(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ADCベース受信機のための内蔵アイスキャン
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20221101BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H04L25/02 302B
H04L25/03 C
(21)【出願番号】P 2019520941
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(86)【国際出願番号】 US2017051379
(87)【国際公開番号】W WO2018080652
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-17
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591025439
【氏名又は名称】ザイリンクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XILINX INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ホンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, チャオイン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ボッレッリ, クリストファー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジェフリー
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-212992(JP,A)
【文献】特開2014-116880(JP,A)
【文献】特開2003-078575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270030(US,A1)
【文献】米国特許第08855179(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04L 25/03
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機内でアイスキャンを実施する方法であって、
位相補間器(PI)コードに基づいて基準クロックに対して位相シフトされたサンプリングクロックに基づいて、前記受信機に入力されたアナログ信号からデジタルサンプルを生成することと、
前記受信機の複数の等化パラメータのうちの第1の等化パラメータに基づいて前記デジタルサンプルを等化することと、
前記PIコードを生成するために、前記複数の等化パラメータを適合させ、かつ、前記デジタルサンプルに基づいてクロック回復を実施することと、
複数のサイクルを実施することであって、前記複数のサイクルの各々が、前記複数の等化パラメータをロックし、前記クロック回復における位相検出を中断し
、前記PIコードをオフセットさせ、前記受信機の出力を収集し、前記クロック回復における前記位相検出を再開し、かつ、前記アイスキャンを実施するために前記等化パラメータをアンロックする
ことを含み、前記複数のサイクルのうち少なくとも2サイクルにおいて異なる量だけ前記PIコードをオフセットさせる、前記複数のサイクルを実施することと
を含む方法。
【請求項2】
前記クロック回復を実施することが、
位相誤差信号を生成するために、前記デジタルサンプルに基づいて前記位相検出を実施することと、
前記PIコードを生成するために、デジタルループフィルタを介して前記位相誤差信号をフィルタリングすることと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相検出を中断することが、
前記デジタルループフィルタの入力から前記位相検出を実施するように設定された位相検出器の出力を開放すること
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PIコードをオフセットさせることが、
前記複数のサイクル毎に前記PIコードを生成するために、選択された量を前記デジタルループフィルタの出力に加えること
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のサイクルの間に収集される前記受信機の前記出力が、等化された前記デジタルサンプルから獲得される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のサイクルの間に収集される前記受信機の前記出力が、その等化に先立って生成される前記デジタルサンプルから獲得される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のサイクルが、前記アナログ信号の少なくとも1つの単位間隔(UI)をカバーするために、前記PIコードが更新されるまで実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
受信機であって、
アナログ信号を受信するように設定されたフロントエンドと、
サンプリングクロックに基づいて前記アナログ信号からデジタルサンプルを生成するように設定されたアナログ-デジタル変換器(ADC)回路機構と、
複数の等化パラメータのうちの第1の等化パラメータに基づいて前記デジタルサンプルを等化するように設定されたデジタル信号プロセッサ(DSP)と、
位相補間器(PI)コードを生成するために前記デジタルサンプルに基づいてクロック回復を実施するように設定されたクロック回復回路と、
前記PIコードに基づいて前記サンプリングクロックを生成するように設定されたPIと、
前記複数の等化パラメータを適合させるように設定された適合回路と、
複数のサイクルの実施を制御するように設定されたアイスキャン回路であって、前記複数のサイクルの各々が、前記複数の等化パラメータをロックし、前記クロック回復回路の前記クロック回復における位相検出を中断し
、前記PIコードをオフセットさせ、前記デジタルサンプルを収集し、前記クロック回復回路の前記クロック回復における前記位相検出を再開し、かつ、前記等化パラメータをアンロックする
ことを含み、前記複数のサイクルのうち少なくとも2サイクルにおいて異なる量だけ前記PIコードをオフセットさせる、アイスキャン回路と
を備える受信機。
【請求項9】
前記クロック回復回路が、
位相誤差信号を生成するために前記デジタルサンプルに基づいて前記位相検出を実施するように設定された位相検出器と、
前記PIコードを生成するために前記位相誤差信号をフィルタリングするように設定されたデジタルループフィルタと
を備える、請求項8に記載の受信機。
【請求項10】
前記アイスキャン回路が、前記デジタルループフィルタの入力から前記位相検出器の出力を開放することによって前記位相検出を中断するように設定される、請求項9に記載の受信機。
【請求項11】
前記アイスキャン回路が、前記複数のサイクル毎に前記PIコードを生成するために、選択された量を前記デジタルループフィルタの出力に加えることによって前記PIコードをオフセットさせるように設定される、請求項9に記載の受信機。
【請求項12】
前記複数のサイクルの間に収集される前記デジタルサンプルが等化器または前記ADC回路機構から獲得される、請求項9から11のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項13】
前記アイスキャン回路が、前記アナログ信号の少なくとも1つの単位間隔(UI)をカバーするために前記PIコードが更新されるまで前記複数のサイクルを実施するように設定される、請求項9から12のいずれか一項に記載の受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例は一般に電子回路に関し、詳細にはアナログ-デジタル変換器(ADC)ベース受信機のための内蔵アイスキャンに関する。
【背景技術】
【0002】
シリアライザ-デシリアライザ(SerDes)システムでは、受信し、かつ、回復した信号の品質を検査する能力を有することが望ましい。これは、システムマージンを決定し、また、デバッグ目的のために有用である。受信機アイスキャンは、この目的を達成するための重要な技法である。アナログベースSerDesシステムの場合、通常、アイスキャンを得るための2つの手法が存在している。第1の技法は、一般に「破壊アイスキャン」と呼ばれている。破壊アイスキャンモードでは、実際のデータスライサのスライシング閾値およびサンプリング位相がアイスキャンを実施するために変更される。破壊アイスキャン中におけるスライスされたデータは不正確であり得るため、このアイスキャン技法は、実データトラフィックを受信するために使用することはできない。しかしながら破壊アイスキャン技法には追加ハードウェアは不要である。
【0003】
別のアイスキャン技法は、誤りを導入することなく実データトラフィックを受信している間、その技法を使用することができる点で「非破壊」である。非破壊アイスキャン技法には、アイスキャンニングの目的専用の1つまたは複数の余分のスライサが必要である。専用アイスキャンスライサは、実際のデータ経路におけるスライサと比較すると、異なるスライシング閾値およびサンプリング位相を使用する。非破壊アイスキャン技法は通常の操作を中断しないため、クロックデータ回復(CDR)が常に要求される非同期システムにも使用することができる。
【0004】
アナログ-デジタル変換器(ADC)ベースSerDesは、デジタル信号処理を使用する高水準の等化技法が必要になる、より速いデータ転送速度においてまたは損失がより大きいシステムに対して、性能利点およびコスト利点を示す。厳格な分解能およびタイミング要求事項のため、時間介在形ADCが好ましい。このような時間介在形システムでは、非破壊アイスキャンは、アイスキャン機能のために必要な追加ADCの数のため、法外に高コストになる。ADCベースSerDesのための破壊アイスキャンは最少の実現コストを有しているが、典型的には同期システムのみに限定される。したがってより低コストで、かつ、同期および非同期の両方のシステムに使用することができるADCベース受信機のための新しいアイスキャン技法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
プログラム可能基準電圧調整器を提供するための技法が説明される。例では、受信機内でアイスキャンを実施する方法は、位相補間器(PI)コードに基づいて基準クロックに対して位相シフトされたサンプリングクロックに基づいて、アナログ信号入力から受信機にデジタルサンプルを生成することと、受信機の複数の等化パラメータのうちの第1の等化パラメータに基づいてデジタルサンプルを等化することと、PIコードを生成するために、複数の等化パラメータを適合し、かつ、デジタルサンプルに基づいてクロック回復を実施することと、複数の等化パラメータをロックし、クロック回復における位相検出を中断し、PIコードをオフセットさせ、受信機の出力を収集し、クロック回復における位相検出を再開し、かつ、アイスキャンを実施するために等化パラメータをアンロックする複数のサイクルを実施することとを含む。
【0006】
任意選択で、クロック回復を実施するステップは、位相誤差信号を生成するために、デジタルサンプルに基づいて位相検出を実施することと、PIコードを生成するために、デジタルループフィルタを介して位相誤差信号をフィルタリングすることとを含むことができる。
【0007】
任意選択で、位相検出を中断するステップは、デジタルループフィルタの入力から位相検出を実施するように設定された位相検出器の出力を開放することを含むことができる。
【0008】
任意選択で、PIコードをオフセットさせるステップは、PIコードを生成するために、選択された量をデジタルループフィルタの出力に加えることを含むことができる。
【0009】
任意選択で、選択された量は複数のサイクルにわたって変更することができる。
【0010】
任意選択で、複数のサイクルの間に収集される受信機の出力は、等化されたデジタルサンプルから獲得することができる。
【0011】
任意選択で、複数のサイクルの間に収集される受信機の出力は、その等化に先立って生成されるデジタルサンプルから獲得することができる。
【0012】
任意選択で、複数のサイクルは、アナログ信号の少なくとも1つの単位間隔(UI)をカバーするために、PIコードが更新されるまで実施することができる。
【0013】
別の例では、受信機は、アナログ信号を受信するように設定されたフロントエンドと、サンプリングクロックに基づいてアナログ信号からデジタルサンプルを生成するように設定されたアナログ-デジタル変換器(ADC)回路機構と、複数の等化パラメータのうちの第1の等化パラメータに基づいてデジタルサンプルを等化するように設定されたデジタル信号プロセッサ(DSP)と、位相補間器(PI)コードを生成するためにデジタルサンプルに基づいてクロック回復を実施するように設定されたクロック回復回路と、PIコードに基づいてサンプリングクロックを生成するように設定されたPIと、複数の等化パラメータを適合するように設定された適合回路と、複数の等化パラメータをロックし、クロック回復回路のクロック回復における位相検出を中断し、PIコードをオフセットさせ、デジタルサンプルを収集し、クロック回復回路のクロック回復における位相検出を再開し、かつ、等化パラメータをアンロックする複数のサイクルを制御するように設定されたアイスキャン回路とを含む。
【0014】
任意選択で、クロック回復回路は、位相誤差信号を生成するためにデジタルサンプルに基づいて位相検出を実施するように設定された位相検出器と、PIコードを生成するために位相誤差信号をフィルタリングするように設定されたデジタルループフィルタとを含むことができる。
【0015】
任意選択で、アイスキャン回路は、デジタルループフィルタの入力から位相検出器の出力を開放することによって位相検出を中断するように設定することができる。
【0016】
任意選択で、アイスキャン回路は、PIコードを生成するために、選択された量をデジタルループフィルタの出力に加えることによってPIコードをオフセットさせるように設定することができる。
【0017】
任意選択で、選択された量は複数のサイクルにわたって変更することができる。
【0018】
任意選択で、複数のサイクルの間に収集されるデジタルサンプルは、等化器から獲得することができる。
【0019】
任意選択で、複数のサイクルの間に収集されるデジタルサンプルは、ADC回路機構から獲得することができる。
【0020】
任意選択で、アイスキャン回路は、アナログ信号の少なくとも1つの単位間隔(UI)をカバーするためにPIコードが更新されるまで複数のサイクルを実施するように設定することができる。
【0021】
別の例では、集積回路(IC)は、アナログ信号を受信するように設定されたフロントエンドと、フロントエンドに結合されたアナログ-デジタル変換器(ADC)回路機構と、ADC回路機構に結合された等化器と、等化器に結合された適合回路と、等化器に結合されたクロック回復回路であって、デジタルループフィルタに結合された位相検出器を含むクロック回復回路と、クロック回復回路およびADC回路機構に結合された位相補間器(PI)であって、デジタルループフィルタからPIコードを受け取るPIと、複数の等化パラメータをロックし、デジタルループフィルタから位相検出器を開放し、PIコードをオフセットさせ、ADCまたは等化器の出力を収集し、位相検出器をデジタルループフィルタに再接続し、かつ、複数の等化パラメータをアンロックする複数のサイクルを制御するように設定されたアイスキャン回路とを含む。
【0022】
任意選択で、アイスキャン回路は、PIコードを生成するために、選択された量をデジタルループフィルタの出力に加えることによってPIコードをオフセットさせるように設定することができる。
【0023】
任意選択で、選択された量は複数のサイクルにわたって変更することができる。
【0024】
任意選択で、複数のサイクルは、アナログ信号の少なくとも1つの単位間隔(UI)をカバーするために、PIコードが更新されるまで実施することができる。
【0025】
これらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を参照して理解することができる。
【0026】
上述した特徴を詳細に理解することができるように、上で簡単に要約したより詳細な説明を、いくつかが添付の図面に示されている例示的実現態様を参照して得ることができる。しかしながら添付の図面は典型的な例示的実現態様のみを示したものであり、したがってその範囲を限定するものと見なしてはならないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】シリアル通信システムの一例を示すブロック図である。
【
図3】一例によるクロック回復およびアイスキャン回路機構を示すブロック図である。
【
図4】一例による、受信機内でアイスキャンを実施する方法を示す流れ図である。
【
図5】二進非ゼロ復帰(NRZ)信号のための例示的アイプロットを示す図である。
【
図6】本明細書において説明されているシリアライザ-デシリアライザの例を使用することができる書換え可能ゲートアレイ(FPGA)のアーキテクチャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
理解を容易にするために、可能である場合、図に共通の同じ要素を示すために、同じ参照番号を使用している。1つの例の要素は、有利には他の例に組み込むことができることが企図されている。
【0029】
以下、図を参照して様々な特徴について説明する。図はスケール通りに描かれている場合も、あるいはスケール通りには描かれていない場合もあること、また、同様の構造または機能の要素は、すべての図を通して同様の参照番号によって表されていることに留意されたい。図に意図されていることは、特徴の説明を容易にすることにすぎないことに留意されたい。図は、特許請求される発明についての余す所のない説明として、あるいは特許請求される発明の範囲を制限するものとして意図されているわけではない。さらに、例証されている例は、示されている態様または利点のすべてを有する必要はない。特定の例に関連して説明されている態様または利点は必ずしもその例に限定されず、そのように例証されていない場合であっても、あるいはそのように明確に説明されていない場合であっても、任意の他の例の中で実践することができる。
【0030】
図1は、シリアル通信システム100の例を示すブロック図である。シリアル通信システム100は、伝送媒体160を介して受信機126に結合された送信機112を備えている。送信機112はシリアライザ-デシリアライザ(SerDes)116の一部であってもよい。受信機126はSerDes122の一部であってもよい。伝送媒体160は、送信機112と受信機126の間に電気経路を備えており、また、印刷回路基板(PCB)トレース、ビア、ケーブル、コネクター、減結合コンデンサー、等々を含むことができる。SerDes116の受信機およびSerDes122の送信機は、簡潔にするために省略されている。いくつかの例では、SerDes116は集積回路(IC)110の中に配置することができ、また、SerDes122はIC120の中に配置することができる。
【0031】
送信機112は、デジタルベースバンド変調技法を使用してシリアルデータを伝送媒体160上に駆動する。通常、シリアルデータは記号に分割される。送信機112は、個々の記号を記号にマップされたアナログ電圧に変換する。送信機112は、個々の記号から生成されたアナログ電圧を伝送媒体160に結合する。いくつかの例では、送信機112は、二進非ゼロ復帰(NRZ)変調スキームを使用している。二進NRZでは、記号は1ビットのシリアルデータであり、2つのアナログ電圧を使用して個々のビットが表される。他の例では、送信機は、パルス振幅変調(PAM)などの多重レベルデジタルベースバンド変調技法を使用しており、記号は複数のビットのシリアルデータを含み、3つ以上のアナログ電圧を使用して個々のビットが表される。
【0032】
受信機126は、通常、アナログ-デジタル変換器(ADC)回路機構104およびアイスキャン回路機構106を含む。受信機126の例示的構造については、
図2に関連して以下でさらに説明される。受信機126は、伝送媒体160からアナログ信号を受信する。ADC回路機構104は、アナログ信号からデジタル信号を生成する。本明細書において使用されているように、デジタル信号はkビットコードのシーケンスであり、kは正の整数である。kビットコードはデジタルサンプルと呼ぶことができる。1秒当たりのコードの数はデータ転送速度(サンプルレートとも呼ばれる)である。デジタル信号は、概念的に離散時間、離散振幅信号と見なすことも同じく可能であり、個々の離散時間における信号の振幅は2
k個の離散値から選択される。
【0033】
受信機126は、ADC回路機構104によって出力されたデジタルサンプルを処理して、送信機112によって生成された記号を回復する。受信機126は、復号およびさらなる処理のために、回復された記号をSerDes122内の物理符号化サブレイヤー(PCS)回路機構128に提供することができる。アイスキャン回路機構106は、受信機126を制御してアイスキャンを実施するように設定される。以下でさらに説明されるように、アイスキャン回路機構106は、同期および非同期の両方のシステムに使用することができる破壊アイスキャンを実現する。アイスキャン回路機構106は、受信機126を制御して、処理のために(例えば受信した信号の品質を検査するために)他の回路機構(図示せず)に送信することができるアイスキャンデータを生成する。例えばアイスキャンデータは、受信した信号のデータアイを視覚化するためにコンピュータ、等々に送信することができる。
【0034】
図2は、一例による受信機126を示すブロック図である。受信機126は、フロントエンド202、ADC回路機構104、デジタル信号プロセッサ(DSP)204、適合回路205、クロック回復回路206、位相補間器(PI)208、クロック発生器210およびアイスキャン回路機構106を含む。フロントエンド202の入力は伝送媒体160に結合されている。フロントエンド202の出力はADC回路機構104の一方の入力に結合されている。ADC回路機構104の出力はDSP204の入力に結合されている。DSP204の出力はクロック回復回路206の入力に結合されている。クロック回復回路206の出力はPI208の一方の入力に結合されている。クロック発生器210の出力はPI208のもう1つの入力に結合されている。PI208の出力はADC回路機構104のもう1つの入力に結合されている。
【0035】
動作中、フロントエンド202は、伝送媒体160からアナログ信号を受信する。例では、フロントエンド202は、自動利得制御(AGC)回路212および連続時間線形等化器(CTLE)214を含む。AGC回路212は、適合回路205によって提供される利得調整信号に基づいて、伝送媒体160から受信したアナログ信号の利得を調整する。CTLE214は、AGC回路212から利得調整済みアナログ信号を受け取る。CTLE214は、伝送媒体160の低域通過特性を補償するための広域通過フィルタとして動作する。CTLE214の周波数応答のピークは、適合回路205によって提供されるCTLE調整信号に基づいて調整することができる。別の例では、CTLE回路214は、AGC回路212の前に置くことができる。
【0036】
ADC回路機構104は、フロントエンド202からアナログ信号を受け取る。ADC回路機構104は、アナログ信号からデジタル信号を生成する。ADC回路機構104は、1つまたは複数のADC216を含むことができる。ADC回路機構104は、PI208によって出力されるサンプリングクロックに基づいてデジタルサンプルを生成する。例では、ADC回路機構104は、それぞれサンプリングクロックの異なる位相に基づいて動作する複数のADC216を含む(例えば時間介在ADC回路)。
【0037】
DSP204は、ADC回路機構104からデジタルサンプルを受け取る。例では、DSP204は、フィードフォワード等化器(FFE)218および決定フィードバック等化器(DFE)220を含む。FFE218は、デジタルサンプルにフィードフォワード等化を適用し、また、DFE220は、デジタルサンプルに決定フィードバック等化を適用する。FFE218およびDFE220は、それぞれ、最小二乗平均(LMS)、等々などの適合アルゴリズムを使用して適合回路205によって調整されるタップを含む。
【0038】
クロック回復回路206は、DSP204からデジタルサンプルを受け取る。クロック回復回路206は、位相検出処理を実施してデジタルサンプルから位相誤差を検出する。クロック回復回路206は、PI208を制御するために位相誤差をフィルタリングし、かつ、PIコードを生成する。PI208は、クロック発生器210から基準クロック信号を受け取り、かつ、クロック回復回路206によって出力されるPIコードに基づいて基準クロック信号の位相を調整する。クロック発生器210は、基準クロックを提供する位相固定ループ(PLL)、等々であってもよい。PI208は、ADC回路機構104のためのサンプリングクロックを出力する。データ回復モードの間、ADC回路機構104、DSP204、クロック回復回路206およびPI208を備えたループは、ADC回路機構104がデータアイの中心またはその近辺でサンプリングするよう、サンプリングクロックを調整するように動作する。
【0039】
アイスキャン回路機構106は、クロック回復回路206に結合されている。また、アイスキャン回路機構106は、適合回路205およびPCS回路機構128に同じく結合することができる。アイスキャン回路機構106は、データ回復モードとアイスキャンモードの間でクロック回復回路206のモードを設定する。データ回復モードにある場合、クロック回復回路206は、ADC回路機構104がデータアイの中心またはその近辺でサンプリングしてデータを受け取るよう、上で説明したように動作してサンプリングクロックを調整する。アイスキャンモードにある場合、クロック回復回路206は、ADC回路機構104がデータアイ全体にわたる様々なポイントでサンプリングするよう、サンプリングクロックを調整するように動作する。アイスキャンモードの間、受信機126の出力はアイスキャンデータを提供する。
【0040】
図3は、一例によるクロック回復およびアイスキャン回路機構を示すブロック図である。クロック回復回路206は、位相検出器302およびデジタルループフィルタ330を含む。アイスキャン回路機構106は、制御回路316、マルチプレクサ304およびマルチプレクサ326を含む。位相検出器302の入力はDSP204の出力に結合されている。位相検出器302の出力は、マルチプレクサ304を介してデジタルループフィルタ330に結合されている。デジタルループフィルタ330の出力は、PI208の入力に結合されるPIコードを提供する。PI208の出力は、上で説明したようにサンプリングクロックを提供する。
【0041】
例では、デジタルループフィルタ330は、利得回路306、利得回路308、加算器310、遅延要素312、加算器318、加算器320、遅延要素322および加算器324を含む。利得回路306は位相経路327を実現している。利得回路308、加算器310および遅延要素312は周波数経路328を実現している。利得回路306および308への入力はマルチプレクサ304の出力に結合されている。利得回路306の出力は加算器318の入力に結合されている。利得回路308の出力は加算器310の入力に結合されている。加算器310の出力は遅延要素312の入力に結合されている。遅延要素312の出力は、加算器310のもう1つの入力および加算器318のもう1つの入力に結合されている。加算器318の出力は加算器320の入力に結合されている。加算器320の出力は遅延要素322の入力に結合されている。遅延要素322の出力は、加算器320のもう1つの入力および加算器324の入力に結合されている。加算器324の出力はPI208の入力に結合されている。加算器324のもう1つの入力はマルチプレクサ326の出力に結合されている。マルチプレクサ304、326の制御入力は制御回路316の出力に結合されている。マルチプレクサ326の入力は制御回路316の出力に結合されている。マルチプレクサ304および326の他の入力はデジタルゼロ値を受け取るために結合されている。
【0042】
動作中、位相検出器302は、DSP204によって出力されるデジタルサンプルに基づいて位相誤差を生成する。位相誤差信号はデジタル信号である。データ回復モードでは、制御回路316は、マルチプレクサ304を制御して位相検出器302の出力を位相経路327および周波数経路328に結合する。利得回路306は位相利得(Gp)を位相誤差信号に適用する。例えば利得回路306は、左シフト操作を実現して位相利得を適用することができる。利得回路308は周波数利得(Gf)を位相誤差信号に適用する。例えば利得回路308は、左シフト操作を実現して周波数利得を適用することができる。利得回路308の出力は、加算器310および遅延要素312によって統合される。周波数経路328の統合された出力は、加算器318によって位相経路327の出力に加えられる。加算器318の出力は、加算器320および遅延要素322によって統合される。統合された出力は、加算器324によってマルチプレクサ326の出力に加えられる。データ回復モードでは、制御回路316は、マルチプレクサ326を制御してデジタルゼロ値を加算器324に結合する。したがってデータ回復モードでは、遅延要素322の出力は、PI208に提供されるPIコードである。
【0043】
アイスキャンモードでは、制御回路316は、マルチプレクサ304を制御してデジタルゼロ入力を選択する。したがって位相検出器302は位相経路327および周波数経路328から開放され、位相検出が中断される。さらに、制御回路316は、マルチプレクサ326を制御して、デジタルゼロ値ではなくPIコードオフセット(dn)を選択する。PIコードオフセットは制御回路316によって生成される。アイスキャンモードでは、加算器324は、PIコードオフセットを遅延要素322の出力に加えてPI208のためのPIコードを生成する。このようにして、制御回路316は、アイスキャンモードの個々のサイクルの間、デジタルループフィルタ330によって生成されるPIコードを異なる量だけオフセットさせることができる。制御回路316は、以下でさらに考察されるように、適合回路205および/またはPCS回路機構128からのデータに基づいてアイスキャンモードを選択することができる。また、制御回路316は、以下でさらに考察されるように、適合回路205に制御信号を同じく出力することができる。
【0044】
図4は、一例による、受信機内でアイスキャンを実施する方法400を示す流れ図である。方法400は、上で説明したSerDes122によって実施することができる。方法400はステップ402で始まり、制御回路316は、アイスキャンモードの間に使用されるPIコードのための初期オフセットを選択する(例えば制御回路316はdnのための値を選択する)。
【0045】
ステップ404で、制御回路316はデータ回復モードを実現し、データ回復モードでは、ある時間期間の間、等化適合およびクロックデータ回復が自由に走る。例では、データ回復モードは、回復されたデータ中の誤差が閾値未満になるまで、および/または等化パラメータが閾値内に整定するまで実現される。等化パラメータは、FFE218およびDFE220のタップを含む。また、等化パラメータは、AGCおよびCTLE調整パラメータを同じく含むことができる。等化パラメータは、上で説明したように適合回路205によって調整される。制御回路316は等化パラメータを監視することができ、あるいは等化パラメータが閾値内に整定したかどうかを示す信号を適合回路205から受け取ることができる。また、制御回路316は、回復されたデータ中の誤差が閾値未満であることを示す信号をPCS回路機構128から同じく受け取ることができる。
【0046】
ステップ406で、制御回路316は、適合回路205を制御して等化パラメータをロックし、かつ、アイスキャンモードを開始する。ステップ408で、制御回路316はクロック回復回路206における位相検出を中断する。詳細には、制御回路316は、マルチプレクサ304を制御して位相検出器302をデジタルループフィルタ330の位相経路327および周波数経路328から開放する。デジタルループフィルタ330は、デジタルループフィルタ330内の統合経路に従ってPIコードの更新を継続する。したがってクロック回復回路206は、アイスキャンモードの間、依然として受信機126と送信機112の間のDC周波数オフセットを追跡する。
【0047】
ステップ410で、制御回路316は、選択されたオフセットをPIコードに加える。詳細には、制御回路316は、マルチプレクサ326を制御して、デジタルループフィルタ330の出力に加えられるPIコードオフセットdnを選択する。ステップ412で、PCS回路機構128は、アイスキャンモードの間、受信機126によって生成される一組のデジタルサンプルを収集する。制御回路316は、x個のサンプルの継続期間の間、アイスキャンモードを実現することができる。例では、継続期間xは、この時間の間、位相変動がアイスキャンステップサイズ(dp)より小さくなるように選定される。これは、残留周波数オフセット(rfo)×xがdp未満である、すなわちrfo*x<dp(これはx<dp/rfoに等しい)である限り保証され得る。
【0048】
ステップ414で、制御回路316は、クロック回復回路206における位相検出を再開し、かつ、等化パラメータをアンロックする。詳細には、制御回路316は、マルチプレクサ304を制御して位相検出器302の出力を選択し、かつ、マルチプレクサ326を制御してデジタルゼロ入力を選択し、したがってデジタルループフィルタ330によって出力されるPIコードはオフセットされない。制御回路316は、等化パラメータをアンロックし、適合プロセスを再開するよう、適合回路に信号発信する。
【0049】
ステップ416で、制御回路316は、十分なアイスキャンサイクルが存在したかどうかを決定する。制御回路316は、単位間隔(UI)全体または定義済みの数のUIをカバーするために、異なるPIコードオフセットを使用してアイスキャンモードを実現することができる。もっと多くのアイスキャンサイクルが必要である場合、方法400はステップ418へ進行し、制御回路316は、PIコードのための別のオフセットを選択する。方法400はステップ404へ戻って反復する。それ以上のアイスキャンサイクルが不要である場合、方法400はステップ420へ進行する。
【0050】
ステップ420で、PCS回路機構128は、十分なアイスキャンデータが受け取られたかどうかを決定する。十分なアイスキャンデータが受け取られた場合、方法400はステップ422へ進行し、データアイを復元するために、アイスキャンサイクルの間に収集されたデジタルサンプルが出力される。アイを統計的に復元するための十分なデジタルサンプルが存在していない場合、方法400はステップ402へ戻って反復することができる。
【0051】
例では、ステップ412でPCS回路機構128は、アイスキャンサイクルの間、DSP204によって出力される等化済みデジタルサンプルを収集する。別の例では、ステップ412でPCS回路機構128は、ADC回路機構104によって出力されるデジタルサンプルを収集する。アイスキャンサイクルの間にADC回路機構104から受け取られたデジタルサンプルは、アイスキャンデータを得るために、ロックされた等化パラメータ値を使用して後処理することができる。
【0052】
図5は、二進NRZ信号に対する例示的アイプロット500を示したものである。アイプロット500は、上で説明したアイスキャンサイクルの間に収集された様々なデジタルサンプルから形成される。アイプロット500は、UI502に対するデータアイを示している。個々のアイスキャンサイクルの間、PIコードは、時間を表す軸504全体にわたってスキャンするためにオフセットされる。軸506は振幅を表している。受信機はADCに基づいているため、収集されたデジタルサンプルは、軸504全体にわたるスキャンを必要としない十分な分解能を含むことができる。この例は二進NRZ信号を示しているが、上で説明した技法を使用して、多重レベルPAM信号、等々に対するアイプロットを形成することも同じく可能である。
【0053】
上で説明したSerDes122は、書換え可能ゲートアレイ(FPGA)または同様のタイプのプログラム可能回路などの集積回路内で実現することができる。
図6は、多重ギガビットトランシーバ(「MGT」)1、設定可能論理ブロック(「CLB」)2、ランダムアクセスメモリブロック(「BRAM」)3、入力/出力ブロック(「IOB」)4、設定および刻時論理(「CONFIG/CLOCKS」)5、デジタル信号処理ブロック(「DSP」)6、専用入力/出力ブロック(「I/O」)7(例えば設定ポートおよびクロックポート)、およびデジタルクロックマネージャ、アナログ-デジタル変換器、システム監視論理、等々などの他のプログラム可能論理8を含む極めて多数の異なるプログラム可能タイルを含むFPGA600のアーキテクチャを示したものである。いくつかのFPGAは、専用プロセッサブロック(「PROC」)10を同じく含む。FPGA600は、上で説明したSerDes122の1つまたは複数の実例を含むことができる。
【0054】
いくつかのFPGAでは、個々のプログラム可能タイルは、
図6の一番上に含まれている例によって示されているように、同じタイル内のプログラム可能論理要素の入力および出力端子20への接続を有する少なくとも1つのプログラム可能相互接続要素(「INT」)11を含むことができる。また、個々のプログラム可能相互接続要素11は、同じタイルまたは他のタイル中の隣接するプログラム可能相互接続要素の相互接続セグメント22への接続を同じく含むことができる。また、個々のプログラム可能相互接続要素11は、論理ブロック(図示せず)間の汎用経路指定資源の相互接続セグメント24への接続を同じく含むことができる。汎用経路指定資源は、相互接続セグメント(例えば相互接続セグメント24)のトラックおよび相互接続セグメントを接続するためのスイッチブロック(図示せず)を備えた論理ブロック(図示せず)間の経路指定チャネルを含むことができる。汎用経路指定資源の相互接続セグメント(例えば相互接続セグメント24)は、1つまたは複数の論理ブロックに及ぶことができる。汎用経路指定資源と相俟って取られたプログラム可能相互接続要素11は、図に示されているFPGAのためのプログラム可能相互接続構造(「プログラム可能相互接続」)を実現する。
【0055】
例示的実現態様では、CLB2は、プログラムしてユーザ論理+単一のプログラム可能相互接続要素(「INT」)11を実現することができる設定可能論理要素(「CLE」)12を含むことができる。BRAM3は、1つまたは複数のプログラム可能相互接続要素に加えて、BRAM論理要素(「BRL」)13を含むことができる。通常、タイルに含まれている相互接続要素の数はタイルの高さで決まる。図に示されている例では、BRAMタイルは5個のCLBと同じ高さを有しているが、他の数(例えば4個)を使用することも同じく可能である。DSPタイル6は、適切な数のプログラム可能相互接続要素に加えて、DSP論理要素(「DSPL」)14を含むことができる。IOB4は、プログラム可能相互接続要素11の1つの実例に加えて、例えば入力/出力論理要素(「IOL」)15の2つの実例を含むことができる。当業者には明らかなように、例えばI/O論理要素15に典型的に接続される実際のI/Oパッドは、入力/出力論理要素15の領域に限定されない。
【0056】
示されている例では、ダイ(
図11に示されている)の中心の近くの水平方向の領域は、設定、クロックおよび他の制御論理のために使用されている。この水平方向の領域すなわち列から延びている垂直方向の列9は、FPGAの幅全体にわたってクロック信号および設定信号を分配するために使用されている。
【0057】
図6に示されているアーキテクチャを利用しているいくつかのFPGAは、FPGAの大きな部分を構築している規則的な列構造を乱す追加論理ブロックを含む。追加論理ブロックは、プログラム可能ブロックおよび/または専用論理であってもよい。例えばプロセッサブロック10は、CLBおよびBRAMのいくつかの列に及んでいる。プロセッサブロック10は、単一のマイクロプロセッサからマイクロプロセッサ、メモリコントローラ、周辺装置、等々の完全なプログラム可能処理システムに及ぶ様々な構成要素であってもよい。
【0058】
図6には、例示的FPGAアーキテクチャのみを示すことが意図されていることに留意されたい。例えば行中の論理ブロックの数、行の相対幅、行の数および順序、行に含まれている論理ブロックのタイプ、論理ブロックの相対サイズ、および
図6の一番上に含まれている相互接続/論理実現態様は、単なる例示的なものにすぎない。例えば実際のFPGAでは、ユーザ論理の有効な実現を容易にするために、CLBが出現するところではどこにでもCLBの複数の隣接する行が典型的に含まれているが、隣接するCLB行の数は、FPGAの総合サイズに応じて変化する。
【0059】
以上は特定の例を対象にしたものであるが、その基本的な範囲を逸脱することなく、他の例および更なる例を考案することが可能であり、また、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。