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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221101BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20221101BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B60R19/04 M
B62D25/20 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018240090
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020055513
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018184303
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 旬一
(72)【発明者】
【氏名】林 良一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 尚裕
(72)【発明者】
【氏名】平 正通
(72)【発明者】
【氏名】杉本 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122276(WO,A1)
【文献】特開2018-016100(JP,A)
【文献】特開2016-007895(JP,A)
【文献】特開2017-202730(JP,A)
【文献】特開2004-262300(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152374(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0085579(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19907783(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 19/04,19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の両サイドに配置され、車両前後方向に沿って延在する左右一対のフロントサイドメンバと、
前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置され、右側部分を構成する右側装置と左側部分を構成する左側装置とが互いに連結されることで構成されたパワーユニットと、
前記パワーユニットの車両後方且つ車室の前方に位置するダッシュ部と、
前記ダッシュ部と前記パワーユニットとの間のエリアに設けられて、前記パワーユニットが車両後方へ移動したときに前記パワーユニットの前記右側装置又は前記左側装置を支持する後方支持部と、
車幅方向に沿って延在すると共に前記左右一対のフロントサイドメンバの前端同士を連結し、車幅方向中央部に設けられて車幅方向に隣接する他の部分よりも車幅方向から見た断面積が大きい中央部と、車幅方向中央に対して前記後方支持部に支持される前記右側装置又は前記左側装置と同じ側に設けられて前記中央部よりも断面積が小さい第一折れ起点部と、車幅方向中央に対して前記後方支持部に支持される前記右側装置又は前記左側装置と反対側に設けられて前記第一折れ起点部よりも断面積が大きい第二折れ起点部と、を有するバンパリインフォースメントと、
を備える、車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所謂センターポール衝突時及び微小ラップ衝突時にバンパリインフォースメント(以下、バンパRFという)が折れることを抑制するために、バンパRFの車幅方向中央部及び車幅方向両端部近傍にセンタバルク及びサイドバルクをそれぞれ配置した構造が開示されている。ここで、センターポール衝突とは車両の車幅方向中央付近に柱状の物体が前面衝突する場合であり、微小ラップ衝突とは、車両の車幅方向端部が衝突物に対してわずかに重なった状態で前面衝突する場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-147437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記技術では、センターポール衝突時、センタバルクと右側サイドバルクとの間、又はセンタバルクと左側サイドバルクとの間の位置でバンパRFに折れが発生することが考えられる。ここで、上記技術は、左右の位置のうちのどちらが先に折れるかという順序をコントロールするものではない。
【0005】
しかしながら、バンパRFの後方のパワーユニットやさらに後方のダッシュ部の構造は左右対称ではなく、その構造によってはバンパRFの折れ位置と折れる順序とをコントロールすることで車室の変形量を低減できる可能性がある。したがって、この点において上記技術には改良の余地がある。
【0006】
本発明は、センターポール衝突時のバンパRFの折れ位置と折れる順序をコントロールすることで車室の変形量を低減する車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両前部構造は、車両前部の両サイドに配置され、車両前後方向に沿って延在する左右一対のフロントサイドメンバと、前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置され、右側部分を構成する右側装置と左側部分を構成する左側装置とが互いに連結されることで構成されたパワーユニットと、前記パワーユニットの車両後方且つ車室の前方に位置するダッシュ部と、前記ダッシュ部と前記パワーユニットとの間のエリアに設けられて、前記パワーユニットが車両後方へ移動したときに前記パワーユニットの前記右側装置又は前記左側装置を支持する後方支持部と、車幅方向に沿って延在すると共に前記左右一対のフロントサイドメンバの前端同士を連結し、車幅方向中央部に設けられて車幅方向に隣接する他の部分よりも車幅方向から見た断面積が大きい中央部と、車幅方向中央に対して前記後方支持部に支持される前記右側装置又は前記左側装置と同じ側に設けられて前記中央部よりも断面積が小さい第一折れ起点部と、車幅方向中央に対して前記後方支持部に支持される前記右側装置又は前記左側装置と反対側に設けられて前記第一折れ起点部よりも断面積が大きい第二折れ起点部と、を有するバンパリインフォースメントと、を備える。
【0008】
請求項1に記載の車両前部構造では、左右一対のフロントサイドメンバが車両前部の両サイドに配置され、車両前後方向に沿って延在している。また、左右一対のフロントサイドメンバの間には、互いに連結された右側装置と左側装置とで構成されたパワーユニットが配置されている。そして、後方支持部が、パワーユニット後方のダッシュ部とパワーユニットとの間のエリアに設けられており、仮にパワーユニットが車両後方へ移動したときは、パワーユニットの右側装置又は左側装置が後方支持部に支持される。また、バンパRFが車幅方向に沿って延在し、左右一対のフロントサイドメンバの前端同士を連結している。
【0009】
バンパRFの車幅方向中央部には、車幅方向に隣接する他の部分よりも車幅方向から見た断面積が大きい中央部が設けられている。また、車幅方向中央に対して後方支持部に支持される右側装置又は左側装置と同じ側に、中央部よりも断面積が小さい第一折れ起点部が設けられている。そして、車幅方向中央に対して後方支持部に支持される右側装置又は左側装置と反対側、すなわち第一折れ起点部と反対側に、第一折れ起点部よりも断面積が大きい第二折れ起点部が設けられている。
【0010】
ここで、仮に、後方支持部に支持される右側装置又は左側装置と反対側にある第二折れ起点部が第一折れ起点部よりも先に折れる場合、右側装置又は左側装置のうち第二折れ起点部が衝突荷重を伝達する装置が、後方支持部に支持される装置と異なるため、左側装置と右側装置との連結部分の剪断入力が大きくなる。すると、左側装置と右側装置との連結が解除され(換言するとパワーユニット割れが発生し)、第二折れ起点部からの衝突荷重を受ける装置のみが車室側へ移動することで、ダッシュ部に対して局所的に荷重が伝達され、ダッシュ部の変形量が増大してしまうおそれがある。
【0011】
そこで、この車両前部構造では、バンパRFの車幅方向から見た断面積が、第一折れ起点部、第二折れ起点部、中央部、の順に大きくなるように設定されている。このため、バンパRFの各部の耐力が、第一折れ起点部、第二折れ起点部、中央部、の順に大きくなる。これにより、センターポール衝突時に第一折れ起点部が最初に折れ、次に第二折れ起点部が折れるように設定されている。また、第一折れ起点部の位置が、車幅方向中央に対して後方支持部に支持される右側装置又は左側装置と同じ側に設定されているので、センターポール衝突時に第一折れ起点部が、右側装置と左側装置のうち後方支持部により支持される側の装置に衝突荷重を伝達するように設定されている。
【0012】
つまり、後方支持部に支持される装置と、最初に折れる第一折れ起点部が衝突荷重を伝達する装置とが同一の装置であるため、右側装置と左側装置との連結部分に発生する剪断入力が増大しない。その結果、パワーユニット割れが抑制される。
【0013】
さらに、パワーユニット割れが抑制されることで、第一折れ起点部においてパワーユニットからバンパRFへの反力が増大する。このため、バンパRFの第二折れ起点部での折れが発生しやすくなる。第二折れ起点部での折れが発生すると、バンパRFにおける第一折れ起点部及び第二折れ起点部の間の範囲でパワーユニットを車両後方へ押すこととなり、衝突荷重を車幅方向に分散できる。その結果、ダッシュ部に対する局所的な入力を抑制でき、以って車室の変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、センターポール衝突時のバンパRFの折れ位置と折れる順序をコントロールすることで車室の変形量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の車両前部構造を示す模式的な平面図である。
図2図1に示される車両前部構造においてセンターポール衝突が発生し、バンパRFが第一折れ起点部で折れた瞬間を示す模式的な平面図である。
図3図1及び図2に示される車両前部構造においてバンパRFが第二折れ起点部で折れた瞬間を示す模式的な平面図である。
図4図1図3に示される車両前部構造においてバンパRFがパワーユニットを面押ししている様子を示す模式的な平面図である。
図5】バンパRFを車両後方から示す模式的な背面図である。
図6】(A)は、図5の6A-6A線断面図である。(B)は、図5の6B-6B線断面図である。(C)は、図5の6C-6C線断面図である。
図7】(A)は、第2実施形態に係る車両前部構造のバンパRFを示す模式的な平面図である。(B)は、(A)に示されるバンパRFの曲げ耐力特性を示す模式的な線図である。
図8図7(A)に示されるバンパRFを車両前方から示す模式的な正面図である。
図9】(A)は、図8の9A-9A線断面図である。(B)は、図8の9B-9B線断面図である。(C)は、図8の9C-9C線断面図である。
図10】(A)は、第3実施形態に係る車両前部構造のバンパRFを示す模式的な平面図である。(B)は、(A)に示されるバンパRFの曲げ耐力特性を示す模式的な線図である。
図11】(A)は、図10の11A-11A線断面図である。(B)は、図10の11B-11B線断面図である。(C)は、図10の11C-11C線断面図である。
図12】比較例に係る車両前部構造を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、図1図6及び図12を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0017】
なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印RH、矢印LHは、車両の前方向、上方向、車両右側、車両左側をそれぞれ示している。また、以下の説明で特記なく前後、左右、上下の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車幅方向の左右、車両上下方向の上下を示す。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の車両前部構造S1は、車両前部の両サイドに配置された左右一対のフロントサイドメンバ10を備えている。フロントサイドメンバ10は、長手方向を車両前後方向に向けた車体骨格部材であり、車両の車幅方向中心線に対して左右対称に設けられている。
【0019】
フロントサイドメンバ10の前端部は、変形部12とされている。変形部12は、本体部14(フロントサイドメンバ10のうち変形部12以外の部分)よりも車両前後方向の荷重に対する圧縮強度が低い。変形部12としては、例えばアルミ製や繊維強化プラスチック製のクラッシュボックスが例示される。
【0020】
また、車両前部構造S1は、バンパRF20を備えている。バンパRF20は、車幅方向に沿って延在する車体骨格部材であり、左右一対のフロントサイドメンバ10の前端同士を連結している。具体的には、左右一対のフロントサイドメンバ10の変形部12の前端が、バンパRF20の後面に結合されている。なお、車幅方向に直線的に延在するバンパRF20を模式的に図示しているが、バンパRF20は、その車幅方向両側部が車両後方側へ斜めに曲がった形状、すなわち全体として車両前方側へ凸の弓形形状とされていてもよい。バンパRF20のより詳細な構成については後述する。
【0021】
また、車両前部構造S1は、左右一対のフロントサイドメンバ10の間且つバンパRF20の車両後方に配置されたパワーユニット30を備えている。パワーユニット30は、「左側装置」としてのトランスアクスル30Lと、「右側装置」としてのエンジン30Rと、が互いに連結されることで構成されている。パワーユニット30は、左右一対のフロントサイドメンバ10の本体部14に左右のエンジンマウント32を介して支持されている。また、図示は省略するが、パワーユニット30は、トランスアクスル30Lの部分において車両下方からも支持されている。また、エンジン30Rの幅寸法はトランスアクスル30Lの幅寸法よりも大きく、連結部分34は、車幅方向中央に対して左側にずれて位置している。
【0022】
また、車両前部構造S1は、ダッシュ部40を備えている。ダッシュ部40は、パワーユニット30が配置された空間(エンジンコンパートメント)と図示しない車室とを隔てる部分である。つまり、ダッシュ部40は車室の前端を構成している。ダッシュ部40は、ダッシュパネル42や図示しないダッシュクロスを含んで構成されている。ダッシュパネル42には、左右一対のフロントサイドメンバ10の後端が結合されている。なお、フロントサイドメンバ10の車両後方側に図示しないキックアップ部が設けられ、このキックアップ部の上部にダッシュパネル42が配設される構成としてもよい。
【0023】
ダッシュパネル42の前方にはギアボックス44が設けられ、ギアボックス44は、ダッシュパネル42に対して車両前方側へ突出するように配置されている。このため、本実施形態では、仮にパワーユニット30が車両後方へ移動した場合(例えば平行移動した場合)、ギアボックス44がパワーユニット30を支持する構造となっている。つまり、本実施形態ではギアボックス44が本発明の「後方支持部」に相当する。ギアボックス44は、車幅方向中央に対して左側にずれた位置であってトランスアクスル30Lの後方の位置に配置されている。
【0024】
次に、図5及び図6を参照して、バンパRF20の詳細な構成について説明する。
【0025】
図5には、バンパRF20を車両後方から見た背面図が示されている。この図に示されるように、バンパRF20は、車幅方向左側に設けられた左側部20Aと、左側部20Aに隣接して車幅方向中央部に設けられた中央部20Bと、中央部20Bに隣接して車幅方向右側に設けられた右側部20Cと、を含んで構成されている。
【0026】
バンパRF20は、中央部20Bの車両上下方向の寸法(高さ寸法)が最も大きく、次いで右側部20Cの高さ寸法が大きく、左側部20Aの高さ寸法が最も小さくなるように構成されている。また、バンパRF20は、左側部20Aと中央部20Bとの境界部分に第一折れ起点部20Dを有し、中央部20Bと右側部20Cとの境界部分に第二折れ起点部20Eを有する。なお、図1図5において左側部20A、中央部20B、及び右側部20Cにそれぞれ付された網掛け模様は、各図間の対応関係をわかりやすく示す意図で示したものである。実際には、バンパRFの左側部20Aと、中央部20Bと、右側部20Cとは、アルミニウム等の金属の押出成形によって一体に形成されている。
【0027】
図6(A)~図6(C)には、バンパRF20の左側部20Aと、中央部20Bと、右側部20Cとを車幅方向右側から見た断面図がそれぞれ示されている。
【0028】
ところで、バンパRF20は、上述のように押出成形によって一体に形成されており、中央部20Bは、押出成形によって得られる押出成形材の形状をそのまま有している。言い換えると、押出成形材は、図6(B)に示される断面形状を有している。これに対し、左側部20A及び右側部20Cは、図6(A)及び図6(C)に示されるように、押出成形によって得られる押出成形材を例えば切削加工し、断面形状を変えることにより得られる。バンパRF20の各部について以下により詳しく説明する。
【0029】
図6(B)に示されるように、バンパRF20の中央部20Bは、断面が目の字形状とされた中空構造を有している。具体的には、車両前側及び後側に互いに離間されて配置された前壁20F及び後壁20Gと、前壁20F及び後壁20Gの上端部同士及び下端部同士を車両前後方向にそれぞれ連結する上壁20H及び下壁20Iと、前壁20F及び後壁20Gを車両前後方向に連結する第一横壁20J及び第二横壁20Kと、を含んで構成されている。そして、この第一横壁20J及び第二横壁20Kによって中央部20B内の閉断面が上下方向に三つに分かれている。
【0030】
図6(C)に示されるように、右側部20Cは、押出成形材の第一横壁20Jよりも上側の部分が切削加工等により切り落とされて形成されている。すなわち、右側部20Cの上面は第一横壁20Jにより構成され、車両前側及び後側は、前壁20F及び後壁20Gのうち第一横壁20J上面よりも下側の部分である前壁20F1及び後壁20G1により構成されている。このため、右側部20Cの車幅方向右側から見た断面積は中央部20Bの断面積よりも小さくなっている。これにより、右側部20Cの曲げ耐力は、中央部20Bの曲げ耐力よりも小さくなっている。
【0031】
図6(A)に示されるように、左側部20Aは、押出成形材の第二横壁20Kよりも上側の部分が切削加工等により切り落とされて形成されている。すなわち、左側部20Aの上面は第二横壁20Kにより構成され、車両前側及び後側は、前壁20F及び後壁20Gのうち第二横壁20K上面よりも下側の部分である前壁20F2及び後壁20G2により構成されている。このため、左側部20Aの車幅方向右側から見た断面積は右側部20Cの断面積よりも小さくなっている。これにより、左側部20Aの曲げ耐力は、右側部20Cの曲げ耐力よりもさらに小さくなっている。
【0032】
上述のように、バンパRFは、左側部20Aの車幅方向右側から見た断面積が最も小さく、次いで右側部20Cの断面積が小さく、中央部20Bの断面積が最も大きくなるように構成されている。
【0033】
また、バンパRF20は、センターポール衝突時にポールPからの荷重が入力される方向(車両後方に向かう方向)に延在する壁部の数、すなわち前壁20F、20F1、20F2及び後壁20G、20G1、20G2の間に架け渡される壁部の数も、各部により異なっている。具体的には、左側部20Aは、第二横壁20K及び下壁20Iの二枚を備えている。また、右側部20Cは、さらに第一横壁20Jを加えた三枚を備えている。そして、中央部20Bは、さらに上壁20Hを加えた四枚を備えている。
【0034】
このように、断面積及び断面形状が異なることにより、左側部20A、中央部20B、及び右側部20Cは曲げ耐力が異なる。すなわち、断面積が最も小さく、且つ前壁20F2及び後壁20G2の間に架け渡される壁部の数が最も少ない左側部20Aの曲げ耐力が最も小さい。次いで、断面積が次に小さく、且つ前壁20F1及び後壁20G1の間に架け渡される壁部の数が次に少ない右側部20Cの曲げ耐力が小さい。そして、断面積が最も大きく、且つ前壁20F及び後壁20Gの間に架け渡される壁部の数が最も多い中央部20Bの曲げ耐力が最も大きくなるように構成されている。これにより、バンパRF20のうち、左側部20Aと中央部20Bとの境界部分が最も折れやすく、センターポール衝突時に最初に折れる第一折れ起点部20Dを構成している。また、中央部20Bと右側部20Cとの境界部分が、第一折れ起点部20Dの次に折れる第二折れ起点部20Eを構成している。
【0035】
別の説明をすると、バンパRF20は、中央部20Bを挟んで2つの折れ起点部(第一折れ起点部20Dと第二折れ起点部20E)を有している。そして、第一折れ起点部20Dの曲げ耐力が第二折れ起点部20Eの曲げ耐力に対して低く設定されている。このようにバンパRF20の各部に耐力差を設けることにより、バンパRF20のうち第一折れ起点部20Dがセンターポール衝突時に最初に折れ、第二折れ起点部20Eが第一折れ起点部20Dの次に折れるように、折れる順序がコントロールされている。
【0036】
別の説明をすると、バンパRF20は、車幅方向から見た断面の幅(車両前後方向の寸法)は車幅方向に沿って同一であるが、断面の高さ(車両上下方向の寸法)は、中央部20B、第二折れ起点部20E、第一折れ起点部20Dの順に小さくなるように設定されている。このため、断面二次モーメントもこの順で小さくなっている。バンパRF20はその全体が押出成形により同一材料で形成されているので、各部のヤング率は同一である。したがって、曲げ剛性(曲がりにくさ)も中央部20B、第二折れ起点部20E、第一折れ起点部20Dの順に小さくなっている。すなわち、第一折れ起点部20Dが最も曲げ変形を生じやすく、次いで、第二折れ起点部20Eが曲げ変形を生じやすい。
【0037】
<作用効果>
次に、第1実施形態の作用効果について、図12に示す比較例と対比しつつ説明する。
【0038】
図12に示されるように、比較例に係る車両前部構造S2では、バンパRF100は、押出成形により一体に形成され、押出成形材に対して断面形状が変更された部分を有しない。言い換えると、バンパRF100は、その全体が図6(B)に示される目の字形状の断面を有している。このため、バンパRF100が折れる位置や、折れる順序がコントロールされていない。したがって、図12に示されるように、ポールPに衝突し、エンジン30R側の折れ起点部100Aにおいて折れた場合、エンジン30Rはギアボックス44に支持されないため、ギアボックス44に支持される場合と比べてエンジン30Rとトランスアクスル30Lとの連結部分34に発生する剪断入力が大きくなる。すると、エンジン30Rとトランスアクスル30Lとの連結が解除され(換言するとパワーユニット割れが発生し)、折れ起点部100Aからの衝突荷重を受けるエンジン30Rのみが車室側へ移動することで、ダッシュ部40に対して局所的に荷重が伝達され、ダッシュ部40の変形量が増大してしまうおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、図1図4に示すように、左右一対のフロントサイドメンバ10が車両前部を車両前後方向に沿って延在している。また、バンパRF20が車幅方向に沿って延在し、左右一対のフロントサイドメンバ10の前端同士を連結している。また、左右一対のフロントサイドメンバ10の間且つバンパRF20の車両後方には、パワーユニット30が配置されている。
【0040】
パワーユニット30は、右側部分を構成するエンジン30Rと、左側部分を構成するトランスアクスル30Lと、が互いに連結されることで構成されている。そして、ギアボックス44が、ダッシュ部40とパワーユニット30との間のエリアに設けられているため、仮にパワーユニット30が車両後方へ移動(例えば平行移動)したときは、パワーユニット30のトランスアクスル30Lがギアボックス44に最初に支持される。
【0041】
バンパRF20の車幅方向中央部には、車幅方向に隣接する他の部分よりも車幅方向から見た断面積が大きい中央部20Bが設けられている。また、車幅方向中央に対してギアボックス44に支持されるトランスアクスル30Lと同じ側に、中央部20Bよりも断面積が小さい第一折れ起点部20Dが設けられている。そして、車幅方向中央に対してギアボックス44に支持されるトランスアクスル30Lと反対側、すなわち第一折れ起点部20Dと反対側に、第一折れ起点部20Dよりも断面積が大きい第二折れ起点部20Eが設けられている。
【0042】
これにより、本実施形態の車両前部構造S1では、図1図3に示すように、第一折れ起点部20Dの位置が、センターポール衝突時に第一折れ起点部20Dがエンジン30Rとトランスアクスル30Lのうちギアボックス44に支持される側の装置に衝突荷重を伝達するように設定されている、
このため、本実施形態の車両前部構造S1では、センターポール衝突時、以下に説明する変形モードを実現しやすい。
【0043】
すなわち、センターポール衝突時、図2に示すように、バンパRF20は、ポールが当接した車幅方向中央位置では折れず、バンパRF20のうち断面積が最も大きい中央部20Bと、断面積が最も小さい左側部20Aとの境界部分である第一折れ起点部20Dで折れる。次に、図3に示すように、バンパRF20の第一折れ起点部20Dが、パワーユニット30のトランスアクスル30Lに衝突荷重(矢印Fで示される)を伝達する。衝突荷重によりパワーユニット30が車両後方へ移動すると、ギアボックス44にパワーユニット30(トランスアクスル30L)が支持される。ここで、ギアボックス44に支持される装置(トランスアクスル30L)と第一折れ起点部20Dが衝突荷重を伝達する装置(トランスアクスル30L)とが同一の装置であるため、エンジン30Rとトランスアクスル30Lとの連結部分34に発生する剪断入力が増大しない。その結果、パワーユニット割れが抑制される。
【0044】
さらに、パワーユニット割れが抑制されることで、第一折れ起点部20Dにおいてパワーユニット30からバンパRF20への反力(図3の矢印Fで示す力に対する反力)が増大する。このため、図3に示すように、バンパRF20に2点目の折れ、すなわち断面積が最も大きい中央部20Bと断面積が二番目に大きい右側部20Cとの境界部分である第二折れ起点部20Eの折れが発生しやすくなる。第二折れ起点部20Eの折れが発生すると、図4に示すように、バンパRF20における第一折れ起点部20D及び第二折れ起点部20Eの間の範囲でパワーユニット30を車両後方へ押すこととなり(面押しすることとなり)、衝突荷重を車幅方向に分散できる。その結果、ダッシュ部40に対する局所的な入力を抑制でき、以って車室の変形を抑制することができる。
【0045】
また、図面では簡略化されているが、パワーユニット30の後面は凹凸のある形状とされている。本実施形態では、この凹凸のある形状とされた後面のうち、最も車両前後方向後端の部分とギアボックス44とが車両前後方向に対向している。つまり、パワーユニット30における車両前後方向後端部がダッシュ部40に最初に支持されることとなる。このため、センターポール衝突発生後、早期にパワーユニット30を後方から支持することができる。
【0046】
なお、簡略化のため説明を省いたが、バンパRF20とパワーユニット30との間には、通常、図示しないクーリングユニットなどが配置されている。そのため、センターポール衝突が発生し、バンパRF20の第一折れ起点部20Dが折れてパワーユニット30側に変位すると、クーリングユニットなどを介して衝突荷重がバンパRF20からパワーユニット30に伝達する。
【0047】
なお、本実施形態では、バンパRF20は、車幅方向の全長に亘って押出成形によって一体に形成され、押出成形によって得られる押出成形材を例えば切削加工し、断面形状を変えることにより左側部20A及び右側部20Cを形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、左側部20A、中央部20B及び右側部20Cは、図6(A)~図6(C)に図示される断面形状を有するように押出成形により別個に形成されて、溶接等により接合されてもよい。
【0048】
[第2実施形態]
以下、図7(A)~図9(C)を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、これらの図では、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0049】
図7(A)には、第2実施形態に係る車両前部構造のバンパRF50の平面図が模式的に示されている。この図に示されるように、バンパRF50は、後面が左右一対のフロントサイドメンバ10における変形部12の前端に接合された後側部材52と、後側部材52の車両前方側に隣接して配置された中間部材54と、中間部材54の車両前方側に隣接して配置された前側部材56と、を備えている。後側部材52と、中間部材54と、前側部材56とは、アルミニウム等の金属の押出成形によってそれぞれ別個に形成され、例えば溶接、ボルト締結等によって接合されている。
【0050】
中間部材54は、その後面が後側部材52の前面に接合されて、後側部材52の車幅方向右側端部から車幅方向中央よりも左側の位置まで延在されている。言い換えると、中間部材54は、その全体が車両後方側から見て後側部材52の車幅方向右側の一部と重複している。
【0051】
前側部材56は、その後面が中間部材54の前面に接合されて、中間部材54の車幅方向左側端部からバンパRF50の車幅方向中央よりも右側の位置まで延在されている。言い換えると、前側部材56は、その全体が車両後方側から見て中間部材54の車幅方向左側の一部と重複している。また、前側部材56は、バンパRF50の車幅方向略中央に配置されている。
【0052】
図7(A)に示されるように、バンパRF50のうち、後側部材52と中間部材54と前側部材56とにより構成されている部分は、バンパRF50の車幅方向の中央部60を構成している。また、バンパRF50のうち中央部60の車幅方向の左隣に配置されて後側部材52のみで構成されている部分が左側部62とされている。さらに、中央部60の車幅方向の右隣に配置されて、後側部材52及び中間部材54により構成されている部分が右側部64とされている。すなわち、バンパRF50を構成する各部の車両前後方向の寸法は、中央部60、右側部64、左側部62の順に小さくなるように設定されている。
【0053】
別の説明をすると、バンパRF50は、後側部材52と、中間部材54と、前側部材56とが車両前方側から見て重複し、かつ車両前方側の部材ほど車幅方向の寸法が小さくなるように構成されている。ここで、中間部材54の後面全体が、後側部材52の前面の車幅方向一端側に対向している。また、前側部材56の後面全体が、中間部材54の前面の車幅方向他端側に対向している。3つの部材をこのように配置することにより、車両前後方向の寸法が異なる3つの部分、すなわち中央部60、左側部62及び右側部64が構成されている。
【0054】
図8に示されるように、バンパRF50の車両上下方向の寸法は車幅方向に沿って一定又は略一定である。すなわち、中央部60、左側部62及び右側部64の車両上下方向の寸法は略同一である。したがって、バンパRF50を構成する各部の車幅方向から見た断面積は、車両前後方向の寸法と同様に、中央部60、右側部64、左側部62の順に小さくなるように設定されている。
【0055】
次に、図9(A)~図9(C)を参照して、バンパRF50の各部の断面形状について説明する。
【0056】
左側部62は、図9(C)に示されるように、後側部材52のみで構成されている。後側部材52(左側部62)は、車幅方向から見た断面が目の字形状とされた中空構造を有している。具体的には、後側部材52は、車両前側及び後側に互いに離間されて配置された前壁52A及び後壁52Bと、前壁52A及び後壁52Bの上端部同士及び下端部同士を車両前後方向にそれぞれ連結する上壁52C及び下壁52Dと、前壁52A及び後壁52Bを車両前後方向に連結する第一横壁52E及び第二横壁52Fと、を含んで構成されている。そして、この第一横壁52E及び第二横壁52Fによって後側部材52内の閉断面が上下方向に三つに分かれている。
【0057】
右側部64は、図9(A)に示されるように、後側部材52と中間部材54とによって構成されている。中間部材54は、車幅方向から見た断面が日の字形状とされた中空構造を有している。具体的には、中間部材54は、車両前側及び後側に互いに離間されて配置された前壁54A及び後壁54Bと、前壁54A及び後壁54Bの上端部同士及び下端部同士を車両前後方向にそれぞれ連結する上壁54C及び下壁54Dと、前壁54A及び後壁54Bを車両前後方向に連結する横壁54Eと、を含んで構成されている。そして、この横壁54Eによって中間部材54内の閉断面が上下方向に二つに分かれている。右側部64は、後側部材52の前壁52Aの前面が中間部材54の後壁54Bの後面と接合されて構成されている。
【0058】
中央部60は、図9(B)に示されるように、後側部材52と中間部材54と前側部材56とによって構成されている。前側部材56は、車幅方向から見た断面が矩形枠状とされた中空構造を有している。具体的には、前側部材56は、車両前側及び後側に互いに離間されて配置された前壁56A及び後壁56Bと、前壁56A及び後壁56Bの上端部同士及び下端部同士を車両前後方向にそれぞれ連結する上壁56C及び下壁56Dと、を含んで構成されている。中央部60は、後側部材52の前壁52Aの前面が中間部材54の後壁54Bの後面と接合され、かつ中間部材54の前壁54Aの前面が前側部材56の後壁56Bの後面と接合されて構成されている。
【0059】
図9(A)~図9(C)に示されるように、本実施形態では、後側部材52、中間部材54及び前側部材56は、それぞれ車幅方向の全長に亘って一様に形成されている。また、後側部材52の車両前後方向の寸法は、中間部材54及び前側部材56よりも大きく設定されている。
【0060】
次に、バンパRF50の曲げ耐力特性について説明する。図7(B)には、バンパRF50の車幅方向の位置に対する曲げ耐力特性を示す線図が、模式的に示されている。上述の通り、バンパRF50を構成する各部の車幅方向から見た断面積は、中央部60、右側部64、左側部62の順に小さくなるように設定されている。このため、バンパRF50を構成する各部の曲げ耐力も、中央部60、右側部64、左側部62の順に小さくなっている。すなわち、右側部64と左側部62との間には、耐力差(矢印Dで示される)が設けられている。なお、第1実施形態において図示は省略したが、第1実施形態のバンパRF20の曲げ耐力特性も、図7(B)に示される第2実施形態のバンパRF50の曲げ耐力特性と同様の特性を有している。
【0061】
上述のような曲げ耐力特性を有することにより、図7(A)及び図8に示されるように、バンパRF50のうち、曲げ耐力が最も小さい左側部62と最も大きい中央部60との境界部分は、センターポール衝突時に最初に折れる第一折れ起点部66を構成している。また、曲げ耐力が二番目に小さい右側部64と最も大きい中央部60との境界部分は、第一折れ起点部66の次に折れる第二折れ起点部68を構成している。すなわち、バンパRF50は、中央部60の車幅方向両隣に、中央部60よりも断面積が小さい第一折れ起点部66と、第一折れ起点部66よりも断面積が大きい第二折れ起点部68とを備えている。
【0062】
第一折れ起点部66は、車幅方向中央よりも車幅方向左側に配置され、車両前方側から見てトランスアクスル30L(図1参照)と重複するように配置されている。また、第二折れ起点部68は、車幅方向中央よりも車幅方向右側に配置され、車両前方側から見てエンジン30R(図1参照)と重複するように配置されている。
【0063】
別の説明をすると、バンパRF50は、車幅方向から見た断面の形状及び寸法が、中央部60、第二折れ起点部68、第一折れ起点部66の順に断面二次モーメントが小さくなるように設定されている。また、本実施形態では、バンパRF50はその全体が押出成形により同一材料で形成されているので、各部のヤング率は同一である。したがって、曲げ剛性も中央部60、第二折れ起点部68、第一折れ起点部66の順に小さくなっている。すなわち、第一折れ起点部66が最も曲げ変形を生じやすく、次いで、第二折れ起点部68が曲げ変形を生じやすい。
【0064】
<作用効果>
次に、第2実施形態の作用効果について説明する。
【0065】
第2実施形態では、バンパRF50は、車幅方向に隣接する他の部分よりも車幅方向から見た断面積が大きい中央部60と、中央部60よりも断面積が小さい第一折れ起点部66と、第一折れ起点部66よりも断面積が大きい第二折れ起点部68とを備えている。このため、第一折れ起点部66と第二折れ起点部68との間には耐力差D(図7(B)参照)が設けられ、第一折れ起点部66の方が曲げ耐力が小さくなっている。これにより、第1実施形態と同様に、センターポール衝突時には最初に第一折れ起点部66が折れ、次に第二折れ起点部68が折れるように、折れる位置と順序がコントロールされている。ここで、ギアボックス44(図1参照)に支持される装置と第一折れ起点部66が衝突荷重を伝達する装置とが同一の装置(トランスアクスル30L、図1参照)であるため、パワーユニット割れが抑制される。また、バンパRF50における第一折れ起点部66及び第二折れ起点部68の間の範囲でパワーユニット30を車両後方へ押すこととなり(面押しすることとなり)、衝突荷重を車幅方向に分散できる。その結果、ダッシュ部40に対する局所的な入力を抑制でき、以って車室の変形を抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、図9(B)に示すように、後側部材52、中間部材54及び前側部材56の車両上下方向の寸法が略同一である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、中間部材54及び前側部材56の車両上下方向の寸法は、後側部材52よりも小さく設定されていてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、バンパRF50は、車幅方向から見た断面が後側部材56においては目の字形状とされ、中間部材54においては日の字形状とされ、前側部材56においては矩形枠状とされているが、本発明はこれに限定されない。例えば、後側部材52、中間部材54及び前側部材56が同じ断面形状、例えば目の字形状を有するように構成してもよいし、後側部材52が目の字形状、中間部材54及び前側部材56がいずれも日の字形状又は矩形枠状の断面形状を有するように構成してもよい。
【0068】
また、本実施形態では、それぞれ別個に押出成形により形成され、車両前後方向に接合された後側部材52、中間部材54及び前側部材56によってバンパRF50が構成されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9(A)~図9(C)に示される断面形状を有する中央部60、左側部62及び右側部64がそれぞれ別個に押出成形により形成されて、車幅方向に接合されてもよい。この場合であっても、断面積が中央部60、右側部64、左側部62の順に小さくなるように構成される。
【0069】
[第3実施形態]
以下、図10(A)~図11(C)を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。なお、これらの図では、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0070】
図10(A)には、第3実施形態に係る車両前部構造のバンパRF70の平面図が模式的に示されている。この図に示されるように、バンパRF70は、後面が左右一対のフロントサイドメンバ10における変形部12の前端に接合された後側部材72と、後側部材72の車両前方側に隣接して配置された中間部材74と、中間部材74の車両前方側に隣接して配置された前側部材76と、を備えている。後側部材72はアルミニウム等の金属の押出成形によって形成されている。中間部材74と前側部材76とは、それぞれ鋼板により構成され、溶接等により互いに接合されている。また、後側部材72と中間部材74とは、接着剤等によって接合されている。
【0071】
中間部材74は、後側部材72の車幅方向右側端部から車幅方向中央よりも左側の位置まで延在されている。言い換えると、中間部材74は、その全体が車両後方側から見て後側部材72の車幅方向右側の一部と重複している。
【0072】
前側部材76は、中間部材74の車幅方向左側端部からバンパRF70の車幅方向中央よりも右側の位置まで延在されている。言い換えると、前側部材76は、その全体が車両後方側から見て中間部材74の車幅方向左側の一部と重複している。また、前側部材76は、バンパRF70の車幅方向略中央に配置されている。
【0073】
図10(A)に示されるように、バンパRF70のうち、後側部材72と中間部材74と前側部材76とにより構成されている部分は、バンパRF70の車幅方向の中央部80を構成している。また、バンパRF70のうち中央部80の車幅方向の左隣に配置されて後側部材72のみで構成されている部分が左側部82とされている。さらに、中央部80の車幅方向の右隣に配置されて、後側部材72及び中間部材74により構成されている部分が右側部84とされている。すなわち、バンパRF70を構成する各部の車両前後方向の寸法は、中央部80、右側部84、左側部82の順に小さくなるように設定されている。
【0074】
また、図示は省略するが、バンパRF70の車両上下方向の寸法は車幅方向に沿って一定又は略一定である。すなわち、中央部80、左側部82及び右側部84の車両上下方向の寸法は略同一である。また、バンパRF70を構成する各部の車幅方向から見た断面積は、中央部80、右側部84、左側部82の順に小さくなるように設定されている。
【0075】
次に、図11(A)~図11(C)を参照して、バンパRF70の各部の断面形状について説明する。
【0076】
左側部82は、図11(C)に示されるように、後側部材72のみで構成されている。後側部材72(左側部82)は、車両前側及び後側に互いに離間されて配置された前壁72A及び後壁72Bと、前壁72A及び後壁72Bの上端部同士及び下端部同士を車両前後方向にそれぞれ連結する上壁72C及び下壁72Dと、前壁72A及び後壁72Bを車両前後方向に連結する第一横壁72E及び第二横壁72Fと、を含んで構成されている。そして、この第一横壁72E及び第二横壁72Fによって後側部材72内の閉断面が上下方向に三つに分かれている。
【0077】
右側部84は、図11(A)に示されるように、後側部材72と中間部材74とによって構成されている。中間部材74は、鋼板で構成され、後面が後側部材72における前壁72Aの前面に接合されている。
【0078】
中央部80は、図11(B)に示されるように、後側部材72と中間部材74と前側部材76とによって構成されている。前側部材76は、鋼板で構成され、後面が中間部材74の前面に接合されている。また、中間部材74の板厚が前側部材76よりも厚く設定されている。なお、中間部材74及び前側部材76の板厚は同一であってもよいし、中間部材74の板厚の方が薄くてもよい。
【0079】
図11(A)~図11(C)に示されるように、本実施形態では、後側部材72、中間部材74及び前側部材76は、それぞれ車幅方向の全長に亘って一様に形成されている。
【0080】
次に、バンパRF70の曲げ耐力特性について説明する。図10(B)には、バンパRF70の車幅方向の位置に対する曲げ耐力特性を示す線図が、模式的に示されている。上述の通り、バンパRF70を構成する各部の車幅方向から見た断面積は、中央部80、右側部84、左側部82の順に小さくなるように設定されている。このため、バンパRF70を構成する各部の曲げ耐力も、中央部80、右側部84、左側部82の順に小さくなっている。すなわち、右側部84と左側部82との間には、耐力差(矢印Eで示される)が設けられている。
【0081】
上記曲げ耐力特性を有することにより、図10(A)に示されるように、バンパRF70のうち、曲げ耐力が最も小さい左側部82と最も大きい中央部80との境界部分は、センターポール衝突時に最初に折れる第一折れ起点部86を構成している。また、曲げ耐力が二番目に小さい右側部84と最も大きい中央部80との境界部分は、第一折れ起点部86の次に折れる第二折れ起点部88を構成している。すなわち、バンパRF70は、中央部80の車幅方向両隣に、中央部80よりも断面積が小さい第一折れ起点部86と、第一折れ起点部86よりも断面積が大きい第二折れ起点部88とを備えている。
【0082】
第一折れ起点部86は、車幅方向中央よりも車幅方向左側に配置され、車両前方側から見てトランスアクスル30L(図1参照)と重複するように配置されている。また、第二折れ起点部88は、車幅方向中央よりも車幅方向右側に配置され、車両前方側から見てエンジン30R(図1参照)と重複するように配置されている。
【0083】
別の説明をすると、バンパRF70は、車幅方向から見た断面の形状及び寸法が、中央部80、第二折れ起点部88、第一折れ起点部86の順に断面二次モーメントが小さくなるように設定されている。また、本実施形態では、後側部材72はアルミニウム等の金属によって構成され、中間部材74と前側部材76とは、それぞれ鋼板により構成されている。鋼板のヤング率はアルミニウムよりも大きいため、鋼板を使用している部分は曲げ剛性が高い。したがって、曲げ剛性も中央部80、第二折れ起点部88、第一折れ起点部86の順に小さくなっている。すなわち、第一折れ起点部86が最も曲げ変形を生じやすく、次いで、第二折れ起点部88が曲げ変形を生じやすい。
【0084】
<作用効果>
次に、第3実施形態の作用効果について説明する。
【0085】
第3実施形態では、バンパRF70は、車幅方向に隣接する他の部分よりも車幅方向から見た断面積が大きい中央部80と、中央部80よりも断面積が小さい第一折れ起点部86と、第一折れ起点部86よりも断面積が大きい第二折れ起点部88とを備えている。このため、第一折れ起点部86と第二折れ起点部88との間には耐力差E(図10(B)参照)が設けられ、第一折れ起点部86の方が曲げ耐力が小さくなっている。すなわち、センターポール衝突時には最初に第一折れ起点部86が折れ、次に第二折れ起点部88が折れるように、折れる位置と順序がコントロールされている。これにより、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ダッシュ部40に対する局所的な入力を抑制でき、以って車室の変形を抑制することができる。
【0086】
また、中間部材74と前側部材76とがそれぞれ鋼板により構成され、アルミニウム等よりも強度が高いことから、中間部材74及び前側部材76にアルミニウム等を使用する場合と比べて、小さい断面積(薄い板厚)で所望の曲げ耐力を得ることができる。このため、中間部材74及び前側部材76にアルミニウム等を使用する場合と比べて、バンパRF70の車両前後方向の寸法を小さくしつつ、バンパRF70の折れ順をコントロールすることができる。
【0087】
なお、本実施形態では、図11(B)に示すように、後側部材72、中間部材74及び前側部材76の車両上下方向の寸法が略同一である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、中間部材74及び前側部材76の車両上下方向の寸法は、後側部材72よりも小さく設定されていてもよい。
【0088】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、ギアボックス44が、ダッシュ部40の一般部であるダッシュパネル42に対して車両前方へ突出し、「後方支持部」として機能する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0089】
例えば、パワーユニット30の一部が後方へ突出しており、この一部が、ダッシュ部40における例えばダッシュパネル42に最初に支持される態様(この場合、ダッシュパネル42の一部が「後方支持部」に相当する。)であってもよい。この場合であっても(ダッシュ部の一部が後方支持部であっても)、後方支持部は、ダッシュ部とパワーユニットとの間のエリアに設けられているといえる。
【0090】
また、上記実施形態では、「後方支持部」としてのギアボックス44が、車幅方向中央に対して車幅方向左側にずれた位置に配置された例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
例えば、ギアボックス44は、車幅方向中央に対して車幅方向右側にずれた位置に配置されてもよい。この場合、上記実施形態のパワーユニット30の構成を前提に考えると、ギアボックス44はエンジン30R(右側装置)を支持することとなる。この場合、バンパRF20、50、70のうち断面積が最も小さい左側部20A、62、82は、中央部20B、60、80に対して車幅方向右側に配置される。また、断面積が次に小さい右側部20C、64、84は、中央部20B、60、80に対して車幅方向左側に配置される。したがって、センターポール衝突時に最初に折れる第一折れ起点部20D、66、86が右側、二番目に折れる第二折れ起点部20E、68、88が左側に配置されることとなる。
【0092】
また、後方支持部は車幅方向中央に位置していてもよい。この場合、上記実施形態のパワーユニット30の構成を前提に考えると、後方支持部はエンジン30R(右側装置)を支持することとなる。そのため、バンパRF20、50、70の構成は、センターポール衝突時に最初に折れる第一折れ起点部20D、66、86を右側に、二番目に折れる第二折れ起点部20E、68、88を左側に有することとなる。
【0093】
また、本発明の「後方支持部」はギアボックス44に限定されない。例えば、マスターシリンダーであってもよいし、左右一対のロッカ(車体下部における車幅方向両端部を車両前後方向に延びる骨格部材)の前端部同士を連結する骨格部材であるダッシュクロスであってもよい。
また、後方支持部は、パワーユニットに対して反力を生じさせることができる部分(部材)である。したがって、配管やブラケットなどのような、パワーユニットを介して衝突荷重を受けた場合に容易に変形してしまう部分(部材)は、後方支持部には相当しない。
【0094】
また、上記実施形態では、第二折れ起点部20E、68、88が、車幅方向中央に対して第一折れ起点部20D、66、86と対称の位置に設けられている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。第二折れ起点部20E、68、88は、車幅方向中央に対して第一折れ起点部20D、66、86と反対側の位置に設けられていればよい。すなわち、前側部材56、76は、その車幅方向中央がバンパRF50、70の車幅方向中央と一致していなくともよい。
【0095】
また、上記実施形態では、図1に示すように、第一折れ起点部20D、66、86が、「後方支持部」(ギアボックス44)よりも車両幅方向外側の位置に設定されている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。第一折れ起点部20D、66、86が、後方支持部よりも車両幅方向内側の位置に設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
S1 車両前部構造
10 フロントサイドメンバ
20 バンパRF(バンパリインフォースメント)
20B、60、80 中央部
20D、66、86 第一折れ起点部
20E、68、88 第二折れ起点部
30 パワーユニット
30R エンジン(右側装置)
30L トランスアクスル(左側装置)
40 ダッシュ部
44 ギアボックス(後方支持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12