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特許7168588骨盤腔の機械的特性を決定するための方法、および測定デバイス
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  • 特許-骨盤腔の機械的特性を決定するための方法、および測定デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】骨盤腔の機械的特性を決定するための方法、および測定デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A61B5/00 101M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019565988
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 FR2018050394
(87)【国際公開番号】W WO2018154224
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】1751369
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518057608
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ドゥ・リール
(73)【特許権者】
【識別番号】519302969
【氏名又は名称】エコール・セントラル・ドゥ・リール
【氏名又は名称原語表記】ECOLE CENTRALE DE LILLE
【住所又は居所原語表記】CITE SCIENTIFIQUE, VILLENEUVE D’ASCQ, 59650, FRANCE
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】503134295
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・レジョナル・ユニヴェルシテール・ド・リル
(73)【特許権者】
【識別番号】519302970
【氏名又は名称】エコール・ナシオナル・スペリュール・ダール・エ・メティエ
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NATIONALE SUPERIEURE D’ARTS ET METIERS
【住所又は居所原語表記】151 BOULEVARD DE L’HOPITAL, 75013 PARIS, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ブリュ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】コッソン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ルボ・ディ・ギュエ,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ルコント,ポーリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッツ,ジャン・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】パトルー,ローラン
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0047132(US,A1)
【文献】特開2005-291945(JP,A)
【文献】特開2002-330941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0156370(US,A1)
【文献】Luis A. Ferreira et al.,Dymanic assessment of women pelvic floor function by using a fiber Bragg grating sensor system,Proc. SPIE 6083, Optical Fibers and Sensors for Medical Diagnostics and Treatment Applications VI, 60830H(15 February 2006),2006年,pp.1-10,doi:10.1117/12.646824
【文献】Pauline Lecomte-Grosbras et al.,Towards a Better Understanding of Pelvic System Disorders Using Numerical Simulation,Med Image Comput Assist Interv.,2013年,16(Pt3),pp.307-314,doi:10.1007/978-3-642-40760-4_39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨盤腔の臓器の圧力を測定するための測定デバイス(1)であって、該測定デバイス(1)は、非金属ハウジング(10)に取り付けられた光ファイバセンサ(14a)、および前記非金属ハウジング(10)に取り付けられかつ圧力測定表面(18)を構成する表面を有する閉じたフレキシブルリザーバを備え、前記圧力測定表面(18)は、前記腔の前記臓器の表面に接触するためのものであり、前記フレキシブルリザーバは、前記圧力測定表面(18)に与えられた圧力を前記光ファイバセンサ(14a)に伝達するように構成され、
前記測定デバイス(1)は長手方向を示し、前記非金属ハウジング(10)は前記圧力測定表面(18)を画定する開口を備え、
前記圧力測定表面(18)は実質的に平面状の表面であり、前記実質的に平面状の表面の法線は前記長手方向に対して垂直である測定デバイス(1)。
【請求項2】
前記フレキシブルリザーバは、流体またはゲルが充填される請求項に記載の測定デバイス(1)。
【請求項3】
前記圧力測定表面(18)はフレキシブル表面である請求項または請求項に記載の測定デバイス(1)。
【請求項4】
前記光ファイバセンサ(14a)の少なくとも一部は、前記フレキシブルリザーバに取り付けられる、あるいは前記フレキシブルリザーバの表面に接触している請求項のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の一部の機械的挙動を決定することに関する。特に、本発明は、人の骨盤腔の機械的挙動を決定することに関する。また、本発明は、そのような決定を行うための測定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
女性の骨盤腔は、骨盤臓器、特に、膣、膀胱、直腸、および子宮から構成されている。前記骨盤臓器は、靭帯によってかつ筋膜によって互いにおよび骨の部分に接続されており、かつ前記骨盤臓器は、骨盤底によって支持されている。前記骨盤底は、「骨盤姿勢」と呼ばれる平衡状態を創り出し、かつ女性の前記骨盤臓器に、前記骨盤臓器が前記骨盤臓器の機能を実行するために必要な生理的可動性を持たせることができる一組の骨盤底筋である。
【0003】
骨盤臓器は、かなり大きな生理的可動性を有する。それにもかかわらず、これらの可動性に影響を及ぼす女性の前記骨盤姿勢の共通の障害があり、たとえば、子宮内膜症は、前記骨盤臓器の低可動性につながり、逆に、膣脱出症は、過可動性につながる。
【0004】
前記膣は、前記膀胱と前記直腸との間に位置しているので、女性の骨盤系を維持することに密接に関係している腔であり、かつ前記骨盤姿勢において重要な役割を果たす多数の靭帯は、膣断端または前記子宮の頸部の近傍に接続されている。この臓器が受ける応力(腹腔内圧、重力、内臓の重み、咳払い等)の大きさは全て、組織の硬さの結果として前記臓器が動くことにつながる全ての力である。
【0005】
それにもかかわらず、組織の硬さは、今日では、不十分にかつ包括的な方法でいまだに評価されている。
【0006】
患者の膣腔の内側で生体内測定を実行するために、膣内プローブ等のデバイスを使用することが知られている。例として、そのような測定は、応力試験中の膣内圧の測定である場合がある。したがって、そのようなデバイスによって、前記患者の骨盤姿勢における考え得る障害をより深く理解するように、様々な応力運動を実行しながら、当人に特有な圧力値を知ることが可能となる。
【0007】
それにもかかわらず、そのようなデバイスでは、人の骨盤組織の機械的特性を非侵襲的なかつ非破壊的な方法で特徴化することができない。しかしながら、特定の女性の前記骨盤組織に特有の前記機械的特性を決定できれば、脱出等の病状、または,たとえば出産前のリスクのより良好な評価が可能になるだろう。これによって、衰弱組織をターゲット化すること、個人に合わせた治療方針を提案すること、または人の衰弱部位によく適応するため当該人によってより良好に許容される外科的補綴物を明らかにすることなど、著しい治療の向上を得ることも可能になるだろう。
【0008】
組織の組織学的組成に基づいて、前記組織の超弾性性質、老化、または実際に病状が単一のパラメータに基づいてモデル化されることができるように挙動モデルを構築することも知られている。それにもかかわらず、前記データの全ては、患者からまたは死体から取られた組織の破壊的特徴化によって得られ、かつ現在、生体内の骨盤組織の特徴化、すなわち、骨盤組織の非破壊的特徴化を実行する方法はない。
【0009】
同様に、磁気共鳴画像法(MRI)に基づいて患者に特有のデジタルモデルを構成することも知られている。にもかかわらず、この場合も同様に、そのようなモデルで使用される組織に関する前記機械的データは、患者自身の組織に関するデータではなく、文献から取ってきたまたは前記患者からまたは死体から取られた組織から得られた一般値である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、様々な上記の技術的問題を解決しようとするものである。特に、本発明は、具体的には、診断目的で、かつ、各患者により良好に適応する骨盤病状の治療を適用するために、人の骨盤腔の前記機械的特性を非侵襲的に、かつ特に体内で決定することを可能とする方法、および当該方法に対応するデバイスを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様では、特に非破壊的方法で、人のまたは動物の骨盤腔の機械的特性を決定する方法が提供され、前記骨盤腔は、複数の臓器を含む。本方法はステップを備え、当該ステップ中に、前記骨盤腔の前記臓器のうちの一つの臓器の表面の一つ以上の点で圧力が測定され、かつ当該ステップ中に、同時に、前記骨盤腔の複数の臓器の動きも測定される。
【0012】
したがって、同時に、一つ以上の点で圧力を測定し、かつ複数の臓器の動きも測定することによって、機械的見地で前記人の骨盤腔における特定の組織を特徴化し、その結果、前記測定が行われた前記人に関して正確かつ特有の前記骨盤腔のモデルを得ることが可能となる。対象の前記患者の生体構造のより深い知識を得ること、および現在のまたは将来考え得る機能不全を理解することが可能になる。
【0013】
本方法は、生きている人または動物の前記骨盤腔の前記機械的特性を決定するために実行されることが好ましい。
【0014】
特に、膣内圧または直腸内圧が、圧力および臓器の動きの同時測定を行うために、MRI検査中に測定される。MRIは、骨盤病状を診断するための従来の器具であり、かつ前記MRIは、骨盤の生体構造を、前記骨盤の生体構造が静的MRIによって静止している間に、あるいは動的MRIによって前記骨盤の生体構造が動いている間に、観察することを可能とする。ここでは、利点は、応力下にある膣内圧または直腸内圧を同時に測定すること、およびまたMRI撮像によって前記応力によって引き起こされた前記動きを観察することである。与えられている前記圧力の定量化と結合して臓器の前記動きを観察することによって、骨盤姿勢の障害のより良好な診断を得ることが可能になる。さらに、荷重および誘起される可動性を同時に知ることによって、生体内で、前記患者の組織(骨盤姿勢に含まれる臓器、靭帯および筋肉)の前記機械的特性を間接的に特徴化することも可能となり、したがって、骨盤病状を理解することおよび前記骨盤病状の診断および処置を向上させることが可能となる。
【0015】
表面で圧力が測定される前記臓器は、膣または直腸であることが好ましい。次に、本方法は、ある特定の臓器、前記膣または前記直腸の特徴を評価するように機能し、したがって、局所圧力測定を行うためのプローブを使用することも可能とする。
【0016】
前記骨盤腔の前記動きは、MRIによって得られたデータ、たとえば、前記人または前記動物の動的MRIによって得られたデータから測定されることが好ましい。前記動きは、全域的に、すなわち、前記骨盤腔の多数の点で決定される。動的MRIは、特に、正確に観察しかつ前記患者の骨盤腔における様々な臓器の前記動きを測定するように機能する。これによって、前記患者に特有の動きを得ることが可能となり、それによって、最終的に、信頼できる前記患者の骨盤腔の特徴化を得ることが可能となる。
【0017】
また、本方法は、前記骨盤腔の形状の撮像データから、たとえば、前記人または前記動物の静的MRIによって得られたデータ、および任意ではあるが、標準の機械的特性から前記骨盤腔のデジタルモデルを構築するステップを含むことが好ましい。この実施例では、前記デジタルモデルは、前記患者の身体構造のデータから構築され、したがって、前記デジタルモデルが前記患者の身体構造に正確に対応する形状を有することが可能となる。
【0018】
前記デジタルモデルの構築は、前記デジタルモデルを有限要素に細分化することを含むことが好ましい。これは、デジタルモデルを構築するための従来の技術であり、前記腔の適切なモデルを得る間に必要な計算量を制限するように機能する。
【0019】
一実施例において、前記デジタルモデルで使用された前記機械的特性は、前記複数の臓器の前記デジタルモデルで得られた前記動きが、前記デジタルモデルの前記臓器のうちの臓器の一つの前記表面の前記一つ以上の点における前記圧力が前記測定された圧力に等しいときに測定された前記動きに近づくように修正される。したがって、前記同時測定は、前記静的MRIデータから構築された前記デジタルモデルを改良するために使用され、前記デジタルモデルから最初に得られた前記動きと前記人から次に得られた前記動きを比較することによって、前記デジタルモデルから計算された前記動きと前記骨盤腔の前記測定された動きとの間の差を最小にするために、前記デジタルモデルのパラメータを修正することが可能である。したがって、前記デジタルモデルのパラメータは、前記デジタルモデルによって提供されたパラメータとMRIによって得られたパラメータとの間の、所与の圧力に対する画像相関によって修正される。したがって、機械的特性は、前記デジタルモデルによって得られた前記値と前記人に対して測定された前記値との間の差を最小にするように機能する前記機械的特性を決定することから構成される反転法によって特定される。
【0020】
一実施例において、本方法は、前記方法は、前記デジタルモデルの前記機械的特性を修正した後に、前記人のまたは前記動物の前記骨盤腔の考え得る機械的挙動をシミュレーションするために、前記デジタルモデルを修正する、たとえば、前記デジタルモデルの形状を修正する、または機械的特性を修正するステップも含む。本方法のそのようなステップは、前記デジタルモデルが前記患者の骨盤腔の正確な描写であると考えられるときに実行され、次に、前記デジタルモデルにおいて想定されている手術の後に、前記骨盤腔の前記挙動が、実際に期待された通りになるであろうことを確認するためにシミュレーションすることが可能となる。したがって、前記デジタルモデルのみを使用することによって、予防または診断を実行することが可能である。
【0021】
他の一態様では、前記骨盤腔の臓器における圧力を測定するための測定デバイスも提供される。当該デバイスは、非金属ハウジングに取り付けられた少なくとも一つの光ファイバ圧力センサ、および前記非金属ハウジングに取り付けられかつ圧力測定表面を構成する表面、特にフレキシブル表面を有する閉じたフレキシブルリザーバを備える。前記圧力測定表面は、前記腔の前記臓器の表面と接触するためのものであり、前記フレキシブルリザーバは、前記測定表面に与えられた圧力を前記光ファイバセンサに伝達するように構成される。
【0022】
このようなデバイスによって、金属要素の使用を必要とすることなく圧力を測定することを可能とするという利点が提供される。具体的には、磁気共鳴画像法(MRI)を実行することによって、強力な磁界が発生し、このことは、いかなる磁性材料、強磁性材料、または導電性材料を挿入することができず、したがって、原則としてほとんど全ての金属材料を挿入することができないことを意味する。加えて、膣内圧測定のために使用さる全ての既存の技術では、データを取得するために電気信号が送信される必要がある。残念ながら、電気信号は、磁界の存在によって大きく乱される可能性がある。
【0023】
前記フレキシブルリザーバは、当該フレキシブルリザーバが同じ量の流体を常に含むように閉ざされている。したがって、前記フレキシブルリザーバは、当該フレキシブルリザーバに圧力を与えることによって当該フレキシブルリザーバが壁に押し付けられるときに、特に膨張によって容量を変化することを意図してはいない。前記フレキシブルリザーバは、同じ量の流体を常に含み、一つの表面のみ、すなわち、前記測定表面を接触可能にしておくように非金属ハウジングの内側に配置される。
【0024】
前記フレキシブルリザーバは、弾性でも非弾性でよいフレキシブルまたは変形可能な材料を備えることが好ましい。特に、前記フレキシブルリザーバは、弾性のフレキシブルまたは変形可能な材料、または非弾性のフレキシブルまたは変形可能な材料から作ることができる。したがって、前記フレキシブルリザーバは、前記フレキシブルリザーバに与えられた応力の影響下で変形することができるが、特に膨張することができるリザーバで起こるようには、容積が増加したり減少したりはしないであろう。
【0025】
したがって、前記フレキシブルリザーバは、測定対象の前記壁を押し付けるために変形することになっていないので、当該フレキシブルリザーバは、前記フレキシブルリザーバが使用される前記腔を変形させない。
【0026】
前記フレキシブルリザーバは、前記非金属ハウジングの内側に配置された閉ざされた周辺のフレキシブル膜によって形成されてもよく、その場合、前記非金属ハウジングは、開口またはウインドウを含み、当該開口またはウインドウを介して前記膜の一部、すなわち、前記測定表面に接触することができる。このような実施形態では、前記測定表面に与えられた圧力変動が前記フレキシブルリザーバの前記膜の残りの部分に伝達される。あるいは、前記フレキシブルリザーバは、前記測定表面を形成するために、第一に、開口を含む前記非金属ハウジングの内側表面によって形成され、かつ、第二に、前記非金属ハウジングの前記開口を閉じるフレキシブル膜によって形成されてもよい。この実施形態では、前記測定表面に与えられた圧力変動が、前記リザーバの内側の前記圧力に修正を生じさせる。
【0027】
何れの場合も、前記フレキシブルリザーバの一部のみ、すなわち、前記測定表面が、前記骨盤腔の前記壁によって与えられた前記応力下で変形し、前記リザーバの残りの部分が前記非金属ハウジングによって保護され、何ら応力を受けないと理解することができる。
【0028】
最後に、前記測定表面のサイズは、前記ハウジングの前記開口のサイズにのみ依存し、したがって、前記測定表面の周りに与えられた圧力を考慮することなく前記非金属ハウジングの前記開口を介して局所圧力測定を行うことが可能である。
【0029】
光ファイバの前記使用によって、MRI環境に適合可能な材料を使用しながら前記圧力測定を行うことが可能となる。具体的には、光ファイバは非金属であり、同時に、前記測定された圧力値を表す光信号が前記MRI磁界の影響を受けない。したがって、本発明の前記デバイスを使用することによって、MRIを実行しながら圧力を測定し、したがって、圧力測定と動きの測定の両方を同時に得ることが可能である。
【0030】
光ファイバは、一般に、非常に小さい直径、すなわち、ほぼ10分の1ミリメートル以下であるので、前記光ファイバは、膣内圧または直腸内圧の測定を行うのには適さず、したがって、前記光ファイバの配置を制御することおよび前記光ファイバが、圧力を測定する前記臓器の前記壁と接触状態を保つことを保証することは困難である。この困難を軽減するために、フレキシブル空洞が前記光ファイバの両端部に設けられ、前記フレキシブル空洞は、第一に、前記臓器に接触して前記圧力測定を前記光ファイバに伝達し、第二に、前記圧力測定が行われる前記生体構造の領域の前記MRI画像での正確な観察を容易にするように機能する。
【0031】
前記デバイスは、前記キャビティの形状を前記デバイスに一致させるのではなく、前記デバイスを人の膣腔または直腸腔の形状に一致させることができるように、フレキシブルかつ変形可能な材料、例えば、ポリマー材料から作られることが好ましい。これによって、もっぱら前記測定デバイスを前記腔内に配置することに起因する前記人の膣腔または直腸腔の変形が制限され、そうでない場合、前記デバイスを配置することにしか関連していない応力を生じる可能性がある。
【0032】
前記フレキシブルリザーバは、流体がまたはゲルが充填されることが好ましい。流体またはゲルが充填されたリザーバの使用によって、前記測定ゾーンを特定すること、したがって圧力が測定される前記ゾーンを正確に決定することが前記MRI画像において容易になる。
【0033】
前記測定デバイスは長手方向を示し、前記圧力測定表面は、前記長手方向に対して垂直な法線を有する実質的に平面状の表面であることが好ましい。前記デバイスの形状は、膣プローブまたは直腸プローブとして使用されるように適合され、前記フレキシブルリザーバの前記測定表面は、前記デバイスを配置および/または配向するだけで様々な異なる点で圧力を測定することができるように、側方に配置される。
【0034】
前記光ファイバセンサの少なくとも一部は、前記フレキシブルリザーバに取り付けられるまたは前記フレキシブルリザーバの表面に接触していることが好ましい。その場合、前記光ファイバセンサにより、前記リザーバの内側で直接に圧力変動を測定することが可能になる。
【0035】
本発明および本発明の利点は、非制限例とみなされかつ添付の図面に示す特定の実施形態の以下の詳細な記載を読むことによってより深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の測定デバイスの概略図である。
図2】本発明の測定デバイスの概略図である。
図3】本発明の方法の一実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、骨盤腔の臓器における圧力を測定するためのデバイス1の図である。
【0038】
前記測定デバイス1は、特に、本体2を備える。前記本体2は、長手方向に延在し、かつ配置ハンドル4と圧力測定手段6との間で機械的接続を得ることができる。前記本体2は、前記ハンドル4に与えられた機械的力を伝達するために剛性または半剛性であり、MRI環境に適合できるように金属ではない。
【0039】
前記配置ハンドル4は、前記本体2の前記長手方向に取り付けられ、かつ婦人科医が前記デバイスの使用中に、前記圧力測定手段6を容易に配置しかつ配向することができるようになっている。前記配置ハンドル4は、特に、たとえば、コネクタ8を介して、前記本体2の両端部の一方に取り外し可能に取り付けられてもよい。
【0040】
最後に、前記デバイス1は、前記ハンドル4に接続された前記本体2の端部から遠くに離れた前記本体2の端部に前記長手方向に前記本体2に取り付けられた圧力測定手段6を含む。
【0041】
図2に示すように、前記圧力測定手段6は、流体または液体を受容するための内容積を画定する剛性の非金属ハウジング10を備える。また、前記非金属ハウジング10は、前記非金属ハウジング10によって画定される内容積内に配置される光ファイバセンサを構成する端部14aを含む一つ以上の光ファイバ14を挿入するための前記デバイス1の長手方向の貫通開口12を呈する。前記非金属ハウジング10は側部開口16を有し、当該側部開口16の法線は、前記デバイス1の前記長手方向に対して実質的に垂直であり、測定表面18の輪郭を画定するように機能している。
【0042】
例として、前記光ファイバセンサ14aは、干渉法によって動作することでき、入射光波は、誘電体ミラーによって反射され、参照波を構成する。前記入射ビームは、またダイアフラム、すなわち、外圧の影響下で変形可能な膜によって反射され、前記参照ビームと干渉する。前記参照ビームと前記ダイアフラムによって反射された前記ビームとの間の光路長波差によって前記ダイアフラムの前記変形を決定することが可能となり、かつ間接的に前記ダイアフラムに与えられた前記圧力を決定することが可能になる。
【0043】
前記非金属ハウジング10によって画定された前記内容積は、流体またはゲル20が充填され、前記側部開口16は、前記側部開口16において前記測定手段6の前記圧力測定表面18を形成するフレキシブル膜22によって被覆される。前記膜22は、したがって前記内容積が封止されることを保証するとともに、前記腔にある前記流体またはゲルを介して前記光ファイバ(単数または複数)に圧力を伝達するために変形する機能を有する。前記ハウジング10の内側に設けられた前記流体または前記ゲルは、前記測定表面18に加えられた前記圧力変動を前記光ファイバ(単数または複数)14の前記端部(単数または複数)14aへ伝達するように、実質的に圧縮不能である。前記非金属ハウジングの前記内容積内の流体の量は、一定でありかつ変化しない。前記膜22は、フレキシブルかつ弾性であってもよいし、フレキシブルかつ非弾性であってもよい。このように、前記光ファイバ(単数または複数)14の前記長手方向の軸に沿って、すなわち、前記デバイス1の前記長手方向に、当該長手方向に対して垂直な方向に与えられる圧力の変動を測定することが可能となる。
【0044】
具体的には、前記光ファイバは、前記光ファイバの先端部14aで圧力を測定するように機能し、前記光ファイバの脆性を考慮すると曲げることができない。前記測定デバイス1の側面に配置された前記測定表面18と前記光ファイバ(単数または複数)14の前記端部(単数または複数)との両方と接触している前記流体またはゲルは、前記測定表面18から前記光ファイバ(単数または複数)14の感知表面(単数または複数)に前記圧力を伝達するように機能する。したがって、前記光ファイバ(単数または複数)14を破壊する恐れがある、前記光ファイバ(単数または複数)14を曲げる必要がない。
【0045】
さらに、前記ハウジング10の内側の流体またはゲルの存在によって、MRI画像において前記測定手段6を特定して位置決めすることも容易になる。これによって、前記デバイス1によって測定された局所圧力場を正確に特徴化することができる。
【0046】
前記測定手段6は、以下の特徴、すなわち、0.2水銀柱ミリメートルの感度(mmHg)、前記測定手段6をデータ取得コンピュータに接続するために10メートル(m)の長さを有する光ファイバ、15ミリメートル(mm)以下のサイズ、および10ヘルツ(Hz)以上のデータ取得周波数を提供できる。
【0047】
したがって、前記測定手段6は、MRI環境に完全に適合可能である。具体的には、第一に、前記光ファイバによって送信された信号は、骨盤病状の従来の観察シーケンス中に前記MRIによって発生した磁界によってもラジオ波によっても決して乱されることがなく、第二に、前記測定手段6の存在が、診断のためおよび動きに関連した測定を行うために観察する必要がある前記画像中にアーチファクトを生じることがない。
【0048】
図1および図2に示された前記デバイス1は、唯一の測定表面18を有する。しかしながら、複数の測定ゾーンを備えるデバイスを提供するように、前記本体の前記長手方向に沿って配置された複数の圧力測定手段6を有する測定デバイス、または、実際に、ハウジング10の周囲に配置された複数の測定表面18を備える当該ハウジング10を提供することを想定することもできる。このような状況下では、各測定表面18は、流体またはゲルの各リザーバおよび一つ以上の光ファイバと関連付けられるべきであり、したがって、前記デバイスを使用して、複数の圧力値を同時に取得することができる。
【0049】
前記非金属ハウジング10は、硬質プラスチック、たとえば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)から作ることができる。次に、前記光ファイバ(単数または複数)は、前記非金属ハウジング10内に挿入される。たとえば、シリコーンから作られるフレキシブル膜22は、前記非金属ハウジング10の前記内容積を閉じるように配置され、次に、前記ハウジングには、シリンジによって水性超音波検査ゲルが充填される。
【0050】
前記デバイスの使用中に前記患者の不快感を制限するため、および前記デバイスが封止されることを確実にするために、前記本体2および前記圧力測定手段6は、特に、たとえば、シリコーンから作られるフレキシブル膜24に被覆される。
【0051】
さらに、膣内圧および直腸内圧の適切な測定を行うことができるように、前記測定デバイス1は、前記測定手段6の前記測定表面18と前記腔の前記壁との間の接触、および前記腔に対する低応力も保証する形状を有するように設計される。これによって、前記腔が過剰に変形することが回避され、それによって、結果をどのように解釈すべきかを修正することができるであろう。
【0052】
このように、MRI環境において容易に観察することができ、かつ前記MRI環境によって乱されることがない測定値を提供するデバイス1が得られる。
【0053】
図3は、特に、非破壊的な方法でかつ生体内で人の骨盤腔の機械的特性を決定する方法30の様々なステップを示す。第一のステップ32では、三次元デジタルモデルが、たとえば、静的MRIによって得られた画像を使用して、前記人の骨盤腔から構築される。前記デジタルモデルは、以下で記載される再設定を可能とするために、有限要素に細分化されることによって作られてもよい。
【0054】
ステップ34では、前記臓器の一つの前記表面上の複数の点で圧力および複数の臓器の動きの両方の測定が同時に実行される。圧力測定は、図1および図2を参照して記載されたデバイス1で実行することができ、臓器の前記動きは、動的MRI撮像によって測定することができる。
【0055】
最後に、ステップ36では、前記デジタルモデルによって得られたこれらの動きが前記ステップ34中に測定された前記動きに対応するように、ステップ32で構築された前記デジタルモデルの前記機械的特性が修正される。前記デジタルモデルのそのような修正は、特に、有限要素に細分化されたデジタルモデルを使用して、所与の圧力場に対して得られた前記動きをシミュレートするシミュレーションによって、かつ前記動きを前記ステップ34中に測定された前記動きと比較することによって実行されることができ、次に、前記有限要素デジタルモデルは、前記二つのタイプの動き値の差を最小にするために再設定される。
【0056】
したがって、この方法によって、第一に、前記患者の前記三次元形状、第二に、前記患者に特有の機械的特性を組み合わせる前記患者のデジタルモデルを得ることが可能である。
【0057】
次に、最後のステップ38は、前記結果としてのデジタルモデルを使用して実行することができる。前記ステップ38中に、前記デジタルモデルは、前記患者の骨盤腔の考え得る挙動をシミュレーションするように、前記デジタルモデルの三次元形状に関してまたは前記デジタルモデルの機械的特性に関して修正される。
【0058】
次に、このようなステップは、脱出、子宮内膜症、または腫瘍に当てはまるように、たとえば、異常に低いまたは異常に高い機械的特性を有する病状ゾーンを特定することによって骨盤病状の診断を向上させるように機能する。同様に、より良好に適合される方策を提案することによって、かつ、たとえば、様々な外科手術をシミュレーションする等の各患者の前記特定の特徴を考慮することを可能にしかつ前記患者が最も適切であると思う前記外科手術を提案すること、或いは、実際に、前記患者に特に適応する形状および機械的特性を有する補綴物をあつらえることによって骨盤病状の治療を向上させることが可能である。最後に、予防的に、出産前数か月の女性特有の特徴を決定し、それにより合併症をより適切に、より長期的に特定することも可能である。
【0059】
したがって、同時に実行される測定が圧力の局所的測定および動きの全体の測定によって、患者の骨盤腔のデジタルモデルを構築することが可能となり、当該モデルは、代表的であり信頼できる。その後、このようなモデルは、行われるべき治療または手術を適応させために、前記患者に考え得る様々な異常または合併症を特定しかつシミュレーションすることができる利点を提供する。
図1
図2
図3