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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電力供給システムおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20221101BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221101BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20221101BHJP
   H02J 1/10 20060101ALI20221101BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20221101BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221101BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221101BHJP
   B60L 53/00 20190101ALI20221101BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
H02J7/00 P
H02J1/10
H01M10/42 A
H01M10/44 P
H01M10/48 Z
B60L53/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018238471
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020102916
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】辻川 知伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 憲光
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 茂道
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142406(JP,A)
【文献】特開2011-166972(JP,A)
【文献】特開2014-042417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 1/10
H01M 10/42
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地に設けられ負荷に対して放電する定置用蓄電池と、
移動するための走行用蓄電池を備えた移動体と、
前記移動体が前記基地に帰着した際に、前記走行用蓄電池を前記定置用蓄電池と並列に接続する直流連系の充放電器と、
を備え、前記定置用蓄電池が前記負荷に対して放電する際に、前記充放電器を介して前記走行用蓄電池を放電させ、且つ、前記走行用蓄電池の残容量が任意の値となるように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、
ことを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記負荷に対して放電する際に、前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池の容量%が同等に変化するように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
交流電力を直流に変換して前記負荷と前記定置用蓄電池と前記充放電器に給電する整流器を備え、
外部からの要求時に、前記整流器の出力電圧を下げて前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池を前記負荷に対して放電させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
負荷に対して放電する定置用蓄電池を基地に設け、
移動するための走行用蓄電池を備えた移動体が前記基地に帰着した際に、直流連系の充放電器を介して前記走行用蓄電池を前記定置用蓄電池と並列に接続し、
前記定置用蓄電池が前記負荷に対して放電する際に、前記充放電器を介して前記走行用蓄電池を放電させ、且つ、前記走行用蓄電池の残容量が任意の値となるように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、
ことを特徴とする電力供給方法。
【請求項5】
前記負荷に対して放電する際に、前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池の容量%が同等に変化するように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、
ことを特徴とする請求項に記載の電力供給方法。
【請求項6】
交流電力を整流器で直流に変換して、前記負荷と前記定置用蓄電池と前記充放電器に給電し、
外部からの要求時に、前記整流器の出力電圧を下げて前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池を前記負荷に対して放電させる、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停電時等に負荷に電力を供給する電力供給システムおよび電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(移動体)とビルとの間で電力を相互供給する技術(V2B、Vehicle to Building)が開発され、商用電源の停電時に電気自動車の蓄電池(走行用蓄電池)を放電させて、負荷に電力を供給する装置も知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような装置では、従来、走行用蓄電池を交流系統に連系していた。また、通信設備などにおいては、バックアップ電源として大容量の定置用蓄電池を設置して、停電時に所定時間電力を負荷に供給できるようにしている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-158084号公報
【文献】特開2017-75922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停電時に定置用蓄電池だけではなく走行用蓄電池も放電させることができれば、より長いバックアップ時間を確保することができる。そこで、従来のように、走行用蓄電池を交流系統に連系すると、図14に示すような連系となる。すなわち、商用電源101にトランス102を介して整流器(AC/DCコンバータ)103が接続され、この整流器103に負荷104と定置用蓄電池105とが並列に接続される。そして、トランス102に交流連系の充放電器(AC/DCコンバータ)106が接続され、この充放電器106で電気自動車107の走行用蓄電池107aを充放電させる。
【0005】
このような連系では、図14(a)に示すように、充放電器106(走行用蓄電池107a)の容量(P2kW)が負荷104の容量(P1kW)以上であれば、停電時に走行用蓄電池107aから負荷104に放電・電力供給することができる。しかし、図14(b)に示すように、充放電器106の容量(P2kW)が負荷104の容量(P1kW)未満の場合、走行用蓄電池107aから負荷104に放電・電力供給することができない。このため、走行用蓄電池107aから負荷104に電力供給できるようにするには、負荷104の容量(P1kW)を小さくしなければならず、負荷104の使用に制限がかかってしまう。
【0006】
このような問題を解決するために、図15に示すように、負荷104の容量(P1kW)よりも大容量(P3kW)のUPSなどのバックアップ電源108を、充放電器106と並列に設けることが考えられる。すなわち、AC/DCコンバータ108aと大容量の蓄電池108bを備えたバックアップ電源108を、トランス102に接続する。しかしながら、UPSなどのバックアップ電源108を設置するには多大な費用を要する。
【0007】
また、図16に示すように、複数台(n台)の充放電器106を並列に配設し、全充放電器106(全走行用蓄電池107a)の容量(n×P2kW)が負荷104の容量(P1kW)以上となるようにすることが考えられる。しかしながら、この方法では、n台の電気自動車107が充放電器106に接続されなければ、負荷104に放電・電力供給することができない。また、従来の充放電器106は個別に走行用蓄電池107aを放電させるだけであるため、複数台の充放電器106が連系して負荷104に放電・電力供給することができない。
【0008】
そこでこの発明は、移動体の走行用蓄電池を利用して負荷に対して適正に電力供給可能な、電力供給システムおよび電力供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、基地に設けられ負荷に対して放電する定置用蓄電池と、移動するための走行用蓄電池を備えた移動体と、前記移動体が前記基地に帰着した際に、前記走行用蓄電池を前記定置用蓄電池と並列に接続する直流連系の充放電器と、を備え、前記定置用蓄電池が前記負荷に対して放電する際に、前記充放電器を介して前記走行用蓄電池を放電させ、且つ、前記走行用蓄電池の残容量が任意の値となるように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、ことを特徴とする電力供給システムである。
【0010】
この発明によれば、移動体が基地に帰着すると、直流連系の充放電器を介して走行用蓄電池が定置用蓄電池と並列に接続され、例えば、停電が発生して定置用蓄電池が負荷に対して放電すると、充放電器を介して走行用蓄電池が負荷に対して放電され、且つ、走行用蓄電池の残容量が任意の値となるように、走行用蓄電池が接続された充放電器の放電出力電圧が調整される
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力供給システムにおいて、前記負荷に対して放電する際に、前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池の容量%が同等に変化するように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電力供給システムにおいて、交流電力を直流に変換して前記負荷と前記定置用蓄電池と前記充放電器に給電する整流器を備え、外部からの要求時に、前記整流器の出力電圧を下げて前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池を前記負荷に対して放電させる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、負荷に対して放電する定置用蓄電池を基地に設け、移動するための走行用蓄電池を備えた移動体が前記基地に帰着した際に、直流連系の充放電器を介して前記走行用蓄電池を前記定置用蓄電池と並列に接続し、前記定置用蓄電池が前記負荷に対して放電する際に、前記充放電器を介して前記走行用蓄電池を放電させ、且つ、前記走行用蓄電池の残容量が任意の値となるように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、ことを特徴とする電力供給方法である。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電力供給方法において、前記負荷に対して放電する際に、前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池の容量%が同等に変化するように、前記走行用蓄電池が接続された前記充放電器の放電出力電圧を調整する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項4又は5に記載の電力供給方法において、交流電力を整流器で直流に変換して、前記負荷と前記定置用蓄電池と前記充放電器に給電し、外部からの要求時に、前記整流器の出力電圧を下げて前記定置用蓄電池と前記走行用蓄電池を前記負荷に対して放電させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1および請求項に記載の発明によれば、移動体が基地に帰着すると、走行用蓄電池が定置用蓄電池と並列に接続されて、定置用蓄電池が負荷に対して放電する際に、走行用蓄電池も放電されるため、負荷に対する給電時間をより長く確保することができる。また、直流連系の充放電器を介して走行用蓄電池が定置用蓄電池と並列に接続されるため、走行用蓄電池(充放電器)の容量の大きさに関わらず、走行用蓄電池から負荷に放電・電力供給することができる。このように、移動体の走行用蓄電池を利用して負荷に対して適正に電力供給することが可能となる。さらに、走行用蓄電池の残容量が任意の値となるように、充放電器の放電出力電圧が調整される。つまり、走行用蓄電池からの放電があらかじめ設定された値までとなるため、走行用蓄電池の容量を一定量残存させて、必要なときに移動体を移動させることが可能となる。
【0019】
請求項2および請求項に記載の発明によれば、定置用蓄電池と走行用蓄電池の容量%が同等に変化するように、充放電器の放電出力電圧が調整される。つまり、両蓄電池が同等に電圧変化するように放電されるため、走行用蓄電池の過放電などを防止して負荷に適正に電力供給することが可能となる。
【0021】
請求項および請求項に記載の発明によれば、外部から要求があると、整流器の出力電圧が下げられて定置用蓄電池と走行用蓄電池が負荷に対して放電される。このため、例えば、商用電源の需要が高い場合に、整流器の出力電圧を下げて定置用蓄電池と走行用蓄電池から負荷に電力供給することで、電力需要のピークカットを行ったり、ダックカーブ問題を回避したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施の形態に係る電力供給システムを示す概略構成図である。
図2図1の電力供給システムにおいて電気自動車が帰社していない平常状態を示す図である。
図3図2の状態における各設備の電圧値と電力値を示す図である。
図4図1の電力供給システムにおいて電気自動車が帰社した平常状態を示す図である。
図5図4の状態における各設備の電圧値と電力値を示す図である。
図6図1の電力供給システムにおいて帰社した電気自動車がなく電力需要調整を行っている状態を示す図である。
図7図6の状態における各設備の電圧値と電力値を示す図である。
図8図1の電力供給システムにおいて帰社した電気自動車があって電力需要調整を行っている状態を示す図である。
図9図8の状態における各設備の電圧値と電力値を示す図である。
図10図1の電力供給システムにおいて帰社した電気自動車がなく停電している状態を示す図である。
図11図10の状態における各設備の電圧値と電力値を示す図である。
図12図1の電力供給システムにおいて帰社した電気自動車があって停電している状態を示す図である。
図13図12の状態における各設備の電圧値と電力値を示す図である。
図14】従来、走行用蓄電池を交流連系する場合に、走行用蓄電池から負荷に電力供給できる場合(a)と、電力供給できない場合(b)とを示す図である。
図15】従来、走行用蓄電池を交流連系する場合に、UPSなどを配置した状態を示す図である。
図16】従来、走行用蓄電池を交流連系する場合に、複数台の走行用蓄電池を配置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
図1は、この発明の実施の形態に係る電力供給システム1を示す概略構成図である。この電力供給システム1は、商用電源101の停電時等に負荷104に電力を供給可能なシステムであり、主として、通信事業所(基地)Bに設けられた整流器103と、通信機器などの負荷104と、定置用蓄電池2と、複数の充放電器3と、複数の電気自動車(移動体)4とを備える。
【0025】
整流器103は、交流電力を直流に変換して負荷104と定置用蓄電池2と充放電器3に給電するAC/DCコンバータである。すなわち、トランス102を介して商用電源101に接続され、この整流器103の出力側に、負荷104と定置用蓄電池2と複数の充放電器3が並列に接続されている。これにより、整流器103からの直流電力が、負荷104と定置用蓄電池2と各充放電器3に供給される。ここで、各充放電器3に直流電力を供給するためのみの整流器を、別途設置してもよい。
【0026】
このような整流器103は、各充放電器3と通信自在に接続され、後述するようにして各充放電器3を制御する機能を備える。ここで、この実施の形態では、整流器103が各充放電器3を制御する場合について説明するが、整流器103とは別体の制御装置が整流器103や各充放電器3を制御してもよい。また、整流器103は、通信装置を介して商用電源101側つまり電力会社と通信自在に接続され、電力会社からデマンドレスポンス指令(外部からの給電要求)を受信可能となっている。
【0027】
定置用蓄電池2は、停電時等の所定時に負荷104に対して放電・給電するバックアップ電源であり、セル(単位電池・二次電池)が複数(例えば、168セル)直列に接続された組電池として構成されている。各セルは、どのような電池であってもよいが、リチウムイオン二次電池や制御弁型鉛蓄電池などが挙げられる。また、定置用蓄電池2の容量は、負荷104を一定時間バックアップ可能な容量となっている。
【0028】
この定置用蓄電池2は、上記のように、整流器103に接続され、平常時にはフロート充電されるようになっている。また、後述するように、整流器103の出力電圧が下がることで、定置用蓄電池2から負荷104に直流電力が供給されるようになっている。
【0029】
電気自動車4は、移動するための走行用蓄電池41を備え、通信事業所Bに所属し、通常、朝に通信事業所Bを出発して夕方に通信事業所Bに帰着・帰社する。走行用蓄電池41には充放電ポートが接続され、この充放電ポートを充放電器3に接続することで走行用蓄電池41が充放電される。また、電気自動車4は、走行用蓄電池41の残容量を検知する機能を備え、充放電器3に接続された際に残容量の値を充放電器3に伝送する。ここで、残容量を検知する方法はどのようなものでもよく、例えば、走行距離に基づいて消費電力を算出して残容量を演算したり、放電カーブに基づいて残容量を演算したりしてもよい。
【0030】
充放電器3は、電気自動車4が通信事業所Bに帰着した際に、走行用蓄電池41を定置用蓄電池2と並列に接続する直流連系のDC/DCコンバータである。ここで、直流連系とは、直流系統に接続・連系されて入力電力と出力電力がともに直流という意である。すなわち、上記のように、整流器103に接続され、走行用蓄電池41が接続された状態で、平常時には整流器103からの直流電力を充電に適した電圧に変圧して、走行用蓄電池41をフロート充電する。ここで、走行用蓄電池41の充電は別系統から電力を供給して行ってもよい。また、後述するようにして負荷104に給電する際には、走行用蓄電池41を放電させて直流電力を給電に適した電圧に変圧して(充放電器3の放電出力電圧を調整して)、負荷104に給電する。
【0031】
この充放電器3の容量は、走行用蓄電池41の充放電に適した容量であればよく、負荷104の容量よりも小さくても大きくてもよい。また、充放電器3は、定置用蓄電池2の電圧をモニタする機能を備え、後述するように、定置用蓄電池2の電圧をモニタしながら放電出力電圧を調整する。
【0032】
次に、このような構成の電力供給システム1の動作および、電力供給システム1による電力供給方法などについて説明する。なお、説明を簡単にするため、整流器103から負荷104、定置用蓄電池2、充放電器3までの電圧降下および負荷変動に伴う電圧変動を無視する。
【0033】
まず、図2に示すように、昼間すべての電気自動車4が外出中の平常時においては、商用電源101からの交流電力が整流器103で直流変換されて、負荷104に給電されるとともに、定置用蓄電池2に給電されフロート充電される。このとき、整流器103の出力電圧と、負荷104と定置用蓄電池2への入力電圧は、ともにV1で、図3に示すように、これらの電圧および電力は一定となる。ここで、満充電状態に近いフロート充電中の定置用蓄電池2の充電電力は、ほとんどゼロに近い値となり、充放電器3の出力電圧と電力はゼロである。
【0034】
次に、図4に示すように、夕方に電気自動車4が通信事業所Bに帰社した平常時においては、走行用蓄電池41が充放電器3に接続されると、整流器103からの直流電力が負荷104と定置用蓄電池2に給電されるとともに、充放電器3を介して走行用蓄電池41に給電され充電される。このとき、整流器103の出力電圧と、負荷104と定置用蓄電池2と充放電器3への入力電圧は、ともにV1となる。また、走行用蓄電池41を定電圧充電する場合、図5に示すように、充放電器3の出力電圧は、充電開始から充電終了まで同一電圧であり、その充電電力は、充電開始から充電終了までに充電電流が変動するのに伴って変化する。また、充放電器3の充電電力が変化するのに伴って、整流器103の出力電力も変化する。
【0035】
一方、電力会社からのデマンドレスポンス指令を受信した電力需要調整時に、すべての電気自動車4が外出中の場合、図6に示すように、整流器103が、その出力電圧V1を定置用蓄電池2の開放電圧V2よりも下げる。これにより、定置用蓄電池2が放電されて定置用蓄電池2から負荷104に給電され、商用電源101の消費電力が抑制される(負荷104への消費電力はゼロとなる。)。ここで、整流器103の出力電圧V1は、負荷104の最低駆動電圧以上に設定される。
【0036】
このとき、定置用蓄電池2の出力電圧V2つまり負荷104への入力電圧V2は、図7に示すように、定置用蓄電池2の放電に伴って調整(放電)開始から調整(放電)終了に至って降下する。また、定置用蓄電池2の放電電力は、負荷104の消費電力と等しくなる。一方、調整開始から調整終了まで、整流器103の出力電圧V1は一定で、消費電力はゼロとなる。
【0037】
また、電力会社からのデマンドレスポンス指令を受信した電力需要調整時に、電気自動車4が通信事業所Bに帰社して走行用蓄電池41が充放電器3に接続されている場合、次のような動作を行う。すなわち、図8に示すように、整流器103が、その出力電圧V1を定置用蓄電池2の開放電圧V2および走行用蓄電池41の開放電圧V3(充放電器3の整流器103側電圧)よりも下げるとともに、各充放電器3に対して放電開始指令を送信する。これにより、定置用蓄電池2が負荷104に対して放電するとともに、充放電器3を介して走行用蓄電池41が負荷104に対して放電される。ここで、定置用蓄電池2の開放電圧V2は、走行用蓄電池41の開放電圧V3以上で、整流器103の出力電圧V1は、負荷104の最低駆動電圧以上に設定される。
【0038】
そして、負荷104に対して放電する際に、定置用蓄電池2と各走行用蓄電池41の容量%(現容量を満充電時容量の%で表した値)が同等に変化するように、各走行用蓄電池41が接続された充放電器3の放電出力電圧(整流器103側電圧)を調整する。すなわち、定置用蓄電池2と各走行用蓄電池41が、それぞれの容量・電圧の大きさに見合った電流値で放電し、両蓄電池2、41の残容量%が調整開始から調整終了までともに同等に減少するように(一方が過放電等しないように)、各充放電器3の放電出力電圧を調整する。
【0039】
具体的に、各充放電器3は、定置用蓄電池2の放電電圧をモニタし、走行用蓄電池41が定置用蓄電池2とほぼ同時に放電終止電圧(放電を終了させるべき電圧)に達するように、走行用蓄電池41の放電電流値つまり充放電器3の放電出力電圧を調整する。例えば、走行用蓄電池41に比べて定置用蓄電池2の容量が十分に大きい場合、定置用蓄電池2からの放電電流値が大きくなるように、充放電器3の放電出力電圧V3を定置用蓄電池2の放電電圧V2よりも大きく下げる。
【0040】
このような電力需要調整時には、図9に示すように、調整開始から調整終了まで、整流器103の出力電圧V1は一定で、消費電力は整流器103の内部固定損失のみとなる。また、充放電器3の放電出力電圧V3と定置用蓄電池2の放電電圧V2は、上記のように、同等な放電カーブで変化し、両放電電力は、それぞれの容量に見合って負荷分担される。負荷104への入力電圧V2は、定置用蓄電池2と同様に降下し、負荷104の消費電力は変化しない。
【0041】
そして、所定時間あるいは所定電力だけ放電を行うと、整流器103が各充放電器3に対して放電終了指令を送信し、これを受けて各充放電器3が放電を終了する。これと同時に、整流器103が出力電圧V1を元の電圧に戻し、負荷104への給電と定置用蓄電池2および走行用蓄電池41の充電が行われる。なお、充電時のピーク電力回避のために、定置用蓄電池2および各走行用蓄電池41の開始時間は、充電開始指令により任意に設定することができる。
【0042】
ここで、負荷104に対して放電する際に、定置用蓄電池2と各走行用蓄電池41の放電分担は、各走行用蓄電池41が接続された充放電器3の放電出力電圧(整流器103側電圧)を調整することで任意に設定できるようにしてもよい。すなわち、各走行用蓄電池41が、設定に基づく電流値で放電し、両蓄電池2、41の残容量%が設定どおりとなるように、各充放電器3の放電出力電圧を調整する。
【0043】
一方、すべての電気自動車4が外出中に商用電源101が停電すると、図10に示すように、整流器103の出力電圧がゼロになり、定置用蓄電池2が放電して負荷104に給電する。このとき、定置用蓄電池2の出力電圧V2つまり負荷104への入力電圧V2は、図11に示すように、放電に伴って降下し、定置用蓄電池2の放電電力と負荷104の消費電力は同等となる。そして、定置用蓄電池2の電圧が放電終止電圧に達すると、放電を終了する。
【0044】
また、電気自動車4が通信事業所Bに帰社して走行用蓄電池41が充放電器3に接続されている状態で、商用電源101が停電すると、図12に示すように、整流器103の出力電圧がゼロになるとともに、整流器103から各充放電器3に対して放電開始指令を送信する。これにより、定置用蓄電池2と各走行用蓄電池41が放電して負荷104に給電する。このとき、図8図9の電力需要調整時と同様に、定置用蓄電池2と各走行用蓄電池41の容量%が同等に変化するように、各走行用蓄電池41が接続された充放電器3の放電出力電圧(整流器103側電圧)V3を調整する。
【0045】
このようなバックアップ時には、図13に示すように、各充放電器3の放電出力電圧V3と定置用蓄電池2の放電電圧V2は、同等な放電カーブで変化し、両放電電力は、それぞれの容量に見合って負荷分担される。また、負荷104への入力電圧V2は、定置用蓄電池2と同様に降下し、負荷104の消費電力は変化しない。そして、定置用蓄電池2および各走行用蓄電池41の電圧がそれぞれの放電終止電圧に達すると、それぞれの放電を終了する。
【0046】
また、このようなバックアップ時に、負荷104に対して放電する際に、定置用蓄電池2と各走行用蓄電池41の放電分担は、各走行用蓄電池41が接続された充放電器3の放電出力電圧(整流器103側電圧)を調整することで任意に設定できるようにしてもよい。すなわち、各走行用蓄電池41が、設定に基づく電流値で放電し、両蓄電池2、41の残容量%が設定どおりとなるように、各充放電器3の放電出力電圧を調整する。
【0047】
以上のように、この電力供給システム1および電力供給方法によれば、電気自動車4が通信事業所Bに帰社すると、走行用蓄電池41が定置用蓄電池2と並列に接続されて、定置用蓄電池2が負荷104に対して放電する際に、走行用蓄電池41も放電されるため、負荷104に対する給電時間をより長く確保することができる。また、直流連系の充放電器3を介して走行用蓄電池41が定置用蓄電池2と並列に接続されるため、走行用蓄電池41(充放電器3)の容量の大きさに関わらず、走行用蓄電池41から負荷104に放電・電力供給することができる。このように、電気自動車4の走行用蓄電池41を利用して負荷104に対して適正に電力供給することが可能となる。
【0048】
また、定置用蓄電池2と走行用蓄電池41が放電する際に、定置用蓄電池2と走行用蓄電池41の容量%が同等に変化するように、充放電器3の放電出力電圧が調整される。つまり、両蓄電池2、41が同等に電圧変化するように放電されるため、走行用蓄電池41の過放電などを防止して負荷104に適正に電力供給することが可能となる。
【0049】
一方、電力会社からのデマンドレスポンス指令があると、整流器103の出力電圧が下げられて定置用蓄電池2と走行用蓄電池41が負荷104に対して放電される。このため、例えば、商用電源101の需要が高い場合に、整流器103の出力電圧を下げて定置用蓄電池2と走行用蓄電池41から負荷104に電力供給することで、電力需要のピークカットを行ったり、ダックカーブ問題を回避したりすることが可能となる。
【0050】
また、走行用蓄電池41の残容量が任意の値となるように、充放電器3の放電出力電圧を調整することで、走行用蓄電池41からの放電があらかじめ設定された値までとなり、走行用蓄電池41の容量を一定量残存させて、必要なときに電気自動車4を移動させることが可能となる。
【0051】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、通信事業所Bに所属する電気自動車4を放電対象にしているが、通信事業所Bに帰着・駐車する一般の電気自動車を放電対象にして連系してもよい。さらに、移動体が電気自動車4の場合について説明したが、走行用蓄電池を備えれば船舶や自走ロボットなどであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 電力供給システム
2 定置用蓄電池
3 充放電器
4 電気自動車(移動体)
41 走行用蓄電池
101 商用電源(系統電力、外部)
102 トランス
103 整流器
104 負荷
B 通信事業所(基地)
図1
図2
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