(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車両用ドアミラー
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B60R1/06 D
(21)【出願番号】P 2019232291
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 剛民
(72)【発明者】
【氏名】多田 真和
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078634(JP,A)
【文献】米国特許第05245480(US,A)
【文献】特開2009-083696(JP,A)
【文献】特開2013-067193(JP,A)
【文献】特開2013-067194(JP,A)
【文献】特開2004-034794(JP,A)
【文献】特開2006-270674(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135105(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135106(WO,A1)
【文献】特開2017-165221(JP,A)
【文献】特開2018-047758(JP,A)
【文献】特開2018-122816(JP,A)
【文献】特開2018-043738(JP,A)
【文献】特開2001-322495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06 - 1/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板部(24a)を有する端壁(24)で開口端とは反対側の端部が閉じられるミラー収容凹部(13)が形成される樹脂製のハウジング本体(14)と、そのハウジング本体(14)を前記ミラー収容凹部(13)の開口端とは反対側から覆う少なくとも1つのカバー(15,16)とを備えるミラーハウジング(12)が、車両の前部サイドドアに配設され、前記基板部(24a)に対向するミラー(11)が前記ミラー収容凹部(13)に収容される車両用ドアミラーにおいて、前記端壁(24)の前記基板部(24a)に、前記カバー(15,16)側に開口する第1凹部(29)を形成しつつ前記基板部(24a)から前記ミラー(11)側および前記カバー(15,16)側に突出する有底筒状の第1筒状部(31)と、前記第1凹部(29)と交互に並ぶとともに前記ミラー(11)側に開口する第2凹部(30)を形成しつつ前記基板部(24a)から前記ミラー(11)側および前記カバー(15,16)側に突出する有底筒状の第2筒状部(32)とが一体に設けられ、交互に並ぶ前記第1筒状部(31)および前記第2筒状部(32)の周壁は、それらの周壁のうち交互に並ぶ前記第1凹部(29)および前記第2凹部(30)間の壁部(33)を前記第1筒状部(31)および前記第2筒状部(32)に共通としつつ一体に連なって形成されることを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項2】
前記ミラー(11)の上下および左右方向の角度を調整するミラー角度調整ユニット(26)が前記端壁(24)に取り付けられ、前記第1筒状部(31)および前記第2筒状部(32)は、前記ミラー角度調整ユニット(26)の周囲に交互に連なって配置されて前記基板部(24a)に一体に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の基板部を有する端壁で開口端とは反対側の端部が閉じられるミラー収容凹部が形成される樹脂製のハウジング本体と、そのハウジング本体を前記ミラー収容凹部の開口端とは反対側から覆う少なくとも1つのカバーとを備えるミラーハウジングが、車両の前部サイドドアに配設され、前記基板部に対向するミラーが前記ミラー収容凹部に収容される車両用ドアミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用ドアミラーは、たとえば特許文献1で知られており、このものでは、樹脂製のハウジング本体の剛性を高めてミラーハウジングおよびミラーの振動を抑制するために、ミラーに対向するようにして前記ハウジング本体が有する端壁に、ミラーとは反対側に突出して格子状に連なるリブが一体に突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示された構造では、幅の狭いリブが突出長さを比較的大きくしてハウジング本体の端壁から突出しており、次の(1)~(3)のような課題が生じる。(1)ミラーハウジングひいてはドアミラー自体が大型化してしまう。(2)ハウジング本体を成形するための金型にリブを形成するための細い溝を作らなければならず、金型加工が難しくなり、ハウジング本体の成形性が低下する。(3)ハウジング本体の成形時に金型の溝内に樹脂が浸透するまでに時間がかかり、ハウジング本体の成形時間が長くなる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ハウジング本体を成形するための金型の加工性を高めてハウジング本体の成形性を高め、ハウジング本体の成形時間を短縮することを可能とし、ハウジング本体の大型化を抑制した上で、ハウジング本体の剛性向上を図り得るようにした車両用ドアミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、平板状の基板部を有する端壁で開口端とは反対側の端部が閉じられるミラー収容凹部が形成される樹脂製のハウジング本体と、そのハウジング本体を前記ミラー収容凹部の開口端とは反対側から覆う少なくとも1つのカバーとを備えるミラーハウジングが、車両の前部サイドドアに配設され、前記基板部に対向するミラーが前記ミラー収容凹部に収容される車両用ドアミラーにおいて、前記端壁の前記基板部に、前記カバー側に開口する第1凹部を形成しつつ前記基板部から前記ミラー側および前記カバー側に突出する有底筒状の第1筒状部と、前記第1凹部と交互に並ぶとともに前記ミラー側に開口する第2凹部を形成しつつ前記基板部から前記ミラー側および前記カバー側に突出する有底筒状の第2筒状部とが一体に設けられ、交互に並ぶ前記第1筒状部および前記第2筒状部の周壁は、それらの周壁のうち交互に並ぶ前記第1凹部および前記第2凹部間の壁部を前記第1筒状部および前記第2筒状部に共通としつつ一体に連なって形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記ミラーの上下および左右方向の角度を調整するミラー角度調整ユニットが前記端壁に取り付けられ、前記第1筒状部および前記第2筒状部は、前記ミラー角度調整ユニットの周囲に交互に連なって配置されて前記基板部に一体に設けられることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、カバー側に開口する第1凹部を形成する第1筒状部と、第1凹部と交互に配置されてミラー側に開口する第2凹部を形成する第2筒状部とが、端壁が有する平板状の基板部に当該基板部から前記ミラー側および前記カバー側に突出して一体に設けられ、第1筒状部および第2筒状部の周壁のうち第1および第2凹部間の壁部は第1筒状部および第2筒状部に共通であるので、ハウジング本体の剛性を確保しつつ、基板部からの第1および第2筒状部の突出量を比較的小さく抑えてハウジング本体ひいてはドアミラーの大型化を抑制することができ、その結果、ドアミラーの軽量化および省スペース化を図ることが可能となり、車両の空力性能向上に伴う燃費がよくなるといった効果を奏することができる。また第1および第2凹部の幅を比較的大きくすることが可能であり、ハウジング本体を成形するための金型に細く深い溝を形成することが不要であり、金型の加工性が向上する。さらに第1および第2凹部のうち基板部からの深さをほぼ均等とすることが可能であるので、金型内での樹脂の浸透をスムーズとし、ハウジング本体の成形時間を短縮し、ハウジング本体の成形性を高めることができる。
【0009】
また本発明の第2の特徴によれば、第1筒状部および第2筒状部が、端壁に取り付けられるミラー角度調整ユニットの周囲に交互に連なって配置されて基板部に設けられるので、ハウジング本体の剛性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】起立位置にある車両用ドアミラーを斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】起立位置にある車両用ドアミラーを斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】車両用ドアミラーが起立位置にある状態でのハウジング本体を前方から見た正面図である。
【
図4】車両用ドアミラーが起立位置にある状態でのハウジング本体を斜め前方から見た斜視図である。
【
図5】車両用ドアミラーが起立位置にある状態でのハウジング本体およびミラー角度調整ユニットを斜め後方から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付の
図1~
図6を参照しながら説明するが、以下の説明で「前後」は、ドアミラーが閉じた前部サイドドアから側方に突出した起立位置にある状態での車両前後方向を示すものとする。
【0012】
先ず
図1および
図2において、乗用車両における左右の前部サイドドアには、車両の後方側を視認するためのミラー11が装着されたミラーハウジング12が、前記前部サイドドアから側方に突出した起立位置と、前記前部サイドドア側に格納される格納位置との間で回動することを可能として配設される。
【0013】
前記ミラーハウジング12は、ミラー11が収容されるミラー収容凹部13を有する樹脂製のハウジング本体14と、そのハウジング本体14を前記ミラー収容凹部13の開口端とは反対側から覆う少なくとも1つのカバーとを備えており、この実施の形態で前記ミラーハウジング12は、前記ハウジング本体14と、当該ハウジング本体14を前記ミラー収容凹部13の開口端とは反対側から覆う2つのカバーである樹脂製の上部カバー15および下部カバー16とを備え、前記上部カバー15は前記ハウジング本体14の上部を覆うように形成され、前記下部カバー16は前記ハウジング本体14の下部を覆うように形成される。
【0014】
前記上部カバー15および前記下部カバー16間にはランプ用スリット17が形成されており、そのランプ用スリット17に一部を臨ませるサイドターンランプ18が前記ミラーハウジング12内に収容される。
【0015】
前記ミラー11は、図示しないミラーホルダで保持されており、前記ハウジング本体14の開口部すなわち前記ミラー収容凹部13の開口端部には、前記ミラーホルダで保持された状態の前記ミラー11が配置される。
【0016】
前記前部サイドドアには樹脂製のベース部材21が、樹脂製のシートベース22を前記前部サイドドアとの間に介在させるようにして取り付けられ、前記前部サイドドアから外側方に間隔をあけた位置で前記ベース部材21に前記ミラーハウジング12の基端部12aが回動可能に支持される。また前記ベース部材21には、当該ベース部材21を下方から覆う樹脂製のベースカバー23が着脱可能に取付けられる。
【0017】
前記ミラーハウジング12内には、電動格納ユニット(図示せず)が収容されており、この電動格納ユニットは、前記ミラーハウジング12の先端部12bを前記前部サイドドアから側方に突出させる起立位置と、前記ミラーハウジング12を前記前部サイドドア側に格納する格納位置との間で前記ミラーハウジング12を回動することが可能である。
【0018】
図3~
図6を併せて参照して、前記ハウジング本体14には、前記ミラー収容凹部13の開口端とは反対側の端部を閉じる端壁24が設けられており、この端壁24は、前記ホルダで保持されて前記ミラー収容凹部13内に収容される前記ミラー11に対向する平板状の基板部24aを有する。
【0019】
前記端壁24における前記基板部24aの略中央部には、前記ミラー収容凹部13内のミラー11側に向かって前記基板部24aから膨らみつつ前記基板部24aから前記ミラー11とは反対側にわずかに突出する有底筒状の取り付け筒部25が、前記上部カバー15および前記下部カバー16側に開放して一体に設けられ、前記ミラー11を保持する前記ミラーホルダを左右、上下に回動させるミラー角度調整ユニット26が前記上部カバー15および前記下部カバー16側から前記取り付け筒部25に収容され、このミラー角度調整ユニット26は前記取り付け筒部25にねじ止め等で固定される。
【0020】
ところで前記上部カバー15および前記下部カバー16は、前記ハウジング本体14に係合されるものであり、前記ハウジング本体14には、前記上部カバー15および前記下部カバー16が有する係合爪(図示せず)を挿通させる挿通孔27をそれぞれ有する複数の係止部28が一体に突設される。
【0021】
前記ミラー収容凹部13における前記端壁24の前記基板部24aには、前記上部カバー15および前記下部カバー16側に開口する第1凹部29を形成しつつ前記基板部24aから前記ミラー11側に突出するとともに前記上部カバー15および前記下部カバー16側に突出する有底筒状の第1筒状部31と、前記第1凹部29と交互に並ぶとともに前記ミラー11側に開口する第2凹部30を形成しつつ前記基板部24aから前記ミラー11側に突出するとともに前記上部カバー15および前記下部カバー16側に突出する有底筒状の第2筒状部32とが一体に設けられる。
【0022】
しかも交互に並ぶ前記第1筒状部31および前記第2筒状部32の周壁は、それらの周壁のうち交互に並ぶ前記第1凹部29および前記第2凹部30間の壁部33を前記第1筒状部31および前記第2筒状部32に共通としつつ一体に連なって形成される。
【0023】
また前記第1筒状部31および前記第2筒状部32は、前記ミラー角度調整ユニット26の周囲、すなわち前記取り付け筒部25の周囲に交互に連なって配置されて前記基板部24aに一体に設けられる。
【0024】
前記第1筒状部31および前記第2筒状部32の横断面形状は、正方形でなくてもよく、周囲の部材との関係から台形や三角形の横断面形状を有す得るものであってもよい。
【0025】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ハウジング本体14には、ミラー収容凹部13の開口端とは反対側の端部を閉じる端壁24が設けられており、この端壁24が有する平板状の基板部24aには、上部カバー15および下部カバー16側に開口する第1凹部29を形成しつつ前記基板部24aから前記ミラー11側に突出するとともに前記上部カバー15および前記下部カバー16側に突出する有底筒状の第1筒状部31と、前記第1凹部29と交互に並ぶとともにミラー11側に開口する第2凹部30を形成しつつ前記基板部24aから前記ミラー11側に突出するとともに前記上部カバー15および前記下部カバー16側に突出する有底筒状の第2筒状部32とが一体に設けられ、交互に並ぶ前記第1筒状部31および前記第2筒状部32の周壁は、それらの周壁のうち交互に並ぶ前記第1凹部29および前記第2凹部30間の壁部33を前記第1筒状部31および前記第2筒状部32に共通としつつ一体に連なって形成される。
【0026】
したがって前記ハウジング本体14の剛性を確保しつつ、前記基板部24aからの前記第1および第2筒状部31,32の突出量を比較的小さく抑えて前記ハウジング本体14ひいてはドアミラーの大型化を抑制することができ、その結果、ドアミラーの軽量化および省スペース化を図ることが可能となり、車両の空力性能向上に伴う燃費がよくなるといった効果を奏することができる。また前記第1および第2凹部29,30の幅を比較的大きくすることが可能であり、前記ハウジング本体14を成形するための金型に細く深い溝を形成することが不要であり、金型の加工性が向上する。さらに前記第1および第2凹部29,30のうち前記基板部24aからの深さをほぼ均等とすることが可能であるので、金型内での樹脂の浸透をスムーズとし、前記ハウジング本体14の成形時間を短縮し、前記ハウジング本体14の成形性を高めることができる。
【0027】
また前記ミラー11の上下および左右方向の角度を調整するミラー角度調整ユニット26が前記端壁24に取り付けられ、前記第1筒状部31および前記第2筒状部32は、前記ミラー角度調整ユニット26の周囲に交互に連なって配置されて前記基板部24aに一体に設けられるので、ハウジング本体14の剛性をより高めることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0029】
11・・・ミラー
12・・・ミラーハウジング
13・・・ミラー収容凹部
14・・・ハウジング本体
15,16・・・カバー
24・・・端壁
24a・・・基板部
26・・・ミラー角度調整ユニット
29・・・第1凹部
30・・・第2凹部
31・・・第1筒状部
32・・・第2筒状部
33・・・壁部