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特許7168575トリフルリジン/チピラシル塩酸塩、抗腫瘍白金錯体、及び免疫チェックポイント調節剤の新規組み合わせ物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】トリフルリジン/チピラシル塩酸塩、抗腫瘍白金錯体、及び免疫チェックポイント調節剤の新規組み合わせ物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221101BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20221101BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K31/282
A61K31/513
A61K31/7072
A61K33/243
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019550225
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018056632
(87)【国際公開番号】W WO2018167256
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】17161630.3
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アバスタドー,ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】アメラル,ナディア
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ビュルブリッジ,ミッシェル・フランク
(72)【発明者】
【氏名】カッタン,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】レジェ,カトリーヌ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/152407(WO,A1)
【文献】MAMORU NUKATSUKA,EFFICACY OF COMBINATION CHEMOTHERAPY USING A NOVEL ORAL CHEMOTHERAPEUTIC AGENT, 以下備考,ANTICANCER RESEARCH,2015年09月,VOL:35, NR:9,PAGE(S):4605 - 4615,http://ar.iiarjournals.org/content/35/9/4605.full.pdf,TAS-102, WITH OXALIPLATIN ON HUMAN COLORECTAL AND GASTRIC CANCER XENOGRAFTS
【文献】IGNACIO MELERO,EVOLVING SYNERGISTIC COMBINATIONS OF TARGETED IMMUNOTHERAPIES TO COMBAT CANCER,NATURE REVIEWS CANCER,英国,2015年07月24日,VOL:15,PAGE(S):457-472,http://dx.doi.org/10.1038/nrc3973
【文献】STEWART R,IDENTIFICATION AND CHARACTERIZATION OF MEDI4736, AN ANTAGONISTIC ANTI-PD-L1 MONOCLONAL ANTIBODY,CANCER IMMUNOLOGY RESEARCH,米国,2015年09月,VOL:3, NR:9,PAGE(S):1052 - 1062,http://dx.doi.org/10.1158/2326-6066.CIR-14-0191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- FTD-TPI薬と、
オキサリプラチンと、
抗PD-1抗体
を含む、癌で使用するための組み合わせ物。
【請求項2】
同時又は逐次の処置的使用のための、請求項1記載の組み合わせ物
【請求項3】
抗PD-1抗体が、ニボルマブ及びペンブロリズマブから選択される、請求項1又は2記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブである、請求項記載の組み合わせ物。
【請求項5】
各成分が、それぞれが単独で投与されるときの推奨用量の好ましくは50~100%の用量で、逐次又は同時の方式で投与される、請求項1~4のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項6】
3つの成分の投与方式が同時である、請求項1~5のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項7】
3つの成分の投与方式が逐次である、請求項1~5のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項8】
抗PD-1抗体による処置が、他の2つの成分よりも後に開始される、請求項記載の組み合わせ物。
【請求項9】
14日間の処置サイクル中に投与されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項10】
前記FTD-TPI薬が、5連続日間にわたって1日あたり2回に分けてFTDに換算して20~80mg/m2/日の用量で経口投与され、次いで、9日間の休止期間が設けられることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項11】
キサリプラチン2週間毎に繰り返して60~90mg/m2の用量静脈内投与されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記抗PD-1抗体がニボルマブであり、そして、2週間毎に3mg/kgの用量で静脈内投与されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項13】
- 1日目から5日目までFTDに換算して25、30又は35mg/m2/用量の用量でFTD-TPI薬のbid(1日2回)経口投与、続いて、6日目から14日目まで9日間の回復期間;
- 1日目に85又は65mg/m2のオキサリプラチンの投与;及び
- 1日目又は24時間~14日間後に3mg/kgの用量のニボルマブの投与
を含む14日間処置サイクル中に投与されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項14】
- 1日目から5日目まで朝食及び夕食の終了後1時間以内にFTDに換算して25、30又は35mg/m2/用量の用量でFTD-TPI薬のbid(1日2回)経口投与、続いて、6日目から14日目まで9日間の回復期間;
- 1日目に85又は65mg/m2で2時間注入としてオキサリプラチンの静脈内投与(前記注入の開始は、1日目のFTD-TPIの朝の投与と同時である);並びに
- 3mg/kgの用量のニボルマブの静脈内投与(前記注入の開始は、1日目のFTD-TPIの朝の投与と同時又は逐次で24時間~14日間後である)
を含む14日間処置サイクル中に投与されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項15】
ニボルマブが1日目に投与されることを特徴とする、請求項13又は14記載の組み合わせ物。
【請求項16】
ニボルマブが1日目の24時間~14日間後に投与されることを特徴とする、請求項13又は14記載の組み合わせ物。
【請求項17】
置の組み合わせが患者にとって有益である限り、14日間処置を繰り返すことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項記載の組み合わせ物
【請求項18】
記癌が、結腸直腸癌又は胃癌である、請求項1~16のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項19】
前記癌が、転移性結腸直腸癌である、請求項1~16のいずれか一項記載の組み合わせ物。
【請求項20】
1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項1~19のいずれか一項記載の組み合わせ物
【請求項21】
時に又は逐次に投与するための、
- FTD-TPI薬と、
オキサリプラチンと、
抗PD-1抗体
を別々に又は一緒に含有する、癌で使用するための医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、i)トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩、ii)抗腫瘍白金錯体、及びiii)免疫チェックポイント調節剤の組み合わせ物を含む抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフルリジン(別名:α,α,α-トリフルオロチミジン;以後「FTD」とも呼ばれる)は、腫瘍細胞のDNAに組み込まれることによってDNAの機能阻害を引き起こし、そして、抗腫瘍効果を呈する。一方、チピラシル塩酸塩(化学名:5-クロロ-6-[(2-イミノピロリジン-1-イル)メチル]-ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸塩;以後「TPI」とも呼ばれる)は、チミジンホスホリラーゼ阻害効果を有する。TPIは、チミジンホスホリラーゼによるFTDのインビボ分解を阻止し、それによって、FTDの抗腫瘍効果を増強することが知られている(Investigational New Drugs, 26(5), 445-454, 2008)。現在のところ、1:0.5のモル比でFTD及びTPIを含む抗腫瘍剤(以後「FTD-TPI薬」又は「TAS-102」とも呼ばれる)は、固形癌の処置剤として開発され、そして、日本では切除不能な進行した又は再発した結腸直腸癌のための処置剤として承認されており、そして、米国及び欧州では、フルオロピリミジン、オキサリプラチン及びイリノテカンに基づく化学療法、抗VEGF(血管内皮増殖因子)剤、並びに抗EGFR(上皮増殖因子受容体)剤を含む利用可能な療法で既に処置された転移性結腸直腸癌のための処置剤として商標名Lonsurf(登録商標)(EMA/CHMP/130102/2016)で承認されている。
【0003】
FTD-TPI薬及びその使用は、例えば、欧州特許第763529号に記載されている。
【0004】
FTD-TPI薬の抗腫瘍効果を増強するために、前臨床実験において併用療法が試験されており、そして、該試験は、イリノテカン、オキサリプラチン、ドセタキセルなどとの正の併用効果を示唆した(European Journal of Cancer, 43(1), 175-183, 2007;British Journal of Cancer, 96(2), 231-240, 2007;Cancer Science, 99(11), 2302-2308, 2008)。
【0005】
臨床面では、特に転移性結腸直腸癌の処置において、膨大な数の組み合わせが想定され、そして、評価されてきた。二次強化療法は、通常、良好な活動指標及び適切な臓器機能を有する患者に提案される。オキサリプラチン及びイリノテカンとの二次併用療法は、最良の支持療法よりも優れていることが知られているが、転帰は不良のままであり、中央無増悪生存期間は5.7~7.4ヶ月間の範囲であり、そして、中央全生存期間は12.5~14.5ヶ月間の範囲である。結果として、より良好な活性及びより良好な転帰を提供する新規組み合わせが依然として必要とされている。
【0006】
抗腫瘍白金錯体は、中心金属として白金を含有する金属錯体化合物であり、そして、DNAに結合することによってDNAの複製を阻害し、それによって、抗腫瘍効果を発揮する。抗腫瘍剤としての白金錯体は長期間にわたって研究されており、そして、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等が広範な種類の癌に対して臨床的に使用されている(Annales Pharmaceutiques Francaises, 69(6), 286-295, 2011)。抗腫瘍白金錯体と様々な抗腫瘍剤との併用についても研究されている。具体的には、5-フルオロウラシル等の代謝拮抗物質との併用が広く採用されている。
【0007】
より具体的には、マウスマイクロサテライト安定な又はミスマッチ修復能力のあるMSS/pMMR結腸直腸癌細胞株CT26において、FTD-TPI薬とオキサリプラチンとの組み合わせが、単独で投与されたオキサリプラチン又はFTD-TPI薬よりも高いレベルで免疫原性細胞死を誘導することが示されている。この種の細胞死は、原形質膜の特性及び瀕死の癌細胞の微小環境におけるわずかな生化学的変化の一覧によって特徴付けられる(EMBO Journal, 2012, 31(5), 1055-1057;Nature Reviews Immunology, 2009, 9(5), 353-363)。これら変化は、
- アポトーシスの前にカルレチキュリン(CRT)が細胞表面に露出し、これが抗原提示細胞による瀕死の細胞の一部の貪食を促進する(Cell, 2005, 123(2), 321-334);
- アポトーシスの後に核から高移動度群ボックス1(HMGB1)が放出されて、これが抗原提示を刺激する(Nature Medicine, 2007, 13(9), 1050-1059);
- 細胞死が免疫原性であると認知されるのに必須のATPが放出される、
を含む。
【0008】
免疫原性細胞死の誘導は、処置的免疫応答の刺激において特に関心対象となっている。悪性細胞に対するチェックポイント調節剤による正常に機能している(proficient)免疫応答の再活性化と組み合わさった免疫原性細胞死の誘導は、疾患転帰の改善に関連しているはずである。チェックポイント療法は、癌に対する有望なアプローチであり、そして、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)及び細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)等の免疫チェックポイントを標的とすることからなる。このようなアプローチは、免疫阻害性シグナルをブロックし、そして、患者に有効な抗腫瘍応答を生じさせることによって、複数の癌において顕著な効果を達成している。単剤として投与されたCTLA4、PD-1又はPD-L1の阻害剤は、一部の患者では長期間にわたる腫瘍退縮を生じさせており、そして、PD-1及びCTLA4の阻害剤の組み合わせは、抗腫瘍効果を増強し得る。
【0009】
抗PD-1免疫チェックポイント阻害剤は、マイクロサテライト不安定な又はミスマッチ修復機能欠損のあるMSI/dMMR結腸直腸癌の患者において有望な結果を示している(The New England Journal of Medicine, 2015, 372(26), 2509-2520)が、MSI/dMMRは、転移の状況における患者のわずか5%でしかない(Journal of the National Cancer Institute, 2013, 105(15), 1151-1156)。MSI/dMMR患者における免疫チェックポイント阻害剤の活性は、多くの腫瘍特異的新抗原を作製するMSI/dMMR腫瘍において、突然変異荷重がより高いことによって説明することができる。対照的に、MSS/pMMR結腸直腸癌の患者の大部分は、抗PD-1単剤療法に応答せず(The New England Journal of Medicine, 2015, 372(26), 2509-2520)、腫瘍免疫を促進することができる免疫療法薬及び化学療法を含む組み合わせについて研究することは急務である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、まず、FTD-TPI薬及び白金錯体等のアドホック処置による腫瘍免疫原性増大の機序に基づき、次いで、免疫チェックポイント調節剤に対する腫瘍応答を増強するために、新規組み合わせ物を提案する。このような新規併用処置は、MSS/dMMR腫瘍癌を含む。
【0011】
特に、出願人は、FTD-TPI薬と抗腫瘍白金錯体及び免疫チェックポイント調節剤とのインビボ組み合わせが、CT26 MSS/dMMR結腸直腸癌腫を有するマウスにおいて、免疫チェックポイント調節剤と組み合わせられたFTD-TPI薬又は二重化学療法FTD-TPI薬及び抗腫瘍白金錯体と比べて高い生存率を示し、統計的に有意であることを示した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、同時又は逐次の処置的使用のための、
- FTD-TPI薬と、
- 抗腫瘍白金錯体と、
- 免疫チェックポイント調節剤と
を含む組み合わせ物が提供される。
【0013】
同時処置的使用とは、本発明の意味の範囲内では、本願において、該組み合わせ物の3つの成分を同時に又は実質的に同時に、すなわち、24時間以内に投与することを意味し、投与経路は同一であるか又は異なる。
【0014】
逐次処置的使用とは、本発明の意味の範囲内では、本願において、該組み合わせ物のうちの少なくとも2つの成分を異なる時点で投与することを意味し、投与経路は同一であるか又は異なる。異なる時点における投与は、該組み合わせ物の成分のうちの少なくとも1つについて、好ましくは、24時間~14日間後、そして、より好ましくは、7~14日間後である。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、癌の処置において使用するための、本明細書に記載される組み合わせ物を提供する。
【0016】
より具体的には、本発明の組み合わせ物は、食道、胃(gastric)、肝臓、胆嚢/胆管、胃(stomach)、肝臓、膵臓、結腸直腸、卵巣、子宮、頭頸部、甲状腺、肺、乳房、子宮頸部、膀胱、精巣及び前立腺の癌、肉腫、皮膚癌、悪性リンパ腫、急性白血病、並びに脳腫瘍の処置に有用である。
【0017】
有利には、本発明の組み合わせ物は、結腸直腸癌、そして、より好ましくは、転移性結腸直腸癌の処置に有用である。
【0018】
あるいは、本発明の組み合わせ物は、胃癌の処置に有用である。
【0019】
別の実施態様では、本発明は、同時に又は逐次に投与するための、
- FTD-TPI薬と、
- 抗腫瘍白金錯体と、
- 免疫チェックポイント調節剤と
を別々に又は一緒に含有する医薬であって、各成分が癌の処置に有効な量で提供される医薬を提供する。
【0020】
「組み合わせ物」とは、成分が、独立して、同時に又は時間間隔内に別々に投与され得、特に、この時間間隔によって、その組み合わせパートナーが協同的な効果を示すことができるようになる、1つの単位剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、又はサシェ剤)における一定用量の組み合わせ物、非一定用量の組み合わせ物、又は併用投与用のキットオブパーツのいずれかを指す。
【0021】
用語「一定用量の組み合わせ物」は、活性成分が両方とも、単一の実体又は投薬の形態で同時に患者に投与されることを意味する。
【0022】
用語「非一定用量の組み合わせ物」は、活性成分が、特定の時間制限なしに同時に又は逐次に、別個の実体として患者に投与されることを意味し、このような投与は、患者の体内において処置的に有効な濃度の活性成分を提供する。
【0023】
「癌」は、細胞の群が無制御の増殖を示す疾患の分類を意味する。癌の種類は、血液癌(リンパ腫及び白血病)、及び癌腫、肉腫、又は芽細胞腫を含む固形腫瘍を含む。具体的には、「癌」は、食道、胃(gastric)、肝臓、胆嚢/胆管、胃(stomach)、肝臓、胆嚢-胆嚢管、膵臓、結腸直腸、卵巣、頭頸部、肺、乳房、子宮頸部、膀胱、精巣及び前立腺の癌、骨肉腫、皮膚癌、悪性リンパ腫、急性白血病、並びに脳腫瘍、慢性白血病、髄芽腫(meduloblastoma)、網膜芽腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、ホジキン病、多発性骨髄腫、形質細胞腫、胸腺腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、ユーイング腫瘍、甲状腺癌、卵巣癌、唾液腺癌、奇形腫、悪性メラノーマ、神経膠腫、腎細胞癌、骨肉腫を指す。結腸直腸癌、そして、優先的には転移性結腸直腸癌、及び胃癌が特に好ましい。
【0024】
「処置サイクル」は、所定の投与スケジュールに従って処置を受け、その後、腫瘍応答を評価することによって該処置の有効性が評価される期間を意味する。
【0025】
本発明のFTD-TPI薬は、1:0.5のモル比でFTD及びTPIを含有する組み合わせ物に関する。投薬レジメンは、通常、以下の通りである:5連続日間にわたって1日あたり2回に分けてFTDに換算して20~80mg/m2/日の常用量で組み合わせ薬を経口投与し、次いで、2日間の休止期間を設ける。このサイクルを2回繰り返し、次いで、14日間の休止期間を設ける。
【0026】
あるいは、FTD-TPI薬の投薬レジメンは、以下の通りである:5連続日間にわたって1日あたり2回に分けてFTDに換算して20~80mg/m2/日の用量でFTD-TPI薬を投与し、次いで、9日間の休止期間を設け、その結果、処置サイクルは14日間になる。
【0027】
本発明における「抗腫瘍白金錯体」の定義は、技術常識の一部であり、そして、抗腫瘍白金錯体は、中心金属として白金錯体を有しかつ抗腫瘍活性を有する任意の化合物であってよい。抗腫瘍白金錯体は、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンによって具体的に例示される。その中でも、オキサリプラチンが特に好ましい。本発明の抗腫瘍白金錯体は、活性成分として抗腫瘍白金錯体(例えば、シスプラチン内包ミセル及びオキサリプラチン内包リポソーム)を含有する薬物送達システム(DDS)調製品を含む。
【0028】
より具体的には、オキサリプラチン(化学名:[(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン](エタンジオアト-O,O’)白金(II))は、Eloxatin(登録商標)として商品化されている公知の化合物である。
【0029】
転移性結腸直腸癌の処置におけるオキサリプラチンの推奨用量は、疾患の進行又は許容し得ない毒性が生じるまで2週間毎に繰り返される静脈内60~90mg/m2、より好ましくは、65~85mg/m2である。
【0030】
本発明の免疫チェックポイント調節剤は、好ましくは、PD-1経路アンタゴニスト、ICOS経路アンタゴニスト、CTL-4経路アンタゴニスト、CD28経路アンタゴニスト、又はこれらの組み合わせである。より好ましくは、本発明の免疫調節剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、又はこれらの組み合わせである。本発明の好ましい免疫調節剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブである。本発明の最も好ましい免疫調節剤は、ニボルマブ及びペンブロリズマブであり、そして、更により好ましくは、ニボルマブである。ニボルマブ(Opdivo(登録商標))の推奨用量は、2週間毎に60分間にわたって静脈内投与される3mg/kgである。ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))は、一般的に3週間毎に30分間にわたって2mg/kgで静脈内注入として投与される。
【0031】
組み合わせ物の化合物は、逐次又は同時の方式で投与され得る。逐次方式とは、組み合わせ物のうちの少なくとも2つの成分が異なる時点で投与されることであると理解される。好ましい逐次方式は、組み合わせ物のうちの少なくとも1つの化合物が他の2つの後、優先的には24時間~14日間後、そして、より好ましくは7~14日間後に開始される方式である。
【0032】
同時方式とは、組み合わせ物の3つの成分が24時間以内に開始されることであると理解される。
【0033】
本発明の組み合わせ物では、各成分は、好ましくはそれぞれが単独で投与されたときの推奨用量の50~100%の用量で、逐次又は同時の方式で投与される。
【0034】
より具体的には、本発明の組み合わせ物は、同時方式で投与される。
【0035】
有利な代替案は、逐次方式による投与である。この場合、組み合わせ物の成分のうちの少なくとも1つの投与は、他の成分の後、優先的には24時間~14日間後、そして、より好ましくは7~14日間後に開始される。より好ましくは、逐次方式では、後で開始される成分は、免疫チェックポイント調節剤である。
【0036】
より好ましくは、FTD-TPI薬及び抗腫瘍白金錯体については14日間処置サイクルが想定され、そして、免疫チェックポイント阻害剤は、処置に応じて2~3週間にわたって推奨通り投与される。免疫チェックポイント阻害剤が3週間毎に投与される場合、検討される処置サイクルは、6週間処置である。
【0037】
有利には、該14日間処置サイクルは、同時方式であり、そして、
- 1日目から5日目までFTD-TPI薬のbid(1日2回)経口投与、続いて、6日目から14日目まで9日間の回復期間;
- 1日目に抗腫瘍白金錯体の投与;及び
- 1日目に免疫チェックポイント阻害剤の投与
を含む。
【0038】
より有利には、該14日間処置サイクルは、同時方式であり、そして、
- 1日目から5日目まで朝食及び夕食の終了後1時間以内にFTDに換算して25、30又は35mg/m2/用量の用量でFTD-TPI薬のbid(1日2回)経口投与、続いて、6日目から14日目まで9日間の回復期間;
- 1日目に推奨用量の抗腫瘍白金錯体の静脈内投与(注入の開始は、1日目のFTD-TPI薬の朝の投与と同時である);並びに
- 推奨用量の免疫チェックポイント調節剤の静脈内投与(注入の開始は、1日目のFTD-TPI薬の朝の投与と同時である);
を含む。
【0039】
更により好ましくは、該14日間処置サイクルは、同時方式であり、そして、
- 1日目から5日目まで朝食及び夕食の終了後1時間以内にFTDに換算して25、30又は35mg/m2/用量の用量でFTD-TPI薬のbid(1日2回)経口投与、続いて、6日目から14日目まで9日間の回復期間;
- 1日目に85又は65mg/m2で2時間注入としてオキサリプラチンの静脈内投与(該注入の開始は、1日目のFTD-TPI薬の朝の投与と同時である);並びに
- 3mg/kgの用量のニボルマブの静脈内投与(該注入の開始は、1日目のFTD-TPI薬の朝の投与と同時である)
を含む。
【0040】
上記14日間同時処置では、代替案として、組み合わせ物の成分のうちの1つを他の2つの後に開始してもよく、これは、逐次方式の投与となる。より具体的には、白金錯体及びFTD-TPI薬の両方の投与後に、免疫チェックポイント調節剤を開始してよい。優先的には、他の2つの成分よりも24時間~14日間後、そして、より好ましくは、7~14日間後に、免疫チェックポイント調節剤処置を開始してよい。
【0041】
該14日間処置は、該処置の組み合わせが患者にとって有益である限り、繰り返される。毒性に関連する場合、組み合わせ物の成分のうちの1つを他の2つの前に停止してもよい。
【0042】
本発明に係る医薬組成物の中でも、より殊のほか、経口、非経口、筋肉内及び静脈内、経皮、鼻腔内、直腸内、舌下、眼内又は呼吸器の経路による投与に好適なもの、より具体的には、錠剤、糖衣錠、舌下錠剤、ゼラチンカプセル剤、舌下薬(glossettes)、カプセル剤、ロゼンジ剤、注射用調製剤、エアゾール剤、点眼又は点鼻剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、皮膚用ジェル剤等に言及され得る。
【0043】
活性成分に加えて、本発明に係る医薬組成物は、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、防腐剤、吸収剤、着色剤、甘味剤、着香剤等から選択される1つ以上の賦形剤又は担体を含む。
【0044】
言及され得る例は、全く限定を意味するものではないが、
- 希釈剤については:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリセリン;
- 滑沢剤については:シリカ、タルク、ステアリン酸並びにそのマグネシウム及びカルシウムの塩、ポリエチレングリコール;
- 結合剤については:ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウム、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びにポリビニルピロリドン;
- 崩壊剤については:寒天、アルギン酸及びそのナトリウム塩、発泡性の混合物
を含む。
【0045】
対応する医薬組成物は、活性成分の即時又は遅延放出を可能にし得る。更に、組み合わせ物の化合物は、それぞれが活性成分のうちの1つを含む3つの別々の医薬組成物の形態で、あるいは活性成分が混合されている単一の医薬組成物の形態で投与され得る。
【0046】
FTD-TPI薬に使用される投薬量は、患者の身体表面、投与経路、癌及び任意の関連する処置の性質、並びに観察される毒性に応じて変動する。該量は、1日あたり2~4回に分けてFTDに換算して20~80mg/m2/日の範囲である。
【0047】
抗腫瘍白金錯体の用量は、それが単独で投与されるときに使用される用量以下である。一例として、オキサリプラチンの場合、投与される用量は、AUC(曲線下面積)に従って決定され、そして、30~100mg/m2の範囲である。
【0048】
免疫調節剤の用量は、それが単独で投与されるときに使用される用量以下である。一例として、ニボルマブの場合、投与される用量は、1~20mg/kgである。
【0049】
医薬組成物
Lonsurf(登録商標)
活性成分としてトリフルリジン 15mg及びチピラシル(塩酸塩として) 6.14mg又はトリフルリジン 20mg及びチピラシル(塩酸塩として) 8.19mgを含有するフィルムコーティング錠。
【0050】
他の成分は、
- 錠剤コア:ラクトース一水和物、アルファ化トウモロコシデンプン、ステアリン酸
- フィルムコーティング:
Lonsurf 15mg/6.14mg フィルムコーティング錠:ヒプロメロース、マクロゴール(8000)、二酸化チタン(E171)、ステアリン酸マグネシウム
Lonsurf 20mg/8.19mg フィルムコーティング錠:ヒプロメロース、マクロゴール(8000)、二酸化チタン(E171)、赤色酸化鉄(E172)、ステアリン酸マグネシウム
印刷インク:シェラック、赤色酸化鉄(E172)、黄色酸化鉄(E172)、二酸化チタン(E171)、インジゴカルミンアルミニウムレーキ(E132)、カルナウバロウ、タルク
である。
【0051】
Eloxatin(登録商標)
注入用溶液のための5mg/mL オキサリプラチン濃縮物
注射用水
【0052】
Opdivo(登録商標)
注入用溶液のための10mg/mL ニボルマブ濃縮物
クエン酸ナトリウム二水和物
塩化ナトリウム
マンニトール(E421)
ペンテト酸(ジエチレントリアミン五酢酸)
ポリソルベート80
水酸化ナトリウム(pH調整用)
塩酸(pH調整用)
注射用水
【0053】
Keytruda(登録商標)
注入用溶液のためのペンブロリズマブ(凍結乾燥粉末) 50mg
L-ヒスチジン
L-ヒスチジン塩酸塩、一水和物
サッカロース
ポリソルベート80
再構成後、溶液 1mLは、ペンブロリズマブ 25mgを含有する。
【0054】
前臨床試験
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1a】免疫原性細胞死誘導に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチン曝露の影響の分析;カルレチキュリン(CRT)曝露及びATP放出。
図1b】免疫原性細胞死誘導に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチン曝露の影響の分析;高移動度群ボックス1(HMGB1)放出。
図1c】免疫原性細胞死誘導に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチン曝露の影響の分析;真核生物開始因子2(EIF2-α)リン酸化。
図2】異種移植マウスにおける免疫原性細胞死誘導に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチン曝露の影響の分析。a)細胞質HMGB1;b)腫瘍pEIF2α/EIF2α比。
図3】インビボにおける腫瘍におけるCD8-T細胞浸潤に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチン曝露の影響の分析。
図4】FTD-TPI薬、オキサリプラチン及び抗マウスPD-1抗体の投与スケジュール。
図5】マウスCT26 MSS/pMMR結腸直腸癌腫を有するマウスにおけるFTD-TPI薬、オキサリプラチン及び抗マウスPD-1抗体の組み合わせ物の体重及び腫瘍成長。
図6】マウスCT26 MSS/pMMR結腸直腸癌腫を有するマウスにおけるFTD-TPI薬、オキサリプラチン及び抗マウスPD-1抗体の組み合わせ物への曝露の生存率。
【実施例
【0056】
A)インビトロにおける腫瘍細胞における免疫原性細胞死誘導に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチンの影響
この試験の目的は、FTD-TPI薬(TAS-102)が単独で又はオキサリプラチンと組み合わせて、インビトロでマウスMSS/pMMR CT26結腸直腸癌細胞において免疫原性細胞死を誘導する潜在力について評価することである。まず、異なる時点(24時間及び48時間)で、500、50、5、0.5又は0.05μMの用量のオキサリプラチンの有無で、FTDに換算して500、50、5、0.5又は0.05μMの用量のTAS-102に曝露した後の細胞応答の分析をモニタする。FTD-TPI薬及びオキサリプラチンの組み合わせ比は、1:1である。96ウェルプレートにおいて付着細胞を染色する(クリスタルバイオレット)ことによって、薬物応答を分析した。
【0057】
クリスタルバイオレット染色及びフローサイトメトリー(Annexin-V/7AAD(7-アミノ-アクチノマイシンD)染色)の両方によって、「48時間」の時点で24ウェルプレートにおいて細胞死の誘導を試験するために3つの用量を選択した。
【0058】
これらの分析後、次の免疫原性細胞死(ICD)関連マーカーを分析した:
- フローサイトメトリー(48時間)によって分析される原形質膜カルレチキュリン(CRT)提示(exposition)
- ELISA(Chondrex)によって分析される高移動度群ボックス1(HMGB1)分泌
- 蛍光定量(Promega)によってアッセイされるATP分泌。
【0059】
オキサリプラチンと組み合わせて又は組み合わせずに、2つの異なるFTD-TPI薬濃度を用いてICDマーカー分析を実施した。ミトキサントロンを陽性対照として使用する。
【0060】
ICD誘導の追加のマーカーによる結果を確認するために、真核生物開始因子2(EIF2-α)の発現及びリン酸化を試験した。この確認は、インビボ実験で使用されるCT26モデルにおけるICD誘導を検証するために重要である。
【0061】
マウスMSS/pMMR結腸直腸癌細胞株CT26においてオキサリプラチンと組み合わせたFTD-TPIで処置した結果、損傷関連分子パターンの発生、例えば、カルレチキュリンの細胞表面露出、EIF2αの露出及びリン酸化、高移動度群ボックス1(HMGB1)及びATPの放出、免疫細胞死の特徴が、対照(ミトキサントロン)又はオキサリプラチン単独又はFTD-TPI薬単独よりも高いレベルで生じた(図1a、1b、1cを参照)。
【0062】
B)インビボにおける腫瘍における免疫原性細胞死誘導に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチンの影響
この試験の目的は、FTD-TPI薬(TAS-102)が単独で又はオキサリプラチンと組み合わせて、MSS/pMMR CT26結腸直腸癌異種移植マウスにおいてインビボで免疫原性細胞死(ICD)を誘導する潜在力について評価することである。CT26腫瘍細胞をBalb/cマウスの右側腹部に注射した(1.10細胞)。腫瘍移植の10日後、マウスを無作為化し、そして、3日間にわたってFTD/TPI(経口、150mg/kg/d)及び/又はオキサリプラチン(腹腔内、6mg/kg/w)を与えた。ドキソルビシン(3mg/kg/w)の腫瘍内注射を陽性対照として用いた。ICDのマーカーである腫瘍における細胞質HMGB1を免疫化学によって評価し、そして、腫瘍移植の13日後にウエスタンブロットによってpEIF2α/EIF2α比を評価した。FTD-TPI薬とオキサリプラチンとの組み合わせ物は、腫瘍異種移植片におけるHMGB1の細胞質放出及びpEIF2αのリン酸化によって証明された、インビボにおける相乗的免疫原性細胞死を誘導した(図2を参照、HMGB1についてはいずれの薬物単独に対してもp<0.01;pEIF2αについてはオキサリプラチンに対してp<0.01;pEIF2αについてはFTD-TPIに対してp<0.001)。
【0063】
C)インビボにおける腫瘍におけるCD8-T細胞浸潤及びCD8-T細胞機能に対するFTD-TPI薬及びオキサリプラチンの影響
この試験の目的は、FTD-TPI薬(TAS-102)が単独で又はオキサリプラチンと組み合わせて、MSS/pMMR CT26結腸直腸癌異種移植マウスにおいてインビボでCD8-T細胞浸潤を誘導する潜在力について評価し、そして、TNFα及びINFγの発現によって評価されるCD8-T細胞の機能を評価することである。CT26腫瘍細胞をBalb/cマウスの右側腹部に注射した(1.10細胞)。腫瘍移植の10日後、マウスを無作為化し、そして、4日間にわたってFTD/TPI(経口、150mg/kg/d)及び/又はオキサリプラチン(腹腔内、6mg/kg/w)を与えた。腫瘍移植の18日後にフローサイトメーターによって腫瘍CD8-T細胞浸潤分析を実施した。FTD-TPI薬とオキサリプラチンとの組み合わせ物は、対照マウスと比べてインビボにおいて有意なCD8-T細胞腫瘍浸潤を誘導した(p<0.05)。FTD-TPI及びオキサリプラチン処置後のCD8-T細胞浸潤は、INFγ発現の増加と関連している(図3を参照)。
【0064】
全体的な結果は、FTD-TPI及びオキサリプラチンによる処置が、腫瘍細胞に対する適応免疫応答を示す、CD8-T細胞の浸潤及び活性化に好都合であるICDを誘導できることを示す。腫瘍免疫学の基本原理は、癌細胞が細胞傷害性CD8-T細胞によって排除され得るということである(Schreiber et al., 2011, Science 331(6024), 1565-1570;Gajewski et al., 2013, Nat. Immunol., 14(10), 1014-1022;Schumacher and Schreiber, 2015, Science 348(6230), 69-74)。これら細胞は、阻害性免疫チェックポイント受容体発現を含む様々な抑制機構に曝され得る。免疫チェックポイント阻害剤は、この免疫抑制シグナルを阻止し、そして、腫瘍特異的T細胞を活性化されたままにし、そして、腫瘍細胞を死滅させる。抗原提示を欠いているか又はT細胞を有しない腫瘍は、免疫チェックポイント阻害剤に応答する可能性が著しく低い。抗癌免疫を媒介することによって、オキサリプラチンと組み合わされたFTD-TPIは、免疫チェックポイント阻害剤から恩恵を受け得る患者の数を拡大する潜在力を有している。
【0065】
D)マウス結腸直腸癌腫(CRC)を有するマウスを使用した、オキサリプラチン及び抗マウスPD-1モノクローナル抗体と組み合わせたFTD-TPI薬の抗腫瘍有効性
この試験は、終点として生存パラメータを用いて、マウス結腸直腸癌腫(CRC)を有するマウスを使用して、オキサリプラチン及び抗マウスPD-1モノクローナル抗体(クローンRMP1-14)と組み合わせたFTD-TPI薬の抗腫瘍有効性を評価することである。効マウスPD-1の投与順序を試験して、順序が有効性を決定するかどうかを評価した。インビボ試験で試験した順序は、逐次又は同時であり、そして、下記マウスモデル及び図4に規定される。
【0066】
同時スケジュール:
-4週間の間毎週1日目から5日目にTAS-102を投与;
-2(1日目のTAS-102の投与の24時間以内)、9、16及び25日目にオキサリプラチンを投与;
-毎週1、3及び5日目に抗マウスPD-1抗体を投与。
【0067】
逐次スケジュール:
-4週間の間毎週1日目から5日目にTAS-102を投与;
-2(1日目のTAS-102の投与の24時間以内)、9、16及び25日目にオキサリプラチンを投与;
-8、10及び12日目、次いで毎週、抗マウスPD-1抗体を投与。
【0068】
150頭の免疫適格BALB/cマウスに、FBS(ウシ胎児血清)を含まないRPMI(Roswell Park Memorial Institute培地) 100μLに再懸濁させた100万個のCT-26細胞を注射した。腫瘍が標的体積(50~70mm3)に達したら、Servierソフトウェアを用いて150頭のうちの100頭を5群(N=20/群)に無作為化し、そして、図4に示す通り、4週間の間処置を投与した。
【0069】
腫瘍サイズ及びマウスの体重を1週間に3回モニタした。腫瘍体積が2500mm3を超えたとき、生存率を評価した。インビボにおいて、TAS-102+オキサリプラチン、TAS-102+抗PD-1、又はTAS-102+オキサリプラチン+抗PD-1は、図5に示す通り、腫瘍成長に対して中程度の処置効果を示した。
【0070】
しかし、留意すべきことに、マウスCT26 MSS/pMMR結腸直腸癌腫(CRC)を有するマウスを使用した4週間にわたる逐次又は同時の投与において、FTD-TPI薬とオキサリプラチン及び抗マウスPD-1モノクローナル抗体との組み合わせ物は、抗マウスPD-1と組み合わせたFTD-TPI薬(それぞれ、p<0.05及びp<0.001)又は二重化学療法FTD-TPI薬及びオキサリプラチン(それぞれ、p<0.02及びp<0.0001)に比べて、統計的に有意に高い生存率を示した。図6を参照。
【0071】
臨床試験
転移性結腸直腸癌(mCRC)におけるオキサリプラチン及びニボルマブと組み合わせたTAS-102の第I相用量増加臨床試験を計画する。
【0072】
14連続日の処置サイクルに基づいて、以下の通り、TAS-102、オキサリプラチン及びニボルマブを投与する少なくとも35人の評価可能な患者のコホートにおいて、3つの組み合わせを評価する:
- TAS-102を、1日目から5日目まで朝食及び夕食の終了後1時間以内に異なる用量(調べられる用量レベル及び忍容性に応じて25mg/m2/用量、30mg/m2/用量及び35mg/m2/用量)でbid(1日2回)経口投与する。この後に、6日目から始めて14日目まで9日間の回復期間を設ける。
- オキサリプラチンを、各処置サイクルの1日目に異なる用量(調べられる用量レベル及び忍容性に応じて85mg/m2又は60mg/m2)で2時間注入として静脈内投与する。注入の開始は、1日目におけるTAS-102の朝の投与と同時である。
- ニボルマブを、各処置サイクルにおいて1日目又は逐次投与ではその後に3mg/kgの用量で静脈内投与する。
【0073】
疾患の進行、許容し得ない毒性、研究者の判断又は患者の拒絶まで、患者を処置する。
【0074】
この試験は、全ての患者が処置を中断したか又は最後の患者が組み入れられた12ヶ月後のどちらか早いときに完了したとみなす。
【0075】
腫瘍評価は、試験期間全体を通して実施され、そして、改訂された固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)基準(バージョン1.1、2009年)を使用して分析される。疾患の進行以外の理由で試験から離脱した患者について、疾患の進行日及び/又は死亡日を記録する。
【0076】
- 最初の試験薬服用前28日間以内にベースラインにおいて、
- 4サイクル毎に、6日目~14日目に、
- 研究者の裁量で離脱通院時に
コンピュータ断層撮影(CTスキャン)によって腫瘍評価を実施する。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6