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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】固定治具及び作業対象物の固定方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20221101BHJP
   B23K 37/06 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
E02B7/02 B
B23K37/06 301Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019019372
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020125649
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】竹村 嘉哲
(72)【発明者】
【氏名】橘 輝行
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-087921(JP,A)
【文献】特開2015-174738(JP,A)
【文献】特開平08-199571(JP,A)
【文献】特開2008-232203(JP,A)
【文献】特開2017-101502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
B23K 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物の姿勢を固定して支持する固定治具であって、
前記作業対象物に着脱自在に取り付けられる取付部と、
先端が同一平面上にある複数の接地部と、を有し、
前記作業対象物は、管材と、該管材に設けられたベースプレートと、を備えており、
前記取付部は、前記管材と前記ベースプレートの少なくとも一方に着脱自在に取り付けられることを特徴とする固定治具。
【請求項2】
前記取付部は、該取付部と一体又は別個の連結具により前記ベースプレートに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の固定治具。
【請求項3】
前記ベースプレート及び前記取付部は、前記連結具が挿通される孔を有していることを特徴とする請求項に記載の固定治具。
【請求項4】
前記接地部は、前記取付部が前記ベースプレートに取り付けられた状態において、前記ベースプレートの外縁よりも該ベースプレート外側に突出していることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の固定治具。
【請求項5】
前記複数の接地部間に、一部が切り欠かれた切欠を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の固定治具。
【請求項6】
前記切欠は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の固定治具。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の固定治具を用いた作業対象物の固定方法であって、
前記作業対象物に前記固定治具の前記取付部を取り付ける工程と、
前記複数の接地部を全て接地させて前記作業対象物の姿勢を固定する工程と、
を有することを特徴とする作業対象物の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業対象物の姿勢を固定する固定治具及び作業対象物の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部等の河川においては、台風や大雨による土砂災害を防止するため、堰堤が設置される。堰堤は、水を通過させつつも土石流に含まれる岩石や流木が通過することを抑えるものであり、その壁部にて土石流の勢いを弱めるとともに、岩石や流木を堰き止める働きをしている。近年では、水の通過を遮ることなく、岩石や流木だけを捕捉するため、堰堤の一部にスリットを形成し、このスリットとして鋼管等で柵状に構築された捕捉体を設けた、いわゆる透過型堰堤が構築されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
透過型堰堤としては、複数の鋼管フレーム部材を河川横断方向に対して間隔をあけて設置してなる鋼製スリットダムが一般に知られている。
鋼管フレーム部材は、複数の円筒状の鋼管部材からなり、これら部材を溶接等によって接合することで構成されている。具体的には、長尺の鋼管部材に対して短尺の鋼管部材を枝状に接合する。このような鋼管部材同士の接合は、現場での施工性等を考慮し、できるだけ予め工場等で行われることが一般的である。鋼管部材の接合を行う場合には、通常、長尺の鋼管部材を横置きにした状態で短尺の鋼管部材を上方から取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-101502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、鋼管部材のような作業対象物の上方に他の作業対象物が接合されると、作業対象物全体の重心位置が接合前と比較して上方へと移動する。特に、作業対象物が円筒状に形成されている場合には、この重心移動により作業対象物が自立した姿勢を維持できなくなる。その結果、作業対象物が軸周りに回転あるいは転倒するなどして接合等の作業に支障をきたすおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、作業対象物が自立困難な形状であっても、作業対象物を作業時の姿勢で固定することができる固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る一態様は、作業対象物の姿勢を固定して支持する固定治具であって、前記作業対象物に着脱自在に取り付けられる取付部と、先端が同一平面上にある複数の接地部とを有する。
【0008】
また、前記作業対象物は、管材と、該管材に設けられたベースプレートと、を備えており、前記取付部は、前記管材と前記ベースプレートの少なくとも一方に着脱自在に取り付けられることが好ましい。
【0009】
また、前記取付部は、該取付部と一体又は別個の連結具により前記ベースプレートに取り付けられることが好ましい。
【0010】
また、前記ベースプレート及び前記取付部は、前記連結具が挿通される孔を有していることが好ましい。
【0011】
また、前記接地部は、前記取付部が前記ベースプレートに取り付けられた状態において、前記ベースプレートの外縁よりも該ベースプレート外側に突出していることが好ましい。
【0012】
また、前記複数の接地部間に、一部が切り欠かれた切欠を有することが好ましい。
【0013】
また、前記切欠は、円弧状に形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る他の態様は、上記固定治具を用いた作業対象物の固定方法であって、前記作業対象物に前記固定治具の前記取付部を取り付ける工程と、前記複数の接地部を全て接地させて前記作業対象物の姿勢を固定する工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る態様によれば、作業対象物の姿勢を安定的に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】透過型堰堤の斜視図である。
図2】捕捉体を構成する本体部と枝部を接合した接合体の斜視図である。
図3】本体部に対して枝部を接合する状態を表す側面図である。
図4】固定治具を取り付けた接合体の斜視図である。
図5】固定治具の正面図である。
図6】固定治具をベースプレートに取り付ける状態を表す斜視図である。
図7】(a)変形例に係るベースプレートに固定治具を取り付けた状態を表す図であり、(b)変形例に係るベースプレートに固定治具を取り付けた状態を表す図であり、(c)変形例に係るベースプレートに固定治具を取り付けた状態を表す図である。
図8】変形例に係る固定治具を本体部に取り付ける状態を表す側面図である。
図9】変形例に係る固定治具を本体部に取り付けた状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0018】
<堰堤の構成>
最初に、製造時に固定治具が用いられる捕捉体を備えた堰堤について説明する。
図1に示すように、堰堤1は、その基礎部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように構築される。堰堤1は、例えば、コンクリート又はソイルセメントによって構築される。
堰堤1は一般に透過型堰堤として知られるものであり、河川の上流から流れてくる流水を通す透過部2と、透過部2に設けられて流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する捕捉体3とを備える。
【0019】
図1に示すように、捕捉体3は、河川上流側に立設される上流側支柱31と下流側に立設される下流側支柱32とを有する。下流側支柱32は、上流側支柱31に対して交差するように接合されている。具体的には、下流側支柱32の一端部は、上流側支柱31の長手方向の中程において、上流側支柱31に溶接によって接合されている。
【0020】
上流側支柱31及び下流側支柱32の下端側には、フランジ状のベースプレート33が溶接等によって接合されている。各支柱31,32の下端部は、ベースプレート33とともに堰堤1の基礎部に連結される。
以下に各構成の詳細について説明するが、便宜上、上流側支柱31を本体部31、下流側支柱32を枝部32として説明する。
【0021】
図2に示すように、本体部31は、例えば、円筒状に形成された鋼管である。本体部31は、一端部(捕捉体3として設置した際の下端部)が横断面方向に対して交差する端面を有するように、当該横断面に対して傾斜した端面を有している。本体部31には、その両端部近傍の側面に吊りピース310が溶接によって一つずつ接合されている。吊りピース310は、吊り金具等を掛けるための挿通孔310aを有する。ここで、吊りピース310は、各端部に一つずつ設けられている場合に限られない。二つの吊りピース310は、円筒状に形成された本体部31の軸線方向に沿って並んで配置されている。
【0022】
図2に示すように、枝部32は、例えば、円筒状に形成された鋼管である。枝部32は、その軸線が本体部31の軸線に交差するように、溶接によって接合されている。枝部32は、その一端部が本体部31に接合されており、他端部が本体部31の一端部側(捕捉体3として設置した際の下端部側)に向けて延びている。
【0023】
図2に示すように、ベースプレート33は、横断面に対して傾斜した端面を有する本体部31の一端部に設けられている。ベースプレート33は、本体部31の外径よりも大きな外径を有する円形状の板材から形成されている。ベースプレート33は、その中心が本体部31の軸線上にほぼ位置するように配置され、本体部31に溶接によって接合されている。ベースプレート33には、その外周側に沿って複数の挿通孔33aが形成されている。この挿通孔33aを介して本体部31は、堰堤1の基礎部に連結され、固定される。
【0024】
図3に示すように、本体部31と枝部32との接合は、本体部31を横置きにした状態で行われる。具体的には、本体部31に対して枝部32を上方から下ろして位置決めした後、溶接等で接合する。
【0025】
本体部31と枝部32とを接合した接合体は、その重心が本体部31単体の重心よりも上方に位置する。この接合体は、支持する本体部31が円筒形状を有するため、自立が不安定な姿勢をとる。その結果、接合体が本体部31の軸周りに回転・転倒するおそれがある。
【0026】
以上のように、堰堤1の捕捉体3を製造するにあたって、本体部31に枝部32を接合する際に、本体部31の回転を防止して姿勢を安定させるため、固定治具4が用いられる。
【0027】
<固定治具>
次に、固定治具の実施の形態について説明する。
図4図5に示すように、固定治具4は、略矩形状の鋼板から形成されており、本体部31に枝部32を接合する際に、ベースプレート33に取り付けられる。固定治具4は、ベースプレート33に着脱自在に取り付けられる取付部41と、ベースプレート33に取り付けられた状態で接地する接地部42を有する。
【0028】
(取付部)
図5に示すように、取付部41は、固定治具4の上端側(ベースプレート33に取り付けられた際における上端側)に位置し、円形状に形成された2つの挿通孔41aを有する。挿通孔41aは、ベースプレート33の挿通孔33aの位置に対応するように配置されており、後述する連結具(ボルト)を挿通するために用いられる。すなわち、挿通孔41aの間隔は、固定治具4が取り付けられるベースプレート33の2つの挿通孔33aの間隔と等しくなるように形成されている。
【0029】
(接地部)
図5に示すように、接地部42は、固定治具4の下端側(ベースプレート33に取り付けられた際における下端側)に位置し、長手方向(ベースプレート33に取り付けられた際における左右方向)の両側に一対の脚部42aを有する。固定治具4は、ベースプレート33に取り付けられた状態において、少なくとも脚部42aがベースプレート33の外縁よりも外側に突出する。このような構成にすることにより、ベースプレート33の接地を回避し、本体部31を安定した姿勢で固定することができる。また、一対の脚部42aは、その先端が同一平面上に位置する。すなわち、固定治具4をベースプレート33に取り付けた状態において、本体部31のベースプレート33側とは反対側の端部に設けられる吊りピース310とともに全ての脚部42aの先端が接地する。
【0030】
一対の脚部42aの間には、円弧状の切欠42bが形成されている。切欠42bは、主として固定治具4の軽量化を目的として形成されているが、本体部31を安定した姿勢で固定できるよう、本体部31、枝部32及びベースプレート33の総重量を支持するのに十分な強度を有するように設計されている。切欠42bの形状は円弧状に限られず、矩形状などあらゆる態様が適用できる。
固定治具4の角部は、面取り加工、角落とし加工が施されており、軽量化を図るとともに作業者が鋭利な角部に接触して負傷しないように工夫が施されている。
【0031】
<固定治具の取付>
図6に示すように、固定治具4の取付部41は、連結具43を用いてベースプレート33に取り付けられる。連結具43は、例えば、ボルト43aとナット43bとを有する。取付部41の挿通孔41aとベースプレート33の挿通孔33aの位置を合わせた状態でボルト43aを両挿通孔41a,33aに挿通する。その後、ベースプレート33の反対側からナット43bをボルト43aに締結することにより、固定治具4がベースプレート33に取り付けられる。
【0032】
固定治具4がベースプレート42に取り付けられた状態において、脚部42aが接地し、本体部31の一端側が支持されている。本体部31の他端側は、本体部31に設けられている吊りピース310が接地することにより支持されている。よって、本体部31は、接地部42の一対の脚部42aと吊りピース310の3点支持により、安定した姿勢が保たれた状態で固定されている。
【0033】
以上のように、固定治具4を作業対象物であるベースプレート33に取り付けることにより、本体部31が安定した状態で支持される。その結果、本体部31に枝部32を溶接により接合する等の作業時において、本体部31が自立困難な形状になった場合であっても本体部31を溶接作業が行いやすい安定した姿勢で保持、固定することができる。
固定治具4は、ベースプレート33に予め形成される挿通孔33aを利用して取り付けるので、特別な加工を必要とせず容易に固定治具4をベースプレート33に固定することができる。
また、固定治具4は、ベースプレート33に対して着脱自在に取り付けられるので、溶接作業終了後には容易に本来の状態に戻すことができる。
【0034】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではない。
例えば、図7(a)に示すように、固定治具4aは、一対の脚部42aの間が脚部42aと同一面を形成することにより、上記切欠42bがない形状であってもよい。
例えば、図7(b)に示すように、固定治具4bは、ベースプレート33に設けられる4つの挿通孔33aに対応する挿通孔41aが形成された取付部41を有していてもよい。
例えば、図7(c)に示すように、固定治具4cは、ベースプレート33に設けられる1つの挿通孔33aに対応する1つの挿通孔41aが形成された取付部41を有し、各挿通孔33aにそれぞれ別個の固定治具4を使用して本体部31を安定した姿勢で固定してもよい。
【0035】
また、図8及び図9に示すような固定治具であってもよい。
固定治具5は、本体部31に設けられる吊りピース310に取り付けられる。本体部31及び吊りピース310の構成については、上記と同じであるため、説明を省略する。
【0036】
固定治具5は、横断面が略H形状に形成されている。固定治具5は、鉛直方向に立設する一対の立設部51と、立設部51間に設けられ、両立設部51間を連結する連結部52とを有する。さらに、固定治具5は、連結部52から立設部51の延在方向に沿って延在する取付部53と、立設部51の下端側に設けられる接地部54とを有する。
取付部53は、円形状に形成された挿通孔53aを有する。挿通孔53aは、本体部31を固定治具5に載置した際に、吊りピース310の挿通孔310aの位置に対向する位置に形成されており、後述する連結具(ボルト)を挿通するために用いられる。なお、取付部53は、固定治具5と一体に形成された例を説明したが、固定治具5と別体、すなわち分割部材として形成されたものであってもよい。例えば、取付部53を分割部材として連結部52上に取り付ける構成であれば、本体部31の吊りピース310の位置や大きさによって、取付部53の取り付け位置を適宜調整することができる。
接地部54は、一対の立設部51のそれぞれの下端側に設けられ、その先端が同一平面上に位置する。
【0037】
固定治具5の取付部53は、連結具(ボルト及びナット)55を用いて本体部31の吊りピース310に取り付けられる。連結具55の構成や連結具55を用いた固定治具5の取付手法は上記の実施の形態と同様である。
固定治具5が取り付けられた本体部31は、立設部51の上端に接触した状態で固定治具5上に載置され、安定した姿勢で固定される。
【0038】
なお、上記実施の形態においては、固定治具をベースプレートまたは本体部に対して取り付ける例について説明したが、これに限られない。例えば、固定治具は、ベースプレートと本体部の双方に取り付けることもできる。
また、上記実施の形態においては、固定治具を本体部に取り付ける際に使用する連結具を固定治具と別個に設けた例について説明したが、これに限られない。例えば、固定治具と連結具とが一体に形成されていてもよい。
また、上記実施の形態においては、堰堤の捕捉体(支柱)に用いる管材(円筒状の鋼管)を作業対象物とする例について説明したが、これに限られない。例えば、固定治具は、種々の用途に使用される作業対象物に対して適用することができる。
また、本体部は、3点支持に限らず、4点以上で支持してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 堰堤
2 透過部
3 捕捉体
31 本体部(上流側支柱)
310 吊りピース
310a 挿通孔
32 枝部(下流側支柱)
33 ベースプレート
4,4a,4b,4c 固定治具
41 取付部
41a 挿通孔
42 接地部
42a 脚部
42b 切欠
43 連結具
5 固定治具
51 立設部
52 連結部
53 取付部
53a 挿通孔
54 接地部
55 連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9