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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】床型枠材
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
E04B5/40 C
E04B5/40 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018227137
(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公開番号】P2020090805
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】田戸 康平
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-035435(JP,U)
【文献】実開平07-016821(JP,U)
【文献】実開平07-006330(JP,U)
【文献】実開平05-040498(JP,U)
【文献】特開2012-007453(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216563(JP,U)
【文献】特開平07-279291(JP,A)
【文献】実開平01-142709(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 1/61
E04B 5/00-5/48
E04C 3/293
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁の延び方向に沿って固定され、打設されるコンクリートの漏れを防ぐ防止部と、
前記梁の延び方向に沿った側縁と、前記梁の側方に位置する床構成部材の側縁との間に形成された隙間を覆うカバー部と、
を備え、
前記防止部は、
前記梁に固定される固定部と、
前記梁の延び方向に沿った前記カバー部とは反対側の前記固定部の一端部から立設した立設部と、
前記一端部とは反対側の前記固定部の他端部に一体に形成されて、前記床構成部材に架け渡される突出部と、
を有することを特徴とする床型枠材。
【請求項2】
梁の延び方向に沿って固定され、打設されるコンクリートの漏れを防ぐ防止部と、
前記梁の延び方向に沿った側縁と、前記梁の側方に位置する床構成部材の側縁との間に形成された隙間を覆うカバー部と、
を備え、
前記防止部は、
前記梁に固定される固定部と、
前記梁の延び方向に沿った前記カバー部とは反対側の前記固定部の一端部から立設した立設部と、
を有し、
前記カバー部は、該カバー部の幅を調整する調整機構を有する
ことを特徴とする床型枠材。
【請求項3】
前記調整機構は、
前記固定部の前記一端部とは反対側の他端部に一体に形成されて、前記床構成部材の側に突出した突出部と、
前記突出部と前記床構成部材との間に架け渡される架橋部と、
を有する
ことを特徴とする請求項に記載の床型枠材。
【請求項4】
前記突出部は、突出側の端部に前記固定部の側に折り返された第1折返し部を有し、
前記架橋部は、前記突出部の側の端部に前記突出部とは反対の側に折り返された第2折返し部を有し、
前記第1折返し部は、前記第2折返し部に対して前記床構成部材の側で前記架橋部に接触し、
前記第2折返し部は、前記第1折返し部に対して前記固定部の側で前記突出部に接触している
ことを特徴とする請求項に記載の床型枠材。
【請求項5】
前記固定部は、前記立設部と前記突出部との間で部分的に延在する、前記梁に面する側とは反対側に突出した第1凸部を有し、
前記立設部は、立ち上がり方向に部分的に延在しかつ前記固定部の側に突出した、前記第1凸部に接続されている第2凸部を有する
ことを特徴とする請求項に記載の床型枠材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床型枠材に関する。
【背景技術】
【0002】
床構成部材であるデッキプレートの両端を梁に載せて施工対象床面に敷設した後に打設されるコンクリートの流出を防止する、コンクリート漏れ止め板として機能する床型枠材が知られている。コンクリート漏れ止め板は、梁に載せられる載置部と、載置部の一端部から垂直に立ち上がってコンクリートの漏出を防ぐ立設部と、を有する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、施工対象床面のデッキプレートの幅方向の梁スパンは、デッキプレートの幅に対して必ずしも整数倍になっていない。したがって、敷設したデッキプレートの一方の幅方向における端部と、梁との間には隙間が生じている。この隙間を塞ぐために、デッキプレートを切断して幅方向の寸法を短くした役物を敷設する、又は小さな隙間がある場合に板材を敷設する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3216563号公報
【文献】実開平7-279291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同一の床面施工時であっても、コンクリート漏れ止め板と、デッキプレート、役物及び調整板は、別々に作成され、梁に設置する作業工程を分けて実施することが通常であり、床面施工時の作業性を改善する余地がある。
【0006】
また、役物は、完成品としてのデッキプレートの一部を切断して製造している。切断された一部のデッキプレートは廃棄せざるを得ず、デッキプレートの歩留が極めて低くなる。そのため、デッキプレート製造において無駄となるコストを低減したいという要望があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンクリートの打設時にコンクリートの漏れ出しを防止する機能、及び梁と床構成部材との間の隙間を覆う機能を兼ね備えかつ強度と剛性を向上させた床型枠材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る床型枠材は、梁の延び方向に沿って固定され、打設されるコンクリートの漏れを防ぐ防止部と、前記梁の延び方向に沿った側縁と、前記梁の側方に位置する床構成部材の側縁との間に形成された隙間を覆うカバー部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記防止部は、前記梁に固定される固定部と、前記梁の延び方向に沿った前記カバー部とは反対側の前記固定部の一端部から立設した立設部と、前記一端部とは反対側の前記固定部の他端部に一体に形成されて、前記床構成部材に架け渡される突出部と、を有していてもよい。
【0010】
また、前記防止部は、前記梁に固定される固定部と、前記梁の延び方向に沿った前記カバー部とは反対側の前記固定部の一端部から立設した立設部と、を有し、前記カバー部は、該カバー部の幅を調整する調整機構を有していてもよい。
【0011】
また、前記調整機構は、前記固定部の前記一端部とは反対側の他端部に一体に形成されて、前記床構成部材の側に突出した突出部と、前記突出部と前記床構成部材との間に架け渡される架橋部と、を有していてもよい。
【0012】
また、前記突出部は、突出側の端部に前記固定部の側に折り返された第1折返し部を有し、前記架橋部は、前記突出部の側の端部に前記突出部とは反対の側に折り返された第2折返し部を有し、前記第1折返し部は、前記第2折返し部に対して前記床構成部材の側で前記架橋部に接触し、前記第2折返し部は、前記第1折返し部に対して前記固定部の側で前記突出部に接触していてもよい。
【0013】
また、前記固定部は、前記立設部と前記突出部との間で部分的に延在する、前記梁に面する側とは反対側に突出した第1凸部を有し、前記立設部は、立ち上がり方向に部分的に延在しかつ前記固定部の側に突出した、前記第1凸部に接続されている第2凸部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、コンクリート床の打設時のコンクリートの漏れを止める作業及び梁と床構成部材との間の隙間を埋める作業を同時に行うことができ、作業性の向上及び作業コストの改善を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】梁にデッキプレート及び本実施の形態に係る床型枠材を敷設した状態を示す概略的な斜視図である。
図2】デッキプレートの延び方向に交差して床型枠材を断面にした図である。
図3】コンクリート止め材の構成を説明するための斜視図である。
図4】調整板の構成を説明するための斜視図である。
図5】従来の床面施工技術を示す概略図である。
図6】連結材を備えた床型枠材を示す図である。
図7】床型枠材を連結材の一端部を拡大した部分拡大斜視図である。
図8】床型枠材を連結材の他端部を拡大した部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において種々の形態をとりうる。
【0017】
図1は、梁200にデッキプレート300及び本実施の形態に係る床型枠材1を敷設した状態を示す概略的な斜視図であり、デッキプレート300の延び方向に交差する方向において断面にして示す。本実施の形態に係る床型枠材1は、建築構造物の床面施工時に用いられる。建築構造物の躯体は、複数の柱100と、複数の梁200と、を備える。各柱100は、基礎に立設される。柱100は、例えば、鋼製で中空状の角柱から形成されている。各梁200は、柱100に対して直交する方向、すなわち、基礎に対して平行な方向に柱100に架け渡される。梁200は、例えば、鋼製のH形鋼から形成されている。梁200は、フランジ210の面が基礎に対して平行な方向となるように配置され、柱100に連結されている。対向する梁200の間には、デッキプレート(床構成部材)300が架け渡されている。
【0018】
なお、柱100が延びる方向を「高さ方向H」とし、デッキプレート300が延びる方向を「長手方向L」とし、デッキプレート300が敷き詰められる方向を「幅方向W」とする。また、長手方向Lに沿って延びる梁を「梁200L」とし、幅方向Wに沿って延びる梁を「梁200W」ともいう。
【0019】
デッキプレート300は、平面視矩形状の薄い鋼板から形成されている。デッキプレート300は、2つの主面310,320を有している。主面310は、コンクリートが打設される側の表面であり、主面320は、主面310が面する側とは反対側に面する裏面である。デッキプレート300は、複数のリブ330を有する。各リブ330は、幅方向Wに所定の間隔をあけて互いに平行に設けられており、長手方向Lに連続して延びている。リブ330は、デッキプレート300を梁200Wの上面に載置したときにフランジ210の上面に対向する面、つまり主面320の側に設けられている。
【0020】
各リブ330は、デッキプレート300を形成する1枚の鋼板が複数の箇所で折り曲げられることにより形成されている。長手方向Lにおけるリブ330の両端部は、高さ方向Hに押し潰されており、梁200Wのフランジ210の上面に載置できるように形成されている。
【0021】
梁200Wの間において幅方向Wにデッキプレート300を敷き詰めた場合、幅方向Wにおいて一方の梁200Lとデッキプレート300との間に隙間S(図2参照。)が生じることがある。本実施の形態に係る床型枠材1は、床面施工現場において梁200Lと、デッキプレート300との間に生じた隙間Sに設置される。床型枠材1は、コンクリート止め材(防止部)10と、調整板20と、を有する。床型枠材1は、長手方向Lに延びる梁200Lに沿って設けられている。
【0022】
図2は、デッキプレート300の延び方向に交差して床型枠材1を断面にした図であり、図3は、コンクリート止め材10の構成を説明するための斜視図であり、図4は、調整板20の構成を説明するための斜視図である。コンクリート止め材10は、梁200Lの延び方向に沿って固定され、打設されるコンクリートの、幅方向Wにおける漏れを防ぐ。コンクリート止め材10は、デッキプレート300と梁200Lとの間に隙間Sが生じている側に設けられている。
【0023】
コンクリート止め材10は、断面視略L字状に形成されている。コンクリート止め材10は鋼板により形成されている。コンクリート止め材10においては、コンクリートが打設される面を表面10aとし、表面10aとは反対の側を向く面を裏面10bとする。コンクリート止め材10は、固定部11と、突出部12と、立設部13と、を有する。固定部11と、突出部12と、立設部13とは、互いに一体に形成されている。
【0024】
固定部11は、梁200Lのフランジ210の上面に、長手方向Lにおいて柱100の間に亘ってかつフランジ210の幅方向Wに亘って裏面10bの側で載置されている。固定部11は、梁200Lのフランジ210に対して溶接により固定される。固定部11は、幅方向Wにおいて2箇所でかつ長手方向Lにおいて複数箇所で梁200Lのフランジ210に対して溶接されている。幅方向Wにおける2つの溶接箇所11cは互いに所定の間隔をあけている。各溶接箇所11cは、幅方向Wにおけるフランジ210の各端部付近に設けられている。
【0025】
突出部12は、幅方向Wにおいて梁200Lのフランジ210から突出した固定部11の延長部分である。突出部12は、固定部11に対して梁200L上で延び方向(長手方向L)に沿って延びる固定部11の一方の側縁部に一体に形成されている。なお、固定部11及び突出部12には構造上の明確な区別はなく、固定部11及び突出部12それぞれの機能によって区別される。ここでは、梁200Lのフランジ210に載っている部分(溶接による固定に提供された部分)を固定部11とし、フランジ210から突出している部分を突出部12とする。
【0026】
突出部12は、固定部11から調整板20に向かって略水平方向に延びている。フランジ210からの突出部12の突出量は、本実施の形態においては、デッキプレート300に届かない程度となっている。突出部12は、固定部11とは反対の側の先端部に折返し部14を有する。折返し部14は、起立部位15と、返し部位16と、を有する。
【0027】
起立部位15は、突出部12の先端部が固定部11の表面10aが面する側に略垂直(鉛直方向)に折り曲げられて起立している。返し部位16は、突出部12とは反対側の起立部位15の先端部において、略垂直に固定部11の側に折り曲げられて延びている。この状態において返し部位16は、裏面10bにおいて後述する調整板20と面接触する。
【0028】
立設部13は、梁200Lの延び方向に沿った固定部11の他方の側縁部から立設して、幅方向Wにおいてコンクリートが漏れ出ることを防ぐ。立設部13は、固定部11における表面10aが面する側に向かって延びている(立設している)。なお、長手方向Lにおけるコンクリートの漏れ及び幅方向Wにおけるデッキプレート300を敷き始める梁200Lにおけるコンクリートの漏れは、別のコンクリート止め材(図示せず。)によって防がれる。
【0029】
コンクリート止め材10は、さらに凸部17を有する。凸部17は、固定部11及び立設部13に亘って形成されている。凸部17は、固定部11に形成された第1凸部11dと、立設部13に形成された第2凸部13aと、を有する。
【0030】
第1凸部11dは、エンボス加工により、固定部11において裏面10bの側から表面10aに向かって凸に形成された部分である。第1凸部11dは、固定部11において立設部13が設けられた側縁部から突出部12に向かって幅方向Wに延びている。第2凸部13aは、エンボス加工により、立設部13において裏面10bの側から表面10aに向かって凸に形成されている。第2凸部13aは、立設部13の固定部11の側の端部から反対側の端部に向かって高さ方向Hに延びている。第1凸部11d及び第2凸部13aは、固定部11と立設部13との移行部において互いに接続している。
【0031】
調整板20は、鋼板により形成されている。調整板20は、幅方向Wにおいてコンクリート止め材10及びデッキプレート300に架け渡され、コンクリート止め材10とデッキプレート300との間の隙間Sを塞ぐ。なお「隙間S」とは、リブ330より床型枠材1の側にあるデッキプレート300の部分は、設計上、荷重を受けることができない部分となっているため、梁200Lの側縁から複数のリブ330のうち最も梁200Lの近くに位置するリブ330の中心までのことをいう。また、「隙間S」は、コンクリート止め材10とデッキプレート300との間の実際の空隙のみを意味してもよい。
調整板20は、長手方向Lにおける各端部が梁200Wにそれぞれ載置されている。調整板20は、係止部21と、架橋部22と、を有する。係止部21と、架橋部22とは、互いに一体に形成されている。
【0032】
調整板20において係止部21は、幅方向Wにおいてデッキプレート300に載せられる側の端部に設けられている。係止部21は、調整板20のコンクリートが打設される側の表面20aとは反対の側の裏面20bの側に向かって端部が折り曲げられることにより形成されている。係止部21は、デッキプレート300のリブ330において、デッキプレート300の鋼板同士が接触し合う接触部分340の間に挿入される。
なお、調整板20は、係止部21を有さずに、デッキプレート300の側の端部をデッキプレート300に重ねるだけでもよい。
【0033】
架橋部22は、第1面部23と、第2面部24と、変向部25と、折返し部26と、を有する。本実施の形態において、第1面部23は、幅方向Wにおいて第2面部24よりも短く形成されている。なお、第1面部23は、幅方向Wにおいて第2面部24よりも長く形成されていてもよく、また、第1面部23及び第2面部24の幅方向Wにおける寸法は同じに形成されていてもよい。架橋部22の第1面部23は、幅方向Wにコンクリート止め材10に向かって係止部21から延びている。第1面部23は、裏面20bにおいてデッキプレート300の主面310に載置されている。
【0034】
変向部25は、幅方向Wにおいて係止部21とは反対側の第1面部23の端部に設けられている。変向部25は、高さ方向Hにおいて表面20aが面する側に、つまり、係止部21とは反対の側に延びる。幅方向Wにおいて、変向部25は、デッキプレート300とコンクリート止め材10の折返し部14との間に位置するようになっている。変向部25の延び量は、コンクリート止め材10の折返し部14の起立部位15の起立量に基づいて決定される。
【0035】
第2面部24は、変向部25の第1面部23とは反対側の端部からコンクリート止め材10に向かって、つまり、係止部21及び第1面部23とは反対側に向かって延びている。第2面部24は、コンクリート止め材10の折返し部14を突出部12の側に超えて延びている。
【0036】
折返し部26は、幅方向Wにおいて係止部21とは反対側の第2面部24の端部に設けられている。折返し部26は、起立部位27と、返し部位28と、を有する。起立部位27は、第2面部24の端部において調整板20の裏面20bの側に略垂直(鉛直方向)に折り曲げられている。返し部位28は、第2面部24とは反対側の起立部位27の端部において、第1面部23及び変向部25の側に折り曲げられて延びている。返し部位28は、調整板20の表面20aにおいてコンクリート止め材10と面接触する。
【0037】
次に、床型枠材1の設置工程について説明する。施工対象床面の幅方向Wにデッキプレート300を敷設していった場合、梁200Lとデッキプレート300の側縁との間に、1枚のデッキプレート300の幅方向Wにおける寸法よりも小さい隙間Sが生じることがある。
【0038】
図5は、従来の床施工技術を示す概略図である。従来技術においては隙間Sを塞ぐために、デッキプレート300を一定の幅に切断した役物500及び平板600が用いられていた。役物500は、梁200W間に架け渡され、幅方向Wに沿った両端部において梁200Wに溶接されていると共に、長手方向Lに沿った一端部においてデッキプレート300に溶接されている。平板600は、役物500の長手方向Lにおける他端部と梁200Lとの間に架け渡されてそれぞれに溶接されていた(溶接箇所は破線により示す。)。なお、デッキプレート300及び役物500にはリブ330が設けられているため、隙間Sをデッキプレート300及び役物500だけでは塞ぐことができず、平板600を架け渡して塞ぐ隙間が必ず生じていた。
【0039】
従来、隙間Sを塞ぐ作業とは別に、打設するコンクリートの漏れを防ぐために、コンクリート止め材400を梁200Lに設置する必要があった。コンクリート止め材400は、幅方向Wにおいてフランジ210より短い固定部410で梁200Lに溶接されていた。また、コンクリート止め材400と梁200Lとの連結を強固にするために、コンクリート止め材400の立設部420とフランジ210とを正面視略Z状等の鉄筋430を溶接して連結していた。
【0040】
これに対して上記の床型枠材1は、コンクリートの漏れを防止する機能と、隙間Sを塞ぐ機能を兼ね備えている。まず、コンクリート止め材10を梁200Lに設置する。コンクリート止め材10を固定部11において、長手方向Lに沿って2列、幅方向Wにおいてフランジ210の端部付近で梁200Lのフランジ210に溶接する。
【0041】
次いで、調整板20をコンクリート止め材10とデッキプレート300との間に架け渡す。調整板20の係止部21を、デッキプレート300の接触部分340に差し込みつつ、調整板20の折返し部26を、コンクリート止め材10の突出部12における平坦部分に載せる。調整板20の返し部位28は、突出部12においてコンクリート止め材10の表面10aの側から面接触している。また、コンクリート止め材10の返し部位16は、調整板20における第2面部24において裏面20bの側から面接触している。
【0042】
以上のような床型枠材1によれば、隙間Sを塞ぐと同時に、梁200Lにおけるコンクリートの漏出を防ぐこともできる。つまり、床型枠材1により、隙間Sを塞ぐ作業と同時に、少なくとも梁200Lの長手方向Lに沿ってコンクリートの漏出を防ぐ作業を行うこともできる。床型枠材1により、従来技術において必要になっていたデッキプレート300を加工した役物500は必要なくなり、デッキプレート300の歩留まりが大幅に向上し、無駄なコストを削減することができる。
【0043】
本実施の形態に係る床型枠材1において、梁200Lの延び方向に沿った側縁と、梁200Lの側方に位置するデッキプレート300の側縁との間に形成された隙間Sを覆うカバー部は、カバー部としてのコンクリート止め材10の突出部12と、カバー部としての調整板20の架橋部22と、を有している。突出部12と架橋部22とは、幅方向Wにおいて互いに重なる重なり領域Oを互いに有している。重なり領域Oは、コンクリート止め材10の突出部12と、調整板20の第2面部24とが重なることにより形成されている。床型枠材1においては、突出部12及び架橋部22の重なり領域Oが隙間Sに位置するようになっている。重なり領域Oによりコンクリート止め材10の突出部12及び調整板20の架橋部22は、カバー部の幅方向Wにおける幅を調整する調整機構として機能する。隙間Sが小さければ、重なり領域Oは大きくなり、隙間Sが大きければ重なり領域Oは小さくなる。床施工現場によって隙間Sの幅方向Wにおける寸法は異なる。重なり領域Oを確保した床型枠材1によれば、床面施工現場によって異なる隙間Sに柔軟に対応することができる。
【0044】
また、折返し部14は、架橋部22の第2面部24に接触し、折返し部26は、突出部12に接触している。より具体的には、コンクリート止め材10は、折返し部14の返し部位16において、調整板20の架橋部22における第2面部24の裏面20bに面接触し、調整板20は、折返し部26の返し部位28において、コンクリート止め材10の突出部12の表面10aに面接触している。このため、コンクリート打設時にコンクリート止め材10と調整板20との間からコンクリートが漏れ出ることを効果的に防ぐことができる。
【0045】
また、床型枠材1は、梁200Lから幅方向Wにおいて突出する突出部12を有しているので、幅方向Wにおける固定部11の溶接箇所11cは、幅方向Wにおける梁200Lの幅を最大限に利用して設定することができる。つまり、梁200Lに対するコンクリート止め材10の支点間の間隔を従来技術よりも大きく確保することができ、梁200Lにおけるコンクリート止め材10の安定した設置状態が得られる。これにより、従来、コンクリート止め材400と梁200Lとを連結していた鉄筋430を省略することができる。床型枠材1の設置に際しての溶接作業が必要となる箇所は、従来技術に比べて大幅に減らすことができ、床面施工現場における施工工期を短縮することができる。
【0046】
また、コンクリート止め材10の折返し部14及び調整板20の折返し部26は、それぞれ隙間S上に位置しているため、隙間Sにおいて床型枠材1における断面積を増やすことができる。さらに、折返し部14,26のそれぞれ鉛直方向に延びる起立部位15,27は、鉛直方向からかかる荷重に強く、床型枠材1は隙間Sにおける荷重を支えることができる。床型枠材1においては、コンクリート止め材10及び調整板20において荷重に対する強度を向上させてあるため、コンクリート打設作業の安全性が向上する。
【0047】
また、コンクリート止め材10は、固定部11及び立設部13に連続した凸部17が形成されているので、コンクリート止め材10の剛性が高まり、コンクリート打設時に立設部13が外側に倒れることを防ぐことができる。
【0048】
また、係止部21により、調整板20は、係止部21をデッキプレート300の接触部分340に差し込み、架橋部22をコンクリート止め材10の突出部12に載せるだけでよく、調整板20に対する溶接作業を省くことができる。
【0049】
また、床型枠材1において調整板20は、架橋部22において隙間Sを全幅に亘って塞ぐのではなく、コンクリート止め材10の突出部12とデッキプレート300との間で隙間Sを塞ぐだけでよい。これにより、調整板20が隙間Sを全幅に亘って塞ぐ場合に比べて、調整板20の幅方向における支点(デッキプレート300における支点とコンクリート止め材10における支点)の間隔を短くすることができる。
【0050】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。上記の実施の形態における床型枠材1においては、カバー部は、コンクリート止め材10及び調整板20により形成されていたが、コンクリート止め材10の突出部12がデッキプレート300に届く場合には調整板20を設けなくてもよい。つまり、カバー部は、隙間Sをコンクリート止め材10のみによって塞いでもよい。
【0051】
また、上記の実施の形態においては、高さ方向Hにおいて調整板20をコンクリート止め材10に載せていたが、コンクリート止め材10を調整板20に載せてもよい。この場合、コンクリート止め材10の折返し部14が裏面10bの側に折り曲げられる一方で、調整板20の変向部25が裏面20bの側に折り曲げられ、そして、調整板20の折返し部26が表面20aの側に折り曲げられている。
【0052】
また、上記の実施の形態においては、凸部17は、突条として連続して延びていたが、単に、凸を点在させて形成してもよい。
【0053】
また、床型枠材1は、コンクリート止め材10と調整板20とを連結する複数の連結材30を備えていてもよい。図6は、連結材30を備えた床型枠材1を示す図であり、図7は、床型枠材1を連結材30の一端部側から見た部分拡大斜視図であり、図8は、床型枠材1を連結材30の他端部を拡大した部分拡大斜視図である。連結材(連結筋)30は、鉄筋により形成されている。各連結材30は、長手方向Lに沿って所定の間隔をあけて、コンクリート止め材10から調整板20に向けて斜めに設けられている。
【0054】
連結材30は、一端にねじ山31が形成されていて、このねじ山にはナット31Nが取り付けられている。連結材30は、他端が一端側に折り曲げられた折曲げ端部32を有する。連結材30を備える床型枠材1の場合、コンクリート止め材10の立設部13には複数の切込み131が形成されている。切込み131に連結材30はその一端の側で落とし込まれている。
【0055】
切込み131は、長手方向Lにおいて互いに所定の間隔をあけて形成されている。切込み131は、固定部11とは反対側の立設部13の端部から、固定部11の側に向かって形成されている。高さ方向Hに沿った切込み131の長さは、連結材30が十分に入り込む(落とし込まれる)ように設計されており、高さ方向Hに交差する切込み131の幅は、ナット30Nの径より小さくなるように設計されている。
【0056】
さらに、調整板20の変向部25には複数の孔部251が形成されている。孔部251には、連結材30の折曲げ端部32の先端が挿通される。なお、折曲げ端部32は、ナット31Nの側に折り返されていたが、所定の角度に曲げられて変向部25に引っ掛けるように形成されていてもよい。
【0057】
連結材30を設けることにより、コンクリートを打設した際、コンクリートの重みにより、連結材30は、その一端の側(ねじ山31の側)で立設部13を調整板20の側に引き込むと同時に、他端部(折曲げ端部32)の側で調整板20をコンクリート止め材10の側へと斜め上方に引っ張り、調整板20の落ち込みを防いでいる。これにより、床型枠材1全体の強度向上を期待することができ、コンクリート止め材10及び調整板20の材料厚さを薄くすることが可能になり、コストダウンを達成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 床型枠材
10 コンクリート止め材(防止部)
11 固定部
12 突出部
13 立設部
14 折返し部(第1折返し部)
17 凸部
20 調整板
21 係止部
22 架橋部
23 第1面部
24 第2面部
26 折返し部(第2折返し部)
200 梁
300 デッキプレート(床構成部材)
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8