憶装置として、廃止措置工程データベース70(詳細は図4)と、3Dモデルデータベース80(詳細は図9図10)と、残留放射能データベース90(詳細は図11)と、収納容器タイプ格納データベース100(詳細は図12)と、評価結果格納データベース110(詳細は図7)と、切断変数格納部120(詳細は図6)と、切断線付3Dデータ130(詳細は図13)の記憶部とを有する。
【0014】
以下、図2図7の各画面図を参照して、廃棄物量総合管理装置の詳細を説明する。なお、入力装置10は、各画面を介して入力データの入力を受け付ける。表示装置20は、計算制御装置30から指示された各画面を表示する。
ここでは、プラント内の配管などが放射能被曝した後の解体作業を例示する。解体作業では、廃棄物機器となった配管を切断することで廃棄物機器断片とし、その廃棄物機器断片を廃棄物収納容器に充填し、その廃棄物収納容器をプラント外に運び出す作業を想定する。
表示装置20は、例えば、切断線生成装置50を作動させた結果得られた機器の切断線と、容器モデル生成装置60を作動させた結果得られた廃棄物収納容器の時系列的な変化を可視化する。
【0015】
図2は、廃棄物量総合管理装置の表示画面のうちの解体計画支援システムのトップ画面2000の一例である。
トップ画面2000は、以下の各ボタンを含む。
図4の工程指定画面2100に遷移して、廃棄物量評価時の工程種類を設定するボタン2002。
図5の放射能データ読込画面2200に遷移して、核種ごとの壊変と解体作業進行に伴う放射能量の減衰データを取り込む放射能量を設定するボタン2003。
図6の切断変数指定画面2300に遷移して、切断時の詳細パラメータを設定するボタン2004。
・切断・解体計画を計算・実行する実行ボタン2005。
図7の廃棄物量評価画面2400に遷移して、実行ボタン2005の実行結果として得られた廃棄物量時系列推移評価結果を表示する廃棄物量ボタン2006。
【0016】
なお、評価実行前は、廃棄物量ボタン2006が押せない状態になっていて、評価前であることがわかる。ここでは、あらかじめ、(工程1)~(工程4)の各工程タブ2010~2013を読み込んであれば、それらの工程をタブで表示して、表示対象の工程を切り替えることができる。
図2の例では、表示対象の(工程1)として、符号2051に示す廃棄物機器の機器番号「EQ001」と、その廃棄物機器の代表的な切断状態の3D表示例2050とが表示される。代表的な切断状態は、例えば、廃棄物収納容器に格納できるように等間隔で切断したような状態である。
【0017】
図3は、廃棄物量総合管理装置の表示画面の遷移図である。図3の破線矢印で示すように、図2のトップ画面2000から各ボタンが押されることで、各詳細画面に遷移する。
工程ボタン2002が押されたとき、図4の工程指定画面2100に遷移する。
放射能ボタン2003が押されたとき、図5の放射能データ読込画面2200に遷移する。
切断変数ボタン2004が押されたとき、図6の切断変数指定画面2300に遷移する。
遷移先の各詳細画面から必要な切断・解体条件を設定した後、廃棄物量ボタン2006が押されると、図7の廃棄物量評価画面2400に遷移する。
図3の破線矢印で示すように、遷移先の各画面から戻るボタンを押すなどして、トップ画面2000に戻る。
【0018】
図4は、工程指定画面2100を示す画面図である。管理者は、工程指定画面2100を介して、廃止措置工程データベース70の工程を確認したり修正したりする。
まず、管理者は、開始日ボタン2102、終了日ボタン2104を押すことで、カレンダからの日付を指定する。ここでは、例えば、2020年1月1日(符号2103)を開始日に、2030年12月31日を終了日(符号2105)に設定する。
このとき、管理者は、例えば読み込みボタン2131を押して廃止措置工程データベース70から読み込んだ工程ごとのガントチャート2140の表示を確認する。ガントチャート2140には、廃棄物機器A~Dごとの解体作業が年ごと(2020年、2021年、2022年…)に区切って登録されている。
管理者は、作成ボタン2130を押して新規に工程を作成してもよいし、表示された工程を修正してもよい。なお、トップ画面2000と同様に工程指定画面2100でも、各工程タブ2110~2113により、複数の工程から1つの工程を表示対象として選択することができる。
【0019】
図5は、放射能データ読込画面2200を示す画面図である。工程指定画面2100と同様に、管理者は、放射能データ読込画面2200から開始日ボダン2202、終了日ボタン2204を押すことで、カレンダからの日付を指定する。ここでは、例えば、2020年1月1日(符号2203)を開始日に、2030年12月31日を終了日(符号2205)に設定する。
管理者は、読み込みボタン2231を押して、残留放射能データベース90のデータ内容を放射能データ読込画面2200に表示させる。残留放射能データベース90には、例えば、プラントに残っている廃棄物機器の残量に応じた放射能量(プラント内放射能量)の時系列的な減衰データ(グラフ2240)が登録されている。
なお、トップ画面2000と同様に放射能データ読込画面2200でも、各工程タブ2210~2213により、複数の工程から1つの工程を表示対象として選択することができる。
【0020】
なお、グラフ2240は、2020年から2023年までの工程前期と、2023年から2026年までの工程中期(符号2241)と、2026年から2030年までの工程後期とで右下がりの傾きが異なっている。まず、工程前期と工程後期とでは解体進捗に伴ってプラントから廃棄物機器が搬出されるため、廃棄物機器の残量そのものの減少により、プラント内の放射能も大きく減衰している。一方、工程中期では、解体が休止される期間であり廃棄物機器の残量は不変のため、プラント内の放射能は放射能そのものの半減期による小さい減衰にとどまる。
【0021】
図6は、切断変数指定画面2300を示す画面図である。入力装置10は、管理者から切断変数指定画面2300を介して受け付けた入力データを、切断変数格納部120に格納する。
切断変数指定画面2300は、以下の各情報の入力を受け付ける。
・プラントや工程を示す情報(エリア2311、系統番号2312、工程タイプ2315)
・プラント内の廃棄物機器を示す情報(機器番号2320)
・廃棄物機器から切断された廃棄物機器断片を示す情報(切断長2316、径方向分割数2317、切断手順2318)
・廃棄物機器断片を収納する廃棄物収納容器を示す情報(充填率2313、容器タイプ2314、放射能濃度範囲2319)
なお、放射能濃度範囲2319とは、廃棄物収納容器内に収納できる廃棄物機器断片の放射能濃度の範囲を示す。放射能濃度に応じて高レベル用容器や、低レベル用容器などの複数種類の廃棄物収納容器が存在する(詳細は図12)。
管理者は、以上の各情報を直接入力したりプルダウンメニューから入力値を選択したりした後、設定ボタン2331を押すことで切断変数格納部120に入力データが格納される。一旦、切断変数を指定した後は、管理者は、例えば、各機器番号を選択すれば、設定したパラメータを読み出して再編集することができる。
【0022】
図7は、廃棄物量評価画面2400を示す画面図である。廃棄物量評価画面2400は、縦軸に解体に伴って発生した廃棄物収納容器の個数を評価項目として縦軸にした時系列グラフを示す。
廃棄物量評価画面2400には、評価結果格納データベース110から読み出した切断・解体シミュレーションの評価結果が、各工程タブ2410~2413から工程別に表示される。工程指定画面2100と同様に、管理者は、開始日ボダン2402、終了日ボタン2404を押すことで、カレンダからの日付を指定する。ここでは、例えば、2020年1月1日(2403)を開始日に、2030年12月31日を終了日(2405)に設定する。
【0023】
そして、管理者は、読み込みボタン2431を押すことにより評価結果格納データベース110から読み出された、高レベル用容器の個数の時系列的な変化を示す累積カーブ2441や、廃棄物収納容器の発生率2442の表示内容を確認できる。
また、廃棄物量評価画面2400には、工程ごとの評価指標として、高レベル用容器の個数だけでなく、解体終了時点のデータ(つまり、解体が早く終了するほど高評価となる指標)も併せて表示してもよい。
【0024】
図8は、廃棄物量総合管理装置の処理を示すフローチャートである。
S101として、計算制御装置30は、廃止措置工程データベース70に設定された工程データ、または、廃止措置工程データベース70から読み込まれた工程データについて、以下のS102~S115のループを工程ごとに実行する。
S102として、計算制御装置30は、未処理の工程が存在するか否かを判定する。S102でYesなら未処理の工程から1つの工程を解体・切断シミュレーションの処理対象として選択してS111に進み、NoならS121に進む。
【0025】
S111として、入力装置10は、残留放射能データベース90のデータ内容を読み込む。
S112として、放射能分布計算装置40は、S111で読み込んだ残留放射能データベース90をもとに、3Dモデルデータベース80から読み込んだ廃棄物機器に付されている放射能の解体開始時点における3D分布(放射能分布)を計算する。この放射能分布は、廃止措置工程データベース70から読み込んだ期間データに応じて、適宜半減期の計算などで修正したものである(詳細は図14図15)。
なお、放射能分布計算装置40は、残留放射能データベース90から読み込んだ放射能インベントリの理論値を、廃棄物機器の現場線量を計測した計測値で補正することで、廃棄物機器上の放射能分布を計算してもよい。
【0026】
S113として、切断線生成装置50は、切断変数格納部120の切断変数を参照して、S112で計算した廃棄物機器の放射能分布に応じて切断モデルを生成し、その生成結果を切断線付3Dデータ130とする。
S114として、容器モデル生成装置60は、S113の切断線付3Dデータ130の切断線に沿って切断された廃棄物機器断片を、廃棄物収納容器に収納する容器詰め込みモデルを生成し、その生成結果を収納容器タイプ格納データベース100に格納する。ここで、容器詰め込みモデルでは、廃棄物機器断片を収納する廃棄物収納容器について、放射能分布の放射能濃度に応じて、図12の高レベル用容器と低レベル用容器とに分けて充填される。
【0027】
S115として、計算制御装置30は、収納容器タイプ格納データベース100を参照して、廃棄物機器を廃棄物機器断片に切断する工程を含めたプラント解体工程を評価し、その評価結果を評価結果格納データベース110に格納する。ここでのプラント解体工程の評価尺度としては、空間コスト(廃棄物収納容器の個数が少ないほど高評価)や、時間コスト(解体終了時点が早いほど高評価)などが挙げられる。
以上、S111~S115が1つの工程に対する工程の評価処理であり、次の工程の評価処理に移行するために処理をS102に戻す。
【0028】
S121として、計算制御装置30は、各工程の評価を終えた後、廃棄物量評価画面2400を表示させることで、各工程を管理者に比較させる。これにより、例えば、管理者は、(工程1)~(工程4)のうち、空間コストと時間コストとの双方をバランスよく小さくできる(工程3)を工程の代表案として採用する、などの重要な意志決定ができる。
【0029】
図9は、3Dモデルデータベース80に格納される3Dモデルを示す立体図である。3Dモデル80aは、高汚染化あるいは高放射化された廃棄物機器の3D形状である。
図10は、3Dモデルデータベース80に格納される3Dモデル80aの属性データを示すテーブルである。3Dモデル80aに対応付けて、その機器番号、寸法、重量、材質、放射能データ、および、解体工法を属性として3Dモデルデータベース80に格納しておくことで、機器番号からの検索や工程データからの連携を容易にする。
【0030】
図11は、残留放射能データベース90に格納される残留放射能データを示すテーブルである。残留放射能データベース90には、プラントの建屋ごとに、系統と、機器(番号)と、重量と、核種ごとの(H3,Be10,Co60それぞれの)放射化量と、汚染量とが対応付けられている。放射化量および汚染量は、Bq/tの単位で表現したものである。
【0031】
図12は、収納容器タイプ格納データベース100に格納される収納容器タイプデータを示すテーブルである。収納容器タイプ格納データベース100には、廃棄物収納容器のタイプごと(L1=高レベル用容器、L2-1a=低レベル用容器)に、放射能濃度範囲、廃棄物収納容器およびそこに収容される廃棄物機器断片の重量上限、容器寸法、材質、充填率などが格納される。
【0032】
図13は、切断線付3Dデータ130の立体図である。切断線生成装置50は、図10の3Dモデル80aに対して、残留放射能に高さ方向や面方向の放射能濃度が定義される場合、あるいは、プラント運転中の放射能分布の3D計算が得られた場合、3Dモデル80aに切断線を生成し、廃棄物収納容器に格納できる寸法に切断したモデルを生成する。
例えば、図13では、円筒形の高さ方向の中央部に高放射化部分が存在し(放射能濃度が所定閾値を超過する部分)、高さ方向の上下端部に低放射化部分が存在していたとする(放射能濃度が所定閾値を下回る部分)。
【0033】
切断線生成装置50は、高放射化部分は細かい(小さな)廃棄物機器断片132に切断するように、切断線を生成する(第1切断線設定ルール)。一方、切断線生成装置50は、低放射化部分は粗い(大きな)廃棄物機器断片131,133に切断するように、切断線を生成する(第2切断線設定ルール)。
これにより、廃棄物機器断片132は細かく砕かれるので、高レベル用容器に収容するときには隙間なく埋められるので、充填率を上げることができる。その結果、充填される高レベル用容器の個数を節約できる。
【0034】
図14は、2020年における切断線付3Dデータ130を示す平面図である。ここでは、放射能分布計算装置40が2020年における放射能分布として、中央に大きめの放射能分布311を出力したとする。
切断線生成装置50は、放射能分布311を参照して3Dモデルデータベース80の廃棄物機器から切断線付3Dデータ130を作成するときに、放射能分布311を通過する範囲(横範囲312、縦範囲313)には破線で図示する切断線を密に設定し、その他の放射能分布311を通過しない範囲には切断線を粗に設定する。これにより、図13で説明した場合と同様に、充填される高レベル用容器の個数を節約できる。
【0035】
また、低レベル用容器には粗い(大きな)廃棄物機器断片が収容される。そのため、低レベル用容器の充填率は高レベル用容器の充填率よりも下回ってしまう。しかし、一般的には低レベル用容器の個数が多少増えたとしても、その保管コストは高レベル用容器の場合よりも少なくて済む。一方で、粗い(大きな)廃棄物機器断片に切断する工程では、切断作業が簡略化されるので、作業期間や作業時の被爆リスクを低減できる。
【0036】
図15は、図14の状態から5年後の2025年における切断線付3Dデータ130を示す平面図である。ここでは、放射能分布計算装置40が2020年における放射能分布として、中央に小さめの放射能分布321を出力したとする。これは、2020年から2025年の5年間の時間経過により、放射能分布が自然減少(半減)したことによる。
切断線生成装置50は、図14と同様に、放射能分布321を通過する範囲(横範囲322、縦範囲323)には切断線を密に設定し、その他の放射能分布321を通過しない範囲には切断線を粗に設定する。
【0037】
これにより、図14の場合に比べて、さらに高レベルの廃棄物機器断片の個数が減るので、充填される高レベル用容器の個数をさらに節約できる。もし、最終処分場が確保しづらいなどの事情により高レベル用容器の個数に上限がある場合には、切断線生成装置50は、このように解体開始時点を遅らせてから未来の切断線を計算してもよい。
【0038】
以上説明した本実施形態では、放射能分布計算装置40が所定期間における放射能分布を計算し、切断線生成装置50が放射能分布の放射能濃度(高レベル範囲、低レベル範囲)に応じて最適な切断線を作成する。
これにより、高レベルの放射性廃棄物量に関する解体計画について、放射能濃度を考慮して、適切な切断線を提示できる。よって、高レベル用容器の個数を減らすとともに、切断作業期間も短縮化できる。
【0039】
なお、3Dモデルデータベース80と残留放射能データベース90とに基づいてプラントの解体計画(廃止措置工程データベース70の各工程)を作成するときに、廃棄物量総合管理装置は、以下に示すようにさまざまな立案支援を行う。
・放射能分布計算装置40は、時期により変動する廃棄物の残留放射能を考慮して、各時期の放射能分布を計算することで、最適な解体開始時期を設定させる。
・切断線生成装置50は、廃棄物機器に対する切断線がなるべく長くなるような切断線を、切断線付3Dデータ130に設定する。
・切断線生成装置50は、必要となる高レベル用容器の数が最小となるような切断線付3Dデータ130を作成する。
・容器モデル生成装置60は、廃棄物収納容器に収容される廃棄物機器断片が、廃棄物収納容器の制約条件(図7の放射能濃度範囲2319など)を満たす容器モデルを計算し、その計算結果を収納容器タイプ格納データベース100に格納する。
・計算制御装置30は、各工程の評価結果として、必要となる高レベル用容器の数と、必要となる解体コスト(作業期間における動員する作業員数などのコスト)とを同時に考慮した最適化指標での評価結果を作成し、その結果を評価結果格納データベース110に格納するとともに、廃棄物量評価画面2400などに表示する。
【0040】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0041】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、無線LANに限定せず、有線LANやその他の通信手段に変更してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 入力装置
20 表示装置
30 計算制御装置(計算制御部)
40 放射能分布計算装置(放射能分布計算部)
50 切断線生成装置(切断線生成部)
60 容器モデル生成装置(容器モデル生成部)
70 廃止措置工程データベース
80 3Dモデルデータベース(形状モデルデータ)
90 残留放射能データベース(残留放射能データ)
100 収納容器タイプ格納データベース(容器モデルデータ)
110 評価結果格納データベース
120 切断変数格納部
130 切断線付3Dデータ(切断線付形状データ)
図1
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