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特許7168539ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を生産する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を生産する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20221101BHJP
   C12P 7/42 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221101BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C12N1/21
C12P7/42 ZNA
C12N15/54
C12N15/55
C12N15/53
C12N15/62 Z
C12N15/52 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019183765
(22)【出願日】2019-10-04
(62)【分割の表示】P 2016519714の分割
【原出願日】2014-06-16
(65)【公開番号】P2020022473
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-11-01
(31)【優先権主張番号】61/835,464
(32)【優先日】2013-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シャーマー アンドリアス ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハイボ
(72)【発明者】
【氏名】デル カーダイレ スティーブン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】フー チーハオ
(72)【発明者】
【氏名】ホム ルイス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】チュー バオロン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ポポヴァ エマニュエラ イー.
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520455(JP,A)
【文献】国際公開第2011/127409(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/062564(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/051729(WO,A1)
【文献】米国特許第08361769(US,B1)
【文献】MALCA, S.H.,An approved Thesis presented to the Faculty of Energy Technology, Process Engineering and Biological,2013年06月16日,http://dx.doi.org/10.18419/opus-1388,[Retrieved on 2018-05-30], Retrieved from the Internet
【文献】MCDONALD, A.G. et al.,Nucleic Acids Res.,2008年,Vol.37,pp.D593-D597
【文献】ExplorEnz: EC 1.2.1.42,ExplorEnz Website,2012年12月16日,https://www.enzyme-database.org/query.php?ec=EC+1.2.1.42,[retrieved on 2020-12-16], Retrieved from the Internet
【文献】ExplorEnz: EC 1.2.1.80,ExplorEnz Website,2020年12月16日,https://www.enzyme-database.org/query.php?ec=EC+1.2.1.80,[retrieved on 2020-12-16], Retrieved from the Internet
【文献】SCHIRMER, A. et al.,Science,2010年,Vol.329,pp.559-562
【文献】BA, L. et al.,Biotechnol. Bioeng.,2013年06月04日,Vol.110, No.11,pp.2815-2825
【文献】MALCA, S.H. et al.,Chem. Commun.,2012年,Vol.48,pp.5115-5117
【文献】FUJITA, N. et al.,Biosci. Biotechnol. Biochem.,2009年,Vol.73, No.8,pp.1825-1830
【文献】FUJII, T. et al.,Biosci. Biotechnol. Biochem.,2006年,Vol.70, No.6,pp.1379-1385
【文献】EMBOSS Water, Pairwise Sequence Alignment,EMBL-EBI website,2020年12月21日,https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/,[retrieved on 2020-12-21], Retrieved from the Internet
【文献】LIU, R. et al.,Metab. Eng.,2013年12月12日,Vol.22,pp.10-21
【文献】KAISER, B.K. et al.,PLOS ONE,2013年03月11日,Vol.8, No.3,e58307(pp.1-11)
【文献】WANG, W. et al.,Biotechnol. Biofuels,2013年05月06日,Vol.6,Article no.69 (pp.1-9)
【文献】LIU, A. et al.,Appl. Microbiol. Biotechnol.,2013年06月23日,Vol.97,pp.7061-7071
【文献】FASAN, R.,ACS Catal.,2012年,Vol.2,pp.647-666
【文献】MIHO NODATE; MITSUTOSHI KUBOTA; NORIHIKO MISAWA,FUNCTIONAL EXPRESSION SYSTEM FOR CYTOCHROME P450 GENES USING THE REDUCTASE DOMAIN OF SELF-SUFFICIENT P450RHF FROM RHODOCOCCUS SP. NCIMB 9784.,APPLIED MICROBIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY,ドイツ,SPRINGER,2005年09月30日,V71 N4,P455 - 462
【文献】MLANIE BORDEAUX; ANNE GALARNEAU; FRANOIS FAJULA; JULLIEN DRONE,A REGIOSELECTIVE BIOCATALYST FOR ALKANE ACTIVATION UNDER MILD CONDITIONS,ANGEWANDTE CHEMIE INTERNATIONAL EDITION,2011年01月24日,V50 N9,P2075 - 2079
【文献】ROBIN, A. et al.,Chem. Commun.,2009年,Vol.18,pp.2478-2480
【文献】MITSUTOSHI KUBOTA; MIHO NODATE; MINA YASUMOTO-HIROSE; TAKU UCHIYAMA; OSAMU KAGAMI; YOSHIKAZU SHIZURI,ISOLATION AND FUNCTIONAL ANALYSIS OF CYTOCHROME P450 CYP153A GENES FROM VARIOUS ENVIRONMENTS,BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY, AND BIOCHEMISTRY,JAPAN SOCIETY FOR BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY, AND,2005年01月01日,V69 N12,P2421 - 2430
【文献】MELANIE BORDEAUX; ANNE GALARNEAU; JULLIEN DRONE,CATALYTIC, MILD, AND SELECTIVE OXYFUNCTIONALIZATION OF LINEAR ALKANES: CURRENT CHALLENGES,ANGEWANDTE CHEMIE INTERNATIONAL EDITION,2012年09月20日,V51 N43,P10712-10723
【文献】LENTZ, O. et al.,ChemBioChem,2006年,Vol.7,pp.345-350
【文献】FUNHOFF, E.G. et al.,J. Bacteriol.,2006年,Vol.188, No.14,pp.5220-5227
【文献】Enzyme Microb. Technol., 2007.03, Vol.40, p.806-812
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系の再生可能な原料の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物であって、
該組換え微生物が、
(a)EC 1.2.1.80のアシル-ACPレダクターゼポリペプチド、またはシアノバクテリアに由来する脂肪アシル-ACP/CoAを脂肪アルデヒドに還元する酵素ポリペプチド
(b)EC 1.1.-.-またはEC 1.1.1.1のアルコールデヒドロゲナーゼポリペプチド;および
(c)EC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼポリペプチド
をコードする核酸配列を発現するように操作された生合成経路を含み、
該改変されたω-ヒドロキシラーゼが、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントであり、
該ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ配列番号:6の配列に対応させた位置に、配列番号:6のV141I、V141T、V141Q、V141G、R27L、R178N、N309R、N407A、V415R、P666A、P666DおよびA796Vからなる群より選択される1つまたは複数の突然変異を有し、
該ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が、ω-ヒドロキシ脂肪酸、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルおよび/またはα,ω-ジオールを含む、
前記組換え微生物。
【請求項2】
前記改変されたω-ヒドロキシラーゼが、ンビボで炭化水素鎖のω位を触媒する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項3】
前記改変されたω-ヒドロキシラーゼが、自給型である、請求項2記載の組換え微生物。
【請求項4】
前記改変されたω-ヒドロキシラーゼが、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質のバリアントである、請求項3記載の組換え微生物。
【請求項5】
前記ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6の配列の141位のアミノ酸位置に対応させた位置に、配列番号:6のV141IおよびV141Tからなる群より選択される突然変異を有する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項6】
前記ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、
(i)配列番号:32;
(ii)配列番号:34;
(iii)配列番号:36;
(iv)配列番号:38;
(v)配列番号:40;
(vi)配列番号:42;
(vii)配列番号:44;ならびに
(viii)配列番号:46
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項7】
前記アシル-ACPレダクターゼが、シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)由来する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項8】
前記ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-ジオールである、請求項1~7のいずれか一項記載の組換え微生物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の微生物を含む細胞培養物。
【請求項10】
(a)発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該組換え微生物が、EC 1.2.1.80のアシル-ACPレダクターゼポリペプチド、またはシアノバクテリアに由来する脂肪アシル-ACP/CoAを脂肪アルデヒドに還元する酵素ポリペプチド;EC 1.1.-.-またはEC 1.1.1.1のアルコールデヒドロゲナーゼポリペプチド;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼポリペプチド
をコードする核酸配列を発現するように操作された生合成経路を含む、段階;
(b)炭素系の再生可能な原料を含む発酵ブロス中で該組換え微生物を培養する段階;ならびに
(c)該発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階
を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法であって、
該改変されたω-ヒドロキシラーゼが、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントであり、
該ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ配列番号:6の配列に対応させた位置に、配列番号:6のV141I、V141T、V141Q、V141G、R27L、R178N、N309R、N407A、V415R、P666A、P666DおよびA796Vからなる群より選択される1つまたは複数の突然変異を有し、
該ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が、ω-ヒドロキシ脂肪酸、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルおよび/またはα,ω-ジオールを含む、
前記方法。
【請求項11】
前記EC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼが、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6の配列の141位のアミノ酸位置に対応させた位置に、配列番号:6のV141IおよびV141Tからなる群より選択される突然変異を有する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、
(i)配列番号:32;
(ii)配列番号:34;
(iii)配列番号:36;
(iv)配列番号:38;
(v)配列番号:40;
(vi)配列番号:42;
(vii)配列番号:44;ならびに
(viii)配列番号:46
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項10または11記載の方法。
【請求項14】
前記アシル-ACPレダクターゼが、シネココッカス・エロンガタス由来する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-ジオールである、請求項10~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記炭素系の再生可能な原料が、トウモロコシ、サトウキビ、スイッチグラス、エンシレージ、わら、材木、下水、生ごみ、セルロース系都市廃棄物、煙道ガス、合成ガス、および二酸化炭素からなる群より選択される、請求項10または11記載の方法。
【請求項17】
前記炭素系の再生可能な原料が、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、デンプン、セルロース、ペクチン、キシラン、スクロース、マルトース、セロビオース、ツラノース、ヘミセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩、エタノール、メタノール、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項10または11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年6月14日に出願された米国仮出願第61/835,464号の恩典を主張し、その開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII書式で電子的に提出された配列表を含み、それはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。2014年6月16日に作成された前記ASCIIコピーの名称はLS00048PCT_SL.txtであり、サイズは342,103バイトである。
【0003】
分野
本開示は、ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体、およびそれらを生産する方法に関する。本明細書において、本開示は、ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を高い純度および収量で提供する、新規かつ環境負荷の少ない生産方法を包含する。選択的発酵を通じてω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する組換え微生物も、さらに包含される。
【背景技術】
【0004】
背景
ω-ヒドロキシル化(ω-ヒドロキシ)脂肪酸誘導体には、産業用物質の構成成分として、数多くの商業的用途がある。産業界では、ω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-アミノ脂肪酸;ω-アミノ脂肪酸メチルエステル;α-、ω-二酸(α,ω-二酸);ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル(ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル);α-、ω-ジエステル(α,ω-ジエステル);α-、ω-ジオール(α,ω-ジオール)などを含む、さまざまな種類のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が認知されている。これらの分子はまた、さまざまな他の化合物の前駆体としても重要である。例えば、α,ω-ジカルボン酸および他のα,ω-二官能性分子は、ポリマー樹脂、金属加工液、接着剤、腐食防止剤、コンデンサー用電解質、ジエステル合成潤滑剤、繊維、粉末コーティング硬化剤、可塑剤、ポリエステルコーティング、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、香味剤、芳香剤、界面活性剤、洗剤、添加物などにおける産業的用途のある重要な化学物質である。現在、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は依然として大半は石油系材料から、またはパラフィンおよび脂肪酸の生物変換を通じて製造されている。これらの化合物を生産するための化学的方法は、有害な試薬の使用を必要とし、エネルギーを大量に消費する上に、環境への負荷も大きい。その反対に、新進的な発酵経路は、環境に優しい工程と見なされてはいるが、依然として費用がかかり過ぎる上、製造しうる生成物の種類も限られている。このため、再生可能な原料からの、さまざまな種類および官能性のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の直接生産のための工程は、環境にとってより安全であるだけでなく、費用対効果もかなり高いと考えられる。本開示はこの需要に応えるものである。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示の1つの局面は、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシル化(ω-ヒドロキシ)脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を提供する。本微生物は、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。改変されたω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型(self-sufficient)CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本明細書において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントは、アミノ酸位置27、82、141、178、231、309、407、415、516、666および/または796に少なくとも1つの突然変異を有する。本組換え微生物は、ω-ヒドロキシ脂肪酸およびω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルを非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。
【0006】
本開示のもう1つの局面は、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を提供する。本微生物は、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。改変されたω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質. さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本組換え微生物は、ω-オキソ脂肪酸およびω-オキソ脂肪酸メチルエステルを非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。
【0007】
本開示のもう1つの局面は、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を提供する。本微生物は、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼ(シトクロムP450モノオキシゲナーゼ)を含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。もう1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.2.1.3/4/5のアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはEC 1.2.3.1のアルデヒドオキシダーゼを含む核酸配列をさらになお発現するように操作されている。改変されたω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本組換え微生物は、α,ω-二酸またはω-カルボキシ脂肪酸メチルエステルであるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。
【0008】
さらに、本開示のもう1つの局面は、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を提供する。本微生物は、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。もう1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.2.1.3/4/5のアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはEC 1.2.3.1のアルデヒドオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらになお発現するように操作されている。さらにもう1つの局面において、組換え微生物は、EC 6.2.1.3のアシル-CoAリガーゼまたはEC 2.8.3.6のアシル-CoAトランスフェラーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。改変されたω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本組換え微生物は、α,ω-ジエステルであるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。
【0009】
本開示は、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を、さらに包含する。本微生物は、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変された(modifed)ω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。もう1つの局面において、組換え微生物は、EC 2.6.1のアミノトランスフェラーゼまたはEC 1.4.9、EC 1.4.98もしくはEC 1.4.99のアミンデヒドロゲナーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。ω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本組換え微生物は、ω-アミノ脂肪酸およびω-アミノ脂肪酸メチルエステルを非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。
【0010】
本開示のもう1つの局面は、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を提供する。本微生物は、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。1つの局面において、組換え微生物は、EC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼおよび1.2.99のカルボン酸レダクターゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。ω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本組換え微生物は、α,ω-ジオールであるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。
【0011】
本開示は、ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸を含むω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸;α,ω-ジオール;α,ω-ジエステル;ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル;ω-アミノ脂肪酸;およびω-アミノ脂肪酸メチルエステルを非限定的に含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、微生物(前記)を含む細胞培養物をさらに意図する。
【0012】
本開示のもう1つの局面は、発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作されている、段階を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法を提供する。本方法は、炭素源を含有する再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階、および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階をさらに含む。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。1つの局面において、産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸またはω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルである。
【0013】
本開示のもう1つの局面は、発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼ(シトクロムP450モノオキシゲナーゼ)を含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を有する、段階を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法を提供する。1つの特定の局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。本方法は、炭素源を含有する再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階、および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階をさらに含む。1つの局面において、産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、ω-オキソ脂肪酸またはω-オキソ脂肪酸メチルエステルである。
【0014】
本開示のもう1つの局面は、発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作されている、段階を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法を提供する。1つの特定の局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。もう1つの具体的な局面において、組換え微生物は、EC 1.2.1.3/4/5のアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはEC 1.2.3.1のアルデヒドオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。本方法は、炭素源を含有する再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階、および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階をさらに含む。1つの局面において、産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、α,ω-二酸またはα,ω-脂肪酸ジ-メチルエステルである。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。
【0015】
本開示のもう1つの局面は、発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作されている、段階を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法を提供する。1つの特定の局面において、組換え微生物は、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。もう1つの具体的な局面において、組換え微生物は、EC 2.6.1のアミノトランスフェラーゼまたはEC 1.4.9、EC 1.4.98もしくはEC 1.4.99のアミンデヒドロゲナーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている。本方法は、炭素源を含有する再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階、および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階をさらに含む。1つの局面において、産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、ω-アミノ脂肪酸またはω-アミノ脂肪酸メチルエステルである。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。
【0016】
本開示は、発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作されている、段階を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法をさらに意図する。1つの特定の局面において、組換え微生物は、EC 1.2.99.6のカルボン酸レダクターゼおよびまたはEC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼを含むポリペプチドをコードする核酸をさらに発現するように操作されている。本方法は、炭素源を含有する再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階、および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階をさらに含む。1つの局面において、産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、α,ω-ジオールである。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。
【0017】
本開示のもう1つの局面は、再生可能な原料が、トウモロコシ、サトウキビ、モロコシ、テンサイ、スイッチグラス、エンシレージ、わら、材木、パルプ、下水、生ごみ、セルロース系都市廃棄物、煙道ガス(flu-gas)、合成ガス、および二酸化炭素を非限定的に含む、炭素系(carbon based)である方法(前記)を提供する。1つの局面において、炭素源は、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、デンプン、セルロース、ペクチン、キシラン、スクロース、マルトース、セロビオース、ツラノース、ヘミセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩、エタノール、メタノール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。
【0018】
本開示は、ポリウレタン、ポリエステルポリオール、ポリエステル樹脂、アルキルコート樹脂(alkyl coating resin)、ファイバーグラス樹脂、ゲルコート樹脂、およびポリエステル系熱可塑性物質を非限定的に含む、本明細書において開示される方法(前記)によって生産されるポリマー組成物を、さらに意図する。
【0019】
本開示のもう1つの局面は、EC 1.2.1.42のアシル-ACPレダクターゼ、EC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼおよびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも3種の核酸配列を発現するように操作された、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物を提供する。ω-ヒドロキシラーゼは、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、α,ω-ジオールである。1つの局面においては、本明細書において開示される微生物(前記)を含む細胞培養物も提供される。
【0020】
さらに、本開示のもう1つの局面は、発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 1.2.1.42のアシル-ACPレダクターゼ、EC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼ、およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも3種の核酸配列を発現するように操作された経路を有する、段階を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法を提供する。本方法は、炭素源を含有する再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階、および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階をさらに含む。1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、改変されたω-ヒドロキシラーゼは、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である。さらにもう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである改変されたω-ヒドロキシラーゼは、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666Dおよび/またはA796Vを含む1つまたは複数の突然変異を有する。本明細書において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、α,ω-ジオールである。1つの局面において、再生可能な原料は炭素系であり、トウモロコシ、サトウキビ、モロコシ、テンサイ、スイッチグラス、エンシレージ、わら、材木、パルプ、下水、生ごみ、セルロース系都市廃棄物、煙道ガス、合成ガス、および二酸化炭素を含む。もう1つの局面において、炭素源は、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、デンプン、セルロース、ペクチン、キシラン、スクロース、マルトース、セロビオース、ツラノース、ヘミセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩、エタノール、メタノール、グリセロール、およびそれらの混合物から選択される。さらになお、ポリウレタン、ポリエステルポリオール、ポリエステル樹脂、アルキルコート樹脂、ファイバーグラス樹脂、ゲルコート樹脂、およびポリエステル系熱可塑性物質を非限定的に含む、本方法によって生産されるポリマー組成物も含まれる。
【0021】
本開示は、C9~C16飽和または不飽和マクロライドである、本明細書に記載の方法(前記)によって生産される芳香性化学組成物を、さらに意図する。本芳香性化学組成物は、アンブレトリド、ジヒドロアンブレトリド、15-ヒドロキシペンタデカン酸のマクロラクトン、および15-ヒドロキシペンタデセン酸のマクロラクトンおよび/または他のものから選択される化学的実体を含む。
[本発明1001]
(a)EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;および
(b)EC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼ
を含むポリペプチドをコードする少なくとも2つの核酸配列を発現するように操作された経路を含む、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物。
[本発明1002]
改変されたω-ヒドロキシラーゼが、改変されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼ酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1003]
改変されたω-ヒドロキシラーゼがCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである、本発明1002の組換え微生物。
[本発明1004]
CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドが、自給型(self-sufficient)CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である、本発明1003の組換え微生物。
[本発明1005]
改変されたω-ヒドロキシラーゼが、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1006]
ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666DおよびA796Vからなる群より選択される1つまたは複数の突然変異を有する、本発明1005の組換え微生物。
[本発明1007]
ω-ヒドロキシ脂肪酸およびω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルからなる群より選択されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1008]
EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1009]
ω-オキソ脂肪酸およびω-オキソ脂肪酸メチルエステルからなる群より選択されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、本発明1008の組換え微生物。
[本発明1010]
EC 1.2.1.3/4/5のアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはEC 1.2.3.1のアルデヒドオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1008の組換え微生物。
[本発明1011]
α,ω-二酸またはω-カルボキシ脂肪酸メチルエステルであるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、本発明1010の組換え微生物。
[本発明1012]
EC 6.2.1.3のアシル-CoAリガーゼまたはEC 2.8.3.6のアシル-CoAトランスフェラーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1010の組換え微生物。
[本発明1013]
α,ω-ジエステルであるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、本発明1012の組換え微生物。
[本発明1014]
EC 2.6.1のアミノトランスフェラーゼまたはEC 1.4.9、EC 1.4.98もしくはEC 1.4.99のアミンデヒドロゲナーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1008の組換え微生物。
[本発明1015]
ω-アミノ脂肪酸およびω-アミノ脂肪酸メチルエステルからなる群より選択されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、本発明1014の組換え微生物。
[本発明1016]
EC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼおよび1.2.99のカルボン酸レダクターゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1001の組換え微生物。
[本発明1017]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-ジオールである、本発明1016の組換え微生物。
[本発明1018]
本発明1001~1017のいずれかの微生物を含む細胞培養物。
[本発明1019]
ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸;α,ω-ジオール;ω-アミノ脂肪酸;およびω-アミノ脂肪酸メチルエステルからなる群より選択されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する、本発明1018の細胞培養物。
[本発明1020]
(a)発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、
EC 3.1.2.-、3.1.1.5、もしくは3.1.2.14のチオエステラーゼ;またはEC 2.3.1.75もしくはEC 2.3.1.20のエステルシンターゼ;および
EC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼ
を含むポリペプチドをコードする少なくとも2つの核酸配列を発現するように操作された経路を含む、段階;
(b)炭素源を含有する再生可能な原料を該発酵ブロスに添加する段階;ならびに
(c)該発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階
を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法。
[本発明1021]
改変されたω-ヒドロキシラーゼがCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである、本発明1020の方法。
[本発明1022]
CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドが、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
改変されたω-ヒドロキシラーゼが、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである、本発明1020の方法。
[本発明1024]
ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666DおよびA796Vからなる群より選択される1つまたは複数の突然変異を有する、本発明1023の方法。
[本発明1025]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が、ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸またはω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルである、本発明1020の方法。
[本発明1026]
組換え微生物が、EC 1.1.1.1/2のアルコールデヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.3.13もしくはEC 1.1.3.20のアルコールオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1020の方法。
[本発明1027]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がω-オキソ脂肪酸またはω-オキソ脂肪酸メチルエステルである、本発明1026の方法。
[本発明1028]
組換え微生物が、EC 1.2.1.3/4/5のアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはEC 1.2.3.1のアルデヒドオキシダーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1026の方法。
[本発明1029]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-二酸またはα,ω-脂肪酸ジ-メチルエステルである、本発明1028の方法。
[本発明1030]
組換え微生物が、EC 2.6.1のアミノトランスフェラーゼまたはEC 1.4.9、EC 1.4.98もしくはEC 1.4.99のアミンデヒドロゲナーゼを含むポリペプチドをコードする核酸配列をさらに発現するように操作されている、本発明1026の方法。
[本発明1031]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がω-アミノ脂肪酸またはω-アミノ脂肪酸メチルエステルである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
組換え微生物が、EC 1.2.99.6のカルボン酸レダクターゼまたはおよびEC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼを含むポリペプチドをコードする核酸をさらに発現するように操作されている、本発明1020の方法。
[本発明1033]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-ジオールである、本発明1032の方法。
[本発明1034]
再生可能な原料が炭素系である、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
炭素系の再生可能な原料が、トウモロコシ、サトウキビ、モロコシ、テンサイ、スイッチグラス、エンシレージ、わら、材木、パルプ、下水、生ごみ、セルロース系都市廃棄物、煙道ガス(flu-gas)、合成ガス、バイオマス加水分解物、および二酸化炭素からなる群より選択される、本発明1034の方法。
[本発明1036]
炭素源が、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、デンプン、セルロース、ペクチン、キシラン、スクロース、マルトース、セロビオース、ツラノース、ヘミセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩、エタノール、メタノール、グリセロール、廃脂肪酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1037]
炭素源がグルコース、グリセロールまたはスクロースである、本発明1001の方法。
[本発明1038]
ポリウレタン、ポリエステルポリオール、ポリエステル樹脂、アルキルコート樹脂(alkyl coating resin)、ファイバーグラス樹脂、ゲルコート樹脂(gel coating resin)、およびポリエステル熱可塑性物質からなる群より選択される、本発明1020の方法によって生産されるポリマー組成物。
[本発明1039]
(a)EC 1.2.1.42のアシル-ACPレダクターゼ;
(b)EC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼ;および
(c)EC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼ
を含むポリペプチドをコードする少なくとも3種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む、再生可能な原料由来の炭素源の存在下において発酵ブロス中で増殖させた場合にインビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させるための組換え微生物。
[本発明1040]
改変されたω-ヒドロキシラーゼが、改変されたシトクロムP450酵素活性を有し、かつインビボで炭化水素鎖のω位を効率的に触媒する、本発明1039の組換え微生物。
[本発明1041]
改変されたω-ヒドロキシラーゼがCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドである、本発明1040の組換え微生物。
[本発明1042]
CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドが、自給型CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質である、本発明1041の組換え微生物。
[本発明1043]
改変されたω-ヒドロキシラーゼが、EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントである、本発明1039の組換え微生物。
[本発明1044]
ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントが、配列番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、V141I、V141T、V141Q、V141G、V141M、V141L、R27L、R82D、R178N、A231T、N309R、N407A、V415R、T516V、P666A、P666DおよびA796Vからなる群より選択される1つまたは複数の突然変異を有する、本発明1043の組換え微生物。
[本発明1045]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-ジオールである、本発明1039の組換え微生物。
[本発明1046]
本発明1039~1045のいずれかの微生物を含む細胞培養物。
[本発明1047]
(a)発酵ブロス中に組換え微生物を用意する段階であって、該微生物が、EC 1.2.1.42のアシル-ACPレダクターゼ;EC 1.1.-.-のアルコールデヒドロゲナーゼ;およびEC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも3種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む、段階;
(b)炭素源を含有する再生可能な原料を該発酵ブロスに添加する段階;ならびに
(c)該発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階
を含む、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する方法。
[本発明1048]
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体がα,ω-ジオールである、本発明1047の方法。
[本発明1049]
再生可能な原料が炭素系である、本発明1047~1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
炭素系の再生可能な原料が、トウモロコシ、サトウキビ、スイッチグラス、エンシレージ、わら、材木、下水、生ごみ、セルロース系都市廃棄物、煙道ガス、合成ガス、および二酸化炭素からなる群より選択される、本発明1049の方法。
[本発明1051]
炭素源が、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、デンプン、セルロース、ペクチン、キシラン、スクロース、マルトース、セロビオース、ツラノース、ヘミセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩、エタノール、メタノール、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される、本発明1047の方法。
[本発明1052]
炭素源がグルコース、グリセロールまたはスクロースである、本発明1047の方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示は、好ましい態様を例示する役割を果たす添付の図面と併せて読むと、最も良く理解される。しかし、本開示が、図面中に開示された具体的な態様に限定されないことは理解されよう。
図1】ω-ヒドロキシ-カルボン酸、ω-オキソ-カルボン酸、ω-アミノ-カルボン酸およびα,ω-二酸を製造するための経路を描写している。炭素原子12個を有する脂肪酸誘導体が、一例として描写されている。
図2A】メチルエステル中間体を介して、ω-ヒドロキシ-カルボン酸、ω-アミノ-カルボン酸およびα,ω-二酸を製造するための経路を描写している。炭素原子12個を有する脂肪酸誘導体が、一例として描写されている。
図2B】ジメチルエステル中間体を介して、α,ω-二酸を製造するための経路を描写している。炭素原子12個を有する脂肪酸誘導体が、一例として描写されている。
図3】チオエステラーゼおよびカルボキシル酸レダクターゼを用いて、α,ω-ジオールを製造するための経路を描写している。炭素原子12個を有する脂肪酸誘導体が、一例として描写されている。
図4】アシル-ACPレダクターゼを用いて、α,ω-ジオールを製造するための経路を描写している。炭素原子12個を有する脂肪酸誘導体が、一例として描写されている。
図5】ω-アミノカルボン酸をラクタムに変換する経路を図示している。炭素原子12個を有する脂肪酸誘導体が、一例として描写されている。
図6】ドデカン酸を与えた場合に12-ヒドロキシドデカン酸形成をもたらす、cyp153Aオペロンを発現する組換え大腸菌(E. coli)株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。対照菌株(MG1655 ΔfadD)からの抽出物のGC/MSクロマトグラフも示されている。
図7A】誘導体化された12-ヒドロキシドデカン酸(12.297分でのピーク)の質量スペクトルを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。質量スペクトルは、大腸菌株sAS.321の抽出物によるものである。
図7B】誘導体化された12-ヒドロキシドデカン酸の基準標準物質の質量スペクトルを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図7C】誘導体化されていない12-ヒドロキシドデカン酸(11.393分でのピーク)の質量スペクトルを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。質量スペクトルは、大腸菌株sAS.321の抽出物によるものである。
図8A】誘導体化された12-ヒドロキシドデカン酸(12-トリメチルシリルオキシドデカン酸トリメチルシリルエステル)のイオン断片化パターンを図示している。
図8B】誘導体化されていない12-ヒドロキシドデカン酸のイオン断片化パターンを図示している。
図9】ドデカン酸を与えた場合に12-ヒドロキシドデカン酸形成をもたらす、CYP153Aオペロンを発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。菌株sAS.335は、改良されたCYP153Aオペロンを発現する。
図10A】ドデカン酸からの12-ヒドロキシドデカン酸の形成をもたらす、CYP153A-RedRhF融合タンパク質を発現する大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。対照菌株MG1655 ΔfadDの抽出物も示されている。
図10B】ドデカン酸メチルエステルからの12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルの形成をもたらす、CYP153A-RedRhF融合タンパク質を発現する大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。対照菌株MG1655 ΔfadDの抽出物も示されている。
図10C】ドデカノールからの1,12-ドデカンジオールの形成をもたらす、CYP153A-RedRhF融合タンパク質を発現する大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。対照菌株MG1655 ΔfadDの抽出物も示されている。
図11A】菌株sAS.336の抽出物からの誘導体化された1,12-ドデカンジオール(11.948分でのピーク)の質量スペクトルを描写している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図11B】誘導体化された1,12-ドデカンジオール基準標準物質の質量スペクトルを描写している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図12A】菌株sAS.336の抽出物からの12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルの質量スペクトルを描写している。誘導体化されていない試料(11.662分でのピーク)が示されている。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図12B】菌株sAS.336の抽出物からの12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルの質量スペクトルを描写している。誘導体化された試料が示されている(11.107分でのピーク)。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図13A】誘導体化を伴わない、1,12-ドデカンジオールのイオン断片化パターンを図示している。
図13B】誘導体化を伴わない、12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルのイオン断片化パターンを図示している。
図14A】グルコースからω-OH脂肪酸を産生するCYP153A-RedRhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。試料はすべてBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図14B】グルコースからω-OH脂肪酸メチルエステルを産生するCYP153A-RedRhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。試料はすべてBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図14C】グルコースからα,ω-ジオールを産生するCYP153A-RedRhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。試料はすべてBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図15】ω-ヒドロキシ脂肪酸が産生細胞から効率的に分泌されることを実証している。
図16】グルコースを加えて増殖させた場合に2種の大腸菌株から産生されたω-ヒドロキシ脂肪酸の組成を示している。
図17】α,ω-二酸を産生させるCYP153A-RedRhF融合タンパク質、アルコールオキシダーゼおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼを発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。試料はすべてBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図18A】菌株sEP.690の抽出物からの誘導体化された1,14-テトラデカン二酸(13.367分でのピーク)の質量スペクトルを描写している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図18B】誘導体化された1,14-テトラデカン二酸の基準標準物質の質量スペクトルを描写している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図19図19Aは、誘導体化された1,14-テトラデカン二酸のイオン断片化パターンを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。
図20】末端近傍(例えば、ω-1、ω-2および/またはω-3)ヒドロキシル化脂肪酸を少量産生する、cyp102A1(F87A)を発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。対照菌株AlcV334の抽出物のGC/MSクロマトグラフも示されている。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図21A】11-ヒドロキシドデカン酸と同定された、RT 7.195から7.510までのピーク(図20から)の質量スペクトルを描写している。診断用イオン断片は、ヒドロキシル化位置について描写されている。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図21B】10-ヒドロキシドデカン酸と同定された、RT 7.195から7.510までのピーク(図20から)の質量スペクトルを描写している。診断用イオン断片は、ヒドロキシル化位置について描写されている。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図21C】9-ヒドロキシドデカン酸と同定された、RT 7.195から7.510までのピーク(図20から)の質量スペクトルを描写している。診断用イオン断片は、ヒドロキシル化位置について描写されている。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図21D】8-ヒドロキシドデカン酸と同定された、RT 7.195から7.510までのピーク(図20から)の質量スペクトルを描写している。診断用イオン断片は、ヒドロキシル化位置について描写されている。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図21E】7-ヒドロキシドデカン酸と同定された、RT 7.195から7.510までのピーク(図20から)の質量スペクトルを描写している。診断用イオン断片は、ヒドロキシル化位置について描写されている。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図22A】グルコースからω-1、ω-2およびω-3ヒドロキシ脂肪酸を産生するcyp102A7タンパク質を発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図22B】グルコースからω-1、ω-2およびω-3ヒドロキシ脂肪アルコールを産生するcyp102A7タンパク質を発現する組換え大腸菌株からの抽出物のGC/MSクロマトグラフを示している。試料はBSTFA+1%TMCSによって誘導体化した。
図23A】誘導体化された9-ヒドロキシドデカノール(9.653分でのピーク)の質量スペクトルおよびイオン断片化パターンを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。試料は大腸菌株XL963の抽出物由来である。
図23B】誘導体化された10-ヒドロキシドデカノール(9.808分でのピーク)の質量スペクトルおよびイオン断片化パターンを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。試料は大腸菌株XL963の抽出物由来である。
図23C】誘導体化された11-ヒドロキシドデカノール(9.905分でのピーク)の質量スペクトルおよびイオン断片化パターンを図示している。誘導体化剤はBSTFA+1%TMCSとした。試料は大腸菌株XL963の抽出物由来である。
図24A】cyp102A7を発現する組換え大腸菌株によってグルコースから産生された末端近傍(例えば、ω-1、ω-2および/またはω-3)ヒドロキシル化脂肪酸の量を示している。
図24B】cyp102A7を発現する組換え大腸菌株によってグルコースから産生された末端近傍ヒドロキシル化脂肪アルコールの量を示している。
図25】大腸菌株stEP.798によって産生されたω-ヒドロキシル化脂肪酸を示している。
図26】大腸菌株L1017によって産生されたα,ω-二酸を示している。
図27】CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合タンパク質バリアントを発現する微生物の培養の結果を示している。示されているように、V141Tを有するバリアント(配列番号:46)は、ω-ヒドロキシヘキサデセン酸を最も高い力価で産生し、ヘキサデセン酸からの変換も最も高度であった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
全体的概観
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産のための新規かつ環境負荷の少ない方法の開発は、産業界にとって著しい改善を意味する。本方法は、これらの化合物を、再生可能な原料由来の単純な炭素源から効率的に生産することを可能にする。特に、本方法は、再生可能な材料、例えば、トウモロコシ、サトウキビもしくはリグノセルロース系バイオマス由来の糖質;またはグリセロール、煙道ガス、合成ガスなどの廃棄物;またはバイオマスもしくは天然ガスなどの有機材料の再構成物もしくは二酸化炭素などからの、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産を提供する。
【0024】
より具体的には、本開示は、再生可能な原料、例えば糖質などを、ω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ-脂肪酸メチルエステル;ω-カルボキシ-脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸、ω-アミノ脂肪酸、ω-アミノ脂肪酸メチルエステル、α,ω-二酸;α,ω-ジエステル;α,ω-ジオールなどを含む特定のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体に変換するように操作された新規な組換え微生物を提供する。そのため、二官能性分子には、ω-ヒドロキシ脂肪酸;α,ω-ヒドロキシ脂肪アルコール;α,ω-ヒドロキシ-脂肪酸メチルエステル;α,ω-ヒドロキシアミン;α,ω-二酸;α,ω-ジ-脂肪酸メチルエステル、α,ω-ジオールなどが非限定的に含まれる。本組換え微生物は、これらの化合物の生産のための費用対効果の高い発酵工程を可能にする。本開示は、微生物脂肪酸代謝およびその中間体の特定の化学物質への変換を包含する。
【0025】
本開示の利点は数多くある。本開示は、より単純な生産方法、すなわち、複数の化学的かつ/または生体触媒による工程ではなく、より迅速で、より費用がかからず、かつ、生じる廃棄物がより少ないという理由から環境負荷がより少ない単純な発酵手順を使用する、生産方法を提供する。再生可能な原料(持続可能な原材料)および/または産業廃棄物(例えば、グリセロール)を原料物質として用いることにより、さらなる費用便益性が加えられ、環境が保護される。本開示は、特定の標的産物、すなわち、選択的な鎖長および化学特性を有する化学的実体を含む組成物の選択的製造を提供する。多様な化学的官能性を入手しうることは、新たな標的市場への適用を可能にする。
【0026】
定義
本明細書で用いる場合、「ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体」および「ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体」および「ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体」および「ω-ヒドロキシル脂肪酸誘導体」および「ω-OH脂肪酸誘導体」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、脂肪酸代謝によって生じ、かつ、少なくとも1つのOH基をω位に有するかまたは少なくとも1つのOH基をω位に有する中間体に由来する、化学的実体のことを指す。本明細書において、「ω位」とは、その主要官能基に対して反対側の末端にある、脂肪酸誘導体の末端炭素原子のことを指す。そのようなω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体には、ω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ-脂肪酸メチルエステル;ω-カルボキシ-脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-アミノ脂肪酸;ω-アミノ脂肪酸メチルエステル;ならびにα,ω-二酸;α,ω-ジエステル;およびα,ω-ジオールが非限定的に含まれる。「ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体」という用語は、「α,ω-二官能性脂肪酸誘導体」を含む。
【0027】
本明細書において言及される「ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体組成物」とは、組換え宿主細胞によって産生され、典型的には、さまざまな鎖長および/または飽和および/または分枝特性を有する、ある特定の種類のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体(例えば、さまざまな鎖長および/もしくは飽和および/もしくは分枝特性を持つα,ω-二酸;またはさまざまな鎖長および/もしくは飽和および/もしくは分枝特性を持つα,ω-ジエステル;またはさまざまな鎖長および/もしくは飽和および/もしくは分枝特性を持つα,ω-ジオール;など)の混合物を含む。場合によっては、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体組成物は、ほとんど1種類のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体、例えば、1,12-ドデセンジオールまたは1,14-テトラデカンジオールまたは16-ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステルまたは16-ヒドロキシ-ヘキサデセン酸または15-ヒドロキシ-ペンタデカン酸または15-ヒドロキシペンタデセン酸または18-ヒドロキシオクタデセン酸、またはこれらの脂肪酸誘導体のメチルエステルなどを含む。さらに別の場合には、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体組成物は、特別に設計された組成物を得る目的で、複数の種類のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の混合物を含む(例えば、同一の組成物中で約20%が1,12-ドデセンジオール、約80%が1,16-ヘキサンデカンジオールであるものは、そのような一例を与えると考えられる)。
【0028】
「末端近傍」ヒドロキシル化脂肪酸誘導体という用語は、少なくとも1つのOH基をω-1位、および/またはω-2位、および/またはω-3位、および/またはω-4位などに有する(または、少なくとも1つのOH基を有する中間体に由来する)化学的実体(例えば、ω-1、ω-2および/またはω-3;など)のことを指す。例示的な種には、ω-1、ω-2、および/またはω-3-ヒドロキシ(hydoxy)脂肪酸;またはω-1-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;またはω-1、ω-2、ω-3、ω-4、および/またはω-5-ヒドロキシドデカン酸;などがある。
【0029】
「酵素分類(EC)番号」とは、特定の酵素活性を表す番号のことを指す。EC番号は、酵素命名体系の下で、酵素を、それらが触媒する反応に応じて分類する。EC番号は、酵素により触媒される反応を特定する。例えば、異なる生物由来の異なる酵素が同じ反応を触媒する場合、それらは同じEC番号を有する。加えて、異なるタンパク質フォールドが同一な反応を触媒し、それ故に同一のEC番号が指定されることもありうる(例えば、非相同な同機能酵素、またはNISE)。EC番号は、国際生化学分子生物学連合(international union of biochemistry and molecular biology)(IUBMB)の命名委員会によって確立されており、その記述はWorld Wide WebのIUBMB酵素命名ウェブサイトで入手可能である。例えば、ω-ヒドロキシラーゼまたはω-オキシゲナーゼ酵素活性を含むシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)酵素活性は、EC 1.14.15.3に分類される(長鎖アシル-[アシルキャリアータンパク質]レダクターゼとしても知られる)。P450酵素ファミリーに属する酵素の機能性は、ほとんどの原核生物において種を越えて保存されている。このため、異なる微生物種が、EC 1.14.15.3に分類される同じ酵素活性を持つことがありうる。EC 1.14.15.3によって特徴づけられる酵素活性の一例は、本明細書において考察されるCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドまたはそのバリアント(前記)の酵素活性である。
【0030】
「EC 1.14.15.3の改変されたω-ヒドロキシラーゼ」および「改変されたω-ヒドロキシラーゼ」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、インビボで(例えば、微生物において)炭化水素鎖のω位を効率的に触媒するシトクロムP450モノオキシゲナーゼ酵素活性のことを指す。
【0031】
「EC 1.14.15.3のω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアント」および「ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアント」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、組換え宿主細胞におけるω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントの発現が、対応する宿主細胞における天然のP450融合タンパク質の発現と比較して、ω-OH脂肪酸および/またはω-OH脂肪酸誘導体組成物の改良された力価、収量および/または生産性をもたらすような少なくとも1つの突然変異を、そのアミノ酸配列中に有する、改変されたω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合ポリペプチドのことを指す。例えば、細胞がω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントによって形質転換されている場合、それはω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントを発現する細胞(例えば、組換え細胞)である。1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントを発現する細胞によって産生されるω-OH脂肪酸の力価および/または収量は、天然のP450融合タンパク質を発現する対応する細胞のそれの少なくとも2倍である。もう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントを発現する細胞によって産生されるω-OH脂肪酸またはその誘導体の力価および/または収量は、天然のP450融合タンパク質を発現する対応する細胞の少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍である。1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントを発現する細胞によって産生されるω-OH脂肪酸またはその誘導体の力価および/または収量は、天然のP450融合タンパク質を発現する対応する細胞のそれの少なくとも約1パーセント、少なくとも約2パーセント、少なくとも約3パーセント、少なくとも約4パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約6パーセント、少なくとも約7パーセント、少なくとも約8パーセント、少なくとも約9パーセント、または約10パーセント上回る。もう1つの態様において、ω-ヒドロキシラーゼハイブリッド融合タンパク質バリアントの発現に起因して組換え細胞において産生されるω-OH脂肪酸またはその誘導体の力価および/または収量は、天然のP450融合タンパク質を発現する対応する細胞のそれよりも少なくとも約20パーセント~少なくとも約80パーセント上回る。いくつかの態様において、細胞によって産生されるω-OH脂肪酸の力価および/または収量は、天然のP450融合タンパク質を発現する対応する細胞のそれよりも少なくとも約20パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約35パーセント、少なくとも約40パーセント、少なくとも約45パーセント、少なくとも約50パーセント、少なくとも約55パーセント、少なくとも約60パーセント、少なくとも約65パーセント、少なくとも約70パーセント、少なくとも約75パーセント、少なくとも約80パーセント、少なくとも約85パーセント、少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセント、少なくとも約97パーセント、少なくとも約98パーセント、または少なくとも約100パーセント上回る。
【0032】
「CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチド」という用語は、配列番号:6に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリペプチド配列のことを指す。CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドは、自給型であり、脂肪酸のω-OH脂肪酸への反応を触媒するω-ヒドロキシラーゼ酵素活性を有する。CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドの一例は、ハイブリッドcyp153A-RedRhF型融合ポリペプチドである。
【0033】
「アクセッション番号」または「NCBIアクセッション番号」または「GenBankアクセッション番号」という用語は、特定の核酸配列を表す番号のことを指す。本記載において考察される配列アクセッション番号は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、U.S.A.)によって管理されているNCBI(National Center for Biotechnology Information)によって提供されるデータベースから、ならびにSwiss Institute of Bioinformaticsによって提供されるUniProt Knowledgebase(UniProtKB)およびSwiss-Protデータベースから入手した(UniProtKBアクセッション番号とも称される)。
【0034】
本明細書で用いる場合、「ヌクレオチド」という用語は、複素環塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基からなるポリヌクレオチドのモノマー単位を指す。天然の塩基(グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U))は、典型的にはプリンまたはピリミジンの誘導体であるが、天然および非天然の塩基類似体も含まれることが理解されるべきである。天然の糖は、ペントース(五炭糖)デオキシリボース(DNAを形成する)またはリボース(RNAを形成する)であるが、天然および非天然の糖類似体も含まれることが理解されるべきである。核酸は、典型的にはリン酸結合を介して連結して核酸またはポリヌクレオチドを形成するが、多くの他の結合も当技術分野において公知である(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェートなど)。
【0035】
本明細書で用いる場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)の重合体を指し、それらは一本鎖でも二本鎖でもよく、非天然または改変ヌクレオチドを含むこともできる。「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」という用語は、本明細書において、RNAまたはDNAのいずれかである任意の長さの重合型のヌクレオチドを指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は分子の一次構造を指しており、それ故、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。これらの用語は、同等のものとして、メチル化および/またはキャッピングされたポリヌクレオチドなどの、ただしそれらに限定はされないヌクレオチド類似体および改変されたポリヌクレオチドでできたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含む。ポリヌクレオチドは、プラスミド、ウイルス、染色体、EST、cDNA、mRNA、およびrRNAを非限定的に含む、任意の形態にあってよい。
【0036】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指す目的で互換的に用いられる。「組換えポリペプチド」という用語は、組換え手法によって産生されるポリペプチドを指し、ここでは概して、発現させるタンパク質をコードするDNAまたはRNAを適した発現ベクター中に挿入し、続いてそれを、該ポリペプチドを産生させる目的で宿主細胞を形質転換するために用いる。
【0037】
本明細書で用いる場合、「ホモログ」および「相同な」という用語は、対応するポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対して少なくとも約50%同一である配列を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。好ましくは、相同なポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、対応するアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の相同性を有するポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する。本明細書で用いる場合、配列「相同性」および配列「同一性」という用語は、互換的に用いられる。当業者は、2つまたはそれ以上の配列の間の相同性を決定するための方法を熟知しているであろう。手短に述べると、2つの配列間の「相同性」の計算は、以下のように行うことができる。配列を、最適な比較のために整列させる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。1つの好ましい態様において、比較のために整列させる第1の配列の長さは、第2の配列の長さの少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。続いて、第1および第2の配列の対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合には、その分子はその位置で同一である。2つの配列間の%相同性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列が共通に持つ同一な位置の数の関数である。2つの配列間での配列の比較および%相同性の決定は、BLAST(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol, 215(3): 403-410)などの数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。2つのアミノ酸配列間の%相同性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunschのアルゴリズムを用い、Blossum 62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて決定することもできる(Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol., 48: 444-453)。また、2つのヌクレオチド配列間の%相同性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いNWSgapdna.CMP行列、ならびに40、50、60、70または80のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて決定することもできる。当業者は、初期の相同性計算を行い、それに応じてアルゴリズムパラメーターを調整することができる。好ましいパラメーターのセット(および、分子が添付の特許請求の範囲の相同性の限度内にあるか否かを判定するためにどのパラメーターを適用すべきかを実施者が分かっていない場合に用いるべきセット)では、Blossum 62スコアリング行列を、ギャップペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5で用いる。配列アラインメントのそのほかの方法は、バイオテクノロジーの技術分野で公知である(例えば、Rosenberg (2005) BMC Bioinformatics, 6: 278;Altschul, et al. (2005) FEBS J., 272(20): 5101-5109を参照されたい)。
【0038】
「内因性」ポリペプチドとは、組換え細胞がそこから操作されるかまたは導き出される宿主細胞(例えば、親微生物細胞)のゲノムによってコードされるポリペプチドのことを指す。
【0039】
「外因性」ポリペプチドとは、親微生物細胞のゲノムによってはコードされないポリペプチドのことを指す。バリアント(すなわち、突然変異体)ポリペプチドは、外因性ポリペプチドの一例である。
【0040】
「異種」という用語は、一般に、異なる種に由来するか、または異なる生物に由来することを意味する。本明細書で用いる場合、これは、特定の生物に天然には存在しないヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のことを指す。異種発現とは、タンパク質またはポリペプチドが、そのタンパク質を通常は発現しない細胞に実験的に追加されることを意味する。そのため、異種とは、移入されるタンパク質が、レシピエントとは異なる細胞型または異なる種に元々は由来するという事実を指す。例えば、植物細胞にとって内因性のポリヌクレオチド配列を組換え法を用いて細菌宿主細胞に導入することができ、その場合、植物ポリヌクレオチドは組換え細菌宿主細胞における異種ポリヌクレオチドである。
【0041】
本明細書で用いる場合、ポリペプチドの「断片」という用語は、完全長ポリペプチドまたはタンパク質のより短い部分を指し、そのサイズは、4アミノ酸残基から、アミノ酸配列全体から1アミノ酸残基を差し引いたものまでの範囲にわたる。本開示のある態様において、断片とは、ポリペプチドまたはタンパク質のあるドメイン(例えば、基質結合ドメインまたは触媒ドメイン)のアミノ酸配列全体のことを指す。
【0042】
本明細書で用いる場合、「突然変異誘発」という用語は、生物の遺伝情報を安定的な様式で変化させる工程を指す。タンパク質をコードする核酸配列の突然変異誘発により、突然変異体タンパク質が生じる。また、突然変異誘発とは、タンパク質活性の改変をもたらす非コード性核酸配列の変化のことも指す。
【0043】
本明細書で用いる場合、「遺伝子」という用語は、RNA産物またはタンパク質産物のいずれかをコードする核酸配列、ならびに、そのRNAもしくはタンパク質の発現に影響を及ぼす機能的に連結された核酸配列(例えば、そのような配列には、プロモーター配列またはエンハンサー配列が非限定的に含まれる)またはそのRNAもしくはタンパク質に影響を及ぼす配列をコードする機能的に連結された核酸配列(例えば、そのような配列には、リボソーム結合部位または翻訳制御配列が非限定的に含まれる)を指す。
【0044】
発現制御配列は当技術分野において公知であり、これには例えば、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写終結因子、配列内リボソーム進入部位(IRES)などが含まれる。発現制御配列は、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する(Maniatis et al. (1987) Science, 236: 1237-1245)。例示的な発現制御配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。
【0045】
本開示の方法において、発現制御配列は、ポリヌクレオチド配列と機能的に連結されている。「機能的に連結された」という用語は、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が発現制御配列に結合した時に遺伝子発現を可能にするような様式で、ポリヌクレオチド配列と該発現制御配列が接続されていることを意味する。機能的に連結されたプロモーターは、転写および翻訳の方向の観点では、選択されたポリヌクレオチド配列の上流に位置する。機能的に連結されたエンハンサーは、選択されたポリヌクレオチドの上流、内部または下流に位置することができる。
【0046】
本明細書で用いる場合、「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸、すなわちポリヌクレオチド配列を輸送しうる核酸分子を指す。有用なベクターの一種は、エピソーム(すなわち、染色体外での複製が可能な核酸)である。有用なベクターは、それに連結された核酸の自律複製および/または発現を可能にするものである。機能的に連結された遺伝子の発現を導くことができるベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは、ベクター形態では染色体に結合していない環状二本鎖DNAループ全般を指す「プラスミド」の形態にあることが多い。ベクターの最も一般的に用いられる形態がプラスミドであるので、「プラスミド」および「ベクター」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。しかしながら、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、および当技術分野において今後公知となる他の形態の発現ベクターも同じく含まれる。いくつかの態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されたプロモーターをさらに含む。いくつかの態様において、プロモーターは、発生段階調節性(developmentally-regulated)プロモーター、オルガネラ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成性プロモーター、または細胞特異的プロモーターである。組換えベクターは典型的に、以下を含む少なくとも1つの配列を含む: (a) ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた発現制御配列; (b) ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた選択マーカー; (c) ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたマーカー配列; (d) ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた精製部分; (e) ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた分泌配列;および (f) ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたターゲティング配列。ある態様において、ヌクレオチド配列は宿主細胞のゲノムDNAに安定的に組み込まれており、ヌクレオチド配列の発現は、調節プロモーター領域の制御下にある。本明細書に記載される発現ベクターは、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現に適した形態で含む。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換させようとする宿主細胞の選択、所望のポリペプチドの発現レベルなどの要因に依存しうることが理解されるであろう。本明細書に記載の発現ベクターは、本明細書に述べるようなポリヌクレオチド配列によってコードされる、融合ポリペプチドを含むポリペプチドを産生させるために宿主細胞に導入することができる。原核生物、例えば大腸菌におけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く構成性または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中にコードされているポリペプチド、通常は組換えポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは、典型的には、以下の3つの目的のうちの1つまたは複数に役立つ:(1) 組換えポリペプチドの発現を増大させること;(2) 組換えポリペプチドの溶解性を高めること;および (3) アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することによって、組換えポリペプチドの精製を助けることを含む。多くの場合、融合発現ベクターでは、融合部分と組換えポリペプチドの接合部にタンパク質分解切断部位が導入されている。これにより、融合ポリペプチドの精製後に、融合部分からの組換えポリペプチドの分離が可能になる。ある態様において、本開示のポリヌクレオチド配列は、バクテリオファージT5由来のプロモーターと機能的に連結されている。ある態様において、宿主細胞は酵母細胞であり、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母S.セレビシエ(S. cerevisiae)における発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari et al. (1987) EMBO J., 6: 229-234), pMFa(Kurjan et al. (1982) Cell, 30: 933-943)、pJRY88(Schultz et al. (1987) Gene, 54: 113-123)、pYES2(Invitrogen Corp., San Diego, CA)、およびpicZ(Invitrogen Corp., San Diego, CA)が含まれる。他の態様において、宿主細胞は昆虫細胞であり、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用しうるバキュロウイルスベクターには、例えば、pAc系列(Smith et al. (1983) Mol. Cell. Biol., 3: 2156-2165)およびpVL系列(Lucklow et al. (1989) Virology, 170: 31-39)が含まれる。さらにもう1つの態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現させることもできる。原核細胞および真核細胞のいずれについても他の適した発現系が当技術分野において周知である;例えば、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)を参照されたい。
【0047】
本明細書で用いる場合、「アシル-CoA」という用語は、アルキル鎖のカルボニル炭素と補酵素A(CoA)の4'-ホスホパンテチオニル部分のスルフヒドリル基との間に形成され、式R-C(O)S-CoAを有するアシルチオエステルを指し、式中、Rは少なくとも4個の炭素原子を有する任意のアルキル基である。
【0048】
本明細書で用いる場合、「アシル-ACP」は、アルキル鎖のカルボニル炭素とアシルキャリアータンパク質(ACP)のホスホパンテテイニル部分のスルフヒドリル基との間に形成されるアシルチオエステルを指す。ホスホパンテテイニル部分は、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの1つであるホロ-アシルキャリアータンパク質シンターゼ(ACPS)の作用によって、ACP上の保存されたセリン残基と翻訳後に結びつく。いくつかの態様において、アシル-ACPは完全飽和アシル-ACPの合成における中間体である。他の態様において、アシル-ACPは不飽和アシル-ACPの合成における中間体である。いくつかの態様において、炭素鎖は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26個の炭素を有すると考えられる。これらのアシル-ACPはそれぞれ、これらを脂肪酸誘導体へと変換する酵素の基質である。
【0049】
本明細書で用いる場合、「脂肪酸生合成経路」という用語は、脂肪酸および、ω-水酸化脂肪酸誘導体を含むその誘導体を生成する生合成経路を意味する。脂肪酸生合成経路は、所望の特性を有するω-水酸化脂肪酸誘導体などの脂肪酸誘導体を産生するための、本明細書で述べられるものに加えたさらなる酵素または酵素活性を有するポリペプチドを含みうる。
【0050】
本明細書で用いる場合、「クローン」という用語は、典型的には、単一の共通の祖先の子孫でありかつ該祖先と本質的に遺伝的に同一である、細胞または細胞群、例えば、単一の細菌細胞から生じたクローン化された細菌コロニーの細菌を指す。
【0051】
本明細書で用いる場合、「培養物」という用語は、典型的には、生細胞を含む液体培地を指す。1つの態様において、培養物は、制御された条件下で所定の培養培地中で再生する細胞、例えば、選択された炭素源および窒素を含む液体培地中で増殖させた組換え宿主細胞の培養物が含まれる。「培養する」または「培養」とは、組換え宿主細胞の集団を、液体培地または固体培地中で、適した条件下で増殖させることを指す。特定の態様において、培養するとは、基質の最終産物への発酵性生物変換を指す。培養培地は周知であり、そのような培養培地の個々の構成成分は、例えばDifco(商標)およびBBL(商標)として、販売元から入手可能である。1つの非限定的な例では、水性栄養培地は、窒素、塩および炭素の複合的な供給源を含む「富栄養培地」、例えば、そのような培地当たり10g/Lのペプトンおよび10g/Lの酵母エキスを含むYP培地などである。培養物の宿主細胞は、米国特許第5,000,000号;第5,028,539号;第5,424,202号;第5,482,846号;第5,602,030号;WO2010127318号に記載された方法に従って、炭素を効率的に同化し、セルロース系材料を炭素源として用いるようにさらに操作することができる。加えて、いくつかの態様において、宿主細胞は、スクロースを炭素源として用いることができるようなインベルターゼを発現するように、操作される。
【0052】
本明細書で用いる場合、「遺伝子操作されたポリヌクレオチド配列を発現するのに有効な条件下」という用語は、宿主細胞が所望のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生することを可能にする任意の条件を意味する。適した条件には、例えば、発酵条件が含まれる。
【0053】
「組換え微生物」という用語は、宿主細胞におけるある酵素活性が、親細胞または生来の宿主細胞と比べて変更、追加、および/または除去されるように遺伝子改変されている、宿主細胞を指す。遺伝子改変された宿主細胞は、組換え微生物の一例である。よって、組換え宿主細胞における、酵素などの「タンパク質の、改変されたまたは変更されたレベルの活性」とは、同一の改変を有さない親または生来の宿主細胞を基準として測定した活性における1つまたは複数の特性の差異を指す。典型的には、活性の差異は、改変された活性を有する組換え宿主細胞と、当該改変された活性を有さない対応する野生型宿主細胞との間で測定される(例えば、対応する野生型宿主細胞に対する組換え宿主細胞の培養物の比較)。活性の改変は、例えば、組換え宿主細胞によって発現されるタンパク質の量の改変(例えば、タンパク質をコードするDNA配列のコピー数の増加もしくは減少、タンパク質をコードするmRNA転写物の数の増加もしくは減少、および/またはmRNAからのタンパク質のタンパク質翻訳の量の増加もしくは減少の結果として);タンパク質の構造の変化(例えば、一次構造に対する変化、例えば、基質特異性の変化、観察される速度論的パラメーターの変化をもたらすタンパク質のコード配列に対する変化など);および、タンパク質安定性の変化(例えば、タンパク質の分解の増加もしくは減少)の結果でありうる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、本明細書に記載のいずれかのポリペプチドの突然変異体またはバリアントである。場合によっては、本明細書に記載のポリペプチドのコード配列は、特定の宿主細胞における発現のためにコドンが最適化される。例えば、大腸菌における発現のために、(例えばGrosjean et al. (1982) Gene 18:199-209に記載のように)1つまたは複数のコドンを最適化することができる。
【0054】
「調節配列」という用語は、本明細書で用いる場合、典型的には、タンパク質をコードするDNA配列と機能的に連結された、該タンパク質の発現を最終的に制御するDNAの塩基の配列を指す。調節配列の例には、RNAプロモーター配列、転写因子結合配列、転写終結配列、転写のモジュレーター(エンハンサーエレメントなど)、RNA安定性に影響を及ぼすヌクレオチド配列、および翻訳調節配列(例えば、リボソーム結合部位(例えば、原核生物におけるShine-Dalgarno配列、または真核生物におけるKozak配列)、開始コドン、終止コドンなど)が非限定的に含まれる。
【0055】
「変更されたレベルの発現」および「改変されたレベルの発現」という用語は互換的に用いられ、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、代謝産物、または生成物(例えば、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体)が、操作された宿主細胞において、同じ条件下での対応する野生型細胞におけるその濃度と比較して異なる濃度で存在することを意味する。
【0056】
本明細書で用いる場合、「力価」という用語は、宿主細胞培養物の単位容積当たりで生産されるω-脂肪酸誘導体の数量のことを指す。力価が、所与の組換え宿主細胞培養物によって産生される特定の1つのω-脂肪酸誘導体、またはω-脂肪酸誘導体の組合せのことを指してもよい。
【0057】
本明細書で用いる場合、「宿主細胞によって産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の収量」とは、投入炭素源が宿主細胞において産物(例えば、ω-ヒドロキシ脂肪酸、α,ω-二酸など)に変換される効率のことを指す。収量が、所与の組換え宿主細胞培養物によって産生される特定の1つのω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体、またはω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の組合せのことを指してもよい。ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体には、ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸を含むω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸などの二官能性化合物;α,ω-ジオール;α,ω-ジエステル;ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル;ω-アミノ脂肪酸;およびω-アミノ脂肪酸メチルエステルが非限定的に含まれる。
【0058】
本明細書で用いる場合、「生産性」という用語は、宿主細胞培養物の単位容積当たり・単位時間当たりに生産される1つまたは複数のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の数量のことを指す。生産性が、所与の組換え宿主細胞培養物によって産生される特定の1つのω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体、またはω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の組合せのことを指してもよい。
【0059】
本明細書で用いる場合、「グルコース利用率」という用語は、グラム数/リットル/時(g/L/hr)として報告される、培養物によって単位時間当たりに用いられるグルコースの量を指す。
【0060】
本明細書で用いる場合、「炭素源」という用語は、原核細胞または単純な真核細胞の増殖のための炭素の供給源として用いるのに適した基質または化合物を指す。炭素源は、重合体、炭水化物、酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチドおよび気体(例えば、COおよびCO2)を非限定的に含む、さまざまな形態をとりうる。例示的な炭素源には、単糖類、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロースおよびアラビノース;オリゴ糖類、例えばフルクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖;多糖類、例えばデンプン、セルロース、ペクチンおよびキシラン;二糖類、例えばスクロース、マルトース、セロビオースおよびツラノース;セルロース系材料および異形物、例えばヘミセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム;コハク酸塩、乳酸塩および酢酸塩;アルコール、例えばエタノール、メタノールおよびグリセロール、またはそれらの混合物が非限定的に含まれる。また、炭素源が、光合成の生成物、例えばグルコースであってもよい。ある態様において、炭素源はバイオマスである。他の態様において、炭素源はグルコースである。他の態様において、炭素源はスクロースである。
【0061】
「再生可能な原料由来の炭素源」という用語は、単独で、または供給源に言及して用いられる場合、油脂化学物質(すなわち、植物および動物由来の精製油、例えば脂肪酸、脂肪酸エステル、TAG、ヒドロキシ脂肪酸など)および石油化学物質(すなわち、石油から導き出される化学物質、例えばアルカン、アルケンなど)を除く、炭素が導き出されるあらゆる生体材料(再生可能な原料および/またはバイオマスおよび/または廃棄物を含む)を含む。したがって、「再生可能な原料由来の炭素源」という用語からは、本明細書で用いる場合、油脂化学物質および石油化学物質から導き出される炭素は除外される。いくつかの態様において、炭素源は、糖または糖質(例えば、単糖類、二糖類もしくは多糖類)を含む。いくつかの態様において、炭素源はグルコースおよび/またはスクロースである。他の態様において、炭素源は、トウモロコシ、サトウキビもしくはリグノセルロース系バイオマス由来の糖質;またはグリセロール、煙道ガス、合成ガスなどの廃棄物;またはバイオマスもしくは天然ガスなどの有機材料の再構成物;または光合成で固定された二酸化炭素などの再生可能な原料に由来する。他の態様において、バイオマスは処理されて、生物変換に適した炭素源となる。さらに他の態様において、バイオマスは炭素源にするためのさらなる処理を必要とせず、直接的に炭素源として用いることができる。そのようなバイオマスの例示的な源には、植物体または草木、例えばスイッチグラスなどがある。もう1つの例示的な炭素源には、代謝廃棄物、例えば動物性物質(例えば、牛糞肥料)が含まれる。さらなる例示的な炭素源には、藻類および他の海洋植物が含まれる。別の炭素源(バイオマスを含む)は、発酵廃棄物、発酵バイオマス、グリセロール/グリセリン、エンシレージ、わら、材木、下水、生ごみ、都市(maniple)固形廃棄物、セルロース系都市廃棄物、および残飯を非限定的に含む、工業、農業、林業および家庭からの廃棄物も含まれる。
【0062】
本明細書で用いる場合、産物(ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体など)に関する「単離された」という用語は、細胞構成成分、細胞培養培地、または化学前駆体もしくは合成前駆体から単離された産物のことを指す。本明細書に記載の方法によって生産されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体およびω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体組成物は、発酵ブロス中、さらには細胞質中で比較的不混和性でありうる。このため、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体およびω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体組成物は、細胞内または細胞外のいずれかで有機相に収集することができる。1つの好ましい方法において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体およびω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体組成物は細胞外で収集される。
【0063】
本明細書で用いる場合、「精製する」、「精製された」、または「精製」という用語は、例えば単離または分離による、分子のその環境からの除去または単離を意味する。「実質的に精製された」分子は、それらに付随する他の構成成分を少なくとも約60%含まない(例えば、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まない)。本明細書で用いる場合、これらの用語はまた、試料からの混入物の除去のことも指す。例えば、混入物の除去は、試料中の脂肪酸誘導体のパーセンテージの増加をもたらしうる。例えば、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が組換え宿主細胞において産生される場合、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、宿主細胞タンパク質の除去によって精製することができる。精製後に、試料中のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体のパーセンテージは増加する。「精製する」、「精製された」、および「精製」という用語は、完全に純粋であることを必要としない相対的な用語である。したがって、例えば、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が組換え宿主細胞において産生される場合、精製されたω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、他の細胞構成成分(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、または他の炭化水素)から実質的に分離されたω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体である。
【0064】
「インビボでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産する」という用語は、本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、生存可能なおよび/または遺伝的に改変された宿主細胞において、糖質または他のものなどの再生可能な原料からω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産することを意味し、ここで再生可能な原料は、宿主細胞が発酵中に炭素源を取り込んで代謝することが可能になるように、炭素源として発酵ブロスに添加される。これは、精製された酵素または細胞溶解物が用いられ、かつ酵素的変換のための直接の基質、例えば、脂肪酸または脂肪酸誘導体が精製された酵素または細胞溶解物溶液に添加される、インビトロでω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が生産される方法とは異なる。これはまた、休止細胞が用いられ、かつ酵素的変換のための直接の基質、例えば、脂肪酸または脂肪酸誘導体が休止細胞に対して外因性に添加される、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が生体内変換において生成される方法とも異なる。
【0065】
経路操作および酵素活性
脂肪酸合成は、細菌生合成機構の最も保存された系の1つである。脂肪酸シンターゼ(FAS)多酵素複合体はすべての細菌および真核生物に存在する。FAS関連遺伝子のほとんどは、細胞の増殖および生存のために不可欠である。真核生物および細菌のFASは、本質的に同じ種類の生化学的形質転換を生じさせる。真核生物において、FASはFAS Iと称され、その触媒ドメインの大半は1つのポリペプチド鎖(解離不可能)によってコードされる。細菌などの原核生物において、FASはFASIIと称され、その個々の酵素およびキャリアータンパク質は、不連続な(解離しうる)タンパク質をコードする別個の遺伝子によってコードされる。そのため、FASIIは大きな多様性および独特の特質を有する複雑な系である。
【0066】
アシルキャリアータンパク質(ACP)は、FAS経路における酵素とともに、生来の生物において産生される脂肪酸の長さ、飽和度および分枝を制御する。この経路における諸段階は、脂肪酸生合成(FAB)の酵素およびアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)遺伝子ファミリーによって触媒される。例えば、FAS経路に含まれうる酵素には、AccABCD、FabD、FabH、FabG、FabA、FabZ、FabI、FabK、FabL、FabM、FabB、およびFabFが含まれる。所望の産物に応じて、これらの遺伝子の1つまたは複数を減弱させること、または過剰発現させることができる。そのため、原核生物は、グルコースまたは他の炭素源などの再生可能な原料からの脂肪酸誘導体の産生を増大させるために操作されている。本明細書において、主要な目標は、細菌株を、脂肪酸メチルエステル(FAME)、脂肪酸エチルエステル(FAEE)および脂肪アルコール(FALC)を含む脂肪酸誘導体の生産のための微生物工場に変換する目的で、脂肪酸誘導体の産生を調節する重要な制御酵素の活性を高めることである(例えば、米国特許第8,283,143号を参照。これは本明細書に参照により組み入れられる)
【0067】
本開示では、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体などの望ましい化合物の生産のための酵素経路を改変することを目的とする酵素機能を持つポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを特定している。本明細書において酵素アクセッション番号(EC番号)によって特定されているこれらのポリペプチドは、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体などの二官能性分子の生産を導く脂肪酸経路を操作するために有用である。図1~4は、これらの化合物を生成するように操作された経路を描写している。図5は、ラクタム、およびナイロンなどのポリマーを導く経路を描写している。
【0068】
1つの態様において、グルコースなどの再生可能な原料を用いてω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生成する経路は、図1から4までに描写されている。グルコースは生来の生物によってアシル-ACPに変換される(図1から4までにおける段階1を参照)。脂肪酸分解酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、任意で、所望の産物に応じて減弱させることができる(実施例、下記を参照)。そのようなポリペプチドの非限定的な例には、アシル-CoAシンテターゼ(FadD)およびアシル-CoAデヒドロゲナーゼ(FadE)がある。表1は、当技術分野において公知の方法に従って任意で減弱させることができる、さまざまな脂肪酸分解酵素を含む代謝経路内にある酵素活性(下記)の包括的リストを提示している(例えば、前記の米国特許第8,283,143号を参照)。
【0069】
例えば、FadR(下記の表1を参照)は、脂肪酸分解経路および脂肪酸生合成経路に関与する重要な調節因子である(Cronan et al., Mol. Microbiol., 29(4): 937-943 (1998))。大腸菌の酵素FadD(下記の表1を参照)および脂肪酸輸送タンパク質FadLは、脂肪酸取り込み系の構成成分である。FadLは細菌細胞内への脂肪酸の輸送を媒介し、FadDはアシル-CoAエステルの形成を媒介する。他の炭素源が利用できない場合には、外因性脂肪酸が細菌によって取り込まれてアシル-CoAエステルに変換されて、これが転写因子FadRと結合して、脂肪酸の輸送(FadL)、活性化(FadD)、およびβ-酸化(FadA、FadB、およびFadE)を担うタンパク質をコードするfad遺伝子の発現を抑制することができる。代替的な炭素源が利用できる場合には、細菌は脂肪酸をアシル-ACPとして合成し、それらはリン脂質合成には用いられるが、β-酸化の基質ではない。したがって、アシル-CoAおよびアシル-ACPはいずれも、異なる最終産物をもたらしうる、脂肪酸の独立した供給源である(Caviglia et al., J Biol. Chem., 279(12): 1163-1169 (2004))。
【0070】
(表1)酵素活性
【0071】
(表2A)ω-ヒドロキシラーゼ/ω-オキシゲナーゼ(EC 1.14.15.3)の例
【0072】
(表2B)ω-ヒドロキシラーゼ/ω-オキシゲナーゼ(EC 1.14.15.3)の酸化還元パートナーの例
【0073】
(表2C)自給型ω-1、ω-2、ω-3-ヒドロキシラーゼ/オキシゲナーゼ(EC 1.14.14.1)融合タンパク質の例
【0074】
(表2D)自給型クラス-I P450融合PFOR融合タンパク質の例
【0075】
(表3A)アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1/2)またはアルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.13、EC 1.1.3.20)の例
【0076】
(表3B)アルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.3/4/5/)またはアルデヒドオキシダーゼ(EC 1.2.3.1)の例
【0077】
(表4)アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ(EC 2.6.1)およびアミンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.9、EC 1.4.98、EC 1.4.99)の例
【0078】
(表5)エステラーゼ(EC 3.1.1.1)およびリパーゼ(EC 3.1.1.3)の例
【0079】
(表6)ヒドロラーゼ(EC 3.5.2.12)の例
【0080】
(表7)アシル-CoAシンターゼ/アシル-CoAリガーゼ(EC 6.2.1.3)/トランスフェラーゼ(EC 2.8.3.6)の例
【0081】
(表8)アミドシンターゼの例
【0082】
(表9)エステルシンターゼ(EC 2.3.1.75またはEC 2.3.1.20)の例
【0083】
図1および2は、アシル-ACPが、それぞれC12遊離脂肪酸(FFA)を前駆中間体として(図1参照)、またはC12脂肪酸メチルエステル(FAME)を中間体として(図2Aおよび2B参照)用いる、2つの類似の経路を介してα,ω-二酸に変換されうる経路を示している。
【0084】
1つの態様において、図1は、ω-ヒドロキシ脂肪酸、ω-オキソ脂肪酸、α,ω-二酸およびω-アミノ脂肪酸を含む、さまざまな化合物の生成を示している。図1の段階2では、チオエステラーゼを用いてアシル-ACPがFFAに変換される。ある態様において、チオエステラーゼをコードする遺伝子は、tesA、'tesA、tesB、fatB1、fatB2、fatB3、fatA1、またはfatAである。(この段階を触媒させるために用いうるチオエステラーゼの酵素活性を有するポリペプチドを示している、前記の表1も参照されたい)。段階3では、ω-オキシゲナーゼとも称されるω-ヒドロキシラーゼを用いてω-ヒドロキシ脂肪酸が生成される。図1に見てとれるように、脂肪酸のω位はヒドロキシ基である。
【0085】
組換え宿主細胞において発現されるCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチド
適したω-ヒドロキシラーゼ/ω-オキシゲナーゼ(EC 1.14.15.3)およびそれらの酸化還元パートナーの例が、表2Aおよび2B(前記)に列記されている。これらは、シトクロムP450としても知られる、ある種の非ヘム二鉄オキシゲナーゼ(例えば、シュードモナス・プチダGPo1由来のalkB)またはある種のヘム型P450オキシゲナーゼ(例えば、マリノバクター・アクアエオレイ由来のcyp153A)である。シトクロムP450は、偏在性に分布している酵素であり、高度の複雑性を有する上に、幅広い領域にわたる活性を呈する。それらは、広範囲にわたる種々の基質を変換して種々の化学的反応を触媒する遺伝子のスーパーファミリーによってコードされる、タンパク質である。Cyp153Aは、炭化水素鎖をω位に対する高い選択性を伴ってヒドロキシル化する可溶性細菌シトクロムP450のサブファミリーである(van Beilen et al. (2006) Appl. Environ. Microbiol. 72:59-65)。cyp153Aファミリーのメンバーは、インビトロでアルカン、脂肪酸または脂肪アルコールのω位を選択的にヒドロキシル化することが示されており、これには例えば、マイコバクテリウム属種HXN-1500由来のcyp153A6(Funhoff et al. (2006) J. Bacteriol. 188:5220-5227)、マイコバクテリウム・マリヌム由来のcyp153A16、およびポラノモナス(Polaromonas)属種JS666由来のcyp153A(Scheps et al. (2011) Org. Biomol. Chem. 9:6727-6733)ならびにマイコバクテリウム・マリヌム由来のcyp153A(Honda-Malca et al. (2012) Chem. Commun. 48:5115-5117)がある。
【0086】
すべてのシトクロムP450がそうであるように、Cyp153A ω-ヒドロキシラーゼもその触媒活性のために電子を必要とし、これらはフェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼなどの特定の酸化還元タンパク質を介して与えられる。これらはcyp153Aと相互作用する離散的タンパク質である。自給型ハイブリッド(キメラ性)cyp153Aオキシゲナーゼ(すなわち、活性のために離散的フェレドキシンおよびフェレドキシンレダクターゼタンパク質を必要としないオキシゲナーゼ)は、以前に、アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2由来のcyp153A(Kubota et al. (2005) Biosci. Biotechnol. Biochem. 69:2421-2430;Fujita et al. (2009) Biosci. Biotechnol. Biochem. 73:1825-1830)を、フラビンモノヌクレオチド(FMN)結合部位およびNADPH結合部位ならびに[2FeS]フェレドキシン中心を含むP450RhF由来のレダクターゼドメイン(Hunter et al.(2005)FEBS Lett. 579:2215-2220)と融合させることによって作り出されている。P450RhFはクラス-I P450融合PFORに属する(DeMot and Parret (2003) Trends Microbiol. 10: 502)。このハイブリッドcyp153A-RedRhF融合タンパク質は、インビトロ生体内変換において、ω位にあるオクタンをヒドロキシル化すること、およびシクロヘキサンまたはブチルベンゼンなどの他の化合物もヒドロキシル化することが示されている。天然のP450-レダクターゼ融合タンパク質の例は、表2Cおよび2D(前記)に示されている。
【0087】
炭化水素鎖のω位に対するそれらの高い選択性を考慮すると、cyp153Aファミリーのオキシゲナーゼは、再生可能な炭素源からα,ω-二官能性脂肪酸誘導体を生産するための適した候補の優れた例となるように思われる。これにより、これらの有益な化合物を生産するための商業的に実現可能な工程が可能になると考えられる。しかしながら、他のシトクロムP450と同様に、cyp153Aファミリータンパク質はこれまでのところ、ほとんどは、脂肪酸誘導体または炭化水素を外因性に添加する、精製された酵素もしくは粗製細胞溶解物を用いるインビトロ実験かまたは休止細胞での生体内変換に適用されているのみである(Kubota et al., Fujita et al., Honda-Malca et al., 前記)。しかし、ハイブリッド融合体を使用するインビトロ手順または休止細胞での生体内変換は、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の大規模でかつ費用効率の高い生産にはつながらない。当技術分野において広く受け入れられている知見は、多くのシトクロムP450ならびにalkB型ω-ヒドロキシラーゼを組換え微生物において機能的に発現させることは容易でないということであり、それは酵素が多くの場合には不活性であり、それらの化学的現象を解明することが困難であったためである。現に、これまでに試みられた、脂肪酸誘導体以外の再生可能な炭素源を用いる唯一のインビボ研究では、alkB ω-ヒドロキシラーゼが使用されているが、高密度細胞発酵においてω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が低力価で得られているに過ぎない(WO2013/024114A2号)。
【0088】
本出願人らは、再生可能な炭素源からω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体をインビボで効率的に生産することができるCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合タンパク質およびそのバリアントを作り出した。より具体的には、位置307のグリシン(G)がアラニン(A)に置換されているCYP153A(G307A)P450触媒ドメインのハイブリッド融合タンパク質をコードする、マリノバクター・アクアエオレイ由来の遺伝子を、ロドコッカス属種NCIMB9784由来のP450RhFのc末端FMNおよびFe/Sを含有するレダクターゼドメインをコードする遺伝子と融合させた(下記の実施例6を参照)。その結果得られるポリペプチドは、対応する核酸配列(配列番号:5)を有するCYP153A-RedRhFハイブリッド融合ポリペプチド(配列番号:6)である。このCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合タンパク質を、グルコースなどの単純な炭素源の存在下で大腸菌細胞において発現させたところ、脂肪酸誘導体がω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体に効率的に変換された(下記の実施例を参照)。同様のCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドを作製するために用いうる、適したω-ヒドロキシラーゼ(EC 1.14.15.3)およびそれらの酸化還元パートナーの他の例を、表2Aおよび2B(前記)に列記している。
【0089】
本開示は、α,ω-二官能性脂肪酸誘導体を含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体をインビボで効率的かつ選択的に産生することができる微生物を提供する。1つの態様においては、CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質を、それがインビボでグルコースなどの炭素源からドデカン酸またはドデカン酸メチルエステルなどの化合物を12-ヒドロキシドデカン酸または12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルに効率的に変換できるよう、微生物において発現されるように操作した。グルコースの代わりに任意の再生可能な原料を炭素源として用いることができた。このことにより、P450酵素活性を有する操作されたハイブリッド融合タンパク質(すなわち、CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質によって例示されるもの)が、ハイブリッド融合タンパク質を宿主細胞(例えば、大腸菌)においてチオエステラーゼと共発現させて、再生可能な原料由来の炭素源を供給した場合に、インビボで脂肪酸を特定の望ましいω-ヒドロキシル化化合物(例えば、ω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;α,ω-ヒドロキシ二酸;α,ω-ヒドロキシジエステル;およびα,ω-ジオール)に効率的に変換しうることが初めて示された(実施例6ならびに図25および26を参照)。本開示に従うことにより、cyp153Aタンパク質をコードする遺伝子などのP450遺伝子を、レダクターゼ遺伝子、例えば、クラス-I P450融合PFORタンパク質のc末端レダクターゼドメインまたは他のレダクターゼドメインをコードするものと連結させることによって、他のハイブリッド融合タンパク質を操作することもできる。表2Aおよび2D(前記)はそれぞれ、cyp153Aおよびクラス-I P450融合PFORタンパク質の例を挙げている。これらの指示に従うことで、他の種類のω-ヒドロキシラーゼ/ω-オキシゲナーゼから同様の融合タンパク質を作り出すことができる。
【0090】
図2Aに示されているようにω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルを経由するα,ω-二酸もしくはω-アミノ脂肪酸への経路、または図2Bに示されているようにα,ω-脂肪酸ジメチルエステルを経由するα,ω-二酸への経路が有利である可能性があるが、これはメチルエステルが非荷電性であり、そのことが大規模生産および回収にとって利点となるためである。その上、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルを経由する経路は、ある種のヒドロラーゼによる触媒作用を介した直接的な酵素的ラクタム化も可能にする。図1または図2Aおよび2Bの段階3では、アルコールデヒドロゲナーゼまたはオキシダーゼが、ω-ヒドロキシ脂肪酸をω-オキソ脂肪酸に変換することができる(例えば、前記の表3Aは、この段階を触媒させるために用いうる、アルコールデヒドロゲナーゼまたはオキシダーゼの酵素活性を有するポリペプチドを示している)。例えば、12-ヒドロキシドデカン酸または12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルを12-オキソドデカン酸または12-オキソドデカン酸メチルエステルに酸化させることができる適した酵素には、アルコールオキシダーゼ(フラボタンパク質、例えば、シュードモナス・プチダ由来のalkJ)(EC 1.1.3.13、EC 1.1.3.20)(配列番号:67を参照)またはNAD(P)依存性アルコールデヒドロゲナーゼ(例えば、ロドコッカス・ルバー由来のcddC(EC 1.1.1.1)がある(表3A、前記を参照)。この時点で、経路はここから2通りの択一的な経路、すなわち、アルデヒドデヒドロゲナーゼもしくはオキシダーゼを介してω-オキソ脂肪酸をα,ω-二酸に変換するもの(例えば、前記の表3Bは、この段階を触媒させるために用いうるアルデヒドデヒドロゲナーゼまたはオキシダーゼの酵素活性を有するポリペプチドを示している)、またはアミノトランスフェラーゼもしくはトランスアミナーゼもしくはアミノ酸デヒドロゲナーゼを介してω-オキソ脂肪酸をω-アミノ脂肪酸に変換するもの(例えば、前記の表4は、この段階を触媒させるために用いうるアミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼまたはアミノ酸デヒドロゲナーゼの触媒活性を有するポリペプチドを示している)をとることができる。例えば、12-オキソラウリン酸または12-オキソラウリン酸メチルエステルを12-アミノラウリン酸または12-アミノメチルエステルに変換させるために適したトランスアミナーゼは、表4(前記)に示されている。これらの酵素は、アミン基を適した供与体からω-オキソ酸またはエステルに転移させて、対応する末端アミンを生成させることができる。アミン供与体(例えば、アラニンまたはグルタミン酸)の利用可能性は、各々のアミノ酸デヒドロゲナーゼ(例えば、アラニンデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、前記の表4を参照)の共発現を通じて、インビボで向上させることができる。その上、NADPHの代わりにNADHを利用しうるグルタミン酸デヒドロゲナーゼのホモログまたは他のバリアントの過剰発現によって、生産のさらなる向上を得ることもできる。12-オキソラウリン酸または12-オキソラウリン酸メチルエステルを12-アミノラウリン酸または12-アミノメチルエステルに変換させるのに適した、メチルアミンデヒドロゲナーゼまたはリジン6-デヒドロゲナーゼといった他のクラスの酵素の例も、表4に列記されている。
【0091】
もう1つの態様において、図2Aおよび2Bは、中間体としてのメチルエステルを介する、α,ω-二酸およびω-アミノ脂肪酸を含むさまざまな化合物の生成を示している。図2Bの段階6は、(アシル-CoAリガーゼ/トランスフェラーゼを用いる)α,ω-ジエステルの生成を示している。図2Aおよび2Bの段階2では、エステルシンターゼを使用して、アシル-ACPを脂肪酸メチルエステル(FAME)に変換させる。ある態様において、エステルシンターゼをコードする遺伝子は、酵素分類EC 2.3.1.75またはEC 2.3.1.20の酵素をコードするもの、ホホバ、アシネトバクター属種ADP1、アルカニボラックス・ボルクメンシス、緑膿菌、ファンジバクター・ジャデンシス(Fundibacter jadensis)、シロイヌナズナもしくはアルカリゲネス・ユートロフス(Alkaligenes eutrophus)由来の二官能性エステルシンターゼ/アシル-CoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼであるwax/dgatをコードするもの、またはAtfA1、AtfA2、ES9もしくはES8をコードするもの、またはそれらのバリアントである(この段階を触媒させるために用いうるエステルシンターゼの酵素活性を有するポリペプチドを示している、前記の表9も参照)。段階3では、ω-ヒドロキシラーゼ(またはω-オキシゲナーゼ)を用いて、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルを生成させている(例えば、前記の表2Aは、この段階を触媒させるために用いうる酵素活性を有するポリペプチドを示している)。図2Aに見てとれるように、脂肪酸メチルエステルのω位はヒドロキシ基である。図2Aの段階3では、アルコールデヒドロゲナーゼまたはオキシダーゼが、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルをω-オキソ脂肪酸メチルエステルにさらに変換させることができる(例えば、前記の表3Aは、この段階を触媒させることができるアルコールデヒドロゲナーゼまたはオキシダーゼの酵素活性を有するポリペプチドを示している)。同様に、経路はここから二通りの択一的な経路をとることができ、すなわち、一方の経路は、アルデヒドデヒドロゲナーゼもしくはオキシダーゼを介して(前記の表3Bを参照)、かつ最後にエステラーゼもしくはリパーゼ(前記の表5を参照)を介するか、または化学変換によって、ω-オキソ脂肪酸メチルエステルをα,ω-二酸に変換させる;一方、もう1つの経路は、アミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼまたはアミノ酸デヒドロゲナーゼを介して(前記の表4を参照)かつ最後にエステラーゼまたはリパーゼ(前記の表5を参照)を介して、ω-オキソ脂肪酸メチルエステルをω-アミノ脂肪酸に変換させる。最後の段階(すなわち、エステラーゼまたはリパーゼが、α,ω-脂肪酸メチルエステルまたはω-アミノ脂肪酸メチルエステルの、示されている最終産物への変換を触媒する)は、酵素的ならびに化学的な変換段階の結果であってよい。例えば、この段階を加水分解しうる適した酵素は、表5に列記されている。選択されるリパーゼ(EC 3.1.1.3)またはエステラーゼ(EC 3.1.1.1)は、周辺質に位置するか、または上清中に分離される。適した分泌シグナルまたはアンカー配列は、当技術分野において公知の方法に従って操作することができる。もう1つの態様において、図2Bは、α,ω-脂肪酸ジメチルエステルを介したα,ω-二酸の生成を示している。この経路は図2Aの左側の分枝に類似しているが、これは別のアシル-CoAシンターゼ/アシル-CoAリガーゼまたはトランスフェラーゼを用いる(適した候補については前記の表7を参照)。第1の段階を触媒するエステルシンターゼ/アシルトランスフェラーゼは、最後から2つ目の段階も触媒する。
【0092】
もう1つの態様において、再生可能な原料由来の炭素源(例えば、グルコース)を用いて、α,ω-ジオールから脂肪アルコール(FALC)を細胞内で産生させうる経路が、図3および4に描写されている。1つの態様において、図3は、チオエステラーゼおよびカルボン酸レダクターゼ活性を使用することによってα,ω-ジオールが作られる経路を図示している(これらの段階を触媒しうるポリペプチドについては、前記の表1を参照)。本明細書において、チオエステラーゼは、段階2においてアシル-ACPを遊離脂肪酸(FFA)に変換することができる。カルボン酸レダクターゼは、段階3において、その結果生じたFFAを脂肪アルデヒドに変換することができる。段階4において、アルコールデヒドロゲナーゼ(前記の表1を参照)は、脂肪アルデヒドを脂肪アルコール(FALC)に変換することができる。最後に、段階5において、ω-ヒドロキシラーゼまたはω-オキシゲナーゼ(前記の表2A参照)が、FALCをα,ω-ジオールに変換することができる。または、アシル-ACPは、図4に図示されているように、アシル-ACPレダクターゼによって脂肪アルデヒドに直接的に変換される(前記の表1は、これらの段階を触媒するためのチオエステラーゼ、カルボン酸レダクターゼ、アシル-ACPレダクターゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼの酵素活性を有するポリペプチドを示している)。
【0093】
さらにもう1つの態様においては、ポリマーへと化学的に変換されうるラクタムを生成する経路が示される。これは、アシル-CoA-トランスフェラーゼ(前記の表7を参照)およびアミドシンターゼ(前記の表8を参照)を通じてラクタムに変換されうる12-アミノラウリン酸などのω-アミノ脂肪酸の一例によって図5に図示されている。この特定の例において、結果的に生じるラクタムは、12-アミノドデカノラクタムまたはラウロラクタムである。それに由来するポリマーの一例は、図5に示されているようなナイロン12である。12-アミノラウリン酸メチルエステルを対応するラクタムに直接的にラクタム化するのに適した酵素は、ラウロラクタムの生成を導くために同じ生体触媒中で他の酵素と組合せて用いうる;または12-アミノラウリン酸メチルエステルの別の生体内変換に用いうる、ある種のヒドロラーゼ(前記の表6を参照)である。リパーゼまたはエステラーゼ(前記の表5を参照)も、12-アミノラウリン酸メチルエステルを対応するラクタムに直接的にラクタム化することができる。
【0094】
本開示では、組換え宿主細胞および生産方法において有用である酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを特定している。酵素活性を有するポリペプチドは、化合物を含む組成物の生産に寄与する。そのようなポリヌクレオチドに対する絶対的な配列同一性が必要でないことは一般に認識されるであろう。例えば、特定のポリヌクレオチド配列(例えば、酵素機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)に変化を加えて、コードされるポリペプチドを活性に関してスクリーニングすることができる。そのような変化には、典型的には、保存的突然変異およびサイレント突然変異(例えば、コドン最適化)が含まれる。遺伝的に操作または改変されたポリヌクレオチドおよびコードされるバリアントポリペプチドは、当技術分野において公知の方法を用いて、触媒活性の増大、安定性の増大、または阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)を非限定的に含む、所望の機能に関してスクリーニングすることができる。
【0095】
加えて、本開示は、本明細書に記載された通りのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体(前記)の生成に関与する操作された経路のさまざまな段階(すなわち、反応)に関与する酵素活性を酵素分類(EC)番号に従って特定し、そのようなEC番号によって分類される例示的なポリペプチド(例えば、酵素)、およびそのようなポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチドを提供する。アクセッション番号および/または配列識別子番号(配列番号)によって本明細書において特定されるそのような例示的なポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、本明細書に記載の遺伝的に改変された宿主細胞を得る目的で、親宿主細胞におけるα,ω-二酸などの他の二官能性分子を含むω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の産生を導く脂肪酸経路を操作するために有用である。本明細書に記載のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは例示的であって非限定的である。当業者は、本明細書に記載の例示的なポリペプチドの相同体の配列を、さまざまなデータベース(例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって提供されているEntrezデータベース、Swiss Institute of Bioinformaticsによって提供されているExPasyデータベース、Technical University of Braunschweigによって提供されているBRENDAデータベース、ならびにBioinformatics Center of Kyoto UniversityおよびUniversity of Tokyoによって提供されているKEGGデータベース、これらはすべてWorld Wide Web上で利用可能である)を通じて入手することができる。
【0096】
1つの態様において、本明細書に記載された通りの組換え微生物(前記)は、炭素が偶数である鎖を有するω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する。もう1つの態様においては、組換え微生物を、炭素が奇数である鎖を有するω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生するように操作することができる。例えば、ω-ヒドロキシラーゼ経路を、奇数鎖脂肪酸誘導体を過剰産生する組換え細胞(例えば、大腸菌)において、発現させることができる(ある種の細菌株を介した奇数鎖脂肪酸誘導体の過剰産生は、米国特許出願公開第US2012/0070868号に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる)。これにより、奇数鎖ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の生産が可能になる。1つの態様において、奇数鎖脂肪酸を過剰産生する組換え株は、ω-ヒドロキシラーゼ(例えば、CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質)およびoleT(例えば、Rude et al. (2011) Appl. Environ. Microbiol. 77:1718)などの脂肪酸デカルボキシラーゼの発現と組合せた場合に、末端二重結合を有する偶数鎖脂肪アルコール、例えば、9-デセン-1-オール、11-ドデセン-1-オール、13-テトラデセン-1-オール、および15-ヘキサデセン-1-オールなどを産生する。
【0097】
もう1つの態様においては、末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸誘導体が提供される。これらは、少なくとも1つのOH基をω-1位、および/またはω-2位、および/またはω-3位、および/またはω-4位などに有する化合物である(例えば、ω-1、ω-2および/またはω-3;など)。実施例8および9は、cyp102Aファミリー(Whitehouse et al. (2012) Chem. Soc. Rev. 41: 1218)由来のシトクロムP450オキシゲナーゼを使用することによって遺伝的に改変された宿主細胞における、これらの化合物の産生を示している。cyp102AファミリーのシトクロムP450オキシゲナーゼは、末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生させるために適している。しかし、これらの酵素は、それらが脂肪酸誘導体を主としてω位でヒドロキシル化するようにそれらの基質特異性が変更されなければ、組換え宿主においてω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を効率的に産生させるには適さず、これはこれまでのところ部分的にしか成功していない(Lentz et al. (2006) ChemBioChem. 7: 345)。
【0098】
組換え宿主細胞において発現されるCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアント
本開示では、組換え宿主細胞において発現させた場合にω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体組成物の高い力価、収量および/または生産性をもたらすCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントを特定している。本開示の非限定的な例においては、CYP153A(G307A)-RedRhFハイブリッド融合ポリペプチド(下記の実施例6を参照)を、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントを効率的に操作するための鋳型として用いて(下記の実施例14~10を参照)、より多くの量のω-OH脂肪酸およびω-OH脂肪酸誘導体を産生させた。例えば、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、宿主細胞において発現させた場合に、インビボで、グルコースなどの単純な炭素源から、ドデカン酸などの化合物を12-ヒドロキシドデカン酸に効率的に変換させることができた。例えば再生可能な原料に由来するような、任意の単純な炭素源が適している。操作されたCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアント(すなわち、操作されたCYP153A-RedRhFハイブリッド融合ポリペプチドバリアントによって例示されている)は、再生可能な原料由来の炭素源(例えば、グルコース)を用いて、宿主細胞(例えば、大腸菌)においてチオエステラーゼと共発現させた場合に、インビボで脂肪酸を特定の望ましい化合物(ω-OH脂肪酸を含む)に効率的に変換させうることが示された(実施例、下記を参照)。本開示に従うことにより、突然変異させた遺伝子、例えばCYP153Aタンパク質をコードする遺伝子をc末端レダクターゼドメインと連結させることによって、他のハイブリッド融合ポリペプチドバリアントを操作することができる(前記の表2Aから2Dまでを参照)。例えば、両方の遺伝子(P5450およびレダクターゼドメイン)を突然変異させる、または一方の遺伝子(P450またはレダクターゼドメイン)を突然変異させる変形物も、本明細書に包含される。これらの指示に従うことで、他の種類のω-ヒドロキシラーゼから同様の融合タンパク質バリアントを作り出し、組換え宿主細胞において発現させて、ω-OH脂肪酸誘導体を産生させることができる。
【0099】
したがって本開示は、炭素源(例えば、グルコース、スクロース、または、再生可能な原料に由来するその他任意の炭素源)と共に培養されるとω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体組成物の高い力価、収量、および/または産生能をもたらす、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントを発現する組換え宿主細胞に関する。CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、CYP153Aドメインまたはレダクターゼドメインまたはその両方に、1つまたは複数の突然変異を有する。1つの態様において、本開示は、配列番号:6に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有しかつ位置27、82、141、178、231、309、407、415、516、666、および/または796を含むアミノ酸位置に1つまたは複数の突然変異を有する、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントであって、インビボで脂肪酸からω-OH脂肪酸への変換を触媒する、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントを提供する。より具体的には、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、以下の突然変異の1つまたは複数を有する:例えば、リジン(L)がアルギニン(R)で置換されているR27L;アスパラギン酸(D)がアルギニン(R)で置換されている位置R82D;イソロイシン(I)がバリンで置換されている位置V141I;グルタミン(Q)がバリン(V)で置換されている位置V141Q;グリシン(G)がバリン(V)で置換されている位置V141G;メチオニン(M)がバリン(V)で置換されている位置V141M;ロイシン(L)がバリン(V)で置換されている位置V141L;トレオニン(T)がバリン(V)で置換されている位置V141T;アスパラギン(N)がアルギニン(R)で置換されている位置R178N;トレオニン(T)がアラニン(A)で置換されている位置A231T;アルギニン(R)がアスパラギン(N)で置換されている位置N309R;アラニン(A)がアスパラギン(N)で置換されている位置N407A;アルギニン(R)がバリン(V)で置換されている位置V415R;バリン(V)がトレオニン(T)で置換されている位置T516V;アラニン(A)がプロリン(P)で置換されている位置P666A;アスパラギン酸(D)がプロリン(P)で置換されている位置P666D;および、バリン(V)がアラニン(A)で置換されている位置A796V。CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントの例としては、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28または 配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、および配列番号:46が挙げられる。1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、ハイブリッドcyp153A-RedRhF型の融合タンパク質バリアントである。もう1つの態様において、組換え宿主細胞内のCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、対応する宿主細胞内のCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドの発現により産生されるω-OH脂肪酸組成物の力価よりも高い力価を有するω-OH脂肪酸誘導体組成物をもたらす。もう1つの態様において、組換え宿主細胞内のCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、ω-OH C12、ω-OH C14、ω-OH C16、ω-OH C18、ω-OH C12:1、ω-OH C14:1、ω-OH C16:1、およびω-OH C18:1脂肪酸誘導体組成物を非限定的に含む、より高い力価を有するω-OH脂肪酸誘導体組成物をもたらす。
【0100】
もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、アミノ酸位置141における突然変異、例えばV141Iおよび/またはV141Tを有する。本明細書において、組換え宿主細胞における突然変異V141IまたはV141Tを有するCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントの発現は、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドの発現により産生されるω-OH C12またはω-OH C16脂肪酸組成物の力価よりも高い力価を有するω-OH C12またはω-OH C16脂肪酸組成物を、それぞれもたらす。1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異V141IおよびA231Tを有し(配列番号:32)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異R27L、R82D、V141M、R178N、およびN407Aを有し(配列番号:34)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異P666Aを有し(配列番号:36)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異A796Vを有し(配列番号:38)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異A796V、P666D、およびT516Vを有し(配列番号:40)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異V141I、A231T、およびA796Vを有し(配列番号:42)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12およびω-OH C16脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異R27L、R82D、V141M、R178N、N407A、およびA796Vを有し(配列番号:44)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C12脂肪酸を産生する。もう1つの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは突然変異V141T、A231T、およびA796Vを有し(配列番号:46)、チオエステラーゼの酵素機能を有する宿主細胞中で発現させた場合に、増大した量のω-OH C16脂肪酸を産生する。
【0101】
本開示では、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合に関連するポリヌクレオチドおよびポリペプチドのバリアントを特定している。CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、配列番号:8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、および46を含む。CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合核酸バリアント(DNA配列)は、配列番号:7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、および47を含む。しかし、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントに対する絶対的な配列同一性は必要でないことは認識されるであろう。例えば、ある特定のポリヌクレオチド配列に変化を加えて、コードされるポリペプチドを活性に関してスクリーニングすることができる。そのような変化には、典型的には、例えばコドン最適化などを通じての保存的突然変異およびサイレント突然変異が含まれる。改変または突然変異を受けた(すなわち、突然変異体)ポリヌクレオチドおよびコードされるバリアントポリペプチドは、当技術分野において公知の方法を用いて、触媒活性の増大、安定性の増大、または阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)を非限定的に含む、野生型または鋳型ポリペプチドと比較して改善された機能などの所望の機能に関してスクリーニングすることができる。本開示では、本明細書に記載の脂肪酸生合成経路のさまざまな段階(すなわち、反応)に関与する酵素活性を酵素分類(EC)番号に従って特定し、そのようなEC番号によって分類される例示的な(例えば、特定の酵素として機能しかつ特定の酵素活性を提示する)ポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチドを特定している。本明細書において配列識別子番号(配列番号;上記)によって特定されるそのような例示的なポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、図1に示されたものなどの宿主細胞における脂肪酸経路を操作するために有用である。しかし、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは例示的であって、それ故に非限定的であることが理解される必要がある。本明細書に記載の例示的なポリペプチドの相同体の配列は、データベース、例えば、いずれもWorld Wide Web上で利用可能である、National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって提供されているEntrezデータベース、Swiss Institute of Bioinformaticsによって提供されているExPasyデータベース、Technical University of Braunschweigによって提供されているBRENDAデータベース、ならびにBioinformatics Center of Kyoto UniversityおよびUniversity of Tokyoによって提供されているKEGGデータベースを用いて、当業者には入手可能である。
【0102】
1つの態様において、本開示の実施に用いるためのCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28または配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、および配列番号:46に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、グリシン(G)がアラニン(A)で置換されている、マリノバクター・アクアエオレイ由来のCYP153A(G307A)ポリペプチドに由来し、ロドコッカス属種NCIMB9784由来のP450RhFのレダクターゼドメインに融合している。シトクロムP450RhFは自給型であり、高度な基質非特異性(substrate promiscuity)を示し、広範な官能基を触媒する。他の態様において、本開示の実施に用いるためのCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、または配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44または配列番号:46に対して、少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも99%の配列同一性を有し、さらに、本明細書に記載されたような有用な特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を含んでもよい。他の態様において、本開示の実施に用いるためのCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28または配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、または配列番号:46に対して、100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、または90%の配列同一性を有する。さらに他の態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントのP450触媒ドメインは、マリノバクター・アクアエオレイ以外の種に由来する。そのような他の種は、以下を非限定的に含む:アシネトバクター属種、マイコバクテリウム・マリヌム、ポラロモナス属種、アルカニボラックス・ボルクメンシス、バークホルデリア・フンゴラム(Burkholderia fungorum)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ハイフォモナス・ネプチュニウム(Hyphomonas neptunium)、ロドシュードモナス・パルストリス、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属種、マイコバクテリウム属種。さらに他の態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントのレダクターゼドメインは、ロドコッカス属種以外の種に由来する。そのような他の種は、以下を非限定的に含む:ロドコッカス・エクイ、アシネトバクター・レイディオレジステンス、鼻疽菌、鼻疽菌、ラルストニア・ユートロファ、カプリアビダス・メタリデュランス。
【0103】
1つの関連した態様において、本開示は、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33、配列番号:35、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:43、配列番号:45、または配列番号:47に対して、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントを含む。いくつかの態様において、核酸配列は、本明細書に記載されたような改良された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を有するCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントをコードする。さらにもう1つの関連した態様において、本開示の実施に用いるためのCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33、配列番号:35、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:43、配列番号:45または配列番号:47に対して100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、または90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。もう1つの局面において、本開示は、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33、配列番号:35、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:43、配列番号:45、または配列番号:47に対応する核酸配列の実質的に全長に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を包含するCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントに関する。いくつかの態様において、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアントは、マリノバクター・アクアエオレイ種に由来する。他の態様において、P450ハイブリッド融合ポリペプチドは、アシネトバクター属種、マイコバクテリウム・マリヌム、ポラロモナス属種、アルカニボラックス・ボルクメンシス、バークホルデリア・フンゴラム、カウロバクター・クレセンタス、ハイフォモナス・ネプチュニウム、ロドシュードモナス・パルストリス、スフィンゴモナス属種、およびマイコバクテリウム属種に由来する。
【0104】
変異および突然変異
バリアントポリペプチドとは、本明細書で用いる場合、野生型または鋳型ポリペプチドとは少なくとも1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。例えば、バリアント(例えば突然変異体)は、以下の保存的アミノ酸置換、例えば、これらに限定されるわけではないが、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの脂肪族アミノ酸の、別の脂肪族アミノ酸による置き換え;セリンのトレオニンによる置き換え;トレオニンのセリンによる置き換え;例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性残基の、別の酸性残基による置き換え;アスパラギンおよびグルタミンなどのアミド基を保有する残基の、アミド基を保有する別の残基による置き換え;リジンおよびアルギニンなどの塩基性残基の、別の塩基性残基との交換;ならびに、フェニルアラニンおよびチロシンなどの芳香族残基の、別の芳香族残基による置き換えのうちの、1つまたは複数を有しうる。いくつかの態様において、バリアントポリペプチドは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100個、またはそれ以上のアミノ酸置換、付加、挿入または欠失を有する。バリアントまたは突然変異体として機能するポリペプチドの好ましい断片のいくつかは、対応する野生型ポリペプチドの生物学的機能(例えば、酵素活性)の一部またはすべてを保っている。いくつかの態様において、断片は、対応する野生型ポリペプチドの生物学的機能の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%、またはそれ以上を保っている。他の態様において、断片または突然変異体は、対応する野生型ポリペプチドの生物学的機能の約100%を保っている。他の態様において、いくつかの断片は、対応する野生型ポリペプチドと比べて増大した生物学的機能を示す。生物活性に影響を及ぼさずにどのアミノ酸残基を置換し、挿入し、または欠失させることができるかを判定する上での手引きは、当技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いて見いだすことができる。いくつかの態様において、断片は、対応する野生型ポリペプチドまたは鋳型ポリペプチドと比較して増大した生物学的機能を示す。例えば、断片は、対応する野生型ポリペプチドまたは鋳型ポリペプチドと比較して、酵素活性の点で少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも90%の改善を呈しうる。他の態様において、断片は、対応する野生型ポリペプチドまたは鋳型ポリペプチドと比較して、酵素活性の点で少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%の改善を呈する。
【0105】
本明細書に記載のポリペプチドが、ポリペプチドの機能に実質的な影響を及ぼさないさらなる保存的または非必須のアミノ酸置換を有してもよいことは理解されよう。当技術分野において公知のように、ある特定の置換が許容される(すなわち、ω-ヒドロキシラーゼ酵素活性などの所望の生物学的機能に有害な影響を及ぼさない)か否かを判定することができる(Bowie et al. (1990) Science, 247: 1306-1310を参照されたい)。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられたもののことである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0106】
バリアントは天然に存在してもよく、またはインビトロで作製してもよい。特に、そのようなバリアントは、部位指定突然変異誘発、ランダム化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIII削除手順、または標準的なクローニング手法といった遺伝子工学の手法を用いて作製することができる。または、そのようなバリアント、突然変異体、断片、類似体または誘導体を、化学的な合成または改変の手順を用いて作製することもできる。バリアントの作製方法は当技術分野において周知である。例えば、バリアントは、ランダム突然変異誘発および部位指定突然変異誘発を用いることによって調製することができる。ランダム突然変異誘発および部位指定突然変異誘発は、当技術分野において広く知られている(例えば、Arnold (1993) Ciirr. Opin. Biotech. 4: 450-455を参照されたい)。ランダム突然変異誘発は、エラープローンPCR(例えば、Leung et al. (1989), Technique, 1: 11-15;およびCaldwell et al. (1992) PCR Methods Applic, 2: 28-33を参照されたい)。エラープローンPCRでは、PCR産物の全長にわたって高い点突然変異率が得られるように、DNAポリメラーゼのコピー忠実度(copying fidelity)が低くなる条件下で実際のPCRを行う。手短に述べると、そのような手法では、突然変異誘発させる核酸(例えば、P450タンパク質またはP450ハイブリッド融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)を、PCRプライマー、反応緩衝液、MgCl2、MnCl2、Taqポリメラーゼ、およびPCR産物の全長にわたって高い点突然変異率を得るのに適した濃度のdNTPと混合する。例えば、反応は、20fmolの突然変異誘発させる核酸、30pmolの各PCRプライマー、50mM KCl、10mM Tris HCl(pH 8.3)、0.01%ゼラチン、7mM MgCl2、0.5mM MnCl2、5単位のTaqポリメラーゼ、0.2mM dGTP、0.2mM dATP、1mM dCTP、および1mM dTTPを含む反応緩衝液を用いて行うことができる。PCRは、94℃で1分、45℃で1分、および72℃で1分を30サイクルとして行うことができる。しかし、これらのパラメーターを適宜変更しうることは当業者に理解されるであろう。続いて、突然変異誘発された核酸を適切なベクター中にクローニングし、突然変異誘発された核酸によってコードされるポリペプチドの活性を評価する。部位指定突然変異誘発は、クローニングされた関心対象の任意のDNA中に部位特異的突然変異を生じさせるためにオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発を用いて達成することができる。オリゴヌクレオチド突然変異誘発は当技術分野において記載されている(例えば、Reidhaar-Olson et al. (1988) Science, 241 : 53-57を参照されたい)。手短に述べると、そのような手順では、クローニングされたDNA中に導入しようとする1つまたは複数の突然変異を保有する複数の二本鎖オリゴヌクレオチドを合成し、突然変異誘発させるクローニングされたDNA(例えば、P450ポリペプチドまたはP450ハイブリッド融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)中に挿入する。突然変異誘発されたDNAを含有するクローンを回収し、それらがコードするポリペプチドの活性を評価する。
【0107】
バリアントを作製するためのもう1つの方法は、アセンブリPCRである。アセンブリPCRでは、小さなDNA断片の混合物からのPCR産物のアセンブリが行われる。同一のバイアル内で多数の異なるPCR反応が並行して起こり、ある反応の産物が別の反応の産物をプライミングする(米国特許第5,965,408号を参照されたい)。バリアントを作製するさらにもう1つの方法は、セクシャル(sexual)PCR突然変異誘発である。セクシャルPCR突然変異誘発では、DNA分子のランダム断片化の結果として、異なってはいるが類縁性の高いDNA配列のDNA分子間で、配列相同性に基づき、強制的な相同組換えがインビトロで起こる。これに続いて、PCR反応におけるプライマー伸長により、交差組換え(crossover)の固定が行われる。セクシャルPCR突然変異誘発は、当技術分野で公知の刊行物に記載されている(例えば、Stemmer, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 91: 10747-10751を参照されたい)。バリアントを、インビボ突然変異誘発によって作製することもできる。いくつかの態様においては、DNA修復経路の1つまたは複数に突然変異を保持する大腸菌株などの細菌株において配列を増幅させることにより、核酸配列中にランダム突然変異を生じさせる。そのようなミューテーター(mutator)菌株は、野生型菌株よりも高いランダム突然変異率を有する。これらの菌株の1つでDNA配列(例えばP450ハイブリッド融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)を増幅させることにより、最終的には、DNA内にランダム突然変異が生じることになる。インビボ突然変異誘発における使用に適したミューテーター菌株は、当技術分野の刊行物に記載されている(例えば、国際特許出願公開WO 91/16427を参照されたい)。また、バリアントを、カセット突然変異誘発を用いて作製することもできる。カセット突然変異誘発では、二本鎖DNA分子の小さな領域を、生来の配列とは異なる合成オリゴヌクレオチドカセットで置き換える。オリゴヌクレオチドは、多くの場合、完全および/または部分的にランダム化された生来の配列を含有する。また、リカーシブ・アンサンブル(recursive ensemble)突然変異誘発を、バリアントを作製するために用いることもできる。リカーシブ・アンサンブル突然変異誘発は、表現型が関連している突然変異体の多様な集団(メンバーのアミノ酸配列が異なっている)を作製するために開発されたタンパク質工学(すなわち、タンパク質突然変異誘発)のためのアルゴリズムである。この方法では、フィードバック機構を用いて、連続した複数回のコンビナトリアルカセット突然変異誘発を制御する(例えば、Arkin et al, (1992) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 89: 7811-7815を参照されたい)。いくつかの態様においては、エクスポネンシャル・アンサンブル(exponential ensemble)突然変異誘発を用いてバリアントが作製される。エクスポネンシャル・アンサンブル突然変異誘発は、ユニークかつ機能的な突然変異体のパーセンテージが高いコンビナトリアルライブラリーを作製するための工程であり、この工程では、少数の残基群を並行してランダム化することにより、変更された各位置で機能的タンパク質をもたらすアミノ酸を同定する(例えば、Delegrave et al. (1993) Biotech. Res, 11: 1548-1552を参照されたい)。いくつかの態様においては、シャフリング(shuffling)手順を用いてバリアントが作製され、この手順では、別個のポリペプチドをコードする複数の核酸の部分を融合させて、キメラポリペプチドをコードするキメラ核酸配列を作製する(例えば、米国特許第5,965,408号および第5,939,250号に記載されている)。
【0108】
発現ベクター
いくつかの態様においては、ポリヌクレオチド(または遺伝子)配列が、ポリヌクレオチド配列と機能的に連結したプロモーターを含む組換えベクターにより、宿主細胞に与えられる。ある態様において、プロモーターは、発生段階調節性の、オルガネラ特異的な、組織特異的な、誘導性の、構成性の、または細胞特異的なプロモーターである。いくつかの態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた発現制御配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた選択マーカー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたマーカー配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた精製部分;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた分泌配列;およびポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたターゲティング配列より選択される、少なくとも1つの配列を含む。本明細書に記載の発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列を、宿主細胞における該ポリヌクレオチド配列の発現に適した形態で含む。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換させようとする宿主細胞の選択、および所望のポリペプチドの発現レベルなどの要因に依存しうることが理解されるであろう。上述のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、例えば融合ポリペプチドを産生させるために、本明細書に記載の発現ベクターは宿主細胞に導入することができる(前記)。原核生物、例えば大腸菌におけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く構成性または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中にコードされているポリペプチド、通常は組換えポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは、典型的には、組換えポリペプチドの発現を増大させること;組換えポリペプチドの溶解性を高めること;および、アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することによって組換えポリペプチドの精製を助けることを含む3つの目的の、1つまたは複数に役立つ。多くの場合、融合発現ベクターでは、融合部分と組換えポリペプチドの接合部にタンパク質分解切断部位が導入されている。これにより、融合ポリペプチドの精製後に、融合部分からの組換えポリペプチドの分離が可能になる。そのような酵素およびそれらのコグネイト認識配列の例には、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。例示的な融合発現ベクターには、pGEXベクター(Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, NJ;Smith et al. (1988) Gene 67: 31-40)、pMALベクター(New England Biolabs, Beverly, MA)、およびpRITSベクター(Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, N. J.)が含まれ、これらはそれぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えポリペプチドと融合させるものである。
【0109】
誘導性の非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrcベクター(Amann et al. (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11dベクター(Studier et al., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990) 60-89)が含まれる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依拠する。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、共発現させたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依拠する。このウイルスポリメラーゼは、BL21(DE3)またはHMS174(DE3)などの宿主菌株により、lacUV 5プロモーターの転写制御下にあるT7 gn1遺伝子を保有する常在性λプロファージから供給される。原核細胞および真核細胞の両者に適した発現系は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい)。誘導性の非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrcベクター(Amann et al. (1988) Gene, 69: 301-315)およびPET 11dベクター(Studier et al. (1990) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA, pp. 60-89)が含まれる。ある態様において、本開示のポリヌクレオチド配列は、バクテリオファージT5に由来するプロモーターと機能的に連結されている。1つの態様において、宿主細胞は酵母細胞である。この態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。ベクターは、外来性核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための、当技術分野で認知された種々の手法を介して原核細胞または真核細胞に導入することができる。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのために適した方法は、例えば、Sambrook et al.(前記)に見いだすことができる。細菌細胞の安定的な形質転換に関しては、(用いる発現ベクターおよび形質転換手法に応じて)特定の割合の細胞が発現ベクターを取り込んで複製することが知られている。これらの形質転換体の同定および選択のために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を、関心対象の遺伝子とともに宿主細胞に導入することができる。選択マーカーには、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなど、ただしこれらには限定されない薬物に対する耐性を付与するものが含まれる。選択マーカーをコードする核酸は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするベクターと同一ベクター上で宿主細胞中に導入することができ、または別個のベクター上で導入することもできる。
【0110】
任意選択的な経路の操作
本開示の宿主細胞または微生物には、酵素活性に対する特定の突然変異の効率を検討するための変更を含むように遺伝子操作されたまたは改変された宿主菌株または宿主細胞(すなわち、組換え細胞または微生物)が含まれる。どの生来の酵素経路が元の宿主細胞に存在しているかに応じて、さまざまな任意選択的な遺伝的操作および変更を、1つの宿主細胞から別のものまでに互換的に用いることができる。1つの態様において、宿主菌株は、他の生合成ポリペプチド(例えば、酵素)と組合せてCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドまたはそのバリアントの発現を検討するために用いることができる。宿主菌株は、発酵の構成成分、炭素源(例えば、原料)、温度、圧力、培養物混入低減条件(reduced culture contamination condition)および酸素レベルを含む培養条件を非限定的に含む、具体的な変数を検討するためのいくつかの遺伝的変更を含みうる。
【0111】
1つの態様において、宿主菌株は、任意でfadEおよびfhuAの欠失を含む。アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(FadE)は、脂肪酸を代謝するために重要な酵素である。これは、脂肪酸(アシル-CoA)の長鎖を分解してアセチル-CoA分子にする過程である、脂肪酸利用における第2の段階(β-酸化)を触媒する。より詳細には、細菌における脂肪酸分解のβ-酸化サイクルの第2の段階はアシル-CoAの2-エノイル-CoAへの酸化であり、これはFadEによって触媒される。大腸菌がFadEを欠いていると、それは脂肪酸を炭素源として増殖することができないが、酢酸塩によって増殖することはできる。あらゆる鎖長の脂肪酸を利用できないことは、fadE菌株について報告されている表現型、すなわち、FadE機能が破壊されているfadE突然変異体株とも合致している。すべてのアシル-CoAが脂肪酸誘導体へと効率的に変換されうるように、脂肪酸誘導体経路の中間体と考えられるアシル-CoAが細胞内に蓄積できることを確かめるために、fadE遺伝子を任意選択的にノックアウトまたは減弱させることができる。しかし、糖が炭素源として用いられる場合にはfadEの減弱化は任意選択的であり、これは、そのような条件下ではFadEの発現が抑制される可能性が高く、そのためFadEが少量でしか存在せず、エステルシンターゼまたはアシル-CoAを基質とする他の酵素と効率的に競合しないと考えられるためである。FadEは異化代謝産物抑制が原因となって抑制される。大腸菌および他の多くの微生物は脂肪酸よりも糖を消費することを選好するため、両方の供給源が利用可能である場合には、fadレギュロンを抑制することによって糖がまず消費される(D. Clark, J Bacteriol. (1981) 148(2):521-6)を参照)。その上で、糖の欠如および脂肪酸の存在によってFadE発現が誘導される。fadレギュロン(FadEを含む)によって発現されるタンパク質がアップレギュレートされ、アシル-CoAと効率的に競合すると考えられるため、β酸化経路に向かうアシル-CoA中間体は失われる可能性がある。したがって、fadE遺伝子をノックアウトまたは減弱させることが有益となりうる。ほとんどの炭素源は主として糖を基にしているため、FadEを減弱させることは任意選択的である。遺伝子fhuAは、大腸菌の外膜にあるエネルギー共役輸送体・受容体であるTonAタンパク質をコードする(V. Braun (2009) J Bacteriol. 191(11):3431-3436)。その欠失は任意選択的である。fhuA欠失により、細胞をファージ攻撃に対してより抵抗性にすることができ、これはある特定の発酵条件では有益となる可能性がある。したがって、発酵ラン中に混入が起こる可能性が低い宿主細胞では、fhuAを欠失させることが望ましいと考えられる。
【0112】
もう1つの態様において、宿主菌株(前記)はまた、fadR、fabA、fabD、fabG、fabH、fabVおよび/またはfabFを含む、以下の遺伝子のうち1つまたは複数の任意選択的な過剰発現も含む。そのような遺伝子の例には、大腸菌由来のfadR、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)由来のfabA(NP_460041)、ネズミチフス菌由来のfabD(NP_460164)、ネズミチフス菌由来のfabG(NP_460165)、ネズミチフス菌由来のfabH(NP_460163)、コレラ菌由来のfabV(YP_001217283)、およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のfabF(NP_350156)がある。脂肪酸生合成における酵素および調節因子をコードするこれらの遺伝子のうち1つまたは複数の過剰発現を、ω-OH脂肪酸およびその誘導体を含む脂肪酸誘導体化合物の力価をさまざまな培養条件下で増大させるために役立てることができる。
【0113】
もう1つの態様においては、ω-OH脂肪酸およびその誘導体の生産のための宿主細胞として大腸菌株が用いられる。同様に、これらの宿主細胞も、fadR、fabA、fabD、fabG、fabH、fabVおよび/またはfabFを非限定的に含む、脂肪酸誘導体(例えば、ω-OH脂肪酸およびα,ω-二酸、その他)などの脂肪酸誘導体化合物の力価をさまざまな培養条件下でさらに増大させるかまたは強化することのできる、1つまたは複数の生合成遺伝子(すなわち、脂肪酸生合成の酵素および調節因子をコードする遺伝子)の任意選択的な過剰発現を提供する。遺伝的変更の例には、大腸菌由来のfadR、ネズミチフス菌由来のfabA(NP_460041)、ネズミチフス菌由来のfabD(NP_460164)、ネズミチフス菌由来のfabG(NP_460165)、ネズミチフス菌由来のfabH(NP_460163)、コレラ菌由来のfabV(YP_001217283)、およびクロストリジウム・アセトブチリカム由来のfabF(NP_350156)が含まれる。いくつかの態様においては、さまざまな培養条件下でのP450発現を検討する目的ならびに/またはω-OH脂肪酸およびα,ω-二酸の産生をさらに強化する目的で、これらの生合成遺伝子を保有する合成オペロンを操作により作製して、細胞において発現させることができる。そのような合成オペロンは、1つまたは複数の生合成遺伝子を含む。例えば、ifab138オペロンは、特定の培養条件について検討する目的で脂肪酸誘導体の過剰発現を促進するために用いることのできる、コレラ菌由来のfabV、ネズミチフス菌由来のfabH、ネズミチフス菌由来のfabD、ネズミチフス菌由来のfabG、ネズミチフス菌由来のfabAおよび/またはクロストリジウム・アセトブチリカム由来のfabFを含む任意選択的な脂肪酸生合成遺伝子を含む、操作されたオペロンである。そのような合成オペロンの1つの利点は、ω-OH脂肪酸誘導体産生の速度をさらに高めることができるかまたは増強できることである。
【0114】
いくつかの態様において、ACPおよび生合成酵素(例えば、ω-ヒドロキシラーゼ、チオエステラーゼ、その他)を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、ω-OH脂肪酸、ω-OH脂肪酸誘導体、α,ω-二酸などの1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体の産生を増加させることのできる、ある特定の酵素活性を含む遺伝子をさらに発現すると考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる、脂肪酸の生産のためのチオエステラーゼ活性(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪エステルの生産のためのエステルシンターゼ活性(E.C. 2.3.1.75)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のための、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性(E.C. 1.1.1.1.)および/または脂肪アルコールアシル-CoAレダクターゼ(FAR)(E.C. 1.1.1.*)活性および/またはカルボン酸レダクターゼ(CAR)(EC 1.2.99.6)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルデヒドの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、アルカンおよびアルケンの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性およびデカルボニラーゼ(ADC)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のための、アシル-CoAレダクターゼ(E.C. 1.2.1.50)活性、アシル-CoAシンターゼ(FadD)(E.C. 2.3.1.86)活性およびチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪エステルの生産のための、エステルシンターゼ活性(E.C. 2.3.1.75)、アシル-CoAシンターゼ(FadD)(E.C. 2.3.1.86)活性およびチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞はケトンの生産のためのOleA活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、内部オレフィンの生産のためのOleBCD活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性(E.C. 1.1.1.1.)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、末端オレフィンの生成のためのチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性およびデカルボキシラーゼ活性を有する。微生物および微生物細胞における酵素活性の発現は、米国特許第8,097,439号;第8,110,093号;第8,110,670号;第8,183,028号;第8,268,599号;第8,283,143号;第8,232,924号;第8,372,610号;および第8,530,221号に教示されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。他の態様において、ACPおよび他の生合成酵素を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、ω-OH脂肪酸、ω-OH脂肪酸誘導体、およびα,ω-二酸などの1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体を生産する目的でアップレギュレートまたは過剰発現される、ある特定の生来の酵素活性を含むと考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、チオエステラーゼ遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる脂肪酸の生産のための生来のチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。
【0115】
本開示は、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドおよびそのバリアントならびに他の生合成酵素(前記)をコードする、宿主菌株または微生物を含む。組換え宿主細胞は、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体(例えば、ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸を含むω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸;α,ω-ジオール;α,ω-ジエステル;ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル;ω-アミノ脂肪酸;およびω-アミノ脂肪酸メチルエステル)を含む脂肪酸誘導体、ならびにそれらの組成物および配合物を産生する。脂肪酸誘導体は典型的には、培養培地から回収される、および/または宿主細胞から単離される。1つの態様において、脂肪酸誘導体は培養培地から回収される(細胞外)。もう1つの態様において、脂肪酸誘導体は宿主細胞から単離される(細胞内)。もう1つの態様において、脂肪酸誘導体は、培養培地から回収されて、宿主細胞から単離される。宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体組成物は、特定の脂肪酸誘導体の分布、ならびにω-ヒドロキシ遊離脂肪酸を含むω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸などの二官能性化合物;α,ω-ジオール;α,ω-ジエステル;ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル;ω-アミノ脂肪酸;ω-アミノ脂肪酸メチルエステル;などを含む脂肪酸誘導体組成物の構成成分の鎖長および飽和度を決定する目的で、当技術分野において公知の方法、例えばGC-FIDを用いて分析することができる。
【0116】
他の態様において、ACPおよび他の生合成酵素を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体(例えば、ω-ヒドロキシ遊離脂肪酸を含むω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸などの二官能性化合物;α,ω-ジオール;α,ω-ジエステル;ω-カルボキシ脂肪酸メチルエステル;ω-アミノ脂肪酸;およびω-アミノ脂肪酸メチルエステル)を含む1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体を産生する目的でアップレギュレートまたは過剰発現される、ある特定の生来の酵素活性を含むと考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、チオエステラーゼ遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる脂肪酸の生産のための生来のチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。
【0117】
組換え宿主細胞および発酵
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生させる目的で、生産宿主細胞(前記)にいくつかの改変を加えた。したがって、本開示は、操作されていないまたは生来の宿主細胞(例えば、対照細胞としての役目を果たす野生型宿主細胞)に比してω-脂肪酸生合成経路をもたらすように操作された、組換え宿主細胞を提供し、これは例えば、菌株改良を通じて実現される。本開示の生産宿主生物には、植物細胞、動物細胞、または微生物細胞が含まれる。微生物または微生物細胞、例えば細菌、シアノバクテリウム、酵母、藻類または糸状菌などを、生産宿主として用いることができる。生産宿主として用いうる微生物の非限定的な例には、大腸菌、S.セレビシエなど(下記)が含まれる。微生物菌株は、再生可能な原料由来のグルコースまたは他の炭素源を、脂肪酸または脂肪酸エステル、例えば脂肪酸メチルエステル(FAME)、脂肪酸エチルエステル(FAEE)、および脂肪アルコール(FALC)などに効率的に変換させる。これを達成する目的で、脂肪酸の生産のためのチオエステラーゼ(例えば、大腸菌由来のTesA)またはFAMEの生産のためのエステルシンターゼ(例えば、M.ハイドロカーボノクラスティカス由来のES9)を含む重要な酵素を発現するように、菌株を注意深く操作した。さまざまな化合物の生産のための高密度発酵に関するプロトコールおよび手順は確立されている(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,372,610号;第8,323,924号;第8,313,934号;第8,283,143号;第8,268,599号;第8,183,028号;第8,110,670号;第8,110,093号;および第8,097,439号を参照)。
【0118】
本明細書において考察した酵素的段階を、図1および2に示されたようなα,ω-二酸ならびに図3および4に示されたようなα,ω-ジオールなどの二官能性脂肪酸誘導体を産生する能力を有する新規微生物を作り出すための遺伝子工学手法を用いて、生体触媒としての役目を果たすこれらの微生物に加えることができる。産物は細胞の外側に分泌され、遠心処理を介した容易な採取が可能になると予想される。ある特定の組換え酵素的段階を、図1および2に例示されたように12-アミノラウリン酸または12-アミノラウリン酸メチルエステルなどの特定の化合物の直接生産のために、1つの微生物において組合せることができる。または、再生可能な資源から生成された中間体を用いる生体内変換を、本開示の発酵方法に適用することもできる。例えば、チオエステラーゼまたはエステルシンターゼなどの酵素を発現する組換え微生物から得られたラウリン酸メチルエステルを、アルコールデヒドロゲナーゼもしくはオキシダーゼ;アミノトランスフェラーゼもしくはトランスアミナーゼ;および/またはエステラーゼもしくはリパーゼなどの酵素を発現する組換え微生物に供給することができる。そのため、ある特定の段階を触媒するある特定の酵素を発現する1つの組換え微生物から得られた化学的実体を、他の段階を触媒する酵素を発現するさらに別の組換え微生物に供給することができる。したがって、本宿主細胞は、中間体が互換的であって、所望のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生じさせる目的で発酵手順をすべての宿主細胞に適用することができる、生産システムを提供する。注目されることとして、外因性脂肪酸またはパラフィン以外のグルコースまたは他の再生可能な原料から、例えばα,ω-二酸;α,ω-ジオール;またはω-アミノ脂肪酸などのω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を直接的かつ効率的に生産するための方法は、現在まで存在していなかった。しかしながら、これらの二官能性脂肪酸誘導体は、ポリマー合成のための重要な前駆体である。本明細書において提示される通りのω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産のための発酵に基づく方法は、当技術分野において使用される化学的方法に代わる、迅速かつ環境負荷の少ない選択肢を提供する。
【0119】
本方法は、再生可能な原料(例えば、トウモロコシ、サトウキビまたはリグノセルロース系バイオマス由来の糖質;またはグリセロール、煙道ガス、合成ガスなどの廃棄物;またはバイオマスなどの有機材料有機材料の再構成物)に由来する炭素源からのω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の直接生産を提供する。1つの態様において、本方法は、これらの重要な化学物質の生産のための、費用対効果が高く、かつ再生可能な代替的な供給源に依拠する。本方法は、発酵ブロス中に組換え微生物(例えば、宿主細胞)を用意する段階;再生可能な原料を発酵ブロスに添加する段階;および発酵ブロスからω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を単離する段階によって、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を生産することを含む。特定の微生物の宿主細胞は、チオエステラーゼまたはエステルシンターゼおよびω-ヒドロキシラーゼを含むポリペプチドをコードする少なくとも2種の核酸配列を発現するように操作された経路を含む。
【0120】
本明細書で用いる場合、発酵という用語は、組換え宿主細胞の培養物を炭素源を含む培地中で繁殖させることによる、宿主細胞による有機材料から目的物質への変換、例えば、組換え宿主細胞による再生可能な原料由来の炭素源からω-OH脂肪酸誘導体およびその組成物への変換を広く指す。産生を許容する条件とは、宿主細胞が所望の生成物、例えばω-OH脂肪酸誘導体を産生することを可能にする、あらゆる条件を指す。同様に、ベクターのポリヌクレオチド配列が発現される1つまたは複数の条件とは、宿主細胞がポリペプチドを合成することを可能にする、あらゆる条件を意味する。適した条件には、例えば、発酵条件が含まれる。発酵条件は、温度範囲、通気レベル、供給速度および培地組成を非限定的に含む多くのパラメーターを含みうる。これらの条件のそれぞれは、個々に、または組合されて、宿主細胞が増殖することを可能にする。発酵は、好気性、嫌気性、またはそれらの変形物(微好気性など)であってよい。例示的な培養培地には、ブロスまたはゲルが含まれる。一般に、培地は、宿主細胞によって直接代謝されうる炭素源を含む。加えて、炭素源の動態化(例えば、デンプンまたはセルロースの発酵性糖への解重合)およびその後の代謝を促進するために、培地中に酵素を用いることもできる。
【0121】
小規模産生のためには、操作された宿主細胞を、例えば約100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、1mL、5 mL、10 mL、15 mL、25 mL、50 mL、75 mL、100mL、500mL、1L、2L、5Lまたは10Lバッチ中で増殖させ、発酵させて、所望のポリヌクレオチド配列、例えば、単独のまたは他の酵素官能性と組合せたCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。大規模産生のためには、操作された宿主細胞を、約10L、100L、1000L、10,000L、100,000L、および1,000,000Lまたはそれ以上のバッチ中で増殖させ、発酵させて、所望のポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。または、大規模流加発酵を実施することもできる。本明細書に記載のω-OH脂肪酸誘導体組成物は、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境で見出され、培養培地から容易に単離することができる。ω-OH脂肪酸またはその誘導体は組換え宿主細胞によって分泌されても、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境に輸送されても、細胞外環境に受動的に移行してもよい。そのω-OH脂肪酸誘導体は、当技術分野において公知の慣行的な方法を用いて、組換え宿主細胞培養物から単離される。
【0122】
いくつかの態様において、宿主細胞は、再生可能な原料などの炭素源の初期濃度約2 g/L~約100 g/Lを含む培養培地中で培養される。他の態様において、培養培地は、初期濃度が約2 g/L~約10 g/Lの炭素源、約10 g/L~約20 g/Lの炭素源、約20 g/L~約30 g/Lの炭素源、約30 g/L~約40 g/Lの炭素源、または約40 g/L~約50 g/Lの炭素源を含む。いくつかの態様において、培養培地中の炭素源のレベルに関して発酵をモニターすることができる。いくつかの態様において、方法は、培養培地中の炭素源のレベルが約0.5 g/L未満である場合に、補足的な該炭素源を該培地に添加する工程をさらに含む。いくつかの態様において、培養培地中の炭素源のレベルが約0.4 g/L未満、約0.3 g/L未満、約0.2 g/L未満、または約0.1 g/L未満である場合に、補足的な該炭素源が該培地に添加される。いくつかの態様において、補足的な炭素源は、約1 g/L~約25 g/Lの炭素源レベルを維持するために添加される。いくつかの態様において、補足的な炭素源は、約2 g/Lまたはそれ以上(例えば約2 g/Lまたはそれ以上、約3 g/Lまたはそれ以上、約4 g/Lまたはそれ以上)の炭素源レベルを維持するために添加される。特定の態様において、補足的な炭素源は、約5 g/Lまたはそれ未満(例えば、約5 g/Lまたはそれ未満、約4 g/Lまたはそれ未満、約3 g/Lまたはそれ未満)の炭素源レベルを維持するために添加される。いくつかの態様において、補足的な炭素源は、約2 g/L~約5 g/L、約5 g/L~約10 g/L、または約10 g/L~約25 g/Lの炭素源レベルを維持するために添加される。いくつかの態様において、炭素源は、グルコース、または別な種類の再生可能な原料、例えばグリセロールである。
【0123】
いくつかの態様において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、約1 g/L~約200 g/Lの濃度で産生される。いくつかの態様において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、約1 g/Lまたはそれ以上(例えば、約1 g/Lまたはそれ以上、約10 g/Lまたはそれ以上、約20 g/Lまたはそれ以上、約50 g/Lまたはそれ以上、約100 g/Lまたはそれ以上)の濃度で産生される。いくつかの態様において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、約1 g/L~約170 g/L、約1 g/L~約10 g/L、約40 g/L~約170 g/L、約100 g/L~約170 g/L、約10 g/L~約100 g/L、約1 g/L~約40 g/L、約40 g/L~約100 g/L、または約1 g/L~約100 g/Lの濃度で産生される。
【0124】
いくつかの態様において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、約25mg/L、約50mg/L、約75mg/L、約100mg/L、約125mg/L、約150mg/L、約175mg/L、約200mg/L、約225mg/L、約250mg/L、約275mg/L、約300mg/L、約325mg/L、約350mg/L、約375mg/L、約400mg/L、約425mg/L、約450mg/L、約475mg/L、約500mg/L、約525mg/L、約550mg/L、約575mg/L、約600mg/L、約625mg/L、約650mg/L、約675mg/L、約700mg/L、約725mg/L、約750mg/L、約775mg/L、約800mg/L、約825mg/L、約850mg/L、約875mg/L、約900mg/L、約925mg/L、約950mg/L、約975mg/L、約1000mg/L、約1050mg/L、約1075mg/L、約1100mg/L、約1125mg/L、約1150mg/L、約1175mg/L、約1200mg/L、約1225mg/L、約1250mg/L、約1275mg/L、約1300mg/L、約1325mg/L、約1350mg/L、約1375mg/L、約1400mg/L、約1425mg/L、約1450mg/L、約1475mg/L、約1500mg/L、約1525mg/L、約1550mg/L、約1575mg/L、約1600mg/L、約1625mg/L、約1650mg/L、約1675mg/L、約1700mg/L、約1725mg/L、約1750mg/L、約1775mg/L、約1800mg/L、約1825mg/L、約1850mg/L、約1875mg/L、約1900mg/L、約1925mg/L、約1950mg/L、約1975mg/L、約2000mg/L(2g/L)、3g/L、5g/L、10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の力価で産生される。他の態様において、ω-脂肪酸誘導体は、100g/Lを上回る、200g/Lを上回る、300g/Lを上回る、またはそれ以上、例えば500g/L、700g/L、1000g/L、1200g/L、1500g/Lまたは2000g/Lなどの力価で産生される。本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生されるω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の好ましい力価は、5g/L~200g/L、10g/L~150g/L、20g/L~120g/L、および30g/L~100g/Lである。1つの態様において、本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生されるω-脂肪酸誘導体の力価は約1g/L~約250g/Lであり、より詳細には90g/L~約120g/Lである。力価は、所与の組換え宿主細胞培養物により産生される特定のω-脂肪酸誘導体に関するものでも、ω-脂肪酸誘導体の組合せに関するものでもよい。
【0125】
他の態様において、本開示の方法によりω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生するように操作された宿主細胞は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の収量を有する。他の態様において、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体は、30%を上回る、40%を上回る、50%を上回る、60%を上回る、70%を上回る、80%を上回る、90%を上回る、またはそれ以上の収量で産生される。代替的または追加的に、収量は、約30%もしくはそれ未満、約27%もしくはそれ未満、約25%もしくはそれ未満、または約22%もしくはそれ未満である。したがって、収量は上記の終点の任意の2つを境界とすることができる。例えば、本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される1種または複数種のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の収量は、5%~15%、10%~25%、10%~22%、15%~27%、18%~22%、20%~28%、または20%~30%でありうる。特定の態様において、組換え宿主細胞によって産生される1種または複数種のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の収量は、約10%~約40%である。もう1つの特定の態様において、組換え宿主細胞によって産生される1種または複数種のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の収量は、約25%~約30%である。収量は、所与の組換え宿主細胞培養物により産生される特定のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体に関するものでも、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の組合せに関するものでもよい。さらに、収量は、使用される原料にも依存すると考えられる。
【0126】
いくつかの態様において、組換え宿主細胞によって産生される1種または複数種のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の産生能は、少なくとも100mg/L/時、少なくとも200mg/L/時、少なくとも300mg/L/時、少なくとも400mg/L/時、少なくとも500mg/L/時、少なくとも600mg/L/時、少なくとも700mg/L/時、少なくとも800mg/L/時、少なくとも900mg/L/時、少なくとも1000mg/L/時、少なくとも1100mg/L/時、少なくとも1200mg/L/時、少なくとも1300mg/L/時、少なくとも1400mg/L/時、少なくとも1500mg/L/時、少なくとも1600mg/L/時、少なくとも1700mg/L/時、少なくとも1800mg/L/時、少なくとも1900mg/L/時、少なくとも2000mg/L/時、少なくとも2100mg/L/時、少なくとも2200mg/L/時、少なくとも2300mg/L/時、少なくとも2400mg/L/時または少なくとも2500mg/L/時である。例えば、本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される1種または複数種のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の産生能は、500mg/L/時~2500mg/L/時、または700mg/L/時~2000mg/L/時であり得る。1つの特定の態様において、産生能は、約0.7g/L/h~約3g/L/hである。産生能は、所与の組換え宿主細胞培養物により産生される特定のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体に関するものでも、複数種のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の組合せに関するものでもよい。
【0127】
組換え宿主細胞によるω-OH脂肪酸組成物の産生を増加させるための戦略には、産生宿主における、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合遺伝子およびチオエステラーゼ遺伝子の発現による、脂肪酸生合成経路を経由する流れの増大が含まれる。本明細書で用いる場合、組換え宿主細胞または操作された宿主細胞という用語は、例えば、新たな遺伝因子の人為的導入、および/または宿主細胞内に天然に存在する遺伝因子の人為的改変によって、対応する野生型宿主細胞に比して遺伝子構造が変更された宿主細胞を指す。そのような組換え宿主細胞の子孫も、これらの新たな、および/または改変された遺伝因子を含有する。本明細書に記載の本開示の諸局面の任意のものにおいて、宿主細胞は、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞(例えば、カンジダ属種(Candida sp.)などの糸状菌、またはサッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)などの出芽酵母)、藻類細胞および細菌細胞より選択されうる。1つの態様において、組換え宿主細胞は組換え微生物である。微生物細胞である宿主細胞の例には、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ザイモモナス属(Zymomonas)、ロドコッカス属、シュードモナス属(Pseudomonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)、フザリウム属(Fusarium)、ヒューミコーラ属(Humicola)、リゾムコール属(Rhizomucor)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophtora)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、プレウロタス属(Pleurotus)、トラメテス属(Trametes)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ステノトロホモナス属(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、またはストレプトミセス属(Streptomyces)に由来する細胞が非限定的に含まれる。いくつかの態様において、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞である。他の態様において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌B細胞、大腸菌C細胞、大腸菌K細胞、または大腸菌W細胞である。他の態様において、宿主細胞は、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus lichenoformis)細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミルス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、枯草菌(Bacillus subtilis)細胞、またはバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。他の態様において、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニディランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)細胞、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞、またはムコール・ミエヘイ(Mucor michei)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞は、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞はアクチノミセス(Actinomycetes)細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞はサッカロミセス・セレビシエ細胞である。
【0128】
他の態様において、宿主細胞は、真核植物細胞、藻類細胞、ラン色細菌細胞、緑色硫黄細菌細胞、緑色非硫黄細菌細胞、紅色硫黄細菌細胞、紅色非硫黄細菌細胞、好極限性細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、本明細書に記載された任意の種の操作された細胞、または合成生物に由来する細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は、光依存性であるかまたは炭素を固定する。いくつかの態様において、いくつかの態様において、宿主細胞は独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の存在下などにおいて光独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の非存在下において従属栄養性または混合栄養性である。ある態様において、宿主細胞は、シロイヌナズナ、パニカム・ウィルガツム(Panicum virgatum)、ミスカンサス・ギガンテス(Miscanthus giganteus)、トウモロコシ(Zea mays)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcuse braunii)、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)、ドナリエナ・サリナ(Dunaliela salina)、シネココッカス属種PCC7002、シネココッカス属種PCC7942、シネコシスティス(Synechocystis)属種PCC 6803、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongates)BP-1、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・オウランティアカス(Chlorojlexus auranticus)、クロマチウム・ビノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリラム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス、クロストリジウム・リュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridiumthermocellum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来する細胞である。1つの態様において、微生物細胞は、プロクロロコッカス属(Prochlorococcus)、シネココッカス属、シネコシスティス属、シアノセイス属(Cyanothece)、およびノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)を非限定的に含むシアノバクテリアに由来する。もう1つの態様において、微生物細胞は、シネココッカス・エロンガタスPCC7942、シネコシスティス属種PCC6803、およびシネココッカス属種PCC7001を非限定的に含む、特定のシアノバクテリア種に由来する。
【0129】
組換え微生物由来の生成物
本明細書で用いる場合、現代炭素分率すなわちfMという用語は、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology;NIST)標準物質(Standard Reference Material;SRM)4990Bおよび4990C、それぞれシュウ酸標準品HOxIおよびHOxIIとして知られるもの、によって定義されるものと同じ意味を有する。基本的定義はHOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に相当する(西暦1950年を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木とおおむね等しい。現在の生体生物圏(植物材料)については、fMはおよそ1.1である。バイオ生成物(bioproduct)(例えば、本開示に従って産生されたω-OH脂肪酸および誘導体を含む脂肪酸誘導体)は、生物的に産生された有機化合物を含む。特に、本明細書における脂肪酸生合成経路を用いて産生された脂肪酸誘導体(例えば、ω-OH脂肪酸およびその誘導体)は、これまで再生可能資源から産生されたことはなく、したがって新規な組成物である。これらの新たなバイオ生成物は、石油化学炭素由来の有機化合物とは、二核種炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon-isotopic fingerprinting)または14C年代測定法(14C dating)に基づいて区別することができる。さらに、生物起源炭素の具体的な供給源(例えば、グルコースとグリセロールとの対比)を、二核種炭素同位体フィンガープリント法によって決定することもできる(例えば、米国特許第7,169,588号を参照されたい)。バイオ生成物を石油系の有機化合物と区別しうることは、これらの材料の流通下でのトラッキングに有益である。例えば、生物学に基づく炭素同位体プロファイルと石油系の炭素同位体プロファイルの両方を含む有機化合物または化学物質は、石油系の材料だけでできた有機化合物および化学物質と区別することができる。それ故に、本明細書におけるバイオ生成物は、そのユニークな炭素同位体プロファイルに基づいて、流通下で追跡またはトラッキングすることができる。バイオ生成物は、各試料中の安定炭素同位体比(13C/12C)を比較することによって、石油系の有機化合物と区別することができる。所与のバイオ生成物における13C/12C比は、二酸化炭素が固定された時点の大気中の二酸化炭素における13C/12C比の結果である。それはまた、厳密な代謝経路も反映する。地域的変動も起こる。石油、C3植物(広葉植物)、C4植物(イネ科草本)、および海洋炭酸塩はすべて、13C/12Cおよび対応するδ13C値の点で有意差を示す。さらに、C3植物およびC4植物の脂質物質は、代謝経路の結果として、同じ植物の炭水化物成分から誘導される材料とは異なる分析結果を示す。測定精度内で、13Cは同位体分別効果に起因する大きな変動を示し、バイオ生成物に関して最も重要なのは光合成機構である。植物における炭素同位体比の違いの主因は、植物における光合成炭素代謝の経路の違い、特に一次カルボキシル化(すなわち、大気CO2の初期固定)時に起こる反応の違いと密接に関連している。草木の二大クラスは、C3(またはカルビン・ベンソン)光合成回路が組み込まれているものと、C4(またはハッチ・スラック)光合成回路が組み込まれているものである。C3植物では、一次CO2固定またはカルボキシル化反応にリブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ酵素が関与し、最初の安定生成物は3-炭素化合物である。広葉樹および針葉樹などのC3植物は、温帯気候帯において優勢である。C4植物では、もう1つの酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが関与するさらなるカルボキシル化反応が、一次カルボキシル化反応である。最初の安定炭素化合物は4-炭素酸であり、それが後に脱炭酸される。そのようにして放出されたCO2は、C3回路によって再び固定される。C4植物の例には、暖地型牧草、トウモロコシ、およびサトウキビがある。C4植物およびC3植物はいずれも、ある範囲の13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は、C4植物については約-7~約-13パーミル、C3植物については約-19~約-27パーミルである(例えば、Stuiver et al. (1977) Radiocarbon 19:355を参照されたい)。石炭および石油は一般に後者の範囲に含まれる。13C測定尺度は、元はピーディー(Pee Dee)ベレムナイト(PDB)石灰石によって設定されたゼロ点によって定義されたものであり、ここでの値は、この材料からの千分の一偏位(parts per thousand deviations)で与えられる。δ13C値は、千分率(パーミル)で表されて‰と略記され、以下のように計算される。
δ13C(‰)=[(13C/12C)試料-(13C/12C)標準物質]/(13C/12C)標準物質×1000
【0130】
PDB標準物質(reference material;RM)が枯渇したことから、IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際的同位体研究所の協同で、一連の代替RMが開発されている。PDBからのパーミル偏位の表記がδ13Cである。測定は、CO2に対して、高精度安定同位体比質量分析(high precision stable ratio mass spectrometry)(IRMS)により、質量44、45および46の分子イオンに関して行われる。本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生されたバイオ生成物を含み、これには例えば、脂肪酸誘導体生成物が含まれる。具体的には、バイオ生成物は、約-28もしくはそれ以上、約-27もしくはそれ以上、-20もしくはそれ以上、-18もしくはそれ以上、-15もしくはそれ以上、-13もしくはそれ以上、-10もしくはそれ以上、または-8もしくはそれ以上のδ13Cを有することができる。例えば、バイオ生成物は、約-30~約-15、約-27~約-19、約-25~約-21、約-15~約-5、約-13~約-7、または約-13~約-10のδ13Cを有することができる。別の場合には、バイオ生成物は、約-10、-11、-12、または-12.3のδ13Cを有することができる。本明細書における本開示に従って産生されたバイオ生成物は、各化合物における14Cの量を比較することによって、石油系の有機化合物と区別することもできる。14Cは5730年という核半減期を有するので、古い(older)炭素を含有する石油系燃料を、新しい(newer)炭素を含有するバイオ生成物と区別することができる(例えば、Currie, Source Apportionment of Atmospheric Particles, Characterization of Environmental Particles, J. Buffle and H. P. van Leeuwen, Eds., 1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series (Lewis Publishers, Inc.) 3-74, (1992)を参照されたい)。放射性炭素年代測定法における基本的仮定は、大気中の14C濃度の不変性が生体における14Cの不変性をもたらすというものである。しかし、1950年以降の大気圏内核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼により、14Cはもう1つの地球化学的時間特性(geochemical time characteristic)を獲得した。大気CO2における(したがって生体生物圏(living biosphere)における)その濃度は、1960年代中頃の核実験のピーク時にはおよそ2倍になった。それ以後は、7~10年というおよその緩和「半減期」で、約1.2×10-12という定常状態宇宙線起源(大気)ベースライン同位対比(14C/12C)へと徐々に戻りつつある。この後者の半減期は文字通りに解釈してはならない;そうではなくて、核時代の幕開け以降の大気および生物圏14Cの変動を追跡するには、詳細な大気核投入/減衰関数(atomospheric nuclear input/decay function)を用いなければならない。近年の生物圏炭素の年代測定(annual dating)に裏づけを与えるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは加速器質量分析(AMS)によって測定することができ、その結果は現代炭素分率(fM)という単位で与えられる。fMは、米国国立標準技術研究所(NIST)標準物質(SRM)4990Bおよび4990Cによって定義される。本明細書で用いる場合、現代炭素分率すなわちfMは、米国国立標準技術研究所(NIST)標準物質(SRM)4990Bおよび4990C、それぞれシュウ酸標準品HOxIおよびHOxIIとして知られるものによって定義されるのと同じ意味を有する。基本的定義はHOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に相当する(西暦1950年を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木にほぼ等しい。現在の生体生物圏(植物材料)については、fMはおよそ1.1である。本明細書に記載の組成物は、少なくとも約1のfM 14Cを有しうるバイオ生成物を含む。例えば、バイオ生成物は、少なくとも約1.01のfM 14C、約1~約1.5のfM 14C、約1.04~約1.18のfM 14C、または約1.111~約1.124のfM 14Cを有しうる。
【0131】
14Cのもう1つの測定値は、現代炭素パーセント(percent of modern carbon)(pMC)として知られている。14C年代値を用いる考古学者または地質学者にとっては、西暦1950年が0年前(zero years old)に相当する。これはまた、100pMCも表す。熱核兵器のピークであった1963年に、大気中の爆弾由来炭素(bomb carbon)は、正常レベルのほぼ2倍に達した。その出現以降、大気圏内でのその分布は概算されており、西暦1950年以降に生きる植物および動物については100pMCを上回る値を示す。これは時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5pMC付近である。これは、トウモロコシなどの新鮮なバイオマス材料が107.5pMCに近い14C特性を与えると考えられることを意味する。石油系の化合物はpMC値がゼロであると考えられる。化石炭素を現代炭素と混合すると、現代pMC含有量の希釈が起こることになる。107.5pMCが現代バイオマス材料の14C含有量を表し、0pMCが石油系生成物の14C含有量を表すと仮定すると、その材料について測定されるpMC値は、この2種類の構成成分の比率を反映することになる。例えば、現代の大豆に100%由来する材料は、107.5pMCに近い放射性炭素特性を与えると考えられる。この材料を石油系生成物で50%希釈したとすると、放射性炭素特性は約54pMCになると考えられる。生物学に基づく炭素含有量は、100%を107.5pMCに割り当て、0%を0pMCに割り当てることによって導き出される。例えば、99pMCと測定される試料は、93%の生物学に基づく炭素含有量換算値を与えることになる。この値は、生物学に基づく炭素結果平均値と呼ばれ、分析される材料内のすべての構成成分が現代生物材料または石油系材料のいずれかに由来すると仮定している。本明細書に述べたような1つまたは複数の脂肪酸誘導体を含むバイオ生成物は、少なくとも約50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100のpMCを有することができる。別の場合には、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、約50~約100;約60~約100;約70~約100;約80~約100;約85~約100;約87~約98;または約90~約95のpMCを有することができる。さらに別の場合には、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、約90、91、92、93、94、または94.2のpMCを有することができる。
【0132】
ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体および製剤
ω-ヒドロキシル脂肪酸誘導体などの化合物は、多くの産業的用途において有益かつ望ましい分子である。本開示は、そのような化合物をインビボで組換え微生物を通じて産生させ、それによって、ある範囲にわたる有用な産物を生じさせる。そのような産物には、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体が含まれる。ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体には、ω-ヒドロキシ脂肪酸;ω-ヒドロキシ-脂肪酸メチルエステル;ω-アミノ脂肪酸;ω-オキソ脂肪酸、ω-アミノ脂肪酸メチルエステル;ω-オキソ脂肪酸メチルエステル;α,ω-二酸;α,ω-ジエステル;およびα,ω-ジオールならびにそれらの組成物が非限定的に含まれる。本明細書では主に偶数鎖ω-ヒドロキシ-脂肪酸誘導体が記載されているが、7個、9個、11個、13個、15個、19個などの炭素を有するもののような奇数鎖ω-ヒドロキシ-脂肪酸誘導体も含まれる。
【0133】
ω-ヒドロキシ脂肪酸の例には、8-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデセン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデセン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデセン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデセン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデセン酸、および18-ヒドロキシオクタデカン酸が非限定的に含まれる。
【0134】
ω-ヒドロキシ-脂肪酸メチルエステルの例には、8-ヒドロキシオクタン酸メチルエステル、10-ヒドロキシデセン酸メチルエステル、10-ヒドロキシデカン酸メチルエステル、12-ヒドロキシドデセン酸メチルエステル、12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステル、14-ヒドロキシテトラデセン酸メチルエステル、14-ヒドロキシテトラデカン酸メチルエステル、16-ヒドロキシヘキサデセン酸メチルエステル、16-ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステル、18-ヒドロキシオクタデセン酸メチルエステル、および18-ヒドロキシオクタデカン酸メチルエステルが非限定的に含まれる。
【0135】
ω-アミノ脂肪酸の例には、8-アミノオクタン酸、10-アミノデセン酸、10-アミノデカン酸、12-アミノドデセン酸、12-アミノドデカン酸、14-アミノテトラデセン酸、14-アミノテトラデカン酸、16-アミノヘキサデセン酸、16-アミノヘキサデカン酸、18-アミノオクタデセン酸、および18-アミノオクタデカン酸が非限定的に含まれる。
【0136】
ω-アミノ脂肪酸メチルエステルの例には、8-アミノオクタン酸メチルエステル、10-アミノデセン酸メチルエステル、10-アミノデカン酸メチルエステル、12-アミノドデセン酸メチルエステル、12-アミノドデカン酸メチルエステル、14-アミノテトラデセン酸メチルエステル、14-アミノテトラデカン酸メチルエステル、16-アミノヘキサデセン酸メチルエステル、16-アミノヘキサデカン酸メチルエステル、18-アミノオクタデセン酸メチルエステル、および18-アミノオクタデカン酸メチルエステルが非限定的に含まれる。
【0137】
ω-オキソ脂肪酸の例には、8-オキソオクタン酸、10-オキソデセン酸、10-オキソデカン酸、12-オキソドデセン酸、12-オキソドデカン酸、14-オキソテトラデセン酸、14-オキソテトラデカン酸、16-オキソヘキサデセン酸、16-オキソヘキサデカン酸、18-オキソオクタデセン酸、および18-オキソオクタデカン酸が非限定的に含まれる。
【0138】
ω-オキソ脂肪酸メチルエステルの例には、8-オキソオクタン酸メチルエステル、10-オキソデセン酸メチルエステル、10-オキソデカン酸メチルエステル、12-オキソドデセン酸メチルエステル、12-オキソドデカン酸メチルエステル、14-オキソテトラデセン酸メチルエステル、14-オキソテトラデカン酸メチルエステル、16-オキソヘキサデセン酸メチルエステル、16-オキソヘキサデカン酸メチルエステル、18-オキソオクタデセン酸メチルエステル、および18-オキソオクタデカン酸メチルエステルが非限定的に含まれる。
【0139】
α,ω-二酸の例には、1,8-オクタン二酸、1,10-デセン二酸、1,10-デカン二酸、1,12-ドデセン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデセン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,16-ヘキサデセン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、1,18-オクタデセン二酸、1,18-オクタオクタデカン二酸が非限定的に含まれる。
【0140】
α,ω-ジエステルの例には、1,8-オクタン酸ジメチルエステル、1,10-デセン酸ジメチルエステル、1,10-デカン酸ジメチルエステル、1,12-ドデセン酸ジメチルエステル、1,12-ドデカン酸ジメチルエステル、1,14-テトラデセン酸ジメチルエステル、1,14-テトラデカン酸ジメチルエステル、1,16-ヘキサデセン酸ジメチルエステル、1,16-ヘキサデカン酸ジメチルエステル、1,18-オクタデセン酸ジメチルエステル、1,18-オクタデカン酸ジメチルエステルが非限定的に含まれる。
【0141】
ω-ジオールの例には、1,8-オクタンジオール、1,10-デセンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデセンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデセンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデセンジオール、1,16-ヘキサンデカンジオール、1,18-オクタデセンジオール、および1,18-オクタデカンジオール(1,18-octadcanediol)が非限定的に含まれる。
【0142】
本明細書では偶数鎖ω-ヒドロキシ-脂肪酸誘導体が記載されているが、7個、9個、11個、13個、15個、19個などの炭素を有するもののような奇数鎖ω-ヒドロキシ-脂肪酸誘導体も含まれる。奇数鎖ω-ヒドロキシ脂肪酸の例には、例えば、11-ヒドロキシウンデセン酸、11-ヒドロキシウンデカン酸、13-ヒドロキシトリデセン酸、13-ヒドロキシトリデカン酸、15-ヒドロキシペンタデセン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、17-ヒドロキシヘプタデセン酸、および17-ヒドロキシヘプタデカン酸が非限定的に含まれる。奇数鎖α,ω-二酸の例には、例えば、1,11-ウンデセン二酸、1,11-ウンデカン二酸、1,13-トリデセン二酸、13-トリデカン二酸、1,15-ペンタデセン二酸、1,15-ペンタデカン二酸、1,17-ヘプタデセン二酸、および1,17-ヘプタデカン二酸が非限定的に含まれる。奇数鎖α,ω-ジオールの例には、例えば、1,11-ウンデセンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,13-トリデセンジオール、13-トリデカンジオール、1,15-ペンタデセンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,17-ヘプタデセンジオール、および1,17-ヘプタデカンジオールが非限定的に含まれる。
【0143】
本開示のω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の化合物および組成物は、香味剤、芳香剤、潤滑剤、ゲル、さまざまなポリマー、樹脂、工業用流体、接着剤、腐食防止剤、コンデンサー用電解質、繊維、粉末コーティング硬化剤、可塑剤、ポリエステルコーティング、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、界面活性剤、洗剤、添加物などを含む望ましい産物が製造されるように、製剤化することができる。
【実施例
【0144】
以下の実施例は本開示をさらに例示するものであり、その範囲を限定するものとは決して解釈してはならない。
【0145】
実施例1:ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産のための組換え大腸菌株の培養
菌株を、ルリア-ベルターニ(LB)培地中で一晩かけて増殖させた。培養物を新鮮なLB培地中に1:10に希釈し、32℃で2~3時間(h)増殖させた上で、規定FA2培地(下記の表10を参照)中に再び1:10に希釈した。いくつかの実験では、培地に0.5mM δ-アミノレブリン酸および微量ビタミン溶液を加えた。スペクチノマイシン(100μg/ml)またはカナマイシン(50μg/ml)などの抗生物質を、菌株が各々の抗生物質耐性マーカーを有するプラスミドを含む場合には添加した。32℃での4~5時間の増殖後に、培養物を1mM IPTGによって誘導し、同じ温度でさらに16~18時間培養した。いくつかの実験では、誘導時にドデカン酸、ドデカノールまたはドデカン酸メチルエステルを最終濃度1g/Lで添加した。脂肪酸メチルエステルの誘導体を産生させることを目的とする培養物には、誘導時にメタノール(2%、v/v)を加えた。
【0146】
(表10)FA2培地の組成
【0147】
実施例2:ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の分析
ω-ヒドロキシ(hyroxy)脂肪酸誘導体を産生した培養物を採取し、ボルテクサー(vortexer)(DVX-2500多チューブボルテクサー、VWR)を2500rpmで30分間用いて、酢酸ブチルによって抽出した。抽出物を、Eppendorf遠心分離機(遠心分離機5424)にて、15000rpmで15分間、室温で遠心処理した。上清(100μL)を、インサート付きのGCバイアルにピペットで移し、100μLのN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)および1%トリメチルクロロシラン(TMCS)を添加することによって誘導体化して、ボルテクサーを用いて30秒間混合した。誘導体化を行うかまたは行わなかった上清の両方をGC-MSに別々に注入して、化合物同定のためのクロマトグラムおよび質量スペクトルを作成した。GC-MSパラメーターは以下の通りとした。
【0148】
GCパラメーター:
分析用カラム:DB-1HT、15m×250μm×0.1μm、Agilentからカタログ番号J&W 122-1111Eとして入手可能
オーブン温度:最初は50℃として、5分間保持し、25℃/分で300℃まで上昇させて、5.24分間保持し、合計運用時間を24分間とする
カラム流:1.2mL/分
入り口温度:300℃
試料サイズ:1μL
分割比:20:1
ソフトウェア:ChemStation E.02.01.1177
MSパラメーター
トランスファーライン温度:300℃
MSソース(MS source):230℃
MS Quad:150℃
オートサンプラー
Combi PAL(CTC analytics)、LEAP Technologiesにより販売
【0149】
GC/FIDパラメーター:
ガスクロマトグラフ FIDを装着したAgilent 7890、または同等物。
データシステム ChemStationソフトウェアB.04.03、または同等物。
分析用カラム:DB-1(10m×0.18mm×0.2μM)、または同等物。
オートサンプラー:Combi PAL、CTC analytics(Leap Technologies)
初期温度:60℃で0.5分間保持、25℃/分で300℃に上昇させて、0.9分間保持し、合計運用時間を11分間とする
注入器温度:320℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
検出器温度:350℃
水素流量:40mL/分
気流量:450mL/分
補給流量:45mL/分(N2
分割比:50:1
カラム流量:0.8mL/分
試料サイズ:1μL
【0150】
実施例3:2種のcyp153A P450オキシゲナーゼオペロンを発現する大腸菌株による、ドデカン酸の12(ω)-ヒドロキシドデカン酸への変換
本実施例では、cyp153A P450オキシゲナーゼオペロンを発現する組換え大腸菌株による、外因性に添加された脂肪酸のω-ヒドロキシ脂肪酸への変換を示す。本実験の目的は、cyp153A P450オキシゲナーゼオペロンの効率を調べることとした。cyp153A P450オキシゲナーゼは、これまでのところ、インビトロでしか使用されておらず(例えば、Honda-Malca et al. (2012) Chem. Commun. 48:5115-5117を参照)、本実験の目的は、インビボで外因性脂肪酸を与えた場合に、これらのオペロンがω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生しうるか否かを検証することとした。
【0151】
2種類の細菌、マリノバクター・アクアエオレイ(アクセッション番号YP_957888;配列番号:3)、およびマイコバクテリウム・マリヌム(アクセッション番号YP_001851443;配列番号:59)由来のcyp153Aオペロンを、これらの生物のゲノムDNAからPCR増幅した。オペロンは、フェレドキシン(fd)、cyp153A P450オキシゲナーゼおよびフェレドキシンレダクターゼ(fdR)をコードする複数の遺伝子で構成されている(前記の表2Aおよび2Bを参照)。遺伝子および遺伝子間領域の天然の順序は保たれていたが、M.マリヌム由来のcyp153A16におけるGTG開始コドンは、クロスオーバーPCRによってATG開始コドンに置き換えられた。オペロンの転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、PCRアンプライマーをpCL1920派生ベクター(SC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。結果として生じたプラスミドであるpAS.017(下記の表11を参照)およびpAS.018を、fadE遺伝子(アシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードする)またはfadD遺伝子(アシル-CoAシンテターゼをコードする)のいずれかが欠失している大腸菌MG1655に形質転換導入した。これらの菌株は脂肪酸を分解することができず、それ故に、これらの遺伝子、またはfadAもしくはfadBなどの他の脂肪酸分解酵素をコードする遺伝子を欠失させることによって、産物への変換の増加を目的として脂肪酸の利用可能性を高めることができる。しかし、これは任意選択的であり、遊離脂肪酸が外因性に供給されるか、または産物経路の中間体である場合に実行することができる。(表1(前記)は、宿主菌株における脂肪酸の利用可能性を高めるために減弱させることができる、さまざまな脂肪酸分解酵素を含む、代謝経路内の酵素活性の包括的リストを提示している)。その結果得られた4種の菌株を表12(下記)にまとめている。これらの菌株を、実施例1および2に記載したように、ドデカン酸の12-ヒドロキシドデカン酸への変換に関して分析した。
【0152】
cyp153Aオペロンを発現しない対照菌株MG1655 ΔfadDと比較して、cyp153Aオペロンを発現する4種の菌株すべてのGC-MSクロマトグラムにおいて、RT 12.303分での新たなピーク(BSTFA誘導体化の後)が検出された(図6参照。ここには菌株sAS.320およびsAS.321のみが示されている)。RT 12.303分でのピークの質量スペクトルは図7Aに示されている。この断片化パターンにより、このピークは、12-ヒドロキシドデカン酸の誘導体化形態である12-トリメチルシリルオキシドデカン酸トリメチルシリルエステルであることが指し示された。12-トリメチルシリルオキシ脂肪酸トリメチルシリルエステルの特徴的なイオン断片は、図8Aに示されている。m/z=129、147、204および217のイオン(図中には示されていないが存在する)は、これらの化合物に関する有用な診断マーカーである。m/z 255のイオンは、この化合物のカルボキシル側(m/z=345)からのCH3の喪失およびヒドロキシル側からの(CH33SiOHの喪失後の鎖長を決定するために用いた(図8A参照)。このピークが正しく同定されたことを、図7Bに示されているように、その保持時間および質量スペクトルを12-トリメチルシリルオキシドデカン酸トリメチルシリルエステル基準標準物質と比較することによって、さらに確かめた。誘導体化の前のこの化合物の質量スペクトルも記録して、図7Cに示している。誘導体化されていない化合物の特徴的なイオン断片は図8Bに示されている。m/z=98および84(示されている)は、ω-ヒドロキシ脂肪酸に関する有用な診断マーカーである。m/z 186のイオンは、ヒドロキシル側からのCH2Oの喪失による、12-ヒドロキシドデカン酸の特徴的断片である。化合物の分子イオンは、m/z 186の断片イオンにCH2Oを加えることによって216であると決定することができる。
【0153】
このように、マリノバクター・アクアエオレイおよびマイコバクテリウム・マリヌム由来のcyp153Aオペロンを発現する大腸菌は、宿主細胞において、インビボで外因性ドデカン酸を12-ヒドロキシドデカン酸に変換した。このことにより、この酵素がω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生しうることが実際に確かめられた。しかし、この酵素の変換効率はかなり低かった。このため、cyp153Aオペロンの酵素活性は単独ではω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産のために理想的ではないと予想され、より高い変換効率を有する酵素を設計するためのさらなる操作が必要であると判断された。
【0154】
(表11)ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生のための発現プラスミド
【0155】
(表12)脂肪酸誘導体のω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体への変換のための、組換えcyp153Aを発現する大腸菌株
【0156】
実施例4:改変されたcyp153A P450オキシゲナーゼオペロンを発現する大腸菌株による、ドデカン酸の12(ω)-ヒドロキシドデカン酸への変換
本実施例では、改変されたcyp153A P450オキシゲナーゼオペロンを発現する組換え大腸菌株による、外因性に添加された脂肪酸のω-ヒドロキシ脂肪酸への変換を示す。同様に、本実験の目的は、この改変されたcyp153A P450オキシゲナーゼオペロンの、インビボでのω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の産生に関する能力および効率を調べることとした。
【0157】
グリシン307がアラニンによって置き換えられた、M.アクアエオレイ由来のcyp153Aの突然変異体が、以前に記載されている(Honda Malca et al. (2012) Chem. Commun. 48:5115を参照)。プラスミドpAS.017(前記の実施例3を参照)を、以下のように改変した:cyp153_MaquのGly307を指定するコドンを、Alaを指定するようにGGCからGCCに変更し、さらにcyp156オペロン2つの生来の遺伝子間領域(IGR)を合成IGR(TAAGGAGGAAAACAAA)によって置き換えた(配列番号:65)。その結果得られたプラスミドをpAS.022と命名し(前記の表11を参照)、大腸菌MG1655 ΔfadDに形質転換導入して菌株sAS.335を得た(前記の表12を参照)。この菌株を、実施例1および2(前記)に記載したように、ドデカン酸の12-ヒドロキシドデカン酸への変換に関して分析した。図9に見てとれるように、sAS.335は、sAS.320よりも多くのドデカン酸を12-ヒドロキシドデカン酸に変換し、12-ヒドロキシドデカン酸の量は37.4±0.3mg/Lと定量された。
【0158】
このように、マリノバクター・アクアエオレイ由来の改変されたcyp153Aオペロンを発現する大腸菌は、インビボで外因性脂肪酸を供給した場合に、外因性ドデカン酸の12-ヒドロキシドデカン酸への変換のある程度の改善を示した(実施例3と比較して)。しかし、この酵素の変換効率は依然として非常に低かった。このため、マリノバクター・アクアエオレイ由来の改変されたcyp153Aオペロンの酵素活性は、依然として単独ではω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産のために理想的ではないと予想され、より高い変換効率を有する酵素を設計するためのさらなる操作が依然として必要であると判断された。
【0159】
実施例5:ハイブリッドcyp153A-Red450RhF融合タンパク質を発現する大腸菌株による、脂肪酸誘導体のω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体への変換
本実施例では、cyp153A P450オキシゲナーゼをレダクターゼドメインと融合させたハイブリッドタンパク質を発現する組換え大腸菌株による、外因性に添加された脂肪酸、脂肪酸メチルエステルまたは脂肪アルコールの、それぞれω-ヒドロキシ脂肪酸、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルまたはα,ω-ジオールへの変換を示す。本実験の目的は、ω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産を大きく改良するためにcyp153A P450オキシゲナーゼをレダクターゼドメインと融合させたハイブリッド融合タンパク質を作り出すこととした。
【0160】
自給型シトクロムP450オキシゲナーゼとは、レダクターゼのパートナーをシトクロムP450触媒タンパク質と融合させた酵素のことである。自給型細菌シトクロムP450オキシゲナーゼの1つのクラスは、ロドコッカス属種NCIMB 9784由来のP450RhFによって代表され(Roberts et al. (2003) J. Biol. Chem. 278: 48914;Hunter et al. (2005) FEBS Lett. 579: 2215)、これは「クラス-I P450融合PFOR」(DeMot and Parret (2002) Trends Microbiol. 10: 502)と称されている。
【0161】
この実験では、マリノバクター・アクアエオレイ由来のcyp153A(G307A)P450触媒タンパク質、ならびにロドコッカス属種NCIMB9784由来のP450RhFのc末端FMNおよびFe/Sを含有するレダクターゼドメインで構成されるハイブリッド-融合タンパク質をコードする遺伝子を、以下の通りに作り出した:cyp165A(G307A)_Maqu遺伝子をpAS.022から増幅させて、コドンが最適化された合成P450RhFレダクターゼドメインと、クロスオーバーPCRによって融合させた。その結果得られた融合遺伝子(配列番号:5)を、その転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、pCL1920派生物(すなわち、SC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。このプラスミドをpAS.023と命名し(前記の表11を参照)、大腸菌MG1655 ΔfadDに形質転換導入して菌株sAS.336を得た(前記の表12を参照)。
【0162】
続いて、菌株sAS.336を、実施例1および2に記載したように、(i)ドデカン酸の12-ヒドロキシドデカン酸への変換、(ii)ドデカン酸メチルエステルの12-ヒドロキシドデカン酸への変換、および(iii)ドデカノールの1,12-ドデカンジオールへの変換に関して分析した。対照菌株MG1655 ΔfadD(前記)と比較して、sAS.336では、添加した3種の化合物のすべてに関して、GC/MSクロマトグラフにおいて新たなピークが同定された(BSTFA誘導体化の後、図10Aから10Cまでを参照)。12-ヒドロキシドデカン酸は、実施例3(前記)に記載したようにして同定された。RT 11.946およびRT 11.668分での新たなピーク(BSTFA誘導体化の後)は、それぞれ1,12-ドデカンジオールおよび12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステルと同定された。
【0163】
RT 11.948分でのピークの質量スペクトルは図11Aに示されている。このイオン断片化パターンにより、このピークは、1,12-ドデカンジオールの誘導体化形態である1,12-ビス(トリメチルシロキシ)ドデカンであることが指し示された。1,12-ビス(トリメチルシロキシ)ドデカンのイオン断片パターンは、図13Aに示されている。m/z=147のイオンはすべてのジオール関連化合物に関する特徴的断片であり、m/z=55、69、83、97、111および125のイオンは、HOSi(CH3)3モイエティーの喪失後の特徴的なアリル切断断片である。m/z=241のイオンは、図13Aに示されているようにα,ω-ジオール化合物の鎖長を決定するための特徴的診断マーカーである。このピークが正しく同定されたことを、その保持時間および質量スペクトルを、BSTFA+1%TMCSによって誘導体化された1,12-ドデカンジオールの基準標準物質のものと比較することによって、さらに確かめた(図11B)。他のα,ω-ジオールの鎖長も同様に決定することができる。例えば、ピークがm/z 269に断片を有し、m/z 147、149、111、97、83、69および55に他の特徴的イオンを有するならば、このピークは1,14ビス(トリメチルシロキシ)テトラデカンであると考えられる。不飽和α,ω-ジオールの同定のために、同様の規則を適用することができる。不飽和α,ω-ジオールはその飽和対応物よりも小さい2つの質量単位を有するため、特徴的な診断用断片は、1,12ビス(トリメチルシロキシ)ドデセンのm/z=239である。
【0164】
RT 11.668分にあるピークの質量スペクトルが図12Aに示されている。この化合物のイオン断片化パターンに基づいて、このピークは12-トリメチルシロキシドデカン酸メチルエステルであると同定された。図13Bに実証されているように、この分子は、m/z=287(M-CH3)および255(M-CH3-HOCH3)の2つの主要ピークへと断片化される。加えて、質量スペクトルからもm/z=271(M-OCH3)に特徴的なイオンが示され、このことからこの分子がメチルエステルモイエティーを有することが示唆された。m/z=103のイオンにより、トリメチルシロキシ基が末端位置にあることが示唆される。m/z=287および255にあるイオンも、この化合物の鎖長を決定するための特徴的なイオンである(図13B参照)。すなわち、ピークがm/z=315および283に断片化イオンを有し、m/z 55および103に他のイオンを有するならば、このピークは14-トリメチルシロキシテトラデカン酸メチルエステルと同定することができる。この規則を用いて、菌株stEP677によって産生された種々の鎖長のω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルを同定した(下記の実施例6を参照)。
【0165】
表13(下記)は、菌株sAS.336によって32℃で18時間以内に変換されたω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の量を示している。表13に見てとれるように、pAS.023から発現されたハイブリッドcyp153A-RedRhF融合タンパク質は、試験した他の酵素と比較して、外因性脂肪酸誘導体をω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体に効率的に変換させた(前記)。このため、この操作された酵素を、インビボでの、再生可能な原料を通じた、操作された生産宿主を介するω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の生産のために選択した(下記の実施例6を参照)。
【0166】
(表13)sAS.336によって形成されたω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体
* 三重反復試験
【0167】
実施例6:CYP153A-Red450RhFハイブリッド融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースからのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生
本実施例では、CYP153A P450オキシゲナーゼをレダクターゼドメインと融合させたキメラ性ハイブリッドタンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースなどの再生可能な糖質原料からのω-ヒドロキシ脂肪酸、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルおよびα,ω-ジオールの産生を示す。
【0168】
CYP153A(G307A)-RedRhFハイブリッド融合遺伝子をコードする遺伝子をpAS.023から増幅させて、融合遺伝子の転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、pACYC誘導体ベクター(p15aレプリコン、カナマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。その結果得られたプラスミドをpEP.125と命名した(前記の表11を参照)。
【0169】
グルコースなどの糖質基質から脂肪酸または脂肪酸誘導体を過剰産生するように別々に操作された6種の組換え大腸菌株(下記の表14を参照)を、ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する菌株(下記の表15を参照)を作り出す目的で、プラスミドpAS.023またはpEP.125のいずれかに形質転換導入した。脂肪酸または脂肪酸誘導体を過剰産生する菌株は、ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する菌株における新たな化合物を容易に同定するための対照菌株としての役割も果たした。脂肪酸または脂肪酸誘導体を過剰産生するこれらの菌株について、本明細書では簡潔に説明しているが、これは限定的であると解釈されるべきではない。菌株ALcV334のゲノムは以下の通りに作り出した:fadE(アシル-CoAデヒドロゲナーゼ)遺伝子を欠失させて、チオエステラーゼtesA遺伝子のバリアントを過剰発現させた。ALcV334における遺伝子操作に加えて、菌株XL897のゲノムには以下の操作を含めた:ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ遺伝子および合成脂肪酸生合成オペロン(表1に記載されているいくつかの遺伝子を含む)を過剰発現させ、カルボン酸レダクターゼ(carB)のバリアント;チオエステラーゼ(tesA)のバリアント;アルコールデヒドロゲナーゼ(AlrA);3-ケト-アシル-ACPシンターゼ(fabB)のバリアント;および転写調節因子(fadR)を含むいくつかのオペロンを組み込んだ。菌株DAM1のゲノムは以下の通りに操作した:アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(fadE)遺伝子を欠失させて、大腸菌チオエステラーゼ(tesA)およびアシル-CoAシンターゼ(fadD)遺伝子を過剰発現させた。
【0170】
菌株stNH1293、KASH286およびstNT29のゲノムは、以下の通りに操作した:アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(fadE)遺伝子を欠失させて、転写調節因子(fadR)および合成脂肪酸生合成オペロンを過剰発現させた。加えて、菌株stNH1293には、植物性チオエステラーゼ、アシルキャリアータンパク質(acp)遺伝子およびアセチル-CoAカルボキシラーゼ(acc)遺伝子複合体を発現するプラスミドも含めた。菌株KASH286には、エステルシンターゼのバリアントを発現するプラスミドを含めた。菌株stNT29には、アシルACPレダクターゼ(AAR)のバリアント、アルコールデヒドロゲナーゼ(AlrA)、アシルキャリアータンパク質(acp)およびアセチル-CoAカルボキシラーゼ(acc)遺伝子複合体を発現するプラスミドを含めた。
【0171】
(表14)脂肪酸または脂肪酸誘導体を過剰産生する組換え大腸菌株
【0172】
ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生するように操作された菌株(前記)を、続いて、実施例1および2に記載したように、それらがグルコースなどの再生可能な原料からω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する能力に関して分析した。ω-ヒドロキシル化脂肪酸、脂肪酸メチルエステルおよび脂肪アルコールは、実施例3および5に記載したように同定した。
【0173】
(表15)再生可能な糖質原料からのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生のための、cyp153A(G307A)-RedRhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株
【0174】
(表16)組換え大腸菌株によってグルコースから産生されたω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体
* 三重反復試験
【0175】
対照菌株と比較して(前記の表14を参照)、ω-ヒドロキシ脂肪酸、ω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルおよびα,ω-ジオールに対応するcyp153A-RedRhF融合タンパク質(前記の表15を参照)を発現するすべての菌株において、(実施例5に記載したようにして)新たなピークが同定された(図14A~14Cも参照)。表16は、これらの組換え株によってグルコースから20時間以内に産生されたω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の量を示している。表16に見てとれるように、組換え宿主細胞によって形成されたω-ヒドロキシ脂肪酸誘導体の量は有意であった。特に、ω-ヒドロキシ脂肪酸の産生は極めて効率的であることが見いだされた。菌株stEP675によって産生されたω-ヒドロキシ脂肪酸がほぼ上清のみに見いだされたこと(図15参照)は、細胞がそれらの産物を上清中に放出したことを示しており、注目に値する。図16は、菌株stEP675およびstEP682によって産生されたω-ヒドロキシ脂肪酸の組成を示している。菌株stEP682によって産生された存在量が最も多かったω-ヒドロキシ脂肪酸は、12-ヒドロキシドデカン酸(79%)であった。14-ヒドロキシテトラデカン酸(42%)は、stEP675によって産生された、存在量が最も多いω-ヒドロキシ脂肪酸であった。
【0176】
全体として、菌株stEP675は以下のω-ヒドロキシ脂肪酸を産生した:12-ヒドロキシドデセン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデセン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデセン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、および18-ヒドロキシオクタデセン酸(図14A参照)。菌株stEP682は、以下のω-ヒドロキシ脂肪酸を産生した:12-ヒドロキシドデセン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデセン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデセン酸、および16-ヒドロキシヘキサデカン酸。菌株stEP677は、ω-ヒドロキシ脂肪酸に加えて、以下のω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルも産生した:12-ヒドロキシドデカン酸メチルエステル、14-ヒドロキシテトラデカン酸メチルエステル、および16-ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステル(図14Bを参照)。菌株stEP684は、ω-ヒドロキシ脂肪酸に加えて、以下のω-ヒドロキシ脂肪酸メチルエステルも産生した:14-ヒドロキシテトラデカン酸メチルエステル、16-ヒドロキシヘキサデセン酸メチルエステル、および16-ヒドロキシヘキサデカン酸メチルエステル。菌株stEP676は、以下のα,ω-ジオールを産生した:1,12-ドデセンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデセンジオール、および1,16-ヘキサンデカンジオール(図14C)。菌株stEP685は以下のα,ω-ジオールを産生した:1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデセンジオール、および1,16-ヘキサンデカンジオール。
【0177】
注目されることとして、本実施例では、CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質の発現と組合せた場合に脂肪酸誘導体を過剰産生するように操作された大腸菌株が、唯一の炭素源としてのグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を効率的に産生することが示された。加えて、ω-ヒドロキシル化脂肪酸は発酵ブロス中に効率的に分泌され(すなわち、産生細胞または宿主細胞は産物を発酵ブロス中に分泌する)、これは本方法の望ましい特徴である。
【0178】
実施例7:組換え大腸菌株によるグルコースからのα,ω-二酸の産生
本実施例では、cyp153A P450オキシゲナーゼをレダクターゼドメインおよびアルコールオキシダーゼおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼと融合させたキメラ性ハイブリッドタンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースなどの再生可能な糖質原料からのα,ω-二酸の産生を実証する。
【0179】
アルコールオキシダーゼalkJ(アクセッション番号CAB54054)(配列番号:66)およびアルデヒドデヒドロゲナーゼalkH(アクセッション番号CAB51050)(配列番号:68)をコードする遺伝子を、シュードモナス・プチダATCC 29347のゲノムDNAから増幅させて、この2つの遺伝子がオペロンを形成し、かつオペロンの転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、pACYC誘導体ベクター(p15aレプリコン、カナマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。その結果得られたプラスミドをpEP.126と命名した(前記の表11を参照)。プラスミドpEP126をプラスミドpAS.023(前記の表11を参照)とともに菌株AlcV334(前記の表14を参照)に形質転換導入して、菌株sEP690を得た。この菌株を、実施例1および2に記載したように、それがグルコースからα,ω-二酸を産生する能力に関して分析した。図17に見てとれるように、対照菌株AlcV334と比較して、sEP690ではいくつかの新たなピークが同定された。これらのピークは、α,ω-二酸およびα,ω-ビス(トリメチルシリル)脂肪酸エステルの誘導体化形態であると同定された。α,ω-ビス(トリメチルシリル)脂肪酸エステルのイオン断片化パターンは、α,ω-ジオールの誘導体化形態であるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)脂肪アルコールと極めて類似していた(実施例3参照)が、ただし例外として、α,ω-ビス(トリメチルシリル)脂肪酸エステルがm/z=103のイオンを生じなかった。このため、このイオンは、α,ω-ビス(トリメチルシロキシ)脂肪アルコールを、α,ω-ビス(トリメチルシリル)脂肪酸エステル(ならびに、以下に記載しているように下記のω-1、ω-2およびω-3トリメチルシロキシ脂肪アルコール)と識別するための重要な情報となる。
【0180】
菌株stEP690によって産生された主要な化合物は、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデセン二酸、1,14-テトラデカン二酸、1,16-ヘキサデセン二酸、1,16-ヘキサデカン二酸、1,18-オクタデセン二酸であった(図17参照)。この菌株によって産生された、存在量が最も多かった化合物は、RT 13.367分の1,14-テトラデカン二酸であった。この化合物のBSTFA誘導体の後の質量スペクトルは、図18Aに示されている。この化合物の分子イオンはm/z=387(M-CH3)であり、その断片化パターンは図19に示されている。1,14-テトラデカン二酸ビス(トリメチルシリル)エステルの同定は、その質量スペクトルおよび保持時間を基準標準物質1,14-テトラデカン二酸のBSTFA誘導体化後のものと比較することによってさらに裏づけられた(図18B)。
【0181】
表16は、菌株sEP690によってグルコースから20時間以内に産生されたα,ω-二酸の量を示しており、それはほぼ550g/Lであった。本実施例では、CYP153A-RedRhFハイブリッド融合タンパク質の発現と組合せ、かつアルコールオキシダーゼ(配列番号:67)およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号:69)の発現と組合せた場合に脂肪酸誘導体を過剰産生するように操作された大腸菌株が、唯一の炭素源としてのグルコースからα,ω-二酸を効率的に産生したことが示された。
【0182】
実施例8:バチルス・メガテリウム由来のcyp102A1を発現する大腸菌株による、末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸の産生
この実験の目的は、バチルス・メガテリウム由来のシトクロムP450 cyp102A1のF87Aバリアント(P450-BM3)を発現する遺伝的に改変された宿主菌株を用いることによって、インビボでω-ヒドロキシル化脂肪酸またはα,ω-二酸を産生させることが可能であるか否かを調べることであった。このcyp102A1バリアントを発現する組換え大腸菌株を用いることによって、少量の末端近傍ヒドロキシル化(ω-1、ω-2、ω-3、ω-4、ω-5)脂肪酸の産生が可能であることが見いだされた。しかし、同じ大腸菌株を使用することによって、ω-ヒドロキシ脂肪酸またはα,ω-二酸を産生させることは不可能であった。
【0183】
位置87におけるフェニルアラニンがアラニン(F87A)によって置き換えられている、バチルス・メガテリウム由来のcyp102A1遺伝子のバリアント(P450-BM3)をコードする遺伝子は、B.メガテリウムのゲノムDNA(アクセッション番号AAA87602;配列番号:61)からのクロスオーバーPCRによって作り出した。増幅されたDNAを、遺伝子の転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、pCL派生ベクター(SC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)およびpACYC派生ベクター(p15aレプリコン、カナマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。その結果得られたプラスミド、pSN.012およびpSN.009(下記の表17を参照)を、脂肪酸を過剰産生する菌株AlcV334(前記の表14および前記の実施例6を参照)に形質転換導入して、菌株sSN.012およびsSN.013を得た(下記の表18を参照)。続いて、これらの菌株を、実施例1および2に記載したように、それらがグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸を産生する能力に関して分析した。対照菌株AlcV334と比較して、いずれの菌株においても小さな新たなピークが同定された(BSTFA誘導体化の後のsSN.012については図20に示されている)。RT 7.195と7.510との間、および8.122と8.414との間の新たなピークの質量スペクトルの断片化パターンは、ω-ヒドロキシ脂肪酸(前記の実施例3参照)と合致しなかったが、それらは末端近傍のω-1、ω-2、ω-3、ω-4およびω-5位でヒドロキシル化された脂肪酸の予想される断片化パターンとは一致した。末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸は、ω-ヒドロキシ脂肪酸(誘導体化された12-ヒドロキシドデカン酸については図8Aを参照)と類似のイオン断片化パターンを示したものの、これらの化合物は、誘導体化後に、ヒドロキシル化部位に応じて、m/z=117(ω-1)、131(ω-2)、145(ω-3)、159(ω-4)または173(ω-5)にさらなるイオン断片を示している(図21A~21Eを参照)。鎖長に関しては、m/z=117および345のイオンの組合せが、誘導体化後の11ω-1)-ヒドロキシドデカン酸に関して特徴的なイオンである。同様に、m/z=131および331、m/z=145および317、m/z=159および303、m/z=173および289のイオン対の組合せは、ω-2、ω-3、ω-4およびω-5ヒドロキシドデカン酸に関して特徴的なイオンである。すなわち、RT 7.195~7.510のピークは、7(ω-5)-、8(ω-4)-、9(ω-3)-、10(ω-2)-および11(ω-1)-ヒドロキシドデカン酸として同定され、RT 8.122~8.414のピークは、9(ω-5)-、10(ω-4)-、11(ω-3)-、12(ω-2)-および13(ω-1)-ヒドロキシテトラデカン酸として同定された。また、菌株sSN.012およびsSN.013のGC/MSクロマトグラフをα,ω-二酸の存在に関しても注意深く検査したが、これらの二官能性分子を検出することはできなかった。
【0184】
結論として、本実施例では、B.メガテリウム由来のcyp102A1のF87Aバリアントの発現と組合せた場合に脂肪酸を過剰産生するように操作された大腸菌株はω-ヒドロキシル化脂肪酸を産生しないが、微量のω-1、ω-2、ω-3、ω-4およびω-5ヒドロキシ脂肪酸を産生することが示されている。B.メガテリウム由来のcyp102A1におけるF87A点突然変異は酵素のインビトロでの基質特異性を変化させ、その結果、この酵素はドデカン酸またはテトラデカン酸をほぼω位のみでヒドロキシル化するようになることが報告されている(Oliver et al. (1997) Biochem. 36: 1567を参照)。また、枯草菌由来のP450-BM3(cyp102A3)およびP450-BM3(F87A)(cyp153(F87A))が、14-ヒドロキシテトラデカン酸(hydroxy tetradeconoic acid)および1,14,テトラデカン二酸を産生することも報告されている(例えば、WO 2012/071439号を参照)。しかし、このことを確認することはできず、今回の知見とは矛盾するように思われる。さらに、cyp102A1の類縁ホモログである枯草菌のcyp102A3の基質特異性を改変することに関する最近の報告も、本明細書において提示されたデータを支持するものである(Lentz et al. (2004) J. Biotechnol. 108:41およびLentz et al. (2006) ChemBioChem. 7:345を参照)。すなわち、cyp102A3における同等なフェニルアラニン残基のバリンへの突然変異(F88V)は、脂肪酸を主としてω-1、ω-2、ω-3およびω-4位でヒドロキシル化し、ドデカン酸またはヘキサデカン酸を基質として用いるとインビトロでω-ヒドロキシル化産物は全く観察されなかった。したがって、B.メガテリウム由来のcyp102A1および枯草菌ユリアのcyp102A3の上記のバリアントは、後者がω-ヒドロキシ脂肪酸を中間体として必要とすることから、ω-ヒドロキシ脂肪酸またはα,ω-二酸を産生するためには適さないと結論づけることができる。
【0185】
(表17)末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生のために構築した発現プラスミド
【0186】
(表18)再生可能な糖質原料からの末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生のための、cyp102Aタンパク質を発現する組換え大腸菌株
【0187】
実施例9:バチルス・リケニフォルミス由来のcyp102A7を発現する大腸菌株による、グルコースからのω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシル化脂肪酸の効率的な産生
本実施例の目的は、バチルス・リケニフォルミス由来のシトクロムP450-BM3型オキシゲナーゼcyp102A7を発現する大腸菌株を、末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸の産生に関して検証することとした。データにより、シトクロムP450-BM3型オキシゲナーゼcyp102A7を発現する組換え大腸菌株による、ω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシ脂肪酸および脂肪アルコールの効率的な産生が実証された。このことは驚くべきであり、予想外であった。
【0188】
バチルス・リケニフォルミス由来のP450-BM3型オキシゲナーゼCYP102A7をコードするyrhJ遺伝子(Dietrich et al. (2008) Appl. Microbiol. Biotechnol. 79: 931)を、バチルス・リケニフォルミスATCC14580のゲノムDNA(アクセッション番号AAU41718;配列番号:63)から増幅させた。この遺伝子を、誘導性Ptrcプロモーターがその転写を制御するように、pCL1920派生物(SC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)にクローニングした。加えて、この遺伝子を、誘導性Ptrcプロモーターが、yrhJ、チオエステラーゼ(thioesterae)(tesA)のバリアント、アルコールデヒドロゲナーゼ(AlrA)、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ(fabB)のバリアントおよび転写調節因子fadRによって(しかも、この順序で)構成されるオペロンを制御するように、pCL1920派生物にもクローニングした。これらのプラスミドをそれぞれpHM105およびpSL170.02と命名し、大腸菌株LC972およびXL959に形質転換導入した(前記の表14を参照)。これらの菌株について、本明細書において簡潔に説明する(表14も参照)。菌株LC972のゲノムは以下の通りに操作した:アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(fadE)遺伝子を欠失させた。ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ、チオエステラーゼ(thioesterae)(tesA)のバリアントの2つのコピー、および合成脂肪酸生合成オペロン(表1に記載されているいくつかの遺伝子からなる)を過剰発現させた。菌株XL959は、カルボン酸レダクターゼcarBのバリアントを発現するpACYC誘導体プラスミドを有するLC972であった。4種の新たな組換え大腸菌株XL960~XL963(前記の表18を参照)を、インキュベーション温度として35℃を用いた点を除いて実施例1および2に記載したように、それらがグルコースからヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する能力に関して分析した。これらの菌株はいずれも、ω-ヒドロキシル化脂肪酸も脂肪酸誘導体も全く産生しなかった。しかし、すべての菌株が、実施例8に記載したような末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生した。図22Aは、菌株XL961からの、BFTSA誘導体化の後のクロマトグラフを示している。ピークは、実施例8に記載したようにして、以下のω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシ脂肪酸として同定された:11-ヒドロキシドデカン酸(RT=10.563)、10-ヒドロキシドデカン酸(RT=10.512)、9-ヒドロキシドデカン酸(RT=10.412)、13-ヒドロキシテトラデカン酸(RT=11.279)、12-ヒドロキシテトラデカン酸(RT=11.233)、11-ヒドロキシテトラデカン酸(RT=11.133)、15-ヒドロキシヘキサデカン酸(RT=11.679)、14-ヒドロキシヘキサデカン酸(RT=11.623)、および13-ヒドロキシヘキサデカン酸(RT=11.439)。不飽和末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸に対応する可能性が非常に高い小さなピークも検出された。
【0189】
図22Bは、菌株XL963からの、BFTSA誘導体化の後のクロマトグラフを示している。ピークは、以下のω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシ脂肪アルコールとして同定された:RT 8.303、8.480および8.572分でのピークはそれぞれ7、8および9-ヒドロキシデカノールであり、RT 9.264、9.653および9.905のピークはそれぞれ9、10および11-ヒドロキシドデカノールであり、RT 10.889、11.044および11.124のピークはそれぞれ11、12および13-テトラデカノールであった。9、10および11-ヒドロキシドデカノールを同定するために用いた詳細な質量スペクトルおよびイオン断片化パターンは、図23A、23Bおよび23Cに示されている。実施例8において同様の菌株がごく微量の末端近傍ヒドロキシル化脂肪酸しか産生しなかったことを考慮すると、4種の菌株すべてが、これらの産物をかなりの量(最大でほぼ1.6g/L)で産生したことは驚くべきであり、予想外であった。図24Aは、菌株XL960およびXL961によって産生されたω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシル脂肪酸の量を示しており、図24Bは、菌株XL962およびXL963によって産生されたω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシル脂肪アルコールの量を示している。このように、本実施例では、B.リケニフォルミス由来のcyp102A7の発現と組合せた場合に脂肪酸誘導体を過剰産生するように操作された大腸菌株が、唯一の炭素源としてのグルコースからω-1、ω-2およびω-3-ヒドロキシル脂肪酸誘導体を効率的に産生したことが示されている。
【0190】
実施例10:組換え大腸菌株による、グルコースからのα,ω-ジエステルの産生
アシル-CoAシンテターゼ/リガーゼ遺伝子またはトランスフェラーゼ遺伝子を、pCL派生ベクター中のcyp153A-RedRhF融合タンパク質をコードする遺伝子の下流に、この2つの遺伝子がオペロンを形成し、かつオペロンの転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるようにクローニングする。適したcyp153AおよびRedRhF融合パートナーの例は、表2Aおよび2Dに提示されている。適したアシル-CoAシンテターゼ/リガーゼまたはトランスフェラーゼの例は、表7に提示されている。その結果得られたプラスミドを、脂肪酸メチルエステルを産生する大腸菌株、例えば、KASH286に形質転換導入する(前記の実施例6および表14を参照)。この菌株を、実施例1および2に記載したように、それがグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する能力に関して分析する。この菌株はα,ω-ジエステルを産生すると予想される。
【0191】
実施例11:組換え大腸菌株による、グルコースからのω-アミノ脂肪酸誘導体の産生
cyp153A-RedRhF融合タンパク質をコードする遺伝子、アルコールオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、およびアミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼをコードする遺伝子を、この3種の遺伝子がオペロンを形成し、かつオペロンの転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、pCL派生ベクター中にクローニングする。適したcyp153AおよびRedRhF融合パートナーの例は、表2Aおよび2Dに提示されている。適したアルコールオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼの例は表3Aに提示されており、適したアミノトランスフェラーゼまたはトランスアミナーゼの例は表4に提示される。その結果得られたプラスミドを、脂肪酸を産生する大腸菌株、例えばstNH1293に形質転換導入する(前記の実施例6および表14を参照)。この菌株を、実施例1および2に記載したように、それがグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する能力に関して分析する。この菌株はω-アミノ脂肪酸を産生すると予想される。または、その結果得られたプラスミドを、脂肪酸メチルエステルを産生する大腸菌株、例えばKASH286に形質転換導入する(前記の実施例6および表14を参照)。この菌株を、実施例1および2に記載したように、それがグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する能力に関して分析する。この菌株はω-アミノ脂肪酸メチルエステルを産生すると予想される。
【0192】
実施例12:多様な原料からのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生
脂肪酸生合成は遍在的な性質を持つことから、本明細書において提供された実施例を、糖質の範囲を越える原料を天然に利用する他の生物においてさらに実行することができる。例えば、これらの経路を、光合成微生物において発現させて、CO2からのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生を可能にすることができると考えられる。具体的には、光バイオリアクターまたはオープンポンドなどにおいて適した条件下で増殖させた場合に培養物から単離しうると考えられるω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生すると考えられるシアノバクテリウムの細胞質中で、それらを発現させることができると考えられる。または、これらの経路を、一酸化炭素を利用する生物クロストリジウム(Clostridia)属のものなどにおいて発現させうることも、当業者には明らかであろう。例えば、これらの操作された微生物を、適切な条件下で(例えば、製鋼所の煙道ガスからの、または天然ガスもしくはバイオマスなどの有機材料の再構成物に由来する合成ガスからのCOが供給されるリアクターにおいて)増殖させると、それらは培養物から回収しうるω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生すると考えられる。
【0193】
実施例13:さまざまなCYP153A-レダクターゼハイブリッド融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースからのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生
本実施例では、さまざまなCYP153A P450オキシゲナーゼドメインをさまざまなレダクターゼドメインと融合させたさらなるキメラ性ハイブリッドタンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースなどの再生可能な糖質原料からのω-ヒドロキシ脂肪酸の産生を示す。
【0194】
この実験では、3種の微生物由来のCYP153A P450触媒タンパク質および4種の微生物由来のレダクターゼドメインタンパク質をコードする遺伝子を、ゲノムDNAから増幅させるか、またはコドンが最適化されたDNAとして合成する(以下の表19を参照)。レダクターゼドメインタンパク質には、RedRhF型ならびにBM3型タンパク質を含めた。キメラ性ハイブリッドタンパク質をコードする遺伝子を集合させて、実施例5(前記)に記載したように、pCL1920派生ベクター中にクローニングした。その結果得られたプラスミドを菌株AlcV334に形質転換導入した(表14を参照)。続いて、ω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生するように操作されたこれらのさらなる6種の菌株を、実施例1および2に記載したように、それらがグルコースなどの再生可能な原料からω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を産生する能力に関して分析した。以下の表20は、これらの菌株によって32℃で18時間以内に産生されたω-ヒドロキシル化脂肪酸の量を、StEP675と比較して示している。StEP675は、M.アクアエオレイ由来のCYP153Aおよびロドコッカス属種NCIMB 9784由来のレダクターゼドメインからなるキメラ性タンパク質を発現する菌株AlcV 334である(実施例6を参照)。以下の表20に見てとれるように、CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合タンパク質を発現するほとんどの菌株は、唯一の炭素源としてのグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を効率的に産生した。結論として、CYP153Aファミリーの種々のメンバーおよびRedRhF型またはBM3型のレダクターゼファミリーの種々のメンバーからなるキメラ性CYP153A-レダクターゼハイブリッド融合タンパク質は、大腸菌において発現させた場合に、唯一の炭素源としてのグルコースからω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体を効率的に産生させた。
【0195】
(表19)再生可能な糖質原料からのω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体の産生のための、ハイブリッドcyp153A-レダクターゼ融合タンパク質を発現するさらなる組換え大腸菌株
【0196】
(表20)さらなる組換え大腸菌株によってグルコースから産生されたω-ヒドロキシル化脂肪酸誘導体
【0197】
以下のプロトコールおよび方法は、実施例14~19に関するものである。
【0198】
プロトコールおよび方法
ライブラリーのスクリーニング
本明細書に記載されたプロトコールはすべて、培養物を増殖させるための96ウェルプレート‐master block‐2mLシステム(Greiner Bio-One, Monroe, NCまたはCorning, Amsterdam, Netherlands)、および培養ブロスから脂肪酸種を抽出するためのプレート(Costar, Inc.)に依拠したものである。以下に提示するプロトコールは、発酵条件の例である。代替的なプロトコールを用いて脂肪酸種の産生を評価することもできる。
【0199】
32℃ Plim培養プロトコール:
(96ウェルプレート中で増殖させたLB培養物からの)30μLのLB培養物を用いて290μLのPlim培地(表21、後述)に接種し、続いてそれを32℃で振盪しながらおよそ16時間インキュベートした。一晩播種物(overnight seed)の40μLを用いて、360μLのPlim培地に接種した。32℃で2時間増殖させた後に、培養物をIPTG(最終濃度1mM)によって誘導した(表21、後述)。特記されない限り、培養物を続いて32℃で振盪しながら20時間インキュベートし、その後にそれらを、以下に詳述する標準的な抽出プロトコールに従って抽出した。
【0200】
35℃ Nlim培養プロトコール:
(96ウェルプレート中で増殖させたLB培養物からの)40μLのLB培養物を用いて360μLのLB培地(表21、後述)に接種し、続いてそれを32℃で振盪しながらおよそ4時間インキュベートした。LB播種物(seed)の40μLを用いて、360μLのNlim培地に接種した。2時間32℃で増殖させた後に、培養物をIPTG(最終濃度1mM)によって誘導した(表21、後述)。特記されない限り、培養物を続いて35℃で振盪しながら20時間インキュベートし、その後にそれらを、以下に詳述する標準的な抽出プロトコールに従って抽出した。
【0201】
(表21)培地の名称および配合
【0202】
脂肪酸種の標準的な抽出プロトコール:
抽出しようとする各ウェルに対して、80μLの1M HClを添加し、続いて400μLの酢酸ブチル(内部標準物質としての500mg/Lのペンタデカノールとともに)を添加した。続いて96ウェルプレートを、プレートシーラー(ALPS-300ヒーター;Abgene, ThermoScientific, Rockford, IL)を用いて熱溶着させて、MIXMATE混合機(Eppendorf, Hamburg, Germany)を用いて2000rpmで15分間振盪させた。振盪の後に、プレートを室温にて4500rpmで10分間遠心処理して(Allegra X-15R、ローターSX4750A、Beckman Coulter, Brea, CA)、水層と有機層を分離した。有機層の100μLを96ウェルプレートに移し(ポリプロピレン製、Corning, Amsterdam, Netherlands)、100μLのBSTFAで誘導体化した。その後、プレートを熱溶着させ、w-OH FFA法を用いるGC-FIDによって評価するまで-20℃で保存した。w-OH FFA法は以下の通りに実施した:1μLの試料を、スプリット1-20で、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたAgilent 7890A GC Ultraデバイス(Agilent, Santa Clara, CA)の中の分析用カラム(DB-1、10m×180μm×膜厚0.2μM、JW 121-101Aより入手可能)に注入した。機器はC10~C18脂肪酸およびω-ヒドロキシ脂肪酸を検出および定量するように設定した。上記に詳述したプロトコールは標準的な条件を表しており、分析結果を最適化するために必要に応じて改変してもよい。
【0203】
エラープローンライブラリーの構築
エラープローンライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。1つの例では、ベクター中に制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター骨格を調製し、DNAインサートにおける多様性の創出は、ミスマッチヌクレオチドの組み入れを促進する条件下でのDNA鋳型からのPCR増幅によって行った。1つのアプローチでは、ベクター骨格および多様性を有するDNAインサートのクローニングを、INFUSION Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を製造元のプロトコールに従って用いて行った。
【0204】
飽和ライブラリーの構築
飽和ライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。1つの例では、ベクター中に制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター骨格を調製し、DNAインサートにおける多様性の創出は縮重プライマーを用いて行った。1つのアプローチでは、ベクター骨格および多様性を有するDNAインサートのクローニングを、INFUSION Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を製造元のプロトコールに従って用いて行った。
【0205】
組合せライブラリーの構築
ω-OH脂肪酸誘導体種の生産に関してさらに改良されたCYP153-レダクターゼハイブリッド融合ポリペプチドバリアント(例えば、CYP153A-RedRhFハイブリッドタンパク質バリアント)を得るために、有益であると同定された突然変異を組合せた。組合せライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。1つの例では、ベクター中に制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター骨格を調製し、DNAインサートにおける多様性の創出は、所望の突然変異を導入するためのプライマーを用いて行った。上記のように、1つのアプローチでは、ベクター骨格および多様性を有するDNAインサートのクローニングを、INFUSION Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を製造元のプロトコールに従って用いて行った。組合せライブラリーは、トランスファーPCR(tPCR)プロトコール(Erijman et al. (2011) J. Structural Bio.175:171-177)を用いて作製することもできる。
【0206】
ライブラリーのスクリーニング
エラープローンライブラリー、飽和ライブラリーまたは組合せライブラリーにおいてライブラリーの多様性を生じさせたら、それを上記の方法の1つを用いてスクリーニングした。2種類のヒットが同定された:(1)ω-ヒドロキシ脂肪酸の量の増加(ωOH FFA力価);および/または(2)脂肪酸からω-ヒドロキシ脂肪酸への変換の増加。各ヒット中のハイブリッドcyp153A-RedRhFタンパク質バリアントにおける突然変異を、当業者によって慣行的に使用されている標準的な手法を用いるシークエンシングによって同定した。後述の表23、24および25は、飽和ライブラリーにおいて有益であると同定された突然変異(ヒット)を列記している。
【0207】
実施例14:ライブラリーのスクリーニングのための菌株およびプラスミドの構築
本実施例では、飽和ライブラリーまたはコンビナトリアル突然変異誘発ライブラリーのスクリーニングのために構築した菌株およびプラスミドについて説明する。
【0208】
マリノバクター・アクアエオレイ由来のCYP153A(G307A)P450触媒タンパク質、ならびにロドコッカス属種NCIMB9784由来のP450RhFのc末端FMNおよびFe/Sを含有するレダクターゼドメインによって構成されるハイブリッド融合タンパク質をコードする遺伝子を、以下の通りに作り出した:cyp165A(G307A)_Maqu遺伝子をゲノムDNAから増幅させて、コドンが最適化された合成P450RhFレダクターゼドメインと、クロスオーバーPCRによって融合させた。その結果得られた融合遺伝子(配列番号:5)を、その転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御されるように、pACYC派生物(すなわち、p15Aレプリコン、カナマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。このプラスミドをpEP125と命名した(下記の表22を参照)。CYP153A(G307A)-Red450RhFハイブリッド融合タンパク質をコードする遺伝子もpEP125から増幅させて、その転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御され、かつそれが植物性チオエステラーゼ(fatB1)、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ(fabB)のバリアント、および転写調節因子(fadR)をコードする遺伝子を有するオペロンを形成するように、pCL1920派生ベクター(SC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。このプラスミドをpLC81と命名した(下記の表22を参照)。
【0209】
さらなるプラスミドを、以下の通りに作り出した:ゲッケイジュ(Umbellularia californica)由来の植物性チオエステラーゼ(fatB1)をコードする遺伝子を、コドンが最適化されたDNAとして合成し、その転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御され、かつそれがアセチル-CoAカルボキシラーゼ(accDACB)、ビオチンリガーゼ(birA)およびアシル-キャリアータンパク質をコードする遺伝子を有するオペロンを形成するように、pCL1920派生ベクター(SC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。このプラスミドをpNH305と命名した(下記の表22を参照)。プラスミドpAS033は、pNH305におけるfatB1を、シロイヌナズナ由来のコドンが最適化された合成植物性チオエステラーゼ(fatA3)によって置き換えることによって作り出した(下記の表22を参照)。プラスミドpEP146は、pLC81におけるfatB1を、シロイヌナズナ由来のコドンが最適化された合成植物性チオエステラーゼ(fatA3)によって置き換えることによって作り出した(下記の表22を参照)。pEP146は、repAタンパク質によってコードされる突然変異もプラスミド中に保有していた。
【0210】
プラスミド形質転換のために用いる基本菌株は、GLP077およびBZ128とした。手短に述べると、基本菌株GLPH077のゲノムを以下の通りに操作した:アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(fadE)遺伝子を欠失させて、転写調節因子(fadR)および合成脂肪酸生合成オペロンを過剰発現させた。手短に述べると、基本菌株BZ128のゲノムを以下の通りに操作した:fadE(アシル-CoAデヒドロゲナーゼ)遺伝子を欠失させて、合成脂肪酸生合成オペロン、β-ヒドロキシ脂肪アシル-ACPデヒドラターゼ(fabZ)、およびチオエステラーゼ(tesA)のバリアントを過剰発現させた。加えて、この菌株は以前に、トランスポゾン突然変異誘発およびN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)突然変異誘発ならびにスクリーニングにも供されている。
【0211】
(表22)ライブラリーのスクリーニングのために用いたプラスミド
【0212】
ハイブリッドcyp153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質を、宿主細胞における発現によってω-OH脂肪酸誘導体が産生されうるか否かを調べるために検討した。配列番号:5を発現する微生物は、グルコースから1g/Lを上回るω-OH脂肪酸誘導体を産生することができた。このため、この操作された酵素を、さらなる進化試験のために選択した。
【0213】
実施例15:cyp153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質のP450触媒ドメインの飽和ライブラリー
CYP153A-Red450RhF融合タンパク質のP450触媒ドメインの完全飽和ライブラリーを構築し、CYP153A(G307A)-Red450RhF(すなわち、鋳型ポリペプチド)を上回る改善を示すバリアントに関してスクリーニングした。G307A(位置307におけるグリシン残基がアラニンで置き換えられている)は、CYP153Aのω-ヒドロキシラーゼ活性を向上させる有益な突然変異である(Honda Malca et al. (2012) Chem. Commun. 48:5115を参照)。ヒットに関する選択基準は、(1)ω-ヒドロキシ脂肪酸の量(ωOHFFA力価)の増大;および/または(2)脂肪酸のω-ヒドロキシ脂肪酸への変換の増加とした。
【0214】
飽和ライブラリーの調製には、当業者に周知の標準的な手法を用いた。プラスミドpEP125およびpLC81(前記の表22を参照)を用いて、完全飽和ライブラリーを作製した。3種の飽和ライブラリーをスクリーニングした:第1のライブラリーに関してはpEP125をpNH305とともに菌株GLPH077に形質転換導入し、第2のライブラリーに関してはpLC81をBZ128に形質転換導入し、第3のライブラリーに関してはpEP125をpAS.033とともにGLPH077菌株に形質転換導入した。第1および第2のライブラリーは特にω-ヒドロキシドデカン酸形成の点でのバリアントの改良に関してスクリーニングし、第3のライブラリーは特にω-ヒドロキシヘキサデセン酸形成の点でのバリアントの改良に関してスクリーニングした。ライブラリーは、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。改良されたバリアントを、以下の表23から25まで(下記)に示している。特に、位置141でのバリアントが複数回同定され、ω-ヒドロキシドデカン酸およびω-ヒドロキシヘキサデセン酸の両方の形成を有意に改善させる酵素であることが見いだされた。
【0215】
(表23)CYP153A(G307A)-Red450RhFの触媒ドメインの第1の部位飽和ライブラリーからの、改良されたバリアントの概要
FIOC:対照に比しての改良の倍数;対照は太字にしている
【0216】
(表24)CYP153A(G307A)-Red450RhFの触媒ドメインの第2の部位飽和ライブラリーからの、改良されたバリアントの概要
FIOC:対照に比しての改良の倍数;対照は太字にしている
【0217】
(表25)CYP153A(G307A)-Red450RhFの触媒ドメインの第3の部位飽和ライブラリーからの、改良されたバリアントの概要
FIOC:対照に比しての改良の倍数;対照は太字にしている
【0218】
実施例16:CYP153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質のレダクターゼドメインの部分的部位飽和ライブラリー
ハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質のレダクターゼドメインの部分的飽和ライブラリー(10番目のアミノ酸毎に突然変異させた)を構築し、触媒P450 CYP153Aドメインの部位飽和突然変異誘発ライブラリーにおいて同定されたバリアントの1つであるCYP153A(V141I、A231T、G307A)-Red450RhF(配列番号:32)を上回る改善を示すバリアントに関してスクリーニングした。ヒットに関する選択基準は、(1)ω-ヒドロキシドデカン酸の量(ωOH FFA力価)の増大;および/または(2)ドデカン酸のω-ヒドロキシドデカン酸への変換の増加とした。飽和ライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。ライブラリーに関しては、CYP153A(V141I、A231T、G307A)-Red450RhFを保有するpLC81をBZ128に形質転換導入した。ライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。改良されたバリアントを、以下の表26に示している。特に、バリアントA796V(配列番号:42)およびP666Aは、酵素を有意に改善した。
【0219】
(表26)CYP153A(V141IA231T G307A)-Red450RhFのレダクターゼドメインの部分的飽和ライブラリーからの、改良されたバリアントの概要
FIOC:対照に比しての改良の倍数;対照は太字にしている
【0220】
実施例17:CYP153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質のレダクターゼドメインのコンビナトリアルライブラリー
レダクターゼドメインの部分的飽和ライブラリーにおいて同定された有益な突然変異(実施例17)を、CYP153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質をさらに改良するための組合せライブラリーの基盤とした。選択基準は、(1)ω-ヒドロキシドデカン酸(ωOH FFA力価)の量の増大;および/または(2)ドデカン酸のω-ヒドロキシドデカン酸への変換の増加とした。
【0221】
組合せライブラリーは、CYP153A(V141I、A231T、G307A)-Red450RhF(配列番号:32)を保有するpLC81中に構築し、BZ128に形質転換導入した。組合せライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。このライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。改良されたバリアントを、以下の表27に示している。
【0222】
(表27)CYP153A(V141I、A231T、G307A)-Red450RhFのレダクターゼドメインの組合せライブラリーからの、改良されたバリアントの概要
FIOC:対照に比しての改良の倍数;対照は太字にしている
【0223】
実施例18:CYP153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質の触媒・レダクターゼドメインのコンビナトリアルライブラリー
飽和ライブラリーにおいて同定された有益な突然変異(実施例16および17)を、CYP153A(G307A)-Red450RhF融合タンパク質をさらに改良するための組合せライブラリーの基盤とした。選択基準は、(1)ω-ヒドロキシドデカン酸の量(ωOH FFA力価)の増大;および/または(2)fドデカン酸のω-ヒドロキシドデカン酸への変換の増加とした。組合せライブラリーをpLC81中に構築し、BZ128に形質転換導入した。組合せライブラリーの構築には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。ライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。最も改良されたバリアントの上位から2つを、表28に示している。
【0224】
(表28)CYP153A(G307A)-Red450RhFのコンビナトリアルライブラリーからの、最も改良されたバリアント
* 48時間後の力価(mg/L)
【0225】
実施例19:CYP153A(G307A、A796V)-Red450RhFの位置141および309での部位飽和突然変異誘発
位置141における変化は基質特異性に影響を及ぼすことが認められた。このため、これらの2つの位置での部位飽和突然変異誘発を、CYP153A(G307A、A796V)-Red450RhFにおいて実施した。ヒットに関する選択基準は、(1)ω-ヒドロキシヘキサデセン酸の量の増加;および/または(2)ヘキサデセン酸のω-ヒドロキシヘキサデセン酸への変換の増加とした。
【0226】
ライブラリーに関しては、CYP153A(G307A A796V)-Red450RhF(配列番号:38)を保有するpEP146を、BZ128に形質転換導入した。部位飽和ライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。ライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。特に、V141Tを有するバリアント(配列番号:46)は、最も高いω-ヒドロキシヘキサデセン酸力価、およびヘキサデセン酸からの最も高度の変換を示した(図27)。
【0227】
実施例20:改良されたハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースからのω-ヒドロキシル化脂肪酸の高力価産生
本実施例では、改良されたハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースなどの再生可能な糖質原料からのω-ヒドロキシ脂肪酸の高い収量での産生を示す。
【0228】
バリアントハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質をコードする遺伝子(配列番号:46)を、その転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御され、かつそれが植物性チオエステラーゼ(fatA3)、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ(fabB)のバリアント、および転写調節因子(fadR)を有するオペロンを形成するように、pCL1920派生ベクター(改変されたSC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。このプラスミドを菌株L439に形質転換導入して、菌株stEP.798を得た。手短に述べると、基本菌株L439のゲノムに以下の操作を含めた:fadE(アシル-CoAデヒドロゲナーゼ)遺伝子を欠失させて、合成脂肪酸生合成オペロンおよびチオエステラーゼ(tesA)のバリアントを過剰発現させた。加えて、この菌株は以前に、トランスポゾン突然変異誘発およびN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)突然変異誘発ならびにスクリーニングにも供されている。
【0229】
この菌株を、バイオリアクター内で以下の通りに運用した:菌株の細胞バンクバイアルを、培養物のOD読み取り値が1を上回るまで、スペクチノマイシン(115mg/L)を含有するLB振盪フラスコ内で32℃で培養した。この培養物の5% v/v移入を、FA播種培地(2g/Lの塩化アンモニウム、0.5g/Lの塩化ナトリウム、0.3g/Lの一塩基性リン酸カリウム、1mMの硫酸マグネシウム、0.1mMの塩化カルシウム、20g/Lのグルコース、1mL/Lの微量元素溶液、10mg/Lの三塩基性クエン酸鉄一水和物、100mMのビス-トリス緩衝液、および115mgのスペクチノマイシン)に行い、32℃で一晩培養した。続いて、この播種培養物を用いて、調製された生産用のバイオリアクターに接種した。この工程のための最初のバイオリアクター培地は以下のものを含有した:0.5g/Lの塩化アンモニウム、1g/Lの塩化ナトリウム、4g/Lの一塩基性リン酸カリウム、2.2g/Lの硫酸マグネシウム七水和物、140mg/Lの塩化カルシウム二水和物、10mL/Lの微量元素溶液、80mg/Lの三塩基性クエン酸鉄一水和物、0.6mL/Lの微量ビタミン溶液、および5g/Lのコーンスチープ粉末。バイオリアクターへの滅菌後添加物は以下を含んだ:0.2mMのアミノレブリン酸、30g/Lのグルコース、および115mg/Lのスペクチノマイシン。
【0230】
接種の前に、バイオリアクターのパラメーターを安定化させ、制御ループをオンにした‐溶存酸素設定値:30%;温度設定値:29℃;通気設定値:0.5vvm;pH設定値:6.9。バイオリアクターに5% v/vの播種培養物を接種し、培養物の密度がOD 30を上回った時点で1mM IPTGによって誘導した。グルコース複合供給溶液(586g/Lのグルコース、2.2g/Lの硫酸マグネシウム七水和物、0.4g/Lの一塩基性リン酸カリウム、80mg/Lの三塩基性クエン酸鉄一水和物、および10mL/Lの微量元素溶液)を、グルコースが培地から使い果たされた時点で制御装置に指示を行うDOトリガーを用いて、グルコースの最大速度が10g/L(培養物の公称容積に基づく)となるように培養物に供給した。運用の全体を通じてバイオリアクターからの試料採取を行い、72時間の培養後にも採取した。
【0231】
図25は、30.5℃で72時間のうちに菌株stEP.798によって産生されたω-ヒドロキシル化脂肪酸の量を示しており、それは72時間後に16.0g/Lという高い力価に達した。産生されたω-ヒドロキシル化脂肪酸は、ω-ヒドロキシヘキサデセン酸(C16:1)が63.1%、ω-ヒドロキシヘキサデカン酸(C16:0)が26.4%、ω-ヒドロキシテトラデカン酸(C14:0)が7.6%、ω-ヒドロキシテトラデセン酸(C14:1)が1.9%、ならびに少量のω-ヒドロキシドデセン酸(C12:0)およびω-ヒドロキシドデセン酸(C12:1)(C12が1%未満)からなっていた。加えて、stEP.798は、72時間の時点で3.0g/Lの脂肪酸も産生した。結論として、脂肪酸を過剰産生する大腸菌株における改良されたハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質の発現により、再生可能な糖質原料からの高力価でのω-ヒドロキシル化脂肪酸産生が可能になった。
【0232】
実施例21:改良されたハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質を発現する組換え大腸菌株による、グルコースからのα,ω-二酸(dicacid)の高力価産生
本実施例では、改良されたハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質ならびに異種アルコールオキシダーゼ(alkJ)およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ(alkH)を発現する組換え大腸菌株による、グルコースなどの再生可能な糖質原料からのα,ω-二酸(dicacid)の高い収量での産生を示す。
【0233】
バリアントハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質をコードする遺伝子(配列番号:42)を、その転写がIPTG誘導性Ptrcプロモーターによって制御され、かつそれが植物性チオエステラーゼ(fatB1)、アルコールオキシダーゼ(alkJ)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(alkH)、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ(fabB)のバリアント、および転写調節因子(fadR)を有するオペロンを形成するように、pCL1920派生ベクター(改変されたSC101レプリコン、スペクチノマイシン耐性マーカー)中にクローニングした。このプラスミドを菌株L1012に形質転換導入して、菌株L1017を得た。手短に述べると、基本菌株L1012のゲノムに以下の操作を含めた:fadE(アシル-CoAデヒドロゲナーゼ)遺伝子およびadhE(アルコールデヒドロゲナーゼ)遺伝子を欠失させて、合成脂肪酸生合成オペロン、β-ヒドロキシ脂肪アシル-ACPデヒドラターゼ(fabZ)、およびチオエステラーゼ(tesA)のバリアントを過剰発現させた。加えて、この菌株は以前に、トランスポゾン突然変異誘発およびN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)突然変異誘発ならびにスクリーニングにも供されている。
【0234】
この菌株をバイオリアクター内で以下の通りに運用した:菌株の細胞バンクバイアルを、培養物のOD読み取り値が1を上回るまで、スペクチノマイシン(115mg/L)を含有するLB振盪フラスコ内で32℃で培養した。この培養物の2% v/v移入を、FA播種培地(2g/Lの塩化アンモニウム、0.5g/Lの塩化ナトリウム、0.3g/Lの一塩基性リン酸カリウム、1mMの硫酸マグネシウム、0.1mMの塩化カルシウム、20g/Lのグルコース、1mL/Lの微量元素溶液、10mg/Lの三塩基性クエン酸鉄一水和物、100mMのビス-トリス緩衝液、および115mgのスペクチノマイシン)に行い、32℃で一晩培養した。続いて、この播種培養物を用いて、調製された生産用のバイオリアクターに接種した。この工程のための最初のバイオリアクター培地は以下のものを含有した:0.5g/Lの塩化アンモニウム、1g/Lの塩化ナトリウム、4g/Lの一塩基性リン酸カリウム、2.2g/Lの硫酸マグネシウム七水和物、140mg/Lの塩化カルシウム二水和物、10mL/Lの微量元素溶液、80mg/Lの三塩基性クエン酸鉄一水和物、0.6mL/Lの微量ビタミン溶液、および5g/Lのコーンスチープ粉末。バイオリアクターへの滅菌後添加物は以下を含んだ:0.2mMのアミノレブリン酸、30g/Lのグルコース、および115mg/Lのスペクチノマイシン。
【0235】
接種の前に、バイオリアクターのパラメーターを安定化させ、制御ループをオンにした‐溶存酸素設定値:30%;温度設定値:31℃;通気設定値:0.5vvm;pH設定値:6.9。バイオリアクターに5% v/vの播種培養物を接種し、培養物の密度がOD 30を上回った時点で1mM IPTGによって誘導した。グルコース複合供給溶液(586g/Lのグルコース、2.2g/Lの硫酸マグネシウム七水和物、0.4g/Lの一塩基性リン酸カリウム、80mg/Lの三塩基性クエン酸鉄一水和物、および10mL/Lの微量元素溶液)を、グルコースが培地から使い果たされた時点で制御装置に指示を行うpHトリガーを用いて、10g/Lのボーラス(培養物の公称容積に基づく)として培養物に供給した。運用の全体を通じてバイオリアクターからの試料採取を行い、48時間の培養後にも採取した。
【0236】
図26は、30.5℃で48時間のうちに菌株L1017によって産生されたα,ω-二酸の量を示している。この菌株は、31時間の時点で21.2g/Lのα,ω-二酸を産生し、それは48時間後には23.9g/Lという高い力価に達した。産生されたα,ω-二酸は、α,ω-ドデカン酸(C12:0)が85.9%、α,ω-ドデセン酸(C12:1)が4.7%、α,ω-テトラデカン酸(C14:0)が5.7%、α,ω-テトラデセン酸(C14:1)が2.9%、および少量のα,ω-ヘキサデセン酸(C16:1)(C16が1%未満)からなっていた。加えて、L1017は、48時間の時点で9.3g/Lの脂肪酸も産生した。ω-ヒドロキシ脂肪酸は微量でしか検出されなかった。結論として、脂肪酸を過剰産生し、アルコールオキシダーゼ(alkJ)およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ(alkH)の共発現を伴う大腸菌株における、改良されたハイブリッドCYP153A-Red450RhF融合タンパク質の発現により、再生可能な糖質原料からの高力価でのα,ω-二酸産生が可能になった。
【0237】
当業者には明らかであろうが、上記の諸局面および諸態様のさまざまな改変物および変形物を、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく作製することができる。そのような改変物および変形物は本開示の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図25
図26
図27
【配列表】
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