IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFE建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図1
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図2
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図3
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図4
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図5
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図6
  • 特許-捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019019901
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020125662
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山口 聖勝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一雄
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040081(JP,A)
【文献】特開2017-155469(JP,A)
【文献】実公昭48-020894(JP,Y1)
【文献】特開2002-121729(JP,A)
【文献】特開2002-188134(JP,A)
【文献】特開2001-279665(JP,A)
【文献】特開2017-040073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉し、延び方向において互いに連結される分割部分を有する捕捉体を構築する捕捉体の構築方法であって、
前記互いに連結される分割部分の一方の分割部分に、前記延び方向に沿って他方の分割部分に向かって延びる連結材を接合し、
前記一方の分割部分と前記他方の分割部分とを突き合わせた状態において、前記他方の分割部分と重なる前記連結材を該他方の分割部分に接合する
ことを特徴とする捕捉体の構築方法。
【請求項2】
河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉し、延び方向において互いに連結される分割部分を有する捕捉体を構築する捕捉体の構築方法であって、
前記互いに連結される分割部分の一方の分割部分に接合された、前記延び方向に沿って他方の分割部分に向かって延びる連結材を、前記一方の分割部分と前記他方の分割部分とを突き合わせた状態において、前記他方の分割部分と重なる部分において該他方の分割部分に接合する
ことを特徴とする捕捉体の構築方法。
【請求項3】
前記連結材の前記他方の分割部分と重なる部分を溶接することを特徴とする請求項1又は2に記載の捕捉体の構築方法。
【請求項4】
複数の前記連結材を前記一方の分割部分の外周面に沿って設け、
前記一方の分割部分の端部から突出している前記複数の連結材の突出部分の内側に、前記他方の分割部分の端部を収容することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の捕捉体の構築方法。
【請求項5】
前記他方の分割部分の端部を収容するときに、前記突出部分における内面が前記他方の分割部分の外面に接触することを特徴とする請求項4に記載の捕捉体の構築方法。
【請求項6】
前記一方の分割部分を、前記他方の分割部分に対して河川の底側に設置することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の捕捉体の構築方法。
【請求項7】
前記河川の上流に面する上流側支柱及び該上流側支柱に対して下流側に位置する下流側支柱をそれぞれ部分的にかつ一体に形成する前記他方の分割部分を、前記一方の分割部分に対して上方から連結することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の捕捉体の構築方法。
【請求項8】
河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する捕捉体であって、
所定の間隔をあけて設置された複数の支柱を備え、
前記支柱は、
延び方向において互いに連結されている分割部分と、
前記支柱の延び方向に沿って前記分割部分を互いに連結している連結材と、
を有し、
前記連結材は、前記分割部分と重なる部分の全周に沿って該分割部分に対して接合されている
ことを特徴とする捕捉体。
【請求項9】
河川の両岸からそれぞれ突き出た一対の袖部と、
前記一対の袖部の間に設けられた水を流す開口部と、
前記開口部に設けられ、河川の上流から流れてくる物体を捕捉して流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する捕捉体と、を備え、
前記捕捉体は、所定の間隔をあけて設置された複数の支柱を有し、
前記支柱は、延び方向において互いに連結されている分割部分と、前記支柱の延び方向に沿って前記分割部分を互いに連結している連結材と、を有し、
前記連結材は、前記分割部分と重なる部分の全周に沿って該分割部分に対して接合されている
ことを特徴とする堰堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕捉体の構築方法、捕捉体及び堰堤に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の土石流対策工として、上流から流れてくる土石及び流木等を捕捉する捕捉体を備えた砂防堰堤が知られている。砂防堰堤は、河川の両岸からそれぞれ突き出た一対の袖部を備える。袖部の間には水を流す開口部が設けられている。
【0003】
捕捉体は、開口部に設けられて、土砂や水を通過させつつ土石及び流木等を捕捉する。捕捉体は、支柱及び梁により上流面側が格子状に画定されており、格子状のマス目において土石及び流木等を捕捉する。捕捉体は、河川の流れ方向において上流側に面する側に上流側支柱と、下流側に面する側に下流側支柱とを有する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-040081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
捕捉体における支柱は、1本の鋼管により製造されていることが強度の観点から望ましい。しかしながら、設置する河川の規模等によっては砂防堰堤の規模も大きくなり、それに伴い捕捉体の規模も大きくなる。そのため、捕捉体における上流側支柱及び下流側支柱は、捕捉体の設置現場へ鋼管部分を複数の分割部分に分割して運搬されて、設置現場で分割部分を互いに連結することにより構築される。設置現場に運搬された分割部分は、分割端面に設けられたフランジ同士を突き合わせてボルトにより連結されている。
【0006】
設置現場への分割部分の運搬を考慮すれば、捕捉体は、複数の分割部分に分割されて設置現場に搬送されて組み立てることが一般的であり、また、フランジをボルトにより連結することにより分割部分を連結することが施工性の観点からも効率的である。
【0007】
ところで、フランジを介して分割部分同士を連結する場合、連結断面積は、フランジにおける各ボルトの断面積の合計であり、1本の鋼管により支柱を製造した場合に比べて小さくなる。フランジにおけるボルトの本数を増やすことにより、連結断面積を稼ぐことも考えられる。しかし、増えたボルトの本数に応じてフランジを大きくする必要があり、フランジを大きくした結果、重量増により施工の手間が増し、また、フランジが大きくなった分だけフランジが占める支柱間のスペースも増え、透過型の砂防堰堤の機能を損なうおそれがある。
【0008】
また、分割部分同士の端面を突き合わせて溶接することも検討されたが、分割部分同士の軸線が同軸にならないこともあり、溶接部分に応力が集中しやすい上に分割部分同士の軸線がずれた結果、溶接部分が脆弱部となるおそれがある。そのため、鋼管同士の軸線が同軸になるように、現場での極めて正確な位置合わせが重要となる。しかしながら、砂防堰堤を設置する山間部においては、施工スペースが限定されているため、分割部分の端面同士を突き合わせて溶接することは極めて困難であり、施工性の観点から現実的ではない。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、捕捉体における支柱の分割部分同士を容易に連結するとともに、分割部分同士の連結部分の面積を拡大することにより強度が高められた捕捉体を構築する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉し、延び方向において互いに連結される分割部分を有する捕捉体を構築する捕捉体の構築方法であって、前記互いに連結される分割部分の一方の分割部分に、前記延び方向に沿って他方の分割部分に向かって延びる連結材を接合し、前記一方の分割部分と前記他方の分割部分とを突き合わせた状態において、前記他方の分割部分と重なる前記連結材を該他方の分割部分に接合することを特徴とする。
【0011】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉し、延び方向において互いに連結される分割部分を有する捕捉体を構築する捕捉体の構築方法であって、前記互いに連結される分割部分の一方の分割部分に接合された、前記延び方向に沿って他方の分割部分に向かって延びる連結材を、前記一方の分割部分と前記他方の分割部分とを突き合わせた状態において、前記他方の分割部分と重なる部分において該他方の分割部分に接合することを特徴とする。
【0012】
また、前記連結材の前記他方の分割部分と重なる部分を溶接してもよい。
【0013】
また、複数の前記連結材を前記一方の分割部分の外周面に沿って設け、前記一方の分割部分の端部から突出している前記複数の連結材の突出部分の内側に、前記他方の分割部分の端部を収容してもよい。
【0014】
また、前記他方の分割部分の端部を収容するときに、前記突出部分における内面が前記他方の分割部分の外面に接触してもよい。
【0015】
また、前記一方の分割部分を、前記他方の分割部分に対して河川の底側に設置してもよい。
【0016】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する捕捉体であって、所定の間隔をあけて設置された複数の支柱を備え、前記支柱は、延び方向において互いに連結されている分割部分と、前記分割部分を互いに前記支柱の延び方向に沿って連結している連結材と、を有し、前記連結材は、前記分割部分と重なる部分の全周に沿って該分割部分に対して接合されていることを特徴とする。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、河川の両岸からそれぞれ突き出た一対の袖部と、前記一対の袖部の間に設けられた水を流す開口部と、前記開口部に設けられ、河川の上流から流れてくる物体を捕捉して流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する捕捉体と、を備え、前記捕捉体は、所定の間隔をあけて設置された複数の支柱を有し、前記支柱は、延び方向において互いに連結されている分割部分と、前記分割部分を互いに前記支柱の延び方向に沿って連結している連結材と、を有し、前記連結材は、前記分割部分と重なる部分の全周に沿って該分割部分に対して接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、捕捉体における支柱の分割部分同士を容易に連結するとともに、分割部分同士の連結部分の面積を拡大して捕捉体の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る捕捉体を備えた高堰堤である砂防堰堤の斜視図である。
図2図1に示す砂防堰堤における捕捉体を上流側から見た図である。
図3】本発明の実施の形態に係る捕捉体の側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る捕捉体の上流側支柱の分割柱部の構成を説明するための拡大図である。
図5】本発明の実施の形態に係る捕捉体を構築する工程を説明するための図である。
図6】本発明の実施の形態に係る捕捉体を構築する工程を説明するための図である。
図7】従来の捕捉体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明に係る捕捉体は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉するものであり砂防堰堤に適用される。例えば、本実施の形態に係る捕捉体は、図1に示す高堰堤(ハイダム)である砂防堰堤に適用される。図1は、本発明の実施の形態に係る捕捉体1を備えた高堰堤である砂防堰堤の斜視図である。図2は、図1に示す砂防堰堤100における捕捉体1を上流側から見た図である。
【0022】
砂防堰堤100は、一対の袖部110と、基礎部120と、捕捉体1と、を備える。袖部110は、コンクリートにより形成されている。一対の袖部110はそれぞれ、河川の両岸から河川を横断するようにして中央に向かって延びている。一対の袖部110の間には、所定の間隔があけられて開口部111が形成されている。
【0023】
基礎部120は、開口部111の底部にコンクリートにより形成されている。基礎部120は、河床に形成されている。河川の水、上流から流れてきた砂、小礫等は、開口部111を通流していく。
【0024】
ここで「高堰堤(ハイダム)」とは、基礎部120が設置される河川の河床(底部)から、捕捉体1の先端までの高さ(堤高)Hが15m以上の堰堤のことをいう。
【0025】
本発明に係る捕捉体1は、砂防堰堤100の開口部111において基礎部120に設けられている。捕捉体1は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する。捕捉体1は、複数の支柱10と、複数の梁40と、を備える。以下、捕捉体1の構成について具体的に説明する。
【0026】
支柱10は、延び方向に交差する断面形状が円形の鋼管を用いて形成されている。複数本の支柱10が、砂防堰堤100の延び方向(河川を横断する方向)に沿って設けられている。支柱10は、互いに所定の間隔をあけて基礎部120に設置されている。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係る捕捉体の側面図である。支柱10は、上流側に立設された上流側支柱20と、下流側に立設された下流側支柱30とを有する。上流側支柱20及び下流側支柱30は互いに連結されている。上流側支柱20は、上流側から下流側へ向かって斜め上方に延在している。下流側支柱30は、下流側から上流側へ向かって斜め上方に延在している。
【0028】
上流側支柱20は、鋼管製の2つの分割柱部21,22を有する。上流側支柱20は、分割柱部(分割部分)21,22を互いに連結することにより形成されている。分割柱部21,22は、上流側支柱20の延び方向(上流側支柱20の軸線方向)に沿って端面部分において連結されている。分割柱部21は、分割柱部22に対して基礎部120側に位置する。なお、本実施の形態において上流側支柱20は、2つの分割柱部21,22を有しているが、砂防堰堤100の規模等を考慮して上流側支柱20を構成する分割柱部の数は適宜変更することができ3つ以上であってもよい。
【0029】
図7は、従来の捕捉体の側面図であり、図7(a)は、低堰堤(ローダム)用の従来の捕捉体201の側面図であり、図7(b)は、高堰堤に用いた場合の従来の捕捉体301の側面図である。低堰堤である砂防堰堤の場合、捕捉体201;301の上流側支柱210;310は、複数の分割柱部211,212;311,312を互いに連結することにより形成されている。複数の分割柱部211,212;311,312は、それぞれの端面部分にフランジFを有している。複数の分割柱部211,212;311,312は、フランジFにおいてボルトにより連結されている。例えば、土石流発生時に捕捉体201;301において土石流を捕捉した場合、土石流体中の圧力(流体力)は、捕捉体201;301の高さH方向において上方から基礎部202;302側に向かうに連れて大きくなっている。
【0030】
高堰堤でない砂防堰堤(堤高Hが、例えば14.5m未満である場合)の場合、上流側支柱210においてフランジFに土石流体流体力がかかる。しかし、高堰堤でない砂防堰堤の場合、捕捉して堆積する土石流の高さは最大10~14.5m未満であることが一般的であり、分割柱部211,212をフランジFにおいてボルトを介して連結して上流側支柱210を形成しても、十分に捕捉体201としての機能を発揮することができる。
【0031】
これに対して、高堰堤である砂防堰堤の場合(堤高Hが、例えば14.5m以上である場合)、捕捉体301の上流側支柱310は、低堰堤における捕捉体201よりも大きくなる。高堰堤においては、土石流発生時に捕捉する土石流等の量も多くなり、分割柱部311,312同士を連結するフランジFには、捕捉体201の上流側支柱210におけるフランジFよりも大きな流体力がかかる。そのため、分割柱部311,312をフランジFにおいてボルトにより連結する場合、フランジFの肉厚を大きくして分割柱部311,312同士の連結箇所の強度を高める必要がある。しかしながら、フランジFの肉厚を大きくすることにより、ボルトを通す孔の加工作業の負担が増大し、また、ボルトの長さを大きくしなければならず、施工コストが増大することになる。
【0032】
これに対して、捕捉体の作業性の向上及び施工コストを抑制するために、本発明に係る捕捉体1のように、上流側支柱20の分割柱部21,22同士は、複数の連結板材(連結材)23により互いに連結されていることが有意である。図4は、本発明の実施の形態に係る捕捉体1の上流側支柱20の分割柱部21,22の構成を説明するための拡大図であり、図4(a)は分割柱部21,22が連結板材23により連結された状態を示す図であり、図4(b)は分割柱部21,22が連結板材23により連結される前の状態を示す図である。
【0033】
分割柱部21,22同士の間には所定のシール部材(図示せず。)が介在されている。連結板材23は、長尺の帯状の鋼板により形成されている。連結板材23の長手方向に交差する断面形状は、円弧状に僅かに湾曲した形状である。連結板材23は、分割柱部21,22の外周面に沿って湾曲している。また、各連結板材23の湾曲した内周面同士を周方向に結んで形成される仮想円(破線により示す。)の径は、分割柱部21,22の外径と略同じである。
【0034】
連結板材23は、その長手方向を上流側支柱20の延び方向に沿うようにして延びている。複数の連結板材23は、上流側支柱20の外周面において周方向に互いに所定の間隔をあけて設けられている。本実施の形態において複数の連結板材23は、上流側支柱20の径方向において対向する位置に設けられているが、連結板材23の設置位置は特に限定されない。
【0035】
連結板材23が分割柱部21,22それぞれにおいて重なる量は略同じであるが、異なっていてもよい。連結板材23は、全周に亘って分割柱部21,22に対して溶接(隅肉溶接)されている。つまり、分割柱部21,22に対する連結板材23の溶接部分24は、連結板材23の全周に設けられている。
【0036】
なお、連結板材23は、工場において予め分割柱部21に溶接された状態において砂防堰堤100の設置現場に搬送されてくる。工場から搬送される分割柱部21は、一方の端部においてその端面から延び出ている複数の連結板材23を有する。連結板材23の略半分は、分割柱部21からはみ出た突出部分25を形成している。なお、連結板材23の突出部分25は、連結板材23の略半分に限られず、適宜変更することができる。
【0037】
図3に戻って、下流側支柱30は、鋼管製の3つの分割柱部31,32,33を有する。下流側支柱30は、分割柱部31,32,33を互いに連結することにより形成されている。分割柱部31,32,33は、下流側支柱30の延び方向(下流側支柱30の軸線方向)に沿って端面部分において連結されている。分割柱部31は、分割柱部32に対して、また、分割柱部32は、分割柱部33に対して基礎部120の側に位置する。分割柱部31,32,33は、互いに連結する部分にそれぞれフランジFを有している。分割柱部31,32,33同士は、フランジFを介してボルトにより接合されている。
【0038】
上流側支柱20及び下流側支柱30は互いに連結されている。具体的には、上流側支柱20の分割柱部21と下流側支柱30の分割柱部32とが互いに接合されており、上流側支柱20の分割柱部22と下流側支柱30の分割柱部33とが接合されている。
【0039】
下流側支柱30の分割柱部33の上端は、上流側支柱20の分割柱部22の上端部に一体に接合されている。つまり、上流側支柱20の分割柱部22と下流側支柱30の分割柱部33とは一体不可分に形成されている。
【0040】
上流側支柱20の分割柱部21は、河川の流れ方向において下流側に延びている連結梁部26を有する。下流側支柱30の分割柱部32は、河川の流れ方向において上流側に延びている連結梁部34を有する。連結梁部26,34の互いに連結される端面にはフランジFが設けられている。上流側支柱20の分割柱部21と、下流側支柱30の分割柱部32とは、互いにフランジFを介してボルトにより接合されている。
【0041】
なお、本実施の形態において下流側支柱30は、3つの分割柱部31,32,33を有しているが、砂防堰堤100の規模等を考慮して下流側支柱30を構成する分割柱部の数は、設置現場の状況及び運搬条件により適宜変更することができ、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0042】
図1,2に戻って、梁40は、上流側支柱20同士の間に架け渡された状態において設けられている。梁40は、延び方向に交差する断面形状が円形の鋼管により形成されている。梁40は、上流側支柱20の延び方向における所定の位置で、捕捉体1の高さH方向において所定の間隔をあけて設けられている。
【0043】
なお、梁40は、各上流側支柱20から、隣り合う上流側支柱20に向かって延びている。隣り合う上流側支柱20から延びた梁40は、互いに連結される端面にフランジFを有する。各上流側支柱20における梁40同士は、互いにフランジFにおいてボルトにより接合されている。
【0044】
次に捕捉体1を構築する方法について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る捕捉体1を構築する工程を説明するための図であり、図5(a)は上流側支柱20の分割柱部21及び下流側支柱30の分割柱部31,32を設置する工程を示す図であり、図5(b)は上流側支柱20の分割柱部21に上流側支柱20の分割柱部22を連結するとともに、下流側支柱30の分割柱部31,32に下流側支柱30の分割柱部33を連結する工程を示す図である。図6は、本発明の実施の形態に係る捕捉体1を構築する工程を説明するための図であり、図6(a)は上流側支柱20の分割柱部21における連結板材23の内側に、分割柱部22を収容して設置する工程を示す図であり、図6(b)は上流側支柱20の分割柱部21,22同士に対して連結板材23を溶接する工程を示す図である。
【0045】
捕捉体1を構築する方法においては、互いに連結される分割柱部21,22の一方の分割柱部21に、延び方向に沿って他方の分割柱部22に向かって延びる連結板材23を接合し、一方の分割柱部21と他方の分割柱部22とを突き合わせた状態において、他方の分割柱部22と重なる連結板材23を他方の分割柱部22に接合する工程を有する。以下、本発明に係る捕捉体1の構築方法について具体的に説明する。
【0046】
まず、一対の袖部110の間の開口部111の底部に基礎部120を構築する。基礎部120は、コンクリートを河床に打設することにより形成される。上流側支柱20の分割柱部21及び下流側支柱30の分割柱部31を基礎部120に設置する。連結板材23とは反対側の分割柱部21の一方の端部は、基礎部120内に埋め込まれている(第1設置工程)。
【0047】
第1設置工程において、下流側支柱30の分割柱部31に対して分割柱部32を連結し、上流側支柱20の分割柱部21と下流側支柱30の分割柱部32とを、連結梁部26,34のフランジFを介して互いにボルトにより接合する。
【0048】
基礎部120のコンクリートが完全に固化した後、上流側支柱20の分割柱部21に対して分割柱部22を接近させるとともに、下流側支柱30の分割柱部32に分割柱部33を接近させる。分割柱部22の一方の端部を、分割柱部21の複数の連結板材23によって囲まれた領域内に挿入する(第2設置工程)。分割柱部21の端部から突出している複数の連結板材23の突出部分25の内側に分割柱部22の端部を収容する。
【0049】
各連結板材23の内面同士を繋いで周方向に形成される仮想円の径は、分割柱部21,22の外径と略同じである。第2設置工程において、分割柱部22は、その外周面が連結板材23の突出部分25の内周面に接触しながら、端面が分割柱部21の端面に接触するまで分割柱部21に接近させられる。分割柱部21,22同士の端面同士が接触した状態において、分割柱部21の連結板材23の突出部分25における内周面は、分割柱部22の外周面に接触している。
【0050】
第2設置工程後、分割柱部21,22の端面同士を突き合わせた状態において、分割柱部22に対して複数の連結板材23の突出部分25を溶接することにより、分割柱部21と分割柱部22とを互いに接合する。溶接は、連結板材23の突出部分25と分割柱部22とが重なる部分においてその全周に沿って実施される(溶接工程)。全ての連結板材23を分割柱部22に対して溶接する。なお、分割柱部21,22の端面同士を突き合わせた状態において、突き合わせ部分を全周に亘って溶接してもよい。これにより、分割柱部21,22の間から水が柱内部に流入することを防ぐことができる。以上により、捕捉体1を構築する全工程が終了する。
【0051】
以上のような捕捉体1によれば、上流側支柱20の分割柱部21,22同士は連結板材23を介して溶接により互いに接合されている。したがって、分割柱部21,22同士の連結部分の面積を拡大することにより強度が高められ、高堰堤における捕捉体1として高い補足機能を発揮することができる。
【0052】
具体的には、高堰堤における捕捉体1の上流側支柱20の強度を、分割柱部同士をフランジFにおいてボルトにより接合する従来の捕捉体を高堰堤に構築する場合に比べて増やすことができる。これは、各連結板材23の周長分だけ分割柱部21,22同士の一体部分(連結部分)となり連結部分の面積が大きくなり、分割柱部21,22の一体性が増して、上流側支柱20の強度が向上するからである。土石流発生時に上流側支柱20の分割柱部21,22同士の連結部分に作用する土石流流体力に対する応力(曲げ応力)及び耐性が向上する。これにより、捕捉体1は、土石流発生時に高堰堤において十分な補足機能を確実に発揮することができる。
【0053】
また、高堰堤における捕捉体1の上流側支柱20を構築する作業負担及び作業コストを、分割柱部同士をフランジFにおいてボルトにより連結する従来の捕捉体を高堰堤に構築する場合に比べて大幅に減じることができる。
【0054】
さらに、連結板材23の長さ、板厚、幅、枚数、これらの組み合わせ等を適宜変更することにより、単一の鋼管により形成された場合の上流側支柱と同等以上の強度、耐力を備えた上流側支柱20を形成することもできる。
【0055】
また、上流側支柱20の分割柱部22が、分割柱部21における連結板材23の内側に収容されるようになる。分割柱部21に対する分割柱部22の設置は、分割柱部22が連結板材23により案内されることでより簡単に行うことができる。また、分割柱部22の端部を収容するときに連結板材23の内周面と分割柱部22の外周面とが接触しながら、分割柱部21において分割柱部22が収容される。これにより、分割柱部22は、分割柱部21に対して同軸上に位置決めされながら案内される。
【0056】
また、分割柱部21は、河川の底部側に設置されているので、分割柱部22の設置が容易になる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更されうる。例えば、上記の実施の形態においては、連結板材23は、分割柱部21の側に設けられていたが、分割柱部22の側に設けられていてもよい。
【0058】
また、上記の実施の形態においては、上流側支柱20の分割柱部21,22同士が連結板材23を介して接合されていたが、下流側支柱30の分割柱部31,32同士も連結板材を介して接合されていてもよい。
【0059】
また、上記の実施の形態においては、連結板材23は、湾曲して形成されていたが、支柱10の径や、連結板材23の幅・分割数等により、長手方向交差する断面形状は矩形であってもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態においては、連結板材23は、工場において予め分割柱部21に溶接により取り付けられていたが、砂防堰堤の施行現場において取り付けられていてもよい。
【0061】
また、上記の実施の形態においては、捕捉体1は、高堰堤の砂防堰堤100に設けられていたが、高堰堤ではない砂防堰堤に設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 捕捉体
10 支柱
20 上流側支柱
21 分割柱部(一方の分割部分)
22 分割柱部(他方の分割部分)
23 連結板材(連結材)
24 溶接部分
25 突出部分
100 砂防堰堤
110 袖部
120 基礎部
111 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7