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  • 特許-電動式ガス流量調節弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電動式ガス流量調節弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/528 20060101AFI20221101BHJP
   F16K 31/524 20060101ALI20221101BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F16K31/528
F16K31/524 B
F23K5/00 301D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019008253
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020118201
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】▲葛▼谷 廣太郎
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-508471(JP,A)
【文献】実開昭60-088178(JP,U)
【文献】中国実用新案第2854234(CN,Y)
【文献】特開2006-266680(JP,A)
【文献】特開2010-007795(JP,A)
【文献】特開2009-127720(JP,A)
【文献】実開昭60-112770(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44-31/62
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブケーシング内の弁座に向けて軸方向に接近、離間するニードル弁体と、電動モータと、電動モータの回転でニードル弁体を軸方向に移動させる運動変換機構とを備える電動式ガス流量調節弁であって、
運動変換機構は、電動モータの回転で回転する回転体と、バルブケーシングに対し回り止めされた筒状のカム体と、カム体に形成した螺旋状のカム溝に係合する、ニードル弁体に固定のカムピンとを備え、ニードル弁体は、回転体に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結され、軸方向のうちニードル弁体が弁座に接近する方向を往動方向、弁座から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体を往動方向に移動させる電動モータの回転方向を正転方向、ニードル弁体を復動方向に移動させる電動モータの回転方向を逆転方向として、電動モータの正転方向と逆転方向の回転で回転体を介してニードル弁体を正転方向と逆転方向に回転させると共に、ニードル弁体の正転方向の回転によるカム溝の復動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の往動方向成分でニードル弁体を往動方向に移動させ、ニードル弁体の逆転方向の回転によるカム溝の往動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の復動方向成分でニードル弁体を復動方向に移動させるように構成されるものにおいて、
カム体は、カム溝を境にして往動方向側半部と復動方向側半部とに2分割され、往動方向側半部にカム溝の往動方向側側縁が形成されると共に、復動方向側半部にカム溝の復動方向側側縁が形成され、
往動方向側半部は、バルブケーシングに対し軸方向に移動不能で、且つ、回り止めされ、復動方向側半部は、バルブケーシングに対し軸方向に移動自在で、且つ、回り止めされ、カムピンがカム溝の往動方向側側縁と復動方向側側縁との間に挟圧されるように復動方向側半部を往動方向に付勢する付勢手段が設けられ、
付勢手段の付勢力は、電動モータの正転方向の回転でニードル弁体を正転方向に回転させつつ往動方向に移動させる際にカム溝の復動方向側側縁にカムピンから作用する押圧力の復動方向成分を上回るように設定されることを特徴とする電動式ガス流量調節弁。
【請求項2】
前記バルブケーシング内に装着される前記弁座が形成された部材に、前記往動方向側半部が一体に形成されることを特徴とする請求項1記載の電動式ガス流量調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブケーシング内の弁座に向けて軸方向に接近、離間するニードル弁体と、電動モータと、電動モータの回転でニードル弁体を軸方向に移動させる運動変換機構とを備える電動式ガス流量調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式ガス流量調節弁として、運動変換機構を、電動モータの回転で回転する回転体と、回転体に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結された筒状のカム体と、カム体に形成した螺旋状のカム溝に係合する、ニードル弁体に固定のカムピンとを備えるカム機構で構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでニードル弁体は、バルブケーシングに対し軸方向に移動自在で、且つ、回り止めされている。また、軸方向のうちニードル弁体が弁座に接近する方向を往動方向、弁座から離隔する方向を復動方向として、カム体の往動方向への移動を所定位置で制止するストッパと、カム体を所定位置に付勢保持する付勢手段とを備えている。そして、電動モータの正転方向と逆転方向の回転で回転体を介してカム体を正転方向と逆転方向に回転させると共に、カム体の正転方向の回転によるカム溝の復動方向側側縁のカムピンに対する当接力の往動方向成分でニードル弁体を往動方向に移動させ、カム体の逆転方向の回転によるカム溝の往動方向側側縁のカムピンに対する当接力の復動方向成分でニードル弁体を復動方向に移動させるようにしている。また、ニードル弁体が弁座に当接することでそれ以上の往動方向への移動が制止されてから更に電動モータが正転方向に回転しても、カム溝の復動方向側側縁のカムピンに対する当接反力の復動方向成分でカム体が付勢手段の付勢力に抗して復動方向に移動し、ニードル弁体と弁座との当接部に過大な力が作用して傷が付くことを防止できる。
【0003】
ここで、上記第1の従来例のものは、ニードル弁体をバルブケーシングに対し回り止めし、カム体を回転体と一緒に回転させるようにしているが、回転体に対しニードル弁体を軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結し、カム体をバルブケーシングに対し回り止めするようにしたものも考えられている。この第2の従来例では、電動モータの正転方向と逆転方向の回転で回転体を介してニードル弁体を正転方向と逆転方向に回転させると共に、ニードル弁体の正転方向の回転によるカム溝の復動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の往動方向成分でニードル弁体を往動方向に移動させ、ニードル弁体の逆転方向の回転によるカム溝の往動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の復動方向成分でニードル弁体を復動方向に移動させる。
【0004】
ところで、上記第1と第2の何れの従来例でも、カムピンをカム溝にスムーズに挿入できるように、カム溝の往動方向側側縁と復動方向側側縁との間の間隔をカムピンの直径より若干大きくすることが要求される。そのため、電動モータの正転方向の回転でカム溝の復動方向側側縁とカムピンとを当接させて、ニードル弁体を往動方向に移動させるときと、電動モータの逆転方向の回転でカム溝の往動方向側側縁とカムピンとを当接させて、ニードル弁体を復動方向に移動させるときとで、電動モータの回転位相が同じでもガス流量に差を生ずる現象、即ち、ヒステリシスが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-13274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ヒステリシスの発生を抑制できるようにした電動式ガス流量調節弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バルブケーシング内の弁座に向けて軸方向に接近、離間するニードル弁体と、電動モータと、電動モータの回転でニードル弁体を軸方向に移動させる運動変換機構とを備える電動式ガス流量調節弁であって、運動変換機構は、電動モータの回転で回転する回転体と、バルブケーシングに対し回り止めされた筒状のカム体と、カム体に形成した螺旋状のカム溝に係合する、ニードル弁体に固定のカムピンとを備え、ニードル弁体は、回転体に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結され、軸方向のうちニードル弁体が弁座に接近する方向を往動方向、弁座から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体を往動方向に移動させる電動モータの回転方向を正転方向、ニードル弁体を復動方向に移動させる電動モータの回転方向を逆転方向として、電動モータの正転方向と逆転方向の回転で回転体を介してニードル弁体を正転方向と逆転方向に回転させると共に、ニードル弁体の正転方向の回転によるカム溝の復動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の往動方向成分でニードル弁体を往動方向に移動させ、ニードル弁体の逆転方向の回転によるカム溝の往動方向側側縁に対するカムピンの当接反力の復動方向成分でニードル弁体を復動方向に移動させるように構成されるものにおいて、カム体は、カム溝を境にして往動方向側半部と復動方向側半部とに2分割され、往動方向側半部にカム溝の往動方向側側縁が形成されると共に、復動方向側半部にカム溝の復動方向側側縁が形成され、往動方向側半部は、バルブケーシングに対し軸方向に移動不能で、且つ、回り止めされ、復動方向側半部は、バルブケーシングに対し軸方向に移動自在で、且つ、回り止めされ、カムピンがカム溝の往動方向側側縁と復動方向側側縁との間に挟圧されるように復動方向側半部を往動方向に付勢する付勢手段が設けられ、付勢手段の付勢力は、電動モータの正転方向の回転でニードル弁体を正転方向に回転させつつ往動方向に移動させる際にカム溝の復動方向側側縁にカムピンから作用する押圧力の復動方向成分を上回るように設定されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、電動モータを正転方向と逆転方向との何れの方向に回転させても、カムピンはカム溝の往動方向側と復動方向側の両側縁に接する。そのため、電動モータの正転方向回転でニードル弁体を往動方向に移動させるときと、電動モータの逆転方向回転でニードル弁体を復動方向に移動させるときとの何れにおいても、電動モータの回転位相が同じであれば、ニードル弁体の軸方向位置は同じになり、ヒステリシスの発生を抑制できる。
【0009】
また、ニードル弁体が弁座に当接することでそれ以上の往動方向への移動が制止されてから更に電動モータが正転方向に回転しても、カム溝の復動方向側側縁に対するカムピンの当接力の復動方向成分でカム体の復動方向側半部が付勢手段の付勢力に抗して復動方向に移動する。そのため、ニードル弁体と弁座との当接部に過大な力が作用して傷が付くことを防止できる。
【0010】
ところで、バルブケーシングに弁座を一体に形成せずに、バルブケーシング内に、弁座が形成された部材を装着することがある。この場合は、弁座が形成された部材に、カム体の往動方向側半部を一体に形成することが望ましい。これによれば、部品共用化で部品点数の削減を図ることができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の電動式ガス流量調節弁の切断側面図。
図2図1のII-IIで切断した電動式ガス流量調節弁の半部の断面図。
図3図2のIII-III線で切断した断面図。
図4】実施形態の電動式ガス流量調節弁に設けられる運動変換機構の分解状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2を参照して、本発明の実施形態の電動式ガス流量調節弁は、バルブケーシング1内の弁座11に向けて軸方向に接近、離間する截頭円錐状のニードル弁体2と、電動モータ3と、電動モータ3の回転でニードル弁体2を軸方向に移動させる運動変換機構とを備えている。バルブケーシング1内には、図外のガス流入口に連通する一次側ガス室12と、ガス流出口13aに連通する二次側ガス室13とが設けられている。そして、二次側ガス室13に、一次側ガス室12と二次側ガス室13とを仕切る弁座11が形成された部材4を装着している。
【0013】
以下、軸方向のうちニードル弁体2が弁座11に接近する方向を往動方向、弁座11から離隔する方向を復動方向、ニードル弁体2を往動方向に移動させる電動モータ3の回転方向を正転方向、ニードル弁体2を復動方向に移動させる電動モータ3の回転方向を逆転方向として説明する。
【0014】
図4も参照して、運動変換機構は、電動モータ3の出力軸31に連結子32を介して連結される、電動モータ3の回転で回転する筒状の回転体5と、バルブケーシング1に対し回り止めされた筒状のカム体6と、カム体6に形成した螺旋状のカム溝61に係合する、ニードル弁体2に固定のカムピン21とを備えている。カムピン21の基部には大径部21aが形成されており、この大径部21aを回転体5に形成した軸方向に長手のスリット51に摺動自在に係合させている。そのため、ニードル弁体2は、回転体5に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように連結される。そして、運動変換機構は、電動モータ3の正転方向と逆転方向の回転で回転体5を介してニードル弁体2を正転方向と逆転方向に回転させると共に、ニードル弁体2の正転方向(図3でカムピン21が上方に移動する方向)の回転によるカム溝61の復動方向側側縁61bに対するカムピン21の当接反力の往動方向成分でニードル弁体2を往動方向に移動させ、ニードル弁体2の逆転方向(図3でカムピン21が下方に移動する方向)の回転によるカム溝61の往動方向側側縁61aに対するカムピン21の当接反力の復動方向成分でニードル弁体2を復動方向に移動させるように構成される。
【0015】
ここで、カム体6は、カム溝61を境にして往動方向側半部62と復動方向側半部63とに2分割される。そして、往動方向側半部62にカム溝61の往動方向側側縁61aが形成され、復動方向側半部63にカム溝61の復動方向側側縁61bが形成される。往動方向側半部62は、バルブケーシング1に対し軸方向に不動で、且つ、往動方向側半部62の外周面に突設したリブ621をバルブケーシング1の内周面に形成した溝14に係合することで回り止めされている。また、往動方向側半部62は、復動方向側半部63が内挿される周壁部622を有している。そして、この周壁部622の内周面に厚肉部622aを形成すると共に、この周壁部622から復動方向に突出する、厚肉部622aに連続する突起部623を設けて、この突起部623及び厚肉部622aの復動方向を向く端縁でカム溝61の往動方向側側縁61aを構成している。
【0016】
また、復動方向側半部63は、バルブケーシング1に対し軸方向に移動自在である。そして、後述する如くカム溝61の往動方向側側縁61aと復動方向側側縁61bとの間にカムピン21を挟圧した状態において、復動方向側半部63の復動方向の端縁とバルブケーシング1の復動方向の端壁部内面との間に隙間Aが空いており、この隙間A分だけ復動方向側半部63が復動方向に移動可能である。また、復動方向側半部63は、復動方向側半部63の周壁部の復動方向側端部に形成した軸方向に長手の切欠き部631にバルブケーシング1の内面の復動方向側端部に突設したリブ15(図2図3参照)を係合させることで、バルブケーシング1に対し回り止めされている。尚、部品点数を削減できるように、往動方向側半部62は、弁座11を形成した部材4に一体に形成されている。
【0017】
更に、カムピン21が、図3に示す如く、カム溝61の往動方向側側縁61aと復動方向側側縁61bとの間に挟圧されるように、復動方向側半部63を往動方向に付勢するコリルスプリングから成る付勢手段64を設けている。付勢手段64の付勢力は、電動モータ3の正転方向の回転でニードル弁体2を正転方向に回転させつつ往動方向に移動させる際にカム溝61の復動方向側側縁61bにカムピン21から作用する押圧力の復動方向成分を上回るように設定されている。
【0018】
以上の構成によれば、電動モータ3を正転方向と逆転方向との何れの方向に回転させても、カムピン21はカム溝61の往動方向側と復動方向側の両側縁61a,61bに接する。具体的には、電動モータ3の正転方向の回転でカムピン21をカム溝61の復動方向側側縁61bに当接させて、ニードル弁体2を往動方向に移動させている状態において、カムピン21はカム溝61の往動方向側側縁61aにも接しており、同様に、電動モータ3の逆転方向の回転でカムピン21をカム溝6の往動方向側縁61aに当接させて、ニードル弁体2を復動方向に移動させている状態において、カムピン21はカム溝61の復動方向側側縁61bにも接している。そのため、電動モータ3の正転方向回転でニードル弁体2を往動方向に移動させるときと、電動モータ3の逆転方向回転でニードル弁体2を復動方向に移動させるときとの何れにおいても、電動モータ3の回転位相が同じであれば、ニードル弁体2の軸方向位置は同じになり、ヒステリシスの発生を抑制できる。
【0019】
また、電動モータ3の正転方向の回転をニードル弁体2が弁座11に当接した瞬間に停止することは制御上困難である。そのため、ニードル弁体2が弁座11に当接することでそれ以上の往動方向への移動が制止されてから更に電動モータ3が正転方向に若干回転することになる。本実施形態によれば、ニードル弁体2が弁座11に当接してから更に電動モータ3が正転方向に回転しても、カム溝61の復動方向側側縁61bに対するカムピン21の当接力の復動方向成分でカム体6の復動方向側半部63が付勢手段64の付勢力に抗して復動方向に移動する。そのため、ニードル弁体2と弁座11との当接部に過大な力が作用して傷が付くことを防止できる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バルブケーシング1に弁座11を一体に形成することも可能であり、この場合は、弁座11から分離独立したカム体6の往動方向側半部62をバルブケーシング1内に固定すればよい。また、ニードル弁体2が回転体5に対し軸方向に移動自在で、且つ、一緒に回転するように、ニードル弁体2を回転体5にスプライン係合させてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1…バルブケーシング、11…弁座、2…ニードル弁体、21…カムピン、3…電動モータ、4…弁座を形成した部材、5…回転体、6…カム体、61…カム溝、61a…カム溝の往動方向側側縁、61b…カム溝の復動方向側側縁、62…往動方向側半部、63…復動方向側半部、64…付勢手段。
図1
図2
図3
図4