(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】積層方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20221101BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20221101BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221101BHJP
C09J 183/02 20060101ALI20221101BHJP
C03C 27/10 20060101ALI20221101BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221101BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B17/00
B32B27/00 101
C09J183/02
C03C27/10 E
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019558455
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 US2018017185
(87)【国際公開番号】W WO2018208348
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グベルス、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、ビクター
(72)【発明者】
【氏名】シャンボール、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ボーカルヌ、ギィ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513158(JP,A)
【文献】特開2010-163602(JP,A)
【文献】特開2011-254116(JP,A)
【文献】特開平09-048916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
C03C27/00- 29/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H01L23/28- 23/30
31/04- 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基材の間に挟まれた硬化積層接着剤を含む積層アセンブリを作製するための方法であって、
(i)第1の基材の周辺部の周りにシーラント又は同様のもののダムを準備するステップと、
(ii)流動性シリコーン系積層接着剤を前記第1の基材の周りにシーラントの前記ダムを有する前記第1の基材上へ導入するステップと、
(iii)第2の基材を前記第1の基材の上に配置して予備硬化されたアセンブリを形成し、前記流動性シリコーン系積層接着剤を前記第1の基材と前記第2の基材との間に捕捉するステップと、
(iv)ステップ(iii)の前記予備硬化されたアセンブリに真空を適用するステップと、
(v)前記真空を維持しながら、所定の圧力でステップ(iv)の前記予備硬化されたアセンブリを押圧するステップと、
(vi)前記第1の基材と前記第2の基材との間にシーラントの前記周辺ダムによって画定される流動性シリコーン系積層接着剤の連続層が提供されることを確実にするのに十分な期間、前記真空を維持しながら、ステップ(v)の前記所定の圧力を解放するステップと、
(vii)ステップ(v)を繰り返し、次いで前記圧力及び真空を解放し、そして前記予備硬化されたアセンブリを硬化させるステップと、を含み、
前記流動性シリコーン系積層接着剤が、
(i)1分子当たり少なくとも1
個の加水分解性基及び/又はヒドロキシル官能基を有する、少なくとも1個の縮合硬化性シリル末端ポリマーと、
(ii)
・1分子当たり少なくとも2個の加水分解性
基を有するシラン、及び/又は
・少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含有するシリル官能性分子
の群から選択される架橋剤と、
(iii)チタネート、ジルコネートの群から選択される縮合触媒と、
を含み、
ポリマー(i)は、架橋剤(ii)及び触媒(iii)と同じ部分には保存されず、縮合触媒(iii)が、組成物の前記部分において累積的に存在する水分の少なくとも50%であるモル量で存在し、ポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基の、架橋剤(ii)中の加水分解性基に対するモル比が0.5超であり、そしてポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基の、M-OR官能基に対するモル比が10より大きく、Mはチタン又はジルコニウムである、構成成分を含むチタネート/ジルコネート硬化触媒に基づいて、多液型縮合硬化性積層接着剤組成物を混合することによって作製される、方法。
【請求項2】
チタネート/ジルコネート硬化触媒に基づく前記多液型縮合硬化性積層接着剤組成物が、
(i)1分子当たり少なくとも2個の加水分解性基及び/又はヒドロキシル官能基を有する、少なくとも1個の縮合硬化性シリル末端ポリマーと、
(ii)
・1分子当たり少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、及び/又は
・少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含有するシリル官能性分子
の群から選択される架橋剤と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予備硬化アセンブリ中の前記流動性シリコーン系積層接着剤が、室温若しくは前記シリコーン組成物が硬化する60℃を超える温度で硬化されるか、又は前記シリコーン組成物を硬化するUV曝露処理によって硬化される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
60℃を超える温度での前記硬化が、連続炉内で行われる、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記積層アセンブリの前記縁部領域が、その後切断されて、前記縁部付近のあらゆる光学遷移を除去する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シーラントのダムが、ポリイソブチレン(PIB)ゴムシール、シリコーンホットメルト材料、又は光学的に透明なシリコーンシーラントから作製される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の物体が、前記積層アセンブリ中の前記硬化積層接着剤層内へ効果的に封入されるように、ステップ(iii)に先んじて前記第1又は第2の基材に取り付けることができる、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記物体が、装飾、電子機器、光起電セル、若しくはワイヤ、及び/又はコネクタ若しくは同様のものから選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ダムを形成する前記シーラントが、積層アセンブリ外側の周りの外部保護シールとして保持される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法のステップ(iv)が、15秒~1.5分の持続時間であり得る、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(v)の前記期間が、45秒~3分の期間である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(vi)の前記期間がステップ(iv)の期間と同様であって、同様にステップ(vii)の前記期間がステップ(v)の期間と同様である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(vi)及び(vi)の両方に加えられる前記圧力が、10,000~400,000Paの範囲である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基材が、ガラス、木、石、プラスチック、複合材、金属、セラミック、又は同様のものから作製される、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの基材が、ガラス製である、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記流動性シリコーン系積層接着剤が、構成成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに顔料、染料、接着促進剤、光拡散粒子、シロキサン樹脂、及び/又は耐火性を有する粒子から選択される1つ以上の添加剤からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
多液型縮合硬化性積層接着剤組成物が、顔料、染料、光拡散粒子、及び/又は耐火性を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基の、架橋剤(ii)に由来する加水分解性基に対するモル比が、25℃で30,000mPa.s以下の粘度を有するポリマーに対して0.15より大きく、25℃で30,000mPa.sを超える粘度を有するポリマーに対して0.5より大きい、請求項1~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれか一項に記載の方法によって得られる、積層アセンブリ。
【請求項20】
窓及びドアにおけるビジョンガラス部品として、手摺、バルコニー、若しくは屋根用途における1つ以上の部品、スパンドレル若しくは正面におけるシャドーボックスの一部として、内部隔壁の構成要素として、安全ガラス積層体として、電子ディスプレイ用途のため、耐火窓若しくはドアユニットにおける1つ以上の部品、日照調製部品として、又は消音障壁における、請求項1~
18のいずれか一項に記載の方法によって得られる、請求項
19に記載のアセンブリの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、シリコーン系積層接着剤組成物、特に室温又は室温付近で硬化するシリコーン系積層接着剤組成物の積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
剛性基材の積層のための既存の解決策は、耐久性のある接着及び良好な光透過を得ながら室温で実施することができない。
【0003】
ガラス基材といった剛性基材の既存の積層のための解決策は、高温加工、場合によっては高圧状態を伴う。例えば、剛性基材を積層する広範な方法とは、溶融後、2つの基材間で固化されるポリビニルブチラール(PVB)シートを使用することである。この手法では、基材間に残留したいかなる捕捉された空気をも除去するために、別に後続の高温及び高圧ステップを必要とする。剛性基材用の別の積層のための解決策は、硬化性エチレンビニルアセテート(EVA)のシートの使用を伴う。この手法では、長時間(10分以上)にわたって高温(例えば、150℃)で動作する大型の真空機械を必要とする。更に、これら全ての既存の手法は、風化下における材料の劣化(例えば、黄変及び光透過率の低下)に関して問題がある。純粋な熱可塑性材料(PVBなど)に依存するいくつかの手法では、高い動作温度に曝されたときに、2つの剛性基材の相対的クリープのリスクがある。
【0004】
シリコーン材料は、材料特性のより良好な固有安定性のために、これらの解決策に好ましい。積層接着剤としての縮合硬化シリコーン組成物の潜在的な使用は、魅力的である。というのは、これらを室温で硬化することにより、ヒドロシリル化などの他の系を硬化するために必要な熱エネルギーを回避することによって、エネルギーが節約されることになるからである。しかしながら、縮合硬化シリコーン組成物は、これらの化学的性質によって縮合硬化プロセス中に揮発性副生成物を放出するため、それら自体の問題が発生する。これらの揮発性分子の放出は、硬化積層接着剤がガス不透過性基材とスーパーストレートとの間に限定される場合に特に問題となり得る、硬化積層接着剤の本体内における気泡の発生を引き起こす。これは一般的に、ガラス、金属、若しくはセラミック基材、及び/又はスーパーストレートを使用する場合であるが、透明材料の2枚のパネルが積層体内に閉じ込められた気泡を有し、それにより使用時に積層体を通して視覚を損なう場合に、最も容易に見られる。
【0005】
多くの場合、積層接着剤として使用されるエラストマー又はゲルなどのシリコーン系材料は、基材及び/又は他の材料への接着を維持しなければならない。例えば電子機器では、ゲルは、硬化して非常に柔らかい材料を形成する封入材の特別なクラスである。それらを使用して、敏感な回路に対し高レベルの応力緩和を提供する。ゲル及びエラストマーの両方は、電子機器において多くの重要な機能を果たす。それらの主な役割は、誘電体絶縁として機能すること、回路を水分及び他の汚染物質から保護すること、部品への機械的及び熱的ストレスを軽減することによって、電子アセンブリ及び部品を有害な環境から保護することである。そのような状況では、ゲルを、コーティング又は封入材料を通過する電気コネクタ及び導体に加えて、電子及び電気部品並びにプリント回路基板に接着する必要がある。
【0006】
積層接着剤として使用される材料は、主として付加硬化化学反応に基づく、即ち、これらはケイ素水素化物基と不飽和炭素基とを、通常は白金系化合物である触媒により補助して反応させることにより硬化する。歴史的には、産業では、この種の付加硬化組成物は、化合物本体を介してすぐに硬化し、数分で硬化ゲル材料となることから、上記の用途に好ましいものであったが、縮合硬化系ははるかに遅いものであり、チタネート硬化縮合プロセスでは、例えば、未硬化材料本体6mmの深さ当たり最大7日かけて硬化する。硬化速度の観点から、これらのヒドロシリル化硬化組成物から作製されたシリコーン系材料が優れているが、これらの種類の生成物を使用するには、いくつかの潜在的問題及び/又は欠点がある。まず、ヒドロシリル化硬化組成物は、一般に、高温(すなわち、室温を大幅に上回る温度)で硬化する。ヒドロシリル化組成物は、汚染され、白金系硬化触媒の失活によって非硬化性になる場合がある。白金触媒は、アミン含有化合物、硫黄含有化合物及びリン含有化合物による影響を受けやすいものであり、被毒することがある。
【0007】
多成分縮合硬化シリコーンエラストマースズ触媒又は亜鉛触媒を配合するためには、典型的には、例えばジブチルスズジラウレート、スズオクトエート、亜鉛オクトエートなどが使用される(Noll,W.;Chemistry and Technology of Silicones,Academic Press Inc.,New York,1968,p.397)。一方で、スズ硬化縮合系では、より短い期間で硬化させ、80℃より高い温度で逆反応(すなわち、解重合)し得るため、例えば電子機器用途には望まれない。更に、スズ触媒組成物は、水分を運ぶ成分、典型的には硬化を可能にする充填剤を必要とする。
【0008】
1成分型水分硬化性シリコーンを配合するには、アルコキシチタン化合物(すなわちアルキルチタネート)が好適な触媒であることは当業者に公知である(参考文献:Noll,W.;Chemistry and Technology of Silicones,Academic Press Inc.,New York,1968,p.399,Michael A.Brook,silicon in organic,organometallic and polymer chemistry,John Wiley & sons,Inc.(2000),p.285)。チタネート触媒は、スキン又は拡散硬化された1液型硬化シリコーンエラストマーの配合への使用について、広く記載されている。
【0009】
シリコーン系積層接着剤で積層するために開発された典型的な方法とは、積層接着剤を、好適なパターン(例えば、平行なストリップ)で一緒に積層する両方の基材上に積層接着剤を適用し、次いで、例えばホットメルト材料のダムを、1つの基材表面の周辺部に適用して、基材間に挟まれた積層接着剤の予備硬化の漏れを防止することである。次いで、得られた予備硬化アセンブリを約7分間真空下に置き、続いて約2分間圧力を加え、そして最後に、圧力及び真空を解放して、積層接着剤を硬化させる。このプロセスは適用可能であるものの、場合によっては漏れを生じる可能性があり、熱硬化材料を使用する場合では、高温で効果的に直ちに硬化されるので許容される。しかしながら、室温のシリコーンが使用される場合、硬化プロセス中で後になって漏れが生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
積層体は、風及び雨などの環境要因からの保護を得るために使用されることが多い。しかしながら、多くの用途において、気泡は硬化した積層接着剤中に捕捉され、これにより光電子素子及び電子物品の機械的、電気的、及び審美的特性が弱まる可能性がある。したがって、漏れ及び気泡の存在を最小限に抑え、好ましくは打ち消すことによって、このような積層体を改善する機会が依然として存在する。
【0011】
特に室温硬化積層接着剤系で、漏れ、空隙、又は気泡を伴わずに、比較的短い時間枠で使用するために、積層アセンブリを製造するための方法が開発されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
2つの基材の間に挟まれた硬化積層接着剤を含む積層アセンブリを作製するための方法であって、-
(i)第1の基材の周辺部の周りにシーラント又は同様のもののダムを準備するステップと、
(ii)流動性シリコーン系積層接着剤を第1の基材の周りにシーラントのダムを有する第1の基材上へ導入するステップと、
(iii)第2の基材を第1の基材の上に配置して予備硬化されたアセンブリを形成し、流動性シリコーン系積層接着剤を第1の基材と第2の基材との間に捕捉するステップと、
(iv)ステップ(iii)の予備硬化されたアセンブリに真空を適用するステップと、
(v)真空を維持しながら、所定の圧力でステップ(iv)の予備硬化されたアセンブリを押圧するステップと、
(vi)第1の基材と第2の基材との間にシーラントの周辺ダムによって画定される流動性シリコーン系積層接着剤の連続層が提供されることを確実にするのに十分な期間、真空を維持しながら、ステップ(v)の所定の圧力を解放するステップと、
(vii)ステップ(v)を繰り返し、次いで圧力及び真空を解放し、そして予備硬化されたアセンブリを硬化させるステップと、を含む、方法が提供される。
【0013】
ステップ(v)を繰り返すことが、漏れ若しくは気泡又は同様のものを有しない、きれいな積層アセンブリのより確実な製造を助けることが見出された。実際に、必要とされる場合には、ステップ(v)及び(vi)を数回繰り返すことができる。
【0014】
積層アセンブリの最終用途に応じて、物体が積層アセンブリ内の硬化積層接着剤層内へ効果的に封入されるように、1つ以上の物体が、第1の基材と第2の基材との間の積層接着剤層に取り付け、挿入、又は埋め込まれてもよい。物体は、例として、織物、装飾、電子機器、LED、光起電セル、又はあらゆるワイヤ及び/若しくは他のコネクタ又は同様のものなどであってもよい。したがって、積層アセンブリの最終用途が電子本体である場合、積層接着剤を利用して、積層プロセス前に第1又は第2の基材の表面に取り付けられた又は配置された、太陽電池又はワイヤなどを封入することができる。
【0015】
必要に応じて、第2の基材の第1の側面はまた、プロセスのステップ(iii)において第1の基材上に第1の側面を配置する前に、流動性シリコーン系積層接着剤で予めコーティングされてもよく、すなわち、流動性シリコーン系積層接着剤が第1及び第2の基材の両方に適用され、次いで、第1の基材に適用されたダムによって画定される領域内に挟まれるようにする。第1の基材と第2の基材との間の未硬化積層接着剤層内に存在するガスは、真空ステップ中に除去され、積層接着剤は、圧縮ステップ中に硬化を開始し得る。
【0016】
得られた積層アセンブリは自己回復性である。すなわち、積層の直後に存在する可能性のある小さな気泡がしばらくして消失する。従来のガラス封入方法、例えば、フィルム積層接着剤を使用する方法と比較して、本方法では、設備投資が少なくて済む(例えば、オートクレーブなし、場合によっては加熱なし)。
この後者の利点は、冷却を全く必要としない又は最小限に抑える場合、積層直後に得られた積層体を操作することができるため、従来の積層技術及び接着剤よりも高い積層スループットを実現できることを意味する。
【0017】
漏れを最小限に抑えるために利用されるダムは、ホットメルトシリコーン又はホットメルトポリイソブチレン(PIB)から作製されてもよく、特に後者の場合、ガス及び水分透過性を最小限に抑える必要がある。あるいは、ダムは、十分なグリーン強度(シーラントが完全に硬化する前に組み立てられた構造で使用されるシーラントの強度)を有するならば、シリコーンシーラント材料を用いて製造されてもよい。その後、ダム材料は、その最終用途に応じて保持又は除去され得る。プロセスの完了後に除去されない状況では、ダム材料は、硬化した積層接着剤の外側の周りの外部保護シールとして利用される。あるいは、ダムは、アセンブリの必要な寸法及び視覚特性を得るために、硬化が完了した後に、単独で又は更には組み合わせて除去されてもよい。蒸気バリアはまた、前述のシーラント材料の中又はその上で利用され得る。
【0018】
流動性シリコーン系積層接着剤は、例えば、カーテンコーター、スプレー装置ダイコーター、ディップコーター、押出コーター、ナイフコーター、及びスクリーンコーターなどの好適なディスペンサーを使用して、あらゆる好適な方法によって基材表面上に適用することができる。典型的には、流動性シリコーン系積層接着剤は、25℃で約100mPa.s~25℃で最大100,000mPa.s、あるいは25℃で最大50,000mPa.s、あるいは25℃で最大30,000mPa.sの粘度を有する。これは、予備硬化アセンブリの内部から予備硬化アセンブリの周囲に延びる少なくとも1つの通路を画定するパターンで堆積される。パターンは特に限定されず、幾何学的、非幾何学的、均一又は不均一なパターンとして更に説明され得る。パターンの全体又は一部は、直線、ジグザグ、ヘリングボーン、円形若しくは楕円形、三角形、渦巻形、リボン形、大理石、スパイラル形、コイル形、カール形、ねじれ、ループ、螺旋、蛇行、正弦波、巻線、星形、「x」形、及び/又はランダムとして説明することができる。一実施形態では、硬化性シリコーン組成物は、1つ、2つ、又は複数の列に堆積される。1つ以上の行は、1つ以上の他の列と実質的に平行に、又は横断(すなわち、ある角度で)して配置されてもよい。例えば、積層接着剤内又は積層接着剤から形成された通路は、予備硬化アセンブリの周辺部上における対向する位置又は異なる位置まで延びてもよい。これは、硬化性シリコーン組成物の1つ以上の列の配置に基づいて達成され得る。積層接着剤を複数の列又は中央プールに適用することが特に好ましい。
【0019】
プロセスのステップ(iv)は、典型的には、15秒~1.5分、あるいは15秒~1分の持続時間であってもよいが、典型的には、20秒~1分、例えばおよそ30秒の持続時間である。
【0020】
ステップ(v)の期間は、いくつかの要因、特に基材の表面積、並びに使用される流動性シリコーン系積層接着剤の体積及び粘度に依存すると考えられる。したがって45秒~3分の期間は、典型的には十分であると予想されている。
【0021】
ステップ(vi)の期間がステップ(iv)の期間と同様であって、同様にステップ(vii)の期間がステップ(v)の期間と同様であることが考えられる。
【0022】
典型的に、適用される圧力は使用される基材などの要因で決定されるが、典型的には10,000~400,000Paの範囲であって、ステップ(vi)及び(vi)の両方と同様であることが予想される。
【0023】
上記の方法に従って調製された予備硬化アセンブリは、積層プロセスの終わりまでに積層アセンブリへと効果的に変えられるが、室温硬化系(縮合硬化)の場合、硬化プロセスは積層後に続いてもよく、したがって、積層中に生成された気泡を除去できることが理解されるべきである。しかしながら、積層接着剤は、積層後の硬化プロセスの完了中における層間剥離を回避するのに十分なグリーン強度を有するように設計されている。
【0024】
このプロセスは、室温硬化系中の気泡などの回避に関して設計されているが、硬化プロセス中に典型的に熱を必要とするヒドロシリル化硬化系などの他のシリコーン硬化系に関しても、同様に機能することが見出された。しかしながら、好ましくは、硬化させる前に、上記プロセスの全体が室温で行われる。
【0025】
基材は、例えば、ガラス、木、石、プラスチック、複合材、金属、及び/若しくはセラミック又は同様のものなどから作製されてもよい。しかしながら、積層接着剤の積層後の無色明澄な性質を考慮すると、第1の基材又は第2の基材のうちの少なくとも1つが透明であることが好ましい。使用されるガラス基材は、必要に応じて、ホワイトボードガラス、ソーダ石灰ガラス、及び同様のものであってもよい。
【0026】
スペーサーを使用して、第1及び第2の基材を予め画定された距離だけ離して維持し、前述のプロセス中に導入される積層接着剤によって充填される体積を決定することができる。
【0027】
記載された解決策は2つの剛性基材の積層のためのものであるが、同じ解決策を使用して、2つの剛性基材の間で、積層接着剤内に平坦な物体を封入され得ることが理解される。これは、布地、又は木、プラスチック、セラミック、天然の石、若しくは金属から作製された物体などの装飾的で平坦な物体であり得る。あるいは、物体は同様に、光起電セルのアレイといった「機能的な」層、又は平坦なLEDアセンブリ、若しくは電子ディスプレイ、液晶アセンブリであってもよい。
【0028】
積層アセンブリは、必要に応じて、例えば、焼戻し、表面反射防止、紫外線ブロッキング、又は同様のもののために、積層後及び/又は硬化後に処理してもよい。
【0029】
室温硬化積層接着剤を用いた本積層方法の1つの注目すべき利点は、組成物が室温又は中程度の温度で硬化するため、積層プロセスの間に到達する必要がある温度のために積層が困難である温度に影響されやすい構成成分の積層が可能になる点である。
【0030】
高粘度の縮合硬化組成物、例えば25℃で50,000mPa.sを超える組成物は、組み立て前に両方の窓ガラスへ適用することができるという利点があり、これにより積層プロセスの速度を上げることができるが、このような高粘度の組成物は、硬化プロセス中に空気及び気泡をより容易に捕捉する。対照的に、低粘度の処方物は、より容易に空隙及び気泡を放出するという利点を有し、より高い割合の架橋剤を必要とするため、硬化プロセスにより放出される排出物がより多くなる場合がある。
【0031】
上述のような積層プロセスを用いて製造された積層アセンブリにより、積層プロセスの間及び/又は積層プロセスの完了直後に、第1の基材と第2の基材との間の積層接着剤層内に最初に目に見える気泡が、積層接着剤自体の積層後の硬化プロセスによって、その後すぐに消失する可能性がある。従来のガラス封入方法と比較して、室温硬化系を使用する積層では、設備投資の要求基準が極めて低くなる(例えば、オートクレーブなし、及び典型的には加熱なし)。この後者の利点は、全く又は最低限の冷却が必要とされる場合、得られた積層体を積層直後に操作することができるため、従来の積層技術で行うよりも高い積層スループットが達成され得ることを意味する。
【0032】
誤解を避けるために、圧縮ステップは、機械的な重量、プレス、又はローラー(例えば、ピンチローラー)を適用することを含んでもよい。圧縮ステップは、積層アセンブリ、又は構成要素のあらゆる1つ以上の層の内部(例えば、中心)に力を加えることとして更に定義することができる。この力は、物品の周辺部又は縁部に向かって移動してもよい。例えば、この力は、中心に加えられ、次いで、物品からの空気の排出を補助するために外側に移動されてもよい。
【0033】
上述したように、真空を適用するステップは、プロセスのステップ(iv)及び(vi)における圧縮とは独立して実行され、ステップ(v)及び(vii)において、真空と圧縮力とを同時に適用して、空気を予備硬化アセンブリの内部から予備硬化アセンブリの周囲へと、少なくとも1つの通路を通って排気し、予備硬化アセンブリ内に硬化性積層接着剤の圧縮層を形成し、その後、適切な硬化方法によって積層接着剤を硬化させる必要性を含む。
【0034】
圧縮中、積層接着剤組成物は硬化を開始し、空気を、予備硬化積層アセンブリの内部から、少なくとも1つの通路を通って予備硬化積層アセンブリの周辺部へと逃がす。例えば、空気を、前述の方法のステップ(iii)~(vi)中に逃がすか、又は排気することができる。少なくとも1つの通路を通して空気を逃がすことにより、視認可能な欠陥を最小限に抑えて積層アセンブリを形成することが可能になる。一実施形態では、積層アセンブリは、実質的に、より好ましくは全く、気泡を含まない。
【0035】
積層アセンブリの硬化プロセスは、必要とされるあらゆる好適な様式で行われてもよいが、典型的には、硬化プロセスの化学的性質によって決定される。すなわち、使用されるシリコーン積層接着剤の種類に依存するが、例えば、室温(典型的には、60℃超の高温(典型的には、ヒドロシリル化硬化又はフリーラジカル硬化系))又はシリコーン組成物を硬化させるためのUV曝露処理によって行われ得る。硬化プロセスに所定の予備硬化アセンブリが含まれている場合、硬化プロセスは、所望であれば、連続的なオーブン及び/又は加熱炉を含む連続プロセスを使用して実施してもよい。
【0036】
したがって、流動性シリコーン系積層接着剤は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物、縮合硬化性シリコーン組成物、並びに/又は放射線硬化性シリコーン組成物、及び光(例えば、UV光)硬化性組成物といったフリーラジカル硬化性シリコーン組成物、並びに過酸化物硬化性シリコーン組成物であるか、これらを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなるとして更に定義することができる。用語「から本質的になる」とは、硬化性シリコーン組成物が1種類の硬化機構によって硬化可能であり、異なる硬化機構によって硬化可能な1つ以上の組成物を含まない実施形態について、記述している。
【0037】
縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には、分子当たり平均で少なくとも2つのシリコーン結合水素原子、ヒドロキシ基、又は加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンと、随意に、シリコーン結合加水分解性基及び/又は縮合触媒を有する架橋剤を含む。
【0038】
縮合硬化性シリコーン組成物は、ポリオルガノシロキサン中のシリコーン結合基の性質に応じて硬化する。例えば、ポリオルガノシロキサンがシリコーン結合ヒドロキシ基を含む場合、組成物は、組成物を加熱することによって硬化(すなわち、架橋)され得る。組成物は、典型的には、50~250℃の温度で1~50時間加熱することによって硬化され得る。縮合硬化性シリコーン組成物が縮合触媒を含む場合、組成物は、典型的には室温(約23±2℃)で硬化される。所望の硬化は、熱及び/又は高湿度への曝露によって更に加速され得るが、縮合触媒及び室温硬化プロセスの使用が好ましい。
【0039】
あらゆる好適な縮合硬化組成物を本発明において利用することができるが、以下の組成物の積層接着剤は、本明細書に記載されるプロセスに特に適していることが判明した。
【0040】
チタネート/ジルコネート硬化触媒に基づく多液型縮合硬化性積層接着剤組成物であって、次の成分、-
(i)1分子当たり少なくとも1個、典型的には少なくとも2個の加水分解性基及び/又はヒドロキシル官能基を有する、少なくとも1個の縮合硬化性シリル末端ポリマーと、
(ii)
・1分子当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、及び/又は
・少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含有するシリル官能性分子
の群から選択される架橋剤と、
(iii)チタネート、ジルコネートの群から選択される縮合触媒と、
を含み、
ポリマー(i)は、架橋剤(ii)及び触媒(iii)と同じ部分には保存されず、縮合触媒(iii)が、組成物の部分において累積的に存在する水分の少なくとも50%であるモル量で存在し、ポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基の、架橋剤(ii)中の加水分解性基に対するモル比が0.15超であり、そしてポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基の、M-OR官能基とに対するモル比が10より大きく、Mはチタン又はジルコニウムである、構成成分を含むチタネート/ジルコネート硬化触媒に基づいて、多液型縮合硬化性積層接着剤組成物を混合することによって作製される、多液型縮合硬化性積層接着剤組成物。
【0041】
上述の多液型縮合硬化性積層接着剤組成物は、構成成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに顔料、染料、接着促進剤、光拡散粒子、シロキサン樹脂、及び/又は耐火性を有する粒子から選択される1つ以上の添加剤からなってもよい。
【0042】
本明細書中で定義される方法におけるこれらの組成物の1つの利点は、室温で硬化する一方で、使用される触媒を用いてエラストマー又はゲルを形成する(縮合)ために、それらが白金硬化シリコーンよりも汚染物質対し抵抗性であり、スズ触媒組成物とは異なって高温及び高湿度に曝されたときに復帰抵抗性を与えるが、積層接着剤硬化プロセスの間に形成される気泡を自己根絶し、それによって透明積層用途での使用を可能にするという点である。疑いを避けるために、「気泡」という用語は、シリコーン封入剤の層内の封入された容積空間を表すのに使用される。この封入された容積空間は、少なくともある量の気体又は蒸気物質を含有する。
【0043】
全ケイ素結合ヒドロキシル(Si-OH)モル含有量は、混合処方物100gについて算出される。ポリマーに関するケイ素結合ヒドロキシルのモル含量は、ポリマー中に存在するヒドロキシル官能基の平均数、典型的には2を乗じたポリマー数の平均分子量によって除された混合生成物100g中のヒドロキシル含有ポリマーのg量に等しい。処方物中にいくつかのヒドロキシル官能性ポリマーが存在する場合、各ポリマーのモル含量の合計を計算することで、処方物中の全てのシラノールモル含量が構成される。
【0044】
全加水分解性基モル含有量は、混合処方物100gについて算出される。ある物質に関する加水分解性基のモル含有量は、混合生成物100g中の、加水分解性基を含有する分子の量(g単位)を、当該分子の分子量又はポリマー分子の場合は数の平均分子量で除算し、当該分子中に存在する加水分解性官能基の平均数を乗じた値に等しい。各分子又はポリマーのモル含有量の和は、処方物中の加水分解性基の全モル含有量を構成する。
【0045】
次いで、ポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基の、対架橋剤(ii)由来の加水分解性基に対するモル比は、ポリマー(i)中のシリコーン結合ヒドロキシル基(Si-OH)の総モル含量を、架橋剤(ii)由来の加水分解性基の総モル含量で除することによって計算される。割合の値は>0.15、すなわち>0.15:1である。0.15の値は、主に、例えば25℃で30,000mPa.s以下の低粘度を有するポリマーについてである。しかしながら、25℃での30,000mPa.sを超える高粘度のポリマーについては、割合の値は>0.5、すなわち>0.5:1である。
【0046】
組成物の水分(水)含量を、充填剤の不在下において、110℃のオーブン試料プロセッサヘッドスペース(774)を使用してMetrohm coulometric Karl Fischer titrator(831型)によって測定した。充填剤の含水量は、存在する場合、以下に記載される通りISO787-2:1981に従って決定した。
【0047】
ポリマー(i)は、少なくとも1つ以上の水分/縮合硬化性シリル末端ポリマーである。ポリジアルキルシロキサン、アルキルフェニルシロキサン、又はシリル末端基を有する有機系ポリマー、例えばシリルポリエーテル、シリルアクリレート及びシリル末端ポリイソブチレン又は上記のいずれかのコポリマーを含む、任意の好適な水分/縮合硬化性シリル末端ポリマーを使用することができる。好ましくは、ポリマーは少なくとも2つのヒドロキシル基又は加水分解性基を含有するポリシロキサン系ポリマーであり、最も好ましくは、ポリマーは末端ヒドロキシル基又は加水分解性基を含む。好適なヒドロキシル基又は加水分解性基の例としては、-Si(OH)3、-(Ra)Si(OH)2、-(Ra)2Si(OH)、-RaSi(ORb)2、-Si(ORb)3、-Ra
2SiORb、又は-(Ra)2Si-Rc-SiRd
p(ORb)3-p[式中、各Raは独立して、一価のヒドロカルビル基、例えば、特に1~8個の炭素原子を有するアルキル基(好ましくはメチル基)を表し、各Rb及びRd基は、独立して、アルキル基又はアルコキシ基であり、ここで、アルキル基は好適には最大6個の炭素原子を有し、Rcは、最大6個のケイ素原子を有する1個以上のシロキサンスペーサーにより介在され得る二価の炭化水素基であり、かつpは値0、1又は2である]が挙げられる。
【0048】
好ましくは、ポリマー(i)は、一般式
X3-A-X1 (1)
[式中、X3及びX1は独立して、ヒドロキシル又は加水分解性基で終了するシロキサン基から選択され、Aはポリマー鎖、あるいはシロキサンポリマー鎖を含有するシロキサン及び/又は有機物質である。]
を有することができる。
【0049】
ヒドロキシル終端又は加水分解性基X3又はX1の例としては、次の通り各Rb基と共に、-Si(OH)3、-(Ra)Si(OH)2、-(Ra)2Si(OH)、-(Ra)Si(ORb)2、-Si(ORb)3、-(Ra)2SiORb、又は-(Ra)2Si-Rc-Si(Rd)p(ORb)3-pとして挙げられ、存在する場合、典型的にはメチル基である。好ましくは、X3及び/又はX1末端基は、ヒドロキシジアルキルシリル基、例えばヒドロキシジメチルシリル基又はアルコキシジアルキルシリル基、例えばメトキシジメチルシリル基又はエトキシジメチルシリル基である。
【0050】
式(I)のポリマー鎖A中の好適なシロキサン基の例は、ポリジオルガノシロキサン鎖を含むシロキサン基である。したがって、ポリマー鎖Aは、好ましくは、式(2)
-(R5
sSiO(4-s)/2)- (2)
[式中、各R5は独立して、1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基などの有機基であり、任意選択で塩素又はフッ素などの1つ以上のハロゲン基で置換されており、sは、0、1、又は2である。]のシロキサン単位を含んでもよい。基R5の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、塩素又はフッ素で置換されたプロピル基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル、β-(ペルフルオロブチル)エチル基若しくはクロロシクロヘキシル基が挙げられる。好適には、基R5のうちの少なくともいくつか、好ましくは実質的に全てが、メチルである。
【0051】
典型的には、上記タイプのポリマーは、コーンプレートを使用するBrookfieldコーンプレート粘度計(RV DIII)を使用して測定した場合、25℃で、1000~300000mPa.s、あるいは1000~100000mPa.sオーダーの粘度を有する。
【0052】
したがって、式(2)の単位を含む好ましいポリシロキサンは、上に定義するように水分を使用して加水分解できる末端ケイ素結合ヒドロキシル基又は端末ケイ素結合有機基を有するポリジオルガノシロキサンである。ポリジオルガノシロキサンはホモポリマーであってもコポリマーであってよい。末端縮合性基を有する異なるポリジオルガノシロキサンの混合物もまた好適である。
【0053】
本発明に従って、ポリマー鎖Aは代替的に、シリル末端基、例えば、シリルポリエーテル、シリルアクリレート、及びシリル末端ポリイソブチレンを有する有機系ポリマーであってもよい。シリルポリエーテルの場合、ポリマー鎖はポリオキシアルキレン系単位をベースとする。このようなポリオキシアルキレン単位は、好ましくは、平均式(-CnH2n-O-)y[式中、nは2~4の整数であり、yは少なくとも4の整数である]により表される、繰り返しオキシアルキレン単位(-CnH2n-O-)から構成される、直鎖状の主としてオキシアルキレンポリマーを含む。各ポリオキシアルキレンポリマーブロックの平均分子量は、約300~約10,000の範囲であってよいが、より高い分子量であってもよい。更に、オキシアルキレン単位は、ポリオキシアルキレンモノマー全体にわたって必ずしも同一でなく、単位ごとに異なっていてもよい。ポリオキシアルキレンブロックは、例えば、オキシエチレン単位(-C2H4-O-)、オキシプロピレン単位(-C3H6-O-)、若しくはオキシブチレン単位(-C4H8-O-)、又はこれらの混合単位から構成され得る。
【0054】
他のポリオキシアルキレン単位としては、例えば、構造の単位
-[-Re-O-(-Rf-O-)p-Pn-CRg
2-Pn-O-(-Rf-O-)q-Re]-
[式中、Pnは1,4-フェニレン基であり、各Reは同一であるか又は異なり、2~8個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、各Rfは同一であるか又は異なり、エチレン基又はプロピレン基であり、各Rgは同一であるか又は異なり、水素原子又はメチル基であり、下付文字p及びqのそれぞれは3~30の範囲の正の整数である]を挙げることができる。
【0055】
本出願の目的で、「置換された」とは、炭化水素基中の1個以上の水素原子が別の置換基で置き換えられていることを意味する。このような置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチル基、パーフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基などのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル及びカルボキシルなどの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明で使用する分子内に有機脱離基を含有し得る、有機ポリマー(A)の主鎖は特に限定されず、様々な主鎖を有する有機ポリマーのいずれかであってよい。得られる組成物が優れた硬化性及び接着性を有することから、主鎖は、好ましくは、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1つを含む。
【0057】
使用することができる架橋剤(ii)は一般に、
-1分子当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、及び/又は
-少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含むシリル官能性分子
の群から選択される、架橋剤と、
【0058】
典型的には、架橋剤は、1分子当たり最低2個、好ましくは3個以上の加水分解性基を必要とする。いくつかの例において、2個の加水分解性基を有する架橋剤(ii)は鎖延長剤と考えることができる。したがって、架橋剤(ii)は、オルガノポリシロキサンポリマー(i)中の縮合性基に対して反応性である、1分子当たり2個、あるいは3個又は4個のケイ素結合縮合性基(好ましくはヒドロキシル基及び/又は加水分解性基)を有してよい。
【0059】
本明細書の開示の目的で、シリル官能性分子は、2個以上のシリル基を含むシリル官能性分子であり、各シリル基は、少なくとも1個の加水分解性基を含む。したがって、ジシリル官能性分子は、各々少なくとも1個の加水分解性基を有する2個のケイ素原子を含み、ここで、ケイ素原子は有機又はシロキサンスペーサーによって分離されている。典型的には、ジシリル官能性分子上のシリル基は、末端基であってよい。スペーサーは、ポリマー鎖であってもよい。
【0060】
本明細書の開示の目的で、ジシランは、少なくとも2個のシリル基を有し、その2個のケイ素原子が互いに結合したシリル官能性分子である。
【0061】
シリル基上の加水分解性基としては、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、オクタノイルオキシ、及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)基及びイソブチルケトキシミノ(isobutylketoximino)基);アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ基及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ基)が挙げられる。場合によっては、加水分解性基はヒドロキシル基を含んでもよい。
【0062】
シラン架橋剤(ii)としては、アルコキシ官能性シラン、オキシモシラン、アセトキシシラン、アセトンオキシムシラン、エノキシシランが挙げられる。
【0063】
架橋剤がシランであり、シランが1分子当たり3個のケイ素結合加水分解性基のみを有する場合、4番目の基は好適には、非加水分解性のケイ素結合有機基である。これらのケイ素結合有機基は、好適には、任意選択的にフッ素及び塩素などのハロゲンによって置換されたヒドロカルビル基である。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基);アルケニル基(例えば、ビニル基及びアリル基);アリール基(例えば、フェニル基及びトリル基);アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル基)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られた基が挙げられる。第4のケイ素結合有機基は、メチルであってもよい。
【0064】
典型的なシランは、式(3)
R”4-rSi(OR5)r (3)
[式中、R5は、上記のとおりであり、rは2、3又は4の値を有する]によって記載することができる。典型的なシランは、R”がメチル、エチル又はビニル又はイソブチルを表すものである。R”は、直鎖状及び分枝状のアルキル、アリル、フェニル、及び置換フェニル、アセトキシ、オキシムから選択される、有機基である。場合によっては、R5はメチル又はエチルを表し、rは3である。
【0065】
別の種類の好適な架橋剤(ii)は、Si(OR5)4[式中、R5は上記のとおり、あるいはプロピル、エチル又はメチルである]の種類の分子である。Si(OR5)4の部分縮合体も考えられる。
【0066】
一実施形態において、架橋剤(ii)は、各々少なくとも1個で最大3個の加水分解性基を有するシリル基を少なくとも2個有するか、あるいは各シリル基が少なくとも2個の加水分解性基を有する、シリル官能性分子である。
【0067】
架橋剤(ii)はジシリル官能性ポリマー、すなわち、2個のシリル基を含有し、それぞれが式(4)
Si(OR7)yRvSi(OR7)z (4)
[式中、y及びzは独立して、1、2、又は3、あるいは2又は3の整数である。]により表されるものなどの、少なくとも1個の加水分解性基を含有する、2個のシリル基を含有するポリマーであってもよい。Rvは有機又はポリシロキサン系断片である。
【0068】
シリル(例えば、ジシリル)官能性架橋剤(ii)は、シロキサン又は有機ポリマー主鎖を有してもよい。そのようなシロキサン又は有機系架橋剤の場合、分子構造は、直鎖状、分枝状、環状又は巨大分子であり得る。好適なポリマー架橋剤(ii)は、上記式(1)で示されるポリマー鎖Aと類似のポリマー主鎖化学構造を有してもよい。シロキサン系ポリマーの場合、架橋剤の粘度は、25℃で0.5~80,000mPa.sの範囲内にある。
【0069】
アルコキシ官能性末端基を有するシリコーン又は有機ポリマー鎖を有するジシリルポリマー架橋剤(ii)の例としては、少なくとも1個のトリアルコキシ末端(アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であってもよい)を有するポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0070】
したがって、架橋剤(ii)としては、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン、部分縮合テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。その他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン、アルケニルトリオキシモシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ-ブトキシジアセトキシシラン、フェニル-トリプロピオノキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニル-トリス-メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、エチルポリシリケート、n-プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、ジメチルテトラアセトキシジシロキサン、オキシモシラン、アセトキシシラン、アセトンオキシムシラン、エノキシシラン及びその他の3官能性アルコキシシランなど、並びにこれらの部分加水分解縮合生成物;1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(あるいは、ヘキサメトキシジシリルヘキサンとしても知られる)、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)アミン、ビス[トリアルコキシシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス[ジアルコキシアルキルシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)尿素、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)尿素、ビス[3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス[4-トリメトキシシリルブチル)アミン、ビス[4-トリエトキシシリルブチル)アミン、ビス[3-トリメトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス[3-トリエトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス[4-トリメトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス[4-トリエトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス[3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス[3-トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス[4-トリメトキシシリルブチル)尿素、ビス[4-トリエトキシシリルブチル)尿素、ビス[3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス[3-ジエトキシメチル シリルプロピル)アミン、ビス[4-ジメトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス[4-ジエトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス[3-ジメトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス[3-ジエトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス[4-ジメトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス[4-ジエトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス[3-ジメトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス[3-ジエトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス[4-ジメトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス[4-ジエトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス[3-ジメトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス[3-ジエトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス[4-ジメトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス[4-ジエトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス[3-ジメトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス[3-ジエトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス[4-ジメトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス[4-ジエトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス[3-ジメトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス[3-ジエトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス[4-ジメトキシエチルシリルブチル)尿素、及び/又はビス[4-ジエトキシエチルシリルブチル)尿素;ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス(トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリジアルキルシロキサン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリアリールアルキルシロキサン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート;ポリイソブチレン;ジ又はトリアセトキシシリル末端ポリジアルキル;ポリアリールアルキルシロキサン;ジ又はトリオキシモシリル末端ポリジアルキル;ポリアリールアルキルシロキサン;ジ又はトリアセトノキシ末端ポリジアルキル又はポリアリールアルキルが挙げられる。
【0071】
組成物は、組成物が硬化する速度を増加させる縮合触媒(iii)を更に含む。特定のシリコーンシーラント組成物に含めるために選択される触媒は、必要とされる硬化速度に応じて異なる。チタネート及び/又はジルコネート系触媒は、一般式Ti[OR22]4Zr[OR22]4(式中、各R22は同一でも異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状であり得る一価、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表す)に従う化合物を含むことができる。任意選択的に、チタネートは部分不飽和基を含んでもよい。なお、R22の好ましい例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三級ブチル基及び分枝状第二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチル基が挙げられる。各R22が同一である場合、R22は、イソプロピル基、分枝状第二級アルキル基又は第三級アルキル基、特に第三級ブチル基であることが好ましい。好適な例としては、例えばテトラn-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラ-t-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、及びジイソプロポキシジエチルアセトアセテートチタネートが挙げられる。あるいは、チタネートはキレート化されてもよい。キレート化は、アルキルアセチルアセトネート、例えばメチル又はエチルアセトネートなどの、任意の好適なキレート剤によってもよい。あるいは、チタネートは、例えば2-プロパノラト、トリスイソオクタデカノアトチタネートなどの、3個のキレート剤を生じるモノアルコキシチタネートであってよい。触媒は、組成物の部分A及び部分B中に累積的に存在する水分(すなわち水)の少なくとも50%のモル量で存在する。
【0072】
一実施形態では、前述される多液型縮合硬化性積層接着剤組成物は、構成成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに顔料、染料、接着促進剤、光拡散粒子、及び/又はシロキサン樹脂から選択される1つ以上の添加剤からなる。一般的にこのような添加剤は、組成物全体の約5重量%以下の量で存在する。
随意の添加剤
充填剤
【0073】
上述のような積層接着剤組成物の主な性質がその透明性であることを考慮すると、積層接着剤組成物自体は、典型的には、あらゆる無機充填剤、又は実際にその透明性に影響を及ぼす可能性があるあらゆる他の添加剤を含有しない。しかしながら、基材及びスーパーストレートの両方が透明でない場合、本明細書に記載される組成物は、これらの材料を含むように製造されてもよい。あるいは、本明細書に記載の積層接着剤組成物は、いかなる種類の無機充填剤をも含有しない。充填剤が存在する場合、その含水量は、ISO787-2:1981に記載の試験方法を利用して決定される。試験方法は、105℃のオーブン内に100mlの空のガラス容器を2時間にわたって配置することを含む。次いで、容器を、室温に達するまでデシケータに入れた。次いで、ガラス容器を正確に秤量し(W1)、その後、約1gの充填剤を容器に導入し、容器+充填剤の重量を正確に測定した(W2)。充填剤を有するガラス容器を105℃のオーブン内に更に2時間置いた。次いで、充填剤を含有するガラス容器を、室温に到達するまでデシケータに入れ、正確に再秤量した(W3)。充填剤のがん推量は、次式を用いて計算した:
含水量(%)=100×(W3-W2)/(W2-W1)。
シロキサン樹脂
【0074】
R2
3SiO1/2単位及びSiO4/2単位[式中、R2は、ケイ素原子、に直接結合しているか又は酸素原子を介して結合している、ヒドロキシル基又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基である]を含むシロキサン樹脂。一価炭化水素基は、典型的には、最大20個の炭素原子R2
3SiO1/2、典型的には1~10個の炭素原子を含む。R2に好適な炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基及びオクタデシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、及び5-ヘキセニル基などのアルケニル基;シクロヘキシル基及びシクロヘキセニルエチル基などの脂環式基、並びにフェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基、ベンジル基及び2-フェニルエチル基が挙げられる。典型的には、R2基の少なくとも1/3、あるいは少なくとも2/3は、メチル基である。R2
3SiO1/2単位の例としては、Me3SiO1/2、PhMe2SiO1/2及びMe2ViSiO1/2[式中、Me、Ph及びViは、それぞれメチル、フェニル及びビニルを表す]が挙げられるが、これらに限定されない。シロキサン樹脂は、これらの基のうち2種以上を含んでもよい。シロキサン樹脂中のR2
3SiO1/2単位及びSiO4/2単位のモル比は、典型的に0.5:1~1.5:1である。これらの比は、Si29NMR分光法を用いて測定することができる。シロキサン樹脂は、代替的に、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2014/124389号の成分Aとして定義されたタイプの反応性シロキサン樹脂であってもよい。
接着促進剤
【0075】
好適な接着促進剤は、式R14
qSi(OR15)(4-q)[式中、下付き文字qは1、2、又は3、あるいはqは3である]のアルコキシシランを含み得る。各R14は独立して一価の有機官能基である。R14は、グリシドキシプロピル基若しくは(エポキシシクロヘキシル)エチル基などのエポキシ官能基、アミノエチルアミノプロピル基若しくはアミノプロピル基などのアミノ官能基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基などのメルカプト官能基、又は不飽和有機基であり得る。各R15は独立して、少なくとも1個の炭素原子を有する非置換飽和炭化水素基である。R15は、1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子を有してよい。R15の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソプロピルが挙げられる。
【0076】
好適な接着促進剤の例としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びグリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせが挙げられる。ヒドロシリル化硬化性組成物の接着促進剤の例は、米国特許第4,087,585号及び同第5,194,649号で確認することができる。硬化性組成物は、組成物の重量に基づいて0.01%~1%の接着促進剤を含み得る。好ましくは、生成物ネットワークへの組み込みよりも基材への分子の拡散に有利となるように、接着促進剤の加水分解速度は、架橋剤の加水分解速度よりも遅くする必要がある。
【0077】
顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、クロム顔料、コバルト顔料、銅顔料、アリザリン、ガンボージ、コチニールレッド、ローズマダー、インディゴ、インディアンイエロー、チリアンパープル、キナクリドン、マゼンタ、フタログリーン、フタルブルー、顔料赤170、ジアリールイリドイエローを挙げることができる。
【0078】
光拡散粒子:光拡散粒子は、概して微細に分散した無機粉末である。一実施例は二酸化チタンであるが、粉末形態の無機顔料であってもよい。他の例は、ヒュームドシリカである。透明用途の場合、これらは、積層アセンブリの透明性に最小限の効果を及ぼすためにのみ利用され得る。
【0079】
上述した積層接着剤は、一部の材料が数時間以上の保存寿命を示さないので、使用前に複数で、一般には使用/適用の少し前又は直前に一緒に混合される2つの部分で保存されるのが典型的である。その化学的性質による縮合硬化プロセスは、特にガス不透過性基材とスーパーストレートとの間、例えばガラス、金属、又はセラミック積層の場合に概して、積層の間に積層接着剤層中で気泡を生じる揮発性分子を生成することを理解されたい。先に示したように、積層接着剤は、多液型様式で、典型的には2液型で貯蔵され、ポリマー(i)、架橋剤(ii)、及び触媒(iii)は、同じ部分に一緒に貯蔵されるわけではない。2液型の組成物は、動的又は静的ミキサーによる任意の好適な標準的2液型混合装置を使用して混合してもよく、得られた混合物は、任意選択的に、意図される用途での使用のために装置から計量分配される。2液型組成物は、例えば、以下の選択肢のうちのいずれか1つを含み得る。
1)ポリマー(i)及び架橋剤(ii)を有する部分Aと、ポリマー(i)及び触媒(iii)を有する部分Bとの2液型で貯蔵され、又は
2)ポリマー(i)及び触媒(iv)を有する部分Aと、架橋剤(ii)を有する部分Bとの2液型で貯蔵されるか、又は2つ以上のポリマー(i)が存在する場合に貯蔵され、
3)第1のポリマー(i)及び架橋剤(ii)を有する部分Aと、第2のポリマー(i)及び触媒(iii)を有する部分Bとの2液型で貯蔵される。
【0080】
あるいは、組成物は、必要に応じて3つ以上の部分に貯蔵することができる。
【0081】
上述の組成物が、上述のようなプロセスに使用されるときに複数の部分に貯蔵されているとすると、上述のように、多液型縮合硬化性積層接着剤組成物の複数の部分を混合する最初のステップがあるであろう。次に、混合組成物は、前述の流動性シリコーン系積層接着剤として機能する。
【0082】
この場合、上記積層接着剤組成物の粘度は、この組成物の複数の部分を混合することから得られる混合物であり、すなわち、混合物の初期粘度は25℃で100,000mPa.s未満でなければならない。初期組成物粘度とは、組成物の複数の部分、典型的には2つの部分A及びBの一緒の混合完了から、短時間、すなわち10分未満の組成粘度を意味する。
【0083】
積層が完了すると、積層アセンブリは、意図される最終用途に応じて更なる処理を受けることができる。グレージング業界で使用されている積層アセンブリの場合、積層アセンブリは適切なグレージングユニットに嵌合されてもよく、電子用途の場合、積層アセンブリは、例えば、その間に挟まれ、(必要に応じて)ネジによってパネルへ固く固定された太陽電池マトリックスを備えるアセンブリの外側周辺部を包囲するように、例えばフレーミング又は同様のものを受けてもよい。積層アセンブリが挿入されるフレーム部材は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は衝撃、風圧若しくは雪堆積に対する強度、耐候性、及び軽量を有する同様の材料で作製されてもよい。
【0084】
本明細書では、上述のような硬化積層接着剤によって分離された第1及び第2の基材を含む、前述のプロセスを用いて作製された積層アセンブリもまた提供される。第1及び第2の基材は、あらゆる好適な材料、例えば、ガラス、木、石、プラスチック、複合材、金属、及びセラミック、又は組み合わせで作製されてもよく、一実施形態では、基材及びスーパーストレートは両方ともガラスパネルであるか、あるいは基材若しくはスーパーストレートのうちの1つはガラスパネルであって、他方は、接着機能いに対するコンクリート材料又は装飾要素若しくは湾曲ガラス表面などの代替材料から作製され、積層接着剤は、広範な温度範囲にわたって耐衝撃性及び遮音性を得るために使用される。本質的に、シリコーンはUV光に対して耐性であり、有機系積層接着剤よりも本質的に良好な耐火性/反応を保有する。
【0085】
上述の室温硬化積層接着剤を使用して作製された積層体は、
(i)基材及びスーパーストレートが透明であると仮定すると、積層が完了したときに、基材とスーパーストレートとの間に光学的に透明な(曇りのない)硬化積層接着剤層を有することと、
(ii)様々な基材に接着することと、
(iii)特に非透過性基材間の場合、積層後に積層接着剤層内に保持される気泡を、積層プロセス中に生成しないことと、を意図する。
【0086】
現在のプロセスから形成されるアセンブリは、透明性が必要とされる積層体、例えば、ガラス積層又はディスプレイ積層の製造を必要とする使用用途のために設計されるのが好ましい。
【0087】
上述のプロセスによって作製された積層アセンブリは、建築及び建築用途のために積層ガラスに使用することができるが、他の用途、例えば、民生用電子機器のディスプレイの製造及び/又は封入に使用することもできる。
【0088】
上述のプロセスを用いて作成されたアセンブリは、窓及びドアにおけるビジョンガラス部品として、手摺、バルコニー、若しくは屋根用途における1つ以上の部品、スパンドレル若しくは正面におけるシャドーボックスの一部として、内部隔壁の構成要素として、安全ガラス積層体として、電子ディスプレイ用途のため、耐火窓若しくはドアユニットにおける1つ以上の部品、日照調製部品として、又は消音障壁において、使用することができる。
【0089】
アセンブリは、以下に限定されないが、自動車、トラック、船舶、電車、小型電子機器、遠隔地電力システム、人工衛星、宇宙探査機、無線電話、ウォータポンプ、グリッド接続電気システム、バッテリー、充電器、光電気化学用途、ポリマー太陽電池用途、ナノ結晶太陽電池用途、照明、及び色素増感太陽電池用途を含む、あらゆる産業に用いることができる。一実施形態では、一連のモジュールが電気的に接続されて光電池アレイを形成する。光電池アレイは少なくとも2つのモジュールを含む。光電池アレイは典型的に屋根の上、バッテリーバックアップに接続された農村地域、及びDCポンプ、信号ブイ等で用いられる。光電池アレイは平面又は非平面であってもよく、典型的にはモジュールが電圧を発生させるような方法で相互に接続された、単一の発電用ユニットとして機能する。典型的には、モジュールは上述されたように電気的に接続され、相応の電圧を供給する。光電池アレイは任意の大きさ及び形状のものであり、任意の産業で使用することができる。
【0090】
上記のプロセスを使用して作製されたアセンブリは、あるいは、固体ライトの一部であってもよく、又は発光ダイオード(LED)などの固体照明であってもよい。当技術分野で知られているように、LEDは典型的には電子がオプトエレクトロニクス半導体で形成された正孔と再結合したとき順方向バイアス状態で光を発生する。電子が再結合すると、エレクトロルミネセンスと典型的に記載されるプロセスにおいて、光子を放出する。固体照明は、以下に限定されないが、インストルメントパネル&スイッチ、カーテシ照明、ウィンカーとストップ信号、家庭用器具、DVD/ステレオ/オーディオ/ビデオデバイス、おもちゃ/ゲーム器具類、防犯設備、スイッチ、建築照明、標識(経路識別文字)、小売ディスプレイ、非常用照明、ネオンサイン及び電球代替品、懐中電灯、アクセント照明、フルカラービデオ、白黒メッセージボード、交通・鉄道・航空用途に、携帯電話に、PDA、デジタルカメラ、ラップトップ、医療機器に、バーコードリーダー、色&マネーセンサー、エンコーダー、光スイッチ、光ファイバー通信、及びこれらの組み合わせを含む用途で使用することができる。
【0091】
アセンブリは、パワーエレクトロニクス製品、例えば、上述した硬化積層接着剤が配置された電子部品であってもよい。あるいは、硬化積層接着剤は、半導体及び/又は誘電体フィルムとして更に定義されてもよい。積層接着剤は、第1の基材と第2の基材との間に挟まれてもよい。電子部品は、ケイ素チップ又は炭化ケイ素チップなどのチップ、1つ以上のワイヤ、1つ以上のセンサー、1つ以上の電極などとして更に定義されてよい。電子物品は、特に限定されず、例示目的で、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、ショットキーダイオード、PINダイオード、マージ型PIN/ショットキー(MPS)整流器、及び接合バリアダイオードなどの整流器、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、サイリスタ、金属酸化電界効果トランジスタ(MOSFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、静電誘導トランジスタ(SIT)、電力トランジスタなどとして定義されてもよい。あるいは、電子物品は、例えば、電力コンバータ、インバータ、ブースタ、トラクション制御、産業用モータ制御、配電、及び輸送系のための前述のデバイスのうちの1つ以上といった、電力モジュールであってもよい。前述の積層アセンブリは、前述のデバイスのうちの1つ以上を含むものとして更に定義されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1B】挿入物を含む積層ガラスユニットを示す図である。
【実施例】
【0093】
全ての粘度測定は、特記のない限り、Brookfieldコーンプレート粘度計RV DIIIを用いて、最も適切なコーンプレートで、25℃にて測定した。
【0094】
以下の実施例で使用される組成物は、部分Aと部分Bとを共にSpeedmixerで混合することによって作製した。部分A及び部分BをSpeedmixerに導入し、次いで、毎分2000回転(rpm)の速度で30秒間、4回混合した。ジメチルOH末端ポリジメチルシロキサン(粘度約50,000mPa.s)は、63,000g/molの数の典型的な平均分子量を示す。トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(粘度約56,000mPa.s)は、62,000g/molの数の典型的な平均分子量を示す。OH末端ポリジメチルシロキサン(粘度約2,000mPa.s)は、22,000g/molの数の典型的な平均分子量を示す。ジメチルOH末端ポリジメチルシロキサン(粘度約13,500mPa.s)は、43,000g/molの数の典型的な平均分子量を示す。トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(粘度約2,000mPa.s)は、22,000g/molの数の典型的な平均分子量を示す。
処方A
【0095】
流動性シリコーン系室温硬化接着剤は、基剤(部分A)を硬化剤(部分B)へ3:1の重量比で加えて、2つの成分を共に混合して調製した。基剤は、50,000mPa.sのシラノール末端ポリジメチルシロキサンからなる。硬化剤は、56,000mPa.sのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン100重量部及びテトラn-ブチルチタネート0.2重量部からなる。部分A及び部分BをSpeedmixerに導入し、次いで、毎分2000回転(rpm)の速度で30秒間、4回混合した。
プロセスの説明
【0096】
第1及び第2の基材として2つのフロート窓ガラスを使用して、200×200×4mm3の積層窓ガラスを組み立てた。ダムは、シリコーンホットメルト(Dow Corning(登録商標)Instantglaze III Window Assembly Adhesive)を使用して、第1の窓ガラスの周辺部に堆積させる。ビーズ厚さは約2mm厚である。ダムの内部に、流動性シリコーン系室温硬化接着剤を流し込み、窓ガラスの中心に充填した。流動性シリコーン系室温硬化接着剤は、穏やかに流れてディスクを形成する。
【0097】
適用後、両方の窓ガラスを互いの上に置くことで接着剤を挟み、予備硬化アセンブリを形成し、窓ガラスをVAC(登録商標)Company vacuum apparatus(HVV90500)中に入れ、真空ポンプを用いて規定時間(表参照)真空を引き起こす。一旦時間に到達したら、加圧板を利用して、80,000Paの圧力を予備硬化アセンブリに規定時間加える。続いて、所定の時間、真空を維持しながら圧力を解放し、その後、所定の時間圧力を再び加える。最後に、真空を大気圧に放出し、室温で窓ガラスへの硬化プロセスを完了させる。
【表1】
【表2】
【0098】
実施例及び比較例(Comp.)は、1つの圧縮ステッププロセスが、空隙なし及び漏れなしのアセンブリをもたらさないことを示している。第1の圧縮は、プロセスにおいて後に生じるバリアでの漏れを防止するのに有用である。2つの圧縮工程の間の真空段階は、製品を中心から縁部へと動かすのに有用である。1つのステッププロセスが偶然に成功し得たが、生成されたユニットにおいて一貫した品質は提供しない。本明細書に添付された
図1Aは、上述のプロセスによって作製された積層体を描写する。
【0099】
得られたユニットのうちの1つを、3メートルから落下する5kg質量の衝撃について試験した。衝撃からガラス部品が排出されず、衝撃の後、ガラス部品は依然として一体で保持された(
図2)。これにより、積層製品と積層体の全部分との良好な接着が強調された。
【0100】
プラスチック布地などの挿入物を含有する積層ガラスユニットもまた、良好に作製された。
【0101】
プラスチック布地SEFAR(登録商標)Architecture Vision CU 140/70及びSEFAR(登録商標)Architecture Vision CU 260/25などの挿入物を含む積層ガラスユニットを、
図1Bに示すように成功裏に作製した。