(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】気液接触用充填板、クロスフロー型冷却塔
(51)【国際特許分類】
F28F 25/08 20060101AFI20221101BHJP
F28C 1/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F28F25/08 A
F28C1/04
(21)【出願番号】P 2019069248
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】小池 康智
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-063883(JP,A)
【文献】実開昭55-031421(JP,U)
【文献】実開平03-104683(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107462104(CN,A)
【文献】中国実用新案第207797866(CN,U)
【文献】米国特許第3286999(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0183956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 25/08
F28C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から下部に向けて処理水が流下し、横方向に向けて外気が流通するクロスフロー型冷却塔に収納される気液接触用充填板であり、
前記気液接触用充填板の表面は、
上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、
上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向に同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部と、を備え、
前記第2傾斜面と水平面のなす角(α2)は、前記第1傾斜板と水平面のなす角(α1)より小さいことを特徴とする、気液接触用充填板。
【請求項2】
上部から下部に向けて処理水が流下し、横方向に向けて外気が流通するクロスフロー型冷却塔に収納される気液接触用充填板であり、
前記気液接触用充填板の表面は、
上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、
上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向に同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部と、を備え、
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の間に形成される間部は、外気流通方向と逆方向に向けて下方に傾斜することを特徴とする、気液接触用充填板。
【請求項3】
前記第1傾斜部において、前記第1傾斜面は、外気流通方向に沿って気液接触用充填板の表面の高さが上昇する方向に傾斜する第1a傾斜面と、外気流通方向に沿って気液接触用充填板の表面の高さが低下する方向に傾斜する第1b傾斜面と、からなり、
前記第1a傾斜面と前記第1b傾斜面は、横方向に交互に連続して配置され、尾根部と谷部を形成し、
前記第2傾斜部において、前記第2傾斜面は、外気流通方向に沿って気液接触用充填板の表面の高さが上昇する方向に傾斜する第2a傾斜面と、外気流通方向に沿って気液接触用充填板の表面の高さが低下する方向に傾斜する第2b傾斜面と、からなり、
前記第2a傾斜面と前記第2b傾斜面は、横方向に交互に連続して配置され、尾根部と谷部を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の気液接触用充填板。
【請求項4】
上部から下部に向けて処理水が流下し、横方向に向けて外気が流通する気液接触用充填板を備えたクロスフロー型冷却塔であり、
前記気液接触用充填板の表面は、
上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、
上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向に同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部と、を備え、
前記第2傾斜面と水平面のなす角(α2)は、前記第1傾斜面と水平面のなす角(α1)より小さいことを特徴とする、クロスフロー型冷却塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルの空調設備や工業設備などに広く使用されているクロスフロー型冷却塔、及び、クロスフロー型冷却塔の充填材として用いる気液接触用充填板に関するものである。更に詳しくは、温度が上昇した使用済み冷却水を外気と接触させることで温度を低下させて循環利用するためのクロスフロー型冷却塔、及び、その冷却効率を高めるための気液接触用充填板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却塔は、気液接触用充填板に散布された処理水を、塔内に導入される外気により冷却するものである。冷却塔は、気液接触用充填板が相互に所定の間隔を有して取り付けられ、各気液接触用充填板間に外気を導入するように設計されている。クロスフロー型冷却塔は、冷却するための処理水が前記気液接触用充填板の上部より供給され、その表面を流下する間に横方向より導入される外気により冷却される。この時、
図7に示すように、適宜の位置aに提供された処理水は、横方向からの空気抵抗を受けて外気排出側に押され、鉛直方向の位置bに流下せずに位置b’へ屈曲して流下する。このため、気液接触用充填板10の外気導入側下方に、三角形状の処理水の供給されないスペース、いわゆるデッドスペースが生じ、また、外気排出側下方には過剰な処理水が流れ、冷却効率を低下するという問題がある。
【0003】
この問題に対して、例えば、特許文献1には、気液接触用充填板の形状として、外気流通方向に対して所定の傾斜角で取り付けられる傾斜板を並列してなる第1充填部材と、これとは逆方向に傾斜する傾斜板を並列してなる第2充填部材とを順次積層し、各気液接触用充填板の傾斜板により冷却空気の流通方向に対しジグザク状の処理水流通路を形成すると共に、第2充填部材の高さを、第1充填部材の高さより所定量薄く形成した充填材が開示されている。これにより、第1充填部材による処理水の移行距離(外気流通方向と逆方向への移行)よりも、第2充填部材による処理水の移行距離(外気流通方向への移行)を減少することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロスフロー型冷却塔では、性能向上の観点から、冷却効率をより向上することが求められている。
本発明の課題は、クロスフロー型冷却塔の充填材として用いる気液接触用充填板において、処理水の冷却効率を向上させることが可能な気液接触用充填板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、気液接触用充填板の表面に、処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、処理水が外気流通方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部とを備えた気液接触用充填板において、第2傾斜面と水平面のなす角(α2)が、第1傾斜面と水平面のなす角(α1)より小さくなるように第1傾斜部と第2傾斜部を形成することにより、気液接触用充填板の表面を流下する処理水が横方向からの空気抵抗によって屈曲することを抑制できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の気液接触用充填板及びクロスフロー型冷却塔である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の気液接触用充填板は、上部から下部に向けて処理水が流下し、横方向に向けて外気が流通するクロスフロー型冷却塔に収納される気液接触用充填板であり、前記気液接触用充填板の表面は、上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向に同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部と、を備え、前記第2傾斜面と水平面のなす角(α2)は、前記第1傾斜板と水平面のなす角(α1)より小さいことを特徴とするものである。
この気液接触用充填板によれば、処理水を外気流通方向と同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面が、水平面に対して緩やかに傾斜するため、処理水が外気流通方向へ向かって流れる速度が低下する。一方で、処理水を外気流通方向とは逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面は、第2傾斜面より水平面に対して急な傾斜を形成するため、処理水が外気流通方向とは逆方向側に向かって流れる速度が速い。よって、気液接触用充填板の表面を流下する処理水が横方向からの空気抵抗によって屈曲することを抑制できるという効果を奏する。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の気液接触用充填板は、上部から下部に向けて処理水が流下し、横方向に向けて外気が流通するクロスフロー型冷却塔に収納される気液接触用充填板であり、前記気液接触用充填板の表面は、上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向に同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部と、を備え、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の間に形成される間部は、外気流通方向と逆方向に向けて下方に傾斜することを特徴とするものである。
この気液接触用充填板によれば、第1傾斜部及び前記第2傾斜部の間に形成される間部が外気流通方向と逆方向に向けて下方に傾斜するため、第2傾斜部の第2傾斜面が水平面に対して緩やかに傾斜し、第1傾斜部の第1傾斜面が水平面に対して急に傾斜する。そのため、上述したとおり、第1傾斜面により外気流通方向と逆方向に流れる処理水が、第2傾斜面を越えて流下することになり、外気流通方向とは反対方向へ処理水が拡散するという作用が生じる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のクロスフロー型冷却塔は、上部から下部に向けて処理水が流下し、横方向に向けて外気が流通する気液接触用充填板を備えたクロスフロー型冷却塔であり、前記気液接触用充填板の表面は、上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面からなる第1傾斜部と、上部から下部に向かって前記処理水が流下する際に、該処理水が外気流通方向に同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面からなる第2傾斜部と、を備え、前記第2傾斜面と水平面のなす角(α2)は、前記第1傾斜面と水平面のなす角(α1)より小さいことを特徴とするものである。
このクロスフロー型冷却塔によれば、本発明の気液接触用充填板において説明したとおり、気液接触用充填板の表面を流下する処理水が横方向からの空気抵抗によって屈曲することを抑制できることから、処理水の冷却効率を向上するという効果を奏する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クロスフロー型冷却塔の充填材として用いる気液接触用充填板において、処理水の冷却効率を向上させることが可能な気液接触用充填板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一の実施態様のクロスフロー型冷却塔の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様のクロスフロー型冷却塔に収納する気液接触用充填板の概略説明図である。(A)クロスフロー型冷却塔に収納した状態の気液接触用充填板の正面図である。(B)
図2(A)の破線の円で示す領域の拡大図である。(C)
図2(B)におけるx-x断面を示す概略説明図である。
【
図3】
図2(A)の破線の円で示す領域の拡大図であり、気液接触用充填板の表面における処理水の流れを説明する概略説明図である。
【
図4】本発明の第二の実施態様のクロスフロー型冷却塔に収納する気液接触用充填板の概略説明図である。(A)クロスフロー型冷却塔に収納した状態の気液接触用充填板の正面図である。(B)
図2(A)の破線の円で示す領域の拡大図である。
【
図5】本発明の気液接触用充填板のその他の態様を示す概略説明図である。なお、その他の態様については、拡大図のみを図示するが、気液接触用充填板の全領域に同様の形状が形成されている。
【
図6】本発明の気液接触用充填板のその他の態様を示す概略説明図である。なお、その他の態様については、拡大図のみを図示するが、気液接触用充填板の全領域に同様の形状が形成されている。(A)クロスフロー型冷却塔に収納した状態の気液接触用充填板の正面図の一部を拡大した拡大図である。(B)
図6(A)におけるy-y断面を示す断面図である。
【
図7】従来の気液接触用充填板の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る気液接触用充填板の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載するクロスフロー型冷却塔及び気液接触用充填板については、本発明に係るクロスフロー型冷却塔及び気液接触用充填板を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0013】
〔第一の実施態様〕
図1は、本発明の第一の実施態様のクロスフロー型冷却塔100の構造を示す概略説明図である。
図1に示すように、クロスフロー型冷却塔100は、矩形状の塔本体(ケーシング)の対向する2つの側面に沿って、それぞれ2つの充填材1A、1Bが収納されている。充填材1Aは、板状の気液接触用充填板11A(
図2参照。)が紙面奥方向に向かって複数枚、所定の間隔をあけて立設することにより構成されている。なお、充填材1Bは、外気の導入方向が充填材Aと逆になるため、気液接触用充填板11Aの表面に形成された模様とは逆方向となるように設置されている。その他、
図1の右側の構成において、左側の構成と同形状のものについては図番を省略する。
【0014】
充填材1A、1Bの上部には、充填材1A、1Bに処理水を散布するための給水槽101を備えており、給水槽101の底部には、多数の通孔102が形成されている。また、給水槽101には、処理水を給水槽101に供給するための給水管103を備えている。給水管103から給水槽101に供給された処理水は、通孔102から充填材1A、1Bの上部に散布され、気液接触用充填板11Aの表面を流下する。
【0015】
また、クロスフロー型冷却塔100は、矩形状の塔本体(ケーシング)の対向する2つの側面に外気を導入するための給気口105、中央上部に排気口107が形成されており、排気口107には、吸引ファン104が設置されている。吸引ファン104を用いてクロスフロー型冷却塔100の内部の空気を排気口7から排気することにより、給気口105からクロスフロー型冷却塔100の内部に外気が導入される。導入された外気は、気液接触用充填板11Aの表面を略水平方向に流通し、気液接触用充填板11Aの表面を流れる処理水と熱交換を行い、処理水を冷却する。
【0016】
なお、給気口105には、ルーバー106が設置されている。ルーバー106は、導入される外気の流れ方向を整え、気液接触用充填板11Aの表面に均等に外気を通過させることができる。また、ルーバー106により、処理水の水滴の外部への飛散を防止し、外部からの異物の侵入を防止することができる。
【0017】
また、充填材1Aと排気口107の間には、空気中に含まれる水滴を除去することが可能なエリミネータ108が設置されている。エリミネータ108は、充填材1A、1Bを通過した空気に含まれる処理水を回収し、排気口107から処理水が流出することを防止することができる。
【0018】
クロスフロー型冷却塔100の底部には、処理水を回収するための貯水槽109、貯水槽109から処理水を排出するための排水ドレン110を備えている。気液接触用充填板11Aを流下する間に外気により冷却された処理水や、エリミネータ108に捕集された処理水は、貯水槽109に集められ、排水ドレン110からクロスフロー型冷却塔100の外部に排出する。排出された処理水は、ビルの空調や冷暖房設備等の冷却水として再利用される。
【0019】
(気液接触用充填板)
気液接触用充填板11Aは、上部から流下する処理水を気液接触用充填板の表面で拡散させるものである。気液接触用充填板は、処理水と外気の接触の効率を向上するという観点から、通常は板状であるが、角柱状などでもよい。気液接触用充填板は、一般的に硬質ポリ塩化ビニルに代表される合成樹脂や金属を原料として種々の形状に成形される。
【0020】
図2に、第一の実施態様のクロスフロー型冷却塔に収納する気液接触用充填板11Aの概略説明図を示す。
図2(A)は、クロスフロー型冷却塔に収納される気液接触用充填板11Aの正面図である。
図2(B)は、
図2(A)の破線の円で示す領域の拡大図である。
図2(C)は、
図2(B)におけるx-x断面を示す概略説明図である。なお、以下に気液接触用充填板11Aの一方の表面の形状について説明するが、他方の表面(裏面)には、一方の表面と左右が逆の形状(一方の表面の鏡像)が形成されている。
また、気液接触用充填板11Aの上部には、水平方向に2つの吊穴(図示略)が形成されており、気液接触用充填板11Aは、当該孔に固定具を通して吊るした状態で塔本体(ケーシング)に収納される。
【0021】
図2(B)に示すように、気液接触用充填板11Aの表面には、外気流通方向と逆方向側に向けて処理水が流れるように傾斜する第1傾斜面31からなる第1傾斜部3Aと、外気流通方向と同方向側に処理水が流れるように傾斜する第2傾斜面41からなる第2傾斜部4Aを備え、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aは、垂直方向に交互に繰り返して形成されている。
【0022】
ここで、
図2(A)、(B)に示すように、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aが垂直方向に交互に繰り返して形成されることにより、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aとの境界線(一点鎖線)は、間部5を形成する。そして、この境界線となる間部5は、外気流通方向と逆方向に向けて下方に傾斜するように、形成されている。また、間部5と水平面Hとのなす角(β)は、約7°である。
なお、間部5と水平面Hとのなす角(β)は、特に制限されないが、好ましくは、1~15°である。間部5と水平面Hとのなす角(β)を1°以上とすることにより、外気流通方向と逆方向に向かって処理水が流れる作用が生じる。一方、間部5と水平面Hとのなす角(β)を15°以下とすることにより、外気流通方向と逆方向に向かって処理水が流れる作用が強くなり過ぎず、気液接触用充填板11Aの表面の広範囲に処理水を拡散することができる。
【0023】
また、
図2(c)に示すように、第1傾斜部3Aの第1傾斜面31は、外気流通方向に沿って気液接触用充填板の表面の高さが上昇する方向に傾斜する第1a傾斜面31aと、外気流通方向に沿って気液接触用充填板の表面の高さが低下する方向に傾斜する第1b傾斜面31bと、からなり、第1a傾斜面31aと第1b傾斜面31bは、横方向に交互に連続して配置され、尾根部Rと谷部Vを形成する。なお、第2傾斜部4Aの第2傾斜面41についても同様に、第2a傾斜面41aと第2b傾斜面41bが、横方向に交互に連続して配置され、尾根部Rと谷部Vを形成する。そして、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aが垂直方向に交互に繰り返して形成されることにより、谷部Vは、処理水流通路2Aを形成する。さらに、第一の実施態様における気液接触用充填板11Aでは、第1傾斜面31と第2傾斜面41がそれぞれ形成する尾根部Rと谷部Vは、互いに端部で連結しており、筋状の処理水流通路2Aを形成している。処理水は、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aに形成された谷部Vからなる処理水流通路2Aを主流路として流下しつつ、処理水の一部は、処理水流通路2Aから尾根部Rを超えて流下する。第1傾斜面31及び第2傾斜面41は、尾根部Rと谷部Vを備えたジグザグ形状とすることにより、表面積が増大し、流下する処理水の冷却効率が向上するという効果を奏する。
【0024】
なお、気液接触用充填板11Aは、ロールに巻かれたポリ塩化ビニルのシートに対して模様の付したローラを押圧して、該シートの表面に第1傾斜面31及び第2傾斜面41を形成する。これにより、シートの両面には、鏡像となる形状の第1傾斜面31及び第2傾斜面41を形成することができる。また、気液接触用充填板11Aは、板状部材の片面に突起又は溝を形成して、第1傾斜面31及び第2傾斜面41を形成してもよい。
【0025】
また、処理水流通路の形状は、どのような形状でもよく、例えば、第一実施態様のように、第1傾斜面と第2傾斜面を直線状として、平面視三角波状の処理水流通路としてもよいし、第1傾斜面と第2傾斜面を円弧状等の曲線形状として、平面視波状の処理水流通路としてもよい。
また、第一実施態様のように、第1傾斜面と第2傾斜面の互いの端部を連結して筋状の処理水流通路としてもよいし、第1傾斜面と第2傾斜面の互いの端部を連結しなくてもよい。第1傾斜面と第2傾斜面の互いの端部を連結して筋状の処理水流通路とすることにより、処理水の流れを筋状の処理水流通路内に制御することができるため、処理水が第2傾斜面41を越流して、外気流通方向とは反対方向へ拡散する作用を向上するという効果を奏する。なお、処理水が第2傾斜面41を越流して、外気流通方向とは反対方向へ拡散する作用について、後述する。
【0026】
図2(B)に示すように、本発明の気液接触用充填板11Aでは、第2傾斜面41と水平面Hのなす角(α2)は、第1傾斜面31と水平面Hのなす角(α1)より小さいという特徴を有している。なお、第1傾斜面31及び第2傾斜面41と水平面Hのなす角α1及びα2は、それぞれ鋭角である。
【0027】
この特徴による処理水の流れについて、
図3を参照して説明する。
α2がα1より小さいことから、本発明の気液接触用充填板11Aでは、処理水が外気流通方向と同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面41が水平面に対して緩やかに傾斜し、第2傾斜部4Aにおける処理水の流れ(F1)の流速も緩やかになる。一方で、処理水が外気流通方向とは逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面31は、水平面に対して急な傾斜を形成するため、第1傾斜部3Aにおける処理水の流れ(F2)の流速は、第2傾斜部4Aにおける処理水の流れ(F1)と比べて速くなる。そうすると、第2傾斜部4Aにおける処理水流通路において処理水が溢れ、処理水の一部が第2傾斜面41を越流する(処理水の流れF3)。これにより、処理水が外気流通方向とは反対方向へ拡散する作用が生じ、側方から流通する外気により処理水の流れが屈曲することを抑制することができる。
【0028】
〔第二の実施態様〕
図4に、第二の実施態様の気液接触用充填板11Bの概略説明図を示す。
図4(A)は、クロスフロー型冷却塔に収納した状態の気液接触用充填板11Bの正面図である。
図4(B)は、
図4(A)の破線の円で示す領域の拡大図である。なお、以下に気液接触用充填板11Bの一方の表面の形状について説明するが、他方の表面(裏面)にも鏡像として同様の形状が形成されている。
【0029】
図4(B)に示すように、気液接触用充填板11Bの表面には、外気流通方向と逆方向側に流れるように傾斜する第1傾斜面32からなる第1傾斜部3Bと、外気流通方向と同方向側に流れるように傾斜する第2傾斜面42からなる第2傾斜部4Bを備え、第1傾斜部3Bと第2傾斜部4Bは、垂直方向に交互に繰り返して形成されている。
また、第一の実施態様の気液接触用充填板11Aと同様に、第1傾斜部3Bの第1傾斜面32及び第2の傾斜部4Bは、複数の傾斜面が横方向に交互に連続して配置され、尾根部Rと谷部V(不図示)を形成する。
【0030】
ここで、第1傾斜部3Bと第2傾斜部4Bが垂直方向に交互に繰り返して形成されることにより、第1傾斜部3Bと第2傾斜部4Bとの間の境界線として間部5を形成する。そして、間部5は、外気流通方向と逆方向に向けて下方に傾斜するように、形成されている。また、間部5と水平面Hとのなす角(β)は、約5°である。
【0031】
第1傾斜面32、第2傾斜面42は、曲線状の部材であり、その端部が互いに連結している。これにより、気液接触用充填板11Bの表面には、波形状であり筋状の処理水流通路2Bが形成されている。ここで、曲線状の部材の方向については、曲線の接線の方向によって決定する。例えば、曲線状の部材の接線が、外気流通方向と逆方向側に向けて下方に傾斜する領域を第1傾斜面32とし、外気流通方向と同方向側に向けて下方に傾斜する領域を第2傾斜面42とする。
【0032】
次に、曲線状である第1傾斜面32と水平面Hのなす角(α1)は、第1傾斜面32の領域の上端と下端を通る直線を、第1傾斜面32の仮想直線L1として測定する。すなわち、この仮想直線L1と水平面Hのなす角を、第1傾斜面32と水平面Hのなす角(α1)とする。
同様に、第2傾斜面42と水平面Hのなす角(α2)は、第2傾斜面42の領域の上端と下端を通る直線を、第2傾斜面42の仮想直線L2として測定する。
【0033】
〔他の態様〕
次に、気液接触用充填板の他の態様について例示する。
図5又は
図6に、本発明の気液接触用充填板のその他の態様について概略説明図を示す。なお、その他の態様については、拡大図のみを図示するが、気液接触用充填板の全領域に同様の形状が形成されている。
【0034】
図5(A)の気液接触用充填板11Cは、第1傾斜面31と第2傾斜面41が非連結状態となるように、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aが形成されている例である。
図5(B)の気液接触用充填板11Dは、第1傾斜面31と第2傾斜面41が非連結状態となるように、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aが形成され、かつ、第1傾斜部3Aと第2傾斜部4Aとの間部5が一部重なる領域(網目模様で示した領域)を有する例である。
【0035】
図6(A)の気液接触用充填板11Eは、第一の実施態様の気液接触用充填板11Aの処理水流通路に、凸部6を備えた例である。
図6(B)に、
図6(A)におけるy-y断面を示す断面図を示す。
図6(B)に示すように、処理水流通路2Eには、凸部6が設置されているため、処理水流通路2Eを流れる処理水は凸部6を越流して流下する。これにより、処理水の表面積を増大し、冷却効率を向上することができる。
【0036】
また、凸部6は、間部5及び第2傾斜部4Aに配置することが好ましい。第2傾斜部4A又は第2傾斜部4Aの処理水の流れ方向の終点側の間部5に凸部6を配置する場合、第2傾斜部4Aの処理水流通路において処理水が堰き止められるため、処理水が第2傾斜面41の尾根部を越流しやすくなる。また、第2傾斜部4Aの処理水の流れ方向の始点側の間部5に凸部6を配置する場合、第1傾斜部3Aを流下する処理水が凸部6に衝突して、第2傾斜面41を越流しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のクロスフロー型冷却塔用の気液接触用充填板は、クロスフロー型冷却塔の冷却効率を向上させるために利用することができる。
また、本発明のクロスフロー型冷却塔は、液体を冷却するための処理に利用することができる。具体的には、ビルの空調や冷暖房設備等の冷却水の冷却に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1A,1B…充填材、11A,11B,11C,11D,11E…気液接触用充填板、2A,2B,2C,2D,2E…処理水流通路、3A,3B…第1傾斜部、31,32…第1傾斜面、4A,4B…第2傾斜部、41,42…第2傾斜面、5…間部、6…凸部、10…気液接触用充填板、100…クロスフロー型冷却塔、101…給水槽、102…通孔、103…給水管、104…吸引ファン、105…給気口、106…ルーバー、107…排気口、108…エリミネータ、109…貯水槽、110…排水ドレン、R…尾根部、V…谷部、F1,F2,F3…処理水の流れ