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特許7168445合わせガラス用中間膜及び合わせガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221101BHJP
   B32B 3/04 20060101ALI20221101BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20221101BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20221101BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20221101BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B3/04
B32B7/022
B32B17/10
B32B27/06
B32B27/22
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018510526
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2018003707
(87)【国際公開番号】W WO2018143443
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2017019045
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017019046
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 悠
(72)【発明者】
【氏名】石川 由貴
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163627(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111388(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158696(WO,A1)
【文献】特開2007-331964(JP,A)
【文献】特開2005-29083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であって、
1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
対向し合う第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面と前記第2の主面とを結ぶ側部とを有する第1の層と、
前記第1の層の前記側部の少なくとも一部を被覆している側部被覆部とを備え、
前記第1の層の25℃でのせん断弾性率が0.17MPa以下であり、かつ、前記側部被覆部の25℃でのせん断弾性率が1MPaを超え、
前記第1の層が、熱可塑性樹脂(但し、ポリビニルアセタール樹脂を除く)を含むか、又は、光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物を含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層が、熱可塑性樹脂(但し、ポリビニルアセタール樹脂を除く)と、可塑剤とを含む、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記側部被覆部が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層が、熱可塑性樹脂(但し、ポリビニルアセタール樹脂を除く)と、可塑剤とを含み、
前記側部被覆部が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含み、
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が、前記側部被覆部中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記側部被覆部中の前記可塑剤の含有量よりも15重量部以上多い、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記側部被覆部の厚みが、0.05mm以上2mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層の外周である前記側部の1周の距離100%中、前記側部被覆部により被覆されている側部の距離が15%以上100%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層の前記側部の全表面積100%中、前記側部被覆部により被覆されている表面積が15%以上100%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記第1の層の前記第1の主面上に配置された第2の層を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第2の層が、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部に至ることで、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部を被覆しており、前記第2の層によって前記側部被覆部が構成されている、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第2の層の材料と前記側部被覆部の材料とが異なる、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第2の層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記第1の層の前記第2の主面上に配置された第3の層を備える、請求項8~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第3の層が、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部に至ることで、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部を被覆しており、前記第3の層によって前記側部被覆部が構成されている、請求項12に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第3の層の材料と前記側部被覆部の材料とが異なる、請求項12に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
前記第3の層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
中間膜の厚みをTとしたときに、前記第1の層の厚みが0.06T以上である、請求項1~15のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に、請求項1~16のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜を配置して、合わせガラスを得る、合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜としては、1層の構造を有する単層の中間膜と、2層以上の構造を有する多層の中間膜とがある。
【0004】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部を超える可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0005】
さらに、下記の特許文献1には、上記遮音層と他の層とが積層された多層の中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部以下である可塑剤とを含む。
【0006】
下記の特許文献2には、1MPa~20MPa程度の第一弾性率を有する第一領域と、2~15MPa程度の第二弾性率を有する第二領域とを有する中間膜が開示されている。第二領域は、第一領域の周りを取り囲んでいてもよい。
【0007】
下記の特許文献3には、透明接着樹脂を含む2つの樹脂層(A)の間に、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂層(B)が配置されている中間膜が開示されている。樹脂層(A)の端部は、樹脂層(B)の端部よりも突出している。樹脂層(B)の端部は、樹脂層(A)の端部により覆われていてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-070200号公報
【文献】WO2015/054112A1
【文献】特開2008-303084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自動車を快適に運転するために、車内の騒音の低減が求められている。車内の騒音としては、エンジンの駆動による騒音、走行時のタイヤのトレッドパターンに起因する騒音、走行時の車体の振動による騒音、走行時のサスペンションの振動による騒音、及び走行時の風切りによる騒音等が挙げられる。このような騒音に対して、合わせガラスの2000Hz~4000Hzの中周波域での遮音性の向上が望まれている。
【0010】
また、近年、内燃機関を用いた燃料自動車から、電気自動車への移行が進行している。電気自動車としては、電気モータを用いた電気自動車、及び、内燃機関と電気モータとを用いたハイブリッド電気自動車等が挙げられる。電気自動車では、電気モータの駆動によって、4000Hzを超える高周波域での騒音が発生する。電気自動車では、4000Hzを超える高周波域での合わせガラスの遮音性を向上させることが望まれている。なお、内燃機関を用いた燃料自動車でも、4000Hzを超える高周波域での合わせガラスの遮音性に優れることが望ましい。
【0011】
なお、建築物等に用いられる合わせガラスにおいても、中周波域から高周波域での遮音性に優れることが望ましい。
【0012】
しかしながら、特許文献1~3に記載のような従来の中間膜を用いた合わせガラスでは、遮音性が十分に高くならないことがある。
【0013】
また、本発明者が検討した結果、中間膜の室温でのせん断弾性率を低くすることで、遮音性を高めることができる知見を得た。また、本発明者が検討した結果、遮音性を高めるために、中間膜の室温でのせん断弾性率を低くすると、合わせガラスの中間膜の端部において発泡が生じたり、合わせガラスの板ずれが生じたりすることがあるという課題が見出された。
【0014】
本発明の目的は、合わせガラスの遮音性を高め、かつ端部において発泡を生じ難くすることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、対向し合う第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面と前記第2の主面とを結ぶ側部とを有する第1の層と、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部を被覆している側部被覆部とを備え、前記第1の層の25℃でのせん断弾性率が0.17MPa以下であり、かつ、前記側部被覆部の25℃でのせん断弾性率が1MPaを超える、合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)が提供される。
【0016】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層が、熱可塑性樹脂を含むか、又は、光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物を含む。
【0017】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。
【0018】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記側部被覆部が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。
【0019】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含み、前記側部被覆部が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含み、前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が、前記側部被覆部中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記側部被覆部中の前記可塑剤の含有量よりも15重量部以上多い。
【0020】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記側部被覆部の厚みが、0.05mm以上2mm以下である。
【0021】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層の外周である前記側部の1周の距離100%中、前記側部被覆部により被覆されている側部の距離が15%以上100%以下である。
【0022】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層の前記側部の全表面積100%中、前記側部被覆部により被覆されている表面積が15%以上100%以下である。
【0023】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、前記第1の層の前記第1の主面上に配置された第2の層を備える。
【0024】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層が、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部に至ることで、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部を被覆しており、前記第2の層によって前記側部被覆部が構成されている。
【0025】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層の材料と前記側部被覆部の材料とが異なる。
【0026】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。
【0027】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、前記第1の層の前記第2の主面上に配置された第3の層を備える。
【0028】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第3の層が、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部に至ることで、前記第1の層の前記側部の少なくとも一部を被覆しており、前記第3の層によって前記側部被覆部が構成されている。
【0029】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第3の層の材料と前記側部被覆部の材料とが異なる。
【0030】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第3の層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む。
【0031】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜の厚みをTとしたときに、前記第1の層の厚みが0.06T以上である。
【0032】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【0033】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラス用中間膜の前記側部被覆部が、前記第1の合わせガラス部材及び前記第2の合わせガラス部材の側部の少なくとも一部上に至っている。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、対向し合う第1の主面及び第2の主面と、上記第1の主面と上記第2の主面とを結ぶ側部とを有する第1の層と、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部を被覆している側部被覆部とを備える。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記第1の層の25℃でのせん断弾性率が0.17MPa以下であり、かつ、上記側部被覆部の25℃でのせん断弾性率が1MPaを超える。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記の構成を備えているので、本発明において、遮音性を高め、かつ端部において発泡を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図及び断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の第4の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、本発明の第5の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、本発明の第6の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、本発明の第7の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、本発明の第8の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、本発明の第9の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図10図10は、本発明の第10の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、本発明の第11の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明に係る合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、第1の層のみを備える1層の構造を有する中間膜(単層の中間膜)であってもよく、第1の層と他の層とを備える2層以上の構造を有する中間膜(多層の中間膜)であってもよい。
【0038】
本発明に係る中間膜は、第1の層を備える。第1の層は、対向し合う第1の主面及び第2の主面と、上記第1の主面と上記第2の主面とを結ぶ側部とを有する。
【0039】
本発明に係る中間膜では、上記第1の層の25℃でのせん断弾性率が0.17MPa以下であり、かつ、上記側部被覆部の25℃でのせん断弾性率が1MPaを超える。
【0040】
本発明に係る中間膜は、上記の構成を備えているので、本発明において、遮音性を高め、かつ端部において発泡を生じ難くすることができる。
【0041】
上記第1の層のせん断弾性率が比較的小さいので、遮音性が高くなる。一方で、上記第1の層の側部の少なくとも一部が、せん断弾性率が比較的大きい側部被覆部により被覆されているので、端部において発泡を生じ難くすることができる。さらに、上記第1の層の側部の少なくとも一部が、せん断弾性率が比較的大きい側部被覆部により被覆されているので、合わせガラスの板ずれを抑えることができる。
【0042】
なお、板ずれとは、例えば、合わせガラスを立てかけた状態で高温環境下に保管したときに、ガラス板の重さにより一方のガラス板に対して他方のガラス板がずれてしまう現象をいう。
【0043】
遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層の25℃でのせん断弾性率は好ましくは0.165MPa以下、より好ましくは0.16MPa以下である。上記第1の層の25℃でのせん断弾性率は、0.01MPa以上であってもよい。
【0044】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記側部被覆部の25℃でのせん断弾性率は好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。上記側部被覆部の25℃でのせん断弾性率は100MPa以下であってもよい。
【0045】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0046】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図及び断面図である。図1(b)は、図1(a)のX-X線に沿う断面図である。なお、図1及び後述する図において、異なる箇所は互いに置き換え可能である。
【0047】
図1に示す中間膜11は、2層以上の構造を有する多層の中間膜であり、具体的には、3層の構造を有する多層の中間膜である。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11の平面形状は、四角形状である。
【0048】
中間膜11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。中間膜11は、側部被覆部4を備える。
【0049】
第1の層1は、対向し合う第1の主面及び第2の主面を有する。第1の層1は、第1の主面及び第2の主面を結ぶ側部を有する。本実施形態では、側部は、面状であり、側面である。第1の層1は、4つの側面を有する。なお、側部は、線状であってもよい。第1の層の端部は先細りした形状であってもよい。
【0050】
第2の層2は、第1の層1の第1の主面上に配置されており、積層されている。第3の層3は、第1の層1の第2の主面上に配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0051】
なお、第2の層2と第1の層1との間、及び、第1の層1と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第2の層2と第1の層1、及び、第1の層1と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。
【0052】
側部被覆部4は、第1の層1の側部の全体を被覆している。具体的には、第1の層1の4つの側面の全体が、側部被覆部4により被覆されている。
【0053】
第2の層2が、第1の層1の上記側部の中央まで至っている。これによって、第2の層2が、第1の層1の上記側部の半分の領域を被覆している。第2の層2によって側部被覆部4が構成されている。
【0054】
第3の層3が、第1の層1の上記側部の中央まで至っている。これによって、第3の層3が、第1の層1の上記側部の半分の領域を被覆している。第3の層3によって側部被覆部4が構成されている。
【0055】
したがって、第2の層2と第3の層3とによって、側部被覆部4の全体が構成されている。
【0056】
第2の層2と第3の層3とによって、第1の層1の全体が被覆されている。
【0057】
第2の層及び第3の層のうち、第2の層のみが第1の層の側部に至っていてもよく、第3の層のみが第1の層の側部に至っていてもよい。
【0058】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0059】
図2に示す中間膜11Aは、第1の層1Aと、第2の層2Aと、第3の層3Aとを備える。中間膜11Aは、側部被覆部4Aを備える。中間膜11Aでは、中間膜11と異なり、第1の層1Aの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面のみが、側部被覆部4Aにより被覆されている(図2の右側と左側)。第2の層2Aと第3の層3Aとによって、側部被覆部4Aが構成されている。第1の層1Aの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面が、側部被覆部4Aにより被覆されておらず、露出している(図2の手前側と奥側)。
【0060】
中間膜11A、及び後述する中間膜11C,11E,11F,11Iのような構成の場合、例えば、自動車のフロントガラスでは、側部被覆部4A,4C,4E,4F,4Iをフロントガラスの上下に位置するように配置することで、板ずれをより一層防止することができる。
【0061】
また、自動車のフロントガラスでは、フロントガラスが、2辺のみが視認されやすいようにかつ2辺は覆い隠されるように配置されることがある。このような場合に、中間膜11A,11C,11E,11F,11Iを好適に用いることができる。
【0062】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0063】
図3に示す中間膜11Bは、第1の層1Bと、第2の層2Bと、第3の層3Bとを備える。中間膜11Bは、側部被覆部4Bを備える。中間膜11Bでは、中間膜11と異なり、第1の層1Bの4つの側面のうち、1つの側面のみが、側部被覆部4Bにより被覆されている(図3の左側)。第2の層2Bと第3の層3Bとによって、側部被覆部4Bが構成されている。第1の層1Bの4つの側面のうち、3つの側面が、側部被覆部4Bにより被覆されておらず、露出している(図3の手前側と奥側と右側)。
【0064】
中間膜11B及び後述する中間膜11D,11G,11Jのような構成の場合、例えば、自動車のフロントガラスでは、側部被覆部4B,4D,4G,4Jをフロントガラスの下に位置するように配置することで、板ずれをより一層防止することができる。
【0065】
また、自動車のフロントガラスでは、フロントガラスが、1辺(例えば上辺)のみが視認されやすいようにかつ3辺は覆い隠されるように配置されることがある。このような場合に、中間膜11B,11D,11G,11Jを好適に用いることができる。
【0066】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0067】
図4に示す中間膜11Cは、第1の層1Cと、第2の層2Cと、第3の層3Cと、側部被覆部4Cを備える。中間膜11Cでは、中間膜11と異なり、第1の層1Cの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面のみが、側部被覆部4Cにより被覆されている(図4の右側と左側)。側部被覆部4Cの材料と、第2の層2C及び第3の層3Cの材料とは、異なる。側部被覆部4Cと、第2の層2C及び第3の層3Cとは、異なる樹脂組成物により形成されている。第2の層2C及び第3の層3Cとは別に、側部被覆部4Cが構成されている。第1の層1Cの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面が、側部被覆部4Cにより被覆されておらず、露出している(図4の手前側と奥側)。側部被覆部4Cは、第2の層2C及び第3の層3Cの側部は被覆していない。
【0068】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0069】
図5に示す中間膜11Dは、第1の層1Dと、第2の層2Dと、第3の層3Dと、側部被覆部4Dを備える。中間膜11Dでは、中間膜11と異なり、第1の層1Dの4つの側面のうち、1つの側面のみが、側部被覆部4Dにより被覆されている(図5の左側)。側部被覆部4Dの材料と、第2の層2D及び第3の層3Dの材料とは、異なる。側部被覆部4Dと、第2の層2D及び第3の層3Dとは、異なる樹脂組成物により形成されている。第2の層2D及び第3の層3Dとは別に、側部被覆部4Dが構成されている。第1の層1Dの4つの側面のうち、3つの側面が、側部被覆部4Dにより被覆されておらず、露出している(図5の手前側と奥側と右側)。側部被覆部4Dは、第2の層2D及び第3の層3Dの側部は被覆していない。
【0070】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0071】
図6に示す中間膜11Eは、第1の層1Eと、第2の層2Eと、第3の層3Eと、側部被覆部4Eを備える。中間膜11Eでは、中間膜11と異なり、第1の層1Eの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面のみが、側部被覆部4Eにより被覆されている(図6の右側と左側)。側部被覆部4Eの材料と、第2の層2E及び第3の層3Eの材料とは、異なる。側部被覆部4Eと、第2の層2E及び第3の層3Eとは、異なる樹脂組成物により形成されている。第2の層2E及び第3の層3Eとは別に、側部被覆部4Eが構成されている。第1の層1Eの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面が、側部被覆部4Eにより被覆されておらず、露出している(図6の手前側と奥側)。側部被覆部4Eは、第2の層2E及び第3の層3Eの側部も被覆している。
【0072】
図7は、本発明の第7の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0073】
図7に示す中間膜11Fは、2層の構造を有する多層の中間膜である。中間膜11Fの平面形状は、四角形状である。
【0074】
中間膜11Fは、第1の層1Fと、第2の層2Fとを備える。中間膜11Fは、側部被覆部4Fを備える。
【0075】
第1の層1Fは、対向し合う第1の主面及び第2の主面を有する。第1の層1Fは、第1の主面と第2の主面とを結ぶ側部を有する。本実施形態では、側部は、面状であり、側面である。第1の層1Fは、4つの側面を有する。
【0076】
側部被覆部4Fは、第1の層1Fの4つの側面のうち、対応し合う2つの側部の全体を被覆している。具体的には、第1の層1Fの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面のみが、側部被覆部4Fにより被覆されている(図7の右側及び左側)。第2の層2Fと第3の層3Fとによって、側部被覆部4Fが構成されている。第1の層1Fの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面が、側部被覆部4Fにより被覆されておらず、露出している(図7の手前側と奥側)。なお、第1の層1Fの第2の主面も露出している。第1の層1Fの第2の主面には、合わせガラス部材を積層することができる。
【0077】
図8は、本発明の第8の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0078】
図8に示す中間膜11Gは、第1の層1Gと、第2の層2Gとを備える。中間膜11Gは、側部被覆部4Gを備える。中間膜11Gでは、中間膜11と異なり、第1の層1Gの4つの側面のうち、1つの側面のみが、側部被覆部4Gにより被覆されている(図8の左側)。第2の層2Gによって、側部被覆部4Gが構成されている。第1の層1Gの4つの側面のうち、3つの側面が、側部被覆部4Gにより被覆されておらず、露出している(図8の手前側と奥側と右側)。なお、第1の層1Gの第2の主面も露出している。第1の層1Gの第2の主面には、例えば、合わせガラス部材を積層することができる。
【0079】
図9は、本発明の第9の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0080】
図9に示す中間膜11Hは、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜11Hの平面形状は、四角形状である。
【0081】
中間膜11Hは、第1の層1Hと、側部被覆部4Hを備える。
【0082】
第1の層1Hは、対向し合う第1の主面及び第2の主面を有する。第1の層1Hは、第1の主面と第2の主面とを結ぶ側部を有する。本実施形態では、側部は、面状であり、側面である。第1の層1Hは、4つの側面を有する。
【0083】
側部被覆部4Hは、第1の層1Hの側部の全体を被覆している。具体的には、第1の層1Hの4つの側面の全体が、側部被覆部4Hより被覆されている。なお、第1の層1Hの第1の主面及び第2の主面も露出している。第1の層1Hの第1の主面及び第2の主面には、例えば、合わせガラス部材を積層することができる。
【0084】
図10は、本発明の第10の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0085】
図10に示す中間膜11Iは、第1の層1Iと、側部被覆部4Iを備える。
【0086】
中間膜11Iでは、中間膜11と異なり、第1の層1Iの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面のみが、側部被覆部4Iにより被覆されている(図10の右側及び左側)。第1の層1Iの4つの側面のうち、対向し合う2つの側面が、側部被覆部4Iにより被覆されておらず、露出している(図10の手前側と奥側)。なお、第1の層1Iの第1の主面及び第2の主面も露出している。第1の層1Iの第1の主面及び第2の主面には、例えば、合わせガラス部材を積層することができる。
【0087】
図11は、本発明の第11の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す斜視図である。
【0088】
図11に示す中間膜11Jは、第1の層1Jと、側部被覆部4Jを備える。
【0089】
中間膜11Jでは、中間膜11と異なり、第1の層1Jの4つの側面のうち、1つの側面のみが、側部被覆部4Jにより被覆されている(図11の左側)。第1の層1Jの4つの側面のうち、3つの側面が、側部被覆部4Jにより被覆されておらず、露出している(図11の手前側と奥側と右側)。なお、第1の層1Jの第1の主面及び第2の主面も露出している。第1の層1Jの第1の主面及び第2の主面には、例えば、合わせガラス部材を積層することができる。
【0090】
上述した実施形態のように、上記側部被覆部は、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部を被覆していればよい。上記側部被覆部が、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部を被覆していれば、上記側部被覆部が存在する領域において、端部において発泡を生じ難くすることができる。上記側部被覆部が存在する領域が大きいほど、発泡をより一層生じ難くすることができる領域が大きくなる。上記側部被覆部は、上記第1の層の上記側部に相当する部分の外周全体を被覆していてもよく、上記第1の層の上記側部に相当する部分の外周の一部を被覆していてもよい。
【0091】
上記第2の層が上記樹脂被覆部を構成している場合に、上記第2の層が、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部に至ることで、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部を被覆していればよい。上記第3の層が上記樹脂被覆部を構成している場合に、上記第3の層が、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部に至ることで、上記第1の層の上記側部の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0092】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記第1の層の外周である上記側部の1周の距離100%中、上記側部被覆部により被覆されている側部の距離は好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、より一層好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、特に好ましくは25%以上、好ましくは100%以下である。
【0093】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記第1の層の上記側部の全表面積100%中、上記側部被覆部により被覆されている表面積は好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、より一層好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、特に好ましくは25%以上、好ましくは100%以下である。
【0094】
上記中間膜の平面形状が四角形等の多角形である場合に、第1の層の1辺以上の側部が上記側部被覆部により被覆されていることが好ましく、第1の層の2辺以上の側部が上記側部被覆部により被覆されていることがより好ましい。端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、第1の層の3辺以上の側部が上記側部被覆部により被覆されていることが更に好ましく、第1の層の4辺の側部が上記側部被覆部により被覆されていることが特に好ましい。
【0095】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記側部被覆部の厚みは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.07mm以上である。遮音性の向上、端部における発泡の抑制、及び板ずれの抑制効果をバランス良く高める観点からは、上記側部被覆部の厚みは、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.8mm以下である。側部被覆部の厚みは、上記第1の層の側部上での側部被覆部の厚みを平均することにより求められる。側部被覆部の厚みには、側部被覆部が形成されていない部分は考慮されない。
【0096】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、本発明に係る中間膜は、上記第1の層の上記第1の主面上に配置された上記第2の層を備えることが好ましい。
【0097】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記第1の層の25℃でのせん断弾性率が0.17MPa以下であり、かつ、上記第2の層の25℃でのせん断弾性率が1MPaを超えることが好ましい。
【0098】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記第2の層の25℃でのせん断弾性率は好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。上記第2の層の25℃でのせん断弾性率は100MPa以下であってもよい。
【0099】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、本発明に係る中間膜は、上記第1の層の上記第2の主面上に配置された上記第3の層を備えることが好ましい。
【0100】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記第1の層の25℃でのせん断弾性率が0.17MPa以下であり、かつ、上記第3の層の25℃でのせん断弾性率が1MPaを超えることが好ましい。
【0101】
端部における発泡をより一層抑え、板ずれをより一層抑える観点からは、上記第3の層の25℃でのせん断弾性率は好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。上記第3の層の25℃でのせん断弾性率は100MPa以下であってもよい。
【0102】
以下、本発明に係る中間膜を構成する上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記側部被覆部の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記側部被覆部に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0103】
(樹脂)
上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記側部被覆部はそれぞれ、樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
上記樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が挙げられる。上記樹脂は、光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物であってもよい。上記光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物が、熱可塑性樹脂となることもある。
【0105】
なお、熱可塑性樹脂とは加熱すると軟化して可塑性を示し、室温まで冷却すると固化する樹脂である。熱可塑性エラストマーとは、熱可塑性樹脂の中でも特に、加熱すると軟化して可塑性を示し、室温(25℃)まで冷却すると固化してゴム弾性を示す樹脂を意味する。
【0106】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。なお、ポリオキシメチレン(又はポリアセタール)樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂に含まれる。
【0107】
上記に例示した熱可塑性樹脂は、樹脂の分子構造や重合度等の調整によって熱可塑性エラストマーとなりうる。
【0108】
上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリ酢酸ビニルであることがより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂又はポリエステル樹脂であることが更に好ましく、上記ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂であることが特に好ましい。
【0109】
上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むむか、又は、光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物(以下、硬化物(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂(1)及び硬化物(1)を併せて、樹脂(1)と呼ぶ。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(1)を含んでいてもよく、光硬化性化合物又は湿気硬化性化合物を硬化させた硬化物を含んでいてもよい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)又はポリエステル樹脂(以下、ポリエステル樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記樹脂被覆部は、樹脂(以下、樹脂(4)と記載することがある)を含むことが好ましく、樹脂(4)として熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記樹脂被覆部は、樹脂(4)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(4)と記載することがある)、エポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂(4)と記載することがある)、ポリエステル樹脂(以下、ポリエステル樹脂(4)と記載することがある)、又はアクリル樹脂(以下、エポキシ樹脂(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)、上記熱可塑性樹脂(3)、上記樹脂(4)及び上記熱可塑性樹脂(4)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)、上記熱可塑性樹脂(3)及び上記熱可塑性樹脂(4)は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0110】
光硬化性化合物もしくは湿気硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましく、(メタ)アクリル重合体であることがより好ましい。上記樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましく、(メタ)アクリル重合体であることがより好ましい。
【0111】
上記(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含む重合性組成物の重合体であることが好ましい。上記重合性組成物は、重合成分を含む。上記硬化物を含む層における上記硬化物を効果的に形成するために、上記重合性組成物は、光反応開始剤を含んでいてもよい。上記重合性組成物は、光反応開始剤とともに、硬化反応を促進するための助剤を含んでいてもよい。上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物の代表例としては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0112】
本発明の効果を効果的に得るために、上記重合成分は、環状エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル、極性基を有する(メタ)アクリル酸エステル、側鎖の炭素数が6以下の非環式(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。これらの好ましい(メタ)アクリル酸エステルの使用により、遮音性と発泡抑制性能との双方をバランスよく高めることができる。
【0113】
上記環状エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジル、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル;(3-メチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-プロピルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-ブチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)エチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)プロピル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ブチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ペンチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ヘキシル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル;テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル-(メタ)アクリレート、2-{1-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2-メチルプロピル}(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。本発明の効果を効果的に得る観点から、特に、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートが好ましい。
【0114】
上記芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ベンジルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
【0115】
上記極性基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、極性基として、水酸基、アミド基、アミノ基、イソシアネート基等を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0116】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0117】
アミド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0118】
アミド基又はアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0119】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0120】
上記(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリロイル基を有する多価カルボン酸エステルであってもよい。該(メタ)アクリロイル基を有する多価カルボン酸エステルとしては、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。
【0121】
本発明の効果を効果的に得る観点から、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0122】
上記側鎖の炭素数が6以下の非環式(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0123】
本発明の効果を効果的に得るために、上記重合成分100重量%中、側鎖の炭素数が8以上の非環式(メタ)アクリル酸エステルの配合量は、20重量%未満であることが好ましい。
【0124】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記した化合物以外に、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシルプロピルフタレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)クリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)クリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0125】
上記(メタ)アクリル酸エステルは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記(メタ)アクリル重合体は、上記の(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であってもよく、上記の(メタ)アクリル酸エステルを含む重合成分の共重合体であってもよい。
【0126】
上記光反応開始剤としては、具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等が挙げられる。上記光反応開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
上記助剤としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルが挙げられる。また、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。上記助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0128】
上記助剤は、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであることが好ましい。
【0129】
上記重合性組成物100重量%中、上記光反応開始剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記光反応開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光硬化性及び保存安定性がより一層高くなる。
【0130】
本発明の効果に優れることから、上記ポリ酢酸ビニルは、酢酸ビニルと、上記官能基を有するモノマーとを含む重合性組成物の重合体であることが好ましい。
【0131】
上記官能基を有するモノマーとしては、3-メチル-3-ブチル1-オール、エチレングリコールモノビニルエーテル、及びイソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0132】
遮音性を効果的に高める観点からは、ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量は、好ましくは25万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは40万以上、特に好ましくは50万以上である。層間接着力を良好にする観点からは、ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量は、好ましくは120万以下、より好ましくは90万以下である。
【0133】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0134】
上記重合性組成物を重合させて上記ポリ酢酸ビニルを合成する方法は特に限定されない。この合成方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、及びUV重合法等が挙げられる。
【0135】
中間膜の透明性を高め、かつ、透明性が高められた中間膜において、遮音性及び層間接着力を効果的に高める観点からは、上記ポリ酢酸ビニルの合成方法は、溶液重合法であることが好ましい。
【0136】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより得られる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70~99.9モル%である。
【0137】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0138】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0139】
上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、4又は5であることが好ましい。
【0140】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0141】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、より一層好ましくは27モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは25モル%未満、最も好ましくは24モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また30モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、28モル%以下であると遮音性が更に一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0142】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31モル%を超える。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、更に好ましくは31.5モル%以上、更に一層好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは37モル%以下、より好ましくは36.5モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0143】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0144】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0145】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐貫通性により一層優れる。
【0146】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上であり、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0147】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0148】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0149】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0150】
上記アセタール化度は、以下のようにして求める。先ず、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を求める。得られた値を、主鎖の全エチレン基量で除算してモル分率を求める。このモル分率を百分率で示した値がアセタール化度である。
【0151】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0152】
上記ポリエステル樹脂は、一般に知られたポリエステルの製造方法によって製造できる。上記ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応でポリエステルを得る方法、多塩基酸のアルキルエステルと多価アルコールとをエステル交換反応でポリエステルを得る方法、上記方法により得られたポリエステルを重合触媒の存在下で更に重合させてポリエステルを得る方法で製造することができる。
【0153】
上記多塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、ドデセニル無水コハク酸、テルペン-マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;(無水)トリメリト酸、(無水)ピロメリト酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸等の3価以上のカルボン酸;4,4-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-ペンタン酸、4-モノ(4’-ヒドロキシフェニル-ペンタン酸、p-ヒドロキシ安息香酸などのモノカルボン酸等が挙げられる。
【0154】
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、4-プロピル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナジオール等の脂肪族グリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテルグリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール、水添加ビスフェノール等の脂環族ポリアルコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリアルコール等が挙げられる。
【0155】
上記ポリエステル樹脂の市販品としては、例えばユニチカ社製「エリーテルUE-3220」及びユニチカ社製「エリーテルUE-3223」が挙げられる。
【0156】
なお、上記樹脂被覆部は、上述した樹脂に代えて、ゴムを含んでいてもよい。上記ゴムとしては、天然ゴム、クロロプレンアクリロゴム、ニトリブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム及びフッ素ゴム等が挙げられる。なお、本明細書において、天然ゴム及び合成ゴムなどのゴムも、樹脂に含まれる。
【0157】
(可塑剤)
上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記側部被覆部は、可塑剤(以下、可塑剤(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、更にポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤(1)と上記可塑剤(2)と上記可塑剤(3)と上記可塑剤(4)は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記可塑剤(1)、上記可塑剤(2)、上記可塑剤(3)及び上記可塑剤(4)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0158】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0159】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸及び安息香酸等が挙げられる。
【0160】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0161】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2,2―ブトキシエトキシエチル、安息香酸グリコールエステル、アジピン酸1,3-ブチレングリコールポリエステル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、炭酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0162】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0163】
上記可塑剤は、下記式(11)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0164】
【化1】
【0165】
上記式(11)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(11)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基であることが好ましく、炭素数6~10の有機基であることがより好ましい。
【0166】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことが好ましい。上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0167】
上記第1の層において、上記樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量を、含有量(1)とする。上記樹脂(1)が熱可塑性樹脂(1)である場合には、樹脂(1)100重量部は、熱可塑性樹脂(1)100重量部である。樹脂(1)がポリビニルアセタール樹脂(1)である場合には、樹脂(1)100重量部は、ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部である。樹脂(1)がポリエステル樹脂(1)である場合には、樹脂(1)100重量部は、ポリエステル樹脂(1)100重量部である。その他の樹脂も同様である。上記含有量(1)は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上であり、好ましくは130重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは90重量部以下、特に更に好ましくは85重量部以下、最も好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0168】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量を、含有量(2)とする。上記第3の層において、熱可塑性樹脂(2)がポリビニルアセタール樹脂(2)である場合には、熱可塑性樹脂(2)100重量部は、ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部である。熱可塑性樹脂(2)がポリエステル樹脂(2)である場合には、熱可塑性樹脂(2)100重量部は、ポリエステル樹脂(2)100重量部である。その他の樹脂の基準も同様である。上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量を、含有量(3)とする。熱可塑性樹脂(3)がポリビニルアセタール樹脂(3)である場合には、熱可塑性樹脂(3)100重量部は、ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部である。熱可塑性樹脂(3)がポリエステル樹脂(3)である場合には、熱可塑性樹脂(3)100重量部は、ポリエステル樹脂(3)100重量部である。その他の樹脂の基準も同様である。上記側部被覆部において、上記樹脂(4)100重量部に対する上記可塑剤(4)の含有量を、含有量(4)とする。上記樹脂(4)が熱可塑性樹脂(4)である場合には、樹脂(4)100重量部は、熱可塑性樹脂100重量部である。熱可塑性樹脂(4)がポリビニルアセタール樹脂(4)である場合には、熱可塑性樹脂(4)100重量部は、ポリビニルアセタール樹脂(4)100重量部である。熱可塑性樹脂(4)がポリエステル樹脂(4)である場合には、熱可塑性樹脂(4)100重量部は、ポリエステル樹脂(4)100重量部である。その他の樹脂の基準も同様である。上記含有量(2)、上記含有量(3)及び上記含有量(4)は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、より好ましくは39重量部以下、更に好ましくは35重量部以下、更に一層好ましくは32重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)、上記含有量(3)及び上記含有量(4)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)、上記含有量(3)及び上記含有量(4)が上記上限以下であると、耐貫通性がより一層高くなる。
【0169】
合わせガラスの遮音性をより一層高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(4)よりも多いことが好ましい。
【0170】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値並びに上記含有量(4)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値並びに上記含有量(4)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0171】
(軟化点が70℃以上200℃以下である化合物)
遮音性を効果的に高める観点からは、上記第1の層は、軟化点が70℃以上200℃以下である化合物(以下、化合物(A)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記化合物(A)の使用によって、第1の層におけるガラス転移温度近傍にて、分子運動が大きくなり、結果として遮音性が高くなると考えられる。上記化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0172】
遮音性を効果的に高める観点からは、上記化合物(A)の軟化点は、好ましくは80℃以上であり、好ましくは190℃以下である。
【0173】
なお、上記化合物(A)が軟化点を有さない化合物である場合、遮音性を効果的に高める観点からは、上記第1の層は、融点が70℃以上200℃以下である化合物を含むことが好ましい。
【0174】
上記化合物(A)は、熱可塑性樹脂とは異なる化合物であることが好ましい。上記化合物(A)は、ポリビニルアセタール樹脂とは異なる化合物であることが好ましい。
【0175】
上記化合物(A)としては、具体的には、芳香族を複数有するエステル化合物;芳香族を複数有するエーテル化合物;ロジン樹脂、テルペン樹脂及び石油樹脂等の粘着付与剤;塩素化パラフィン等が挙げられる。
【0176】
上記化合物(A)の市販品としては、KE-311(荒川化学工業社製、軟化点95℃)及びエンパラ70(味の素ファインテクノ社製、軟化点100℃)等が挙げられる。
【0177】
上記第1の層100重量%中、上記化合物(A)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。また、上記熱可塑性樹脂(1)100重量部(熱可塑性樹脂(1)がポリビニルアセタール樹脂(1)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部)100重量部に対する上記化合物(A)の含有量は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは60重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。上記化合物(A)の含有量が上記下限以上であると、遮音性が効果的に高くなる。上記化合物(A)の含有量が上記上限以下であると、成形性がより一層良好になる。
【0178】
(遮熱性物質)
上記中間膜は、遮熱性物質(遮熱性化合物)を含んでいてもよい。上記第1の層は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記第2の層は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記第3の層は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記側部被覆部は、遮熱性物質を含んでいてもよい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0179】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含んでいてもよい。上記第1の層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記第2の層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記第3の層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記側部被覆部は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記成分Xは遮熱性物質である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0180】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0181】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0182】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0183】
上記成分Xを含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記成分Xを含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0184】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含んでいてもよい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記側部被覆部は、上記遮熱粒子を含んでいてもよい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0185】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0186】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0187】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0188】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0189】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0190】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であり、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0191】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0192】
上記遮熱粒子を含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。上記遮熱粒子を含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0193】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びMg塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含んでいてもよい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記側部被覆部は、上記金属塩Mを含んでいてもよい。上記表面層が、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、中間膜と合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0194】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0195】
また、上記金属塩Mは、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2~16の有機酸のMg塩であることがより好ましく、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0196】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0197】
上記金属塩Mを含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上であり、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜と合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0198】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。上記側部被覆部は、紫外線遮蔽剤を含んでいてもよい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0199】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0200】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤等が挙げられる。
【0201】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0202】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤である。上記紫外線遮蔽剤は、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0203】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0204】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0205】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0206】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0207】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0208】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0209】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0210】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0211】
上記紫外線遮蔽剤を含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上である。上記紫外線遮蔽剤を含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。上記紫外線遮蔽剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制することができる。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0212】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記第1の層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記第2の層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記第3の層は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記側部被覆部は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0213】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0214】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0215】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0216】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0217】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0218】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む部位(第1の層、第2の層、第3の層又は側部被覆部)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0219】
(他の成分)
上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記側部被覆部はそれぞれ、必要に応じて、ケイ素、アルミニウム又はチタンを含むカップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、耐湿剤、架橋剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0220】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
上記中間膜の一端と他端との距離は、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上であり、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下である。中間膜が長さ方向と幅方向とを有する場合には、一端と他端との距離は、中間膜の長さ方向の距離である。中間膜が正方形の平面形状を有する場合には、一端と他端との距離は、対向し合う一端と他端との距離である。
【0221】
上記中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上であり、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性が高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0222】
中間膜の厚みをTとする。上記第1の層の厚みは、好ましくは0.06T以上、より好ましくは0.0625T以上、更に好ましくは0.1T以上であり、好ましくは0.4T以下、より好ましくは0.375T以下、更に好ましくは0.25T以下、更に好ましくは0.15T以下である。上記第1の層の厚みが0.4T以下であると、曲げ剛性がより一層良好になる。また、上記第1の層の厚みが上記下限以上であると、遮音性がより一層高くなる。
【0223】
上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.3T以上、より好ましくは0.3125T以上、更に好ましくは0.375T以上であり、好ましくは0.9375T以下、より好ましくは0.9T以下である。上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、0.46875T以下であってもよく、0.45T以下であってもよい。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0224】
上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、更に好ましくは0.85T以上であり、好ましくは0.9375T以下、より好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0225】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0226】
本発明に係る中間膜の製造方法は特に限定されない。本発明に係る中間膜の製造方法としては、例えば、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0227】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0228】
上記中間膜は、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記中間膜は、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0229】
(合わせガラス)
図12は、第1の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【0230】
図12に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11とを備える。合わせガラス31では、図1に示す中間膜11が用いられている。中間膜11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0231】
中間膜11の第1の表面(第1の主面)に、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11の第1の表面とは反対の第2の表面(第2の主面)に、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第1の層1の外側の表面に第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面に第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0232】
合わせガラス31では、側部被覆部4の外表面と、合わせガラス構成部材21及び合わせガラス構成部材22の側面とが連なっている。合わせガラス31では、第1の層1が側部被覆部4により被覆されていることで、第1の層1は露出していない。
【0233】
図13は、第2の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【0234】
図13に示す合わせガラス31Xは、第1の合わせガラス部材21Xと、第2の合わせガラス部材22Xと、中間膜11Xとを備える。中間膜11Xは、第1の層1Xと、金属被覆部4Xとを備える。
【0235】
中間膜11Xの第1の表面(第1の主面)に、第1の合わせガラス部材21Xが積層されている。中間膜11の第1の表面とは反対の第2の表面(第2の主面)に、第2の合わせガラス部材22Xが積層されている。
【0236】
合わせガラス31Xでは、側部被覆部4Xが、合わせガラス構成部材21X及び合わせガラス構成部材22Xの側面上にも至っている。合わせガラス31Xでは、第1の層1Xが側部被覆部4Xにより被覆されていることで、第1の層1は露出していない。合わせガラス31Xでは、合わせガラス構成部材21X及び合わせガラス構成部材22Xの側面が側部被覆部4Xにより被覆されていることで、合わせガラス構成部材21X及び合わせガラス構成部材22Xの側面は露出していない。
【0237】
合わせガラス31のように、中間膜の側部被覆部が、第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材の側部の少なくとも一部上に至っていてもよい。中間膜の側部被覆部が、第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材の側部に至っていなくてもよい。
【0238】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の双方が、ガラス板(第1のガラス板及び第2のガラス板)であることが好ましい。上記中間膜は、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために好適に用いられる。
【0239】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代わる合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0240】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上であり、好ましくは0.5mm以下である。
【0241】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。先ず、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、積層体を得る。次に、例えば、得られた積層体を押圧ロールに通したり又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりすることにより、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70~110℃で予備接着して予備圧着された積層体を得る。次に、予備圧着された積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120~150℃及び1~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、第1の層と第2の層と第3の層とを積層してもよい。
【0242】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0243】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0244】
以下の材料を用意した。
【0245】
(樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂:
下記の表1に示すポリビニルアセタール樹脂を用いた。用いたポリビニルアセタール樹脂では全て、アセタール化に、炭素数4のn-ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0246】
ポリエステル樹脂:
PEs1(UE3220、ユニチカ社製)
PEs2(UE3223、ユニチカ社製)
【0247】
(メタ)アクリル重合体:
以下の合成方法により得られた(メタ)アクリル重合体Ac1、Ac2、Ac3及びAc4
下記の表3に示す配合組成を有する重合性組成物を、2枚の片面離型処理されたPETシート(ニッパ社製、厚み50μm)に挟み込んで、厚み100μmの重合性組成物層を形成した。なお、2枚のPETシートの周囲にスペーサを配置した。高圧水銀UVランプを用いて、照射量3000mJ/cmで紫外線を重合性組成物層に照射することにより、重合性組成物を反応により硬化させて、(メタ)アクリル重合体体Ac1、Ac2、Ac3、Ac4及びAc5を得た。
【0248】
ポリ酢酸ビニル:
以下の合成方法により得られたポリ酢酸ビニルPVAc1
還流冷却器、滴下漏斗、温度計及び窒素導入口を備えるガラス製重合容器を用意した。この重合容器内に、酢酸ビニルモノマー100重量部と、3-メチル-3-ブチル-1-オール1.0重量部と、メタノール3.8重量部とを入れ、加熱及び攪拌して重合容器内を窒素置換した。次に、上記重合容器内の温度を60℃にして、重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシネオデカネート0.02重量部と、酢酸ビニルモノマー150重量部と、3-メチル-3-ブチル-1-オール1.5重量部とを、4時間かけて滴下し、滴下終了後2時間重合させて、ポリ酢酸ビニルを含む溶液を得た。この溶液を110℃のオーブンで3時間乾燥させることにより、ポリ酢酸ビニルPVAc1を得た。
【0249】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
安息香酸系可塑剤(PB-3A、DIC社製)(P1)
ジ-(2-ブトキシエチル)アジペート(DBEA)
アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)(D931)
【0250】
(化合物(A))
化合物(A1)(KE-311、荒川化学工業社製、軟化点95℃)
化合物(A2)(エンパラ70、味の素ファインテクノ社製、軟化点100℃)
【0251】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0252】
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0253】
(金属塩)
Mg混合物(2-エチル酪酸マグネシウムと酢酸マグネシウムとの50:50(重量比)混合物)
【0254】
参考例1)
第1の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤(3GO)75重量部と、化合物(A1)(KE-311)100重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第1の層を形成するための組成物を得た。
【0255】
第2の層及び第3の層(側部被覆部を含む)を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤(3GO)35重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部と、得られる中間膜中で金属元素濃度(Mg濃度)が70ppmとなる量のMg混合物とを混合し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物を得た。
【0256】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物と、第2の層及び第3の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第2の層(厚み340μm)/第1の層(厚み100μm)/第3の層(厚み340μm)の積層構造を有する中間膜(厚み780μm)を作製した。
【0257】
押出成形時に、第2の層を第1の層の側面の中央まで至らせて、かつ、第3の層を第1の層の側面の中央まで至らせて、第2の層及び第3の層により側部被覆部を構成した。得られた中間膜では、第1の層の側面全体が、側部被覆部により覆われていた。
【0258】
合わせガラスAの作製(遮音性測定用):
得られた中間膜の中央部を縦6.5cm×横6.5cmの大きさに切断した。次に、JIS R3208に準拠したグリーンガラス(縦6.5cm×横6.5cm×厚さ2mm)2枚の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスAを得た。
【0259】
合わせガラスBの作製(端部の発泡評価用):
得られた中間膜を縦10cm×横10cmの大きさに切断した。側部被覆部を有する中間膜の場合は少なくとも1辺の端部に側部被覆部が存在するように中間膜を切断した。次に、洗浄及び乾燥したクリアフロートガラス(縦10cm×横10cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスBを得た。
【0260】
合わせガラスCの作製(板ずれ評価用):
得られた中間膜を縦30cm×横15cmの大きさに切断した。側部被覆部を有する中間膜の場合は横辺の端部に側部被覆部が存在するように中間膜を切断した。次に、洗浄及び乾燥したクリアフロートガラス(縦30cm×横15cm×厚さ3.0mm)2枚の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスCを得た。
【0261】
参考例2~7及び実施例8~12)
第1の層を形成するための組成物と第2の層及び第3の層を形成するための組成物とに用いる熱可塑性樹脂及び可塑剤の種類と配合量とを下記の表1,2に示すように設定したこと以外は参考例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。また、参考例2~7及び実施例8~12及び後述する比較例1,2では、参考例1と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、参考例1と同様の配合量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.2重量部)で配合し、参考例1と同じ種類のMg混合物を、参考例1と同様の配合量(中間膜中で金属元素濃度(Mg濃度)が70ppmとなる量)で配合した。
【0262】
なお、参考例7では、熱可塑性樹脂100重量部に対して、化合物(A1)と化合物(A2)とをそれぞれ60重量部で用いた。
【0263】
(比較例1)
第1の層の側部を第2,第3の層により被覆しなかったこと以外は参考例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。
【0264】
(比較例2)
第1の層の側部を第2,第3の層により被覆しなかったこと以外は参考例3と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。
【0265】
(実施例13)
第1の層の作製:
上記で得られた(メタ)アクリル重合体Ac1(硬化物を含む層、厚み100μm)を用意した。
【0266】
第2の層及び第3の層の作製:
第2,第3の層を形成するための組成物の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第2,第3の層を形成するための組成物を得た。
【0267】
ポリビニルアセタール樹脂(PVB)100重量部
可塑剤(3GO)35重量部
得られる第2,第3の層中でMgが70ppmとなる量の金属塩M(Mg混合物)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0268】
得られた第2,第3の層を形成するための組成物を、押出機を用いて押出して、第2,第3の層(各厚み380μm)を得た。
【0269】
中間膜の作製:
第1の層の外側に第2の層及び第3の層を積層した。ロールラミネーター(アコ・ブランズ・ジャパン社製「GDRB316 A3」)を用いて、100℃及び速度設定3でラミネートすることにより、第2の層/第1の層/第3の層の構造を有する中間膜を得た。
【0270】
積層時に、第2の層を第1の層の側面の中央まで至らせて、かつ、第3の層を第1の層の側面の中央まで至らせて、第2の層及び第3の層により側部被覆部を構成した。得られた中間膜では、第1の層の側面全体が、側部被覆部により覆われていた。
【0271】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜を用いたこと以外は参考例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0272】
(実施例14~16)
配合成分の種類及び配合量を下記の表4に示すように設定したこと以外は実施例13と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。また、実施例14~16では、実施例13と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、実施例13と同様の配合量(第2,第3の層中での配合量)で配合し、実施例13と同じ種類のMg混合物を、実施例13と同様の配合量(第2,第3の層中での配合量)で配合した。
【0273】
(実施例17)
第1の層を形成するための組成物の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た。
【0274】
ポリ酢酸ビニルPVAc1を100重量部
可塑剤(D931)70重量部
得られる第1の層中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)
得られる第1の層中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0275】
第2,第3の層を形成するための組成物の作製:
以下の配合成分を混合し、ミキシングロールで充分に混練し、第2,第3の層を形成するための組成物を得た。
【0276】
ポリビニルアセタール樹脂(PVB)100重量部
可塑剤(D931)30重量部
得られる第2,第3の層中でMgが70ppmとなる量の金属塩M(Mg混合物)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)
得られる第2,第3の層中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(BHT)
【0277】
中間膜の作製:
得られた第1の層を形成するための組成物と、得られた第2,第3の層を形成するための組成物とを共押出機により押出して、第2の層(厚み370μm)/第1の層(厚み100μm)/第3の層(厚み370μm)の構造を有する中間膜を得た。
【0278】
押出成形時に、第2の層を第1の層の側面の中央まで至らせて、かつ、第3の層を第1の層の側面の中央まで至らせて、第2の層及び第3の層により側部被覆部を構成した。得られた中間膜では、第1の層の側面全体が、側部被覆部により覆われていた。
【0279】
(評価)
(1)せん断弾性率
以下のようにして第1の層の粘弾性測定を行った。
【0280】
第1の層を形成するための組成物の混練物を用意した。得られた混練物をプレス成型機で150℃でプレス成型して、厚みが0.35mmである樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を25℃及び相対湿度30%の条件で2時間放置した。2時間放置した後に、TAインスツルメント社製「ARES-G2」を用いて、粘弾性を測定した。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用いた。3℃/分の降温速度で30℃から-50℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪み1%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。なお、得られた中間膜を室温23±2℃、相対湿度25±5%の環境下に1ヶ月保管した。次いで、室温23℃±2℃の環境下にて、中間膜から第2の層及び第3の層を剥離することにより取り除いて、第1の層を得た。得られた第1の層を、厚みが0.35mmとなるように150℃でプレス成型(加圧しない状態で150℃10分間、加圧した状態で150℃10分間)して樹脂膜を作製してもよい。
【0281】
第2及び第3の層についても第1の層と同様にして第1の層の粘弾性測定を行った。
【0282】
(2)遮音性
得られた合わせガラスの遮音性を、静かな部屋に設置した音響箱を用いて評価した。音響箱は厚さ10mmの木製の板材を組み合わせた縦10cm、横10cm、高さ10cmの箱であり、一面に縦7cm、7cmの開口部が設けた。また、音響箱の内部にスピーカを備えた音楽プレーヤを置いた。次いで、遮音性測定用に作製した合わせガラスAを開口部に配置し、合わせガラスAの周囲と開口部の間の隙間を粘土で埋めて開口部に固定した。音楽プレーヤにはあらかじめ、周波数500Hzから8000Hzまでのビープ音(ビープ信号音)が一定時間毎にスピーカから出るように、ビープ音を録音しておいた。
【0283】
評価者が、音響箱の開口部に設置した合わせガラスAの正面にて、音楽プレーヤからの音を聞き、合わせガラスAを通じて音響箱から漏れてくるビープ信号音が特定の周波数で大きくならず、低周波側から高周波側まで均等に遮音できているか否かを官能評価した。
【0284】
評価者が周波数によらず均等にビープ信号音を聞き取れた場合を「○」、評価者が特定の周波数で他の周波数よりも大きいビープ信号音を聞き取った場合を「×」と評価した。
【0285】
(3)端部の発泡
オートクレーブを完了した合わせガラスBを25℃で12時間放置した後、50℃のオーブンで3日間ベイクした。ベイク完了後、オーブンから合わせガラスBを取り出し、合わせガラス端部から1cm以内の発泡の有無を評価した。合わせガラスの角から1cm以内の範囲は評価の対象外とした。端部の発泡を以下の基準で判定した。
【0286】
[端部の発泡の判定基準]
○:発泡有り
×:発泡無し
【0287】
(4)板ずれ
合わせガラスCの一方の面を垂直面に固定し、合わせガラスの側面にズレ量を測定するための基準線を引き、100℃で7日間放置した。7日後、評価サンプルの2枚のガラスのズレ量を測定し評価した。板ずれを以下の基準で判定した。
【0288】
[板ずれの判定基準]
○:ずれ量が5mm以下
×:ずれ量が5mmを超える
【0289】
詳細及び結果を下記の表1~4に示す。なお、下記の表1~4では、熱可塑性樹脂等の樹脂及び可塑剤以外の配合成分の記載は省略した。
【0290】
【表1】

【0291】
【表2】
【0292】
【表3】
【0293】
(メタ)アクリル重合体Ac1、Ac2、Ac3及びAc45の合成時に用いた表3に示す成分の詳細は以下の通りである。
【0294】
EA:エチルアクリレート(日本触媒社製)
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル(大阪有機化学工業社製)
BzA:アクリル酸ベンジル(大阪有機化学工業社製、ビスコート#160)
BA:アクリル酸ブチル(日本触媒社製)
AMP-20GY:フェノキシポリエチレングリコールアクリレー(新中村化学工業社製)
3GO:トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート
IRGACURE 184:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製)
【0295】
【表4】
【符号の説明】
【0296】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1X…第1の層
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G…第2の層
3,3A,3B,3C,3D,3E…第3の層
4,4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G,4H,4I,4J,4X…側部被覆部
11,11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11H,11I,11J,11X…中間膜
21,21X…第1の合わせガラス部材
22,22X…第2の合わせガラス部材
31,31X…合わせガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13