(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電気的接続構造、半導体装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20221101BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20221101BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221101BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L21/28 301Z
H01L29/50 M
H01L29/78 301S
(21)【出願番号】P 2019535009
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2018023175
(87)【国際公開番号】W WO2019031067
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017152141
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 一行
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219788(JP,A)
【文献】特開2017-117942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380309(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0092592(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0236968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/51
H01L 21/336
H01L 29/78-29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
金属層と、
前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層と、
を備
え、
前記絶縁層は、遷移金属酸化物にて形成される、
電気的接続構造。
【請求項2】
前記二次元材料層は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有する二次元材料にて形成される、請求項1に記載の電気的接続構造。
【請求項3】
前記二次元材料層の前記単位層の積層数は、1層以上10層以下である、請求項2に記載の電気的接続構造。
【請求項4】
前記二次元材料層の膜厚は、0.5nm以上5.0nm以下である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の電気的接続構造。
【請求項5】
前記絶縁層の膜厚は、0.1nm以上3.0nm以下である、請求項1
~4のいずれか1項に記載の電気的接続構造。
【請求項6】
前記中間層の総膜厚は、0.6nm以上5.0nm以下である、請求項1
~5のいずれか1項に記載の電気的接続構造。
【請求項7】
前記二次元材料層は、化学式MX
2で表される材料にて形成され、
前記Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg又はPbのいずれかであり、
前記Xは、S、Se又はTeのいずれかである、請求項1
~6のいずれか1項に記載の電気的接続構造。
【請求項8】
前記化学式MX
2で表される材料は、CrS
2、CrSe
2、CrTe
2、HfS
2、HfSe
2、HfTe
2、MoS
2、MoSe
2、MoTe
2、NiS
2、NiSe
2、SnS
2、SnSe
2、TiS
2、TiSe
2、TiTe
2、WS
2、WSe
2、ZrS
2、ZrSe
2又はZrTe
2のいずれかである、請求項7に記載の電気的接続構造。
【請求項9】
半導体層及び金属層を電気的に接続するコンタクト構造を備え、
前記コンタクト構造は、
前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層を含
み、
前記絶縁層は、遷移金属酸化物にて形成される、
半導体装置。
【請求項10】
半導体層及び金属層を電気的に接続するコンタクト構造を備え、
前記コンタクト構造は、
前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層を含
み、
前記絶縁層は、遷移金属酸化物にて形成される、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気的接続構造、半導体装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像装置及び集積回路などの半導体装置の微細化が進んでいる。このため、電極又は配線などの金属と、ウェルなどの半導体とを電気的に接続するコンタクト構造についても接続面積の縮小が進んでいる。
【0003】
そこで、金属及び半導体などの異種の材料間の接触抵抗を低減するために、例えば、金属-絶縁膜-半導体(Metal-Insulator-Semiconductor:MIS)コンタクト技術が提案されている。MISコンタクト技術では、金属及び半導体の間に極薄膜の絶縁膜を設けることで、金属及び半導体の直接接合で生じるショットキー抵抗を低減することができる。
【0004】
一方で、下記の特許文献1に記載されるように、近年、グラフェンなどの二次元材料が注目されている。二次元材料は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有し、該層状構造によって特異的な性質を有するため、半導体装置に対するブレイクスルーを起こし得る次世代材料として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したMISコンタクト技術では、金属及び半導体の間の絶縁膜の膜厚が過度に厚い場合、トンネル抵抗によって電流損失が発生してしまう。また、金属及び半導体の間の絶縁膜の膜厚が過度に薄い場合、ショットキー抵抗の低減効果を得ることができなくなる。すなわち、上述したMISコンタクト技術では、絶縁膜の膜厚ばらつきによる抵抗ばらつきが大きいため、金属及び半導体の接触抵抗を安定して低減することが困難であった。
【0007】
そこで、金属及び半導体の接続構造において、より低抵抗かつ安定した接続構造が求められていた。このような接続構造は、近年得られた次世代材料の知見を適用することで、実現することができる可能性がある。
【0008】
よって、本開示では、金属及び半導体の間の低抵抗な接続構造を安定して形成することが可能な、新規かつ改良された電気的接続構造、該接続構造を有する半導体装置及び電子機器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によれば、半導体層と、金属層と、前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層と、を備える、電気的接続構造が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、半導体層及び金属層を電気的に接続するコンタクト構造を備え、前記コンタクト構造は、前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層を含む、半導体装置が提供される。
【0011】
半導体層及び金属層を電気的に接続するコンタクト構造を備え、前記コンタクト構造は、前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層を含む、電子機器が提供される。
【0012】
本開示によれば、金属及び半導体の間の接触抵抗を低くすることができる中間層の膜厚範囲をより厚膜側に拡大することができる。したがって、本開示によれば、中間層を成膜する際のプロセスマージンをより大きくすることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本開示によれば、金属及び半導体の間の低抵抗な接続構造を安定して形成することが可能である。
【0014】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る電気的接続構造の構成を説明する模式的な断面図である。
【
図2A】絶縁層のみを介した電気的接続構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図2B】二次元材料層のみを介した電気的接続構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図1~
図2Bで示す電気的接続構造において、半導体層及び金属層に挟持される層の膜厚と、接続構造の抵抗との関係を示した説明図である。
【
図4】
図3のグラフで模式的に示した半導体層及び金属層に挟持される層の膜厚と、接続構造の抵抗との関係を実際にシミュレーションによって確認した結果を示すグラフ図である。
【
図5】本開示の第2の実施形態の半導体装置の第1の構造例を模式的に示す縦断面図である。
【
図6A】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図6B】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図6C】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図6D】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図6E】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図7A】同構造例に係る半導体装置の一変形例を示す縦断面図である。
【
図7B】同構造例に係る半導体装置の他の変形例を示す縦断面図である。
【
図8】本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の第2の構造例を模式的に示す縦断面図である。
【
図9A】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図9B】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図9C】同構造例に係る半導体装置を製造する一工程を説明する模式的な縦断面図である。
【
図10A】本開示の第2の実施形態に係る半導体装置が適用され得る電子機器の一例を示す外観図である。
【
図10B】同実施形態に係る半導体装置が適用され得る電子機器の他の例を示す外観図である。
【
図10C】同実施形態に係る半導体装置が適用され得る電子機器の他の例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
なお、以下の説明にて参照する各図面では、説明の便宜上、一部の構成部材の大きさを誇張して表現している場合がある。したがって、各図面において図示される構成部材同士の相対的な大きさは、必ずしも実際の構成部材同士の大小関係を正確に表現するものではない。また、以下の説明では、基板又は層が積層される方向を上方向と表すことがある。
【0018】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1.1.本実施形態の構成
1.2.本実施形態の作用機序
2.第2の実施形態
2.1.第1の構造例
2.2.第2の構造例
3.適用例
【0019】
<1.第1の実施形態>
(1.1.本実施形態の構成)
まず、
図1を参照して、本開示の第1の実施形態に係る電気的接続構造の構成について説明する。
図1は、本開示の第1の実施形態に係る電気的接続構造の構成を説明する模式的な断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る電気的接続構造100は、半導体層110と、金属層130とを、絶縁層121及び二次元材料層123を含む中間層120を介して電気的に接続する接続構造である。
【0021】
半導体層110は、例えば、半導体装置において、増幅、整流、スイッチング、発光又は光電変換などの機能を実現する機能層である。半導体層110は、単体で半導体となる元素半導体、又は複数の原子がイオン結合により結合することで半導体となる化合物半導体のいずれかで形成されてもよい。また、半導体層110には、導電型不純物が導入されていてもよい。例えば、半導体層110には、ホウ素(B)若しくはアルミニウム(Al)などのp型不純物、又はリン(P)若しくはヒ素(As)などのn型不純物が導入されていてもよい。なお、半導体層110に導電型不純物が導入される場合、導電型不純物の濃度は、高濃度又は低濃度のいずれであってもよい。
【0022】
元素半導体としては、例えば、Si又はGeなどのIV族半導体を例示することができる。化合物半導体としては、例えば、GaAs、GaN若しくはInPなどのIII-V族化合物、SiC若しくはSiGeなどのIV族化合物半導体、又はZnSe、CdS若しくはZnOなどのII-VI族半導体を例示することができる。
【0023】
金属層130は、例えば、半導体装置において、電流又は信号を伝達する配線又は電極として機能する。金属層130は、例えば、単一の金属材料で形成されてもよく、複数の金属材料による積層構造にて形成されてもよい。金属層130を構成する金属材料としては、例えば、W、Cu、Ti、Al、Pt若しくはAuなどの金属材料、又はTiN若しくはTaNなどの金属化合物を用いることができる。
【0024】
本実施形態に係る電気的接続構造100は、異種の材料で形成された半導体層110と、金属層130との間で、抵抗が低減された適切な接続構造を形成するものである。本実施形態によれば、任意の半導体材料で形成された半導体層110と、任意の金属材料で形成された金属層130とを低抵抗で電気的に接続することが可能である。
【0025】
中間層120は、半導体層110及び金属層130に挟持された極薄膜の層である。
【0026】
ここで、半導体層110及び金属層130を直接接合した場合、半導体層110及び金属層130の接合界面では、金属層130の電子の波動関数が半導体層110に染み出すことで、フェルミレベルピニング(Fermi Level Pinning:FLP)と呼ばれる金属材料の見かけの仕事関数が増大する現象が生じる。このため、半導体層110及び金属層130を直接接合させた場合、ショットキー障壁によって、半導体層110及び金属層130の間の抵抗が高くなってしまう。
【0027】
本実施形態に係る電気的接続構造100では、半導体層110及び金属層130の間に中間層120を設けることによって、FLPの発生を抑制し、半導体層110及び金属層130の間の抵抗を低減することができる。
【0028】
本実施形態では、中間層120は、半導体層110側に設けられた絶縁層121と、金属層130側に設けられた二次元材料層123とを含んで構成される。具体的には、中間層120は、半導体層110側から金属層130側に向かって、絶縁層121及び二次元材料層123を順に積層することで形成されてもよい。このような構成によれば、本実施形態に係る電気的接続構造100では、極薄膜にて形成される中間層120の膜厚がばらついた場合でも、半導体層110及び金属層130の間の抵抗を安定して低減することが可能である。
【0029】
中間層120のうち、絶縁層121は半導体層110と接する側に設けられ、二次元材料層123は金属層130と接する側に設けられる。具体的には、絶縁層121は、半導体層110の上に設けられ、二次元材料層123は、絶縁層121の上に設けられる。さらに、二次元材料層123の上に金属層130が設けられる。
【0030】
絶縁層121は、半導体層110と二次元材料層123との接合を高めるために設けられる。二次元材料層123を構成する二次元材料は、半導体よりも絶縁体との方が結合しやすい。そのため、二次元材料層123は、半導体層110の上よりも、絶縁層121の上の方がより容易に形成され得る。
【0031】
なお、絶縁層121は、二次元材料層123と、金属層130との間に設けられもよい。このような場合、絶縁層121は、二次元材料層123と、金属層130との接合を強めることができる。
【0032】
絶縁層121は、絶縁性の酸化物材料で形成されてもよい。例えば、絶縁層121は、遷移金属、卑金属若しくは半金属又はこれらの混合物の酸化物で形成されてもよい。遷移金属酸化物としては、例えば、TiO2、HfO2、ZrO2、Sc2O3、Y2O3、La2O3又はTa2O5などを例示することができる。卑金属酸化物又は半金属酸化物としては、例えば、Al2O3、Ga2O3、SiO2、GeO2などを例示することができる。遷移金属、卑金属又は半金属の混合物の酸化物としては、例えば、HfSiOなどを例示することができる。
【0033】
絶縁層121を遷移金属酸化物で形成した場合、遷移金属酸化物は、バンドギャップの大きさが比較的小さいため、絶縁層121は、トンネル電流をさらに増加させ、より抵抗を低減することができる。また、遷移金属酸化物は、半導体層110と接しても熱的に安定であるため、絶縁層121は、半導体層110及び金属層130の接続構造をより安定化させることができる。
【0034】
絶縁層121の膜厚は、例えば、0.1nm以上3.0nm以下であってもよい。絶縁層121の膜厚が0.1nm未満の場合、絶縁層121を膜形態として形成することが困難となる。また、絶縁層121の膜厚が3.0nm超の場合、中間層120の全体膜厚が厚くなることでトンネル抵抗が高くなり、半導体層110及び金属層130の間の抵抗が高くなってしまう。電気的接続構造100をより安定して低抵抗化するためには、絶縁層121の膜厚は、例えば、0.5nm以上1.0nm以下としてもよい。
【0035】
二次元材料層123は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有する二次元材料にて形成される。二次元材料は、積層される単位層の増加(すなわち、膜厚の増加)に伴って、バンドギャップの大きさが小さくなるという特性を有する。このような特性を有する二次元材料で形成された二次元材料層123を含むことにより、中間層120は、膜厚の増加に伴うトンネル抵抗の増加を緩和することができる。したがって、二次元材料層123を含むことによって、中間層120は、半導体層110及び金属層130との間の低抵抗状態を実現する膜厚範囲の上限を拡大することができる。
【0036】
二次元材料層123を形成する二次元材料は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有する材料である。二次元材料層123を形成する二次元材料は、具体的には、単原子層状物質若しくは該単原子層状物質に類似する化合物、又は遷移金属ダイカルコゲナイドなどを例示することができる。
【0037】
単原子層状物質、若しくは該単原子層状物質に類似する化合物は、例えば、グラフェン、黒リン(Black Phosphorus)、シリセン(Silicene)又は六方晶窒化ホウ素(hBN)などである。これらの物質又は化合物では、共有結合からなる二次元結晶構造の単層が互いにファンデルワールス力にて積層結合した構造を有する。
【0038】
遷移金属ダイカルコゲナイドは、具体的には、化学式MX2で表される材料である。ここで、Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg又はPbなどの遷移金属元素であり、Xは、S、Se又はTeなどのカルコゲナイド元素である。より具体的には、二次元材料層123を形成する二次元材料は、CrS2、CrSe2、CrTe2、HfS2、HfSe2、HfTe2、MoS2、MoSe2、MoTe2、NiS2、NiSe2、SnS2、SnSe2、TiS2、TiSe2、TiTe2、WS2、WSe2、ZrS2、ZrSe2又はZrTe2のいずれかであってもよい。
【0039】
二次元材料層123が上記の遷移金属ダイカルコゲナイドで形成される場合、遷移金属ダイカルコゲナイドは、ALD(Atomic Layer Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)又はPVD(Phisical Vapor Deposition)等を用いて成膜することが可能であるため、半導体層110及び金属層130の接続構造をより容易に形成することができる。
【0040】
また、二次元材料層123が遷移金属ダイカルコゲナイドで形成される場合、半導体層110及び金属層130を形成する材料の特性を考慮することで、より適切な電気的接続構造を形成するように、二次元材料層123の材料を選択することが可能である。
【0041】
例えば、XがS、Se、Teの順で変化するに伴い、化学式MX2で表される遷移金属ダイカルコゲナイドのコンダクションバンド(conduction band)は、より浅いエネルギー領域にシフトする。したがって、半導体層110及び金属層130を形成する材料のフェルミ準位が深い場合(例えば、金属材料としては、Pt、Ni、Au等である場合)、二次元材料層123を形成する遷移金属ダイカルコゲナイドは、MS2(すなわち、X=S)で表される材料を用いてもよい。このような場合、半導体層110及び金属層130を形成する材料のフェルミ準位と、二次元材料層123を形成する遷移金属ダイカルコゲナイドのコンダクションバンドが存在するエネルギー領域の準位とをより近づけることができる。
【0042】
上述したように、二次元材料は、積層される単位層の増加に伴って、バンドギャップの大きさが小さくなる特性を有する。しかしながら、二次元材料層123の単位層の積層数が10層超である場合、中間層120の全体膜厚が厚くなることで、バンドギャップの縮小による抵抗の低減を超えてトンネル抵抗が高くなり、半導体層110及び金属層130の間の抵抗が高くなってしまう。したがって、二次元材料層123の単位層の積層数の上限は10層とし、二次元材料層123の単位層の積層数の範囲は、1層以上10層以下としてもよい。なお、二次元材料層123の単位層とは、二次元材料の二次元構造を形成する原子の1繰り返しサイクルを表す。
【0043】
また、二次元材料層123の膜厚は、0.5nm以上5.0nm以下であってもよい。二次元材料層123の膜厚が0.5nm未満の場合、二次元材料層123が過度に薄膜となるため、二次元材料層123の単位層が形成されない可能性がある。また、二次元材料層123の膜厚が5.0nm超の場合、中間層120の全体膜厚が厚くなることでトンネル抵抗が高くなり、半導体層110及び金属層130の間の抵抗が高くなる可能性がある。
【0044】
さらに、中間層120の総膜厚は、0.6nm以上5.0nm以下であってもよい。中間層120の膜厚が0.6nm未満の場合、金属層130の電子の波動関数が半導体層110側に染み出すことを防げず、FLPを解くことができない可能性がある。また、中間層120の膜厚が5.0nm超の場合、中間層120の全体膜厚が厚くなることでトンネル抵抗が高くなり、半導体層110及び金属層130の間の抵抗が高くなる可能性がある。
【0045】
このような構成によれば、本実施形態に係る電気的接続構造100では、半導体層110及び金属層130という異種の材料を、より低抵抗で電気的に接続することが可能である。
【0046】
また、本実施形態に係る電気的接続構造100では、半導体層110及び金属層130に挟持される中間層120は、より厚い膜厚でもトンネル抵抗を増加させずに低抵抗状態を維持することができる。したがって、電気的接続構造100は、中間層120の膜厚ばらつきによって抵抗状態が変化してしまうことを防止することができると共に、中間層120を形成する際のプロセスマージンを増加させることができる。
【0047】
具体的には、中間層120の最適膜厚の範囲を1nm~2nm程度拡大することができるため、中間層120を形成する際のプロセスマージンをより大きくすることができる。例えば、上述したように、中間層120の膜厚が0.6nm~5.0nmである場合、本実施形態によれば、中間層120の膜厚のマージンを40%~100%程度拡大することが可能である。
【0048】
よって、本実施形態に係る電気的接続構造100によれば、半導体層110及び金属層130をより安定して電気的に接続することができる。
【0049】
(1.2.本実施形態の作用機序)
続いて、半導体層110及び金属層130を低抵抗で電気的に接続可能とする作用機序について、他の構造例に係る接続構造を参照して説明する。
【0050】
図2Aは、半導体層110及び金属層130を絶縁層のみを介して接続する電気的接続構造を模式的に示す縦断面図であり、
図2Bは、半導体層110及び金属層130を二次元材料層のみを介して接続する電気的接続構造を模式的に示す縦断面図である。
【0051】
まず、
図2Aに示すように、電気的接続構造101は、半導体層110及び金属層130の間に絶縁層121のみを挟持させた、いわゆるMISコンタクト構造である。
【0052】
半導体層110及び金属層130については、
図1で示した電気的接続構造100と実質的に同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0053】
絶縁層121は、遷移金属、卑金属若しくは半金属又はこれらの混合物の酸化物で形成されてもよい。遷移金属酸化物としては、例えば、TiO2、HfO2、ZrO2、Sc2O3、Y2O3、La2O3又はTa2O5などを例示することができる。卑金属酸化物又は半金属酸化物としては、例えば、Al2O3、Ga2O3、SiO2、GeO2などを例示することができる。遷移金属、卑金属又は半金属の混合物の酸化物としては、例えば、HfSiOなどを例示することができる。
【0054】
また、
図2Bに示すように、電気的接続構造102は、半導体層110及び金属層130の間に二次元材料層123のみを挟持させたコンタクト構造である。
【0055】
半導体層110及び金属層130については、
図1で示した電気的接続構造100と実質的に同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0056】
二次元材料層123は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有する二次元材料にて形成される。二次元材料層123を形成する二次元材料は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有する材料である。二次元材料層123を形成する二次元材料は、具体的には、単原子層状物質、若しくは該単原子層状物質に類似する化合物、又は遷移金属ダイカルコゲナイドなどであってもよい。
【0057】
遷移金属ダイカルコゲナイドは、具体的には、化学式MX2で表される材料である。ここで、Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg又はPbなどの遷移金属元素であり、Xは、S、Se又はTeなどのカルコゲナイド元素である。より具体的には、二次元材料層123を形成する二次元材料は、CrS2、CrSe2、CrTe2、HfS2、HfSe2、HfTe2、MoS2、MoSe2、MoTe2、NiS2、NiSe2、SnS2、SnSe2、TiS2、TiSe2、TiTe2、WS2、WSe2、ZrS2、ZrSe2又はZrTe2のいずれかであってもよい。
【0058】
ここで、
図3を参照して、本実施形態に係る電気的接続構造100、上述した電気的接続構造101及び電気的接続構造102の各々について、半導体層110及び金属層130に挟持される層の膜厚と、接続構造の抵抗との関係を説明する。
図3は、
図1~
図2Bで示す電気的接続構造において、半導体層及び金属層に挟持される層の膜厚と、接続構造の抵抗との関係を示した説明図である。
【0059】
図3では、絶縁層121のみを用いた電気的接続構造101のエネルギーダイアグラムの模式図を「A」として示し、二次元材料層123のみを用いた電気的接続構造102のエネルギーダイアグラムの模式図を「B」として示し、本実施形態に係る電気的接続構造100のエネルギーダイアグラムの模式図を「C」として示す。
【0060】
図3に示すように、半導体層110及び金属層130に挟持される層が絶縁層121のみである場合(「A」の場合)、(1)で示す膜厚では、半導体層110及び金属層130が直接接合されるため、半導体層110及び金属層130の接合界面でFLPが生じる。したがって、(1)で示す膜厚では、半導体層110及び金属層130の間の抵抗は、ショットキー障壁によって高くなる。
【0061】
(2)で示す膜厚では、半導体層110及び金属層130の間に介在する層の膜厚が薄いため、半導体層110及び金属層130の接合界面でのFLPを十分に解くことができない。したがって、半導体層110及び金属層130の間の抵抗は、ショットキー障壁によって比較的高いままである。
【0062】
(3)で示す膜厚では、半導体層110及び金属層130の間に介在する層の膜厚は、半導体層110及び金属層130の接合界面でのFLPを解くために適切な膜厚である。したがって、金属層130から染み出した電子の波動関数が半導体層110に届かなくなるため、FLPが生じない。また、半導体層110及び金属層130に挟持される層の膜厚が十分薄いため、半導体層110及び金属層130の間のトンネル距離が短くトンネル電流を流すことができる。これにより、半導体層110及び金属層130の間の抵抗が低減され得る。
【0063】
ここで、(4)に示す膜厚では、半導体層110及び金属層130の間に介在する層の膜厚は、半導体層110及び金属層130の接合界面でのFLPを解くために適切な膜厚である。したがって、金属層130から染み出した電子の波動関数が半導体層110に届かなくなるため、FLPが生じない。しかしながら、半導体層110及び金属層130に挟持される層が絶縁層121である場合(「A」の場合)、絶縁層121の膜厚増加に伴ってトンネル距離が長くなり、トンネル抵抗が高くなってしまうため、半導体層110及び金属層130の間の抵抗は高くなってしまう。
【0064】
一方で、半導体層110及び金属層130に挟持される層に二次元材料層123が含まれる場合(「B」又は「C」の場合)、二次元材料層123の膜厚増加に伴って二次元材料層123のバンドギャップが小さくなり、二次元材料層123のトンネル障壁が低下する。二次元材料層123等の極薄膜を電子がトンネルする確率は、トンネル距離とトンネル障壁の高さの積に指数関数的に比例する。そのため、二次元材料層123を用いた場合(「B」又は「C」の場合)は、絶縁層121のみを用いた場合(「A」の場合)と比較して、膜厚増加に伴うトンネル抵抗の増加が穏やかになるため、半導体層110及び金属層130の間の抵抗増加を抑制することができる。
【0065】
したがって、半導体層110及び金属層130の間に二次元材料層123を設ける場合、半導体層110及び金属層130の間に絶縁層121のみを設ける場合と比較して、膜厚の増加によってトンネル障壁が低下するため、電気的接続構造では、より厚い膜厚でも半導体層110及び金属層130の間にトンネル電流を流すことができる。
【0066】
なお、(5)に示す膜厚では、半導体層110及び金属層130の間に介在する層の膜厚が十分に厚く、トンネル距離が長くなるため、絶縁層121又は二次元材料層123のいずれの場合でも、トンネル抵抗が高くなってしまう。そのため、半導体層110及び金属層130の間の抵抗は高くなってしまう。
【0067】
すなわち、半導体層110及び金属層130の接続構造は、半導体層110及び金属層130の間のFLPの解消に伴うショットキー抵抗の低下と、半導体層110及び金属層130に挟持される層の膜厚増加によるトンネル抵抗の増加とをバランスさせることで、低抵抗状態とすることができる。
【0068】
図3に示すグラフでは、半導体層110及び金属層130の間のFLPの解消に伴うショットキー抵抗の低下を「Sch」で示し、半導体層110及び金属層130に挟持される絶縁層121の膜厚増加に伴うトンネル抵抗の増加を「Tins」で示し、半導体層110及び金属層130に挟持される二次元材料層123の膜厚増加に伴うトンネル抵抗の増加を「Ttmd」で示す。
【0069】
図3を参照すると、「Ttmd」は、「Tins」よりも膜厚増加に伴う抵抗の増加が緩やかであるため、「Sch」と「Ttmd」とを足し合わせたグラフBは、「Sch」と「Tins」とを足し合わせたグラフAよりも膜厚の増加に伴う抵抗の増加が緩やかになる。したがって、二次元材料層123は、絶縁層121よりも、半導体層110及び金属層130の間に介在した際に接続構造が低抵抗状態となる膜厚範囲が広くなる。
【0070】
本実施形態に係る電気的接続構造100における半導体層110及び金属層130の間の抵抗低減の作用機序は、
図3の「C」で示すように、半導体層110及び金属層130の間に二次元材料層123のみを介在させた「B」と同様である。ただし、二次元材料層123と、半導体層110及び金属層130との接合の強さを考慮すると、半導体層110及び金属層130の間に二次元材料層123のみを形成する場合、二次元構造が適切に形成されず、抵抗が低減されない可能性がある。本実施形態に係る電気的接続構造100では、半導体層110及び金属層130の間に中間層120として絶縁層121及び二次元材料層123を設けることによって、より安定して半導体層110及び金属層130の間の抵抗を低減することが可能となる。
【0071】
図4では、
図3のグラフで模式的に示した半導体層及び金属層に挟持される層の膜厚と、接続構造の抵抗との関係を実際にシミュレーションによって確認した結果を示す。
図4では、金属-絶縁膜-半導体を接合した接続構造のシミュレーション結果を「A」で示し、金属-二次元材料層(TMD)-半導体を接合した接続構造のシミュレーション結果を「B」で示す。また、
図4のグラフの横軸は、絶縁膜又は二次元材料層の膜厚を相対目盛で示しており、
図4のグラフの縦軸は、抵抗率を対数表記の相対目盛で示している。
【0072】
図4で示すように、シミュレーションによっても、金属-二次元材料層(TMD)-半導体を接合した接続構造は、金属-絶縁膜-半導体を接合した接続構造よりも、絶縁膜又は二次元材料層の膜厚増加に伴う抵抗の増加が少ないことが確認される。したがって、二次元材料を介在させた金属及び半導体の接続構造は、絶縁膜を介在させた金属及び半導体の接続構造と比較して、二次元材料層の膜厚がより厚い場合であっても、低抵抗化可能であることがわかる。
【0073】
<2.第2の実施形態>
続いて、
図5~
図9Cを参照して、本開示の第2の実施形態に係る半導体装置について説明する。本実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態で説明した半導体層110及び金属層130の電気的接続構造を含む各種電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)、ダイオード、バイポーラトランジスタ、固体撮像装置、記憶装置又は演算装置などの種々の半導体装置である。
【0074】
例えば、本実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態で説明した電気的接続構造を含むプレナー(Planar)型FET、Fin型FET、若しくはGAA(Gate-All-Around)型FETなどの各種トランジスタ、整流ダイオード、フォトダイオード若しくは発光ダイオードなどの各種ダイオード、pnp型若しくはnpn型のバイポーラトランジスタ、又はイメージセンサなどであってもよい。
【0075】
以下では、本実施形態に係る半導体装置としてプレナー型FETを例示して、第1の構造例及び第2の構造例の各々について説明する。
【0076】
(2.1.第1の構造例)
まず、
図5を参照して、第1の構造例に係る半導体装置について説明する。
図5は、第1の構造例に係る半導体装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0077】
図5に示すように、第1の構造例に係る半導体装置は、半導体基板200と、ゲート絶縁膜231と、ゲート電極230と、サイドウォール241と、ソース領域210Sと、ドレイン領域210Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260と、層間絶縁膜243とを備える。ここで、半導体基板200に形成されたソース領域210S又はドレイン領域210Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260とによって、第1の実施形態に係る電気的接続構造100が形成される。
【0078】
なお、以下で説明する「第1導電型」とは、「p型」または「n型」のいずれか一方を表し、「第2導電型」とは、「第1導電型」とは異なる「p型」または「n型」のいずれか他方を表す。すなわち、「第1導電型」が「p型」である場合、「第2導電型」は「n型」である。「第1導電型」が「n型」である場合、「第2導電型」は「p型」である。
【0079】
半導体基板200は、元素半導体又は化合物半導体にて構成される基板である。半導体基板200は、例えば、Si又はGeなどのIV族半導体で構成される基板であってもよい。または、半導体基板200は、GaAs、GaN若しくはInPなどのIII-V族化合物、SiC若しくはSiGeなどのIV族化合物半導体、又はZnSe、CdS若しくはZnOなどのII-VI族半導体で構成される基板であってもよい。半導体基板200は、第1導電型の不純物(例えば、ホウ素(B)又はアルミニウム(Al)などのp型不純物)がドーピングされることで、活性化されていてもよい。
【0080】
ゲート絶縁膜231は、半導体基板200の上に絶縁性材料で設けられる。ゲート絶縁膜231は、例えば、SiOx又はSiNxなどの無機絶縁材料で形成されてもよく、HfOx等の高誘電体材料で形成されてもよい。また、ゲート絶縁膜231は、単層膜であってもよく、複数の材料からなる積層膜であってもよい。
【0081】
ゲート電極230は、ゲート絶縁膜231の上に導電材料で設けられる。ゲート電極230は、poly-Siで形成されてもよく、W、Cu、Ti、Al、Pt若しくはAuなどの金属材料、又はTiN若しくはTaNなどの金属化合物で形成されてもよい。
【0082】
サイドウォール241は、半導体基板200の表面から突出するゲート絶縁膜231及びゲート電極230の側面に絶縁材料で形成される側壁である。具体的には、サイドウォール241は、ゲート電極230が形成された半導体基板200の全面に亘って絶縁膜を成膜した後、垂直異方性を有するエッチングを行うことで形成され得る。例えば、サイドウォール241は、SiOx又はSiNxなどの無機絶縁材料で形成されてもよい。
【0083】
サイドウォール241は、第2導電型の不純物を半導体基板200にドーピングする際に、第2導電型の不純物を遮蔽するマスクとして機能する。サイドウォール241を用いることで、ソース領域210S及びドレイン領域210Dを自己整合的に形成することが可能である。
【0084】
ソース領域210S及びドレイン領域210Dは、第2導電型にドーピングされた領域であり、ゲート電極230を挟んで対向する半導体基板200の両側に設けられる。ソース領域210S及びドレイン領域210Dは、例えば、半導体基板200の所定の領域に、第2導電型の不純物(例えば、リン(P)、ヒ素(As)などのn型不純物)をドーピングすることで形成することができる。
【0085】
なお、ソース領域210S及びドレイン領域210Dと、ゲート電極230が設けられた領域との間には、第2導電型の不純物が低濃度で導入されたLDD(Ligtly Doped Drain)領域が形成されてもよい。
【0086】
層間絶縁膜243は、ゲート電極230が設けられた領域以外の領域を埋め込むように、半導体基板200の上に絶縁材料で設けられる。層間絶縁膜243は、ゲート電極230及び電極260に接続する配線と、半導体基板200とを電気的に絶縁することで、半導体装置における立体的な配線接続を可能とする。層間絶縁膜243は、例えば、SiOx又はSiNxなどの無機絶縁材料で形成されてもよい。
【0087】
絶縁層251は、上述したように、絶縁性の酸化物材料で形成される。例えば、絶縁層251は、ソース領域210S又はドレイン領域210Dと、電極260とを電気的に接続するために、層間絶縁膜243に設けられた開口の内壁に沿って、半導体基板200の上に設けられてもよい。
【0088】
二次元材料層253は、上述したように、二次元材料で形成される。例えば、二次元材料層253は、ソース領域210S又はドレイン領域210Dと、電極260とを電気的に接続するために層間絶縁膜243に設けられた開口の内壁に沿って、絶縁層251の上に設けられてもよい。
【0089】
電極260は、ソース領域210S又はドレイン領域210Dから信号又は電流を取り出すための電極である。具体的には、電極260は、ソース領域210S又はドレイン領域210Dを露出させるために、層間絶縁膜243に設けられた開口を金属材料で埋め込むことで形成されてもよい。電極260は、例えば、W、Cu、Ti、Al、Pt若しくはAuなどの金属材料、又はTiN若しくはTaNなどの金属化合物で形成されてもよい。
【0090】
第1の構造例に係る半導体装置では、半導体基板200のソース領域210S又はドレイン領域210Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260との積層構造が、第1の実施形態に係る電気的接続構造100にて形成され得る。
【0091】
続いて、
図6A~
図6Eを参照して、第1の構造例に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図6A~
図6Eは、第1の構造例に係る半導体装置を製造する各工程を説明する模式的な縦断面図である。
【0092】
まず、
図6Aに示すように、公知の方法を用いて電界効果トランジスタが形成され、層間絶縁膜243による埋め込みが行われる。例えば、第1導電型にドーピングされた半導体基板200の上に、ゲート絶縁膜231及びゲート電極230を成膜した後、サイドウォール241が形成される。その後、ゲート電極230及びサイドウォール241をマスクとして、第2導電型の不純物を半導体基板200にドーピングすることで、ソース領域210S及びドレイン領域210Dが形成される。さらに、ゲート電極230が設けられた領域以外の領域を埋め込むように、ソース領域210S及びドレイン領域210Dの上に層間絶縁膜243が形成される。
【0093】
続いて、
図6Bに示すように、ソース領域210S及びドレイン領域210Dを露出させるように、層間絶縁膜243に開口245が形成される。具体的には、パターニングされたマスクを用いてドライエッチングを行うことで、層間絶縁膜243の一部に開口245が形成される。
【0094】
その後、
図6Cに示すように、開口245を含む層間絶縁膜243、及びゲート電極230の全面に亘って、絶縁層251及び二次元材料層253が順に成膜される。具体的には、原子堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いることで、数nmの薄膜にて絶縁層251及び二次元材料層253を一様に形成することができる。ただし、開口245の底部に露出したソース領域210S及びドレイン領域210Dに均一な薄膜を形成可能であれば、絶縁層251及び二次元材料層253は、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposion:CVD)又は物理気相蒸着法(Physical Vapor Deposition)などを用いて形成されてもよい。
【0095】
次に、
図6Dに示すように、電極260が形成される。具体的には、層間絶縁膜243に設けられた開口245を埋め込むように、二次元材料層253の上に金属材料が成膜されることで、電極260が形成される。
【0096】
その後、
図6Eに示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等を用いて、半導体装置の表面の平坦化が行われる。具体的には、CMPを用いて、ゲート電極230が露出するまで電極260、二次元材料層253及び絶縁層251を研磨することで、半導体装置の表面の平坦化が行われる。
【0097】
以上の工程により、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。なお、
図6Eの後、配線工程が行われることで、ゲート電極230及び電極260と、各種配線との電気的な接続が形成される。
【0098】
さらに、
図7A及び
図7Bを参照して、第1の構造例に係る半導体装置の変形例について説明する。
図7Aは、第1の構造例に係る半導体装置の一変形例を示す縦断面図であり、
図7Bは、第1の構造例に係る半導体装置の他の変形例を示す縦断面図である。
【0099】
例えば、
図7Aに示すように、半導体装置において、ソース領域210S及びドレイン領域210Dの表面には、ライズドソース領域211S及びライズドドレイン領域211Dが形成されてもよい。ライズドソース領域211S及びライズドドレイン領域211Dは、例えば、ソース領域210S及びドレイン領域210Dの表面において、Si又はSiGeなどの半導体材料をエピタキシャル成長させることで形成される。ライズドソース領域211S及びライズドドレイン領域211Dを形成することによって、
図7Aに示す半導体装置では、ゲート長の微細化による短チャネル効果を抑制することができる。
【0100】
このような半導体装置では、ライズドソース領域211S又はライズドドレイン領域211Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260との積層構造が、第1の実施形態に係る電気的接続構造100にて形成され得る。
【0101】
または、例えば、
図7Bに示すように、半導体装置において、ソース領域210S及びドレイン領域210Dに替えて、半導体基板200には、エンベデッドソース領域213S及びエンベデッドドレイン領域213Dが形成されてもよい。エンベデッドソース領域213S及びエンベデッドドレイン領域213Dは、例えば、半導体基板200のソース領域210S及びドレイン領域210Dに対応する領域をエッチングによって除去した後、除去された領域をSi又はSiGeなどの半導体材料にて埋め込み、該半導体材料をエピタキシャル成長させることで形成される。エンベデッドソース領域213S及びエンベデッドドレイン領域213Dを形成することによって、
図7Bに示す半導体装置では、ゲート長の微細化による短チャネル効果を抑制することができる。
【0102】
このような半導体装置では、エンベデッドソース領域213S又はエンベデッドドレイン領域213Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260との積層構造が、第1の実施形態に係る電気的接続構造100にて形成され得る。
【0103】
(2.2.第2の構造例)
次に、
図8を参照して、第2の構造例に係る半導体装置について説明する。
図8は、第2の構造例に係る半導体装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0104】
図8に示すように、第2の構造例に係る半導体装置は、半導体基板200と、ゲート絶縁膜231と、ゲート電極230と、サイドウォール241と、ソース領域210Sと、ドレイン領域210Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260と、層間絶縁膜243とを備える。ここで、半導体基板200に形成されたソース領域210S又はドレイン領域210Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260とによって、第1の実施形態に係る電気的接続構造100が形成される。
【0105】
第2の構造例に係る半導体装置は、第1の構造例に係る半導体装置と比較して、絶縁層251及び二次元材料層253が形成される領域のみが異なり、その他の構成については、第1の構造例と実質的に同様である。そのため、ここでは、絶縁層251及び二次元材料層253が形成される領域について説明し、その他の構成についての説明は省略する。
【0106】
図8に示すように、絶縁層251及び二次元材料層253は、半導体基板200のソース領域210S及びドレイン領域210Dの上に設けられる。
【0107】
すなわち、第2の構造例に係る半導体装置では、絶縁層251及び二次元材料層253は、あらかじめ半導体基板200の上に形成されており、絶縁層251及び二次元材料層253を露出させるように開口245が形成された後、開口245を埋め込むように電極260が形成される。一方、第1の構造例に係る半導体装置では、半導体基板200を露出させるように開口245が形成された後、開口245内部に絶縁層251及び二次元材料層253が形成され、開口を埋め込むように電極260が形成される。
【0108】
第2の構造例に係る半導体装置でも、第1の構造例に係る半導体装置と同様に、半導体基板200のソース領域210S又はドレイン領域210Dと、絶縁層251と、二次元材料層253と、電極260との積層構造が、第1の実施形態に係る電気的接続構造100にて形成され得る。
【0109】
続いて、
図9A~
図9Cを参照して、第2の構造例に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図9A~
図9Cは、第2の構造例に係る半導体装置を製造する各工程を説明する模式的な縦断面図である。
【0110】
図9Aに示すように、公知の方法を用いて電界効果トランジスタが形成され、絶縁層251及び二次元材料層253の成膜が行われる。例えば、第1導電型にドーピングされた半導体基板200の上に、ゲート絶縁膜231及びゲート電極230を成膜した後、サイドウォール241が形成される。その後、ゲート電極230及びサイドウォール241をマスクとして、第2導電型の不純物を半導体基板200にドーピングすることで、ソース領域210S及びドレイン領域210Dが形成される。さらに、ALDを用いることで、ソース領域210S及びドレイン領域210Dの上に絶縁層251及び二次元材料層253が順に成膜される。なお、絶縁層251及び二次元材料層253は、CVD又はPVDなどを用いて形成されてもよい。
【0111】
続いて、
図9Bに示すように、ソース領域210S及びドレイン領域210D上に層間絶縁膜243が成膜された後、二次元材料層253を露出させるように、層間絶縁膜243に開口245が形成される。具体的には、まず、ゲート電極230が設けられた領域以外の領域を埋め込むように、二次元材料層253の上に層間絶縁膜243が形成される。その後、パターニングされたマスクを用いてドライエッチングを行うことで、二次元材料層253を露出させるように、層間絶縁膜243の一部に開口245が形成される。なお、開口245の形成には、いわゆるセルフアラインコンタクト(Self Aligned Contact:SAC)プロセスを適用してもよい。
【0112】
その後、
図9Cに示すように、電極260が形成される。具体的には、層間絶縁膜243に設けられた開口245を埋め込むように、二次元材料層253の上に金属材料が成膜されることで、電極260が形成される。その後、CMP等を用いて、半導体装置の表面の平坦化が行われる。具体的には、CMPを用いて、ゲート電極230が露出するまで電極260を研磨することで、半導体装置の表面の平坦化が行われる。
【0113】
以上の工程により、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。なお、
図9Cの後、配線工程が行われることで、ゲート電極230及び電極260と、各種配線との電気的な接続が形成される。
【0114】
第1の構造例に係る半導体装置では、第2の構造例とは異なり、開口245を形成する際のエッチングにおいて、エッチングを精密に制御しなくともよく、かつ二次元材料層253にダメージを与えることがない。そのため、第1の構造例によれば、エッチング選択比等を考慮する必要がないため、絶縁層251、二次元材料層253及び層間絶縁膜243の材料選択の幅を広げることができる。
【0115】
一方、第2の構造例に係る半導体装置では、第1の構造例とは異なり、開口245の底部に絶縁層251及び二次元材料層253を成膜しなくともよい。そのため、第2の構造例によれば、アスペクト比が高い開口245の内部に薄膜を成膜する必要がないため、電極260のアスペクト比を高くすることが可能である。
【0116】
<3.適用例>
本開示の第2の実施形態に係る半導体装置は、種々の電子機器に搭載される回路内の半導体素子に適用することができる。ここで、
図10A~
図10Cを参照して、本実施形態に係る半導体装置が適用され得る電子機器の例について説明する。
図10A~
図10Cは、本実施形態に係る半導体装置が適用され得る電子機器の一例を示す外観図である。
【0117】
例えば、本実施形態に係る半導体装置は、スマートフォンなどの電子機器に搭載される回路内の半導体素子に適用することができる。具体的には、
図10Aに示すように、スマートフォン900は、各種情報を表示する表示部901と、ユーザによる操作入力を受け付けるボタン等から構成される操作部903と、を備える。ここで、スマートフォン900の各種動作を制御する制御回路内の半導体素子には、本実施形態に係る半導体装置が適用されてもよい。
【0118】
例えば、本実施形態に係る半導体装置は、デジタルカメラなどの電子機器に搭載される回路内の半導体素子に適用することができる。具体的には、
図10B及び
図10Cに示すように、デジタルカメラ910は、本体部(カメラボディ)911と、交換式のレンズユニット913と、撮影時にユーザによって把持されるグリップ部915と、各種情報を表示するモニタ部917と、撮影時にユーザによって観察されるスルー画を表示するEVF(Electronic View Finder)919と、を備える。なお、
図10Bは、デジタルカメラ910を前方(すなわち、被写体側)から眺めた外観図であり、
図10Cは、デジタルカメラ910を後方(すなわち、撮影者側)から眺めた外観図である。ここで、デジタルカメラ910の各種動作を制御する制御回路内の半導体素子には、本実施形態に係る半導体装置が適用されてもよい。
【0119】
なお、本実施形態に係る半導体装置が適用される電子機器は、上記例示に限定されない。本実施形態に係る半導体装置は、あらゆる分野の電子機器に搭載される回路内の半導体素子に適用することが可能である。このような電子機器としては、例えば、眼鏡型ウェアラブルデバイス、HMD(Head Mounted Display)、テレビジョン装置、電子ブック、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ又はゲーム機器等を例示することができる。
【0120】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0121】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0122】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
半導体層と、
金属層と、
前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層と、
を備える、電気的接続構造。
(2)
前記二次元材料層は、二次元構造の単位層が積層された層状構造を有する二次元材料にて形成される、前記(1)に記載の電気的接続構造。
(3)
前記二次元材料層の前記単位層の積層数は、1層以上10層以下である、前記(2)に記載の電気的接続構造。
(4)
前記二次元材料層の膜厚は、0.5nm以上5.0nm以下である、前記(1)~3にいずれか一項に記載の電気的接続構造。
(5)
前記絶縁層の膜厚は、0.1nm以上3.0nm以下である、前記(1)~4にいずれか一項に記載の電気的接続構造。
(6)
前記中間層の総膜厚は、0.6nm以上5.0nm以下である、前記(1)~5にいずれか一項に記載の電気的接続構造。
(7)
前記二次元材料層は、化学式MX2で表される材料にて形成され、
前記Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg又はPbのいずれかであり、
前記Xは、S、Se又はTeのいずれかである、前記(1)~6にいずれか一項に記載の電気的接続構造。
(8)
前記化学式MX2で表される材料は、CrS2、CrSe2、CrTe2、HfS2、HfSe2、HfTe2、MoS2、MoSe2、MoTe2、NiS2、NiSe2、SnS2、SnSe2、TiS2、TiSe2、TiTe2、WS2、WSe2、ZrS2、ZrSe2又はZrTe2のいずれかである、前記(7)に記載の電気的接続構造。
(9)
前記絶縁層は、酸化物にて形成される、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の電気的接続構造。
(10)
前記酸化物は、遷移金属酸化物である、前記(9)に記載の電気的接続構造。
(11)
半導体層及び金属層を電気的に接続するコンタクト構造を備え、
前記コンタクト構造は、
前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層を含む、半導体装置。
(12)
半導体層及び金属層を電気的に接続するコンタクト構造を備え、
前記コンタクト構造は、
前記半導体層側に設けられた絶縁層、及び前記金属層側に設けられた二次元材料層を含み、前記半導体層及び前記金属層に挟持される中間層を含む、電子機器。
【符号の説明】
【0123】
100 電気的接続構造
110 半導体層
120 中間層
121 絶縁層
123 二次元材料層
130 金属層
200 半導体基板
210D ドレイン領域
210S ソース領域
211D ライズドドレイン領域
211S ライズドソース領域
213D エンベデッドドレイン領域
213S エンベデッドソース領域
230 ゲート電極
231 ゲート絶縁膜
241 サイドウォール
243 層間絶縁膜
251 絶縁層
253 二次元材料層
260 電極