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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】紙蓋及び紙蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B65D3/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018229809
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090316
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】久富 祥人
(72)【発明者】
【氏名】門田 太郎
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047268(JP,A)
【文献】特開2000-211650(JP,A)
【文献】特開平07-237644(JP,A)
【文献】特開2005-343557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とする紙蓋であって、
前記紙蓋は、切込みを有する天板部と、前記天板部の外側周囲に内嵌合部と、前記内嵌合部の外側周囲に外嵌合部と、を備え、
前記切込みは、
第1端点と、
前記第1端点から、前記紙蓋の紙目の方向に離れている第2端点と、
前記第1端点及び前記第2端点のそれぞれから、前記紙目と交差しつつ延び、前記第1端点から前記第2端点までの間に2つ以上の変曲点を有して、前記第1端点と前記第2端点とを結ぶ切れ目線と、を含むこと
を特徴とする紙蓋。
【請求項2】
前記切れ目線は、
前記第1端点及び前記第2端点のそれぞれから、前記紙目と直交する方向に延びること
を特徴とする請求項1に記載の紙蓋。
【請求項3】
紙を主体とする紙蓋の製造方法であって、
前記紙蓋は、
切込みを有する天板部と、
前記天板部の外側周囲に内嵌合部と、
前記内嵌合部の外側周囲に外嵌合部と、
を備え、
前記切込みは、
第1端点と、
前記第1端点から、前記紙蓋の紙目の方向に離れている第2端点と、
前記第1端点及び前記第2端点のそれぞれから、前記紙目と交差しつつ延び、前記第1端点から前記第2端点までの間に2つ以上の変曲点を有して、前記第1端点と前記第2端点とを結ぶ切れ目線と、を含み、
前記天板部、前記内嵌合部、及び前記外嵌合部は、
前記天板部、前記内嵌合部、及び前記外嵌合部の順に成型され、
前記内嵌合部を成型する前に、前記切込みを前記天板部に形成すること
を特徴とする紙蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙蓋及び紙蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙コップ等の紙容器の蓋として、プラスチック等の樹脂蓋が用いられている。しかし、樹脂蓋は、廃棄する際、紙コップや紙容器と分別する必要があり、消費者の手間となる。
【0003】
特許文献1には、天板と、天板の周側部に設けられた、外壁と上壁と内壁とからなる下方に開いた台形状の溝部と、を有した紙蓋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3432316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、例えば、天板(天板部)にストロー穴や内容物を飲用するための飲み口として使用可能な切込みを打ち抜く、という記載はない。
【0006】
しかし、紙蓋の天板部に、例えば、ストロー穴や飲み口として使用可能な切込みを打ち抜くと、切込みが、設計された形状を逸脱して拡がり、ブランクが破れてしまう、という事情がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、その目的は、紙蓋の天板部に、設計された形状を逸脱しにくい切込みを持つ紙蓋、及び切込みを紙蓋の天板部に、この天板部を破断させることなく形成することが可能な紙蓋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る紙蓋は、紙を主体とする紙蓋であって、前記紙蓋は、切込みを有する天板部と、前記天板部の外側周囲に内嵌合部と、前記内嵌合部の外側周囲に外嵌合部と、を備え、前記切込みは、第1端点と、前記第1端点から、前記紙蓋の紙目の方向に離れている第2端点と、前記第1端点及び前記第2端点のそれぞれから、前記紙目と交差しつつ延び、前記第1端点から前記第2端点までの間に2つ以上の変曲点を有して、前記第1端点と前記第2端点とを結ぶ切れ目線と、を含むことを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る紙蓋は、第1発明において、前記切れ目線は、前記第1端点及び前記第2端点のそれぞれから、前記紙目と直交する方向に延びることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る紙蓋の製造方法は、紙を主体とする紙蓋の製造方法であって、前記紙蓋は、切込みを有する天板部と、前記天板部の外側周囲に内嵌合部と、前記内嵌合部の外側周囲に外嵌合部と、を備え、前記切込みは、第1端点と、前記第1端点から、前記紙蓋の紙目の方向に離れている第2端点と、前記第1端点及び前記第2端点のそれぞれから、前記紙目と交差しつつ延び、前記第1端点から前記第2端点までの間に2つ以上の変曲点を有して、前記第1端点と前記第2端点とを結ぶ切れ目線と、を含み、前記天板部、前記内嵌合部、及び前記外嵌合部は、前記天板部、前記内嵌合部、及び前記外嵌合部の順に成型され、前記内嵌合部を成型する前に、前記切込みを前記天板部に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1、第2発明に係る紙蓋によれば、第1端点及び第2端点のそれぞれから、紙目と交差しつつ延びる切れ目線が、第1端点から第2端点までの間に2つ以上の変曲点を有して、第1端点と第2端点とを結ぶ。これにより、切込みを、天板部が破れることなく、設計された形状で天板部に得ることができる。よって、紙蓋の天板部に、設計された形状を逸脱しにくい切込みを持つ紙蓋を提供できる。
【0012】
第3発明に係る紙蓋の製造方法によれば、第1端点及び第2端点のそれぞれから、紙目と交差しつつ延び、第1端点から第2端点までの間に2つ以上の変曲点を有して、第1端点と第2端点とを結ぶ切れ目線を含む切込みを、内嵌合部を成型する前に、天板部に形成する。これにより、切込みを有する天板部、内嵌合部、及び外嵌合部のそれぞれを備えた紙蓋を、天板部を破断させることなく形成することが可能な紙蓋の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)中のIB-IB線に沿う模式断面図である。
図2図2は、図1(b)中の破線枠II内を拡大して示す模式断面図である。
図3図3(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を、さらに詳細に示す模式平面図である。図3(b)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の別の例を、さらに詳細に示す模式平面図である。
図4図4(a)~図4(f)は、紙蓋の模式平面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、第1例に係る切込みを示す模式平面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第2参考例に係る切込みを示す模式平面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、第2例に係る切込みを示す模式平面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第3参考例に係る切込みを示す模式平面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、第3例に係る切込みを示す模式平面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、第4例に係る切込みを示す模式平面図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、第5例に係る切込みを示す模式平面図である。
図12図12(a)及び図12(b)は、第6例に係る切込みを示す模式平面図である。
図13図13は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造に使用可能な加工機の一例を示す模式断面図である。
図14図14は、この発明の一実施形態に係る紙蓋を製造する製造方法の一例を示す模式断面図である。
図15図15(a)~図15(d)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋を製造する製造方法の一例を示す模式断面図である。
図16図16(a)~図16(d)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋を製造する製造方法の一例を示す模式断面図である。
図17図17(a)及び図17(b)は、載置面及び抑え面のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図18図18(a)及び図18(b)は、ドローダイ、ブランクホルダー、環状突起部、及びプランジャーのそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図19図19は、ドローダイ、ブランクホルダー、環状突起部、及び縮径部のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図20図20(a)及び図20(b)は、切込みが形成されたブランクの一例を示す模式平面図である。
図21図21(a)は、第4参考例に係る紙蓋を示す模式断面図である。図21(b)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式断面図である。
図22図22は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式断面図である。
図23図23(a)~図23(c)は、一実施形態に係る紙蓋の一例を、製造工程順に示す模式断面図である。
図24図24(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式断面図である。図24(b)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例に嵌合可能な紙容器を示す模式断面図である。
図25図25は、テーパー角と割合との関係を示す図である。
図26図26(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式斜視図である。図26(b)は、図26(a)に示す模式斜視図の一部を切り欠いて示す模式斜視図である。
図27図27(a)は、フランジ部15の末端を示す図面代用写真である。図27(b)は、図27(a)に示す図面代用写真の撮影方向を示す模式断面図である。
図28図28(a)は、フランジ部15の外面を示す図面代用写真である。図28(b)は、図28(a)に示す図面代用写真の撮影方向を示す模式断面図である。
図29図29(a)は、図1(b)中のXXIXA-XXIXA線に沿う模式断面図である。図29(b)は、図1(b)中のXXIXB-XXIXB線に沿う模式断面図である。
図30図30(a)は紙蓋を積み重ねた状態を示す模式斜視図である。図30(b)は紙蓋を積み重ねたときの内嵌合部及び外嵌合部のそれぞれを拡大して示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
(紙蓋)
図1(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式平面図、図1(b)は、図1(a)中のIB-IB線に沿う模式断面図である。図2は、図1(b)中の破線枠II内を拡大して示す模式断面図である。
【0016】
図1(a)、図1(b)、及び図2に示すように、紙蓋1は、紙を主体とするブランク10から成り、天板部11と、内嵌合部12と、頂部13と、外嵌合部14と、フランジ部15と、を含む。紙蓋1の平面視した形状は、例えば円形である。ブランク10には、例えば押罫線はあってもよい。
【0017】
天板部11は、第1方向X1に延びる。天板部11は、天面11aと、容器面11bと、を有する。容器面11bは、天面11aの裏面にある。容器面11bは、紙蓋1が、紙容器2に嵌合されたとき、紙容器2の容器部と面する。天板部は、切込み19を有する。
【0018】
内嵌合部12は、紙蓋1の周縁部OEPに、天板部11の周方向に沿って設けられている。内嵌合部12は、第1方向X1と交差する第2方向Z2に延び、天板部11と連続している。
【0019】
頂部13は、周縁部OEPに、内嵌合部12の周方向に沿って設けられている。頂部13は、第2方向Z2と交差する第3方向X3に延び、内嵌合部12と連続している。実施形態では、頂部13は、その断面において第2方向Z2に向かって凸となる曲面を含む。
【0020】
外嵌合部14は、周縁部OEPに、頂部13の周方向に沿って設けられている。外嵌合部14は、第3方向X3と交差する第4方向Z4に延び、頂部13と連続している。外嵌合部14は、内嵌合部12と離れて相対する。頂部13の下で、内嵌合部12と外嵌合部14との間には、内嵌合部12及び外嵌合部14のそれぞれを囲壁とし、頂部13を底とした環状凹部16が設けられる。容器、例えば紙容器2は、環状凹部16に嵌合される。紙容器2は、例えば、紙コップである。内嵌合部12は、紙容器2の容器部内周面21と嵌合し、外嵌合部14は、紙容器2のカール部22の外周面と嵌合する。
【0021】
フランジ部15は、周縁部OEPに、外嵌合部14の周方向に沿って設けられている。フランジ部15は、第4方向Z4と交差する第5方向X5に延び、外嵌合部14と連続している。フランジ部15は、紙蓋1の末端10aを含む。
【0022】
紙蓋1は、紙蓋1の断面において、内嵌合部12において第2方向Z2に曲がり、頂部13において第3方向X3に曲がり、外嵌合部14において第4方向Z4に曲がり、フランジ部15において第5方向X5に曲がる。つまり、内嵌合部12、頂部13、外嵌合部14、及びフランジ部15のそれぞれは、1枚のブランク10から得られている。
【0023】
このような形状の紙蓋1において、天板部11と内嵌合部12との境界、内嵌合部12と頂部13との境界、頂部13と外嵌合部14との境界、外嵌合部14とフランジ部15との境界をそれぞれ定めるとするならば、例えば、ブランク10の変曲点、又は変曲点近傍を、それぞれの境界とするとよいだろう。
【0024】
例えば、ブランク10を絞り成型して、天板部11、内嵌合部12、頂部13、外嵌合部14、及びフランジ部15を、ブランク10に形成したとする。この場合、図2に示すように、例えば、天板部11と内嵌合部12との境界は、ブランク10を第1方向X1から第2方向Z2へ曲げた(絞った)ときに生じた変曲点P1とできる。これにより、天板部11は反対側にある変曲点P1(図2では図示せず)から図2に図示された変曲点P1までと定められる。
【0025】
同様に、内嵌合部12と頂部13との境界は、ブランク10を第2方向Z2から第3方向X3へ曲げた(絞った)ときに生じた変曲点P2とできる。これにより、内嵌合部12は、変曲点P1から変曲点P2までと定められる。
【0026】
同様に、頂部13と外嵌合部14との境界は、ブランク10を第3方向X3から第4方向Z4へ曲げた(絞った)ときに生じた変曲点P3とできる。これにより、頂部13は、変曲点P2から変曲点P3までと定められる。外嵌合部14とフランジ部15との境界は、ブランク10を第4方向Z4から第5方向X5に曲げた(絞った)ときに生じた変曲点P4とできる。これにより、外嵌合部14は、変曲点P3から変曲点P4までと定められる。フランジ部15は、変曲点P4から末端10aまでと定められる。
【0027】
図3(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を、さらに詳細に示す模式平面図である。図3(b)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の別の例を、さらに詳細に示す模式平面図である。
【0028】
図3(a)及び図3(b)に示すように、天板部11は、切込み19を有する。切込み19は、第1端点191と、第2端点192と、切れ目線193と、を含む。紙蓋1には、紙目4がある。紙目4は、MD(Machine Direction)方向と並行である。MD方向は、抄紙機(図示せず)における抄紙方向である。第2端点192は、第1端点191から、紙目4の方向に沿って離れている。切れ目線193は、第1端点191及び第2端点192のそれぞれから、MD方向と交差するCD(Cross-machine Direction)方向に延びる。本実施形態では、CD方向は、紙目4(MD方向)と直交する。切れ目線193は、第1端点191から第2端点192までの間に2つ以上の変曲点を有して、第1端点191と第2端点192とを結ぶ。切込み19は、図3(a)に示すように天板部11のほぼ中央に設けられること、図3(b)に示すように天板部11の端に設けられることのいずれもが可能である。
【0029】
なお、本明細書において、切れ目線193における変曲点は、直線から曲線に変わる点、曲線上の点において、接線が紙目と平行又は垂直となる点、及び頂点を含む、と定義する。
【0030】
一例に係る紙蓋1の切れ目線193は、第1直線部51と、第2直線部52と、曲線部53と、を含む。第1直線部51は、一端を第1端点191とし、CD方向に延びる。第1直線部51は、例えば、CD方向と平行である。第2直線部52は、一端を第2端点192とし、CD方向に延びる。第2直線部52は、例えば、CD方向と平行である。曲線部53は、第1直線部51の他端と、第2直線部52の他端とを結ぶ。第1直線部51の他端と曲線部53の一端との接続点は、第1変曲点P21である。第2直線部52の他端と曲線部53の他端との接続点は、第2変曲点P22である。曲線部53のCD方向に沿った凸部の頂点は、第3変曲点P23である。これにより、一例に係る紙蓋1の切れ目線193では、第1端点191から第2端点192までの間に3つの変曲点P21~P23を有するものとなる。
【0031】
天板部11の切れ目線193で囲まれた部分11cは、可動切片の1種であり、押し開き可能である。例えば、部分11cは、第1端点191と第2端点192との間に残った天板部11を支点として、押し開かせることができる。このような切込み19が天板部11のほぼ中央に設けられると、例えば、ストローを差し込むストロー穴として使用することができる(図3(a))。
【0032】
また、切込み19が天板部11の端に設けられると、例えば、内容物を直接飲用するための飲み口として使用することができる(図3(b))。部分11cは、引きちぎることが可能である。切込み19を飲み口として使用する場合には、例えば、部分11cを引きちぎればよい。
【0033】
一例に係る紙蓋1の切れ目線193では、曲線部53が部分11cの外側に向かって凸である。平面視した切込み19の形状は、紙目4から90°横倒しされたU字状となる。U字状の切込み19によれば、部分11cを天板部に広く得ることができる。このため、例えば、切込み19をストロー穴として用いた際、ストローを差し込みやすくなる、という利点が得られる。また、一例に係る紙蓋1の切れ目線193では、曲線部53を部分11cの内側に向かって凸である場合と比較して、鋭角な部位がなくなる。このため、ブランク10が、より破れにくくなることが期待される。
【0034】
図4(a)~図4(f)は、紙蓋の模式平面図である。図4(a)及び図4(b)のそれぞれには第1参考例に係る紙蓋1aの模式平面が示され、図4(c)及び図4(d)のそれぞれには第2参考例に係る紙蓋1bの模式平面が示され、図4(e)及び図4(f)のそれぞれには一実施形態に係る紙蓋1の模式平面が示されている。
【0035】
図4(a)に示すように、第1参考例に係る紙蓋1aでは、天板部11に、十字形状の切込み19xを打ち抜く。切込み19xの縦直線部はMD方向(紙目4)と並行で、横直線部はCD方向と並行である。
【0036】
しかし、図4(a)の切込み19xを設けたブランク10から紙蓋1を成型すると、図4(b)に示すように、切込み19xは、設計された十字形状を逸脱して拡がり、紙蓋1が破れた。天板部11には、紙目4の1つの方向に裂け拡がった穴41aが開いた。
【0037】
図4(c)に示すように、第2参考例に係る紙蓋1bでは、天板部11に、U字形状の切込み19uを打ち抜く。切込み19uの2つの直線部はMD方向と並行である。
【0038】
しかし、図4(c)の切込み19uを設けたブランク10から紙蓋1を成型すると、図4(d)に示すように、切込み19uもまた、設計されたU字形状を逸脱して拡がり、紙蓋1が破れた。天板部11には、紙目4、及び紙目4から±約120°方向の3つの方向に裂け拡がった穴41bが開いた。
【0039】
図4(e)に示すように、一実施形態に係る紙蓋1では、天板部11に、U字形状の切込み19を打ち抜く。切込み19の2つの直線部は、切込み19uの2つの直線部とは異なり、CD方向と並行である。
【0040】
この図4(e)の切込み19を設けたブランク10から紙蓋1を成型すると、図4(f)に示すように、ほぼ設計された通りのU字形状の切込み19を、天板部11に得ることができた。
【0041】
このように、一実施形態に係る紙蓋1によれば、ブランク10に、切込み19を設けた後に紙蓋1を成型しても、設計された通りの切込み19を備えた紙蓋1得ることができる。
【0042】
これは、以下の理由によるものであると考えられる。
一般的に、紙の繊維はMD方向へ配列しやすい。このため、紙の引裂強度は、繊維の流れを引き裂く方向に低く、繊維の流れを引っ張る方向に高い。
【0043】
天板部11の成型時には、天板部11の中心から周縁方向への力が働く。切込み19を、MD方向に沿って形成すると、切込み19の第1、第2端点191及び192のそれぞれが繊維の流れを引き裂く方向に引っ張られてしまい、紙が、第1、第2端点191及び192を起点として破断してしまう。
【0044】
これに対して、切込み19を、MD方向から傾けて形成すると、切込み19の第1、第2端点191及び192のそれぞれが、繊維の流れを引き裂く方向、及び繊維の流れを引っ張る方向のそれぞれに引っ張られるようになる。切込み19を、MD方向からCD方向へ向けて傾けるにつれて、繊維の流れを引き裂く力の割合が小さくなり、反対に繊維の流れを引っ張る力の割合が大きくなっていく。このため、引裂強度は、切込み19を、MD方向からCD方向へ向けて傾けるにつれて高まり、第1、第2端点191及び192を起点とした紙の破断の可能性が低くなっていく。そして、切込み19を、CD方向に沿って形成すると、繊維の流れを引き裂く力を、ほぼ無くすことができる。
【0045】
このような繊維の流れを引き裂く力と、繊維の流れを引っ張る力との割合に応じた引裂強度の変化により、切込み19を設けたブランク10であっても、紙を破断させることなく、紙蓋1を成型できると考えられる。
【0046】
切込み19の形状の例のいくつかを説明する。
<切込み19:第1例>
図5(a)及び図5(b)は、第1例に係る切込みを示す模式平面図である。図5(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21~P23のそれぞれに働く力を示す。また、図5(a)及び図5(b)に示す第1例に係る切込み19は、例えば、図1図3、及び図4(f)に示した切込み19に対応する。
【0047】
図5(a)及び図5(b)に示すように、第1、第2端点191及び192、並びに第1~第3変曲点P21~23に、天板部11の面に対して平行に働く力を考える。本明細書では、働く力の代表例として、MD方向、CD方向、及びMD方向に対して±45°の8つを抽出する。図中、2つの白抜き矢印は、繊維の流れを引き裂く力を示している。
【0048】
第1、第2端点191及び192において、CD方向に沿って働く力は、一方向となる。これは、切れ目線193で囲まれた部分11cには、荷重はかからないためである。即ち、切れ目線193で囲まれた部分11cは天板部11の上下に対して自由であり、反発力がない。このため、天板部11が、例えば、下側に引っ張られると、下側にしか力が働かず、天板部11の面に沿った力はほとんど働かない。これにより、切込み19では、第1、第2端点191及び192のCD方向に沿って働く力を一方向にでき、繊維の流れを引き裂く力が軽減されて、第1、第2端点191及び192を起点とした破断が抑制される。
【0049】
また、例えば、ストローを切込み19に差し込むときにも、第1、第2端点191及び192には、力が働く。紙は、MD方向に沿って裂けやすく、CD方向に沿って裂けにくい。切込み19では、第1、第2直線部51及び52がCD方向に延びている。第1端点191と第2端点192との間に残る天板部11の部分11dは、MD方向に沿っており、CD方向と交差する。第1例では、部分11dは、例えば、MD方向と平行であり、紙目4に沿う。このため、例えば、ストローを切込み19に差し込んだ際、第1、第2直線部51及び52が、第1、第2端点191及び192から延長されるように裂けてしまう事情も抑制できる。
【0050】
このような切込み19を有した紙蓋1によれば、例えば、ストローを切込み19に差し込んだとき、天板部11に“裂け”が発生する等、紙蓋1の美観を損ねてしまうような事情も抑制できる。
【0051】
また、部分11dは、MD方向に沿っている。部分11dは、例えば、MD方向と平行であり、紙目4に沿っている。このような部分11dを含む切込み19によれば、例えば、ストローを用いて部分11cを押し開く際に、紙の繊維を押し曲げることが抑制される。したがって、例えば、部分11dがCD方向に沿っている場合と比較して、部分11cを押し開きやすい、という利点も得ることができる。
【0052】
また、部分11dは、MD方向に沿っている。このため、部分11cを引きちぎって飲み口とする際、部分11cを繊維の流れを引き裂く方向に引っ張ることとなるため、部分11cを引きちぎりやすく、飲み口を作成しやすい、という利点を得ることもできる。
【0053】
<切込み19u:第2参考例>
図6(a)及び図6(b)は、第2参考例に係る切込みを示す模式平面図である。図6(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21~P23に働く力を示す。また、図6(a)及び図6(b)に示す第2参考例に係る切込み19uは、例えば、図4(c)に示した切込み19uに対応する。
【0054】
図6(a)及び図6(b)に示すように、第2参考例に係る切込み19uでは、第2端点192は、第1端点191から、CD方向に沿って離れている。そして、切れ目線193は、第1端点191及び第2端点192のそれぞれから、MD方向に延びる。
【0055】
切込み19uによれば、第1、第2端点191及び192において、CD方向に沿って働く力は、双方向となる。このため、第1例に係る切込み19と比較して、第1、第2端点191及び192には、繊維の流れを引き裂く力が大きく働く。したがって、切込み19uでは、例えば、天板部11の成型時、紙が、第1、第2端点191及び192を起点として破断してしまう。
【0056】
また、仮に“切込み19uを形成できた”としても、切込み19uでは、第1、第2直線部51及び52がMD方向に延び、第1端点191と第2端点192との間に残る天板部11の部分11dは、CD方向に沿っている。このため、例えば、ストローを切込み19uに差し込んだとき、切込み19と比較して、天板部11が裂けやすい。
【0057】
また、部分11dは、CD方向に沿っているので、例えば、ストローを用いて部分11cを押し開く際に、紙の繊維を、その流れに対して直交して押し曲げることになる。このため、切込み19と比較して、部分11cは、押し開き難くなる。
【0058】
さらに、飲み口を作成する際に、繊維の流れを引っ張る方向に、部分11cを引っ張ることになるので、切込み19と比較して、飲み口を作成しにくくなる。
【0059】
<切込み19b:第2例>
図7(a)及び図7(b)は、第2例に係る切込みを示す模式平面図である。図7(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21~P23のそれぞれに働く力を示す。
【0060】
図7(a)及び図7(b)に示すように、第2例に係る切込み19bが、第1例に係る切込み19と異なるところは、切込み19bがMD方向から傾けられて、天板部11に形成されていること、である。第2例に係る切込み19bでは、切れ目線193は、第1端点191及び第2端点192のそれぞれから、MD方向に対して斜めに延びる。より具体的には、切れ目線193は、第1端点191から第2端点192の側から離れる方向に延び、第2端点192から、第1端点191の側へ向かう方向に延びる。また、第1端点191と第2端点192との間に残る天板部11の部分11dは、紙目4に対して斜めに交差する。
【0061】
切込み19bでは、第2端点192において、CD方向に沿って働く力は、双方向となるが、第1端点191では、CD方向に沿って働く力は、一方向となる。このため、第2参考例19uと比較して、第1、第2端点191及び192に働く、繊維の流れを引き裂く力を弱めることができる。したがって、切込み19bによれば、切込み19uと比較して、例えば、天板部11の成型時、紙が、第1、第2端点191及び192を起点として破断する可能性を、より小さくすることができる。
【0062】
また、切込み19bでは、第1、第2直線部51及び52がMD方向に対して斜めに延び、第1端点191と第2端点192との間に残る天板部11の部分11dは、紙目4に対して斜めに交差する。このため、例えば、ストローを切込み19bに差し込んだとき、切込み19uと比較して、天板部11が裂け難くなる。
【0063】
また、部分11dは、紙目4に対して斜めに交差するので、切込み19uと比較して、部分11cは、押し開きやすくなる。
【0064】
<切込み19v:第3参考例>
図8(a)及び図8(b)は、第3参考例に係る切込みを示す模式平面図である。図8(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P23に働く力を示す。
【0065】
図8(a)及び図8(b)に示すように、第3参考例に係る切込み19vが、第1例に係る切込み19と異なるところは、平面視した切込み19vの形状が、紙目4から90°横倒しされたV字状であること、である。切れ目線193における変曲点は、第1直線部51と第2直線部52とが交わった点(頂点)、即ち、第3変曲点P23の1つだけである。
【0066】
切込み19vによれば、第1、第2端点191及び192において、CD方向に沿って働く力は、第2参考例に係る切込み19uと同様に、双方向となる。このため、第1例に係る切込み19と比較して、第1、第2端点191及び192には、繊維の流れを引き裂く力が大きく働く。このように、切れ目線193における変曲点が1つの切込み19vでは、例えば、天板部11の成型時、紙が、第1、第2端点191及び192を起点として破断してしまう。
【0067】
<切込み19c:第3例>
図9(a)及び図9(b)は、第3例に係る切込みを示す模式平面図である。図9(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21~P23のそれぞれに働く力を示す。
【0068】
図9(a)及び図9(b)に示すように、第3例に係る切込み19cが、第3参考例に係る切込み19vと異なるところは、第1直線部51と第2直線部52とを曲線部53で結び、変曲点を第1~第3変曲点P21~P23の3つに増やし、かつ、頂点を曲線としていること、である。切込み19cにおいて、切れ目線193は、第1端点191から、第2端点192の側へ向かう方向に延び、第2端点192から、第1端点191の側へ向かう方向に延びる。
【0069】
切込み19cでは、第1、第2端点191及び192のそれぞれにおいて、CD方向に沿って働く力は双方向となる。しかし、切込み19vと比較して、切れ目線193は、第1、第2変曲点P21及びP22を、さらに有する。第1、第2変曲点P21及びP22では、CD方向に沿って働く力は、一方向となる。このため、第3参考例19vと比較して、第1、第2端点191及び192に働く、繊維の流れを引き裂く力を弱めることができる。したがって、切込み19cによれば、切込み19vと比較して、例えば、天板部11の成型時、紙が、第1、第2端点191及び192を起点として破断する可能性を、より小さくすることができる。
【0070】
また、切込み19cでは、第1、第2直線部51及び52がMD方向に対して斜めに延び、第1端点191と第2端点192との間に残る天板部11の部分11dは、MD方向に沿っている。このため、例えば、ストローを切込み19cに差し込んだとき、第2参考例に係る切込み19uと比較して、天板部11が裂け難くなる。
【0071】
また、部分11dは、MD方向に沿っている。このため、切込み19uと比較して、部分11cは、押し開きやすく、引きちぎりやすい。
【0072】
<切込み19d:第4例>
図10(a)及び図10(b)は、第4例に係る切込みを示す模式平面図である。図10(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21~P23のそれぞれに働く力を示す。
【0073】
図10(a)及び図10(b)に示すように、第4例に係る切込み19dが、第1例に係る切込み19と異なるところは、第1直線部51と第2直線部52とを、曲線部53に代えて、第3、第4直線部54及び55で結んだこと、である。第3直線部54は、第4直線部55と交わる。この交わった点が頂点であり、第3変曲点P23である。
【0074】
切込み19dでは、第1、第2端点191及び192のそれぞれにおいて、CD方向に沿って働く力は、一方向である。また、第3変曲点P23は曲線ではなく、角部であるが、第1、第2変曲点P21及びP22のそれぞれでは、CD方向に沿って働く力は、一方向である。このような切込み19dにおいても、例えば、天板部11の成型時、紙が、第1、第2端点191及び192を起点とした破断が抑制される。
【0075】
<切込み19e:第5例>
図11(a)及び図11(b)は、第5例に係る切込みを示す模式平面図である。図11(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21、P22のそれぞれに働く力を示す。
【0076】
図11(a)及び図11(b)に示すように、第5例に係る切込み19eが、第1例に係る切込み19と異なるところは、第1直線部51と第2直線部52とを、曲線部53に代えて、第3直線部54で結んだこと、である。切込み19eでは、頂点はないが、切れ目線193は、2つの第1、第2変曲点P21及びP22を有する。また、第3直線部54は、MD方向に沿っている。例えば、第3直線部54は、MD方向と平行である。
【0077】
切込み19eでは、第1端点191、第2端点192、第1変曲点P21、及び第2変曲点P22のそれぞれにおいて、CD方向に沿って働く力は、一方向である。このため、第3直線部54は、MD方向と平行に形成した、としても、繊維の流れを引き裂く力を軽減することができる。したがって、切込み19eにおいても、第1、第2端点191及び192を起点とした破断が抑制される。
【0078】
<切込み19f:第6例>
図12(a)及び図12(b)は、第6例に係る切込みを示す模式平面図である。図12(b)には、第1端点191、第2端点192、及び変曲点P21~P23のそれぞれに働く力を示す。
【0079】
図12(a)及び図12(b)に示すように、第6例に係る切込み19fが、第1例に係る切込み19と異なるところは、第1端点191と第2端点192とを、曲線部53で結んだこと、である。曲線部53は、例えば、円である。もちろん楕円状であってもよい。円には、本来、変曲点はない。しかし、本明細書では、切れ目線193における変曲点は、曲線上の点において、接線が紙目と平行又は垂直となる点を含む、と定義している。このため、切れ目線193は、第1~第3変曲点P21~P23を有する。第1変曲点P21は、曲線部53のMD方向の一方の点であり、第2変曲点P22は、曲線部53のMD方向の他方の点である。第3変曲点P23は、曲線部53のCD方向の点である。また、切込み19fでは、切れ目線193は、第1端点191から、第2端点192の側から離れる方向に延び、第2端点192から、第1端点191の側から離れる方向に延びる。
【0080】
切込み19fでは、第1、第2端点191及び192において、CD方向に沿って働く力は、一方向である。このため、第1端点191と第2端点192とを、曲線部53で結んだ、としても、繊維の流れを引き裂く力を軽減することができる。したがって、切込み19fにおいても、第1、第2端点191及び192を起点とした破断が抑制される。
【0081】
次に、紙蓋の製造方法の一例を説明する。
(紙蓋の製造方法)
<加工機の一例>
図13は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造に使用可能な加工機の一例を示す模式断面図である。
【0082】
図13に示すように、加工機100は、ドローダイ110と、ブランクホルダー120と、ドローパンチ130と、プランジャー140と、を備えている。
【0083】
ドローダイ110は、プランジャーガイドホール111と、載置面112とを有する。プランジャーガイドホール111は、例えば、円形のホールである。載置面112は、プランジャーガイドホール111の外側に設けられている。載置面112は、ブランクホルダー120と向き合う。載置面112は、ブランク10を載置することが可能な面である。
【0084】
ブランクホルダー120は、パンチガイドホール121と、押さえ面122とを有する。パンチガイドホール121は、円形のホールである。押さえ面122は、パンチガイドホール121の外側に設けられている。押さえ面122は、載置面112と向き合う。ブランクホルダー120は、載置面112上に載置されたブランク10を押さえる。
【0085】
ドローパンチ130は、パンチガイドホール121内を、上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれの方向に移動可能である。上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれは、載置面112と交差、例えば、直交する。下降方向ZDは、上昇方向ZUと反対向きである。ドローパンチ130の先端部分には、環状突起部131が設けられている。環状突起部131は、例えば、ドローパンチ130のパンチ面132から、囲壁状に突き出ている。これにより、ドローパンチ130の先端部分には、環状突起部131で囲まれ、パンチ面132を底とした窪み133が得られる。環状突起部131は、プランジャーガイドホール111の内周面と、クリアランスを設けて嵌合可能である。環状突起部131の先端は、曲面となっている。
【0086】
プランジャー140は、プランジャーガイドホール111内を、上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれの方向に移動可能である。プランジャー140の先端部分には、縮径部141が設けられている。縮径部141の直径D1は、プランジャー140の基径部142の直径D2よりも小さい。縮径部141は、環状突起部131と、クリアランスを設けて嵌合可能である。
【0087】
加工機100は、例えばプレス機である。例えば、図4に示されるような加工機100を使用することで、ブランク10から、内嵌合部12及び外嵌合部14のそれぞれを備えた紙蓋1を、製造することができる。
【0088】
図14図15(a)~図15(d)、及び図16(a)~図16(d)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋を製造する製造方法の一例を示す模式断面図である。図14図15(a)~図15(d)、及び図16(a)~図16(d)のそれぞれには、ブランク10の模式断面と加工機100の模式断面とが示されている。
【0089】
図14に示すように、ブランク10を、ドローダイ110の載置面112上に載置する。なお、この説明では、載置面112の位置を基準位置RPとする。
【0090】
次に、図15(a)に示すように、ブランクホルダー120を、下降方向ZDに移動させ、ブランク10の周縁領域10bを、ブランクホルダー120の押さえ面122で押さえる。
【0091】
図17(a)及び図17(b)は、ブランク10、ドローダイ、及びブランクホルダーのそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。図17(a)は、ブランク10が載置面112上に載置された状態を示し、図17(b)は、周縁領域10bが押さえ面122で押さえられた状態を示す。
【0092】
図17(b)に示すように、ブランク10を押さえ面で押さえた際、載置面112と押さえ面122との間には、第1クリアランス151が設けられる。第1クリアランス151の幅W1は、ブランク10の紙厚T10(図17(a))よりも、例えば小さく設定される。これにより、ブランク10はつぶれ、ブランク10に“しわ抑え”を実施することが可能となる。なお、ブランクホルダー120には、“しわ抑え”のための荷重が与えられてもよく、第1クリアランスの幅W1は、ブランク10の紙厚T10と同等、又は紙厚T10より大きくてもよい。
【0093】
次に、図15(b)に示すように、ドローパンチ130を、ブランク10へ向かう下降方向ZDに移動させる。これにより、ドローパンチ130は、例えば、環状突起部131の先端が、ほぼ基準位置RPに達するように下降される。これにより、環状突起部131の先端は、ブランク10の表面と接する、又は近接される。なお、図15(b)に示す状態では、ブランク10の中央領域10cは、ドローパンチ130と、プランジャー140との間に位置する。
【0094】
次に、図15(c)に示すように、プランジャー140を、ブランク10へ向かう上昇方向ZUに移動させる。これにより、プランジャー140は、縮径部141の先端が、基準位置RPを超えるように上昇される。縮径部141が、例えば、基準位置RPを超えてくると、縮径部141は、窪み133の中へ進出する。これにより、ブランク10の中央領域10cは、窪み133の中に、縮径部141によって押し込まれる。押し込み量は、本実施形態では、約10mmである。なお、押し込み量は、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。
【0095】
このようにして、周縁領域10bを押さえ面122で押さえながら、中央領域10cを窪み133の中に押し込む。これにより、周縁領域10bを“しわ抑え”しつつ、内嵌合部12を、中央領域10cに“絞り成型”を用いて形成できる。
【0096】
図18(a)及び図18(b)は、ドローダイ110、ブランクホルダー120、環状突起部131、及びプランジャー140のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。図18(a)は、押し込み前の状態を示し、図18(b)は、押し込み中の状態を示す。
【0097】
図18(a)及び図18(b)に示すように、プランジャーガイドホール111は、例えば曲面加工部113を含む。曲面加工部113は、プランジャーガイドホール111のブランクホルダー120側の部分に設けられている。曲面加工部113は、例えば、プランジャーガイドホール111及びパンチガイドホール121それぞれに向かって凸となる曲面となっている。また、環状突起部131の先端は、プランジャーガイドホール111に向かって凸となる曲面となっている。
【0098】
図18(b)に示すように、縮径部141と環状突起部131との間には、第2クリアランス152が設けられる。第2クリアランス152の幅W2は、ブランク10の紙厚T10(図21(a))と同等、もしくは紙厚T10よりも、小さく設定される(W2≦T10)。これにより、周縁領域10bを“しわ抑え”しつつ、内嵌合部12を、中央領域10cに“しごき成型”を用いて形成できる。
【0099】
なお、本明細書において、“絞り成型”とは、金型(ドローダイ110、ブランクホルダー120、ドローパンチ130、及びプランジャー140)間のクリアランスが、ブランク10の紙厚T10と同等、もしくは紙厚T10より大きく設定され、そのようなクリアランスに、ブランク10が通されて成型されること、と定義する。また、“しごき成型”とは、金型間のクリアランスが、どこか1箇所でも、上記紙厚T10よりも小さく設定され、そのようなクリアランスに、ブランク10が通されて成型されること、と定義する。
【0100】
内嵌合部12を、“絞り成型”、又は“しごき成型”を用いて形成する際には、プランジャー140に、第1成型荷重F1が与えられる。第1成型荷重F1の付与方向は、上昇方向ZUである。第1成型荷重F1の値の1つの例は、例えば、約3kNである。第1成型荷重F1の大きさも、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。第1成型荷重F1は、荷重機(図示せず)からプランジャーに与えられる。荷重機の例としては、弾性体を介して荷重を対象物に与える荷重機を挙げることができる。そのような荷重機の例としては、エアーシリンダーを挙げることができる。エアーシリンダーは、弾性体としてエアーを含む。なお、荷重機は、プランジャー140を、上昇方向ZUや、下降方向ZDに移動させる移動機構としても使用される。
【0101】
また、“しごき成型”を用いて、内嵌合部12を形成しているとき、第1外表面12eには圧縮力Cが加わり、内嵌合面12fには引張力Tが加わる。
【0102】
次に、図15(d)に示すように、ドローパンチ130を、ブランク10へ向かう下降方向ZDに移動させる。下降方向ZDは、上昇方向ZUと反対向きである。これにより、ドローパンチ130は、環状突起部131の先端が、基準位置RPを超えるように下降される。ドローパンチ130は、ブランク10を、プランジャー140とともに、プランジャーガイドホール111の中へ押し込む。押し込み量は、本実施形態では、基準位置RPから約10mmである。なお、押し込み量は、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。
【0103】
このようにして、周縁領域10bを押さえ面122で押さえながら、中央領域10cをプランジャー140とともに、プランジャーガイドホール111の中に押し込む。これにより、周縁領域10bを“しわ抑え”しつつ、外嵌合部14を、中央領域10cに“絞り成型”を用いて形成できる。また、外嵌合部14が形成されるとともに、周縁領域10bには、フランジ部15が形成される。
【0104】
図19は、ドローダイ110、ブランクホルダー120、環状突起部131、及び縮径部141のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。図19は、押し込み後、又は押し込み中の状態を示す。
【0105】
図19に示すように、環状突起部131とプランジャーガイドホール111との間には、第3クリアランス153が設けられる。第3クリアランス153の幅W3は、ブランク10の紙厚T10(図16(a))と同等、もしくは紙厚T10よりも、小さく設定される(W3≦T10)。これにより、周縁領域10bを“しわ抑え”しつつ、外嵌合部14を、中央領域10cに“しごき成型”を用いて形成できる。
【0106】
外嵌合部14を、“絞り成型”、又は“しごき成型”を用いて形成する際には、ドローパンチ130に、第2成型荷重F2が与えられる。第2成型荷重F2の付与方向は、下降方向ZDである。第2成型荷重F2の付与方向は、第1成型荷重F1の付与方向と反対向きである。第2成型荷重F2の値の1つの例は、例えば、約6.5kNである。第2成型荷重F2の大きさも、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。第2成型荷重F2は、荷重機(図示せず)からプランジャーに与えられる。荷重機の例としては、機械的に荷重を対象物に与えることが可能な荷重機を挙げることができる。そのような荷重機の例としては、サーボプレスを挙げることができる。サーボプレスは、サーボモータを含む。なお、荷重機は、ドローパンチ130を、下降方向ZDや、上昇方向ZUに移動させる移動機構としても使用される。また、サーボモータを用いると、例えば、ドローパンチ130を、2段階で精密に下降制御することができる。第1段階は、基準位置RPまでの下降であり、第2段階は、基準位置RPを超え最終下降位置までのより精密な下降である。サーボモータによれば、ドローパンチ130を、最終下降位置で確実に停止させ、保持できる。
【0107】
また、“しごき成型”を用いて、外嵌合部14を形成しているとき、第2外表面14eには圧縮力Cが加わり、外嵌合面14fには引張力Tが加わる。
【0108】
さらに、“しごき成型”を用いて、外嵌合部14を形成しているとき、第1外表面12eには圧縮力Cが加わり、内嵌合面12fには引張力Tが加わる。
【0109】
第2成型荷重F2の大きさは、第1成型荷重F1よりも大きくしてもよい。この場合、プランジャー140がエアーシリンダー等の弾性体を含む移動機構もしくは荷重機で支えられていると、第2成型荷重F2と第1成型荷重F1との差分で、プランジャー140を押し下げることができる。このため、型締めした状態(中央領域10cをドローパンチ130とプランジャー140とで挟み込んだ状態)を維持したまま、環状突起部131の先端をプランジャーガイドホール111の中に押し込むことができる。しかも、プランジャー140は、ドローパンチ130で押し下げられるため、プランジャー140の位置制御が不要になる、という利点を得ることもできる。
【0110】
外嵌合部14を形成する際、載置面112と押さえ面122との間に周縁領域10bを残しながら、中央領域10cを、プランジャー140とともに、プランジャーガイドホール111の中に押し込む。これにより、紙蓋1の周縁領域10bに、フランジ部15を形成することができる。紙蓋1がフランジ部15を備えていると、紙蓋1の取り外し工程において、以下のような紙蓋1の取り外しを行うことができる。
【0111】
図16(a)に示すように、フランジ部15を押さえ面122で押さえながら、プランジャー140を、下降方向ZDに移動させる。これにより、プランジャー140が、紙蓋1から離脱される。ドローパンチ130は、最終下降位置で保持されている。このため、ドローパンチ130は、中央領域10cと、例えば接したままである。ドローパンチ130を最終下降位置で保持しておけば、プランジャー140を紙蓋1から離脱させても、紙蓋1が落下することはない。
【0112】
次に、図16(b)に示すように、ドローパンチ130を最終下降位置で保持しながら、ブランクホルダー120を、上昇方向ZUに移動させる。これにより、ブランクホルダー120が、紙蓋1から離脱される。次いで、ブランクホルダー120を、フランジ部15と押さえ面122との間に第4クリアランス154を設けて待機させる。
【0113】
次に、図16(c)に示すように、ドローパンチ130を、上昇方向ZUに移動させる。このとき、環状突起部131は、環状凹部16に食い込んでいることが多い。環状突起部131が環状凹部16に食い込んでいると、紙蓋1は、ドローパンチ130にくっ付いた状態で上昇方向ZUに移動する。
【0114】
次に、図16(d)に示すように、ドローパンチ130を、上昇方向ZUにさらに移動させる。ドローパンチ130を、上昇方向ZUにさらに移動させることで、フランジ部15を、押さえ面122と再接触させることができる。環状突起部131は、フランジ部15が押さえ面122によって支持されながら、環状凹部16から抜き出されていく。やがて、紙蓋1は、ドローパンチ130から離脱する。これにより、紙蓋1は、加工機100から取り外すことが可能な状態となる。
【0115】
このように、外嵌合部14を、載置面112と押さえ面122との間に周縁領域10bを残しながら、中央領域10cに形成することで、紙蓋1に、フランジ部15を形成することができる。また、ブランクホルダー120を、フランジ部15と押さえ面122との間に第4クリアランス154を設けて待機させ、フランジ部15を、押さえ面122と再接触させることで、たとえ、環状突起部131が環状凹部16に食い込んでいたとしても、紙蓋1をドローパンチ130から簡単に取り外すことができる。ドローパンチ130には、例えば、紙蓋1を離脱させるためのノックアウト等の取り外し機構を設ける必要もない。
【0116】
このような製造方法に従うことにより、紙蓋1に、天板部11と、内嵌合部12と、頂部13と、外嵌合部14と、フランジ部15と、を形成することができる。
【0117】
図20(a)及び図20(b)は、切込みが形成されたブランクの一例を示す模式平面図である。
【0118】
図20(a)に示すように、切込み19は、ブランク10をドローダイ110の載置面112上に載置する前に、例えば、ブランク10に予め形成しておく。このように切込み19を、例えば、ブランク10に形成した状態でブランク10を成型加工し、図20(b)に示すように、ブランク10に、天板部11、天板部11の外側周囲に内嵌合部12、及び内嵌合部12の外側周囲に外嵌合部14の順に成型する。図20(b)に示す例では、天板部11、天板部11の外側周囲に順次、内嵌合部12、頂部13、外嵌合部14、及びフランジ部15のそれぞれを成型する。このように、切込み19によれば、切込み19が、内嵌合部12を成型する前に天板部11に形成されたとしても、天板部11の破断が抑制される。したがって、切込み19を有する天板部11、内嵌合部12、及び外嵌合部14のそれぞれを備えた紙蓋を、天板部11を破断させることなく形成することができる。
【0119】
また、図20(a)及び図20(b)に示すように、例えば、扁平なブランク10に対して切込み19を形成してから、ブランク10を成型加工し、内嵌合部12、頂部13、外嵌合部14、及びフランジ部15のような凹凸を形成する。これにより、例えば、内嵌合部12、頂部13、外嵌合部14、及びフランジ部15のような凹凸を持つ紙蓋に対して切込み19を形成する場合と比較して、切込み19を形成しやすくでき、紙蓋の生産性を向上させることができる。
【0120】
ただし、切込み19は、ブランク10に、天板部11と、内嵌合部12と、頂部13と、外嵌合部14と、フランジ部15と、を成型した後に、天板部11に形成することも可能である。
【0121】
以下、紙蓋1の一例を、さらに詳細に説明する。
【0122】
<フランジ部>
【0123】
図21(a)は、第4参考例に係る紙蓋を示す模式断面図である。図21(b)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式断面図である。図21(a)及び図21(b)に示す断面は、例えば、図2に示した断面に相当する。
【0124】
図21(a)に示すように、第4参考例に係る紙蓋1cでは、外嵌合部14が、紙蓋1の末端10aを含む。即ち、紙蓋1にはフランジ部15がない。末端10aは自由端である。このため、外嵌合部14には残存応力により元の形状へ戻ろうとする力が働くので、外に開きやすい。したがって、紙蓋1cは、紙容器2から外れやすくなる。
【0125】
図21(b)に示すように、一実施形態に係る紙蓋1では、フランジ部15があり、フランジ部15が末端10aを含む。末端10aは、参考例と同様に自由端である。しかし、紙蓋1では、外嵌合部14からフランジ部15にかけて、円周方向全てに肩部18が存在する。肩部18は、例えば絞られており、縮んでいる。縮んだ肩部18には、そのままの形状で留まる力が働くので、外嵌合部14が元の形状へ戻ろうとする力に対する抑制力となる。また、紙蓋1のフランジ部15にはしわ抑えの効果により、圧縮されてさらに潰された、後述するしわが入っている。このしわにより、フランジ部15には、そのままの形状で留まる力が働く。さらに、フランジ部15は、円周方向全てに設けられているので、円周全てを固定する力となり、外嵌合部14が戻ろうとする力に対する抑制力として働く。したがって、紙蓋1は、外に開きにくく、紙蓋1cに比較して、紙容器2から外れにくくなる。
【0126】
また、紙容器2が環状凹部16に嵌合され、外嵌合部14が、一旦外に開いても、絞られた肩部18は、成型後の形に復帰しようとする性質が、紙蓋1cの末端10aよりも強い。このため、紙蓋1は、紙蓋1cと比較して、紙容器2との着脱を繰り返しても嵌合力が落ちにくい。
【0127】
紙蓋1によれば、内嵌合部12及び外嵌合部14のそれぞれを備えているので、内嵌合部12のみ、又は外嵌合部14のみを備えた紙蓋と比較して、紙容器2と、より強固に嵌合させることが可能である。そして、紙蓋1は、フランジ部15が備えられているので、フランジ部15がない紙蓋と比較して、紙容器2から外れにくくなる。
【0128】
<傾斜部形状>
図22は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式断面図である。図22に示す断面は、例えば、図2に示した断面に相当する。
【0129】
図22に示すように、一実施形態に係る紙蓋1では、少なくとも外嵌合部14の一部が、内嵌合部12側に向かって傾斜している傾斜部14aを有する。紙蓋1では、傾斜部14aが、外嵌合部14の全周にわたって設けられている。
【0130】
図23(a)~図23(c)は、一実施形態に係る紙蓋の一例を、製造工程順に示す模式断面図である。
【0131】
図23(a)に示すように、内嵌合部12だけを“絞り成型”すると、金型から外した後、ブランク10のスカート部分(例えば、周縁領域10bに対応する)は、残存応力により、通常、外に開く(元の扁平な形状に戻ろうとする)。
【0132】
次に、図23(b)に示すように、内嵌合部12と外嵌合部14とを成型すると、金型から外した後は、内嵌合部12が外に開こうとするため、外嵌合部14の裾14bは、相対的に頂部13の下方に入る。ここで、フランジ部15が無いと、外嵌合部14は、図21(a)に示した形状に戻ろうとする。このため、一旦、頂部13の下方に入った裾14bは、頂部13の下方から出ていく。裾14bが、頂部13の下方に入った状態は、維持できない。
【0133】
そこで、図23(c)に示すように、裾14bをフランジ形状に残し、フランジ部15を紙蓋1に形成する。フランジ部15にはしわ抑えの効果により、圧縮されてさらに潰されたしわが入っている。このしわにより、フランジ部15にはそのままの形状で留まる力が働く。さらに、フランジ部15は、円周方向全てに設けられているため、円周全てを固定する力となるので、外嵌合部14が、図21(a)に示した形状に戻ることが抑制される。しかし、外嵌合部14の上部14cには、外に開く力を抑制する力が働いていない。このため、上部14cは、外に開く。反対に、外嵌合部14の下部14dには、外に開く力を抑制する力が、フランジ部15によって働く。このため、下部14dは外に開きにくくなる。この結果、裾14bが、頂部13の下方に入った状態が維持される。これにより、外嵌合部14に、傾斜部14aを付与することができる。
【0134】
このような紙蓋1によれば、外嵌合部14が、傾斜部14aを有するので、傾斜部14aがない紙蓋と比較して、紙蓋1を紙容器2へ、さらに強固に嵌合させることができる。したがって、紙蓋1を、紙容器2から、さらに外れにくくすることができる。
【0135】
また、傾斜部14aは、内嵌合部12側に向かって凸となる曲面からなる。このような紙蓋1によれば、傾斜部14aの曲面が、人の指先にフィットするので、紙蓋1を持ちやすくなる。したがって、紙蓋1が紙容器2と強固に嵌合されていたとしても、紙蓋1を紙容器2から取り外しやすい、という利点を、さらに得ることができる。
【0136】
また、傾斜部14aを外嵌合部14の全周にわたって設けることで、傾斜部14aが外嵌合部14の全周にない紙蓋と比較して、紙蓋1と紙容器2との嵌合力を、さらに高めることができる。
【0137】
また、図22に示すように、一実施形態に係る紙蓋1では、第1方向X1と直交する第6方向Z6において、天板部11の位置P11は、頂部13の位置P13とフランジ部15の位置P15との間にある。
【0138】
このような紙蓋1によれば、紙蓋1を、例えばテーブル3の上に置いたとしても、容器面11bは、テーブル面31と接触しない。このような紙蓋1は、衛生的である。
【0139】
また、頂部13は、第2方向Z2に向かって凸となる曲面を含む。このような頂部13は、カール部22が環状凹部16に進入した後、外嵌合部14をカール部22(図2参照)に押さえつける。このため、紙蓋1を紙容器2に、より強固に嵌合させることが可能となる。
【0140】
<内嵌合部12の高さと、外嵌合部14の外径との関係>
図24(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式断面図である。図24(b)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例に嵌合可能な紙容器を示す模式断面図である。
【0141】
紙容器2に収容する内容物が液体とし、液体を収容した紙容器2を、紙蓋1で蓋をした、と仮定する。この仮定において、紙容器2が、例えば倒れたとき、内嵌合部12の深さが浅いと、液体が漏れ出る可能性がある。そこで、発明者らは、紙容器2が倒れた、もしくは倒れた状態で長時間放置されたとしても、液体が漏れ出にくくなる内嵌合部12の高さを調べた。
【0142】
図24(a)及び図24(b)に示すように、内嵌合部12の高さHは、天板部11の天面11aから頂部13の頂点までの高さHとした。なお、本来ならば、内嵌合部12の高さとしては、実際にシールとして機能する部分の高さ(内嵌合部12が容器部内周面21に接触する最深接触箇所から、カール部22の頂点)が選ばれるべきである。しかし、紙蓋1から判断できるように、内嵌合部12の高さは、便宜上、上記の通りとした。高さHは、実際に上記シールとして機能する部分の高さと差異はあるが、差異は僅かであり、実質的に等しい。
【0143】
図25は、テーパー角θと割合Pとの関係を示す図である。テーパー角θは、紙容器2の側面が、外に開く角度である。テーパー角θは、例えば、紙容器2の容器部底板23に対する垂線24からの傾き角である。割合Pは、上記高さHの、外嵌合部14の外径Dに対する割合である(P=(H/D)×100%)。
【0144】
図25に示すように、発明者らは、テーパー角θごとに、紙蓋1の漏れ試験を実施した。内容物は、コーヒー(温度5℃±2℃)である。紙容器2の傾け角度は、90°である(横倒し)。内容物を収容した紙容器2を90°傾けた状態で、60sec保持した。
【0145】
漏れ試験において、内容物の状態は、以下の3つをとる。
Poor: 漏れ出る
Good: 環状凹部16内に僅かな滲みが認められるが、漏れ出ることはない
Excellent: 滲み及び漏れのいずれもなし
紙蓋1は、状態“Good”又は状態“Excellent”となると、紙容器2が倒れても内容物の漏れを抑制でき、紙蓋1が、より実用的なものとなる。
【0146】
図25中に示すプロット点(“◇”で表示)は、状態“Good”となったときの割合Pである。
テーパー角θが約4°15´のとき、割合Pが約23.8%で状態“Good”となった(“i”参照)。
テーパー角θが約5°のとき、割合Pが約17.1%で状態“Good”となった(“ii”参照)。
テーパー角θが約6°15´のとき、割合Pが約13.1%で状態“Good”となった(“iii”参照)。
テーパー角θが約7°30´のとき、割合Pが約7.7%で状態“Good”となった(“iv”参照)。
【0147】
なお、漏れ試験は、60secという長い時間をかけて行われている。このため、実使用においては、割合Pは、上記値から、例えば、約-2%程度までは許容可能であろう。
【0148】
漏れ試験の結果から、高さHの、外嵌合部14の外径Dに対する割合P(P=(H/D)×100%)は、少なくとも約6%あれば、紙容器2が倒れても内容物の漏れを抑制することが可能である。
【0149】
このように、割合Pが、例えば、少なくとも6パーセントとなる紙蓋1を製造しておき、この紙蓋1にあった紙容器2が選ばれればよい。
【0150】
割合Pは、上記の値以上とすることも可能である。例えば、テーパー角θが約7°30´のとき、割合Pを約11.6%へ高めると、内容物の状態を、状態“Good”から状態“Excellent”にできる(“v”参照)。状態“Excellent”となれば、紙容器2が倒れても、漏れ及び滲みのそれぞれを抑制することが可能な紙蓋1を得ることができる。割合Pの上限は常識的な値が選ばれればよい。一例を挙げるなら、割合Pの上限は、約100%であろう。この場合、高さHは外径Dとほぼ等しい。
【0151】
<紙蓋1と紙容器2との組み合わせ>
また、漏れ試験からは、テーパー角θが0°に近づくにつれ、状態“Poor”から状態“Good”にできる割合Pが高まる傾向が確認された。紙蓋1と紙容器2との組み合わせを最適化するには、例えば、以下のようにするとよい。
【0152】
紙蓋1に嵌合される容器、例えば紙容器2のテーパー角をθとしたとき、割合P(P=(H/D)×100)の値は、下記(1)式
P=-4θ+36 …(1)
から導かれる値以上の値が選ばれる。
【0153】
このように、紙容器2のテーパー角θに応じて、紙蓋1の割合Pを選ぶことで、紙容器2に最適な紙蓋1を選ぶことができる。
【0154】
<紙容器2の口外径D22と外嵌合部14の外径Dとの関係>
紙容器2の口外径D22は、外嵌合部14の外径Dよりも大きくてもよい。この場合、フランジ部15の外径D15は、口外径D22よりも大きいことが好ましい。
【0155】
さらに、フランジ部15は、平面、例えば、テーブル3上に置いたとき、フランジ部15がテーブル面31から起立するようにすることが好ましい(図19参照)。即ち、図22に示すように、フランジ部15が延びる第5方向X5は、紙蓋1の末端10aどうしを接続する仮想線10dに対して交差、かつ、紙容器2に向かう方向に向く。このようにすれば、たとえ、口外径D22が外径Dよりも大きくても、フランジ部15が、カール部22を、環状凹部16の中へ誘い込む。フランジ部15は、カール部22のガイドとして役立つ。このように、外径Dよりも大きい口外径D22を持つ紙容器2を、外嵌合部14で嵌合することで、紙蓋1の外嵌合力を、より高めることができる。
【0156】
さらに、頂部13は、第2方向Z2に向かって凸となる曲面を含むことが好ましい。このような曲面を頂部13が含むことで、カール部22が、フランジ部15によって環状凹部16の中へ誘い込まれる際、外嵌合部14が外に開きやすくなる。このため、紙蓋1は、紙容器2に取り付けやすくなる。
【0157】
しかも、第2方向Z2に向かって凸となる曲面を含む頂部13は、カール部22が、環状凹部16に進入した後、外嵌合部14をカール部22に押さえつける。このため、紙蓋1を紙容器2に、より強固に嵌合させることもできる。
【0158】
<紙蓋のしわ>
【0159】
図26(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式斜視図である。図26(b)は、図26(a)に示す模式斜視図の一部を切り欠いて示す模式斜視図である。
【0160】
図26(a)及び図26(b)に示すように、紙蓋1の内嵌合部12の内面は、天板部11(詳細には、内嵌合部12と天板部11との境界(変曲点P1))から第2方向Z2に向かって少なくとも3mm以内の範囲においては、しわ17がなく、3mmを超えるとしわ17がある。これにより、紙容器2の容器部内周面21と接する内嵌合部12の内面からは、しわ17がなくなる。このため、紙蓋1を紙容器2に嵌合させたとき、内容物の漏れの原因となる隙間が、紙容器2の容器部内周面21と、内嵌合部12の内面との間に発生しなくなる。したがって、内容物の漏れを抑制できる。他方、内嵌合部12の外面には、しわ17が存在している。
【0161】
また、頂部13には、内面及び外面ともに、細かいしわ17が多数存在している。これにより、外嵌合部14を成型する際に、ブランク10を第4方向Z4(第2方向Z2と反対の方向)へ引っ張っても、頂部13の外面のしわ17が伸び代となり、頂部13でブランク10が破れることなく、紙蓋1を成型することが可能になる。
【0162】
また、外嵌合部14には、内面及び外面ともに、細かいしわ17が多数存在している。
【0163】
また、フランジ部15には、内面及び外面ともに、細かいしわ17が多数存在している。
【0164】
図27(a)は、フランジ部15の末端を示す図面代用写真である。図27(b)は、図27(a)に示す図面代用写真の撮影方向を示す模式断面図である。図28(a)は、フランジ部15の外面を示す図面代用写真である。図28(b)は、図28(a)に示す図面代用写真の撮影方向を示す模式断面図である。
【0165】
図27(a)には、図27(b)に示す撮影方向SDから撮影したフランジ部15の末端10aの様子が示されている。フランジ部15では、外面側と内面側とで異なる位置にしわ17が入っている。つまり、外面側の隣り合う2つのしわ17の間において、内面側にしわ17が1つ入っており、内面側に隣り合う2つのしわ17の間において、外面側にしわ17が1つ入っている。
【0166】
また、図28(a)には、図28(b)に示す撮影方向SDから撮影したフランジ部15の外面の様子が示されている。紙蓋1の末端10aは、径方向に凸凹した形状となっている。これにより、末端10aをなぞっても、手や指を切ることがなく、安全な紙蓋1を提供することができる。
【0167】
図29(a)は、図1(b)中のXXIXA-XXIXA線に沿う模式断面図である。図29(b)は、図1(b)中のXXIXB-XXIXB線に沿う模式断面図である。なお、図1(b)中のXXIXA-XXIXA線及びXXIXB-XXIXB線は、例えば、紙蓋1を水平面に沿って切断する切断線である。図29(a)は、変曲点P1から第2方向Z2に3mmを超えた箇所の断面を示し、図29(b)は、3mm以内の箇所の断面を示す。
【0168】
図29(a)及び図29(b)に示すように、内嵌合部12は、第1外表面12e、及び第1外表面12eとは反対側の面にある内嵌合面12fを有する。外嵌合部14は、第2外表面14e及び第2外表面14eとは反対側の面にある外嵌合面14fを有する。紙蓋1を水平面に沿って切断した断面において、第1外表面12e、第2外表面14e、及び外嵌合面14fのそれぞれには、しわ17がある。内嵌合面12fには、変曲点P1から少なくとも3mm以内の範囲において、しわ17がなく(図29(b))、3mmを超えるとしわ17がある(図29(a))。
【0169】
また、図26(a)及び図26(b)に示したように、頂部13は、第1外表面12e及び第2外表面14eのそれぞれと連続した第3外表面13eを有する。紙蓋1は、第1外表面12eから第2外表面14eにかけて、第3外表面13eを跨ぐ複数のしわ17を、さらに含む。頂部13は、内嵌合面12f及び外嵌合面14fのそれぞれと連続した頂部内面(図示せず)を有し、紙蓋1は、第3外表面13eと同様に、頂部内面を跨ぐ複数のしわ17を、さらに含む。
【0170】
しわ17は、紙蓋1を製造する際、例えば、第1外表面12e、第2外表面14e、及び第3外表面13eに圧縮力を与えることで形成することができる。このようなしわ17は、第1外表面12e、第2外表面14e、及び第3外表面13eのそれぞれに、例えば、ランダムに発生する。
【0171】
しかも、紙蓋1を製造する際、内嵌合部12から、頂部13、外嵌合部14と順番に成型することで、内嵌合面12fの天板部11から少なくとも3mm以内、換言すると、内嵌合面12fのうち、紙容器2の容器部内周面21と当接する箇所には、しわ17を発生させないようにできる。
【0172】
このような紙蓋1によれば、内嵌合面12fの容器部内周面21と当接する箇所では、しわ17が発生していないため、内嵌合面12fが、第1外表面12e及び第2外表面14e等と同じようにしわ17が発生した場合に比較して、紙容器2が倒れた際に、内容物が漏れにくくなる、という利点を得ることができる。
【0173】
図30(a)は紙蓋1を積み重ねた状態を示す模式斜視図である。図30(b)は紙蓋1を積み重ねたときの内嵌合部12及び外嵌合部14のそれぞれを拡大して示す模式断面図である。
【0174】
図30(a)及び図30(b)に示すように、紙蓋1を積み重ねたとき、第1外表面12eと内嵌合面12fとの間に、しわ17によって隙間が生じる。このため、第1外表面12e及び内嵌合面12fのそれぞれにしわ17がない紙蓋1に比較して、第1外表面12eと内嵌合面12fとの接触割合を少なくすることができる。したがって、紙蓋1を積み重ねても、接触した紙蓋1どうしが嵌まり込んでしまうことを抑制できる。
【0175】
第2外表面14eと外嵌合面14fとの間にも、しわ17による隙間を、さらに生じさせると、紙蓋1どうしが嵌まり込みを、より強力に抑制することができる。
【0176】
このような一実施形態に係る紙蓋1によれば、紙容器2が倒れても内容物が漏れにくく、紙蓋1を積み重ねても紙蓋1どうしの嵌まり込みを抑制することが可能である、という利点を得ることができる。
【0177】
紙蓋1は、例えば、紙容器2の蓋として使用される。紙容器2には、例えば、液体が収容されることがある。このため、紙蓋1に使用される紙としては、撥水性の紙、又は表面が撥水加工された紙がよい。また、紙の面に樹脂を積層したラミネート紙や、樹脂をコーティングしたコート紙等でもよい。ただし、紙蓋1に使用される紙は、消費者のニーズにあわせて、適宜変更することができる。したがって、紙蓋1に使用される紙は、撥水性を持つ紙、又は表面が撥水加工された紙に限られるものではない。
【0178】
このような一実施形態に係る発明によれば、紙蓋1の天板部11に、設計された形状を逸脱しにくい切込み19を持つ紙蓋1、及び切込み19を紙蓋1の天板部11に、この天板部11を破断させることなく形成することが可能な紙蓋1の製造方法を提供できる。
【0179】
以上、この発明の一実施形態を説明したが、上記一実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一のものでもない。また、この発明は、上記一実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記一実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0180】
1:紙蓋
10:ブランク
10a:末端
10b:周縁領域
10c:中央領域
10d:仮想線
10e:角部
11:天板部
11a:天面
11b:容器面
11c:切れ目線で囲まれた部分
11d:第1端点と第2端点との間に残る部分
12:内嵌合部
12e:第1外表面
12f:内嵌合面
13:頂部
13e:第3外表面
14:外嵌合部
14a:傾斜部
14b:裾
14c:外嵌合部の上部
14d:外嵌合部の下部
14e:第2外表面
14f:外嵌合面
15:フランジ部
16:環状凹部
17:しわ
18:肩部
19:切込み(第1例)
19b~19f:切込み(第2例~第6例)
191:第1端点
192:第2端点
193:切れ目線
19x:十字形状の切込み(第1参考例)
19u:U字形状の切込み(第2参考例)
19v:V字形状の切込み(第3参考例)
1a~1c:紙蓋(第1参考例、第2参考例、第4参考例)
2:紙容器
21:容器部内周面
22:カール部外周面
23:容器部底板
3:テーブル
31:テーブル面
4:紙目
41a:1つの方向に裂け拡がった穴
41b:3つの方向に裂け拡がった穴
51:第1直線部
52:第2直線部
53:曲線部
54:第3直線部
55:第4直線部
100:加工機
110:ドローダイ
111:プランジャーガイドホール
112:載置面
113:曲面加工部
120:ブランクホルダー
121:パンチガイドホール
122:押さえ面
130:ドローパンチ
131:環状突起部
131a:曲面
132:パンチ面
133:窪み
140:プランジャー
141:縮径部
142:基径部
151:第1クリアランス
152:第2クリアランス
153:第3クリアランス
OEP:周縁部
X1:第1方向
Z2:第2方向
X3:第3方向
Z4:第4方向
X5:第5方向
Z6:第6方向
F1:第1成型荷重
F2:第2成型荷重
ZU:上昇方向
ZD:下降方向
C:圧縮力
T:引張力
D1:縮径部141の直径
D2:基径部142の直径
T10:紙厚
W1:第1クリアランスの幅
W2:第2クリアランスの幅
W3:第3クリアランスの幅
RP:基準位置
P11:天板部の位置
P13:頂部の位置
P15:フランジ部の位置
P21:第1変曲点(切れ目線)
P22:第2変曲点(切れ目線)
P23:第3変曲点(切れ目線)
H:天面11aから頂点13aまでの高さ
D:外嵌合部14の外径
D22:紙容器2の口外径
D15:フランジ部15の外径
P:割合
SD:撮影方向
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