(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】バイザーのロック機構及びヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/20 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A42B3/20
(21)【出願番号】P 2019021815
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 栄治
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-074230(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009051780(DE,A1)
【文献】特開2007-100290(JP,A)
【文献】特開平05-214604(JP,A)
【文献】特開2013-036158(JP,A)
【文献】特開昭58-008108(JP,A)
【文献】米国特許第04907300(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に窓孔を有するヘルメットの外側シェルの内側に設けられ、前記外側シェルに回動可能に取り付けられた左右一対のホルダーに取り付けられ、少なくとも前記窓孔の一部を閉塞または開放できるバイザーを備えたヘルメットに適用され、
操作部及び係止部を有するロック部材が少なくとも1つの前記ホルダーの近くに配置され、前記操作部によって、前記係止部と前記ホルダーに設けられた被係止部とが、嵌合または離脱することによって、前記バイザーが固定または開放されることを特徴とするバイザーのロック機構
であって、
前記左右一対のホルダーは、前記外側シェルに取り付け軸部を介して取り付けられることにより、上昇位置と下降位置との間で回動可能となっており、
前記ロック部材は、前記外側シェルに回転軸を介して取り付けられることにより、前記取り付け軸部とは異なる軸まわりに回動可能となっており、
前記ホルダーに設けられた前記被係止部は、前記ホルダーが前記下降位置に位置している状態で前記ロック部材の前記係止部と対向して配置され、
前記ホルダーが前記下降位置に位置している状態で、前記ロック部材が周方向他方側へ回動すると、前記ロック部材の前記係止部が前記被係止部に嵌合し、
前記ホルダーが前記下降位置に位置している状態で、前記ロック部材が周方向一方側へ回動すると、前記ロック部材の前記係止部が前記被係止部から離脱するバイザーのロック機構。
【請求項2】
前方側に窓孔を有するヘルメットの外側シェルの内側に設けられ、前記外側シェルに回動可能に取り付けられた左右一対のホルダーに取り付けられ、少なくとも前記窓孔の一部を閉塞または開放できるバイザーを備えたヘルメットに適用され、
操作部及び係止部を有するロック部材が少なくとも1つの前記ホルダーの近くに配置され、前記操作部によって、前記係止部と前記ホルダーに設けられた被係止部とが、嵌合または離脱することによって、前記バイザーが固定または開放されることを特徴とするバイザーのロック機構であって、
前記ロック部材は、回転軸に軸支される円板状に形成された軸支部と、前記軸支部から径方向外側へ向けて突出すると共に軸方向から見て前記軸支部の回転中心を中心とする扇状に形成された扇板部と、を備えており、
前記操作部が、前記扇板部の周方向一方側の端部から径方向外側へ向けて突出し、
前記係止部が、前記扇板部の周方向他方側の端部から周方向他方側へ向けて突出してい
るバイザーのロック機構。
【請求項3】
前記窓孔の前方側において該窓孔を開閉するシールド板の内側において、前記操作部が前記窓孔から突出している請求項1又は請求項2記載のバイザーのロック機構。
【請求項4】
前方側に窓孔を有する外側シェルと、
前記外側シェルの内側に設けられ、前記外側シェルに回動可能に取り付けられた左右一対のホルダーに取り付けられ、少なくとも前記窓孔の一部を閉塞または開放できるバイザーと、
前記外側シェルにおいて少なくとも左右の一方側に設けられた請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のバイザーのロック機構と、
を備えたヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイザーのロック機構及びヘルメットに関するものである。特に、その前面に形成された窓孔を有するヘルメットと、窓孔を少なくとも部分的に開閉するために、ヘルメットに対して上下回動することができるようにヘルメットに取り付けられたバイザーのロック機構であって、バイザー保持具に設けられたフックと、操作レバーに繋がるラッチが嵌合することにより、バイザーの回動を制止し、固定するバイザーのロック機構及びヘルメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バイザーを有するヘルメットが開示されている。この文献に記載されたヘルメットでは、バイザーの両端部を左右のホルダーで保持している。また、可動用ワイヤの一端をホルダーに、そして、もう一方の端をスライド式ノブに接続させることで、ノブをスライドさせることによって、ホルダーを固定されたレールに沿って回動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された構成では、ワイヤの伸縮が自由であるので、ノブを操作しなくとも、バイザーを手で持って動かすことができる。このため、バイザーを取外す際又は取付ける際に、ホルダーを所定の位置(バイザーを下げた状態)に留めようとしても、ホルダーが意図せずに動くので、バイザーの取外し又は取付け作業が難しかった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、バイザーの取外し又は取付け作業を容易にすることができるバイザーのロック機構及びヘルメットを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバイザーのロック機構は、前方側に窓孔を有するヘルメットの外側シェルの内側に設けられ、前記外側シェルに回動可能に取り付けられた左右一対のホルダーに取り付けられ、少なくとも窓孔の一部を閉塞または開放できるバイザーを備えたヘルメットに適用され、操作部及び係止部を有するロック部材が前記ホルダーの近くに配置され、前記操作部によって、前記係止部と前記ホルダーに設けられた被係止部とが、嵌合または離脱することによって、前記バイザーが固定または開放されることを特徴とする。
【0007】
本発明のヘルメットは、前方側に窓孔を有する外側シェルと、前記外側シェルの内側に設けられ、前記外側シェルに回動可能に取り付けられた左右一対のホルダーに取り付けられ、少なくとも窓孔の一部を閉塞または開放できるバイザーと、前記外側シェルにおいて少なくとも左右の一方側に設けられた前記バイザーのロック機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバイザーのロック機構及びヘルメットは、バイザーの取外し又は取付け作業を容易にすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のバイザーのロック機構を備えたヘルメットを示す斜視図であり、バイザーが下降している状態を示している。
【
図2】
図1に示されたヘルメットの側面図であり、操作レバーを上げて、ホルダーを固定した状態を示している。
【
図3】
図1に示されたヘルメットの側面図であり、操作レバーを下げて、ホルダーを開放し、そして、バイザーを上げた状態を示している。
【
図4A】ホルダーの回動がロック部材によって規制されている状態を示す側面図である。
【
図4B】
図4Aに示された4B線によって囲まれた部分を拡大して示す拡大側面図である。
【
図5A】ホルダーの回動がロック部材によって規制されていない状態を示す側面図である。
【
図5B】
図5Aに示された5B線によって囲まれた部分を拡大して示す拡大側面図である。
【
図6】操作レバーに代えて凸凹状の操作部が設けられた構成を示す
図4Bに対応する拡大側面図である。
【
図7】操作レバーに代えて凸凹状の操作部が設けられた構成を示す
図5Bに対応する拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明のバイザーのロック機構をフルフェイス型のヘルメットに適用した一実施例を、「1、ヘルメット全体の概略的構成」、「2、バイザーのロック機構の構成」に分け、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
1、ヘルメット全体の概略的構成
図1~
図3に示されるように、フルフェイス型のヘルメット1は、当該ヘルメット1の外周壁を構成している外側シェル21と、自動二輪車のライダ―などのヘルメット1の装着者の額部とアゴ部との間(即ち、顔面のほぼ中央部分)に対向するように形成された窓孔3と、を備えている。また、ヘルメット1は、窓孔3の全周囲に取り付けられた縁部材(図示せず)と、窓孔3のほぼ全部を、この窓孔3の外側から開閉できるシールド板4と、を備えている。さらに、ヘルメット1は、当該ヘルメット1の装着者の額部(具体的には、額の上下方向におけるほぼ中間の部分)と鼻部(具体的には、鼻の上下方向におけるほぼ中間の部分)との間に対向している窓孔3の上側のほぼ半分を、この窓孔3の内側から開閉できるバイザー5と、バイザー5を固定するためのロック機構8と、を備えている。
【0012】
シールド板4は、周知のように、ポリカーボネイト、その他の硬質合成樹脂などの可撓性を有する透明または半透明な材料から作られている。シールド板4は、ヘルメット1の左右両側において軸支手段としての左右一対の取り付け軸部6によってヘルメット1の外側シェル21に往復回動可能に取り付けられている。そして、このシールド板4は、その復動位置(すなわち、下降位置)において窓孔3を閉塞し、その往動位置(すなわち、上昇位置)において窓孔3を開放する。
【0013】
図1~
図5Bに示されるように、バイザー5は、周知のように、ポリカーボネイト、その他の硬質合成樹脂などの遮光機能と可撓性を有する半透明な硬質材料から作られている。バイザー5は、外側シェル21の内側に設けられ、ヘルメット1の左右両側において軸支手段としての左右一対の取り付け軸部7に往復回動可能に取り付けられた左右一対のホルダー54に挟み込まれるように保持されている。また、左右一対の取り付け軸部7は、ヘルメット1の外側シェル21に取り付けられている。そして、バイザー5は、ホルダー54の復動位置(すなわち、下降位置)においてヘルメット1の着用者の額部から鼻部にかけての部分と対向して配置される。また、バイザー5は、ホルダー54の往動位置(すなわち、上昇位置)においてその下縁が窓孔3の上縁よりも上方側に配置されて窓孔3が開放する。
【0014】
2、バイザーのロック機構の構成
図4A及び
図4B並びに
図5A及び
図5Bに示されるように、バイザーのロック機構8は、外側シェル21(
図1等参照)において少なくとも左右の一方側に設けられている。このバイザーのロック機構8は、ホルダー54の近くに設置されたロック部材80と、ロック部材80を回転可能に支持する回転軸82と、ホルダー54に設けられた被係止部としての係止凹部83と、を含んで構成されている。
【0015】
ロック部材80は、回転軸82に軸支される円板状に形成された軸支部84を備えている。なお、以下の説明で「軸方向」「径方向」「周方向」の各方向を示して説明する場合、軸支部84の「回転軸方向」「回転径方向」「回転周方向」をそれぞれ示すものとする。また、「回転径方向の外側」を矢印Rで示し、「回転周方向の一方側」を矢印Cで示す。
【0016】
ロック部材80は、軸支部84から径方向外側へ向けて突出すると共に軸方向から見て軸支部84の回転中心を中心とする扇状に形成された扇板部85を備えている。また、ロック部材80は、扇板部85の周方向一方側の端部から径方向外側へ向けて突出する操作部としての操作レバー81を備えている。さらに、ロック部材80は、扇板部85の周方向他方側の端部から周方向他方側へ向けて突出する係止部としての係止突起86を備えている。
【0017】
ロック部材80は、シールド板4(
図1等参照)の内側においてヘルメット1の外側シェル21(
図1等参照)に回転軸82を介して取り付けられている。また、ロック部材80が外側シェル21に取り付けられた状態では、窓孔3(
図1等参照)から操作レバー81が突出している。この操作レバー81は、ヘルメット1の着用者の視界から遠く、また、シールド板4の内側であるため、意図せずに操作されることはない。このように、操作レバー81は、容易に操作可能となっている。また、操作レバー81は、ヘルメット1の着用者の視界を妨げないようになっており、操作レバー81によってヘルメット1の安全性が損なわれないようになっている。
【0018】
ホルダー54に設けられた係止凹部83は、凹状の窪み部であり、ホルダー54が復動位置(すなわち、下降位置)に位置している状態でロック部材80の係止突起86と対向して配置される。
【0019】
そして、
図4A及び
図4Bに示されるように、操作レバー81が操作されることで、ロック部材80が周方向他方側へ回動すると、ロック部材80の係止突起86が係止凹部83に嵌まり込む。これにより、ホルダー54の回動がロック部材80によって規制されて、バイザー5の変位が制限される。この状態では、バイザー5が意図に反して変位しないため、バイザー5のホルダー54からの取外し又はホルダー54への取付け作業を容易にすることができる。また、ホルダー54の回動がロック部材80によって規制されている状態では、バイザー5のホルダー54からの取外し又はホルダー54への取付け作業時に、バイザー5に入力された力がロック部材80によって受け止められる。すなわち、バイザー5に入力された力がホルダー54を回動(昇降)させる機構に入力されることが防止又は抑制される。これにより、バイザー5のホルダー54からの取外し又はホルダー54への取付け作業時に、ホルダー54を回動(昇降)させる機構が破損することを防止又は抑制することができる。
【0020】
また、本実施形態では、操作レバー81に力を加えると、梃子の原理により、増幅された力が係止突起86へ伝達される。これにより、係止突起86を係止凹部83に容易に嵌まり込ませることができる。なお、操作レバー81に代えて、
図6及び
図7に示されるように、凸凹状の操作部87としてもよい。
【0021】
また、
図5A及び
図5Bに示されるように、操作レバー81が操作されることで、ロック部材80が周方向一方側へ回動すると、ロック部材80の係止突起86が係止凹部83から離脱する(抜け出す)。これにより、ホルダー54の回動が許容されて、バイザー5の変位が許容される。
【0022】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0023】
例えば、上述の実施例においては、フルフェイス型ヘルメットに本発明を適用したが、アゴ部が上昇可能なフリップアップ型ヘルメット、アゴ部の無いオープンフェイス型ヘルメットなどにも、本発明を適用することができる。
【0024】
また、本発明のバイザーのロック機構は、ヘルメットの左右のいずれか片側にあってもよく、または、両側にあってもよい。
【0025】
また、本実施形態では、可動ワイヤ式のバイザーを例として、本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ホルダーのように、バイザーを保持して、一緒に回動する部品が存在するならば、本発明のバイザーのロック機構を適用できる。例えば、バイザーを保持するホルダーが、溝またはレールに沿ってスライドする場合、または、継手や歯車によって回動する場合にも適用できる。また、本発明によれば、比較的少ない部品点数によるロック機構を構成できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ヘルメット
3 窓孔
4 シールド板
5 バイザー
6 取り付け軸部
7 取り付け軸部
8 ロック機構
21 外側シェル
54 ホルダー
80 ロック部材
81 操作レバー(操作部)
82 回転軸
83 係止凹部(被係止部)
84 軸支部
85 扇板部
86 係止突起(係止部)
87 操作部