(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】食品組成物及び骨芽細胞分化促進剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20221101BHJP
A61K 31/7008 20060101ALI20221101BHJP
A61K 31/737 20060101ALI20221101BHJP
A61K 35/644 20150101ALI20221101BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20221101BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/7008
A61K31/737
A61K35/644
A61P19/10
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2019018599
(22)【出願日】2019-02-05
(62)【分割の表示】P 2014079366の分割
【原出願日】2014-04-08
【審査請求日】2019-03-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 友香
(72)【発明者】
【氏名】佐道 哲也
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】平塚 政宏
【審判官】大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-290813(JP,A)
【文献】特開2005-278654(JP,A)
【文献】特開2009-118824(JP,A)
【文献】特開2010-88403(JP,A)
【文献】特開2000-139408(JP,A)
【文献】コンドロイチン&グルコサミン・ローヤルゼリー3個セット(93包558粒)(3ヶ月分),Amazon,2013年11月29日,p.1-4,https://www.amazon.co.jp/杉養蜂園-コンドロイチン・グルコサミン・ローヤルゼリー3個セット-93包558粒-3ヶ月分/dp/BOOGSMNBXM
【文献】Collagen C Jerry Strips,2013年,Mintel,p.1-2,http://www.gnpd.com,検索日:2020年3月5日
【文献】Glucosamine and Chondroitin,2007年,Mintel,p.1-3,http://www.gnpd.com,検索日:2020年3月5日
【文献】International Journal of Molecular Medicine,2011年,Vol.28,p.373-379
【文献】Arthritis Research & Therapy,2007年,Vol.9,No.6,p.1-9,http://arthritis-research.com/content/9/6/R117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含む食品組成物であって、ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが
4~20重量部、コンドロイチン硫酸が
0.2~10重量部含まれ、ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸の合計の含量が食品組成物全量中30~85重量%である、食品組成物(ただし、飲料及びアディポネクチン分泌促進用食品組成物を除く)。
【請求項2】
ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含む食品組成物であって、ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが
4~20重量部、コンドロイチン硫酸が
0.2~10重量部含まれ、ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸の合計の含量が食品組成物全量中30~85重量%である、食品組成物(ただし、飲料を除き、且つ該組成物は、コロソリン酸、レスベラトロール、イソフラボン、アルテピリンC、3,4-ジヒドロキシ-5-プレニル桂皮酸、ケルセチン、ケンフェライド、p-クマール酸、4-ジヒドロシンナモイルオキシ-3-プレニル桂皮酸、プロポリス、アスタキサンチン、リコピン、アントシアニン、プロアントシアニジン、カテキン類、イソラムネチン、ケンフェロール、ルチン、コエンザイムQ10、ビタミンE、及びアスコルビン酸カルシウムより選ばれる1種又は2種以上の抗酸化物質を含まない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた骨芽細胞への分化促進作用を有する食品組成物に関する。さらに、本発明は、骨芽細胞への分化促進剤、骨形成促進剤、並びに骨重量低下疾患の治療及び/又は予防用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、破壊と形成の絶妙なバランスによって動的な恒常性を保ちながら、常に生まれ変わっている。骨リモデリングと呼ばれるこの再構築は、破骨細胞が古くなった骨を吸収(
破壊)することで一連のプロセスが始まる(吸収期)。次に、古くなった破骨細胞がマクロ
ファージに貪食されて破骨細胞の機能が抑制され(逆転期)、骨芽細胞がその欠失部分に骨基質を分泌し充填する(形成期)。骨芽細胞による骨形成で骨が補完された後、骨形成は休止される(静止期)。このように、骨の破壊と形成の均衡は、骨形成を担当する骨芽細胞と骨吸収を担当する破骨細胞の両者により厳密に調節されており、この均衡が崩れると、骨組織は異常をきたし、骨粗鬆症等の各種骨疾患を呈することが知られている。
【0003】
現在、骨粗鬆症に対する治療薬としてビスフォスフォネート製剤等が使用されている。しかし、未だ治療効率のみならず、安全性等で解決できていない課題もあり、それらを解決した更なる治療薬の開発が求められている。特に、日常的に使用できるという観点から、食品にも医薬品にも使える素材が望ましい。
【0004】
グルコサミンは、結合組織や軟骨組織においてグリコサミノグリカンの構成因子として存在し、それら組織の強度、柔軟性、弾力性に寄与している。食用として、カニ・エビ等より採取され、使用される。グルコサミンの摂取によって、軟骨代謝を正常化することが知られていることから、ヒトの変形性関節症の治療に用いられてきた。また、非特許文献1では、グルコサミンが、骨を新生する骨芽細胞の分化を促進することが報告されている。
【0005】
コンドロイチン硫酸も同様に、結合組織や軟骨組織においてグリコサミノグリカンの構成因子として存在することが知られており、食用としてサメ等の軟骨組織より採取され、使用される。コンドロイチン硫酸の摂取によってヒトの変形性関節症に対する有効性があると考えられている。また、非特許文献2では、コンドロイチン硫酸が破骨細胞の分化を抑制することが報告されている。さらに、非特許文献3では、コンドロイチン硫酸とグルコサミンの組み合わせが、ヒトの変形性関節症における軟骨下骨の骨芽細胞吸収を抑制することが報告されている。
【0006】
ローヤルゼリーは蜜蜂の唾液腺で合成され、頭部にあるマンデブラー腺から分泌されるミルク状の物質で、女王蜂幼虫用の巣房に入れられた幼虫蜂に対して働き蜂が女王蜂を作るために与えるものである。現在、ローヤルゼリーは健康食品、医薬品、化粧品など世界中で広く利用されており、有効性として、血流増加作用、血圧降下作用、成長促進作用、性ホルモン様作用、脂質低下作用、抗菌作用、抗腫瘍作用、創傷治癒促進作用、自律神経失調症治癒作用、抗ストレス作用、カルシウム吸収促進作用、血糖値低下作用、抗酸化作用等が報告されている。さらに、非特許文献4では、ローヤルゼリーが卵巣を摘出したラットにおいて骨の損失を防ぐのに効果があったことが確認され、非特許文献5では、骨芽細胞への作用を介して骨形成に関する活性を刺激することが確認されていることから、ローヤルゼリーを骨粗鬆症の予防に使用できる可能性があることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】M. Igarashi et al., Int J Mol Med, 28(3), 373-9(2011)
【文献】T. Miyazaki et al., Dental Materials Journal, 29(4), 403-10(2010)
【文献】S. K. Tat et al., Arthritis Research & Therapy 2007, 9:R117 (doi:10.1186/ar2325)
【文献】S. Hidaka et al., eCAM, 3(3), 339-348(2006)
【文献】Y. Narita et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 70(10),2508-2514(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の報告を受け、発明者らがグルコサミン・コンドロイチン硫酸、ローヤルゼリーについて、骨芽細胞の分化促進作用を評価し、骨粗鬆症への予防効果を検証したところ、個々の有効性は高くなかった。
【0009】
そこで、本発明は、優れた骨芽細胞への分化促進作用を有する食品組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、骨芽細胞への分化促進剤、骨形成促進剤、並びに骨重量低下疾患の治療及び/又は予防効果を有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ローヤルゼリーと、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を組み合わせて使用することにより、骨芽細胞への分化促進効果が、非特許文献3~5に記載されているようなローヤルゼリー、又はグルコサミン及びコンドロイチン硫酸をそれぞれ単独で用いた場合と比べて、優れた相乗効果が発揮されるという知見を得た。
【0011】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の食品組成物、骨芽細胞への分化促進剤、骨形成促進剤及び医薬組成物を提供するものである。
【0012】
項1.ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含む食品組成物。
項2.ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが1~20重量部、コンドロイチン硫酸が0.01~10重量部含まれる、項1に記載の食品組成物。
項3.ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが4~20重量部、コンドロイチン硫酸が0.2~10重量部含まれる、項1又は項2に記載の食品組成物。
項4.ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが1~12重量部、コンドロイチン硫酸が0.01~2重量部含まれる、項1又は項2に記載の食品組成物。
項5.ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含む骨芽細胞への分化促進剤。
項6.ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが1~20重量部(好ましくは、4~20重量部又は1~12重量部)、コンドロイチン硫酸が0.01~10重量部(好ましくは、0.2~10重量部又は0.01~2重量部)含まれる、項5に記載の骨芽細胞への分化促進剤。
項7.ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含む骨形成促進剤。
項8.ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが1~20重量部(好ましくは、4~20重量部又は1~12重量部)、コンドロイチン硫酸が0.01~10重量部(好ましくは、0.2~10重量部又は0.01~2重量部)含まれる、項7に記載の骨形成促進剤。
項9.ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含む医薬組成物。
項10.ローヤルゼリー1重量部に対して、グルコサミンが1~20重量部(好ましくは、4~20重量部又は1~12重量部)、コンドロイチン硫酸が0.01~10重量部(好ましくは、0.2~10重量部又は0.01~2重量部)含まれる、項9に記載の医薬組成物。
項11.骨重量低下疾患の治療及び/又は予防用である、項9又は10に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の食品組成物は、ローヤルゼリーとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸の相乗効果により優れた骨芽細胞への分化促進効果を有している。そのため、ローヤルゼリーとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸の組み合わせは、骨芽細胞への分化促進剤、骨形成促進剤及び(特に、骨重量低下疾患の治療及び/又は予防用の)医薬組成物の成分として有用である。
【0014】
また、本発明の組成物は、従来から食品素材として用いられてきたローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を使用するものであるから、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】骨芽細胞の分化促進作用についての結果を示すグラフである。
【
図2】破骨細胞の分化抑制作用についての結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の食品組成物、骨芽細胞への分化促進剤、骨形成促進剤及び医薬組成物は、ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明におけるグルコサミンには、グルコサミン(2-アミノ-2-デオキシグルコース)及
びその生理学的に許容される塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)の両方が包含される。グルコサミンは、グルコースのヒドロキシル基がアミノ基に置換されたもので、生体内ではグルコースとグルタミンから生合成される。グルコサミンは、動物、植物及び微生物の、多糖、ムコ多糖、糖脂質、糖タンパク質、細菌細胞壁ペプチドグリカン、リポ多糖等に含まれ、特に動物においては、糖タンパク質に付加する糖鎖の成分として、軟骨、腱、靱帯などの結合組織に分布している。グルコサミンとしては、化学合成したものや市販品等いずれも使用することができる。
【0019】
本発明におけるコンドロイチン硫酸には、コンドロイチン硫酸及びその生理学的に許容される塩(例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム
等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の金属との塩)の両方が包含される。コンドロイ
チン硫酸は、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンの二糖を主要繰返し単位とし
、硫酸エステルとして存在するグリコサミノグリカンであり、硫酸基の結合位置によって種類が分かれるが、いずれのものも本発明におけるコンドロイチン硫酸に含まれる。コンドロイチン硫酸としては、サメ等の動物から得られたもの、微生物から得られたもの、市販品等いずれも使用することもできる。
【0020】
ローヤルゼリーは、蜜蜂のうち日齢3~12日の働き蜂が下咽頭腺及び大腮腺から分泌す
る分泌物を混合して作る乳白色のゼリー状物質である。ローヤルゼリー中の主な生理活性成分としては、例えば、ローヤルゼリーに特有な10-ハイドロキシデセン酸(以下、「デセン酸」と記載する)等の有機酸類をはじめ、タンパク質、脂質、糖類、ビタミンB類や葉酸、ニコチン酸、パントテン酸等のビタミン類、各種ミネラル類等が挙げられる。本発明におけるローヤルゼリーには、生ローヤルゼリー、乾燥ローヤルゼリー、乾燥ローヤルゼリー粉末、酵素処理ローヤルゼリー、ローヤルゼリー抽出物、ローヤルゼリー発酵物などが含まれる。また、ローヤルゼリーの産地は、ヨーロッパ諸国、オセアニア諸国、アメリカ、ブラジル、日本、中国、その他アジア諸国等いずれであってもよい。
【0021】
乾燥ローヤルゼリー粉末は、生ローヤルゼリーを乾燥させて粉末化したものである。
【0022】
酵素処理ローヤルゼリーは、ローヤルゼリーをタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で処理したものである。好ましくは、プロテアーゼ処理によってローヤルゼリーに含まれるタンパク質に起因するアレルギー反応が抑制されてなる、低アレルゲン化酵素処理ローヤルゼリーである。したがって、酵素処理ローヤルゼリーには、ローヤルゼリー中に含まれるタンパク質のプロテアーゼ分解物の他に、前述するデセン酸等の有機酸類、脂質、糖類、ビタミン類、及び各種ミネラル類が含まれ得る。
【0023】
酵素処理ローヤルゼリーの製造に用いられるローヤルゼリーとしては、制限されないが、生ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーを乾燥させて粉末化したローヤルゼリー粉末、又は生ローヤルゼリーを水若しくは含水エタノール等により抽出したものが挙げられる。酵素処理ローヤルゼリーは、特開2007-295919号公報、特開2007-295920号公報等の記載に従い製造することができる。
【0024】
ローヤルゼリー抽出物は、ローヤルゼリー(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を水又は含水エタノール等により抽出したものである。
【0025】
ローヤルゼリー発酵物は、酵母や乳酸菌等の微生物を使用して常法により製造することができる。
【0026】
本発明の食品組成物には、上記ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸をそのまま使用することもできるが、必要に応じて、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0027】
本発明の食品組成物には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる食品組成物が含まれる。本発明の食品組成物の種類は、特に限定されず、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグ
ルト、ローヤルゼリー等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等)
;洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデ
ー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0028】
本発明の食品組成物の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
【0029】
また、本発明の食品組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、又は特定保健用食品としても使用できる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の食品組成物における上記ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸の合計の含量は、食品組成物全量中通常30~85重量%、好ましくは50~85重量%又は30~60重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0031】
本発明の食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0032】
本発明の食品組成物は、骨重量低下疾患の予防及び/又は治療に有用である。
【0033】
本発明の骨芽細胞への分化促進剤及び骨形成促進剤は、骨芽細胞への分化促進作用が妨げられない限り、追加の成分が配合されていてもよい。かかる追加の成分を含む場合の骨芽細胞への分化促進剤及び骨形成促進剤中のローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸の合計の割合としては、例えば、30~85重量%を例示することができる。
【0034】
本発明の骨芽細胞への分化促進剤及び骨形成促進剤は、その形態を特に問うものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状、液状、懸濁液状、乳液状などの製剤形態を有していてもよい。
【0035】
本発明の骨芽細胞への分化促進剤及び骨形成促進剤は、骨芽細胞への分化促進作用を有するため、骨重量低下疾患の治療及び/又は予防の医薬組成物の有効成分として、好適に使用することができる。
【0036】
本発明の骨芽細胞への分化促進剤及び骨形成促進剤は、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品、例えば健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、又は栄養機能食品の意味も包含するものである。また、本発明の骨芽細胞への分化促進剤及び骨形成促進剤は、骨芽細胞への分化促進効果及び骨形成促進剤効果を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0037】
上記の飲食品には、必要に応じて、賦形剤、光沢剤、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0038】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0039】
上記の飲食品に含まれるローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸の合計の割合は、例えば、30~85重量%の濃度を挙げることができる。
【0040】
上記の飲食品の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0041】
医薬組成物として調製する場合、上記ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸をそのまま使用するか、又は医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブ
ル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液
剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液
や電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)などの形態に調製して
、医薬用の製剤にすることが可能である。
【0042】
本発明の医薬組成物における上記ローヤルゼリー、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸の合計の含量は、医薬組成物全量中通常30~85重量%、好ましくは50~85重量%又は30~60重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0043】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができる。
【0044】
本発明の医薬組成物は、骨重量低下疾患の予防及び/又は治療に有用である。
【0045】
骨重量低下疾患としては、特に限定されるものではないかが、例えば、骨粗鬆症(原発
性骨粗鬆症及び二次性骨粗鬆症)、癌骨転移症、高カルシウム血症、ページェット病、骨
欠損、骨壊死等が挙げられる。また、本発明の食品組成物、分化促進剤、骨形成促進剤及び医薬組成物は、骨の手術後の骨形成の促進や骨移植代替療法等にも適用可能であると考えられる。
【0046】
本発明の食品組成物、分化促進剤、骨形成促進剤及び医薬組成物中には、ローヤルゼリー1重量部(乾燥重量)に対して、好ましくは、グルコサミンが1~20重量部、コンドロイチン硫酸が0.01~10重量部、より好ましくは、グルコサミンが4~20重量部、コンドロイチ
ン硫酸が0.2~10重量部、又はグルコサミンが1~12重量部、コンドロイチン硫酸が0.01~2重量部含まれる。
【0047】
以上説明した本発明の食品組成物、分化促進剤、骨形成促進剤、及び医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対して適用されるものである。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を更に詳しく説明するため試験例を挙げる。しかし、本発明はこれら試験例等になんら限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1〕
ローヤルゼリー、グルコサミン、コンドロイチン硫酸の混合物:
ローヤルゼリーの凍結乾燥粉末、グルコサミン、コンドロイチン硫酸の終濃度が、各々100μg/mL、1149μg/mL、135μg/mLとなるようにフェノールレッドフリーの10% FBS添加
α-MEM培地(Invitrogen, Cat. No. 41061-029)に溶解し、Millex-HV Filter Unit PVDF 0.45μm (ミリポア、SLHV033RS)でフィルター滅菌した。
【0050】
〔比較例1〕
被験物質を含まない上記10% FBS添加α-MEM培地を用意した。
【0051】
〔比較例2〕
被験物質としてローヤルゼリーのみを含む組成物:
ローヤルゼリー凍結乾燥粉末の終濃度が100μg/mLとなるように上記10% FBS添加α-MEM培地に溶解し、フィルター滅菌した。
【0052】
〔比較例3〕
グルコサミンとコンドロイチン硫酸の混合物:
グルコサミン、コンドロイチン硫酸の終濃度が、各々1149μg/mL、135μg/mLとなるよ
うに上記10% FBSα-MEM培地に溶解し、フィルター滅菌した。
【0053】
〔試験例1〕
(1)試験方法
骨芽細胞MC3T3-E1 (理研セルバンク、RCB1126)を2.5×105 cells/mLの濃度となるよう10% FBS添加α-MEM培地にて細胞を懸濁し、48ウェルプレートに500μl播種した。翌日、実施例1及び比較例1~3の培地200μlに交換した。細胞は21日間培養し、その間、3~4日間隔で実施例1及び比較例1~3の培地に交換した。21日間培養後、骨芽細胞の分化マー
カーであるオステオカルシン量をELISAで測定することにより、骨芽細胞の分化を評価し
た。
【0054】
オステオカルシンは骨芽細胞が産生するタンパク質であり、骨芽細胞が成熟する際に発現量が増大することが知られている。非特許文献1においても、骨芽細胞の分化を示すマーカーとして同タンパク質が評価されており、オステオカルシン量は骨芽細胞の成熟を示す指標として一般的である。
【0055】
(2)試験結果
各被験試料をMC3T3-E1に添加して21日間培養後のオステオカルシン量について、
図1に示す。これから分かるように、ローヤルゼリーとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸を添加すると、何も添加しない場合と比べて有意にオステオカルシン量が増加した。さらに、ローヤルゼリーとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸を添加すると、ローヤルゼリーのみ、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸のみを添加した場合と比べて、有意にオステオカルシン量が増加した。以上の結果から、ローヤルゼリーのみ、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸のみを添加する場合と比べて、ローヤルゼリーとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸を同時に添加するとオステオカルシン量が相乗的に増加することが判明した。
【0056】
〔試験例2〕
(1)試験方法
破骨細胞RAW264.7 (理研セルバンク、RCB0535)を1×104個/mlとなるよう10% FBS添加α-MEM培地(Invitrogen, Cat. No. 41061-029)に懸濁し、200μlを96ウェルプレートに分注した。翌日、RANK Ligand (RANKL)を終濃度50 ng/mlとなるように添加した実施例1及び
比較例1の培地200μlに交換した。3日間培養後、RANKLを添加した実施例1及び比較例1の培地200μlに交換し、更に2日間培養した。培養プレートをPBSで洗浄後、10%ホルマリ
ン溶液にて細胞を固定し、TRAP染色(酒石酸耐性酸性フォスファターゼ染色)を行い、赤色に染まった3核以上のTRAP陽性の破骨細胞数を計測することにより、破骨細胞の分化を評
価した。
【0057】
TRAPは破骨細胞が産生するタンパク質であり、破骨細胞が分化するとTRAP陽性となり多核化することが知られている。非特許文献2においても、破骨細胞の分化を示すマーカーとして同タンパク質が発現された細胞数をカウントしており、TRAP陽性細胞数は破骨細胞の成熟を示す指標として一般的である。
【0058】
(2)試験結果
各被験試料をRAW264.7に添加して培養後にTRAP染色し計測した3核以上のTRAP陽性細胞
数について、
図2に示す。これから分かるように、ローヤルゼリーとグルコサミン及びコンドロイチン硫酸を添加すると、何も添加しない場合と比べて有意にTRAP陽性細胞数の増加が抑制されることが判明した。
【0059】
[処方例]
以下、本発明の食品組成物の処方例を示す。
【0060】
処方例1
乾燥ローヤルゼリー粉末:25重量%、サメ軟骨抽出物(コンドロイチン硫酸含有):6重量%、グルコサミン塩酸塩:58重量%、MSM、セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、微粒二酸
化ケイ素、ヒアルロン酸、鶏軟骨抽出物、ヒハツエキス末及び増粘剤をあわせて10重量%
を混合・打錠し、錠剤を得た後、ゼイン:1重量%、グリセリン、水及びアルコールを適量加えた混合液でコーティングする。
【0061】
処方例2
グルコサミン塩酸塩:61重量%、サメ軟骨抽出物(コンドロイチン硫酸含有):7重量%、
乾燥ローヤルゼリー粉末:5重量%、ヒアルロン酸、鶏軟骨抽出物、セルロース、微粒二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル、増粘剤及びビタミンD3をあわせて16重量%を混合・打
錠し、錠剤を得た後、酵母細胞壁、サンゴカルシウム、グリセリン、水、アルコール及び増粘剤をあわせた混合液11重量%でコーティングする。